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百物語 - Yōkai​ Stories, 吹雪と女幽霊

吹雪 と 女 幽霊

吹雪 と 女 幽霊

むかし むかし の ある 寒い 冬 の 夜ふけ 、 村 は ずれ に ある 久左衛門 ( きゅう ざ え もん ) と いう お 百姓 の 家 の 戸 を 、 トントン 、 トントン 。 と 、 叩く 者 が い ました 。 ふとん に くるまって ねむって いた 久左衛門 は 、 目 を 覚まして 、 ( 誰 だ ? こんな 夜ふけ に ) と 、 起きあがる と 、 「 どなた です かな ? 」 と 、 戸口 へ 声 を かけ ました 。 する と 、 戸 の むこう から 若い 女 の 声 が 聞こえて き ました 。 「 夜分 に 、 すみません 。 実は この 吹雪 で 、 先 へ 進め なく なり ました 。 どう か 、 しばらく 休ま せて ください 」 久左衛門 は 気の毒に 思って 、 戸 を 少し 開け ました 。 する と その 時 、 「 ご 親切に 、 ありがとう ございます 」 と 、 言う 声 が 、 背中 の 方 から 聞こえて き ました 。 久左衛門 は びっくり して 、 後ろ を 振り向き ました 。 「 お前 さん 。 いつ 、 家 の 中 に 入った んだ ? 」 まっ白 な 着物 を 着て 肩 の 下 まで 長い 黒 髪 を たらした 若い 女 は 、 顔色 も 白くて 雪 の 精 の 様 です 。 「 わたし は 隣村 へ 行く 途中 な のです が 、 この 吹雪 で は 前 へ 進め ませ ん 。 風 が おさまれば 、 すぐに 出て いき ます 。 どうか それ まで 、 ここ で 休ま せて ください 」 女 の 人 は 立った まま 、 静かに 言い ました 。 その 女 の 人 の 顔 と 声 に 、 久左衛門 は 一 年 前 に 起こった 、 隣村 の 大雪 の 事故 を 思い出し ました 。 「 あっ 、 あんた 。 もし かして 、 隣村 の ? お っ 、 おら は 幽霊 など に 、 うらま れる 覚え は ない ぞ ! 」 久左衛門 が 怒った ように 言う と 、 女 の 人 は 、 「 わたし の 事 を 、 聞いた 事 が ある ようです ね 」 と 、 言って 、 静かに 話し出し ました 。 「 わたし は 、 隣村 の 弥 左 衛 門 ( や ざ え もん ) の 娘 の お 安 ( やす ) です 。 一 人 娘 な ので 、 年 を 取った 父 は 三 年 前 、 伊三郎 ( い さ ぶろう ) と いう 婿 さん を 家 に 迎えて 、 わたし と 夫婦 に なり ました 。 ところが 去年 の 冬 、 大雪 に 埋まって わたし が 死ぬ と 、 伊三郎 は 病気 の 父 を 捨てて 実家 へ 帰って しまった のです 。 明日 は 、 わたし の 命日 です 。 伊三郎 の ところ へ 行って 、 うらみ を 言おう と 思って いる のです 」 「・・・・・・」 しばらく する と 吹雪 が おさまって きた の か 、 あたり が 静かに なって き ました 。 する と 、 ギギギィーッ と 戸 が 開く 音 が して 、 気 が つく と 若い 女 の 姿 は 消えて い ました 。

夜 が 明ける の を 待って 久左衛門 は お 安 の 家 へ 出かけて 行く と 、 何と 婿 の 伊三郎 が お 安 の 父親 の 世話 を して いる で は あり ませ ん か 。 伊三郎 に たずねる と 、 お 安 の 幽霊 は 久左衛門 の 家 を 出た あと 、 伊三郎 の 枕元 に 現れた のでした 。 恐ろしく なった 伊三郎 は 、 夜明け前 に お 安 の 家 へ 戻って 来た と いう のです 。 すっかり 心 を 入れ替えた 伊三郎 は 一生懸命 お 安 の 父親 の 看病 を して 、 その 父親 が 亡くなる と 頭 を まるめて お 坊さん に なり 、 全国 を 巡り 歩く 旅 に 出た と いう 事 です 。

おしまい

吹雪 と 女 幽霊 ふぶき||おんな|ゆうれい Schneestürme und weibliche Gespenster blizzard and woman ghost Tormentas de nieve y fantasmas femeninos Tempêtes de neige et fantômes féminins Tempeste di neve e fantasmi femminili 눈보라와 여귀신 Tempestades de neve e fantasmas femininos Метели и женщины-призраки Kar fırtınaları ve dişi hayaletler 暴风雪和女鬼 暴风雪和女鬼

吹雪 と 女 幽霊 ふぶき||おんな|ゆうれい Snowstorm and female ghost

むかし むかし の ある 寒い 冬 の 夜ふけ 、 村 は ずれ に ある 久左衛門 ( きゅう ざ え もん ) と いう お 百姓 の 家 の 戸 を 、   トントン 、 トントン 。 ||||さむい|ふゆ||よふけ|むら|||||きゅうざえもん||||||||ひゃくしょう||いえ||と||とんとん|とんとん Once upon a time, in the cold winter nights, the door of a farmer's house called Kyuzaemon, on the outskirts of the village, was tonton, tonton. と 、 叩く 者 が い ました 。 |たたく|もの||| Then someone hit me. 然后有人打我。 ふとん に くるまって ねむって いた 久左衛門 は 、 目 を 覚まして 、 ( 誰 だ ? |||||きゅうざえもん||め||さまして|だれ| Kyuzaemon, who had fallen asleep wrapped in his futon, woke up and said, "Who is it? 裹着被褥睡着的久左卫门醒了过来,问道:“谁啊? こんな 夜ふけ に ) と 、 起きあがる と 、 「 どなた です かな ? |よふけ|||おきあがる|||| At this late hour, I got up and said, ``Who is this? 这么晚了,我站起来说,``这是谁? 」 と 、 戸口 へ 声 を かけ ました 。 |とぐち||こえ||| I called out to the doorway. "他对着门喊道。 する と 、 戸 の むこう から 若い 女 の 声 が 聞こえて き ました 。 ||と||||わかい|おんな||こえ||きこえて|| Then, I heard the voice of a young woman from the other side of the door. 然后我听到门的另一边传来一个年轻女人的声音。 「 夜分 に 、 すみません 。 やぶん|| "I'm sorry for the late night. “抱歉熬夜了。 実は この 吹雪 で 、 先 へ 進め なく なり ました 。 じつは||ふぶき||さき||すすめ||| In fact, this snowstorm made it impossible to move forward. 事实上,这场暴风雪让我无法前进。 どう か 、 しばらく 休ま せて ください 」   久左衛門 は 気の毒に 思って 、 戸 を 少し 開け ました 。 |||やすま|||きゅうざえもん||きのどくに|おもって|と||すこし|あけ| Please let me rest for a while." Feeling sorry for him, Kyuzaemon opened the door a little. 请让我休息一会儿。” 心疼他,久左卫门轻轻打开了门。 する と その 時 、 「 ご 親切に 、 ありがとう ございます 」 と 、 言う 声 が 、 背中 の 方 から 聞こえて き ました 。 |||じ||しんせつに||||いう|こえ||せなか||かた||きこえて|| Then, at that time, I heard a voice from my back saying, "Thank you for your kindness." 就在这时,我听到身后有个声音说:“谢谢你的好意。” 久左衛門 は びっくり して 、 後ろ を 振り向き ました 。 きゅうざえもん||||うしろ||ふりむき| Kyuzaemon was surprised and turned around. 久左卫门吃惊地转过身。 「 お前 さん 。 おまえ| " You . いつ 、 家 の 中 に 入った んだ ? |いえ||なか||はいった| When did you get inside the house? 你什么时候进屋的? 」   まっ白 な 着物 を 着て 肩 の 下 まで 長い 黒 髪 を たらした 若い 女 は 、 顔色 も 白くて 雪 の 精 の 様 です 。 まっしろ||きもの||きて|かた||した||ながい|くろ|かみ|||わかい|おんな||かおいろ||しろくて|ゆき||せい||さま| A young woman in a pure white kimono with long black hair under her shoulders has a white complexion and looks like a snow spirit. 「 わたし は 隣村 へ 行く 途中 な のです が 、 この 吹雪 で は 前 へ 進め ませ ん 。 ||りんそん||いく|とちゅう|||||ふぶき|||ぜん||すすめ|| "I'm on my way to the neighboring village, but in this snowstorm I can't move forward. 風 が おさまれば 、 すぐに 出て いき ます 。 かぜ||||でて|| As soon as the wind subsides, it will come out. 风一停,我们就出发。 どうか それ まで 、 ここ で 休ま せて ください 」   女 の 人 は 立った まま 、 静かに 言い ました 。 |||||やすま|||おんな||じん||たった||しずかに|いい| Until then, let me rest here. "The woman stood still and said quietly. その 女 の 人 の 顔 と 声 に 、 久左衛門 は 一 年 前 に 起こった 、 隣村 の 大雪 の 事故 を 思い出し ました 。 |おんな||じん||かお||こえ||きゅうざえもん||ひと|とし|ぜん||おこった|りんそん||おおゆき||じこ||おもいだし| The woman's face and voice reminded Kusaemon of the heavy snow accident in the neighboring village that happened a year ago. 女人的脸和声音让久左卫门想起一年前邻村发生的大雪事故。 「 あっ 、 あんた 。 "Oh, you. “啊,你。 もし かして 、 隣村 の ? ||りんそん| Perhaps in the neighboring village? お っ 、 おら は 幽霊 など に 、 うらま れる 覚え は ない ぞ ! ||||ゆうれい|||||おぼえ||| Oh, I don't remember being envious of ghosts! 哦,我不记得被鬼激怒了! 」   久左衛門 が 怒った ように 言う と 、 女 の 人 は 、 「 わたし の 事 を 、 聞いた 事 が ある ようです ね 」 と 、 言って 、 静かに 話し出し ました 。 きゅうざえもん||いかった||いう||おんな||じん||||こと||きいた|こと||||||いって|しずかに|はなしだし| When Kusaemon said as if he was angry, the woman said, "It seems that you have heard of me," and said quietly. 「 わたし は 、 隣村 の 弥 左 衛 門 ( や ざ え もん ) の 娘 の お 安 ( やす ) です 。 ||りんそん||わたる|ひだり|まもる|もん||||||むすめ|||やす|| "I am the daughter of Yazaemon, the daughter of the neighboring village, Yasushi. 一 人 娘 な ので 、 年 を 取った 父 は 三 年 前 、 伊三郎 ( い さ ぶろう ) と いう 婿 さん を 家 に 迎えて 、 わたし と 夫婦 に なり ました 。 ひと|じん|むすめ|||とし||とった|ちち||みっ|とし|ぜん|いさぶろう||||||むこ|||いえ||むかえて|||ふうふ||| Being a daughter, my old father, three years ago, welcomed a son-in-law, Isaburo, to his house and became a married couple with me. ところが 去年 の 冬 、 大雪 に 埋まって わたし が 死ぬ と 、 伊三郎 は 病気 の 父 を 捨てて 実家 へ 帰って しまった のです 。 |きょねん||ふゆ|おおゆき||うずまって|||しぬ||いさぶろう||びょうき||ちち||すてて|じっか||かえって|| However, when I died in heavy snow last winter, Isaburo abandoned his sick father and returned to his parents' house. 明日 は 、 わたし の 命日 です 。 あした||||めいにち| Tomorrow is my death anniversary. 伊三郎 の ところ へ 行って 、 うらみ を 言おう と 思って いる のです 」 「・・・・・・」    しばらく する と 吹雪 が おさまって きた の か 、 あたり が 静かに なって き ました 。 いさぶろう||||おこなって|||いおう||おもって||||||ふぶき||||||||しずかに||| I'm thinking of going to Isaburo and saying his envy. "" ... "After a while, the snowstorm had subsided, and the area became quieter. する と 、 ギギギィーッ と 戸 が 開く 音 が して 、 気 が つく と 若い 女 の 姿 は 消えて い ました 。 ||||と||あく|おと|||き||||わかい|おんな||すがた||きえて|| Then, I heard the sound of the door opening, and when I noticed, the young woman disappeared.

夜 が 明ける の を 待って 久左衛門 は お 安 の 家 へ 出かけて 行く と 、 何と 婿 の 伊三郎 が お 安 の 父親 の 世話 を して いる で は あり ませ ん か 。 よ||あける|||まって|きゅうざえもん|||やす||いえ||でかけて|いく||なんと|むこ||いさぶろう|||やす||ちちおや||せわ||||||||| Waiting for the dawn, Kusaemon went out to Ahn's house, and what a son-in-law, Isaburo, was taking care of Ahn's father. 伊三郎 に たずねる と 、 お 安 の 幽霊 は 久左衛門 の 家 を 出た あと 、 伊三郎 の 枕元 に 現れた のでした 。 いさぶろう|||||やす||ゆうれい||きゅうざえもん||いえ||でた||いさぶろう||まくらもと||あらわれた| When I asked Isaburo, the ghost of Yasushi appeared at Isaburo's bedside after leaving Kusaemon's house. 恐ろしく なった 伊三郎 は 、 夜明け前 に お 安 の 家 へ 戻って 来た と いう のです 。 おそろしく||いさぶろう||よあけまえ|||やす||いえ||もどって|きた||| Isaburo, who became scared, said he had returned to his home before dawn. すっかり 心 を 入れ替えた 伊三郎 は 一生懸命 お 安 の 父親 の 看病 を して 、 その 父親 が 亡くなる と 頭 を まるめて お 坊さん に なり 、 全国 を 巡り 歩く 旅 に 出た と いう 事 です 。 |こころ||いれかえた|いさぶろう||いっしょうけんめい||やす||ちちおや||かんびょう||||ちちおや||なくなる||あたま||||ぼうさん|||ぜんこく||めぐり|あるく|たび||でた|||こと| Isaburo, who completely changed his mind, took care of his father, who was safe, and when his father died, he turned his head into a monk and set out on a journey around the country.

おしまい the end