秒速 5センチメートル
びょうそく|
5 Zentimeter pro Sekunde
5 Centimeters per second
5 centimètres par seconde
5 centímetros por segundo
5 сантиметров в секунду
Saniyede 5 santimetre.
每秒 5 厘米
每秒 5 厘米
→ ねえ
Hey...
→ 秒速 5 センチ な んだって
びょうそく|せんち||ん だって
→ It ’s 5 cm per second
→ えっ何 ?
えっ なん
Huh? What is?
→ 桜 の 花 の 落ちる スピード 秒速 5 センチメートル
さくら||か||おちる|すぴーど|びょうそく|
The speed at which cherry blossoms fall. It's five centimeters per second.
→ ふうん
→ アカリ そういう こと よく 知って る よ ね
||||しって|||
You sure know a lot of stuff like that, Akari.
→ ふ ふん
→ ねえ なんだか まるで 雪 みたいじゃ ない ?
|||ゆき||
Say... don't you think it kinda looks like snow?
→ すう かな ー
||-
I guess...
→ ねえ !
→ 待って よ !
まって|
→ アカリ !
Hey! Wait up!
→ タカキ くん
→ 来年 も 一緒に 桜 見 れる と いいね !
らいねん||いっしょに|さくら|み|||
Akari!
→ 遠野 タカキ さま へたいへん ご無沙汰 して おります
とおの|||へ たいへん|ごぶさた||おり ます
Takaki-kun!
→ こちら の 夏 も 暑い けれど 東京 に 比べれば ずっと 過ごし やすい です
||なつ||あつい||とうきょう||くらべれば||すごし||
It'd be great if we could watch the cherry blossoms fall again together next year.
→ でも 今に して 思えば 私 は 東京 の あの ムシ 暑い 夏 も 好きでした
|いまに||おもえば|わたくし||とうきょう|||むし|あつい|なつ||すきでした
→ But now that I think about it, I loved those hot, humid summers in Tokyo.
→ 溶けて しまい そうに 熱い アスファルト も 陽炎 の むこうの 高層 ビル も デパート や 地下鉄 の 寒い くらい の 冷房 も
とけて||そう に|あつい|||かげろう|||こうそう|びる||でぱーと||ちかてつ||さむい|||れいぼう|
"Summer's pretty hot around here, but compared to Tokyo, it's so much milder."
→ 私 たち が 最後に 会った の は 小学校 の 卒業 式 でした から
わたくし|||さいごに|あった|||しょうがっこう||そつぎょう|しき||
→ The last time we met was at our elementary school graduation ceremony.
→ あれ から もう 半年 です
|||はんとし|
"But when I think about it, I liked Tokyo's hot, humid summers, too."
→ ねえ タカキ くん 私 の こと 覚えて います か ?
|||わたくし|||おぼえて|い ます|
"The melting-hot asphalt,"
→ 前略 タカキ くん へ
ぜんりゃく|||
"and the freezing air-conditioning in department stores and on subways."
→ お 返事 ありがとう 嬉しかった です
|へんじ||うれしかった|
"The last time we were together was at our elementary school graduation."
→ もう すっかり 秋 です ね こちら は 紅葉 が キレイ です
||あき|||||こうよう|||
"It's already been half a year since."
→ 今年 最初の セーター を おととい 私 は 出しました
ことし|さいしょの|せーたー|||わたくし||だし ました
"So, Takaki-kun..."
→ 遠野 くん !
とおの|
"...do you still remember me?."
→ 先輩
せんぱい
"Dear Takaki-kun..."
→ 何 ?
なん
"Thanks for replying."
アブレター ?
"It's already well into autumn and the leaves are turning beautiful colors."
→ 違います よ !
ちがい ます|
"I had to pull out a sweater the day before yesterday for the first time this year."
→ ごめん ね 全部 お 願い しちゃって
||ぜんぶ||ねがい|しちゃ って
Tohno-kun.
→ いえ すぐ 終わりました から
||おわり ました|
Senpai.
→ ありがとう ねっ転校 しちゃ うって ホント ?
|ねっ てんこう|||ほんと
→ Hey, thanks... did you really say you're transferring?
→ あっはい 3 学期 いっぱいです
あっ はい|がっき|
That's not it.
→ どこ ?
Sorry for having asked you to do all that.
→ 鹿児島 です 親 の 都合 で
かごしま||おや||つごう|
No problem, I finished quickly.
→ そう か ー 寂しく なる なぁ
||-|さびしく||
Thanks. So, is it true that you'll be transferring schools?
→ 最近 は 部活 で 朝 が 早い ので 今 この 手紙 は 電車 で 書いて います
さいきん||ぶかつ||あさ||はやい||いま||てがみ||でんしゃ||かいて|い ます
Ah, yes, at the end of the year.
→ この 前 髪 を 切りました
|ぜん|かみ||きり ました
Kagoshima. Because of my parents.
→ 耳 が 出る くらい 短く しちゃった から
みみ||でる||みじかく|しちゃ った|
→ I made it so short that my ears would stick out.
→ もし 会って も 私って 分から ない かも しれません ね
|あって||わたくし って|わから|||しれ ませ ん|
I see... it'll be lonely around here without you.
→ ただいま ー
|-
"I'm actually writing this letter on the train because practice has been starting really early lately."
→ お かえり
"I had my hair cut the other day."
→ タカキ くん も きっと 少しずつ 変わって いく のでしょう ね
||||すこしずつ|かわって|||
"It's so short you can even see my ears..."
→ 拝啓 寒い 日 が 続きます が お 元気です か ?
はいけい|さむい|ひ||つづき ます|||げんきです|
"...so you probably wouldn't even recognize me if you saw me."
→ こちら は もう 何度 か 雪 が 降りました
|||なんど||ゆき||ふり ました
→ It's already snowed here several times.
→ 私 は その たび に ものすごい 重 装備 で 学校 に ツ 通って います
わたくし||||||おも|そうび||がっこう|||かよって|い ます
I'm back.
→ 東京 は 雪 は まだ だ よ ね
とうきょう||ゆき|||||
"I bet you're changing little by little too, Takaki-kun."
→ 引越 して きて から も つい クセ で 東京 のぶん の 天気 予報 まで 見て しまいます
ひっこし||||||くせ||とうきょう|||てんき|よほう||みて|しまい ます
"Dear Takaki-kun..."
→ 雨 でも 降ら ねえ か なぁ
あめ||ふら|||
"It's already snowed a number of times here."
→ でも 居 内 でも キツイ ぜ
|い|うち|||
"Every time it does, I wrap myself in layers of clothes when I go to school."
→ なぁ 栃木って 行った こと ある か ?
|とちぎ って|おこなった|||
"It hasn't snowed in Tokyo yet, right?."
→ ハァ ?
"Even though I moved away..."
どこ ?
"...I still look at Tokyo's weather forecast out of habit."
→ 栃木
とちぎ
→ ない
Wish it would rain one of these days...
→ どう やって行く の か な ?
|やっていく|||
It wouldn't be any better indoors.
→ さ ぁ ... 新幹線 と か ?
||しんかんせん||
Say... have you guys ever been to Tochigi?
→ 遠い よ な
とおい||
Huh? Where?
→ 一 年 !
ひと|とし
Tochigi.
→ ハイ !
はい
Nope.
→ ラスト 三 周 !
らすと|みっ|しゅう
→ The last three laps!
→ ファイト !
ふぁいと
No clue.
オーッ !
It's a long way...
ファイト !
ふぁいと
Freshmen!
オーッ !
Yes?!
→ 今度 は タカキ くん の 転校 が 決まった と いう こと 驚きました
こんど|||||てんこう||きまった||||おどろき ました
Onto the final three laps! Fight! Fight!
→ お互いに 昔 から 転校 に は 慣れて いる わけです が
おたがいに|むかし||てんこう|||なれて|||
→ We are both used to changing schools from the past.
→ それにしても 鹿児島 だ なんて
|かごしま||
"I was surprised to hear that you were the one transferring schools this time."
→ % 今度 は ちょっと 遠い よ ね
こんど|||とおい||
→ This time it's a little far.
→ いざ と いう 時 に 電車 に 乗って 会い に 行ける ような 距離 で は なく なって しまう の は
|||じ||でんしゃ||のって|あい||いける||きょり|||||||
"But still... Kagoshima. That's kind of far away, isn't it?"
→ やっぱり ...
→ 少し ... ちょっと 寂しい です
すこし||さびしい|
"It's no longer a distance where I can just jump on a train and see you whenever I want..."
→ どうか どう か タカキ くん が 元気で います ように
||||||げんきで|い ます|
→ 前略 タカキ くん へ
ぜんりゃく|||
"So... I guess... that makes me feel a little lonely."
→ 3 月 4 日 の 約束 とても 嬉しい です
つき|ひ||やくそく||うれしい|
→ I am very happy with the promise of March 4.
→ 会う の は もう 一 年 ぶり です ね
あう||||ひと|とし|||
→ なんだか 緊張 して しまいます
|きんちょう||しまい ます
"Please be well, Takaki-kun."
→ うち の 近く に 大きな 桜 の 樹 が あって
||ちかく||おおきな|さくら||き||
"Dear Takaki-kun..."
→ 春 に は そこ でも たぶん
はる|||||
"I'm so happy we'll see each other on March 4th."
→ 花びら が 秒速 5 センチ で 地上 に 降って います
はなびら||びょうそく|せんち||ちじょう||ふって|い ます
"It'll be just about a year since we last met, won't it?"
→ タカキ くん と 一緒に
|||いっしょに
"For some reason, I feel kind of nervous."
→ 春 も やってきて くれれば いい の にって 思います
はる||||||に って|おもい ます
"There's a really large cherry tree close to my house, so I bet that in the spring..."
→ 予報 で は 夕方 から 雪 に なるって え ~っ寒い と 思った よ もう 3 月 な のに な
よほう|||ゆうがた||ゆき||なる って||っ さむい||おもった|||つき|||
→ 風邪 引き そうだ よ ね
かぜ|ひき|そう だ||
"...the petals will fall at five centimeters per second."
→ ねっあったかい もの 飲んで こう よ 下北 で 降りて さ
ねっ あったかい||のんで|||しもきた||おりて|
"I'm really hoping the spring will come with you that day, Takaki-kun."
→ そうだ な
そう だ|
→ 遠野
とおの
The forecast said it's supposed to turn to snow by tonight.
→ 部活 行こう ぜ
ぶかつ|いこう|
→ Let's go clubbing!
→ あぁ
Yeah, it feels like I'm gonna catch a cold.
→ あの さ 俺 今日 ちょっと 部活 ダメな んだ
||おれ|きょう||ぶかつ|だめな|
→ 引越 し の 準備 か ?
ひっこし|||じゅんび|
Yeah.
→ そんな トコ 悪い な
||わるい|
→ 私 の 駅 まで 来て くれる の は とても 助かる のです けれど
わたくし||えき||きて|||||たすかる||
→ 遠い ので どう か 気 を つけて きて 下さい
とおい||||き||||ください
Right...
→ 約束 の 夜 7 時 に 駅 の 待合室 で 待って います
やくそく||よ|じ||えき||まちあいしつ||まって|い ます
About that... I don't think I can make it today.
→ アカリ と の 約束 の 当日 は 昼 すぎ から 雪 に なった
|||やくそく||とうじつ||ひる|||ゆき||
Getting ready to move?
→ あっねえ タカキ くん !
あっ ねえ||
Something like that.
→ ねこ !
"I'm glad you're coming all the way out to the station closest to me..."
チョビ だ !
"...but it's a long trip, so please be careful."
→ こいつ いつも ここ に いる ね
"I'll be waiting for you in the station's waiting room at 7:00 that night."
→ でも 今日 は 1 人 みたい
|きょう||じん|
On the day Akari and I were to meet, the rain turned to snow in the afternoon.
→ ミミ は どうした の ?
1 人 じゃ 寂し いよ ねぇ
じん||さびし||
It's that cat, Chobi.
→ あの 本 どう ?
|ほん|
He's always lying here.
→ なかなか 昨日 一晩 で 40億 年 分 読んじゃった !
|きのう|ひとばん||おく|とし|ぶん|よんじゃ った
But it looks like he's all by himself today.
→ どの あたり ?
What happened to your friend Mimi? It must be lonely all by yourself, huh?
→ アノマロカリス が 出て くる あたり
||でて||
→ The place where Anomalocaris appears.
→ カンブリア 紀 !
|き
How's that book so far?
→ 私 ハルキゲニア が 好きだ な こんな の
わたくし|||すきだ|||
I really like it.
→ まあ 似て る かも
|にて||
Where are you at now?
→ タカキ くん は 何の ファン ?
|||なんの|ふぁん
Just about when the Anomalocaris start showing up.
→ オパビニア かな
→ あー 眼 が 5 つ ある ヒト だ よ ね !
|がん||||ひと|||
I really like the Hallucigenia. They look like this!
→ 僕 と アカリ は 精神 的に どこ か よく 似て いた と 思う
ぼく||||せいしん|てきに||||にて|||おもう
Yeah, something like that...
→ 僕 が 東京 に 転校 して きた 1 年 後 に ー アカリ が 同じ クラス に 転校 して きた
ぼく||とうきょう||てんこう|||とし|あと||-|||おなじ|くらす||てんこう||
Which one do you like, Takaki-kun?
→ まだ 体 が 小さく 病気 がちだった 僕ら は グランド より は 図書 館 が 好きで
|からだ||ちいさく|びょうき||ぼくら||ぐらんど|||としょ|かん||すきで
The Opabinia, maybe?
→ だ から 僕たち は ごく 自然に 仲良く なり
||ぼくたち|||しぜんに|なかよく|
→ その せい で クラスメイト から からかわ れる こと も あった けれど
I think Akari and I were a lot alike somehow.
→ でも ー
|-
Exactly one year after I transferred to Tokyo...
→ お互い が いれば 不思議に そういう こと は あまり 怖く は なかった
おたがい|||ふしぎに|||||こわく||
A new friend just transferred to our school. This is Tohno Takaki-kun.
→ 僕たち は いずれ 同じ 中学 に 通い
ぼくたち|||おなじ|ちゅうがく||かよい
→ この先 も ずっと 一緒に だ と
このさき|||いっしょに||
...the two of us preferred the library over playing on the sportsfield.
→ どうして だとう そう 思って いた
|||おもって|
Naturally, we became friends...
→ 新宿 新宿 終点 です
しんじゅく|しんじゅく|しゅうてん|
...and because of that, there were times when our classmates would tease us. But...
→ お 振り の お 客 様 は ... JR 線 京王 線 地下鉄 は お 乗り換え です ...
|ふり|||きゃく|さま||jr|せん|けいおう|せん|ちかてつ|||のりかえ|
...and because of that, there were times when our classmates would tease us. But...
→ 新宿 駅 に 1 人 で来た の は 初めて で
しんじゅく|えき||じん|できた|||はじめて|
Ooh! There he is!
→ これ から 乗る 路線 も 僕 に は すべて 初めて だった
||のる|ろせん||ぼく||||はじめて|
And yet, for some reason, I thought we'd end up going to the same middle school...
→ ドキドキ して いた
どきどき||
...and stay together, just as we were...
→ これ から 僕 は アカリ に 会う んだ
||ぼく||||あう|
...from that point on.
→ この 前 の 子 どう だった ?
|ぜん||こ||
→ How was the last one?
→ 誰 ?
だれ
→ ほら 西 商 の !
|にし|しょう|
...JR Line, Heiou Line, subway...
→ え ~?
It was the first time I'd gone to Shinjuku Station alone...
趣味 悪く ない ?
しゅみ|わるく|
...and all the lines I would soon be riding would also be firsts for me.
→ ... 快速 列車 待ち合わせ の ため この 列車 は 4 分 ほど 停車 します
かいそく|れっしゃ|まちあわせ||||れっしゃ||ぶん||ていしゃ|し ます
→ 与野 本町 大宮 まで お 急ぎ の 方 は 向かい の ...
よの|ほんまち|おおみや|||いそぎ||かた||むかい|
My heart was pounding.
→ あの ... 篠原 と 申します けど
|しのはら||もうし ます|
I was going to see Akari again.
→ あの タカキ くん いらっしゃいます か ?
|||いらっしゃい ます|
How did it go with that guy?
→ アカリ ちゃん よ
Who?
→ え ... 転校 ?
|てんこう
You know, that Nisshou boy.
→ 西中 は どう すんだ ?
にしなか|||
Are you kidding? His tastes were a little gross...
せっかく 受かった のに
|うかった|
In order to connect with the express train, this train will be stopping for 4 minutes.
→ 栃木 の 公立 に 手続き するって ...
とちぎ||こうりつ||てつづき|する って
Those passengers who wish to quickly reach Yonohonmachi and Oomiya please board...
→ ごめん ね
→ いや ... アカリ が 謝る こと な いけ で
|||あやまる||||
Umm, is Takaki-kun there?
→ 葛飾 の 叔母 さんち から 通いたいって 言った んだ けど
かつしか||おば|||かよい たい って|いった||
It's Akari-chan.
→ もっと 大きく なって から じゃ ない と ダメ だって ...
|おおきく||||||だめ|
Huh? You're transferring schools?
→ わかった
What about Nishi Middle School? You went through all that trouble to get accepted.
→ もう いい よ
They said they'd handle the paperwork of transferring me to the public school in Tochigi...
→ もう いい
→ ごめん ...
→ 耳 が 痛く なる くらい 押しあてた 受話器 ご しに
みみ||いたく|||おしあてた|じゅわき||
I told them I still wanted to go from my aunt's house in Katsushika, but...
→ アカリ が 傷つく の が 手 に とる ように 分かった でも ...
||きずつく|||て||||わかった|
→ I could see how Akari was hurting, but...
→ どう しよう も なかった
I understand... you don't have to say anything else.
→ 乗り換え の ターミナル 駅 は 帰宅 を 始めた 人々 で 混 み合って いて
のりかえ||たーみなる|えき||きたく||はじめた|ひとびと||こん|みあって|
→ 誰 の 靴 も 雪 の 水 を 吸って ぐっしょり 濡れて いて
だれ||くつ||ゆき||すい||すって||ぬれて|
That's enough.
→ 空気 は ー
くうき||-
I'm sorry...
→ 雪 の 日 の 都市 独特の 匂い に 満ちて 冷たかった
ゆき||ひ||とし|どくとくの|におい||みちて|つめたかった
→ お 客 様 に お 知らせ いたします
|きゃく|さま|||しらせ|いたし ます
...Akari's own pain was palpable.
→ 宇都宮 線 小山 宇都宮 方面 行き 列車 は ただいま 雪 の ため 到着 が 8 分 ほど 遅れて おります
うつのみや|せん|こやま|うつのみや|ほうめん|いき|れっしゃ|||ゆき|||とうちゃく||ぶん||おくれて|おり ます
→ お 急ぎ の ところ お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が
|いそぎ||||きゃく|さま|||たいへん||めいわく|||いたし ます|
The terminal I transferred at was crowded with people heading home...
→ その 瞬間 まで 僕 は 電車 が 遅れる なんて いう 可能 性 を
|しゅんかん||ぼく||でんしゃ||おくれる|||かのう|せい|
...and everyone's shoes were soaked from the snow.
→ 考え も し なかった
かんがえ|||
The frigid air was saturated with the classic smell of a snowy city day.
→ 不安 が 急に 大きく なった
ふあん||きゅうに|おおきく|
→ ただいま この 電車 は 雪 の ため 10 分 ほど 遅れて 運行 して おります
||でんしゃ||ゆき|||ぶん||おくれて|うんこう||おり ます
→ お 急ぎ の ところ 列車 遅れて おります こと お 詫び いたします
|いそぎ|||れっしゃ|おくれて|おり ます|||わび|いたし ます
Due to the snowy weather conditions, the Utsunomiya Line outbound trains traveling to Oomiya and Utsunomiya...
→ 大宮 駅 を 過ぎて しばらく する と 風景 から は あっという間 に 建物 が 少なく なった
おおみや|えき||すぎて||||ふうけい|||あっというま||たてもの||すくなく|
...will be experiencing an 8 minute delay in arrival.
→ 次 は 久喜 久喜
つぎ||くき|くき
We apologize for any inconvenience in your busy day.
→ 到着 が 大変 遅れました こと お 詫び 申し上げます
とうちゃく||たいへん|おくれ ました|||わび|もうしあげ ます
Until that moment, I hadn't even considered the possibility of one of my trains being late. We apologize for any inconvenience in your busy day.
→ 東 武 伊勢崎 線 に お 乗り換え の 方 は 5 番 出口 に お まわり 下さい
ひがし|ぶ|いせさき|せん|||のりかえ||かた||ばん|でぐち||||ください
→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します
こうぞく|れっしゃ||おくれて||||れっしゃ||とうえき||ぶん||ていしゃ|し ます
My creeping anxiety suddenly became much greater.
→ お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 お かけ いたします が 今 しばらく お 待ち 下さいます よう お 願い いたします
|いそぎ|||たいへん||めいわく|||いたし ます||いま|||まち|くださ い ます|||ねがい|いたし ます
This train is currently running 10 minutes late due to the snowy weather conditions.
→ すみません
We apologize for any inconvenience in your busy day.
→ 後続 列車 が 遅れて いる ため この 列車 は 到駅 にて 10 分 ほど 停車 します
こうぞく|れっしゃ||おくれて||||れっしゃ||とうえき||ぶん||ていしゃ|し ます
→ お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 を お かけ いたします が ...
|いそぎ|||たいへん||めいわく||||いたし ます|
→ 野木 野木
のぎ|のぎ
Next stop is Kuki. Kuki.
→ お 客 様 に お 断り と お 詫び 申し上げます 後続 列車 遅延 の ため この 列車 は 当 駅 で しばらく の 間 停車 します
|きゃく|さま|||ことわり|||わび|もうしあげ ます|こうぞく|れっしゃ|ちえん||||れっしゃ||とう|えき||||あいだ|ていしゃ|し ます
We apologize for our terribly late arrival.
→ お 急ぎ の ところ 大変 ご 迷惑 ...
|いそぎ|||たいへん||めいわく
Those passengers transferring to the Tobu Isesaki Line, please make your way around to Exit #5.
→ 駅 と 駅 と の 間 は 信じられ ない くらい 離れて いて
えき||えき|||あいだ||しんじ られ|||はなれて|
Due to the next train's delay, this train will be stopping at this station for the next 10 minutes.
→ 電車 は 一 駅 ごと に 信じられ ない くらい 長い 間 停車 した
でんしゃ||ひと|えき|||しんじ られ|||ながい|あいだ|ていしゃ|
→ 窓 の 外 の 見た こと も ない ような 雪 に 荒野 も じわじわ と 流れて いく 時間 も 痛い ような 空腹 も 僕 を ますます 心細く さ せて いった
まど||がい||みた|||||ゆき||こうや||||ながれて||じかん||いたい||くうふく||ぼく|||こころぼそく|||
→ 約束 の 時間 を 過ぎて
やくそく||じかん||すぎて
→ 今頃 アカリ は きっと 不安に なり 始めて いる と 思う
いまごろ||||ふあんに||はじめて|||おもう
→ あの 日 ... あの 電話 の 日 ー 僕 より も ずっと 大きな 不安 を 抱えて いる はずの アカリ に 対して 優しい 言葉 を かける こと の でき なかった 自分 が ひどく 恥ずかしかった
|ひ||でんわ||ひ|-|ぼく||||おおきな|ふあん||かかえて|||||たいして|やさしい|ことば|||||||じぶん|||はずかしかった
Due to the next train's delay, this train will be stopping at this station for the next 10 minutes.
→ じゃあ
→ 今日 で ショナラ だ ね
きょう||||
We apologize for any inconvenience in your busy day, and...
→ アカリ から の 最初の 手紙 が 届いた の は それ から 半年 後
|||さいしょの|てがみ||とどいた|||||はんとし|あと
This is Nogi. Nogi.
→ 中 1 の 夏 だった
なか||なつ|
→ 彼女 から の 文面 は すべて 覚えた
かのじょ|||ぶんめん|||おぼえた
Due to the continuing delay of the following train, this train will be stopping at this station for an extended period of time.
→ 約束 の 今日 まで 2 週間 かけて 僕 は アカリ に 渡す ため の 手紙 を 書いた
やくそく||きょう||しゅうかん||ぼく||||わたす|||てがみ||かいた
We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding.
→ アカリ に 伝え なければ いけない こと 聞いて 欲しい こと が
||つたえ||||きいて|ほしい||
The stations seemed unbelievably far apart... We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding.
→ 本当に 僕 に は たくさん あった
ほんとうに|ぼく||||
We apologize for any inconvenience in your busy day, and appreciate your understanding.
→ 大変 お 待た せ いたしました まもなく 宇都宮 行き 発車 いたします
たいへん||また||いたし ました||うつのみや|いき|はっしゃ|いたし ます
The wilderness on the other side of the window seemed like nothing I'd ever experienced before.
→ 小山 小山
こやま|こやま
The slowly ticking time...
→ 東北 新幹線 ご 利用 の 方 は お 乗り換え です
とうほく|しんかんせん||りよう||かた|||のりかえ|
...continued to dampen my spirits.
→ 東北 新幹線 下り 盛岡 方面 お 乗り換え の 方 は 1 番 線
とうほく|しんかんせん|くだり|もりおか|ほうめん||のりかえ||かた||ばん|せん
→ 上り 東京 方面 お 乗り換え の 方 は 5 番 線 へ お まわり 下さい
のぼり|とうきょう|ほうめん||のりかえ||かた||ばん|せん||||ください
→ お 客 様 に お 知らせ いたします ただいま 両 毛 線 は 雪 の ため 大幅な 遅れ を もって 運転 して おります
|きゃく|さま|||しらせ|いたし ます||りょう|け|せん||ゆき|||おおはばな|おくれ|||うんてん||おり ます
→ お 客 様 に は 大変 ご 迷惑 を お かけ いたして おります
|きゃく|さま|||たいへん||めいわく|||||おり ます
→ 列車 到着 まで 今 しばらく お 待ち 下さい
れっしゃ|とうちゃく||いま|||まち|ください
→ とにかく アカリ の 待つ 駅 に 向かう しか なかった
|||まつ|えき||むかう||
→ 8 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 上り 電車 が 参ります
ばん|せん|あしきき|まえばし|ほうめん|たかさき|いき|のぼり|でんしゃ||まいり ます
→ 白線 の 内側 に 下がって ...
はくせん||うちがわ||さがって
→ お 客 様 に ご 案内 いたします ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします
|きゃく|さま|||あんない|いたし ます||こうせつ|||だいや||みだれ|||しょうしょう|ていしゃ|いたし ます
→ お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が
|いそぎ|||たいへん|きょうしゅく||
→ 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません
げんざい|||ふっきゅう||め|しょ||たって|おり ませ ん
→ 繰り返します
くりかえし ます
→ ただいま 降雪 に よる ダイヤ の 乱れ の ため 少々 停車 いたします
|こうせつ|||だいや||みだれ|||しょうしょう|ていしゃ|いたし ます
→ お 急ぎ の ところ 大変 恐縮 です が
|いそぎ|||たいへん|きょうしゅく||
→ 現在 の ところ 復旧 の 目 処 は 立って おりません
げんざい|||ふっきゅう||め|しょ||たって|おり ませ ん
→ タカキ くん お 元気です か ?
|||げんきです|
→ 部活 で 朝 が 早い ので この 手紙 は 電車 で 書いて います
ぶかつ||あさ||はやい|||てがみ||でんしゃ||かいて|い ます
→ 手紙 から 想像 する アカリ は なぜ か いつも 1 人 だった
てがみ||そうぞう|||||||じん|
→ 電車 は それ から 結局 ー
でんしゃ||||けっきょく|-
→ 2 時間 も 何も ない 荒野 に 停 まり 続けた
じかん||なにも||こうや||てい||つづけた
→ たった 1 分 が ものすごく 長く 感じられ
|ぶん|||ながく|かんじ られ
→ 時間 は はっきり と した 悪意 を もって 僕 は 上 を ゆっくり と 流れて いった
じかん|||||あくい|||ぼく||うえ||||ながれて|
→ 僕 は きつく 歯 を くいしばり ただ とにかく 泣か ない ように 耐えて いる しか なかった
ぼく|||は|||||なか|||たえて|||
→ アカリ ...
→ どうか ... もう ...
→ 家 に ...
いえ|
→ 帰って いて くれれば いい のに ...
かえって||||
→ 3 番 線 足利 . 前橋 方面 高崎 行き 列車 到着 いたします
ばん|せん|あしきき|まえばし|ほうめん|たかさき|いき|れっしゃ|とうちゃく|いたし ます
→ この 電車 は 雪 に ため しばらく 停車 します
|でんしゃ||ゆき||||ていしゃ|し ます
→ アカリ
→ おいしい
→ そう ?
普通の ほうじ 茶 だ よ
ふつうの||ちゃ||
→ ほうじ 茶 ?
|ちゃ
初めて 飲んだ
はじめて|のんだ
→ ウソ ぜったい 飲んだ こと ある よ !
うそ||のんだ|||
→ そう かな ?
→ そうだ よ !
そう だ|
→ それ から これ ... 私 が 作った から 味 の 保証 は ない んだ けど
|||わたくし||つくった||あじ||ほしょう||||
→ よかったら 食べて
|たべて
→ ありがとう
→ お腹 すいて た んだ すごく
おなか||||
→ どうか な ?
→ 今 まで 食べた もの の 中 で 一 番 おいしい
いま||たべた|||なか||ひと|ばん|
→ 大袈裟だ なぁ
おおげさだ|
→ ホントだ よ
ほんとだ|
→ きっと お腹 が すいて たから よ
|おなか||||
→ すう かな
→ そう よ
→ 私 も 食べよっと
わたくし||たべよ っと
→ 引越 し もう すぐだ よ ね
ひっこし|||||
→ うん 来週
|らいしゅう
→ 鹿児島 か ぁ
かごしま||
→ 遠いん だ
えんいん|
→ うん
→ 栃木 も 遠かった けど ね
とちぎ||とおかった||
→ ふ ふ 帰れ なく なっちゃった もん ね
||かえれ||なっちゃ った||
→ そろそろ 閉めます よ もう 電車 も ない で すし
|しめ ます|||でんしゃ||||
→ ハイ
はい
→ ほん な 雪 です から お 気 を つけて
||ゆき||||き||
→ ハイ !
はい
→ 見える ?
みえる
あの 樹
|き
→ 手紙 の 樹 ?
てがみ||き
→ うん 桜 の 樹
|さくら||き
→ ねえ
→ まるで ... 雪 みたいじゃ ない ?
|ゆき||
→ そうだ ね
そう だ|
→ その 瞬間 ー 永遠 と か 心 と か 魂 と か いう もの が どこ に ある の か
|しゅんかん|-|えいえん|||こころ|||たましい||||||||||
→ 分かった 気 が した
わかった|き||
→ 13 年間 生きて きた こと の 全て を 分かちあえ たように 僕 は 思い それ から 次の 瞬間 ー
ねんかん|いきて||||すべて||わかちあえ||ぼく||おもい|||つぎの|しゅんかん|-
→ たまらなく ... 悲しく なった
|かなしく|
→ アカリ の その 温もり を その 魂 を どのように 扱えば いい の か どこ に 持っていけば いい の か
|||ぬくもり|||たましい|||あつかえば||||||もっていけば|||
→ それ が 僕 に は 分から なかった から だ
||ぼく|||わから|||
→ 僕たち は この先 も ずっと 一緒に いる こと は でき ない と
ぼくたち||このさき|||いっしょに||||||
→ はっきり と 分かった
||わかった
→ 僕たち の 前 に は いまだ 巨大 すぎる 人生 が 茫漠と した 時間 が どう しよう も なく 横たわって いた
ぼくたち||ぜん||||きょだい||じんせい||ぼうばくと||じかん||||||よこたわって|
→ でも ー
|-
→ 僕 を 捉えた その 不安 は やがて ゆるやかに 溶けて いき
ぼく||とらえた||ふあん||||とけて|
→ あと に は アカリ の 柔らかな 唇 だけ が 残って いた
|||||やわらかな|くちびる|||のこって|
→ その 夜 ー 僕たち は 畑 の 脇 に あった 小さな 納屋 で 過ごした
|よ|-|ぼくたち||はたけ||わき|||ちいさな|なや||すごした
→ 古い 毛布 に くるまり 長い 時間 話し 続けて
ふるい|もうふ|||ながい|じかん|はなし|つづけて
→ いつの間にか 眠って いた
いつのまにか|ねむって|
→ 朝 動き 始めた 電車 に 乗って
あさ|うごき|はじめた|でんしゃ||のって
→ 僕 は アカリ と 別れた
ぼく||||わかれた
→ あの ...
→ タカキ くん ...
→ ん ...?
→ タカキ くん は ...
→ きっと この先 も 大丈夫だ と 思う ぜったい !
|このさき||だいじょうぶだ||おもう|
→ ありがとう
→ アカリ も 元気で !
||げんきで
→ 手紙 書く よ !
てがみ|かく|
電話 も !
でんわ|
→ アカリ へ の 手紙 を なくして しまった こと を
|||てがみ|||||
→ 僕 は アカリ に 言わ なかった
ぼく||||いわ|
→ あの キス の 前 と 後 と で は
|きす||ぜん||あと|||
→ 世界 の 何もかも が 変わって しまった ような 気 が した から だ
せかい||なにもかも||かわって|||き||||
→ 彼女 を 守れる だけ の 力 が 欲しい と 強く 思った
かのじょ||まもれる|||ちから||ほしい||つよく|おもった
→ それ だけ を 考え ながら 僕 は いつまでも 窓 の 外 の 景色 を 見 続けて いた
|||かんがえ||ぼく|||まど||がい||けしき||み|つづけて|
→ カナエ 放課後 も 行く の ?
|ほうかご||いく|
→ うん お 姉ちゃん は 平気 ?
||ねえちゃん||へいき
→ いい よ でも 勉強 も ちゃんと や んな さ いよ
|||べんきょう||||||
→ は ー い
|-|
→ ふう ... よし
→ おはよう
→ おはよう 遠野 くん 今朝 も 早い ね
|とおの||けさ||はやい|
→ 澄 田 も 海 行って きた んだ ろ ?
きよし|た||うみ|おこなって|||
→ 頑張る んだ ね
がんばる||
→ そんなに でも ... へ へ へ
→ また ね !
遠野 くん
とおの|
→ いい か ぁ ?
そろそろ 決める 時期 だ ぞ
|きめる|じき||
→ 月曜 まで に 提出 だ から な
げつよう|||ていしゅつ|||
→ ご 家族 と よく 相談 して 書いて くる ように
|かぞく|||そうだん||かいて||
→ 佐々木 さん 東京 の 大学 行く みたい よ
ささき||とうきょう||だいがく|いく||
→ さすが 私 の 熊本 の 短大 かな ~
|わたくし||くまもと||たんだい|
→ カナエ は ?
→ え ?
うーん ...
→ 就職 だっけ ?
しゅうしょく|だ っけ
→ うーん ...
→ あんた ホン と 何も 考えて ない よ ね
|ほん||なにも|かんがえて|||
→ 遠野 くん の こと だけ ね
とおの|||||
→ あいつ ゼッタイ 東京 に 彼女 いる よ
||とうきょう||かのじょ||
→ そんな ぁ !
→ うっふ ふ ふ
う っふ||
→ まだ 上手く いか ない ?
|うまく||
→ うん どう しちゃった の かな ...
||しちゃ った||
→ あんまり 悩ま ない 方 が いい よ その うち また 乗れる わ よ
|なやま||かた|||||||のれる||
→ お 姉ちゃん は 気楽で いい わ よ
|ねえちゃん||きらくで|||
→ な に 焦って ん の よ
||あせって|||
→ このまま じゃ 卒業 まで 言え ない じゃ ない
||そつぎょう||いえ|||
→ あり が と お 姉ちゃん
||||ねえちゃん
→ 送って くわ よ
おくって||
→ う うん カブ で 帰る !
||かぶ||かえる
→ あっ澄 田 今 帰り ?
あっ す|た|いま|かえり
→ うん 遠野 くん も ?
|とおの||
→ ああ ...
→ 一緒に 帰ら ない ?
いっしょに|かえら|
→ もし 私 に 犬 みたいな 尻尾 が あったら もっと 嬉し さ を 隠し きれ ず に ぶん ぶん と 振って しまった と 思う
|わたくし||いぬ||しっぽ||||うれし|||かくし|||||||ふって|||おもう
→ ああ 私 は 犬 じゃ なくて 良かった な ~ なんて ホッと し ながら 思って
|わたくし||いぬ|||よかった|||ほっと|||おもって
→ そういう こと に 我ながら バカだ なぁ と 呆れて
|||われながら|ばかだ|||あきれて
→ それ でも
→ 遠野 くん と の 帰り道 は 幸せだった
とおの||||かえりみち||しあわせだった
→ 最初 から 遠野 くん は 他の 男の子 たち と は どこ か 少し 違って いた
さいしょ||とおの|||たの|おとこのこ||||||すこし|ちがって|
→ 遠野 貴樹 です
とおの|たかき|
→ 親 の 仕事 で 転校 に は 慣れて います が この 島 に は まだ 慣れて いません
おや||しごと||てんこう|||なれて|い ます|||しま||||なれて|いま せ ん
→ よろしく お 願い します
||ねがい|し ます
→ 中 2 の その 日 の うち に 好きに なって 彼 と 同じ 高校 に 行き たくて
なか|||ひ||||すきに||かれ||おなじ|こうこう||いき|
→ ものすごく 勉強 を がんばって なんて か 合格 して
|べんきょう|||||ごうかく|
→ それ でも まだ 遠野 くん の 姿 を 見る たび に もっと 好きに なって いって しまって
|||とおの|||すがた||みる||||すきに|||
→ それ が 怖くて 毎日 が 苦しくて
||こわくて|まいにち||くるしくて
→ でも 会える たび に 幸せで 自分 でも どう しよう も なかった
|あえる|||しあわせで|じぶん|||||
→ 遠野 くん また 同じ の
とおの|||おなじ|
→ ふ ふ これ ウマ いんだ よ
→ 澄 田 は なんか いつも 真剣だ よ ね ものすごく
きよし|た||||しんけんだ|||
→ うん !
→ 先 行って る よ
さき|おこなって||
→ うん ...
→ これ 下さい
|ください
→ 90 円 ね
えん|
→ ハイ
はい
→ いつも あり が と ね
→ お 帰り 何 買った の ?
|かえり|なん|かった|
→ うん 迷った んだ けど ...
|まよった||
→ 遠野 くん は 時々 誰 か に メール を 打って いて
とおの|||ときどき|だれ|||めーる||うって|
→ その たび に 私 は それ が 私 あて の メール だったら いい の にって
|||わたくし||||わたくし|||めーる||||に って
→ どうしても いつも 思って しまう
||おもって|
→ カブ !
かぶ
ただいま ー !
|-
→ カブカブ 帰って きた よ !
|かえって||
→ 町 役場 から お 知らせ します 次回 の 当番 スタンド は 坂井 の 農協 給油 ...
まち|やくば|||しらせ|し ます|じかい||とうばん|すたんど||さかい||のうきょう|きゅうゆ
→ 3 年 1 組 の 澄 田 花 苗 さん 伊藤 先生 が お呼び です 生徒 指導 室 まで 来て 下さい
とし|くみ||きよし|た|か|なえ||いとう|せんせい||および||せいと|しどう|しつ||きて|ください
→ 遠野 の 彼女 じゃ ん
とおの||かのじょ||
→ 彼女 と か じゃ ない よ
かのじょ|||||
→ 学年 で 出して ない の は 澄 田 だけ だ ぞ
がくねん||だして||||きよし|た|||
→ すみません ...
→ あの なぁ こう 言っちゃ 何 だ が そんなに 悩む ような こと じゃ ない んだ よ
|||いっちゃ|なん||||なやむ||||||
→ 澄 田 先生 は 何て 言って る んだ ?
きよし|た|せんせい||なんて|いって||
→ いえ ...
→ どうしても 決められ ない なら 県 内 の 短大 と か は どう な んだ ?
|きめ られ|||けん|うち||たんだい||||||
→ でも ...
→ お 姉ちゃん は 関係ない のに ...
|ねえちゃん||かんけいない|
→ だって ...
→ お 姉ちゃん に ねだって はじめた サーフィン も
|ねえちゃん||||さーふぃん|
→ 一 番 大切だ と 思う あの 人 の こと も
ひと|ばん|たいせつだ||おもう||じん|||
→ 私 は まだ 全然 ...
わたくし|||ぜんぜん
→ いつも あり が と ね
→ いえ それ じゃ あまた
→ 遠野 くん が いる 場所 に くる と 胸 の 奥 が ... 少し 苦しく なる
とおの||||ばしょ||||むね||おく||すこし|くるしく|
→ 遠野 くん !
とおの|
→ 澄 田 ? どうした の よく 分かった ね
きよし|た||||わかった|
→ へ へ へ 遠野 くん の 単 車 が あった から 来ちゃった いい ?
|||とおの|||ひとえ|くるま||||きちゃ った|
→ うん そっか 嬉しい よ
|そ っか|うれしい|
→ 今日 は 単 車 置き場 で 会え なかった から さ
きょう||ひとえ|くるま|おきば||あえ|||
→ 私 も !
わたくし|
→ 彼 は 優しい
かれ||やさしい
→ 時々 泣いて しまい そうに なる
ときどき|ないて||そう に|
→ ねえ 遠野 くん は 受験 ?
|とおの|||じゅけん
→ うん 東京 の 大学 受ける
|とうきょう||だいがく|うける
→ 東京 ... そっか そう だ と 思った んだ
とうきょう|そ っか||||おもった|
→ どうして ?
→ 遠く に 行き た そうだ もの なんとなく
とおく||いき||そう だ||
→ 澄 田 は ?
きよし|た|
→ う ~ ん ...
→ 私 明日 の こと も よく 分から ない の よ ね
わたくし|あした|||||わから||||
→ だ ぶん 誰 だって そう だ よ
||だれ||||
→ ワン !
わん
遠野 くん も ?
とおの||
→ もちろん
→ ぜんぜん 迷い なんて ない みたいに 見える
|まよい||||みえる
→ まさか 迷って ばかりな んだ 俺
|まよって|||おれ
→ 出来る こと を なんとか やって る だけ 余裕 ない んだ
できる|||||||よゆう||
→ そっか ...
そ っか
→ そう な んだ
→ 飛行機 ?
ひこうき
→ .. すごい
→ 時速 5 キロ なん だって
じそく|きろ||
→ えっ?
→ 南種子 の 打ち上げ 場 まで
みなみたね||うちあげ|じょう|
→ ああ ...
→ 今年 は 久しぶりに 打ち上げる んだ よ ね
ことし||ひさしぶりに|うちあげる|||
→ ああ 太陽 系 の ずっと 奥 まで 行 くん だって
|たいよう|けい|||おく||ぎょう||
→ 何 年 も かけて
なん|とし||
→ あんた カナエ の 進路 ちゃん と 相談 に 乗って や んな さ いよ
|||しんろ|||そうだん||のって||||
→ ぼんやり した 子 な んだ から
||こ|||
→ 大丈夫 よ あの 子 も もう 子供 じゃ ない んだ し
だいじょうぶ|||こ|||こども||||
→ 私 も 昔 は ああ だった なぁ ...
わたくし||むかし||||
→ ねえ カブ 遠野 くん も 分から ない んだって
|かぶ|とおの|||わから||ん だって
→ 一緒な んだ ... 遠野 くん も
いっしょな||とおの||
→ それ は 本当に ...
||ほんとうに
→ 想像 を 絶する くらい 孤独な 旅 である はずだ
そうぞう||ぜっする||こどくな|たび||
→ 本当の 暗 閣 の 中 を ただ ひたむきに
ほんとうの|あん|かく||なか|||
→ 1 つ の 水素 原子 に さえ 滅多に 出会う こと なく
||すいそ|げんし|||めったに|であう||
→ ただただ 深淵 に ある はず と 信じる 世界 の 秘密に 近づきたい ー 心 で
|しんえん|||||しんじる|せかい||ひみつに|ちかづき たい|-|こころ|
→ 僕たち は そう やって どこ まで 行く のだろう
ぼくたち||||||いく|
→ どこ まで 行ける のだろう
||いける|
→ 出す あて の ない メール を 打つ クセ が ついた の は いつ から だろう
だす||||めーる||うつ|くせ|||||||
→ カナエ あんた 進路 決めた の ?
||しんろ|きめた|
→ う うん やっぱり まだ 分か ん ない けど で も いい の 決めた の !
||||わか||||||||きめた|
→ 1 つ ずつ 出来る こと から やる の 行って くる !
||できる|||||おこなって|
→ あの 日 から いくつか の 台風 が 通りすぎ その たび に 島 は 少しずつ す ず しく なって いった
|ひ||いく つ か||たいふう||とおりすぎ||||しま||すこしずつ|||||
→ サトウキビ を 揺らす 風 が かすかに 冷気 を 孕み
さとうきび||ゆらす|かぜ|||れいき||はらみ
→ 空 が ほんの 少し 高く なり 雲 の 輪郭 が 優しく なって カブ に 乗る 同級 生 たち が 薄い シャンパー を 羽織る ように なった
から|||すこし|たかく||くも||りんかく||やさしく||かぶ||のる|どうきゅう|せい|||うすい|||はおる||
→ 私 が 半年 ぶり に 波 の 上 に 立てた の は また 夏 が かろうじて のる そんな 10 月 の 半ば だった
わたくし||はんとし|||なみ||うえ||たてた||||なつ|||||つき||なかば|
→ 本日 夕方 から の 天候 は 晴れ 最大 風速 は 8 m の 予報 と なって います
ほんじつ|ゆうがた|||てんこう||はれ|さいだい|ふうそく||||よほう|||い ます
→ 佐々木 さん 山田 から 告白 さ れた らしい よ
ささき||やまだ||こくはく||||
→ さすが だ な ー
|||-
→ あれ ?
カナエ なんか 今日 嬉し そう ね
||きょう|うれし||
→ 遠野 くん と なんか あった の ?
とおの|||||
→ ワン !
わん
→ 私 だって 今日 こそ ...
わたくし||きょう|
→ 遠野 くん に 告白 する んだ
とおの|||こくはく||
→ 波 に 乗れた 今日 言わ なければ この先 の きっと ... ずっと 言え ない
なみ||のれた|きょう|いわ||このさき||||いえ|
→ 澄 田
きよし|た
→ と ...
→ 遠野 くん ...
とおの|
→ 今 帰り ?
いま|かえり
→ そっか
そ っか
→ じゃあ 一緒に 帰ろう よ
|いっしょに|かえろう|
→ あれ 澄 田 今日 は もう 決まり ?
|きよし|た|きょう|||きまり
→ どうした の ?
→ ... しく し ないで
→ え ?
→ ごめん ... 何でもない の
|なんでもない|
→ 調子 悪い ?
ちょうし|わるい
→ うん ヘン だ なぁ
→ ダメ ?
だめ
→ うん ... プラグ の 寿命 な んじゃ ない の か な これ お下がり ?
|ぷらぐ||じゅみょう||||||||おさがり
→ うん お 姉ちゃん の
||ねえちゃん|
→ 加速 で 息継ぎ して なかった ?
かそく||いきつぎ||
→ して た かも
→ 今日 は ここ に 置か せて もらって 後 で 家 の 人 に 取り に きて もらい な よ
きょう||||おか|||あと||いえ||じん||とり|||||
→ 今日 は 歩こう
きょう||あるこう
→ えっ私 一 人 で 歩く よ ! 遠野 くん は 先 帰って
えっ わたくし|ひと|じん||あるく||とおの|||さき|かえって
→ ここ まで きれば 近い から それ に ちょっと ... 歩きたい んだ
|||ちかい|||||あるき たい|
→ 遠野 くん ...
とおの|
→ お 願い ...
|ねがい
→ どうした の !
→ ごめん なんでもない の
→ ごめん ね ...
→ 澄 田 ...
きよし|た
→ お 願い だ から ... もう ...
|ねがい|||
→ 私 に ...
わたくし|
→ やさしく し ないで ....!
→ 必死に ただ 閣 雲 に 空 に 手 を 伸ばして あんなに 大きな カタマリ を 打ち上げて 気 の 遠く なる くらい むこうに ある 何 か 見つめて
ひっしに||かく|くも||から||て||のばして||おおきな|||うちあげて|き||とおく|||||なん||みつめて
→ 遠野 くん が 他の 人 と 違って 見える 理由 が
とおの|||たの|じん||ちがって|みえる|りゆう|
→ 少し だけ 分かった 気 が した
すこし||わかった|き||
→ そして 同時に 遠野 くん は 私 を 見て なんて いない んだ と いう こと に
|どうじに|とおの|||わたくし||みて|||||||
→ 私 は ハッキリ と 気づいた
わたくし||はっきり||きづいた
→ だ から その 日 私 の 遠野 くん に 何も 言え なかった
|||ひ|わたくし||とおの|||なにも|いえ|
→ 遠野 くん は 優しい けれど
とおの|||やさしい|
→ とても 優しい けれど
|やさしい|
→ でも ー
|-
→ 遠野 くん は いつも
とおの|||
→ 私 の ずっと むこう ... もっと ずっと 遠く の 何 か を 見て いる
わたくし||||||とおく||なん|||みて|
→ 私 が 遠野 くん に 望む こと は きっと 叶わ ない
わたくし||とおの|||のぞむ||||かなわ|
→ それ でも ...
→ それ でも 私 は 遠野 くん の こと を きっと 明日 も 明後日 も その先 も やっぱり どう しよう も なく 好きな んだ と 思う
||わたくし||とおの||||||あした||みょうごにち||そのさき|||||||すきな|||おもう
→ 遠野 くん の こと だけ を 想い ながら 泣き ながら 私 は 眼った
とおの||||||おもい||なき||わたくし||がん った
→ 今 振り返れば きっと あの 人 振り返る と 強く 感じた
いま|ふりかえれば|||じん|ふりかえる||つよく|かんじた
→ 中央 . 総 武 最終 電車 東京 行き が 到着 します
ちゅうおう|そう|ぶ|さいしゅう|でんしゃ|とうきょう|いき||とうちゃく|し ます
→ お 正月 で いれば いい のに
|しょうがつ||||
→ うん ... でも 色々 準備 も ある から
||いろいろ|じゅんび|||
→ そう だ な 彼 に も うまい もの 作って やれよ
|||かれ|||||つくって|
→ 何 か あったら 電話 する の よ アカリ
なん|||でんわ||||
→ 大丈夫 よ 来月 に は 式 で 会う んだ から そんなに 心配 し ないで
だいじょうぶ||らいげつ|||しき||あう||||しんぱい||
→ 寒い から もう 戻り な よ
さむい|||もどり||
→ ゆうべ 昔 の 夢 を 見た
|むかし||ゆめ||みた
→ 私 も 彼 も まだ 子供 だった
わたくし||かれ|||こども|
→ きっと 昨日 見つけた 手紙 の せい だ
|きのう|みつけた|てがみ|||
→ 水野 さん
みずの|
→ あ はい
→ ミーテイング いい かな ?
→ はい
→ ただ 生活 を して いる だけ で 哀しみ は そこ ここ に 積もる 日 に 干した シーツ に も 洗面 所 の 歯 ブラシ に も 携帯 電話 の 履歴 に も
|せいかつ||||||かなしみ|||||つもる|ひ||ほした|しーつ|||せんめん|しょ||は|ぶらし|||けいたい|でんわ||りれき||
→ あなた の こと は 今 でも 好きです と
||||いま||すきです|
→ 三 年間 付き合った 女性 は そう メール に 書いて いた
みっ|ねんかん|つきあった|じょせい|||めーる||かいて|
→ でも 私 たち は きっと 1000 回 も メール を やりとり して
|わたくし||||かい||めーる|||
→ 多分 心 は 1 センチ くらい しか 近づけません でした と
たぶん|こころ||せんち|||ちかづけ ませ ん||
→ この 数 年間 とにかく 前 に 進み たくて 届か ない もの に 手 を 触れ たくて それ が 具体 的に 何 を 指す の かも
|すう|ねんかん||ぜん||すすみ||とどか||||て||ふれ||||ぐたい|てきに|なん||さす||
→ ほ とんと 脅迫 的 と も 言える ような その 想い が
||きょうはく|てき|||いえる|||おもい|
→ どこ から 湧いて くる の かも 分から ず に 僕 は ただ働き 続け
||わいて||||わから|||ぼく||ただばたらき|つづけ
→ 気づけば 日々 弾力 を 失って いく 心 が ひたすら 辛かった
きづけば|ひび|だんりょく||うしなって||こころ|||からかった
→ そして ある 朝 かつて あれほど まで に 真剣で 切実だった 思い が
||あさ|||||しんけんで|せつじつだった|おもい|
→ 綺麗に 失われて る こと に 僕 は 気づき もう 限界 だ と 知った とき 会社 を 辞めた
きれいに|うしなわ れて||||ぼく||きづき||げんかい|||しった||かいしゃ||やめた
→ 昨日 夢 を 見た
きのう|ゆめ||みた
→ ずっと 昔 の 夢
|むかし||ゆめ
→ その 夢 の 中 で は 僕たち は まだ 13 歳 で
|ゆめ||なか|||ぼくたち|||さい|
→ そこ は 一面の 雪 に 覆わ れた 広い 田園 で 人家 の 灯り は ずっと 遠く に まばらに 見える だけ で
||いちめんの|ゆき||おおわ||ひろい|でんえん||じんか||ともり|||とおく|||みえる||
→ 振り 積もる 新雪 に は 私 たち の 歩いて きた 足跡 しか なかった
ふり|つもる|しんせつ|||わたくし|||あるいて||あしあと||
→ そう やって いつか また 一緒に 桜 を 見る こと が 出来る と 私 も 彼 も なんの 迷い も なく そう 思って いた
||||いっしょに|さくら||みる|||できる||わたくし||かれ|||まよい||||おもって|