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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第四章 第一三艦隊誕生 (3)

第 四 章 第 一三 艦隊 誕生 (3)

しかし 孫 は ヤン の 顔 を 見 ながら も 、 祖母 の 服 に しがみついて 離れよう と し ない 。

「 なん です 、 ウィル 、 そんな こと で 勇敢な 軍人 に なれる と 思う の 」

「 メイヤー 夫人 」

心 の なか で 汗 を ぬぐい ながら ヤン は 声 を かけた 。

「 ウィル 坊や が 成人 する ころ は 平和な 時代 に なって います よ 。 無理に 軍人 に なる 必要 は なく なって る でしょう …… 坊や 、 元気で 」

かるく 一礼 する と 、 ヤン は きび す を 返して 速い 歩調 で その 場 を たち去った 。 要するに 逃げだした のである 。 それ を 不名誉 と は 思わ なかった 。

Ⅲ ヤン が 、 シルバーブリッジ 街 二四 番地 の 官舎 に 帰った とき 、 ハイネセン 標準 時 の 二〇 時 を 腕 時計 は しめして いた 。 その 一帯 は 独身 者 または 小 家族 を 対象 と する 高級 士官 用 の 住宅 地区 で 、 自然の 葉緑素 の さわやかな 香気 が 漂って いる 。

と は いって も 、 建物 や 設備 は かならずしも あたらしい と か 豪華だ と か は 言え ない 。 土地 に 余裕 が あり 緑 に 富んで いる の は 、 新築 または 増改築 に 要する 費用 が 慢性 的に 不足 して いる から である 。

低 速度 の 走 路 から おりて 、 ヤン は 手入れ の 悪い 広い 共用 芝生 を 横断 した 。 識別 装置 を そなえた 門扉 が 、 過重 労働 にたいする 不平 の きしみ を たて ながら も B 六 号 官舎 の 主人 を 迎えいれる 。 私費 を 投じて も そろそろ とりかえる べき か な 、 と ヤン は 思った 。 経理 部 に 交渉 して も なかなか らち が あか ない のだ 。

「 お 帰り なさい 、 准将 」

ユリアン ・ ミンツ 少年 が ポーチ に 彼 を 出迎えた 。

「 もしかしたら 帰って いらっしゃら ない か と 思って いた んです 。 でも よかった 。 お 好きな アイリッシュ ・ シチュー を つくって ある んです よ 」

「 そい つ は 空腹で 帰って きた 甲 が あった 。 だけど 、 なぜ そう 思った んだ 」

「 キャゼルヌ 少将 から ご 連絡 を いただいた んです 」

ヤン の 軍用 ベレー を うけとり ながら 少年 は 答えた 。

「 あいつ は 式典 の 途中 で 美人 と 手 に 手 を とって 抜けだしたって 言って おら れ ました よ 」 「 あの 野郎 ……」

玄関 に はいり ながら ヤン は 苦笑 した 。

ユリアン ・ ミンツ 少年 は ヤン の 被 保護 者 で 、 一四 歳 に なる 。 身長 は 年齢 相応 だ 。 亜麻 色 の 頭髪 と ダーク ・ ブラウン の 瞳 と 繊細な 容貌 を もって おり 、 キャゼルヌ など は 「 ヤン の お 小 姓 」 と 呼ぶ こと が ある 。

ユリアン 少年 は 二 年 前 、〝 軍人 子女 福祉 戦時 特例 法 〟 に よって ヤン の 被 保護 者 と なった のだ 。 これ は 発案 者 の 名 を とって 〝 トラバース 法 〟 と 通称 されて いる 。 自由 惑星 同盟 は 、 一 世紀 半 に わたって 銀河 帝国 と 戦争 状態 に ある 。 それ は 慢性 的な 戦死 者 、 戦災 者 の 発生 を 意味 する 。 親族 の ない 戦争 孤児 の 救済 と 、 人 的 資源 確保 の 一石二鳥 を 目的 と して つくら れた の が トラバース 法 だった 。

孤児 たち が 軍人 の 家庭 で 養育 さ れる 。 一定 額 の 養育 費 が 政府 から 貸与 さ れる 。 孤児 たち は 一五 歳 まで 一般 の 学校 に かよう 。 以後 の 進路 選択 は 本人 の 意思 しだい だ が 、 軍隊 に 志願 して 少年 兵 と なったり 士官 学校 や 技術 学校 等 の 軍 関係 の 学校 に 入学 すれば 、 養育 費 の 返還 は 免除 さ れる のだ 。

軍隊 に とって は 、 女性 も 後方 勤務 に は 欠かせ ない 人 的 資源 であり 、 補給 、 経理 、 輸送 、 通信 、 管制 、 情報 処理 、 施設 管理 など に 必要な のである 。

「 要するに 中世 以来 の 徒弟 制度 と 思えば よろしい 。 もっと 悪質 か な 、 金銭 で 将来 を 縛ろう と いう んだ から 」

当時 、 後方 勤務 本部 に 所属 して いた キャゼルヌ は そう 皮肉 たっぷり に 説明 した もの だ 。

「 しかし とにかく 、 餌 が なければ 人間 は 生きて いけ ん 、 これ は 事実 だ から な 。 で 、 飼育 係 が 必要な わけだ が 、 お前 さん に も ひと り ぐらい ひきうけて もらいたい 」 「 私 は 家庭 もち じゃ ありません よ 」 「 だ から だ 、 妻子 を 養う と いう 社会 的 義務 を はたして いない わけだろう が 。 養育 費 も でる こと だ し 、 これ ぐらい は ひきうけて もらわ ん と な 、 ええ 、 独身 貴族 」

「 わかり ました 。 でも ひと り だけ です よ 」

「 なんなら 二 名 で も いい んだ が 」

「 ひと り で 充分です 」

「 そう か 、 では 二 人 前 食う ような 奴 を 探して きて やる 」

両者 の あいだ で 以上 の ような 会話 が かわされて から 四 日 後 、 ユリアン 少年 は ヤン 宅 の 玄関 に 立った のだった 。 ユリアン は 即日 、 ヤン 家 の なか に 自分 の 位置 を 確保 した 。 それ まで ヤン 家 の 唯一 の 構成 員 は 有能 勤勉な 家庭 経営 者 と は 称し がたく 、 せっかく ホーム ・ コンピューター が あって も 情報 を いれる こと を 怠る もの だ から けっきょく は 無用の 長 物 と 化し 、 それ に ともなって あらゆる 生活 機器 も 埃 を かぶる と いう ありさま だった のである 。

ユリアン は 自分 自身 の ため に も 家庭 の 物質 的 環境 を 整備 しよう と 決意 した らしい 。 ユリアン が ヤン 家 の 住人 と なった 翌々日 、 若い 当主 は 短 期間 の 出張 に でかけた が 、 一 週間 後 に 帰宅 して 、 整頓 と 能率 の 連合 軍 に 占領 さ れた わが家 を 見いだした のだった 。

「 ホーム ・ コンピューター の 情報 を 六 部門 に 分類 して 整理 し ました 」

一二 歳 の 占領 軍 司令 官 は 、 呆然と 立ちすくむ 当主 に そう 報告 した 。

「 ええ と 、1 家庭 経営 管理 、2 機器 制御 、3 保安 、4 情報 収集 、5 家庭 学習 、6 娯楽 です 。 家計 簿 と か 毎日 の メニュー が 1、 冷暖房 と か 掃除 機 と か 洗濯 機 と か が 2、 防犯 や 消火 装置 が 3、 ニュース や 天気 予報 や 買物 情報 が 4…… おぼえて おいて ください ね 、 大佐 」

当時 、 ヤン は 大佐 だった 。 彼 は 無言 で 居間 兼 食堂 の ソファー に 腰 を おろし 、 この 無邪気な 笑顔 の 小さな 侵略 者 に なんと 言って やろう か と 考えた 。

「 それ と 掃除 も して おき ました 。 ベッド の シーツ も 洗濯 して あります 。 あの 、 家中 きちんと 整頓 できた と 思います けど 、 ご 不満 が あったら おっしゃって ください 。 なに かご 用 は ありません か ? 」 「…… 紅茶 を 一杯 もらおう か 」 そう ヤン が 言った の は 、 好きな 紅茶 で 喉 を 湿して から 苦情 を 言って やろう と 思った から だ が 、 キッチン に とんで いった 少年 が 、 新品 同様に 綺麗に なった ティーセット を はこんで きて 彼 の 眼前 で シロン 星 産 の 茶 を 淹 れた 、 その 手 さばき に 驚いた 。

さしださ れた 茶 を ひと 口 すすって 、 彼 は 少年 に 降伏 する こと に した 。 それほど 香り も 味 も よかった のだ 。 ユリアン の 亡父 は 宇宙 艦隊 の 大尉 だった が 、 ヤン 以上 の 茶 道楽 で 、 息子 に 茶 の 種類 や 淹 れ かた を 伝授 した のだ と いう 。

ヤン が ユリアン 少年 式 の 家庭 経営 を うけいれて から 半月 後 、 三 次元 チェス を やり に 訪問 した キャゼルヌ が 室 内 を 見わたして 論評 した 。

「 有 史 以来 初めて 、 お前 さん の 家 が 清潔に なった じゃ ない か 。 親 が 無能 なら そのぶん 、 子供 が しっかり する と いう の は 真実 らしい な 」

ヤン は 反論 し なかった 。

…… それ から 二 年 たつ 。 ユリアン は 身長 も 一〇 センチ 以上 伸び 、 ほんの すこし だ が おとなっぽく なった 。 学業 成績 も よい ようだ 。 ようだ 、 と 言う の は 、 落第 でも し ない かぎり いちいち 報告 無用 と 保護 者 が 宣告 する いっぽう で 、 被 保護 者 の ほう は ときおり 表彰 メダル など もち帰って くる から である 。 キャゼルヌ に 言わ せれば 〝 出 藍 の 誉 〟 と いう こと に なる 。

「 今日 、 学校 で 来年 以降 の 進路 を 訊 かれ ました 」

食事 を し ながら ユリアン が そう 言った の は 珍しい こと だった 。 ヤン は シチュー を すくう スプーン の うごき を 停めて 、 少年 を 見 やった 。

「 卒業 は 来年 六 月 じゃ ない の か 」

「 単位 を 取得 して 半年 早く 卒業 できる 制度 が ある んです よ 」

「 ほう 」

と 無責任な 保護 者 は 感心 した 。

「 で 、 軍人 に なる つもりな の か ? 」 「 ええ 、 ぼく は 軍人 の 子 です から 」 「 親 の 職業 を 子 が つが なきゃ なら ん と いう 法 は ない さ 。 現に 私 の 父親 は 交易 商 だった 」

ほか に なりたい 職業 が あれば それ に つく こと だ 、 と ヤン は 言った 。 宇宙 港 で 会った ウィル 坊や の 幼い 顔 が 想い ださ れた 。

「 でも 軍務 に つか ない と 養育 費 を 返さ なければ なりません から ……」 「 返す さ 」

「 え ? 」 「 お前 の 保護 者 を 過小 評価 する な よ 。 それ ぐらい の 貯蓄 は ある 。 だいいち 、 そんなに 早く 卒業 する 必要 は ない んだ 。 もう すこし 遊んで たら どう だ ? 」 少年 は なめらかな 頰 を 染めた ようである 。 「 そこ まで ご 迷惑 は かけ られません 」 「 生意気 言う な 、 子供 の くせ に 。 子供って の はな 、 おとな を 喰物 に して 成長 する もの だ 」 「 ありがとう ございます 、 でも ……」

「 でも なんだ 。 そんなに 軍人 に なりたい の か 」 ユリアン は 不審 そうに ヤン の 顔 を 見た 。

「 なんだか 軍人 が お 嫌い みたいに 聞こえます けど ……」 「 嫌いだ よ 」

簡明な ヤン の 返答 は 少年 を 困惑 さ せた 。

「 だって 、 それ じゃ なぜ 、 軍人 に お なり に なった んです ? 」 「 決まって る 。 ほか に 能 が なかった から だ 」

ヤン は シチュー を 食べ 終わり 、 ナプキン で 口 を ぬぐった 。 ユリアン は 食器 を さげ 、 キッチン の 皿 洗 機 を ホーム ・ コンピューター で 操作 した 。 ティーセット を はこんで きて 、 シロン 葉 の 紅茶 を 淹 れ はじめる 。

「 まあ 、 もう すこし 考えて から 決め なさい 。 あわてる こと は なにも ない 」

「 はい 、 そう します 。 でも 、 准将 、 ニュース で 言って ました けど 、 ローエングラム 伯 が 軍務 に ついた の は 一五 歳 の とき で すって ね 」

「 そう らしい な 」

「 顔 が 映り ました けど 、 すごい 美男 子 です ね 。 ご存じ でした か ? 」 ローエングラム 伯 ラインハルト の 顔 なら 、 直接で は ない が レーザー 立体 像 など で ヤン は 幾 度 か 見た こと が ある 。 後方 勤務 本部 の 女性 兵 たち の あいだ で は 、 同盟 軍 の どの 士官 より も 人気 が 高い 、 と の 噂 も 聞いた 。 さも あろう 。 あれほど 美貌 の 若者 を 、 ヤン も ほか に 見た こと が ない 。

「 だけど 私 だって そう 悪く は ない はずだ 。 そう だろう 、 ユリアン ? 」 「 紅茶 に は ミルク を いれます か 、 ブランデー に なさ います か ? 」 「…… ブランデー 」 その とき 神経質な 音 と ともに 防犯 システム の 赤い ランプ が 点滅 した 。 ユリアン が モニター TV の スイッチ を いれる と 、 赤外線 利用 の 画面 に 多く の 人影 が 映った 。 その 全員 が 白い 頭巾 を 頭から かぶり 、 両眼 だけ を だして いる 。

「 ユリアン 」

「 はい ? 」 「 最近 は ああいう 道化 師 ども が 集団 で 家庭 訪問 する の が 流行って いる の か 」 「 あれ は 憂国 騎士 団 です よ 」

「 そんな サーカス 団 は 知ら ない な 」

「 過激な 国家 主義 者 の 集団 な んです 。 反 国家 的 、 反戦 的な 言動 を する 人 に いろんな いやがらせ を する んで 、 最近 有名な んです …… でも 変だ な 、 なんで うち に おしかけて くる んだろう 。 准将 は 賞 められる こと は あって も 非難 さ れる ような こと は ありません よ ね 」 「 奴 ら は 何 人 いる ? 」 と ヤン は 何気なく 話題 を そら せた 。 ユリアン が モニター 画面 の 隅 の 数字 を 読んだ 。

「 四二 人 です 、 敷地 内 に 侵入 した の は 。 あ 、 四三 人 、 四四 人 に なり ました 」

「 ヤン 准将 ! 」 マイク を とおした 大声 が 特殊 ガラス の 壁面 を 微妙に 震わせた 。 「 は いはい 」

ヤン は つぶやいた が 、 屋外 に つうじる はず は ない 。

「 吾々 は 真に 国 を 愛する 者 の 集団 、 憂国 騎士 団 だ 。 吾々 は きみ を 弾劾 する ! 戦 功 に 驕った か 、 きみ は 軍 の 意思 統一 を 乱し 戦意 を そこなう 行動 を しめした 。

第 四 章 第 一三 艦隊 誕生 (3) だい|よっ|しょう|だい|かずみ|かんたい|たんじょう

しかし 孫 は ヤン の 顔 を 見 ながら も 、 祖母 の 服 に しがみついて 離れよう と し ない 。 |まご||||かお||み|||そぼ||ふく|||はなれよう|||

「 なん です 、 ウィル 、 そんな こと で 勇敢な 軍人 に なれる と 思う の 」 ||||||ゆうかんな|ぐんじん||||おもう|

「 メイヤー 夫人 」 |ふじん

心 の なか で 汗 を ぬぐい ながら ヤン は 声 を かけた 。 こころ||||あせ||||||こえ||

「 ウィル 坊や が 成人 する ころ は 平和な 時代 に なって います よ 。 |ぼうや||せいじん||||へいわな|じだい|||| 無理に 軍人 に なる 必要 は なく なって る でしょう …… 坊や 、 元気で 」 むりに|ぐんじん|||ひつよう||||||ぼうや|げんきで

かるく 一礼 する と 、 ヤン は きび す を 返して 速い 歩調 で その 場 を たち去った 。 |いちれい||||||||かえして|はやい|ほちょう|||じょう||たちさった 要するに 逃げだした のである 。 ようするに|にげだした| それ を 不名誉 と は 思わ なかった 。 ||ふめいよ|||おもわ|

Ⅲ ヤン が 、 シルバーブリッジ 街 二四 番地 の 官舎 に 帰った とき 、 ハイネセン 標準 時 の 二〇 時 を 腕 時計 は しめして いた 。 |||がい|にし|ばんち||かんしゃ||かえった|||ひょうじゅん|じ||ふた|じ||うで|とけい||| その 一帯 は 独身 者 または 小 家族 を 対象 と する 高級 士官 用 の 住宅 地区 で 、 自然の 葉緑素 の さわやかな 香気 が 漂って いる 。 |いったい||どくしん|もの||しょう|かぞく||たいしょう|||こうきゅう|しかん|よう||じゅうたく|ちく||しぜんの|ようりょくそ|||こうき||ただよって|

と は いって も 、 建物 や 設備 は かならずしも あたらしい と か 豪華だ と か は 言え ない 。 ||||たてもの||せつび||||||ごうかだ||||いえ| 土地 に 余裕 が あり 緑 に 富んで いる の は 、 新築 または 増改築 に 要する 費用 が 慢性 的に 不足 して いる から である 。 とち||よゆう|||みどり||とんで||||しんちく||ぞうかいちく||ようする|ひよう||まんせい|てきに|ふそく||||

低 速度 の 走 路 から おりて 、 ヤン は 手入れ の 悪い 広い 共用 芝生 を 横断 した 。 てい|そくど||はし|じ|||||ていれ||わるい|ひろい|きょうよう|しばふ||おうだん| 識別 装置 を そなえた 門扉 が 、 過重 労働 にたいする 不平 の きしみ を たて ながら も B 六 号 官舎 の 主人 を 迎えいれる 。 しきべつ|そうち|||もんぴ||かじゅう|ろうどう||ふへい||||||||むっ|ごう|かんしゃ||あるじ||むかえいれる 私費 を 投じて も そろそろ とりかえる べき か な 、 と ヤン は 思った 。 しひ||とうじて||||||||||おもった 経理 部 に 交渉 して も なかなか らち が あか ない のだ 。 けいり|ぶ||こうしょう||||||||

「 お 帰り なさい 、 准将 」 |かえり||じゅんしょう

ユリアン ・ ミンツ 少年 が ポーチ に 彼 を 出迎えた 。 ||しょうねん||ぽーち||かれ||でむかえた

「 もしかしたら 帰って いらっしゃら ない か と 思って いた んです 。 |かえって|||||おもって||ん です でも よかった 。 お 好きな アイリッシュ ・ シチュー を つくって ある んです よ 」 |すきな||しちゅー||||ん です|

「 そい つ は 空腹で 帰って きた 甲 が あった 。 |||くうふくで|かえって||こう|| だけど 、 なぜ そう 思った んだ 」 |||おもった|

「 キャゼルヌ 少将 から ご 連絡 を いただいた んです 」 |しょうしょう|||れんらく|||ん です

ヤン の 軍用 ベレー を うけとり ながら 少年 は 答えた 。 ||ぐんよう|||||しょうねん||こたえた

「 あいつ は 式典 の 途中 で 美人 と 手 に 手 を とって 抜けだしたって 言って おら れ ました よ 」 ||しきてん||とちゅう||びじん||て||て|||ぬけだしたって|いって|||| 「 あの 野郎 ……」 |やろう

玄関 に はいり ながら ヤン は 苦笑 した 。 げんかん||||||くしょう|

ユリアン ・ ミンツ 少年 は ヤン の 被 保護 者 で 、 一四 歳 に なる 。 ||しょうねん||||おお|ほご|もの||いちし|さい|| 身長 は 年齢 相応 だ 。 しんちょう||ねんれい|そうおう| 亜麻 色 の 頭髪 と ダーク ・ ブラウン の 瞳 と 繊細な 容貌 を もって おり 、 キャゼルヌ など は 「 ヤン の お 小 姓 」 と 呼ぶ こと が ある 。 あま|いろ||とうはつ||だーく|||ひとみ||せんさいな|ようぼう||||||||||しょう|せい||よぶ|||

ユリアン 少年 は 二 年 前 、〝 軍人 子女 福祉 戦時 特例 法 〟 に よって ヤン の 被 保護 者 と なった のだ 。 |しょうねん||ふた|とし|ぜん|ぐんじん|しじょ|ふくし|せんじ|とくれい|ほう|||||おお|ほご|もの||| これ は 発案 者 の 名 を とって 〝 トラバース 法 〟 と 通称 されて いる 。 ||はつあん|もの||な||||ほう||つうしょう|| 自由 惑星 同盟 は 、 一 世紀 半 に わたって 銀河 帝国 と 戦争 状態 に ある 。 じゆう|わくせい|どうめい||ひと|せいき|はん|||ぎんが|ていこく||せんそう|じょうたい|| それ は 慢性 的な 戦死 者 、 戦災 者 の 発生 を 意味 する 。 ||まんせい|てきな|せんし|もの|せんさい|もの||はっせい||いみ| 親族 の ない 戦争 孤児 の 救済 と 、 人 的 資源 確保 の 一石二鳥 を 目的 と して つくら れた の が トラバース 法 だった 。 しんぞく|||せんそう|こじ||きゅうさい||じん|てき|しげん|かくほ||いっせきにちょう||もくてき||||||||ほう|

孤児 たち が 軍人 の 家庭 で 養育 さ れる 。 こじ|||ぐんじん||かてい||よういく|| 一定 額 の 養育 費 が 政府 から 貸与 さ れる 。 いってい|がく||よういく|ひ||せいふ||たいよ|| 孤児 たち は 一五 歳 まで 一般 の 学校 に かよう 。 こじ|||いちご|さい||いっぱん||がっこう|| 以後 の 進路 選択 は 本人 の 意思 しだい だ が 、 軍隊 に 志願 して 少年 兵 と なったり 士官 学校 や 技術 学校 等 の 軍 関係 の 学校 に 入学 すれば 、 養育 費 の 返還 は 免除 さ れる のだ 。 いご||しんろ|せんたく||ほんにん||いし||||ぐんたい||しがん||しょうねん|つわもの|||しかん|がっこう||ぎじゅつ|がっこう|とう||ぐん|かんけい||がっこう||にゅうがく||よういく|ひ||へんかん||めんじょ|||

軍隊 に とって は 、 女性 も 後方 勤務 に は 欠かせ ない 人 的 資源 であり 、 補給 、 経理 、 輸送 、 通信 、 管制 、 情報 処理 、 施設 管理 など に 必要な のである 。 ぐんたい||||じょせい||こうほう|きんむ|||かかせ||じん|てき|しげん||ほきゅう|けいり|ゆそう|つうしん|かんせい|じょうほう|しょり|しせつ|かんり|||ひつような|

「 要するに 中世 以来 の 徒弟 制度 と 思えば よろしい 。 ようするに|ちゅうせい|いらい||とてい|せいど||おもえば| もっと 悪質 か な 、 金銭 で 将来 を 縛ろう と いう んだ から 」 |あくしつ|||きんせん||しょうらい||しばろう||||

当時 、 後方 勤務 本部 に 所属 して いた キャゼルヌ は そう 皮肉 たっぷり に 説明 した もの だ 。 とうじ|こうほう|きんむ|ほんぶ||しょぞく||||||ひにく|||せつめい|||

「 しかし とにかく 、 餌 が なければ 人間 は 生きて いけ ん 、 これ は 事実 だ から な 。 ||えさ|||にんげん||いきて|||||じじつ||| で 、 飼育 係 が 必要な わけだ が 、 お前 さん に も ひと り ぐらい ひきうけて もらいたい 」 |しいく|かかり||ひつような|||おまえ|||||||| 「 私 は 家庭 もち じゃ ありません よ 」 わたくし||かてい|||| 「 だ から だ 、 妻子 を 養う と いう 社会 的 義務 を はたして いない わけだろう が 。 |||さいし||やしなう|||しゃかい|てき|ぎむ||||| 養育 費 も でる こと だ し 、 これ ぐらい は ひきうけて もらわ ん と な 、 ええ 、 独身 貴族 」 よういく|ひ|||||||||||||||どくしん|きぞく

「 わかり ました 。 でも ひと り だけ です よ 」

「 なんなら 二 名 で も いい んだ が 」 |ふた|な|||||

「 ひと り で 充分です 」 |||じゅうぶん です

「 そう か 、 では 二 人 前 食う ような 奴 を 探して きて やる 」 |||ふた|じん|ぜん|くう||やつ||さがして||

両者 の あいだ で 以上 の ような 会話 が かわされて から 四 日 後 、 ユリアン 少年 は ヤン 宅 の 玄関 に 立った のだった 。 りょうしゃ||||いじょう|||かいわ||||よっ|ひ|あと||しょうねん|||たく||げんかん||たった| ユリアン は 即日 、 ヤン 家 の なか に 自分 の 位置 を 確保 した 。 ||そくじつ||いえ||||じぶん||いち||かくほ| それ まで ヤン 家 の 唯一 の 構成 員 は 有能 勤勉な 家庭 経営 者 と は 称し がたく 、 せっかく ホーム ・ コンピューター が あって も 情報 を いれる こと を 怠る もの だ から けっきょく は 無用の 長 物 と 化し 、 それ に ともなって あらゆる 生活 機器 も 埃 を かぶる と いう ありさま だった のである 。 |||いえ||ゆいいつ||こうせい|いん||ゆうのう|きんべんな|かてい|けいえい|もの|||そやし|||ほーむ|こんぴゅーたー||||じょうほう||い れる|||おこたる||||||むようの|ちょう|ぶつ||かし|||||せいかつ|きき||ほこり|||||||

ユリアン は 自分 自身 の ため に も 家庭 の 物質 的 環境 を 整備 しよう と 決意 した らしい 。 ||じぶん|じしん|||||かてい||ぶっしつ|てき|かんきょう||せいび|||けつい|| ユリアン が ヤン 家 の 住人 と なった 翌々日 、 若い 当主 は 短 期間 の 出張 に でかけた が 、 一 週間 後 に 帰宅 して 、 整頓 と 能率 の 連合 軍 に 占領 さ れた わが家 を 見いだした のだった 。 |||いえ||じゅうにん|||よくよくじつ|わかい|とうしゅ||みじか|きかん||しゅっちょう||||ひと|しゅうかん|あと||きたく||せいとん||のうりつ||れんごう|ぐん||せんりょう|||わがや||みいだした|

「 ホーム ・ コンピューター の 情報 を 六 部門 に 分類 して 整理 し ました 」 ほーむ|こんぴゅーたー||じょうほう||むっ|ぶもん||ぶんるい||せいり||

一二 歳 の 占領 軍 司令 官 は 、 呆然と 立ちすくむ 当主 に そう 報告 した 。 いちに|さい||せんりょう|ぐん|しれい|かん||ぼうぜんと|たちすくむ|とうしゅ|||ほうこく|

「 ええ と 、1 家庭 経営 管理 、2 機器 制御 、3 保安 、4 情報 収集 、5 家庭 学習 、6 娯楽 です 。 ||かてい|けいえい|かんり|きき|せいぎょ|ほあん|じょうほう|しゅうしゅう|かてい|がくしゅう|ごらく| 家計 簿 と か 毎日 の メニュー が 1、 冷暖房 と か 掃除 機 と か 洗濯 機 と か が 2、 防犯 や 消火 装置 が 3、 ニュース や 天気 予報 や 買物 情報 が 4…… おぼえて おいて ください ね 、 大佐 」 かけい|ぼ|||まいにち||めにゅー||れいだんぼう|||そうじ|き|||せんたく|き||||ぼうはん||しょうか|そうち||にゅーす||てんき|よほう||かいもの|じょうほう||||||たいさ

当時 、 ヤン は 大佐 だった 。 とうじ|||たいさ| 彼 は 無言 で 居間 兼 食堂 の ソファー に 腰 を おろし 、 この 無邪気な 笑顔 の 小さな 侵略 者 に なんと 言って やろう か と 考えた 。 かれ||むごん||いま|けん|しょくどう||そふぁー||こし||||むじゃきな|えがお||ちいさな|しんりゃく|もの|||いって||||かんがえた

「 それ と 掃除 も して おき ました 。 ||そうじ|||| ベッド の シーツ も 洗濯 して あります 。 べっど||しーつ||せんたく|| あの 、 家中 きちんと 整頓 できた と 思います けど 、 ご 不満 が あったら おっしゃって ください 。 |うちじゅう||せいとん|||おもいます|||ふまん|||| なに かご 用 は ありません か ? ||よう||| 」 「…… 紅茶 を 一杯 もらおう か 」 こうちゃ||いっぱい|| そう ヤン が 言った の は 、 好きな 紅茶 で 喉 を 湿して から 苦情 を 言って やろう と 思った から だ が 、 キッチン に とんで いった 少年 が 、 新品 同様に 綺麗に なった ティーセット を はこんで きて 彼 の 眼前 で シロン 星 産 の 茶 を 淹 れた 、 その 手 さばき に 驚いた 。 |||いった|||すきな|こうちゃ||のど||しめして||くじょう||いって|||おもった||||きっちん||||しょうねん||しんぴん|どうよう に|きれいに||||||かれ||がんぜん|||ほし|さん||ちゃ||えん|||て|||おどろいた

さしださ れた 茶 を ひと 口 すすって 、 彼 は 少年 に 降伏 する こと に した 。 ||ちゃ|||くち||かれ||しょうねん||こうふく|||| それほど 香り も 味 も よかった のだ 。 |かおり||あじ||| ユリアン の 亡父 は 宇宙 艦隊 の 大尉 だった が 、 ヤン 以上 の 茶 道楽 で 、 息子 に 茶 の 種類 や 淹 れ かた を 伝授 した のだ と いう 。 ||ぼうふ||うちゅう|かんたい||たいい||||いじょう||ちゃ|どうらく||むすこ||ちゃ||しゅるい||えん||||でんじゅ||||

ヤン が ユリアン 少年 式 の 家庭 経営 を うけいれて から 半月 後 、 三 次元 チェス を やり に 訪問 した キャゼルヌ が 室 内 を 見わたして 論評 した 。 |||しょうねん|しき||かてい|けいえい||||はんつき|あと|みっ|じげん|||||ほうもん||||しつ|うち||みわたして|ろんぴょう|

「 有 史 以来 初めて 、 お前 さん の 家 が 清潔に なった じゃ ない か 。 ゆう|し|いらい|はじめて|おまえ|||いえ||せいけつに|||| 親 が 無能 なら そのぶん 、 子供 が しっかり する と いう の は 真実 らしい な 」 おや||むのう|||こども||||||||しんじつ||

ヤン は 反論 し なかった 。 ||はんろん||

…… それ から 二 年 たつ 。 ||ふた|とし| ユリアン は 身長 も 一〇 センチ 以上 伸び 、 ほんの すこし だ が おとなっぽく なった 。 ||しんちょう||ひと|せんち|いじょう|のび|||||| 学業 成績 も よい ようだ 。 がくぎょう|せいせき||| ようだ 、 と 言う の は 、 落第 でも し ない かぎり いちいち 報告 無用 と 保護 者 が 宣告 する いっぽう で 、 被 保護 者 の ほう は ときおり 表彰 メダル など もち帰って くる から である 。 ||いう|||らくだい||||||ほうこく|むよう||ほご|もの||せんこく||||おお|ほご|もの|||||ひょうしょう|めだる||もちかえって||| キャゼルヌ に 言わ せれば 〝 出 藍 の 誉 〟 と いう こと に なる 。 ||いわ||だ|あい||ほまれ|||||

「 今日 、 学校 で 来年 以降 の 進路 を 訊 かれ ました 」 きょう|がっこう||らいねん|いこう||しんろ||じん||

食事 を し ながら ユリアン が そう 言った の は 珍しい こと だった 。 しょくじ|||||||いった|||めずらしい|| ヤン は シチュー を すくう スプーン の うごき を 停めて 、 少年 を 見 やった 。 ||しちゅー|||すぷーん||||とめて|しょうねん||み|

「 卒業 は 来年 六 月 じゃ ない の か 」 そつぎょう||らいねん|むっ|つき||||

「 単位 を 取得 して 半年 早く 卒業 できる 制度 が ある んです よ 」 たんい||しゅとく||はんとし|はやく|そつぎょう||せいど|||ん です|

「 ほう 」

と 無責任な 保護 者 は 感心 した 。 |むせきにんな|ほご|もの||かんしん|

「 で 、 軍人 に なる つもりな の か ? |ぐんじん||||| 」 「 ええ 、 ぼく は 軍人 の 子 です から 」 |||ぐんじん||こ|| 「 親 の 職業 を 子 が つが なきゃ なら ん と いう 法 は ない さ 。 おや||しょくぎょう||こ||||||||ほう||| 現に 私 の 父親 は 交易 商 だった 」 げんに|わたくし||ちちおや||こうえき|しょう|

ほか に なりたい 職業 が あれば それ に つく こと だ 、 と ヤン は 言った 。 |||しょくぎょう|||||||||||いった 宇宙 港 で 会った ウィル 坊や の 幼い 顔 が 想い ださ れた 。 うちゅう|こう||あった||ぼうや||おさない|かお||おもい||

「 でも 軍務 に つか ない と 養育 費 を 返さ なければ なりません から ……」 |ぐんむ|||||よういく|ひ||かえさ||| 「 返す さ 」 かえす|

「 え ? 」 「 お前 の 保護 者 を 過小 評価 する な よ 。 おまえ||ほご|もの||かしょう|ひょうか||| それ ぐらい の 貯蓄 は ある 。 |||ちょちく|| だいいち 、 そんなに 早く 卒業 する 必要 は ない んだ 。 ||はやく|そつぎょう||ひつよう||| もう すこし 遊んで たら どう だ ? ||あそんで||| 」 少年 は なめらかな 頰 を 染めた ようである 。 しょうねん|||||そめた| 「 そこ まで ご 迷惑 は かけ られません 」 |||めいわく||| 「 生意気 言う な 、 子供 の くせ に 。 なまいき|いう||こども||| 子供って の はな 、 おとな を 喰物 に して 成長 する もの だ 」 こどもって|||||しょくもの|||せいちょう||| 「 ありがとう ございます 、 でも ……」

「 でも なんだ 。 そんなに 軍人 に なりたい の か 」 |ぐんじん|||| ユリアン は 不審 そうに ヤン の 顔 を 見た 。 ||ふしん|そう に|||かお||みた

「 なんだか 軍人 が お 嫌い みたいに 聞こえます けど ……」 |ぐんじん|||きらい||きこえます| 「 嫌いだ よ 」 きらいだ|

簡明な ヤン の 返答 は 少年 を 困惑 さ せた 。 かんめいな|||へんとう||しょうねん||こんわく||

「 だって 、 それ じゃ なぜ 、 軍人 に お なり に なった んです ? ||||ぐんじん||||||ん です 」 「 決まって る 。 きまって| ほか に 能 が なかった から だ 」 ||のう||||

ヤン は シチュー を 食べ 終わり 、 ナプキン で 口 を ぬぐった 。 ||しちゅー||たべ|おわり|なぷきん||くち|| ユリアン は 食器 を さげ 、 キッチン の 皿 洗 機 を ホーム ・ コンピューター で 操作 した 。 ||しょっき|||きっちん||さら|あら|き||ほーむ|こんぴゅーたー||そうさ| ティーセット を はこんで きて 、 シロン 葉 の 紅茶 を 淹 れ はじめる 。 |||||は||こうちゃ||えん||

「 まあ 、 もう すこし 考えて から 決め なさい 。 |||かんがえて||きめ| あわてる こと は なにも ない 」

「 はい 、 そう します 。 でも 、 准将 、 ニュース で 言って ました けど 、 ローエングラム 伯 が 軍務 に ついた の は 一五 歳 の とき で すって ね 」 |じゅんしょう|にゅーす||いって||||はく||ぐんむ|||||いちご|さい|||||

「 そう らしい な 」

「 顔 が 映り ました けど 、 すごい 美男 子 です ね 。 かお||うつり||||びなん|こ|| ご存じ でした か ? ごぞんじ|| 」 ローエングラム 伯 ラインハルト の 顔 なら 、 直接で は ない が レーザー 立体 像 など で ヤン は 幾 度 か 見た こと が ある 。 |はく|||かお||ちょくせつで||||れーざー|りったい|ぞう|||||いく|たび||みた||| 後方 勤務 本部 の 女性 兵 たち の あいだ で は 、 同盟 軍 の どの 士官 より も 人気 が 高い 、 と の 噂 も 聞いた 。 こうほう|きんむ|ほんぶ||じょせい|つわもの||||||どうめい|ぐん|||しかん|||にんき||たかい|||うわさ||きいた さも あろう 。 あれほど 美貌 の 若者 を 、 ヤン も ほか に 見た こと が ない 。 |びぼう||わかもの||||||みた|||

「 だけど 私 だって そう 悪く は ない はずだ 。 |わたくし|||わるく||| そう だろう 、 ユリアン ? 」 「 紅茶 に は ミルク を いれます か 、 ブランデー に なさ います か ? こうちゃ|||みるく||||||な さ|| 」 「…… ブランデー 」 その とき 神経質な 音 と ともに 防犯 システム の 赤い ランプ が 点滅 した 。 ||しんけいしつな|おと|||ぼうはん|しすてむ||あかい|らんぷ||てんめつ| ユリアン が モニター TV の スイッチ を いれる と 、 赤外線 利用 の 画面 に 多く の 人影 が 映った 。 ||もにたー|||すいっち||い れる||せきがいせん|りよう||がめん||おおく||ひとかげ||うつった その 全員 が 白い 頭巾 を 頭から かぶり 、 両眼 だけ を だして いる 。 |ぜんいん||しろい|ずきん||あたまから||りょうがん||||

「 ユリアン 」

「 はい ? 」 「 最近 は ああいう 道化 師 ども が 集団 で 家庭 訪問 する の が 流行って いる の か 」 さいきん|||どうけ|し|||しゅうだん||かてい|ほうもん||||はやって||| 「 あれ は 憂国 騎士 団 です よ 」 ||ゆうこく|きし|だん||

「 そんな サーカス 団 は 知ら ない な 」 |さーかす|だん||しら||

「 過激な 国家 主義 者 の 集団 な んです 。 かげきな|こっか|しゅぎ|もの||しゅうだん||ん です 反 国家 的 、 反戦 的な 言動 を する 人 に いろんな いやがらせ を する んで 、 最近 有名な んです …… でも 変だ な 、 なんで うち に おしかけて くる んだろう 。 はん|こっか|てき|はんせん|てきな|げんどう|||じん|||||||さいきん|ゆうめいな|ん です||へんだ||||||| 准将 は 賞 められる こと は あって も 非難 さ れる ような こと は ありません よ ね 」 じゅんしょう||しょう||||||ひなん|||||||| 「 奴 ら は 何 人 いる ? やつ|||なん|じん| 」 と ヤン は 何気なく 話題 を そら せた 。 |||なにげなく|わだい||| ユリアン が モニター 画面 の 隅 の 数字 を 読んだ 。 ||もにたー|がめん||すみ||すうじ||よんだ

「 四二 人 です 、 敷地 内 に 侵入 した の は 。 しに|じん||しきち|うち||しんにゅう||| あ 、 四三 人 、 四四 人 に なり ました 」 |しさん|じん|しし|じん|||

「 ヤン 准将 ! |じゅんしょう 」 マイク を とおした 大声 が 特殊 ガラス の 壁面 を 微妙に 震わせた 。 まいく|||おおごえ||とくしゅ|がらす||へきめん||びみょうに|ふるわせた 「 は いはい 」

ヤン は つぶやいた が 、 屋外 に つうじる はず は ない 。 ||||おくがい|||||

「 吾々 は 真に 国 を 愛する 者 の 集団 、 憂国 騎士 団 だ 。 われ々||しんに|くに||あいする|もの||しゅうだん|ゆうこく|きし|だん| 吾々 は きみ を 弾劾 する ! われ々||||だんがい| 戦 功 に 驕った か 、 きみ は 軍 の 意思 統一 を 乱し 戦意 を そこなう 行動 を しめした 。 いくさ|いさお||きょうった||||ぐん||いし|とういつ||みだし|せんい|||こうどう||