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秒速5センチメートル

秒速 5センチメートル

→ ねえ

→ 秒速 5 センチ な んだって → えっ何 ? → 桜 の 花 の 落ちる スピード 秒速 5 センチメートル

→ ふうん

→ アカリ そういう こと よく 知って る よ ね → ふ ふん

→ ねえ なんだか まるで 雪 みたいじゃ ない ? → すう かな ー

→ ねえ !

→ 待って よ !

→ アカリ !

→ タカキ くん

→ 来年 も 一緒に 桜 見 れる と いいね ! → 遠野 タカキ さま へたいへん ご無沙汰 して おります → こちら の 夏 も 暑い けれど 東京 に 比べれば ずっと 過ごし やすい です → でも 今に して 思えば 私 は 東京 の あの ムシ 暑い 夏 も 好きでした

→ 溶けて しまい そうに 熱い アスファルト も 陽炎 の むこうの 高層 ビル も デパート や 地下鉄 の 寒い くらい の 冷房 も

→ 私 たち が 最後に 会った の は 小学校 の 卒業 式 でした から

→ あれ から もう 半年 です

→ ねえ タカキ くん 私 の こと 覚えて います か ? → 前略 タカキ くん へ → お 返事 ありがとう 嬉しかった です → もう すっかり 秋 です ね こちら は 紅葉 が キレイ です

→ 今年 最初の セーター を おととい 私 は 出しました → 遠野 くん !

→ 先輩

→ 何 ? アブレター ?

→ 違います よ ! → ごめん ね 全部 お 願い しちゃって → いえ すぐ 終わりました から → ありがとう ねっ転校 しちゃ うって ホント ? → あっはい 3 学期 いっぱいです → どこ ?

→ 鹿児島 です 親 の 都合 で → そう か ー 寂しく なる なぁ → 最近 は 部活 で 朝 が 早い ので 今 この 手紙 は 電車 で 書いて います → この 前 髪 を 切りました → 耳 が 出る くらい 短く しちゃった から → もし 会って も 私って 分から ない かも しれません ね → ただいま ー

→ お かえり

→ タカキ くん も きっと 少しずつ 変わって いく のでしょう ね → 拝啓 寒い 日 が 続きます が お 元気です か ? → こちら は もう 何度 か 雪 が 降りました → 私 は その たび に ものすごい 重 装備 で 学校 に ツ 通って います → 東京 は 雪 は まだ だ よ ね

→ 引越 して きて から も つい クセ で 東京 のぶん の 天気 予報 まで 見て しまいます → 雨 でも 降ら ねえ か なぁ

→ でも 居 内 でも キツイ ぜ

→ なぁ 栃木って 行った こと ある か ? → ハァ ? どこ ?

→ 栃木

→ ない

→ どう やって行く の か な ?

→ さ ぁ ... 新幹線 と か ?

→ 遠い よ な

→ 一 年 !

→ ハイ !

→ ラスト 三 周 !

→ ファイト ! オーッ !

ファイト ! オーッ !

→ 今度 は タカキ くん の 転校 が 決まった と いう こと 驚きました → お互いに 昔 から 転校 に は 慣れて いる わけです が

→ それにしても 鹿児島 だ なんて

→ % 今度 は ちょっと 遠い よ ね

→ いざ と いう 時 に 電車 に 乗って 会い に 行ける ような 距離 で は なく なって しまう の は

→ やっぱり ...

→ 少し ... ちょっと 寂しい です

→ どうか どう か タカキ くん が 元気で います ように → 前略 タカキ くん へ → 3 月 4 日 の 約束 とても 嬉しい です → 会う の は もう 一 年 ぶり です ね → なんだか 緊張 して しまいます → うち の 近く に 大きな 桜 の 樹 が あって

→ 春 に は そこ でも たぶん → 花びら が 秒速 5 センチ で 地上 に 降って います → タカキ くん と 一緒に

→ 春 も やってきて くれれば いい の にって 思います → 予報 で は 夕方 から 雪 に なるって え ~っ寒い と 思った よ もう 3 月 な のに な → 風邪 引き そうだ よ ね

→ ねっあったかい もの 飲んで こう よ 下北 で 降りて さ → そうだ な

→ 遠野

→ 部活 行こう ぜ

→ あぁ

→ あの さ 俺 今日 ちょっと 部活 ダメな んだ → 引越 し の 準備 か ?

→ そんな トコ 悪い な → 私 の 駅 まで 来て くれる の は とても 助かる のです けれど

→ 遠い ので どう か 気 を つけて きて 下さい

→ 約束 の 夜 7 時 に 駅 の 待合室 で 待って います → アカリ と の 約束 の 当日 は 昼 すぎ から 雪 に なった

→ あっねえ タカキ くん ! → ねこ ! チョビ だ !

→ こいつ いつも ここ に いる ね → でも 今日 は 1 人 みたい

→ ミミ は どうした の ? 1 人 じゃ 寂し いよ ねぇ

→ あの 本 どう ? → なかなか 昨日 一晩 で 40億 年 分 読んじゃった ! → どの あたり ?

→ アノマロカリス が 出て くる あたり

→ カンブリア 紀 !

→ 私 ハルキゲニア が 好きだ な こんな の → まあ 似て る かも → タカキ くん は 何の ファン ?

→ オパビニア かな

→ あー 眼 が 5 つ ある ヒト だ よ ね ! → 僕 と アカリ は 精神 的に どこ か よく 似て いた と 思う

→ 僕 が 東京 に 転校 して きた 1 年 後 に ー アカリ が 同じ クラス に 転校 して きた

→ まだ 体 が 小さく 病気 がちだった 僕ら は グランド より は 図書 館 が 好きで

→ だ から 僕たち は ごく 自然に 仲良く なり

→ その せい で クラスメイト から からかわ れる こと も あった けれど

→ でも ー

→ お互い が いれば 不思議に そういう こと は あまり 怖く は なかった

→ 僕たち は いずれ 同じ 中学 に 通い → この先 も ずっと 一緒に だ と

→ どうして だとう そう 思って いた → 新宿 新宿 終点 です → お 振り の お 客 様 は ... JR 線 京王 線 地下鉄 は お 乗り換え です ... → 新宿 駅 に 1 人 で来た の は 初めて で

→ これ から 乗る 路線 も 僕 に は すべて 初めて だった

→ ドキドキ して いた

→ これ から 僕 は アカリ に 会う んだ → この 前 の 子 どう だった ? → 誰 ?

→ ほら 西 商 の ! → え ~? 趣味 悪く ない ?

→ ... 快速 列車 待ち合わせ の ため この 列車 は 4 分 ほど 停車 します → 与野 本町 大宮 まで お 急ぎ の 方 は 向かい の ...

→ あの ... 篠原 と 申します けど → あの タカキ くん いらっしゃいます か ? → アカリ ちゃん よ

→ え ... 転校 ?

→ 西中 は どう すんだ ? せっかく 受かった のに

→ 栃木 の 公立 に 手続き するって ... → ごめん ね

→ いや ... アカリ が 謝る こと な いけ で

→ 葛飾 の 叔母 さんち から 通いたいって 言った んだ けど → もっと 大きく なって から じゃ ない と ダメ だって ...

→ わかった

→ もう いい よ

→ もう いい

→ ごめん ...

→ 耳 が 痛く なる くらい 押しあてた 受話器 ご しに → アカリ が 傷つく の が 手 に とる ように 分かった でも ... → どう しよう も なかった

→ 乗り換え の ターミナル 駅 は 帰宅 を 始めた 人々 で 混 み合って いて

→ 誰 の 靴 も 雪 の 水 を 吸って ぐっしょり 濡れて いて

→ 空気 は ー

→ 雪 の 日 の 都市 独特の 匂い に 満ちて 冷たかった → お 客 様 に お 知らせ いたします → 宇都宮 線 小山 宇都宮 方面 行き 列車 は ただいま 雪 の ため 到着 が 8 分 ほど 遅れて おります → お 急ぎ の ところ お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が → その 瞬間 まで 僕 は 電車 が 遅れる なんて いう 可能 性 を → 考え も し なかった

→ 不安 が 急に 大きく なった

→ ただいま この 電車 は 雪 の ため 10 分 ほど 遅れて 運行 して おります → お 急ぎ の ところ 列車 遅れて おります こと お 詫び いたします → 大宮 駅 を 過ぎて しばらく する と 風景 から は あっという間 に 建物 が 少なく なった

→ 次 は 久喜 久喜 → 到着 が 大変 遅れました こと お 詫び 申し上げます → 東 武 伊勢崎 線 に お 乗り換え の 方 は 5 番 出口 に お まわり 下さい

→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が 今 しばらく お 待ち 下さいます よう お 願い いたします → すみません

→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 を お かけ いたします が ... → 野木 野木 → お 客 様 に お 断り と お 詫び 申し上げます 後続 列車 遅延 の ため この 列車 は 当 駅 で しばらく の 間 停車 します → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 ...

→ 駅 と 駅 と の 間 は 信じられ ない くらい 離れて いて → 電車 は 一 駅 ごと に 信じられ ない くらい 長い 間 停車 した → 窓 の 外 の 見た こと も ない ような 雪 に 荒野 も じわじわ と 流れて いく 時間 も 痛い ような 空腹 も 僕 を ますます 心細く さ せて いった

→ 約束 の 時間 を 過ぎて

→ 今頃 アカリ は きっと 不安に なり 始めて いる と 思う

→ あの 日 ... あの 電話 の 日 ー 僕 より も ずっと 大きな 不安 を 抱えて いる はずの アカリ に 対して 優しい 言葉 を かける こと の でき なかった 自分 が ひどく 恥ずかしかった → じゃあ

→ 今日 で ショナラ だ ね

→ アカリ から の 最初の 手紙 が 届いた の は それ から 半年 後

→ 中 1 の 夏 だった

→ 彼女 から の 文面 は すべて 覚えた

→ 約束 の 今日 まで 2 週間 かけて 僕 は アカリ に 渡す ため の 手紙 を 書いた

→ アカリ に 伝え なければ いけない こと 聞いて 欲しい こと が

→ 本当に 僕 に は たくさん あった → 大変 お 待た せ いたしました まもなく 宇都宮 行き 発車 いたします → 小山 小山 → 東北 新幹線 ご 利用 の 方 は お 乗り換え です

→ 東北 新幹線 下り 盛岡 方面 お 乗り換え の 方 は 1 番 線

→ 上り 東京 方面 お 乗り換え の 方 は 5 番 線 へ お まわり 下さい

→ お 客 様 に お 知らせ いたします ただいま 両 毛 線 は 雪 の ため 大幅な 遅れ を もって 運転 して おります → お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 を お かけ いたして おります → 列車 到着 まで 今 しばらく お 待ち 下さい

→ とにかく アカリ の 待つ 駅 に 向かう しか なかった

→ 8 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 上り 電車 が 参ります → 白線 の 内側 に 下がって ...

→ お 客 様 に ご 案内 いたします ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします → お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が → 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません → 繰り返します → ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします → お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が → 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません → タカキ くん お 元気です か ? → 部活 で 朝 が 早い ので この 手紙 は 電車 で 書いて います → 手紙 から 想像 する アカリ は なぜ か いつも 1 人 だった

→ 電車 は それ から 結局 ー

→ 2 時間 も 何も ない 荒野 に 停 まり 続けた

→ たった 1 分 が ものすごく 長く 感じられ → 時間 は はっきり と した 悪意 を もって 僕 は 上 を ゆっくり と 流れて いった → 僕 は きつく 歯 を くいしばり ただ とにかく 泣か ない ように 耐えて いる しか なかった → アカリ ...

→ どうか ... もう ...

→ 家 に ...

→ 帰って いて くれれば いい のに ...

→ 3 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 列車 到着 いたします → この 電車 は 雪 に ため しばらく 停車 します → アカリ

→ おいしい

→ そう ? 普通の ほうじ 茶 だ よ

→ ほうじ 茶 ? 初めて 飲んだ

→ ウソ ぜったい 飲んだ こと ある よ ! → そう かな ?

→ そうだ よ !

→ それ から これ ... 私 が 作った から 味 の 保証 は ない んだ けど

→ よかったら 食べて

→ ありがとう

→ お腹 すいて た んだ すごく → どうか な ?

→ 今 まで 食べた もの の 中 で 一 番 おいしい

→ 大袈裟だ なぁ

→ ホントだ よ

→ きっと お腹 が すいて たから よ

→ すう かな

→ そう よ

→ 私 も 食べよっと → 引越 し もう すぐだ よ ね → うん 来週 → 鹿児島 か ぁ

→ 遠いん だ

→ うん

→ 栃木 も 遠かった けど ね

→ ふ ふ 帰れ なく なっちゃった もん ね → そろそろ 閉めます よ もう 電車 も ない で すし → ハイ

→ ほん な 雪 です から お 気 を つけて → ハイ !

→ 見える ? あの 樹

→ 手紙 の 樹 ?

→ うん 桜 の 樹 → ねえ

→ まるで ... 雪 みたいじゃ ない ?

→ そうだ ね

→ その 瞬間 ー 永遠 と か 心 と か 魂 と か いう もの が どこ に ある の か

→ 分かった 気 が した

→ 13 年間 生きて きた こと の 全て を 分かちあえ たように 僕 は 思い それ から 次の 瞬間 ー → たまらなく ... 悲しく なった

→ アカリ の その 温もり を その 魂 を どのように 扱えば いい の か どこ に 持っていけば いい の か → それ が 僕 に は 分から なかった から だ

→ 僕たち は この先 も ずっと 一緒に いる こと は でき ない と

→ はっきり と 分かった

→ 僕たち の 前 に は いまだ 巨大 すぎる 人生 が 茫漠と した 時間 が どう しよう も なく 横たわって いた → でも ー

→ 僕 を 捉えた その 不安 は やがて ゆるやかに 溶けて いき

→ あと に は アカリ の 柔らかな 唇 だけ が 残って いた

→ その 夜 ー 僕たち は 畑 の 脇 に あった 小さな 納屋 で 過ごした

→ 古い 毛布 に くるまり 長い 時間 話し 続けて

→ いつの間にか 眠って いた

→ 朝 動き 始めた 電車 に 乗って → 僕 は アカリ と 別れた

→ あの ...

→ タカキ くん ...

→ ん ...?

→ タカキ くん は ...

→ きっと この先 も 大丈夫だ と 思う ぜったい !

→ ありがとう

→ アカリ も 元気で !

→ 手紙 書く よ ! 電話 も !

→ アカリ へ の 手紙 を なくして しまった こと を

→ 僕 は アカリ に 言わ なかった

→ あの キス の 前 と 後 と で は

→ 世界 の 何もかも が 変わって しまった ような 気 が した から だ

→ 彼女 を 守れる だけ の 力 が 欲しい と 強く 思った

→ それ だけ を 考え ながら 僕 は いつまでも 窓 の 外 の 景色 を 見 続けて いた

→ カナエ 放課後 も 行く の ? → うん お 姉ちゃん は 平気 ? → いい よ でも 勉強 も ちゃんと や んな さ いよ → は ー い

→ ふう ... よし

→ おはよう

→ おはよう 遠野 くん 今朝 も 早い ね → 澄 田 も 海 行って きた んだ ろ ? → 頑張る んだ ね

→ そんなに でも ... へ へ へ

→ また ね ! 遠野 くん

→ いい か ぁ ? そろそろ 決める 時期 だ ぞ

→ 月曜 まで に 提出 だ から な

→ ご 家族 と よく 相談 して 書いて くる ように

→ 佐々木 さん 東京 の 大学 行く みたい よ → さすが 私 の 熊本 の 短大 かな ~

→ カナエ は ?

→ え ?

うーん ...

→ 就職 だっけ ? → うーん ...

→ あんた ホン と 何も 考えて ない よ ね

→ 遠野 くん の こと だけ ね

→ あいつ ゼッタイ 東京 に 彼女 いる よ → そんな ぁ !

→ うっふ ふ ふ → まだ 上手く いか ない ?

→ うん どう しちゃった の かな ... → あんまり 悩ま ない 方 が いい よ その うち また 乗れる わ よ → お 姉ちゃん は 気楽で いい わ よ

→ な に 焦って ん の よ → このまま じゃ 卒業 まで 言え ない じゃ ない

→ あり が と お 姉ちゃん → 送って くわ よ

→ う うん カブ で 帰る ! → あっ澄 田 今 帰り ? → うん 遠野 くん も ? → ああ ...

→ 一緒に 帰ら ない ?

→ もし 私 に 犬 みたいな 尻尾 が あったら もっと 嬉し さ を 隠し きれ ず に ぶん ぶん と 振って しまった と 思う

→ ああ 私 は 犬 じゃ なくて 良かった な ~ なんて ホッと し ながら 思って → そういう こと に 我ながら バカだ なぁ と 呆れて

→ それ でも

→ 遠野 くん と の 帰り道 は 幸せだった

→ 最初 から 遠野 くん は 他の 男の子 たち と は どこ か 少し 違って いた

→ 遠野 貴樹 です

→ 親 の 仕事 で 転校 に は 慣れて います が この 島 に は まだ 慣れて いません → よろしく お 願い します → 中 2 の その 日 の うち に 好きに なって 彼 と 同じ 高校 に 行き たくて

→ ものすごく 勉強 を がんばって なんて か 合格 して

→ それ でも まだ 遠野 くん の 姿 を 見る たび に もっと 好きに なって いって しまって

→ それ が 怖くて 毎日 が 苦しくて → でも 会える たび に 幸せで 自分 でも どう しよう も なかった

→ 遠野 くん また 同じ の → ふ ふ これ ウマ いんだ よ → 澄 田 は なんか いつも 真剣だ よ ね ものすごく → うん !

→ 先 行って る よ

→ うん ...

→ これ 下さい

→ 90 円 ね

→ ハイ

→ いつも あり が と ね

→ お 帰り 何 買った の ? → うん 迷った んだ けど ... → 遠野 くん は 時々 誰 か に メール を 打って いて

→ その たび に 私 は それ が 私 あて の メール だったら いい の にって → どうしても いつも 思って しまう → カブ ! ただいま ー !

→ カブカブ 帰って きた よ ! → 町 役場 から お 知らせ します 次回 の 当番 スタンド は 坂井 の 農協 給油 ... → 3 年 1 組 の 澄 田 花 苗 さん 伊藤 先生 が お呼び です 生徒 指導 室 まで 来て 下さい

→ 遠野 の 彼女 じゃ ん

→ 彼女 と か じゃ ない よ

→ 学年 で 出して ない の は 澄 田 だけ だ ぞ

→ すみません ...

→ あの なぁ こう 言っちゃ 何 だ が そんなに 悩む ような こと じゃ ない んだ よ → 澄 田 先生 は 何て 言って る んだ ?

→ いえ ...

→ どうしても 決められ ない なら 県 内 の 短大 と か は どう な んだ ? → でも ...

→ お 姉ちゃん は 関係ない のに ...

→ だって ...

→ お 姉ちゃん に ねだって はじめた サーフィン も

→ 一 番 大切だ と 思う あの 人 の こと も → 私 は まだ 全然 ... → いつも あり が と ね

→ いえ それ じゃ あまた → 遠野 くん が いる 場所 に くる と 胸 の 奥 が ... 少し 苦しく なる

→ 遠野 くん !

→ 澄 田 ? どうした の よく 分かった ね → へ へ へ 遠野 くん の 単 車 が あった から 来ちゃった いい ? → うん そっか 嬉しい よ → 今日 は 単 車 置き場 で 会え なかった から さ

→ 私 も !

→ 彼 は 優しい

→ 時々 泣いて しまい そうに なる → ねえ 遠野 くん は 受験 ? → うん 東京 の 大学 受ける → 東京 ... そっか そう だ と 思った んだ → どうして ?

→ 遠く に 行き た そうだ もの なんとなく

→ 澄 田 は ?

→ う ~ ん ...

→ 私 明日 の こと も よく 分から ない の よ ね → だ ぶん 誰 だって そう だ よ → ワン !

遠野 くん も ?

→ もちろん

→ ぜんぜん 迷い なんて ない みたいに 見える → まさか 迷って ばかりな んだ 俺 → 出来る こと を なんとか やって る だけ 余裕 ない んだ

→ そっか ... → そう な んだ

→ 飛行機 ?

→ .. すごい

→ 時速 5 キロ なん だって

→ えっ? → 南種子 の 打ち上げ 場 まで

→ ああ ...

→ 今年 は 久しぶりに 打ち上げる んだ よ ね

→ ああ 太陽 系 の ずっと 奥 まで 行 くん だって → 何 年 も かけて

→ あんた カナエ の 進路 ちゃん と 相談 に 乗って や んな さ いよ → ぼんやり した 子 な んだ から

→ 大丈夫 よ あの 子 も もう 子供 じゃ ない んだ し → 私 も 昔 は ああ だった なぁ ... → ねえ カブ 遠野 くん も 分から ない んだって → 一緒な んだ ... 遠野 くん も

→ それ は 本当に ...

→ 想像 を 絶する くらい 孤独な 旅 である はずだ → 本当の 暗 閣 の 中 を ただ ひたむきに

→ 1 つ の 水素 原子 に さえ 滅多に 出会う こと なく

→ ただただ 深淵 に ある はず と 信じる 世界 の 秘密に 近づきたい ー 心 で → 僕たち は そう やって どこ まで 行く のだろう → どこ まで 行ける のだろう

→ 出す あて の ない メール を 打つ クセ が ついた の は いつ から だろう

→ カナエ あんた 進路 決めた の ? → う うん やっぱり まだ 分か ん ない けど で も いい の 決めた の ! → 1 つ ずつ 出来る こと から やる の 行って くる !

→ あの 日 から いくつか の 台風 が 通りすぎ その たび に 島 は 少しずつ す ず しく なって いった → サトウキビ を 揺らす 風 が かすかに 冷気 を 孕み

→ 空 が ほんの 少し 高く なり 雲 の 輪郭 が 優しく なって カブ に 乗る 同級 生 たち が 薄い シャンパー を 羽織る ように なった

→ 私 が 半年 ぶり に 波 の 上 に 立てた の は また 夏 が かろうじて のる そんな 10 月 の 半ば だった

→ 本日 夕方 から の 天候 は 晴れ 最大 風速 は 8 m の 予報 と なって います → 佐々木 さん 山田 から 告白 さ れた らしい よ → さすが だ な ー

→ あれ ? カナエ なんか 今日 嬉し そう ね → 遠野 くん と なんか あった の ?

→ ワン !

→ 私 だって 今日 こそ ...

→ 遠野 くん に 告白 する んだ

→ 波 に 乗れた 今日 言わ なければ この先 の きっと ... ずっと 言え ない → 澄 田

→ と ...

→ 遠野 くん ...

→ 今 帰り ?

→ そっか → じゃあ 一緒に 帰ろう よ → あれ 澄 田 今日 は もう 決まり ? → どうした の ?

→ ... しく し ないで

→ え ?

→ ごめん ... 何でもない の

→ 調子 悪い ?

→ うん ヘン だ なぁ → ダメ ?

→ うん ... プラグ の 寿命 な んじゃ ない の か な これ お下がり ?

→ うん お 姉ちゃん の → 加速 で 息継ぎ して なかった ?

→ して た かも

→ 今日 は ここ に 置か せて もらって 後 で 家 の 人 に 取り に きて もらい な よ

→ 今日 は 歩こう

→ えっ私 一 人 で 歩く よ ! 遠野 くん は 先 帰って → ここ まで きれば 近い から それ に ちょっと ... 歩きたい んだ → 遠野 くん ...

→ お 願い ...

→ どうした の ! → ごめん なんでもない の → ごめん ね ...

→ 澄 田 ...

→ お 願い だ から ... もう ...

→ 私 に ...

→ やさしく し ないで ....!

→ 必死に ただ 閣 雲 に 空 に 手 を 伸ばして あんなに 大きな カタマリ を 打ち上げて 気 の 遠く なる くらい むこうに ある 何 か 見つめて → 遠野 くん が 他の 人 と 違って 見える 理由 が

→ 少し だけ 分かった 気 が した

→ そして 同時に 遠野 くん は 私 を 見て なんて いない んだ と いう こと に → 私 は ハッキリ と 気づいた

→ だ から その 日 私 の 遠野 くん に 何も 言え なかった → 遠野 くん は 優しい けれど

→ とても 優しい けれど

→ でも ー

→ 遠野 くん は いつも

→ 私 の ずっと むこう ... もっと ずっと 遠く の 何 か を 見て いる

→ 私 が 遠野 くん に 望む こと は きっと 叶わ ない

→ それ でも ...

→ それ でも 私 は 遠野 くん の こと を きっと 明日 も 明後日 も その先 も やっぱり どう しよう も なく 好きな んだ と 思う

→ 遠野 くん の こと だけ を 想い ながら 泣き ながら 私 は 眼った → 今 振り返れば きっと あの 人 振り返る と 強く 感じた → 中央 . 総 武 最終 電車 東京 行き が 到着 します → お 正月 で いれば いい のに

→ うん ... でも 色々 準備 も ある から

→ そう だ な 彼 に も うまい もの 作って やれよ → 何 か あったら 電話 する の よ アカリ → 大丈夫 よ 来月 に は 式 で 会う んだ から そんなに 心配 し ないで → 寒い から もう 戻り な よ

→ ゆうべ 昔 の 夢 を 見た → 私 も 彼 も まだ 子供 だった → きっと 昨日 見つけた 手紙 の せい だ → 水野 さん

→ あ はい → ミーテイング いい かな ?

→ はい

→ ただ 生活 を して いる だけ で 哀しみ は そこ ここ に 積もる 日 に 干した シーツ に も 洗面 所 の 歯 ブラシ に も 携帯 電話 の 履歴 に も → あなた の こと は 今 でも 好きです と

→ 三 年間 付き合った 女性 は そう メール に 書いて いた

→ でも 私 たち は きっと 1000 回 も メール を やりとり して

→ 多分 心 は 1 センチ くらい しか 近づけません でした と → この 数 年間 とにかく 前 に 進み たくて 届か ない もの に 手 を 触れ たくて それ が 具体 的に 何 を 指す の かも → ほ とんと 脅迫 的 と も 言える ような その 想い が

→ どこ から 湧いて くる の かも 分から ず に 僕 は ただ働き 続け

→ 気づけば 日々 弾力 を 失って いく 心 が ひたすら 辛かった

→ そして ある 朝 かつて あれほど まで に 真剣で 切実だった 思い が

→ 綺麗に 失われて る こと に 僕 は 気づき もう 限界 だ と 知った とき 会社 を 辞めた → 昨日 夢 を 見た → ずっと 昔 の 夢

→ その 夢 の 中 で は 僕たち は まだ 13 歳 で → そこ は 一面の 雪 に 覆わ れた 広い 田園 で 人家 の 灯り は ずっと 遠く に まばらに 見える だけ で → 振り 積もる 新雪 に は 私 たち の 歩いて きた 足跡 しか なかった

→ そう やって いつか また 一緒に 桜 を 見る こと が 出来る と 私 も 彼 も なんの 迷い も なく そう 思って いた


秒速 5センチメートル びょうそく| 5 Zentimeter pro Sekunde 5 Centimeters per second 5 centimètres par seconde 5 centímetros por segundo 5 сантиметров в секунду Saniyede 5 santimetre. 每秒 5 厘米 每秒 5 厘米

→ ねえ Hey...

→ 秒速 5 センチ な んだって びょうそく|せんち||ん だって → It ’s 5 cm per second → えっ何 ? えっ なん Huh? What is? → 桜 の 花 の 落ちる スピード 秒速 5 センチメートル さくら||か||おちる|すぴーど|びょうそく| The speed at which cherry blossoms fall. It's five centimeters per second.

→ ふうん

→ アカリ そういう こと よく 知って る よ ね ||||しって||| You sure know a lot of stuff like that, Akari. → ふ ふん

→ ねえ なんだか まるで 雪 みたいじゃ ない ? |||ゆき|| Say... don't you think it kinda looks like snow? → すう かな ー ||- I guess...

→ ねえ !

→ 待って よ ! まって|

→ アカリ ! Hey! Wait up!

→ タカキ くん

→ 来年 も 一緒に 桜 見 れる と いいね ! らいねん||いっしょに|さくら|み||| Akari! → 遠野 タカキ さま へたいへん ご無沙汰 して おります とおの|||へ たいへん|ごぶさた||おり ます Takaki-kun! → こちら の 夏 も 暑い けれど 東京 に 比べれば ずっと 過ごし やすい です ||なつ||あつい||とうきょう||くらべれば||すごし|| It'd be great if we could watch the cherry blossoms fall again together next year. → でも 今に して 思えば 私 は 東京 の あの ムシ 暑い 夏 も 好きでした |いまに||おもえば|わたくし||とうきょう|||むし|あつい|なつ||すきでした → But now that I think about it, I loved those hot, humid summers in Tokyo.

→ 溶けて しまい そうに 熱い アスファルト も 陽炎 の むこうの 高層 ビル も デパート や 地下鉄 の 寒い くらい の 冷房 も とけて||そう に|あつい|||かげろう|||こうそう|びる||でぱーと||ちかてつ||さむい|||れいぼう| "Summer's pretty hot around here, but compared to Tokyo, it's so much milder."

→ 私 たち が 最後に 会った の は 小学校 の 卒業 式 でした から わたくし|||さいごに|あった|||しょうがっこう||そつぎょう|しき|| → The last time we met was at our elementary school graduation ceremony.

→ あれ から もう 半年 です |||はんとし| "But when I think about it, I liked Tokyo's hot, humid summers, too."

→ ねえ タカキ くん 私 の こと 覚えて います か ? |||わたくし|||おぼえて|い ます| "The melting-hot asphalt," → 前略 タカキ くん へ ぜんりゃく||| "and the freezing air-conditioning in department stores and on subways." → お 返事 ありがとう 嬉しかった です |へんじ||うれしかった| "The last time we were together was at our elementary school graduation." → もう すっかり 秋 です ね こちら は 紅葉 が キレイ です ||あき|||||こうよう||| "It's already been half a year since."

→ 今年 最初の セーター を おととい 私 は 出しました ことし|さいしょの|せーたー|||わたくし||だし ました "So, Takaki-kun..." → 遠野 くん ! とおの| "...do you still remember me?."

→ 先輩 せんぱい "Dear Takaki-kun..."

→ 何 ? なん "Thanks for replying." アブレター ? "It's already well into autumn and the leaves are turning beautiful colors."

→ 違います よ ! ちがい ます| "I had to pull out a sweater the day before yesterday for the first time this year." → ごめん ね 全部 お 願い しちゃって ||ぜんぶ||ねがい|しちゃ って Tohno-kun. → いえ すぐ 終わりました から ||おわり ました| Senpai. → ありがとう ねっ転校 しちゃ うって ホント ? |ねっ てんこう|||ほんと → Hey, thanks... did you really say you're transferring? → あっはい 3 学期 いっぱいです あっ はい|がっき| That's not it. → どこ ? Sorry for having asked you to do all that.

→ 鹿児島 です 親 の 都合 で かごしま||おや||つごう| No problem, I finished quickly. → そう か ー 寂しく なる なぁ ||-|さびしく|| Thanks. So, is it true that you'll be transferring schools? → 最近 は 部活 で 朝 が 早い ので 今 この 手紙 は 電車 で 書いて います さいきん||ぶかつ||あさ||はやい||いま||てがみ||でんしゃ||かいて|い ます Ah, yes, at the end of the year. → この 前 髪 を 切りました |ぜん|かみ||きり ました Kagoshima. Because of my parents. → 耳 が 出る くらい 短く しちゃった から みみ||でる||みじかく|しちゃ った| → I made it so short that my ears would stick out. → もし 会って も 私って 分から ない かも しれません ね |あって||わたくし って|わから|||しれ ませ ん| I see... it'll be lonely around here without you. → ただいま ー |- "I'm actually writing this letter on the train because practice has been starting really early lately."

→ お かえり "I had my hair cut the other day."

→ タカキ くん も きっと 少しずつ 変わって いく のでしょう ね ||||すこしずつ|かわって||| "It's so short you can even see my ears..." → 拝啓 寒い 日 が 続きます が お 元気です か ? はいけい|さむい|ひ||つづき ます|||げんきです| "...so you probably wouldn't even recognize me if you saw me." → こちら は もう 何度 か 雪 が 降りました |||なんど||ゆき||ふり ました → It's already snowed here several times. → 私 は その たび に ものすごい 重 装備 で 学校 に ツ 通って います わたくし||||||おも|そうび||がっこう|||かよって|い ます I'm back. → 東京 は 雪 は まだ だ よ ね とうきょう||ゆき||||| "I bet you're changing little by little too, Takaki-kun."

→ 引越 して きて から も つい クセ で 東京 のぶん の 天気 予報 まで 見て しまいます ひっこし||||||くせ||とうきょう|||てんき|よほう||みて|しまい ます "Dear Takaki-kun..." → 雨 でも 降ら ねえ か なぁ あめ||ふら||| "It's already snowed a number of times here."

→ でも 居 内 でも キツイ ぜ |い|うち||| "Every time it does, I wrap myself in layers of clothes when I go to school."

→ なぁ 栃木って 行った こと ある か ? |とちぎ って|おこなった||| "It hasn't snowed in Tokyo yet, right?." → ハァ ? "Even though I moved away..." どこ ? "...I still look at Tokyo's weather forecast out of habit."

→ 栃木 とちぎ

→ ない Wish it would rain one of these days...

→ どう やって行く の か な ? |やっていく||| It wouldn't be any better indoors.

→ さ ぁ ... 新幹線 と か ? ||しんかんせん|| Say... have you guys ever been to Tochigi?

→ 遠い よ な とおい|| Huh? Where?

→ 一 年 ! ひと|とし Tochigi.

→ ハイ ! はい Nope.

→ ラスト 三 周 ! らすと|みっ|しゅう → The last three laps!

→ ファイト ! ふぁいと No clue. オーッ ! It's a long way...

ファイト ! ふぁいと Freshmen! オーッ ! Yes?!

→ 今度 は タカキ くん の 転校 が 決まった と いう こと 驚きました こんど|||||てんこう||きまった||||おどろき ました Onto the final three laps! Fight! Fight! → お互いに 昔 から 転校 に は 慣れて いる わけです が おたがいに|むかし||てんこう|||なれて||| → We are both used to changing schools from the past.

→ それにしても 鹿児島 だ なんて |かごしま|| "I was surprised to hear that you were the one transferring schools this time."

→ % 今度 は ちょっと 遠い よ ね こんど|||とおい|| → This time it's a little far.

→ いざ と いう 時 に 電車 に 乗って 会い に 行ける ような 距離 で は なく なって しまう の は |||じ||でんしゃ||のって|あい||いける||きょり||||||| "But still... Kagoshima. That's kind of far away, isn't it?"

→ やっぱり ...

→ 少し ... ちょっと 寂しい です すこし||さびしい| "It's no longer a distance where I can just jump on a train and see you whenever I want..."

→ どうか どう か タカキ くん が 元気で います ように ||||||げんきで|い ます| → 前略 タカキ くん へ ぜんりゃく||| "So... I guess... that makes me feel a little lonely." → 3 月 4 日 の 約束 とても 嬉しい です つき|ひ||やくそく||うれしい| → I am very happy with the promise of March 4. → 会う の は もう 一 年 ぶり です ね あう||||ひと|とし||| → なんだか 緊張 して しまいます |きんちょう||しまい ます "Please be well, Takaki-kun." → うち の 近く に 大きな 桜 の 樹 が あって ||ちかく||おおきな|さくら||き|| "Dear Takaki-kun..."

→ 春 に は そこ でも たぶん はる||||| "I'm so happy we'll see each other on March 4th." → 花びら が 秒速 5 センチ で 地上 に 降って います はなびら||びょうそく|せんち||ちじょう||ふって|い ます "It'll be just about a year since we last met, won't it?" → タカキ くん と 一緒に |||いっしょに "For some reason, I feel kind of nervous."

→ 春 も やってきて くれれば いい の にって 思います はる||||||に って|おもい ます "There's a really large cherry tree close to my house, so I bet that in the spring..." → 予報 で は 夕方 から 雪 に なるって え ~っ寒い と 思った よ もう 3 月 な のに な よほう|||ゆうがた||ゆき||なる って||っ さむい||おもった|||つき||| → 風邪 引き そうだ よ ね かぜ|ひき|そう だ|| "...the petals will fall at five centimeters per second."

→ ねっあったかい もの 飲んで こう よ 下北 で 降りて さ ねっ あったかい||のんで|||しもきた||おりて| "I'm really hoping the spring will come with you that day, Takaki-kun." → そうだ な そう だ|

→ 遠野 とおの The forecast said it's supposed to turn to snow by tonight.

→ 部活 行こう ぜ ぶかつ|いこう| → Let's go clubbing!

→ あぁ Yeah, it feels like I'm gonna catch a cold.

→ あの さ 俺 今日 ちょっと 部活 ダメな んだ ||おれ|きょう||ぶかつ|だめな| → 引越 し の 準備 か ? ひっこし|||じゅんび| Yeah.

→ そんな トコ 悪い な ||わるい| → 私 の 駅 まで 来て くれる の は とても 助かる のです けれど わたくし||えき||きて|||||たすかる||

→ 遠い ので どう か 気 を つけて きて 下さい とおい||||き||||ください Right...

→ 約束 の 夜 7 時 に 駅 の 待合室 で 待って います やくそく||よ|じ||えき||まちあいしつ||まって|い ます About that... I don't think I can make it today. → アカリ と の 約束 の 当日 は 昼 すぎ から 雪 に なった |||やくそく||とうじつ||ひる|||ゆき|| Getting ready to move?

→ あっねえ タカキ くん ! あっ ねえ|| Something like that. → ねこ ! "I'm glad you're coming all the way out to the station closest to me..." チョビ だ ! "...but it's a long trip, so please be careful."

→ こいつ いつも ここ に いる ね "I'll be waiting for you in the station's waiting room at 7:00 that night." → でも 今日 は 1 人 みたい |きょう||じん| On the day Akari and I were to meet, the rain turned to snow in the afternoon.

→ ミミ は どうした の ? 1 人 じゃ 寂し いよ ねぇ じん||さびし|| It's that cat, Chobi.

→ あの 本 どう ? |ほん| He's always lying here. → なかなか 昨日 一晩 で 40億 年 分 読んじゃった ! |きのう|ひとばん||おく|とし|ぶん|よんじゃ った But it looks like he's all by himself today. → どの あたり ? What happened to your friend Mimi? It must be lonely all by yourself, huh?

→ アノマロカリス が 出て くる あたり ||でて|| → The place where Anomalocaris appears.

→ カンブリア 紀 ! |き How's that book so far?

→ 私 ハルキゲニア が 好きだ な こんな の わたくし|||すきだ||| I really like it. → まあ 似て る かも |にて|| Where are you at now? → タカキ くん は 何の ファン ? |||なんの|ふぁん Just about when the Anomalocaris start showing up.

→ オパビニア かな

→ あー 眼 が 5 つ ある ヒト だ よ ね ! |がん||||ひと||| I really like the Hallucigenia. They look like this! → 僕 と アカリ は 精神 的に どこ か よく 似て いた と 思う ぼく||||せいしん|てきに||||にて|||おもう Yeah, something like that...

→ 僕 が 東京 に 転校 して きた 1 年 後 に ー アカリ が 同じ クラス に 転校 して きた ぼく||とうきょう||てんこう|||とし|あと||-|||おなじ|くらす||てんこう|| Which one do you like, Takaki-kun?

→ まだ 体 が 小さく 病気 がちだった 僕ら は グランド より は 図書 館 が 好きで |からだ||ちいさく|びょうき||ぼくら||ぐらんど|||としょ|かん||すきで The Opabinia, maybe?

→ だ から 僕たち は ごく 自然に 仲良く なり ||ぼくたち|||しぜんに|なかよく|

→ その せい で クラスメイト から からかわ れる こと も あった けれど I think Akari and I were a lot alike somehow.

→ でも ー |- Exactly one year after I transferred to Tokyo...

→ お互い が いれば 不思議に そういう こと は あまり 怖く は なかった おたがい|||ふしぎに|||||こわく|| A new friend just transferred to our school. This is Tohno Takaki-kun.

→ 僕たち は いずれ 同じ 中学 に 通い ぼくたち|||おなじ|ちゅうがく||かよい → この先 も ずっと 一緒に だ と このさき|||いっしょに|| ...the two of us preferred the library over playing on the sportsfield.

→ どうして だとう そう 思って いた |||おもって| Naturally, we became friends... → 新宿 新宿 終点 です しんじゅく|しんじゅく|しゅうてん| ...and because of that, there were times when our classmates would tease us. But... → お 振り の お 客 様 は ... JR 線 京王 線 地下鉄 は お 乗り換え です ... |ふり|||きゃく|さま||jr|せん|けいおう|せん|ちかてつ|||のりかえ| ...and because of that, there were times when our classmates would tease us. But... → 新宿 駅 に 1 人 で来た の は 初めて で しんじゅく|えき||じん|できた|||はじめて| Ooh! There he is!

→ これ から 乗る 路線 も 僕 に は すべて 初めて だった ||のる|ろせん||ぼく||||はじめて| And yet, for some reason, I thought we'd end up going to the same middle school...

→ ドキドキ して いた どきどき|| ...and stay together, just as we were...

→ これ から 僕 は アカリ に 会う んだ ||ぼく||||あう| ...from that point on. → この 前 の 子 どう だった ? |ぜん||こ|| → How was the last one? → 誰 ? だれ

→ ほら 西 商 の ! |にし|しょう| ...JR Line, Heiou Line, subway... → え ~? It was the first time I'd gone to Shinjuku Station alone... 趣味 悪く ない ? しゅみ|わるく| ...and all the lines I would soon be riding would also be firsts for me.

→ ... 快速 列車 待ち合わせ の ため この 列車 は 4 分 ほど 停車 します かいそく|れっしゃ|まちあわせ||||れっしゃ||ぶん||ていしゃ|し ます → 与野 本町 大宮 まで お 急ぎ の 方 は 向かい の ... よの|ほんまち|おおみや|||いそぎ||かた||むかい| My heart was pounding.

→ あの ... 篠原 と 申します けど |しのはら||もうし ます| I was going to see Akari again. → あの タカキ くん いらっしゃいます か ? |||いらっしゃい ます| How did it go with that guy? → アカリ ちゃん よ Who?

→ え ... 転校 ? |てんこう You know, that Nisshou boy.

→ 西中 は どう すんだ ? にしなか||| Are you kidding? His tastes were a little gross... せっかく 受かった のに |うかった| In order to connect with the express train, this train will be stopping for 4 minutes.

→ 栃木 の 公立 に 手続き するって ... とちぎ||こうりつ||てつづき|する って Those passengers who wish to quickly reach Yonohonmachi and Oomiya please board... → ごめん ね

→ いや ... アカリ が 謝る こと な いけ で |||あやまる|||| Umm, is Takaki-kun there?

→ 葛飾 の 叔母 さんち から 通いたいって 言った んだ けど かつしか||おば|||かよい たい って|いった|| It's Akari-chan. → もっと 大きく なって から じゃ ない と ダメ だって ... |おおきく||||||だめ| Huh? You're transferring schools?

→ わかった What about Nishi Middle School? You went through all that trouble to get accepted.

→ もう いい よ They said they'd handle the paperwork of transferring me to the public school in Tochigi...

→ もう いい

→ ごめん ...

→ 耳 が 痛く なる くらい 押しあてた 受話器 ご しに みみ||いたく|||おしあてた|じゅわき|| I told them I still wanted to go from my aunt's house in Katsushika, but... → アカリ が 傷つく の が 手 に とる ように 分かった でも ... ||きずつく|||て||||わかった| → I could see how Akari was hurting, but... → どう しよう も なかった I understand... you don't have to say anything else.

→ 乗り換え の ターミナル 駅 は 帰宅 を 始めた 人々 で 混 み合って いて のりかえ||たーみなる|えき||きたく||はじめた|ひとびと||こん|みあって|

→ 誰 の 靴 も 雪 の 水 を 吸って ぐっしょり 濡れて いて だれ||くつ||ゆき||すい||すって||ぬれて| That's enough.

→ 空気 は ー くうき||- I'm sorry...

→ 雪 の 日 の 都市 独特の 匂い に 満ちて 冷たかった ゆき||ひ||とし|どくとくの|におい||みちて|つめたかった → お 客 様 に お 知らせ いたします |きゃく|さま|||しらせ|いたし ます ...Akari's own pain was palpable. → 宇都宮 線 小山 宇都宮 方面 行き 列車 は ただいま 雪 の ため 到着 が 8 分 ほど 遅れて おります うつのみや|せん|こやま|うつのみや|ほうめん|いき|れっしゃ|||ゆき|||とうちゃく||ぶん||おくれて|おり ます → お 急ぎ の ところ お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が |いそぎ||||きゃく|さま|||たいへん||めいわく|||いたし ます| The terminal I transferred at was crowded with people heading home... → その 瞬間 まで 僕 は 電車 が 遅れる なんて いう 可能 性 を |しゅんかん||ぼく||でんしゃ||おくれる|||かのう|せい| ...and everyone's shoes were soaked from the snow. → 考え も し なかった かんがえ||| The frigid air was saturated with the classic smell of a snowy city day.

→ 不安 が 急に 大きく なった ふあん||きゅうに|おおきく|

→ ただいま この 電車 は 雪 の ため 10 分 ほど 遅れて 運行 して おります ||でんしゃ||ゆき|||ぶん||おくれて|うんこう||おり ます → お 急ぎ の ところ 列車 遅れて おります こと お 詫び いたします |いそぎ|||れっしゃ|おくれて|おり ます|||わび|いたし ます Due to the snowy weather conditions, the Utsunomiya Line outbound trains traveling to Oomiya and Utsunomiya... → 大宮 駅 を 過ぎて しばらく する と 風景 から は あっという間 に 建物 が 少なく なった おおみや|えき||すぎて||||ふうけい|||あっというま||たてもの||すくなく| ...will be experiencing an 8 minute delay in arrival.

→ 次 は 久喜 久喜 つぎ||くき|くき We apologize for any inconvenience in your busy day. → 到着 が 大変 遅れました こと お 詫び 申し上げます とうちゃく||たいへん|おくれ ました|||わび|もうしあげ ます Until that moment, I hadn't even considered the possibility of one of my trains being late. We apologize for any inconvenience in your busy day. → 東 武 伊勢崎 線 に お 乗り換え の 方 は 5 番 出口 に お まわり 下さい ひがし|ぶ|いせさき|せん|||のりかえ||かた||ばん|でぐち||||ください

→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します こうぞく|れっしゃ||おくれて||||れっしゃ||とうえき||ぶん||ていしゃ|し ます My creeping anxiety suddenly became much greater. → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が 今 しばらく お 待ち 下さいます よう お 願い いたします |いそぎ|||たいへん||めいわく|||いたし ます||いま|||まち|くださ い ます|||ねがい|いたし ます This train is currently running 10 minutes late due to the snowy weather conditions. → すみません We apologize for any inconvenience in your busy day.

→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します こうぞく|れっしゃ||おくれて||||れっしゃ||とうえき||ぶん||ていしゃ|し ます → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 を お かけ いたします が ... |いそぎ|||たいへん||めいわく||||いたし ます| → 野木 野木 のぎ|のぎ Next stop is Kuki. Kuki. → お 客 様 に お 断り と お 詫び 申し上げます 後続 列車 遅延 の ため この 列車 は 当 駅 で しばらく の 間 停車 します |きゃく|さま|||ことわり|||わび|もうしあげ ます|こうぞく|れっしゃ|ちえん||||れっしゃ||とう|えき||||あいだ|ていしゃ|し ます We apologize for our terribly late arrival. → お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 ... |いそぎ|||たいへん||めいわく Those passengers transferring to the Tobu Isesaki Line, please make your way around to Exit #5.

→ 駅 と 駅 と の 間 は 信じられ ない くらい 離れて いて えき||えき|||あいだ||しんじ られ|||はなれて| Due to the next train's delay, this train will be stopping at this station for the next 10 minutes. → 電車 は 一 駅 ごと に 信じられ ない くらい 長い 間 停車 した でんしゃ||ひと|えき|||しんじ られ|||ながい|あいだ|ていしゃ| → 窓 の 外 の 見た こと も ない ような 雪 に 荒野 も じわじわ と 流れて いく 時間 も 痛い ような 空腹 も 僕 を ますます 心細く さ せて いった まど||がい||みた|||||ゆき||こうや||||ながれて||じかん||いたい||くうふく||ぼく|||こころぼそく|||

→ 約束 の 時間 を 過ぎて やくそく||じかん||すぎて

→ 今頃 アカリ は きっと 不安に なり 始めて いる と 思う いまごろ||||ふあんに||はじめて|||おもう

→ あの 日 ... あの 電話 の 日 ー 僕 より も ずっと 大きな 不安 を 抱えて いる はずの アカリ に 対して 優しい 言葉 を かける こと の でき なかった 自分 が ひどく 恥ずかしかった |ひ||でんわ||ひ|-|ぼく||||おおきな|ふあん||かかえて|||||たいして|やさしい|ことば|||||||じぶん|||はずかしかった Due to the next train's delay, this train will be stopping at this station for the next 10 minutes. → じゃあ

→ 今日 で ショナラ だ ね きょう|||| We apologize for any inconvenience in your busy day, and...

→ アカリ から の 最初の 手紙 が 届いた の は それ から 半年 後 |||さいしょの|てがみ||とどいた|||||はんとし|あと This is Nogi. Nogi.

→ 中 1 の 夏 だった なか||なつ|

→ 彼女 から の 文面 は すべて 覚えた かのじょ|||ぶんめん|||おぼえた Due to the continuing delay of the following train, this train will be stopping at this station for an extended period of time.

→ 約束 の 今日 まで 2 週間 かけて 僕 は アカリ に 渡す ため の 手紙 を 書いた やくそく||きょう||しゅうかん||ぼく||||わたす|||てがみ||かいた We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding.

→ アカリ に 伝え なければ いけない こと 聞いて 欲しい こと が ||つたえ||||きいて|ほしい|| The stations seemed unbelievably far apart... We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding.

→ 本当に 僕 に は たくさん あった ほんとうに|ぼく|||| We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding. → 大変 お 待た せ いたしました まもなく 宇都宮 行き 発車 いたします たいへん||また||いたし ました||うつのみや|いき|はっしゃ|いたし ます The wilderness on the other side of the window seemed like nothing I'd ever experienced before. → 小山 小山 こやま|こやま The slowly ticking time... → 東北 新幹線 ご 利用 の 方 は お 乗り換え です とうほく|しんかんせん||りよう||かた|||のりかえ| ...continued to dampen my spirits.

→ 東北 新幹線 下り 盛岡 方面 お 乗り換え の 方 は 1 番 線 とうほく|しんかんせん|くだり|もりおか|ほうめん||のりかえ||かた||ばん|せん

→ 上り 東京 方面 お 乗り換え の 方 は 5 番 線 へ お まわり 下さい のぼり|とうきょう|ほうめん||のりかえ||かた||ばん|せん||||ください

→ お 客 様 に お 知らせ いたします ただいま 両 毛 線 は 雪 の ため 大幅な 遅れ を もって 運転 して おります |きゃく|さま|||しらせ|いたし ます||りょう|け|せん||ゆき|||おおはばな|おくれ|||うんてん||おり ます → お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 を お かけ いたして おります |きゃく|さま|||たいへん||めいわく|||||おり ます → 列車 到着 まで 今 しばらく お 待ち 下さい れっしゃ|とうちゃく||いま|||まち|ください

→ とにかく アカリ の 待つ 駅 に 向かう しか なかった |||まつ|えき||むかう||

→ 8 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 上り 電車 が 参ります ばん|せん|あしきき|まえばし|ほうめん|たかさき|いき|のぼり|でんしゃ||まいり ます → 白線 の 内側 に 下がって ... はくせん||うちがわ||さがって

→ お 客 様 に ご 案内 いたします ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします |きゃく|さま|||あんない|いたし ます||こうせつ|||だいや||みだれ|||しょうしょう|ていしゃ|いたし ます → お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が |いそぎ|||たいへん|きょうしゅく|| → 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません げんざい|||ふっきゅう||め|しょ||たって|おり ませ ん → 繰り返します くりかえし ます → ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします |こうせつ|||だいや||みだれ|||しょうしょう|ていしゃ|いたし ます → お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が |いそぎ|||たいへん|きょうしゅく|| → 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません げんざい|||ふっきゅう||め|しょ||たって|おり ませ ん → タカキ くん お 元気です か ? |||げんきです| → 部活 で 朝 が 早い ので この 手紙 は 電車 で 書いて います ぶかつ||あさ||はやい|||てがみ||でんしゃ||かいて|い ます → 手紙 から 想像 する アカリ は なぜ か いつも 1 人 だった てがみ||そうぞう|||||||じん|

→ 電車 は それ から 結局 ー でんしゃ||||けっきょく|-

→ 2 時間 も 何も ない 荒野 に 停 まり 続けた じかん||なにも||こうや||てい||つづけた

→ たった 1 分 が ものすごく 長く 感じられ |ぶん|||ながく|かんじ られ → 時間 は はっきり と した 悪意 を もって 僕 は 上 を ゆっくり と 流れて いった じかん|||||あくい|||ぼく||うえ||||ながれて| → 僕 は きつく 歯 を くいしばり ただ とにかく 泣か ない ように 耐えて いる しか なかった ぼく|||は|||||なか|||たえて||| → アカリ ...

→ どうか ... もう ...

→ 家 に ... いえ|

→ 帰って いて くれれば いい のに ... かえって||||

→ 3 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 列車 到着 いたします ばん|せん|あしきき|まえばし|ほうめん|たかさき|いき|れっしゃ|とうちゃく|いたし ます → この 電車 は 雪 に ため しばらく 停車 します |でんしゃ||ゆき||||ていしゃ|し ます → アカリ

→ おいしい

→ そう ? 普通の ほうじ 茶 だ よ ふつうの||ちゃ||

→ ほうじ 茶 ? |ちゃ 初めて 飲んだ はじめて|のんだ

→ ウソ ぜったい 飲んだ こと ある よ ! うそ||のんだ||| → そう かな ?

→ そうだ よ ! そう だ|

→ それ から これ ... 私 が 作った から 味 の 保証 は ない んだ けど |||わたくし||つくった||あじ||ほしょう||||

→ よかったら 食べて |たべて

→ ありがとう

→ お腹 すいて た んだ すごく おなか|||| → どうか な ?

→ 今 まで 食べた もの の 中 で 一 番 おいしい いま||たべた|||なか||ひと|ばん|

→ 大袈裟だ なぁ おおげさだ|

→ ホントだ よ ほんとだ|

→ きっと お腹 が すいて たから よ |おなか||||

→ すう かな

→ そう よ

→ 私 も 食べよっと わたくし||たべよ っと → 引越 し もう すぐだ よ ね ひっこし||||| → うん 来週 |らいしゅう → 鹿児島 か ぁ かごしま||

→ 遠いん だ えんいん|

→ うん

→ 栃木 も 遠かった けど ね とちぎ||とおかった||

→ ふ ふ 帰れ なく なっちゃった もん ね ||かえれ||なっちゃ った|| → そろそろ 閉めます よ もう 電車 も ない で すし |しめ ます|||でんしゃ|||| → ハイ はい

→ ほん な 雪 です から お 気 を つけて ||ゆき||||き|| → ハイ ! はい

→ 見える ? みえる あの 樹 |き

→ 手紙 の 樹 ? てがみ||き

→ うん 桜 の 樹 |さくら||き → ねえ

→ まるで ... 雪 みたいじゃ ない ? |ゆき||

→ そうだ ね そう だ|

→ その 瞬間 ー 永遠 と か 心 と か 魂 と か いう もの が どこ に ある の か |しゅんかん|-|えいえん|||こころ|||たましい||||||||||

→ 分かった 気 が した わかった|き||

→ 13 年間 生きて きた こと の 全て を 分かちあえ たように 僕 は 思い それ から 次の 瞬間 ー ねんかん|いきて||||すべて||わかちあえ||ぼく||おもい|||つぎの|しゅんかん|- → たまらなく ... 悲しく なった |かなしく|

→ アカリ の その 温もり を その 魂 を どのように 扱えば いい の か どこ に 持っていけば いい の か |||ぬくもり|||たましい|||あつかえば||||||もっていけば||| → それ が 僕 に は 分から なかった から だ ||ぼく|||わから|||

→ 僕たち は この先 も ずっと 一緒に いる こと は でき ない と ぼくたち||このさき|||いっしょに||||||

→ はっきり と 分かった ||わかった

→ 僕たち の 前 に は いまだ 巨大 すぎる 人生 が 茫漠と した 時間 が どう しよう も なく 横たわって いた ぼくたち||ぜん||||きょだい||じんせい||ぼうばくと||じかん||||||よこたわって| → でも ー |-

→ 僕 を 捉えた その 不安 は やがて ゆるやかに 溶けて いき ぼく||とらえた||ふあん||||とけて|

→ あと に は アカリ の 柔らかな 唇 だけ が 残って いた |||||やわらかな|くちびる|||のこって|

→ その 夜 ー 僕たち は 畑 の 脇 に あった 小さな 納屋 で 過ごした |よ|-|ぼくたち||はたけ||わき|||ちいさな|なや||すごした

→ 古い 毛布 に くるまり 長い 時間 話し 続けて ふるい|もうふ|||ながい|じかん|はなし|つづけて

→ いつの間にか 眠って いた いつのまにか|ねむって|

→ 朝 動き 始めた 電車 に 乗って あさ|うごき|はじめた|でんしゃ||のって → 僕 は アカリ と 別れた ぼく||||わかれた

→ あの ...

→ タカキ くん ...

→ ん ...?

→ タカキ くん は ...

→ きっと この先 も 大丈夫だ と 思う ぜったい ! |このさき||だいじょうぶだ||おもう|

→ ありがとう

→ アカリ も 元気で ! ||げんきで

→ 手紙 書く よ ! てがみ|かく| 電話 も ! でんわ|

→ アカリ へ の 手紙 を なくして しまった こと を |||てがみ|||||

→ 僕 は アカリ に 言わ なかった ぼく||||いわ|

→ あの キス の 前 と 後 と で は |きす||ぜん||あと|||

→ 世界 の 何もかも が 変わって しまった ような 気 が した から だ せかい||なにもかも||かわって|||き||||

→ 彼女 を 守れる だけ の 力 が 欲しい と 強く 思った かのじょ||まもれる|||ちから||ほしい||つよく|おもった

→ それ だけ を 考え ながら 僕 は いつまでも 窓 の 外 の 景色 を 見 続けて いた |||かんがえ||ぼく|||まど||がい||けしき||み|つづけて|

→ カナエ 放課後 も 行く の ? |ほうかご||いく| → うん お 姉ちゃん は 平気 ? ||ねえちゃん||へいき → いい よ でも 勉強 も ちゃんと や んな さ いよ |||べんきょう|||||| → は ー い |-|

→ ふう ... よし

→ おはよう

→ おはよう 遠野 くん 今朝 も 早い ね |とおの||けさ||はやい| → 澄 田 も 海 行って きた んだ ろ ? きよし|た||うみ|おこなって||| → 頑張る んだ ね がんばる||

→ そんなに でも ... へ へ へ

→ また ね ! 遠野 くん とおの|

→ いい か ぁ ? そろそろ 決める 時期 だ ぞ |きめる|じき||

→ 月曜 まで に 提出 だ から な げつよう|||ていしゅつ|||

→ ご 家族 と よく 相談 して 書いて くる ように |かぞく|||そうだん||かいて||

→ 佐々木 さん 東京 の 大学 行く みたい よ ささき||とうきょう||だいがく|いく|| → さすが 私 の 熊本 の 短大 かな ~ |わたくし||くまもと||たんだい|

→ カナエ は ?

→ え ?

うーん ...

→ 就職 だっけ ? しゅうしょく|だ っけ → うーん ...

→ あんた ホン と 何も 考えて ない よ ね |ほん||なにも|かんがえて|||

→ 遠野 くん の こと だけ ね とおの|||||

→ あいつ ゼッタイ 東京 に 彼女 いる よ ||とうきょう||かのじょ|| → そんな ぁ !

→ うっふ ふ ふ う っふ|| → まだ 上手く いか ない ? |うまく||

→ うん どう しちゃった の かな ... ||しちゃ った|| → あんまり 悩ま ない 方 が いい よ その うち また 乗れる わ よ |なやま||かた|||||||のれる|| → お 姉ちゃん は 気楽で いい わ よ |ねえちゃん||きらくで|||

→ な に 焦って ん の よ ||あせって||| → このまま じゃ 卒業 まで 言え ない じゃ ない ||そつぎょう||いえ|||

→ あり が と お 姉ちゃん ||||ねえちゃん → 送って くわ よ おくって||

→ う うん カブ で 帰る ! ||かぶ||かえる → あっ澄 田 今 帰り ? あっ す|た|いま|かえり → うん 遠野 くん も ? |とおの|| → ああ ...

→ 一緒に 帰ら ない ? いっしょに|かえら|

→ もし 私 に 犬 みたいな 尻尾 が あったら もっと 嬉し さ を 隠し きれ ず に ぶん ぶん と 振って しまった と 思う |わたくし||いぬ||しっぽ||||うれし|||かくし|||||||ふって|||おもう

→ ああ 私 は 犬 じゃ なくて 良かった な ~ なんて ホッと し ながら 思って |わたくし||いぬ|||よかった|||ほっと|||おもって → そういう こと に 我ながら バカだ なぁ と 呆れて |||われながら|ばかだ|||あきれて

→ それ でも

→ 遠野 くん と の 帰り道 は 幸せだった とおの||||かえりみち||しあわせだった

→ 最初 から 遠野 くん は 他の 男の子 たち と は どこ か 少し 違って いた さいしょ||とおの|||たの|おとこのこ||||||すこし|ちがって|

→ 遠野 貴樹 です とおの|たかき|

→ 親 の 仕事 で 転校 に は 慣れて います が この 島 に は まだ 慣れて いません おや||しごと||てんこう|||なれて|い ます|||しま||||なれて|いま せ ん → よろしく お 願い します ||ねがい|し ます → 中 2 の その 日 の うち に 好きに なって 彼 と 同じ 高校 に 行き たくて なか|||ひ||||すきに||かれ||おなじ|こうこう||いき|

→ ものすごく 勉強 を がんばって なんて か 合格 して |べんきょう|||||ごうかく|

→ それ でも まだ 遠野 くん の 姿 を 見る たび に もっと 好きに なって いって しまって |||とおの|||すがた||みる||||すきに|||

→ それ が 怖くて 毎日 が 苦しくて ||こわくて|まいにち||くるしくて → でも 会える たび に 幸せで 自分 でも どう しよう も なかった |あえる|||しあわせで|じぶん|||||

→ 遠野 くん また 同じ の とおの|||おなじ| → ふ ふ これ ウマ いんだ よ → 澄 田 は なんか いつも 真剣だ よ ね ものすごく きよし|た||||しんけんだ||| → うん !

→ 先 行って る よ さき|おこなって||

→ うん ...

→ これ 下さい |ください

→ 90 円 ね えん|

→ ハイ はい

→ いつも あり が と ね

→ お 帰り 何 買った の ? |かえり|なん|かった| → うん 迷った んだ けど ... |まよった|| → 遠野 くん は 時々 誰 か に メール を 打って いて とおの|||ときどき|だれ|||めーる||うって|

→ その たび に 私 は それ が 私 あて の メール だったら いい の にって |||わたくし||||わたくし|||めーる||||に って → どうしても いつも 思って しまう ||おもって| → カブ ! かぶ ただいま ー ! |-

→ カブカブ 帰って きた よ ! |かえって|| → 町 役場 から お 知らせ します 次回 の 当番 スタンド は 坂井 の 農協 給油 ... まち|やくば|||しらせ|し ます|じかい||とうばん|すたんど||さかい||のうきょう|きゅうゆ → 3 年 1 組 の 澄 田 花 苗 さん 伊藤 先生 が お呼び です 生徒 指導 室 まで 来て 下さい とし|くみ||きよし|た|か|なえ||いとう|せんせい||および||せいと|しどう|しつ||きて|ください

→ 遠野 の 彼女 じゃ ん とおの||かのじょ||

→ 彼女 と か じゃ ない よ かのじょ|||||

→ 学年 で 出して ない の は 澄 田 だけ だ ぞ がくねん||だして||||きよし|た|||

→ すみません ...

→ あの なぁ こう 言っちゃ 何 だ が そんなに 悩む ような こと じゃ ない んだ よ |||いっちゃ|なん||||なやむ|||||| → 澄 田 先生 は 何て 言って る んだ ? きよし|た|せんせい||なんて|いって||

→ いえ ...

→ どうしても 決められ ない なら 県 内 の 短大 と か は どう な んだ ? |きめ られ|||けん|うち||たんだい|||||| → でも ...

→ お 姉ちゃん は 関係ない のに ... |ねえちゃん||かんけいない|

→ だって ...

→ お 姉ちゃん に ねだって はじめた サーフィン も |ねえちゃん||||さーふぃん|

→ 一 番 大切だ と 思う あの 人 の こと も ひと|ばん|たいせつだ||おもう||じん||| → 私 は まだ 全然 ... わたくし|||ぜんぜん → いつも あり が と ね

→ いえ それ じゃ あまた → 遠野 くん が いる 場所 に くる と 胸 の 奥 が ... 少し 苦しく なる とおの||||ばしょ||||むね||おく||すこし|くるしく|

→ 遠野 くん ! とおの|

→ 澄 田 ? どうした の よく 分かった ね きよし|た||||わかった| → へ へ へ 遠野 くん の 単 車 が あった から 来ちゃった いい ? |||とおの|||ひとえ|くるま||||きちゃ った| → うん そっか 嬉しい よ |そ っか|うれしい| → 今日 は 単 車 置き場 で 会え なかった から さ きょう||ひとえ|くるま|おきば||あえ|||

→ 私 も ! わたくし|

→ 彼 は 優しい かれ||やさしい

→ 時々 泣いて しまい そうに なる ときどき|ないて||そう に| → ねえ 遠野 くん は 受験 ? |とおの|||じゅけん → うん 東京 の 大学 受ける |とうきょう||だいがく|うける → 東京 ... そっか そう だ と 思った んだ とうきょう|そ っか||||おもった| → どうして ?

→ 遠く に 行き た そうだ もの なんとなく とおく||いき||そう だ||

→ 澄 田 は ? きよし|た|

→ う ~ ん ...

→ 私 明日 の こと も よく 分から ない の よ ね わたくし|あした|||||わから|||| → だ ぶん 誰 だって そう だ よ ||だれ|||| → ワン ! わん

遠野 くん も ? とおの||

→ もちろん

→ ぜんぜん 迷い なんて ない みたいに 見える |まよい||||みえる → まさか 迷って ばかりな んだ 俺 |まよって|||おれ → 出来る こと を なんとか やって る だけ 余裕 ない んだ できる|||||||よゆう||

→ そっか ... そ っか → そう な んだ

→ 飛行機 ? ひこうき

→ .. すごい

→ 時速 5 キロ なん だって じそく|きろ||

→ えっ? → 南種子 の 打ち上げ 場 まで みなみたね||うちあげ|じょう|

→ ああ ...

→ 今年 は 久しぶりに 打ち上げる んだ よ ね ことし||ひさしぶりに|うちあげる|||

→ ああ 太陽 系 の ずっと 奥 まで 行 くん だって |たいよう|けい|||おく||ぎょう|| → 何 年 も かけて なん|とし||

→ あんた カナエ の 進路 ちゃん と 相談 に 乗って や んな さ いよ |||しんろ|||そうだん||のって|||| → ぼんやり した 子 な んだ から ||こ|||

→ 大丈夫 よ あの 子 も もう 子供 じゃ ない んだ し だいじょうぶ|||こ|||こども|||| → 私 も 昔 は ああ だった なぁ ... わたくし||むかし|||| → ねえ カブ 遠野 くん も 分から ない んだって |かぶ|とおの|||わから||ん だって → 一緒な んだ ... 遠野 くん も いっしょな||とおの||

→ それ は 本当に ... ||ほんとうに

→ 想像 を 絶する くらい 孤独な 旅 である はずだ そうぞう||ぜっする||こどくな|たび|| → 本当の 暗 閣 の 中 を ただ ひたむきに ほんとうの|あん|かく||なか|||

→ 1 つ の 水素 原子 に さえ 滅多に 出会う こと なく ||すいそ|げんし|||めったに|であう||

→ ただただ 深淵 に ある はず と 信じる 世界 の 秘密に 近づきたい ー 心 で |しんえん|||||しんじる|せかい||ひみつに|ちかづき たい|-|こころ| → 僕たち は そう やって どこ まで 行く のだろう ぼくたち||||||いく| → どこ まで 行ける のだろう ||いける|

→ 出す あて の ない メール を 打つ クセ が ついた の は いつ から だろう だす||||めーる||うつ|くせ|||||||

→ カナエ あんた 進路 決めた の ? ||しんろ|きめた| → う うん やっぱり まだ 分か ん ない けど で も いい の 決めた の ! ||||わか||||||||きめた| → 1 つ ずつ 出来る こと から やる の 行って くる ! ||できる|||||おこなって|

→ あの 日 から いくつか の 台風 が 通りすぎ その たび に 島 は 少しずつ す ず しく なって いった |ひ||いく つ か||たいふう||とおりすぎ||||しま||すこしずつ||||| → サトウキビ を 揺らす 風 が かすかに 冷気 を 孕み さとうきび||ゆらす|かぜ|||れいき||はらみ

→ 空 が ほんの 少し 高く なり 雲 の 輪郭 が 優しく なって カブ に 乗る 同級 生 たち が 薄い シャンパー を 羽織る ように なった から|||すこし|たかく||くも||りんかく||やさしく||かぶ||のる|どうきゅう|せい|||うすい|||はおる||

→ 私 が 半年 ぶり に 波 の 上 に 立てた の は また 夏 が かろうじて のる そんな 10 月 の 半ば だった わたくし||はんとし|||なみ||うえ||たてた||||なつ|||||つき||なかば|

→ 本日 夕方 から の 天候 は 晴れ 最大 風速 は 8 m の 予報 と なって います ほんじつ|ゆうがた|||てんこう||はれ|さいだい|ふうそく||||よほう|||い ます → 佐々木 さん 山田 から 告白 さ れた らしい よ ささき||やまだ||こくはく|||| → さすが だ な ー |||-

→ あれ ? カナエ なんか 今日 嬉し そう ね ||きょう|うれし|| → 遠野 くん と なんか あった の ? とおの|||||

→ ワン ! わん

→ 私 だって 今日 こそ ... わたくし||きょう|

→ 遠野 くん に 告白 する んだ とおの|||こくはく||

→ 波 に 乗れた 今日 言わ なければ この先 の きっと ... ずっと 言え ない なみ||のれた|きょう|いわ||このさき||||いえ| → 澄 田 きよし|た

→ と ...

→ 遠野 くん ... とおの|

→ 今 帰り ? いま|かえり

→ そっか そ っか → じゃあ 一緒に 帰ろう よ |いっしょに|かえろう| → あれ 澄 田 今日 は もう 決まり ? |きよし|た|きょう|||きまり → どうした の ?

→ ... しく し ないで

→ え ?

→ ごめん ... 何でもない の |なんでもない|

→ 調子 悪い ? ちょうし|わるい

→ うん ヘン だ なぁ → ダメ ? だめ

→ うん ... プラグ の 寿命 な んじゃ ない の か な これ お下がり ? |ぷらぐ||じゅみょう||||||||おさがり

→ うん お 姉ちゃん の ||ねえちゃん| → 加速 で 息継ぎ して なかった ? かそく||いきつぎ||

→ して た かも

→ 今日 は ここ に 置か せて もらって 後 で 家 の 人 に 取り に きて もらい な よ きょう||||おか|||あと||いえ||じん||とり|||||

→ 今日 は 歩こう きょう||あるこう

→ えっ私 一 人 で 歩く よ ! 遠野 くん は 先 帰って えっ わたくし|ひと|じん||あるく||とおの|||さき|かえって → ここ まで きれば 近い から それ に ちょっと ... 歩きたい んだ |||ちかい|||||あるき たい| → 遠野 くん ... とおの|

→ お 願い ... |ねがい

→ どうした の ! → ごめん なんでもない の → ごめん ね ...

→ 澄 田 ... きよし|た

→ お 願い だ から ... もう ... |ねがい|||

→ 私 に ... わたくし|

→ やさしく し ないで ....!

→ 必死に ただ 閣 雲 に 空 に 手 を 伸ばして あんなに 大きな カタマリ を 打ち上げて 気 の 遠く なる くらい むこうに ある 何 か 見つめて ひっしに||かく|くも||から||て||のばして||おおきな|||うちあげて|き||とおく|||||なん||みつめて → 遠野 くん が 他の 人 と 違って 見える 理由 が とおの|||たの|じん||ちがって|みえる|りゆう|

→ 少し だけ 分かった 気 が した すこし||わかった|き||

→ そして 同時に 遠野 くん は 私 を 見て なんて いない んだ と いう こと に |どうじに|とおの|||わたくし||みて||||||| → 私 は ハッキリ と 気づいた わたくし||はっきり||きづいた

→ だ から その 日 私 の 遠野 くん に 何も 言え なかった |||ひ|わたくし||とおの|||なにも|いえ| → 遠野 くん は 優しい けれど とおの|||やさしい|

→ とても 優しい けれど |やさしい|

→ でも ー |-

→ 遠野 くん は いつも とおの|||

→ 私 の ずっと むこう ... もっと ずっと 遠く の 何 か を 見て いる わたくし||||||とおく||なん|||みて|

→ 私 が 遠野 くん に 望む こと は きっと 叶わ ない わたくし||とおの|||のぞむ||||かなわ|

→ それ でも ...

→ それ でも 私 は 遠野 くん の こと を きっと 明日 も 明後日 も その先 も やっぱり どう しよう も なく 好きな んだ と 思う ||わたくし||とおの||||||あした||みょうごにち||そのさき|||||||すきな|||おもう

→ 遠野 くん の こと だけ を 想い ながら 泣き ながら 私 は 眼った とおの||||||おもい||なき||わたくし||がん った → 今 振り返れば きっと あの 人 振り返る と 強く 感じた いま|ふりかえれば|||じん|ふりかえる||つよく|かんじた → 中央 . 総 武 最終 電車 東京 行き が 到着 します ちゅうおう|そう|ぶ|さいしゅう|でんしゃ|とうきょう|いき||とうちゃく|し ます → お 正月 で いれば いい のに |しょうがつ||||

→ うん ... でも 色々 準備 も ある から ||いろいろ|じゅんび|||

→ そう だ な 彼 に も うまい もの 作って やれよ |||かれ|||||つくって| → 何 か あったら 電話 する の よ アカリ なん|||でんわ|||| → 大丈夫 よ 来月 に は 式 で 会う んだ から そんなに 心配 し ないで だいじょうぶ||らいげつ|||しき||あう||||しんぱい|| → 寒い から もう 戻り な よ さむい|||もどり||

→ ゆうべ 昔 の 夢 を 見た |むかし||ゆめ||みた → 私 も 彼 も まだ 子供 だった わたくし||かれ|||こども| → きっと 昨日 見つけた 手紙 の せい だ |きのう|みつけた|てがみ||| → 水野 さん みずの|

→ あ はい → ミーテイング いい かな ?

→ はい

→ ただ 生活 を して いる だけ で 哀しみ は そこ ここ に 積もる 日 に 干した シーツ に も 洗面 所 の 歯 ブラシ に も 携帯 電話 の 履歴 に も |せいかつ||||||かなしみ|||||つもる|ひ||ほした|しーつ|||せんめん|しょ||は|ぶらし|||けいたい|でんわ||りれき|| → あなた の こと は 今 でも 好きです と ||||いま||すきです|

→ 三 年間 付き合った 女性 は そう メール に 書いて いた みっ|ねんかん|つきあった|じょせい|||めーる||かいて|

→ でも 私 たち は きっと 1000 回 も メール を やりとり して |わたくし||||かい||めーる|||

→ 多分 心 は 1 センチ くらい しか 近づけません でした と たぶん|こころ||せんち|||ちかづけ ませ ん|| → この 数 年間 とにかく 前 に 進み たくて 届か ない もの に 手 を 触れ たくて それ が 具体 的に 何 を 指す の かも |すう|ねんかん||ぜん||すすみ||とどか||||て||ふれ||||ぐたい|てきに|なん||さす|| → ほ とんと 脅迫 的 と も 言える ような その 想い が ||きょうはく|てき|||いえる|||おもい|

→ どこ から 湧いて くる の かも 分から ず に 僕 は ただ働き 続け ||わいて||||わから|||ぼく||ただばたらき|つづけ

→ 気づけば 日々 弾力 を 失って いく 心 が ひたすら 辛かった きづけば|ひび|だんりょく||うしなって||こころ|||からかった

→ そして ある 朝 かつて あれほど まで に 真剣で 切実だった 思い が ||あさ|||||しんけんで|せつじつだった|おもい|

→ 綺麗に 失われて る こと に 僕 は 気づき もう 限界 だ と 知った とき 会社 を 辞めた きれいに|うしなわ れて||||ぼく||きづき||げんかい|||しった||かいしゃ||やめた → 昨日 夢 を 見た きのう|ゆめ||みた → ずっと 昔 の 夢 |むかし||ゆめ

→ その 夢 の 中 で は 僕たち は まだ 13 歳 で |ゆめ||なか|||ぼくたち|||さい| → そこ は 一面の 雪 に 覆わ れた 広い 田園 で 人家 の 灯り は ずっと 遠く に まばらに 見える だけ で ||いちめんの|ゆき||おおわ||ひろい|でんえん||じんか||ともり|||とおく|||みえる|| → 振り 積もる 新雪 に は 私 たち の 歩いて きた 足跡 しか なかった ふり|つもる|しんせつ|||わたくし|||あるいて||あしあと||

→ そう やって いつか また 一緒に 桜 を 見る こと が 出来る と 私 も 彼 も なんの 迷い も なく そう 思って いた ||||いっしょに|さくら||みる|||できる||わたくし||かれ|||まよい||||おもって|