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百物語 - Yōkai​ Stories, 二人の幽霊

二 人 の 幽霊

二 人 の 幽霊

むかし むかし 、 ある 町 に 、 色白で 気 の 弱い 、 新 兵衛 と いう 侍 が い ました 。 弓 も 刀 も 駄目で 、 仲間 から は 腰抜け 呼ばわり さ れて い ました 。

さて 、 この 町 に 、 元 は 町 一 番 の 長者 屋敷 だった のです が 、 今 は 荒れ果てて 幽霊 が 出る と の 噂 の 屋敷 が あり ました 。 ある 日 、 仲間 の 侍 たち から 、 「 どんなに 強い 侍 でも 、 一晩 とおれ ん と いう ぞ 。 お 主 なんか 、 門 を くぐる 事 さえ も 出来 まい 。 あ は は は は はっ 」 と 、 馬鹿に さ れた 新 兵衛 は 、 「 そこ まで 言わ れて は 、 何が何でも 泊まって やる わ ! 」 と 、 家 に 帰って 腹ごしらえ を する と 、 おっかなびっくり 幽霊 屋敷 へ 出かけて 行き ました 。

草 が ぼう ぼう の 庭 に 入って 行く と 、 さっそく 人 魂 が 西 と 東 から 一 つ ずつ 、 す すーっと 飛んで 来 ました 。 「 う ひ ゃ ー っ 、 人 魂 が 二 つ も ! 」 新 兵衛 は 逃げ出し たい の を 我慢 して 、 恐る恐る 屋敷 に 入り ました 。 やがて 、 ろうそく の 火 が ひと ゆれ した か と 思う と 、 「 うらめし や あ ・・・」 と 、 髪 の 長い 女 の 幽霊 が 、 銀 の お 金 の 入った 箱 を 抱いて 現れ ました 。 「 で っ 、 出た ー ! 」 新 兵衛 が 震え上がり ながら も 何とか こらえて いる と 、 カギ を 手 に した 男 の 幽霊 も 現れ ました 。 男女 の 幽霊 が 一緒に 出て 来る なんて 、 よほど の 訳 が ある のでしょう 。 新 兵衛 が 思い切って 、 訳 を 聞いて みる と 、 「 わたし たち 二 人 は 、 この 屋敷 で 働いて いた 者 同士 です 。 結婚 の 約束 を した のです が 、 主人 が それ を 許して くれ ませ ん 」 と 、 男 の 幽霊 が 語り 始め ました 。 「 そこ で 屋敷 の お 金 を 持ち出して 、 よそ の 町 へ 逃げて 暮らそう と した のです が 、 主人 に 見つかって しまい 、 二 人 と も 斬り 殺さ れて しまい ました 。 そして 別々の ところ に 埋め られ 、 今 も そのまま な のです 。 わたし たち は その うらみ から 屋敷 の 主人 に たたって やり ました が 、 未 だに 成仏 出来 ませ ん 。 どうか この お 金 で お 坊さん を 呼んで 、 成仏 さ せて ください 」 「・・・ そう だった の か 。 わかった 」 新 兵衛 が 引き受ける と 、 男女 の 幽霊 は 人 魂 に なって 、 すーっと 出て 行き ました 。 座敷 に は 銀 の お 金 が ずっしり 入った 箱 と 、 その 箱 の カギ が 残さ れて い ます 。

あくる 朝 、 新 兵衛 は 幽霊 屋敷 の 出来事 を 寺 の 和尚 さん に 伝えて 、 二 人 の 供養 を して もらい ました 。 この 話し を 聞いた 、 この 国 の 殿さま は 、 「 腰抜け どころ か 、 新 兵衛 の 働き は 侍 の 鏡 である ぞ 。 ほめて とら す 」 と 、 褒美 と して 、 その 屋敷 を 与えた そうです 。

おしまい

二 人 の 幽霊 ふた|じん||ゆうれい Zwei Geister. two ghosts Dos fantasmas. Deux fantômes. Due fantasmi. Twee geesten. Dois fantasmas. Два призрака. İki hayalet. 两个鬼 兩個鬼

二 人 の 幽霊 ふた|じん||ゆうれい Two ghosts

むかし むかし 、 ある 町 に 、 色白で 気 の 弱い 、 新 兵衛 と いう 侍 が い ました 。 |||まち||いろじろで|き||よわい|しん|ひょうえ|||さむらい||| Once upon a time, in a certain town, there was a fair-skinned and weak-willed samurai named Shinbei. 弓 も 刀 も 駄目で 、 仲間 から は 腰抜け 呼ばわり さ れて い ました 。 ゆみ||かたな||だめで|なかま|||こしぬけ|よばわり|||| Neither the bow nor the sword was good, and my friends called me a sword.

さて 、 この 町 に 、 元 は 町 一 番 の 長者 屋敷 だった のです が 、 今 は 荒れ果てて 幽霊 が 出る と の 噂 の 屋敷 が あり ました 。 ||まち||もと||まち|ひと|ばん||ちょうじゃ|やしき||||いま||あれはてて|ゆうれい||でる|||うわさ||やしき||| Well, in this town, it used to be the town's number one chief mansion, but now there is a rumored mansion that is desolate and haunted. ある 日 、 仲間 の 侍 たち から 、 「 どんなに 強い 侍 でも 、 一晩 とおれ ん と いう ぞ 。 |ひ|なかま||さむらい||||つよい|さむらい||ひとばん||||| One day, a fellow samurai said, "No matter how strong a samurai is, it's overnight. お 主 なんか 、 門 を くぐる 事 さえ も 出来 まい 。 |おも||もん|||こと|||でき| The Lord can't even go through the gate. あ は は は は はっ 」 と 、 馬鹿に さ れた 新 兵衛 は 、 「 そこ まで 言わ れて は 、 何が何でも 泊まって やる わ ! |||||||ばかに|||しん|ひょうえ||||いわ|||なにがなんでも|とまって|| "Ahahahahaha," said Shinbei, who was ridiculed. "If you say that, I'll stay for anything! 」 と 、 家 に 帰って 腹ごしらえ を する と 、 おっかなびっくり 幽霊 屋敷 へ 出かけて 行き ました 。 |いえ||かえって|はらごしらえ|||||ゆうれい|やしき||でかけて|いき| When I got home and got hungry, I was surprised and went out to the haunted house.

草 が ぼう ぼう の 庭 に 入って 行く と 、 さっそく 人 魂 が 西 と 東 から 一 つ ずつ 、 す すーっと 飛んで 来 ました 。 くさ|||||にわ||はいって|いく|||じん|たましい||にし||ひがし||ひと|||||とんで|らい| As the grass entered the garden of the boubo, the human souls flew away, one from the west and one from the east. 「 う ひ ゃ ー っ 、 人 魂 が 二 つ も ! |||-||じん|たましい||ふた|| "Uhhhh, two human souls! 」   新 兵衛 は 逃げ出し たい の を 我慢 して 、 恐る恐る 屋敷 に 入り ました 。 しん|ひょうえ||にげだし||||がまん||おそるおそる|やしき||はいり| Shinbei put up with the desire to escape and entered the mansion terrifyingly. やがて 、 ろうそく の 火 が ひと ゆれ した か と 思う と 、 「 うらめし や あ ・・・」 と 、 髪 の 長い 女 の 幽霊 が 、 銀 の お 金 の 入った 箱 を 抱いて 現れ ました 。 |||ひ|||||||おもう||||||かみ||ながい|おんな||ゆうれい||ぎん|||きむ||はいった|はこ||いだいて|あらわれ| Eventually, when I thought that the candle had shook, a ghost of a woman with long hair appeared, holding a box of silver gold. 「 で っ 、 出た ー ! ||でた|- "Oh, it came out! 」   新 兵衛 が 震え上がり ながら も 何とか こらえて いる と 、 カギ を 手 に した 男 の 幽霊 も 現れ ました 。 しん|ひょうえ||ふるえあがり|||なんとか||||かぎ||て|||おとこ||ゆうれい||あらわれ| As Shinbei trembled and managed to hold back, the ghost of a man holding the key also appeared. 男女 の 幽霊 が 一緒に 出て 来る なんて 、 よほど の 訳 が ある のでしょう 。 だんじょ||ゆうれい||いっしょに|でて|くる||||やく||| I wonder if there is a good reason for the ghosts of men and women to come out together. 新 兵衛 が 思い切って 、 訳 を 聞いて みる と 、 「 わたし たち 二 人 は 、 この 屋敷 で 働いて いた 者 同士 です 。 しん|ひょうえ||おもいきって|やく||きいて|||||ふた|じん|||やしき||はたらいて||もの|どうし| Shinbei took the plunge and asked for the translation, saying, "The two of us are the ones who worked in this mansion. 結婚 の 約束 を した のです が 、 主人 が それ を 許して くれ ませ ん 」 と 、 男 の 幽霊 が 語り 始め ました 。 けっこん||やくそく|||||あるじ||||ゆるして|||||おとこ||ゆうれい||かたり|はじめ| I made a promise to get married, but my husband forgave me, "said the ghost of a man. 「 そこ で 屋敷 の お 金 を 持ち出して 、 よそ の 町 へ 逃げて 暮らそう と した のです が 、 主人 に 見つかって しまい 、 二 人 と も 斬り 殺さ れて しまい ました 。 ||やしき|||きむ||もちだして|||まち||にげて|くらそう|||||あるじ||みつかって||ふた|じん|||きり|ころさ||| "There, I took out the money from the mansion and tried to escape to another town, but my husband found me and both of them were killed. そして 別々の ところ に 埋め られ 、 今 も そのまま な のです 。 |べつべつの|||うずめ||いま|||| And it was buried in different places and is still there. わたし たち は その うらみ から 屋敷 の 主人 に たたって やり ました が 、 未 だに 成仏 出来 ませ ん 。 ||||||やしき||あるじ||||||み||じょうぶつ|でき|| We attacked the owner of the mansion, but we still can't go to heaven. どうか この お 金 で お 坊さん を 呼んで 、 成仏 さ せて ください 」 「・・・ そう だった の か 。 |||きむ|||ぼうさん||よんで|じょうぶつ||||||| Please use this money to summon a monk and let him pass away." "...was that so? わかった 」   新 兵衛 が 引き受ける と 、 男女 の 幽霊 は 人 魂 に なって 、 すーっと 出て 行き ました 。 |しん|ひょうえ||ひきうける||だんじょ||ゆうれい||じん|たましい||||でて|いき| Okay. ”When Shinbei took over, the ghosts of men and women became human souls and went out. 座敷 に は 銀 の お 金 が ずっしり 入った 箱 と 、 その 箱 の カギ が 残さ れて い ます 。 ざしき|||ぎん|||きむ|||はいった|はこ|||はこ||かぎ||のこさ||| In the tatami room, there is a box full of silver gold and the key to that box.

あくる 朝 、 新 兵衛 は 幽霊 屋敷 の 出来事 を 寺 の 和尚 さん に 伝えて 、 二 人 の 供養 を して もらい ました 。 |あさ|しん|ひょうえ||ゆうれい|やしき||できごと||てら||おしょう|||つたえて|ふた|じん||くよう|||| The next morning, Shinbei told the priest of the temple about what happened at the haunted house, and asked him to hold a memorial service for them. この 話し を 聞いた 、 この 国 の 殿さま は 、 「 腰抜け どころ か 、 新 兵衛 の 働き は 侍 の 鏡 である ぞ 。 |はなし||きいた||くに||とのさま||こしぬけ|||しん|ひょうえ||はたらき||さむらい||きよう|| When I heard this story, the lord of this country said, "Far from sitting down, Shinbei's work is a mirror of a samurai. ほめて とら す 」 と 、 褒美 と して 、 その 屋敷 を 与えた そうです 。 ||||ほうび||||やしき||あたえた|そう です He gave them the house as a reward for "praising and rewarding" him.

おしまい the end