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百物語 - Yōkai​ Stories, 茨木童子(羅生門の鬼)

茨木 童 子 (羅 生 門 の 鬼)

茨木 童 子 ( 羅 生 門 の 鬼 )

今 から 千 年 ほど むかし 、 摂津 の 国 ( せっつ の くに → 大阪 府 ) の 茨木 の 里 に 、 一 人 の 男の子 が 生まれ ました 。 この 男の子 は 赤ん坊 な のに とても 大きな 体 で 、 髪 の 毛 は すでに 肩 まで 伸びて いる し 、 口 に は 立派な 歯 が 全部 生え そろって いる のです 。 しかも 生まれて すぐに 、 は いはい を 始め 、 十 日 ほど する と 普通の ご飯 を 食べて 、 上手に 歩き 出した のでした 。 それ を 見た 里 の 人 たち は 、 「 あれ は 、 人 の 子 か ? 」 「 まさか 」 「 きっと 、 鬼 の 子 じゃ 」 「 そう じゃ 、 鬼 の 子 じゃ 」 と 、 うわさ を した のでした 。 する と 、 それ を 聞いた 男の子 の 両親 も 、 だんだん 心配に なって きて 、 「 このまま この 子 が 成長 したら 、 本当に 鬼 や 化け物 に なる かも しれ ん ぞ 。 ここ は 一 つ 、 この 子 の 運命 を 神さま に お 任せ しよう 」 と 、 両親 は 子ども を 連れて 、 丹波 ( たん ば ) の 山奥 へ 行き ました 。 そして 落ちて いる 栗 ( くり ) を 拾う と 、 男の子 に 言い ました 。 「 この 栗 は 丹波 栗 ( たん ばぐ り ) と 言って 、 特別に うまい 栗 だ 。 あちこち に 落ちて いる から 、 好きな だけ 食べて も いい ぞ 」 「 わ ー い 」 男の子 が 喜んで 栗 を 拾い 始める と 、 両親 は 男の子 を 置き去り に して 帰って しまい ました 。 それ に 気づいた 男の子 は 泣き ながら 両親 を 探し ました が 、 両親 が どこ に も い ない 事 が わかる と 泣き止んで 、 一 人 で 生きて いく 事 に した のです 。 やがて 男の子 は 、 素手 で イノシシ を 倒す ほど に 成長 し ました 。

ある 日 の 事 、 若者 に なった 男の子 は 、 池 に 映る 自分 の 姿 を 見て びっくり し ました 。 赤 黒く 日 に 焼けた 毛 むくじゃ ら の 姿 は 、 頭 に 角 こそ は 生えて い ませ ん が 、 話 に 聞いた 鬼 に そっくりだった のです 。 「 そう か 、 わし は 人間 で なく 、 鬼 だった の か 。 それ なら 、 人間 の 親 に 捨て られて も 仕方 が ない な 。 でも 、 たとえ 鬼 であって も 、 わし を 産んで くれた 親 に は 恩 が ある 」 男の子 は 両親 に 最後 の 別れ を 言う 為 に 、 生まれた 村 へ と 帰って 行き ました 。

村 に 着いた 男の子 は 、 人 に 見つから ない 様 に 夜 に なって から 自分 の 家 に 入り ました 。 そして 男の子 は 、 家 の 中 を 見て びっくり です 。 何と 自分 の 父親 が 病気 で 寝込んで おり 、 もう 死ぬ 寸前 だった のです 。 男の子 が 近づく と 、 父親 は 目 を 見開いて 言い ました 。 「 おお 、 わし は 夢 を 見て いる の か ? わし の 息子 が 、 戻って 来た 。 二十 年 ぶり の 、 息子 だ 。 息子 よ 、 山 に 捨てたり して 、 すま ん かった 。 わし も 妻 も 、 お前 を 捨てた 事 を 後悔 して な 。 妻 は あれ から すぐに 、 体 を くずして 死んで しまった 。 この わし も 、 お前 を 捨てた 事 を 後悔 する 毎日 だった 。 ・・・ すま ん かった 。 ・・・ 本当に 、 すま ん かった 。 ・・・ そして 、 わし が 死ぬ 前 に 、 よう 帰って 来て くれた 。 ・・・ ありがとう 」 父親 は そう 言う と 、 満足 そうに 死んで いった のです 。 男の子 は 死んだ 父親 に 手 を 合わせる と 、 近所 の 人 たち に 父親 の 葬式 を 頼み ました 。 そして 立ち去ろう と する 男の子 に 、 近所 の 人 たち が 尋ね ました 。 「 そう か 、 お前 が 、 あの 時 の 子ども だった の か 。 それ で お前 、 今 は どこ に 住んで いる のだ ? 」 「 ああ 。 わし は 、 この 頃 は 、 京 の 都 の 東 寺 の 、 羅 生 門 ( ら しょうもん ) に 住 ん ど り ます 。 京 の 人 たち は 、 わし を 『 羅 生 門 ( ら しょうもん ) の 鬼 』 と 言う て 怖がって おり ます 」 「 ら っ 、 羅 生 門 の 鬼 ! 」 みんな は 羅 生 門 の 鬼 と 聞いて 、 震え上がり ました 。 羅 生 門 の 鬼 と 言えば 、 日本 の 鬼 の 大 親分 です 。 でも 男の子 は 、 気 に した 様子 も なく 深々と 頭 を 下げて 、 「 それでは 、 あと を よろしく 頼み ます 」 と 、 再び どこ か へ 行って しまい ました 。

おしまい

茨木 童 子 (羅 生 門 の 鬼) いばらき|わらべ|こ|ら|せい|もん||おに Ibaraki Doji (Dämon von Rashomon) Ibaraki Doji (Δαίμονας του Rashomon) Ibaraki Doji (Demon of Rashomon) Ibaraki Doji (Demonio de Rashomon) Ibaraki Doji (Démon de Rashomon) Ibaraki Doji (Demone di Rashomon) Ibaraki Doji (Demon z Rashomon) Ibaraki Doji (Demónio de Rashomon) Ibaraki Doji (Rashomons demon) Ibaraki Doji (Rashomon'un İblisi) 茨木童子(罗生门的恶魔) 茨木童子(羅生門的惡魔)

茨木 童 子 ( 羅 生 門 の 鬼 ) いばらき|わらべ|こ|ら|せい|もん||おに Ibaraki Doji (The Demon of Rashomon)

今 から 千 年 ほど むかし 、 摂津 の 国 ( せっつ の くに → 大阪 府 ) の 茨木 の 里 に 、 一 人 の 男の子 が 生まれ ました 。 いま||せん|とし|||せっつ||くに||||おおさか|ふ||いばらき||さと||ひと|じん||おとこのこ||うまれ| About 1,000 years ago, in the village of Ibaraki, in the Land of Settsu (屈押つのくに) ( せっつのくに) (Osaka Prefecture), a boy was born. この 男の子 は 赤ん坊 な のに とても 大きな 体 で 、 髪 の 毛 は すでに 肩 まで 伸びて いる し 、 口 に は 立派な 歯 が 全部 生え そろって いる のです 。 |おとこのこ||あかんぼう||||おおきな|からだ||かみ||け|||かた||のびて|||くち|||りっぱな|は||ぜんぶ|はえ||| The boy is a baby, but he has a very large body, his hair already extends to his shoulders, and his mouth has all the fine teeth. 这男孩虽然只是个婴儿,但是个子却很大,头发已经长到肩膀了,嘴里长着全套细牙。 しかも 生まれて すぐに 、 は いはい を 始め 、 十 日 ほど する と 普通の ご飯 を 食べて 、 上手に 歩き 出した のでした 。 |うまれて|||||はじめ|じゅう|ひ||||ふつうの|ごはん||たべて|じょうずに|あるき|だした| Moreover, as soon as I was born, I started to say yes, and about ten days later, I ate ordinary rice and started walking well. 而且,他出生后不久就开始爬行,大约10天后,他就可以正常吃东西,走路也能走路了。 それ を 見た 里 の 人 たち は 、 「 あれ は 、 人 の 子 か ? ||みた|さと||じん|||||じん||こ| The people in the village who saw it asked, "Is that the son of a man? 」 「 まさか 」 「 きっと 、 鬼 の 子 じゃ 」 「 そう じゃ 、 鬼 の 子 じゃ 」  と 、 うわさ を した のでした 。 ||おに||こ||||おに||こ|||||| "I can't believe it." する と 、 それ を 聞いた 男の子 の 両親 も 、 だんだん 心配に なって きて 、 「 このまま この 子 が 成長 したら 、 本当に 鬼 や 化け物 に なる かも しれ ん ぞ 。 ||||きいた|おとこのこ||りょうしん|||しんぱいに|||||こ||せいちょう||ほんとうに|おに||ばけもの|||||| Then, the parents of the boy who heard it became more and more worried, saying, "If this child grows up like this, he may really become a demon or a monster. 男孩的父母听了这件事,越发担心起来,说道:“这孩子再长下去,说不定真的会变成妖怪。” ここ は 一 つ 、 この 子 の 運命 を 神さま に お 任せ しよう 」 と 、 両親 は 子ども を 連れて 、 丹波 ( たん ば ) の 山奥 へ 行き ました 。 ||ひと|||こ||うんめい||かみさま|||まかせ|||りょうしん||こども||つれて|たんば||||やまおく||いき| Let's leave the fate of this child to God, "said the parents, who took their child to the mountains of Tamba. そして 落ちて いる 栗 ( くり ) を 拾う と 、 男の子 に 言い ました 。 |おちて||くり|||ひろう||おとこのこ||いい| Then he told the boy to pick up the falling chestnuts. 「 この 栗 は 丹波 栗 ( たん ばぐ り ) と 言って 、 特別に うまい 栗 だ 。 |くり||たんば|くり|||||いって|とくべつに||くり| "This chestnut is called Tanba chestnut, and it is a specially delicious chestnut. ``这个栗子叫丹波栗子,是特别好吃的栗子。 あちこち に 落ちて いる から 、 好きな だけ 食べて も いい ぞ 」 「 わ ー い 」   男の子 が 喜んで 栗 を 拾い 始める と 、 両親 は 男の子 を 置き去り に して 帰って しまい ました 。 ||おちて|||すきな||たべて|||||-||おとこのこ||よろこんで|くり||ひろい|はじめる||りょうしん||おとこのこ||おきざり|||かえって|| There are chestnuts scattered all over the place, so you can eat as much as you like." "Wow." When the boy happily started picking up chestnuts, his parents left him and went home. 栗子掉得到处都是,你想吃多少就吃多少。”“好啊!”男孩高兴地开始捡栗子,但他的父母却丢下他回家了。 それ に 気づいた 男の子 は 泣き ながら 両親 を 探し ました が 、 両親 が どこ に も い ない 事 が わかる と 泣き止んで 、 一 人 で 生きて いく 事 に した のです 。 ||きづいた|おとこのこ||なき||りょうしん||さがし|||りょうしん|||||||こと||||なきやんで|ひと|じん||いきて||こと||| When the boy realized this, he cried and searched for his parents, but when he realized that his parents were nowhere to be found, he stopped crying and decided to live alone. 当男孩注意到这一点时,他哭着寻找父母,但当他意识到他们无处可寻时,他停止了哭泣并决定独自生活。 やがて 男の子 は 、 素手 で イノシシ を 倒す ほど に 成長 し ました 。 |おとこのこ||すで||いのしし||たおす|||せいちょう|| Eventually, the boy grew up to the point of defeating the wild boar with his bare hands. 最终,这个男孩成长到了可以徒手杀死野猪的程度。

ある 日 の 事 、 若者 に なった 男の子 は 、 池 に 映る 自分 の 姿 を 見て びっくり し ました 。 |ひ||こと|わかもの|||おとこのこ||いけ||うつる|じぶん||すがた||みて||| One day, the boy, who became a young man, was surprised to see himself reflected in the pond. 赤 黒く 日 に 焼けた 毛 むくじゃ ら の 姿 は 、 頭 に 角 こそ は 生えて い ませ ん が 、 話 に 聞いた 鬼 に そっくりだった のです 。 あか|くろく|ひ||やけた|け||||すがた||あたま||かど|||はえて|||||はなし||きいた|おに||| The appearance of the red-black, sun-burnt, hairy hair, which had no horns on its head, was just like the demon I heard. 它通体红黑,被太阳晒得黝黑,看上去和我听说过的恶魔一模一样,只不过头上没有角。 它通體紅黑,被太陽曬得黝黑,看起來和我聽過的惡魔一模一樣,只不過頭上沒有角。 「 そう か 、 わし は 人間 で なく 、 鬼 だった の か 。 ||||にんげん|||おに||| I see, I am not a human being, but a demon. それ なら 、 人間 の 親 に 捨て られて も 仕方 が ない な 。 ||にんげん||おや||すて|||しかた||| Then, it can't be helped to be abandoned by human parents. 如果真是这样的话,被人类父母抛弃也是无可奈何的事。 でも 、 たとえ 鬼 であって も 、 わし を 産んで くれた 親 に は 恩 が ある 」   男の子 は 両親 に 最後 の 別れ を 言う 為 に 、 生まれた 村 へ と 帰って 行き ました 。 ||おに|||||うんで||おや|||おん|||おとこのこ||りょうしん||さいご||わかれ||いう|ため||うまれた|むら|||かえって|いき| But even if it is a demon, the parents who gave birth to me are indebted. ”The boy went back to the village where he was born to say his last farewell to his parents. 但即使我是恶魔,我仍然对生下我的父母有一份感恩之情。”男孩回到了他出生的村庄,向父母作了最后的告别。

村 に 着いた 男の子 は 、 人 に 見つから ない 様 に 夜 に なって から 自分 の 家 に 入り ました 。 むら||ついた|おとこのこ||じん||みつから||さま||よ||||じぶん||いえ||はいり| The boy, who arrived at the village, entered his house at night so that no one could find him. そして 男の子 は 、 家 の 中 を 見て びっくり です 。 |おとこのこ||いえ||なか||みて|| 何と 自分 の 父親 が 病気 で 寝込んで おり 、 もう 死ぬ 寸前 だった のです 。 なんと|じぶん||ちちおや||びょうき||ねこんで|||しぬ|すんぜん|| My father was sick and fell asleep, and he was on the verge of dying. 令我惊讶的是,父亲卧病在床,生命垂危。 男の子 が 近づく と 、 父親 は 目 を 見開いて 言い ました 。 おとこのこ||ちかづく||ちちおや||め||みひらいて|いい| As the boy approached, his father looked him in the eye and said, "I'm sorry, but I don't know what you're talking about. 「 おお 、 わし は 夢 を 見て いる の か ? |||ゆめ||みて||| "Oh, am I dreaming? わし の 息子 が 、 戻って 来た 。 ||むすこ||もどって|きた My son has returned. 二十 年 ぶり の 、 息子 だ 。 にじゅう|とし|||むすこ| This is my first son in twenty years. 息子 よ 、 山 に 捨てたり して 、 すま ん かった 。 むすこ||やま||すてたり|||| Son, I'm sorry I threw you in the mountains. わし も 妻 も 、 お前 を 捨てた 事 を 後悔 して な 。 ||つま||おまえ||すてた|こと||こうかい|| Both my wife and I regret leaving you. 妻 は あれ から すぐに 、 体 を くずして 死んで しまった 。 つま|||||からだ|||しんで| Soon after that, my wife collapsed and died. この わし も 、 お前 を 捨てた 事 を 後悔 する 毎日 だった 。 |||おまえ||すてた|こと||こうかい||まいにち| Every day I regret the fact that I abandoned you. ・・・ すま ん かった 。 I'm sorry. ・・・ 本当に 、 すま ん かった 。 ほんとうに||| ・・・ そして 、 わし が 死ぬ 前 に 、 よう 帰って 来て くれた 。 |||しぬ|ぜん|||かえって|きて| ... and before I died, I came back. ・・・ ありがとう 」   父親 は そう 言う と 、 満足 そうに 死んで いった のです 。 |ちちおや|||いう||まんぞく|そう に|しんで|| ... Thank you." After saying that, the father died satisfied. 男の子 は 死んだ 父親 に 手 を 合わせる と 、 近所 の 人 たち に 父親 の 葬式 を 頼み ました 。 おとこのこ||しんだ|ちちおや||て||あわせる||きんじょ||じん|||ちちおや||そうしき||たのみ| When the boy reached out to his dead father, he asked his neighbors for his father's funeral. そして 立ち去ろう と する 男の子 に 、 近所 の 人 たち が 尋ね ました 。 |たちさろう|||おとこのこ||きんじょ||じん|||たずね| When the boy was about to leave, the neighbors asked him: 「 そう か 、 お前 が 、 あの 時 の 子ども だった の か 。 ||おまえ|||じ||こども||| "Well, were you a child at that time? それ で お前 、 今 は どこ に 住んで いる のだ ? ||おまえ|いま||||すんで|| So where do you live now? 」 「 ああ 。 Ah. わし は 、 この 頃 は 、 京 の 都 の 東 寺 の 、 羅 生 門 ( ら しょうもん ) に 住 ん ど り ます 。 |||ころ||けい||と||ひがし|てら||ら|せい|もん||||じゅう|||| Around this time, I lived in Rashomon, a temple in Toji, the capital of Kyoto. 京 の 人 たち は 、 わし を 『 羅 生 門 ( ら しょうもん ) の 鬼 』 と 言う て 怖がって おり ます 」 「 ら っ 、 羅 生 門 の 鬼 ! けい||じん|||||ら|せい|もん||||おに||いう||こわがって|||||ら|せい|もん||おに The people of Kyoto are scared to call me "the demon of Rashomon". "" La, the demon of Rashomon! " 」   みんな は 羅 生 門 の 鬼 と 聞いて 、 震え上がり ました 。 ||ら|せい|もん||おに||きいて|ふるえあがり| Everyone trembled when they heard that he was the demon of Rashomon. 羅 生 門 の 鬼 と 言えば 、 日本 の 鬼 の 大 親分 です 。 ら|せい|もん||おに||いえば|にっぽん||おに||だい|おやぶん| Speaking of Rashomon demons, they are the bosses of Japanese demons. でも 男の子 は 、 気 に した 様子 も なく 深々と 頭 を 下げて 、 「 それでは 、 あと を よろしく 頼み ます 」 と 、 再び どこ か へ 行って しまい ました 。 |おとこのこ||き|||ようす|||しんしんと|あたま||さげて|||||たのみ|||ふたたび||||おこなって|| But the boy bowed deeply, without any notice, and went somewhere again, saying, "Then, I'll ask for the rest."

おしまい