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百物語 - Yōkai​ Stories, 安義橋(あきのはし)の鬼

安 義 橋 (あきの は し )の 鬼

安 義 橋 ( あきの は し ) の 鬼

むかし むかし 、 近江 の 国 ( お うみ の くに → 滋賀 県 ) の 殿さま の お 屋敷 に 、 家来 の 若者 たち が 集まって おしゃべり を して い ました 。 その うち に 一 人 の 若者 が 、 こんな 事 を 言い ました 。 「 なあ 、 お前たち 知っている か ? 安 義 橋 ( あきの は し ) と いう 橋 は 不思議な 橋 で 、 あの 橋 を 渡った 者 は 生きて 帰れ ない と 言わ れて いる そうだ 。 うわさ で は 、 鬼 が 出る らしい 。 だ から 今では 、 人 っ子 一 人 通る 者 が ない そうだ 」 それ を 聞いて 、 腕 自慢 の 一 人 が 答え ました 。 「 鬼 が 出る なんて 、 うそ に 決まって いる 。 なんなら 、 おれ が その 橋 を 渡って みせよう 」 「 なに ! 本当に 、 渡れる の か ? 」 「 もちろん 、 渡れる さ 。 しかし 、 ひと つ 条件 が ある 」 「 条件 と は ? 」 「 この お 屋敷 に ある お 馬 を 、 お 借り する 事 だ 。 あの お 馬 は 、 日本 一 の 名馬 だ 。 あれ に 乗って 行けば 、 鬼 が 出て も 何でもない さ 」 この 男 は 、 馬 を 借り られる はず は ない と 計算 して 言った のです が 、 ちょうど その 時 、 殿さま が 奥 から 入って 来て 、 「 話 は 聞いた ぞ 。 それ なら あの 馬 を 、 すぐに でも 貸して やろう 」 と 、 言った のです 。 これ に は 言い出した 男 も 、 すっかり 困って しまい ました 。 「 あの 、 その 、 今 の 話 は 、 まったく の 冗談 で ございます ので 、 はい 」 男 は 殿さま の 前 で 何度 も 頭 を 下げ ました が 、 ほか の 若者 たち が 黙って い ませ ん 。 「 なんだ 、 なんだ 。 今さら 何 を 言って いる のだ 」 「 そう だ 、 そう だ 」 「 おい 、 はやく しろ 。 日 が かたむいた ぞ 」 「 そう だ 、 そう だ 」 「 ここ は 男らしく 、 約束 を 守れ 」 「 そう だ 、 そう だ 」 そう 言って いる うち に 、 若者 の 何 人 か が 馬 屋 から 馬 を 引き出して きた のです 。 そして 馬 の 背中 に くら を 置く と 、 男 に 言い ました 。 「 さあ 、 準備 は 出来た ぞ 。 観念 して 行って こい 」 こう なって は 、 もう 逃げ出す わけに は いきま せ ん 。 ( と ほほ 。 ・・・ つまらない 事 を 言った もの だ ) 男 は 後悔 し ました が 、 仕方なく 立ち上がる と 馬 の そば に 行き 、 馬 の 腹 帯 が ゆるま ない 様 に 強く 締め 直したり 、 馬 の お 尻 に 油 を たっぷり と 塗ったり し ました 。 そして 手 に むち を 一 本 持つ と 、 馬 に またがって 出発 した のです 。

さて 、 安 義 橋 ( あき のばし ) の たも と まで やって 来る と 、 もう 、 日 が 暮れかかって い ました 。 「 薄気味悪い な 。 ・・・ 何も 、 出 なければ よい が 」 男 が 馬 を 小走り に 走ら せて 橋 の 中ほど まで 進んだ 時 、 薄暗い 橋 の 上 に 誰 か が 一 人 で 立って いる の が 見え ました 。 「 もし かして 、 鬼 ? 」 しかし よく 見る と 、 それ は 女 の 人 でした 。 女 の 人 は 薄紫 色 の 布 を 頭から かぶって おり 、 着物 は 濃い 紫色 で 、 赤い はかま を はいて い ます 。 まるで 、 都 の 宮 仕え の 様 な 服装 です 。 その 女 の 人 が 口 に 手 を あて 、 さびし そうな 目 で 男 を 見つめ ました 。 ( 若い 女 が 、 こんな ところ で どうした の だろう ? 誰 か に 、 置き去り に さ れた のだろう か ? ) 女 の 人 は 男 に 近づく と 、 しずかに 顔 を あげて 笑み を 浮かべ ました 。 ( なんて 、 美しい のだろう ) 男 は 一目 で 、 女 の 人 に 心 を ひか れ ました 。 ( ここ に 置いて いて は 、 かわいそうだ 。 馬 に 乗せて 、 家 まで 送って やろう ) そう 思い ました が 、 ( いや 、 待てよ 。 こんな 時間 に 若い 女 の 人 が 、 たった 一 人 で いる の は 怪しい ぞ ) と 、 考え 直す と 、 あわてて 馬 を 走ら せよう と し ました 。 する と 女 の 人 は 、 ふいに 声 を かけて き ました 。 「 もし 、 お 願い で ございます 。 どうか 向こう の 村 まで 、 わたし を 連れて 行って ください ませ 。 こんな 所 に 置き去り に さ れて 、 困って おり ます 」 美しい 声 です が 、 男 は その 声 を 聞く と 、 なぜ か 急に 身震い を し ました 。 ( これ は 、 人 で は ない ! ) そして 馬 に むち を 当てる と 、 あわてて その 場 を 逃げ出し ました 。 「 まあ 、 ひどい 人 。 お 待ち ! ・・・ 待た ん か ! 」 後ろ から 、 大きな 叫び声 が し ました 。 さっき の 女 の 人 の 声 と は 思え ない 、 まるで 大地 を ゆるがす ような 声 です 。 「 待て ー ! 待た ぬ か ー ! 」 女 の 人 は 、 ドタドタ と 恐ろしい 足音 で 後ろ から 追いかけて き ました 。 ( 鬼 だ ! やはり 鬼 だ ! ) 男 は そう 思う と 、 夢中で 叫び ました 。 「 観音 さま 、 どうか 我 を お 助け ください ! 」 しかし 後ろ から 追って くる 足音 を 、 どうしても 引き離す 事 が 出来 ませ ん 。 それどころか 何度 も 何度 も 馬 の お 尻 に 手 を かけて 、 男 を 馬 から 引きずり 落とそう と する のです 。 幸い 、 馬 の お 尻 に は 油 が たっぷり と 塗って ある ので 、 手 が 滑って 捕まる 事 は あり ませ ん でした 。 男 は 逃げ ながら 、 ちらり と 後ろ を 振り向き ました 。 する と 先ほど の 美しい 女 は 、 世にも 恐ろしい 鬼 に 変わって いた のです 。 鬼 の 身長 は 九 尺 ( きゅう しゃく → 約 二・七 メートル ) で 、 まっ 赤 な 顔 で 金色 の 目 が ギラギラ と 光って い ます 。 手 の 指 は 三 本 で 、 爪 は 刀 の 様 に とがって い ます 。 「 観音 さま 、 どうか 我 を お 助け ください ! 」 男 は 観音 さま に 祈り ながら 、 なんとか 村 は ずれ まで やってき ました 。 人家 の 明かり が 見えて くる と 、 ようやく 鬼 は 追う の を あきらめて 、 「 今日 は 逃がして やる が 、 いつか きっと 捕まえて やる ぞ ! 」 と 、 叫ぶ と 、 どこ か へ 行って しまい ました 。

男 は やっと の 事 で 、 殿さま の お 屋敷 に たどりつき ました 。 男 の 帰り を 待って いた 若者 たち が 、 足音 を 聞きつけて 出て き ました 。 「 おい 、 どう だった ? 」 「 鬼 は 、 いた か ? 」 若者 たち が 聞き ました が 、 男 は 真っ青な 顔 で 震え ながら 、 返事 一 つ 出来 ませ ん 。 そこ で 若者 たち は 男 を かかえて お 屋敷 家 の 中 に 連れて 行き 、 男 を 介抱 ( かいほう ) して やり ました 。 殿さま も 心配 して 、 出て き ました 。 殿さま の 顔 を 見て 男 は ようやく 正気に 戻り 、 さっき の 恐ろしい 出来事 を 話し ました 。 それ を 聞いた 殿さま は 、 「 それ は 災難 だった な 。 だが これ に こりて 、 もう つまらない 強 が り を 言う で ない ぞ 」 と 、 男 を たしなめる と 、 落ち込む 男 に 乗って いた 馬 を ほうび だ と 言って やり ました 。 馬 を もらった 男 は 元気 を 取り戻す と 、 家 に 帰って 家族 に 今日 の 話 を 聞か せ ました 。

さて それ から 男 の 家 に 、 色々 と 不思議な 事 が 起こり ました 。 突然 家 が 地震 の 様 に ゆれたり 、 天井 や 壁 から 奇妙な 声 が 聞こえたり と 。 怖く なった 男 が 占い 師 に 頼んで 原因 を 占って もらう と 、 占い 師 は こう 言い ました 。 「 あなた は 、 何 か の たたり を 受けて い ます 。 すぐに 体 を 清めて 、 もの いみ を する 様 に 」 もの いみ (→ 物 忌み ) と は 、 門 を 閉めて 家 の 中 に 引きこもり 、 どんな 人 が 来て も 決して 家 の 中 に 入れて は なら ない 事 です 。 男 は 体 を 清める と 、 じっと 家 の 中 に 引きこもって い ました 。 ところが その 日 の 夕方 、 ドンドン ドンと 門 を たたく 者 が あり ました 。 家 の 者 が のぞいて みる と 、 そこ に いた の は 男 の 弟 です 。 弟 は 、 みちの く (→ 東北 地方 の 北部 ) の 殿さま の 家来 に なって 、 奥 州 ( おうしゅう ) に 住んで い ます 。 その 弟 が 久しぶりに 京都 へ 帰る 事 に なった ので 、 その 途中 、 兄 の ところ を 訪ねて きた と いう のでした 。 ( より に よって 、 悪い 日 に 来た もの だ 。 しかし 弟 に 会って 、 病気 がちな 母上 の 様子 を 聞き たい 。 ・・・ しかし 今日 は 、 もの いみ の 日 だ 。 残念だ が 、 会う の は よそう ) 男 は そう 思って 、 家 の 者 を 呼ぶ と 、 「 今日 は 会え ない 。 明日 に なったら 会う から 、 今夜 は 他の 人 の 家 を 借りて 泊まる ように 」 と 、 門 の 中 から 言わ せ ました 。 する と 、 弟 は 、 「 何 を なさけない 事 を おっしゃい ます 。 もう 、 日 も 暮れて しまい ました 。 わたし 一 人 なら 他の 家 を 借りる 事 も 出来 ます が 、 しかし 今日 は 家来 も 連れて いる し 、 馬 も い ます 。 他の 人 の 家 に 、 泊まる わけに は いきま せ ん 。 それ に 、 母上 が なくなら れた のです よ 。 その 事 も ぜひ 、 わたし の 口 から 申し上げ たい と 思って 、 急いで まいり ました のに 」 と 、 残念 そうに 言い ました 。 これ を 聞いた 男 の 目 に 、 涙 が 浮かび ました 。 ( ああ 、 家 で 不思議な 事 が 起こった の は 、 母上 が なくなら れた と いう 知らせ であった の か ) 男 は 、 もの いみ の 事 を すっかり 忘れて 、 家 の 者 に 言いつけ ました 。 「 門 を すぐに 開けよ 。 弟 を ここ に 通せ 」 そして なつかし そうに 、 弟 を 家 に 迎え入れ ました 。

男 と 二 人 っきり に なった 弟 は 、 泣き ながら 母 の 事 を 色々 と 話し ました 。 男 の お 嫁 さん は 隣 の 部屋 で 二 人 が 話し合って いる の を 聞いて いた のです が 、 その うち に 、 今 まで 仲 の 良かった 二 人 が 取 っ 組み合 い を 始めた のです 。 「 まあ 、 いったい 、 どう な すった のです か ! 」 お 嫁 さん は 思わず 声 を かけて 、 二 人 の ところ に 走り 寄り ました 。 する と 男 は 、 弟 を 下 に 組 ふせ ながら 、 「 刀 を 取って 来い ! まくらもと に ある 刀 を 。 はやく 、 はやく ! 」 と 、 顔 を まっ 赤 に して 言う のです 。 「 あなた 、 気 でも 狂った のです か 。 せっかく いら した 弟 さん に 」 「 なに を 、 ぐずぐず して いる のだ ! おれ に 、 死ね と いう の か ! 」 男 が 叫ぶ と 今 まで 下 に いた 弟 が 飛び起きて 、 今度 は 男 を 組み ふせて しまい ました 。 「 き ゃあ ー ! 」 お 嫁 さん は 弟 の 顔 を 見て 、 思わず 悲鳴 を 上げ ました 。 その 弟 の 顔 と いう の が 、 いつか 橋 の 上 で 追いかけ られた と 話 を して くれた 鬼 の 顔 だった のです 。 そう 気 が ついた 時 に は 、 弟 に 化けて いた 鬼 は どこ か へ 行って しまい ました 。 お 嫁 さん の 悲鳴 を 聞きつけて 家中 の 者 が 集まって 来 ました が 、 すでに 男 は 鬼 に のど を 食いちぎら れて い ました 。 「 それでは 、 あの 弟 が 連れて 来た 家来 や 馬 は 、 どう なった のだ ? 」 みんな が 外 を 調べて みる と 、 動物 の 骨 が いく つ も 庭 に 転がって い ました 。 人 や 馬 に 見えた の は 、 この 骸骨 だった のです 。

この 話 は 、 すぐに 殿さま たち に 知ら さ れ ました 。 これ を 聞いた 殿さま は 、 「 つまらない 冗談 から 、 ついに 命 まで 落として しまった か 」 と 、 男 の 死 を 残念がり 、 男 の ため に お 祈り を し ました 。

その後 、 鬼 は 姿 を 見せ なく なり 、 人々 は 安心 して 安 義 橋 を 渡れる 様 に なった と いう 事 です 。

おしまい

安 義 橋 (あきの は し )の 鬼 やす|ただし|きょう|あき の||||おに An Yi Brücke (Aki no Hashi) Dämon Γέφυρα An Yi (Aki no Hashi) Δαίμονας Demon of Akinobashi Bridge Puente An Yi (Aki no Hashi) Demonio Ponte di An Yi (Aki no Hashi) Demone An Yi Brug (Aki no Hashi) Demon Ponte An Yi (Aki no Hashi) Demónio 秋桥的恶魔 安艺桥(Aki no Hashi)恶魔

安 義 橋 ( あきの は し ) の 鬼 やす|ただし|きょう|あき の||||おに Akinohashi's demon

むかし むかし 、 近江 の 国 ( お うみ の くに → 滋賀 県 ) の 殿さま の お 屋敷 に 、 家来 の 若者 たち が 集まって おしゃべり を して い ました 。 ||おうみ||くに|||||しが|けん||とのさま|||やしき||けらい||わかもの|||あつまって||||| Es war einmal im Haus des Fürsten in Omi no Kuni (Umi no Kuni → Präfektur Shiga), als sich die jungen Männer seines Hauses zum Gespräch trafen. Once upon a time, young people from the servants gathered and chatted at the mansion of the lord of Omi no Kuni (Omi no Kuni → Shiga Prefecture). その うち に 一 人 の 若者 が 、 こんな 事 を 言い ました 。 |||ひと|じん||わかもの|||こと||いい| Einer der jungen Leute sagte dazu Folgendes. In the meantime, one young man said something like this. 「 なあ 、 お前たち 知っている か ? |おまえたち|しっている| "Hey, weißt du was? "Hey, do you guys know? 安 義 橋 ( あきの は し ) と いう 橋 は 不思議な 橋 で 、 あの 橋 を 渡った 者 は 生きて 帰れ ない と 言わ れて いる そうだ 。 やす|ただし|きょう|あき の|||||きょう||ふしぎな|きょう|||きょう||わたった|もの||いきて|かえれ|||いわ|||そう だ Die Akki-Brücke ist eine geheimnisvolle Brücke, und man sagt, dass jeder, der sie überquert, niemals lebendig nach Hause zurückkehren wird. The bridge called Akinohashi is a mysterious bridge, and it is said that those who cross that bridge cannot return alive. うわさ で は 、 鬼 が 出る らしい 。 |||おに||でる| Man munkelt, dass ein Dämon auftaucht. Rumor has it that demons will appear. だ から 今では 、 人 っ子 一 人 通る 者 が ない そうだ 」   それ を 聞いて 、 腕 自慢 の 一 人 が 答え ました 。 ||いまでは|じん|っこ|ひと|じん|とおる|もの|||そう だ|||きいて|うで|じまん||ひと|じん||こたえ| Jetzt kommt also kein einziges Kind mehr durch". Als er dies hörte, antwortete einer der am besten bewaffneten Männer. So now it seems that no one can pass through. ”When I heard that, one of the proud ones answered. 「 鬼 が 出る なんて 、 うそ に 決まって いる 。 おに||でる||||きまって| Es ist eine Lüge, dass es Dämonen geben wird. "It's a lie that a demon will come out. なんなら 、 おれ が その 橋 を 渡って みせよう 」 「 なに ! ||||きょう||わたって|| Wenn du willst, gehe ich selbst über diese Brücke." 'Was! What if I'll cross the bridge? "" What! 本当に 、 渡れる の か ? ほんとうに|わたれる|| Sind Sie sicher, dass Sie übersetzen können? Can you really cross? 」 「 もちろん 、 渡れる さ 。 |わたれる| ' Natürlich können Sie übersetzen. "Of course, you can cross. しかし 、 ひと つ 条件 が ある 」 「 条件 と は ? |||じょうけん|||じょうけん|| Aber es gibt eine Bedingung." Wie lauten die Bedingungen? But there is one condition.” “What is the condition? 」 「 この お 屋敷 に ある お 馬 を 、 お 借り する 事 だ 。 ||やしき||||うま|||かり||こと| ' "Du musst dir ein Pferd von der Villa leihen. "It's about renting a horse in this mansion. あの お 馬 は 、 日本 一 の 名馬 だ 。 ||うま||にっぽん|ひと||めいば| Dieses Pferd ist das berühmteste Pferd Japans. That horse is the best horse in Japan. あれ に 乗って 行けば 、 鬼 が 出て も 何でもない さ 」   この 男 は 、 馬 を 借り られる はず は ない と 計算 して 言った のです が 、 ちょうど その 時 、 殿さま が 奥 から 入って 来て 、 「 話 は 聞いた ぞ 。 ||のって|いけば|おに||でて||なんでもない|||おとこ||うま||かり||||||けいさん||いった|||||じ|とのさま||おく||はいって|きて|はなし||きいた| Wenn wir auf dieses Ding gehen, ist es egal, ob es Dämonen gibt". Der Mann rechnete damit, dass er niemals ein Pferd leihen könnte, und sagte: "Ich habe gehört, was du zu sagen hast. If you ride on that, it's nothing to see a demon. ”This man calculated that he couldn't rent a horse, but at that moment, the lord came in from the back, "I heard the story. それ なら あの 馬 を 、 すぐに でも 貸して やろう 」 と 、 言った のです 。 |||うま||||かして|||いった| Dann werde ich dir das Pferd sofort leihen." sagte ich. In that case, I will lend you that horse as soon as possible." これ に は 言い出した 男 も 、 すっかり 困って しまい ました 。 |||いいだした|おとこ|||こまって|| Der Mann, der dies vorgeschlagen hatte, war völlig verlegen. The man who said this was completely in trouble. 「 あの 、 その 、 今 の 話 は 、 まったく の 冗談 で ございます ので 、 はい 」   男 は 殿さま の 前 で 何度 も 頭 を 下げ ました が 、 ほか の 若者 たち が 黙って い ませ ん 。 ||いま||はなし||||じょうだん|||||おとこ||とのさま||ぜん||なんど||あたま||さげ|||||わかもの|||だまって||| "Ähm, nun, was Sie gerade gesagt haben, ist ein kompletter Witz, ja." Der Mann senkte wiederholt den Kopf vor seinem Herrn, aber die anderen jungen Männer wollten nicht schweigen. "Oh, that's just a joke, yes." The man bowed his head many times in front of the lord, but the other young people were silent. 「 なんだ 、 なんだ 。 Was? Was? "What, what. 今さら 何 を 言って いる のだ 」 「 そう だ 、 そう だ 」 「 おい 、 はやく しろ 。 いまさら|なん||いって||||||||| Wovon reden Sie jetzt?" "Ja, ja." Hey, komm schon, komm schon. What are you talking about now? "" Yes, that's right. "" Hey, fast. 日 が かたむいた ぞ 」 「 そう だ 、 そう だ 」 「 ここ は 男らしく 、 約束 を 守れ 」 「 そう だ 、 そう だ 」   そう 言って いる うち に 、 若者 の 何 人 か が 馬 屋 から 馬 を 引き出して きた のです 。 ひ||||||||||おとこらしく|やくそく||まもれ||||||いって||||わかもの||なん|じん|||うま|や||うま||ひきだして|| The sun has settled. ”“ Yes, yes. ”“ This is manly, keep your promise. ”“ Yes, yes. ”While saying so, some young people pulled their horses out of the horse shop. I came. そして 馬 の 背中 に くら を 置く と 、 男 に 言い ました 。 |うま||せなか||||おく||おとこ||いい| Er setzte dem Pferd eine Krone auf den Rücken und sagte zu dem Mann. He told the man that he would put a kura on the horse's back. 「 さあ 、 準備 は 出来た ぞ 。 |じゅんび||できた| "Now, you're ready. 観念 して 行って こい 」   こう なって は 、 もう 逃げ出す わけに は いきま せ ん 。 かんねん||おこなって||||||にげだす||||| Nehmen Sie sich zusammen und kommen Sie her. Jetzt können wir nicht einfach weglaufen. Think about it and go. ”In this case, I can't run away anymore. ( と ほほ 。 (Tohoho. ・・・ つまらない 事 を 言った もの だ )   男 は 後悔 し ました が 、 仕方なく 立ち上がる と 馬 の そば に 行き 、 馬 の 腹 帯 が ゆるま ない 様 に 強く 締め 直したり 、 馬 の お 尻 に 油 を たっぷり と 塗ったり し ました 。 |こと||いった|||おとこ||こうかい||||しかたなく|たちあがる||うま||||いき|うま||はら|おび||||さま||つよく|しめ|なおしたり|うま|||しり||あぶら||||ぬったり|| The man regretted it, but when he had no choice but to stand up, he went to the side of the horse, tightened it tightly so that the horse's abdomen would not loosen, and oiled the horse's hips. I applied it a lot. そして 手 に むち を 一 本 持つ と 、 馬 に またがって 出発 した のです 。 |て||||ひと|ほん|もつ||うま|||しゅっぱつ|| And with a whip in his hand, he set out on a horse.

さて 、 安 義 橋 ( あき のばし ) の たも と まで やって 来る と 、 もう 、 日 が 暮れかかって い ました 。 |やす|ただし|きょう||||||||くる|||ひ||くれかかって|| Als wir den Fuß der Akino-Brücke erreichten, war die Sonne schon fast untergegangen. By the way, when I came to the base of Akinobashi, the sun was already setting. 「 薄気味悪い な 。 うすきみわるい| "It's creepy. ・・・ 何も 、 出 なければ よい が 」   男 が 馬 を 小走り に 走ら せて 橋 の 中ほど まで 進んだ 時 、 薄暗い 橋 の 上 に 誰 か が 一 人 で 立って いる の が 見え ました 。 なにも|だ||||おとこ||うま||こばしり||はしら||きょう||なかほど||すすんだ|じ|うすぐらい|きょう||うえ||だれ|||ひと|じん||たって||||みえ| Ich hoffe, dass nichts dabei herauskommt. Als der Mann mit seinem Pferd zur Mitte der Brücke trabte, sah er jemanden allein auf der schwach beleuchteten Brücke stehen. I wish I hadn't come out. ”When the man trod his horse to the middle of the bridge, I saw someone standing alone on the dim bridge. 「 もし かして 、 鬼 ? ||おに "Darf ich, Dämon? "If I may, demon? 」   しかし よく 見る と 、 それ は 女 の 人 でした 。 ||みる||||おんな||じん| ' Aber bei näherem Hinsehen war es eine Frau. But upon closer inspection, it was a woman. 女 の 人 は 薄紫 色 の 布 を 頭から かぶって おり 、 着物 は 濃い 紫色 で 、 赤い はかま を はいて い ます 。 おんな||じん||うすむらさき|いろ||ぬの||あたまから|||きもの||こい|むらさきいろ||あかい||||| Die Frau trägt ein hellviolettes Tuch über dem Kopf, einen dunkelvioletten Kimono und einen roten Hakama. The woman has a light purple cloth over her head, a dark purple kimono, and a red hakama. まるで 、 都 の 宮 仕え の 様 な 服装 です 。 |と||みや|つかえ||さま||ふくそう| Sie kleiden sich, als wären sie Palastbedienstete in der Hauptstadt. It's as if you're dressed like a palace servant. その 女 の 人 が 口 に 手 を あて 、 さびし そうな 目 で 男 を 見つめ ました 。 |おんな||じん||くち||て||||そう な|め||おとこ||みつめ| Die Frau hielt sich die Hand vor den Mund und sah ihn mit traurigen Augen an. The woman put her hand over her mouth and stared at the man with lonely eyes. ( 若い 女 が 、 こんな ところ で どうした の だろう ? わかい|おんな||||||| (Was macht eine junge Frau hier draußen? (What happened to the young woman in such a place? 誰 か に 、 置き去り に さ れた のだろう か ? だれ|||おきざり||||| Wurde jemand zurückgelassen? Was it abandoned by someone? )    女 の 人 は 男 に 近づく と 、 しずかに 顔 を あげて 笑み を 浮かべ ました 。 おんな||じん||おとこ||ちかづく|||かお|||えみ||うかべ| Eine Frau nähert sich einem Mann, der sie ruhig anschaut und lächelt. ) When the woman approached the man, she quietly raised her face and smiled. ( なんて 、 美しい のだろう )   男 は 一目 で 、 女 の 人 に 心 を ひか れ ました 。 |うつくしい||おとこ||いちもく||おんな||じん||こころ|||| (Wie schön) Der Mann verliebte sich auf den ersten Blick in die Frau. (How beautiful!) The man fell in love with the woman at first sight. ( ここ に 置いて いて は 、 かわいそうだ 。 ||おいて||| (Es tut mir leid für Sie, wenn ich Sie hier lasse. (I'm sorry to put it here. 馬 に 乗せて 、 家 まで 送って やろう )   そう 思い ました が 、 ( いや 、 待てよ 。 うま||のせて|いえ||おくって|||おもい||||まてよ Ich dachte daran, auf ein Pferd zu steigen und sie nach Hause zu bringen, aber ( Nein, warte. I'll put it on a horse and send it home.) I thought so, but (No, wait. こんな 時間 に 若い 女 の 人 が 、 たった 一 人 で いる の は 怪しい ぞ ) と 、 考え 直す と 、 あわてて 馬 を 走ら せよう と し ました 。 |じかん||わかい|おんな||じん|||ひと|じん|||||あやしい|||かんがえ|なおす|||うま||はしら|||| Thinking it over, I hurriedly tried to get the horse running. する と 女 の 人 は 、 ふいに 声 を かけて き ました 。 ||おんな||じん|||こえ|||| Dann rief die Frau aus heiterem Himmel nach mir. Then the woman suddenly called out to me. 「 もし 、 お 願い で ございます 。 ||ねがい|| Wenn Sie bitte... "If so, please. どうか 向こう の 村 まで 、 わたし を 連れて 行って ください ませ 。 |むこう||むら||||つれて|おこなって|| Bitte bringen Sie mich in das Dorf auf der anderen Seite. Please take me to the village over there. こんな 所 に 置き去り に さ れて 、 困って おり ます 」   美しい 声 です が 、 男 は その 声 を 聞く と 、 なぜ か 急に 身震い を し ました 。 |しょ||おきざり||||こまって|||うつくしい|こえ|||おとこ|||こえ||きく||||きゅうに|みぶるい||| I'm in trouble because I was left behind in a place like this." It was a beautiful voice, but when the man heard that voice, for some reason he suddenly shuddered. ( これ は 、 人 で は ない ! ||じん||| (Dies ist keine Person! (This is not a person! )   そして 馬 に むち を 当てる と 、 あわてて その 場 を 逃げ出し ました 。 |うま||||あてる||||じょう||にげだし| ) Dann schlug er das Pferd mit der Peitsche und rannte in Panik davon. ) And when he hit the horse with a whip, he hurriedly ran away. 「 まあ 、 ひどい 人 。 ||じん Sie sind ein schrecklicher Mensch. "Well, a terrible person. お 待ち ! |まち Ich warte! Waiting ! ・・・ 待た ん か ! また|| ... wait! 」   後ろ から 、 大きな 叫び声 が し ました 。 うしろ||おおきな|さけびごえ||| ' Ein lauter Schrei ertönte von hinten. '' I heard a loud shout from behind. さっき の 女 の 人 の 声 と は 思え ない 、 まるで 大地 を ゆるがす ような 声 です 。 ||おんな||じん||こえ|||おもえ|||だいち||||こえ| I don't think it's the voice of the woman I mentioned earlier, it's like a voice that loosens the earth. 「 待て ー ! まて|- Wait! 待た ぬ か ー ! また|||- Don't wait! 」   女 の 人 は 、 ドタドタ と 恐ろしい 足音 で 後ろ から 追いかけて き ました 。 おんな||じん||||おそろしい|あしおと||うしろ||おいかけて|| The woman chased from behind with slapstick and horrifying footsteps. ( 鬼 だ ! おに| ( Dämon! ( It's a demon! やはり 鬼 だ ! |おに| Es ist immer noch ein Dämon! After all it is a demon! )   男 は そう 思う と 、 夢中で 叫び ました 。 おとこ|||おもう||むちゅうで|さけび| ) When the man thought so, he shouted crazy. 「 観音 さま 、 どうか 我 を お 助け ください ! かんのん|||われ|||たすけ| "Kannon-sama, please help me! 」   しかし 後ろ から 追って くる 足音 を 、 どうしても 引き離す 事 が 出来 ませ ん 。 |うしろ||おって||あしおと|||ひきはなす|こと||でき|| But no matter what I do, I just can't get away from the sound of footsteps chasing me from behind. それどころか 何度 も 何度 も 馬 の お 尻 に 手 を かけて 、 男 を 馬 から 引きずり 落とそう と する のです 。 |なんど||なんど||うま|||しり||て|||おとこ||うま||ひきずり|おとそう||| On the contrary, he puts his hand on the horse's hips over and over again, trying to drag the man off the horse. 幸い 、 馬 の お 尻 に は 油 が たっぷり と 塗って ある ので 、 手 が 滑って 捕まる 事 は あり ませ ん でした 。 さいわい|うま|||しり|||あぶら||||ぬって|||て||すべって|つかまる|こと||||| Luckily, the horse's butt was heavily oiled, so I didn't slip and get caught. 男 は 逃げ ながら 、 ちらり と 後ろ を 振り向き ました 。 おとこ||にげ||||うしろ||ふりむき| As the man ran away, he glanced back. する と 先ほど の 美しい 女 は 、 世にも 恐ろしい 鬼 に 変わって いた のです 。 ||さきほど||うつくしい|おんな||よにも|おそろしい|おに||かわって|| Die schöne Frau hatte sich in den schrecklichsten Dämon der Welt verwandelt. As a result, the beautiful woman from earlier had turned into a terrifying demon. 鬼 の 身長 は 九 尺 ( きゅう しゃく → 約 二・七 メートル ) で 、 まっ 赤 な 顔 で 金色 の 目 が ギラギラ と 光って い ます 。 おに||しんちょう||ここの|しゃく|||やく|ふた|なな|めーとる|||あか||かお||きんいろ||め||ぎらぎら||ひかって|| The height of the demon is nine shaku (about 2.7 meters), and it has a bright red face and golden eyes glaring. 手 の 指 は 三 本 で 、 爪 は 刀 の 様 に とがって い ます 。 て||ゆび||みっ|ほん||つめ||かたな||さま|||| Er hat drei Finger und seine Fingernägel sind spitz wie Schwerter. The fingers of the hand are three, and the claws are sharp like a sword. 「 観音 さま 、 どうか 我 を お 助け ください ! かんのん|||われ|||たすけ| Guanyin, bitte hilf mir! "Kannon-sama, please help me! 」   男 は 観音 さま に 祈り ながら 、 なんとか 村 は ずれ まで やってき ました 。 おとこ||かんのん|||いのり|||むら||||| The man prayed to the Goddess of Mercy and managed to reach the outskirts of the village. 人家 の 明かり が 見えて くる と 、 ようやく 鬼 は 追う の を あきらめて 、 「 今日 は 逃がして やる が 、 いつか きっと 捕まえて やる ぞ ! じんか||あかり||みえて||||おに||おう||||きょう||にがして|||||つかまえて|| When the light of the house came into view, the demon finally gave up chasing and said, "I'll let you go today, but I'm sure I'll catch you someday! 」 と 、 叫ぶ と 、 どこ か へ 行って しまい ました 。 |さけぶ|||||おこなって|| ' Er schrie und ging weg. I shouted, and I went somewhere.

男 は やっと の 事 で 、 殿さま の お 屋敷 に たどりつき ました 。 おとこ||||こと||とのさま|||やしき||| The man finally made it to the lord's mansion. 男 の 帰り を 待って いた 若者 たち が 、 足音 を 聞きつけて 出て き ました 。 おとこ||かえり||まって||わかもの|||あしおと||ききつけて|でて|| The young men, who were waiting for the man to return, heard the footsteps and came out. 「 おい 、 どう だった ? "Hey, wie ist es gelaufen? "Hey, how was it? 」 「 鬼 は 、 いた か ? おに||| ' War da ein Dämon? "Was there a demon?" 」   若者 たち が 聞き ました が 、 男 は 真っ青な 顔 で 震え ながら 、 返事 一 つ 出来 ませ ん 。 わかもの|||きき|||おとこ||まっさおな|かお||ふるえ||へんじ|ひと||でき|| As the young people heard, the man trembled with a deep blue face, but he couldn't answer one. そこ で 若者 たち は 男 を かかえて お 屋敷 家 の 中 に 連れて 行き 、 男 を 介抱 ( かいほう ) して やり ました 。 ||わかもの|||おとこ||||やしき|いえ||なか||つれて|いき|おとこ||かいほう|||| So the young men took the man into the mansion and took care of him. 殿さま も 心配 して 、 出て き ました 。 とのさま||しんぱい||でて|| Der Herr war so besorgt, dass er herauskam. The lord was also worried and came out. 殿さま の 顔 を 見て 男 は ようやく 正気に 戻り 、 さっき の 恐ろしい 出来事 を 話し ました 。 とのさま||かお||みて|おとこ|||しょうきに|もどり|||おそろしい|できごと||はなし| The look on the lord's face finally brought the man to his senses and told him of the horrific incident. それ を 聞いた 殿さま は 、 「 それ は 災難 だった な 。 ||きいた|とのさま||||さいなん|| Hearing this, the lord said, "That must have been a disaster. だが これ に こりて 、 もう つまらない 強 が り を 言う で ない ぞ 」 と 、 男 を たしなめる と 、 落ち込む 男 に 乗って いた 馬 を ほうび だ と 言って やり ました 。 ||||||つよ||||いう|||||おとこ||||おちこむ|おとこ||のって||うま|||||いって|| But I'm not saying any more boring strength to this, "he said, praising the man and saying that the horse on the depressed man was a reward. 馬 を もらった 男 は 元気 を 取り戻す と 、 家 に 帰って 家族 に 今日 の 話 を 聞か せ ました 。 うま|||おとこ||げんき||とりもどす||いえ||かえって|かぞく||きょう||はなし||きか|| The man who received the horse regained his energy and went home to tell his family what he was talking about today.

さて それ から 男 の 家 に 、 色々 と 不思議な 事 が 起こり ました 。 |||おとこ||いえ||いろいろ||ふしぎな|こと||おこり| Then, various strange things happened to the man's house. 突然 家 が 地震 の 様 に ゆれたり 、 天井 や 壁 から 奇妙な 声 が 聞こえたり と 。 とつぜん|いえ||じしん||さま|||てんじょう||かべ||きみょうな|こえ||きこえたり| The house suddenly shook like an earthquake, and strange voices could be heard from the ceiling and walls. 怖く なった 男 が 占い 師 に 頼んで 原因 を 占って もらう と 、 占い 師 は こう 言い ました 。 こわく||おとこ||うらない|し||たのんで|げんいん||うらなって|||うらない|し|||いい| The frightened man asked a fortune-teller to tell him the cause, and the fortune-teller said, 「 あなた は 、 何 か の たたり を 受けて い ます 。 ||なん|||||うけて|| "You are being hit with something. すぐに 体 を 清めて 、 もの いみ を する 様 に 」   もの いみ (→ 物 忌み ) と は 、 門 を 閉めて 家 の 中 に 引きこもり 、 どんな 人 が 来て も 決して 家 の 中 に 入れて は なら ない 事 です 。 |からだ||きよめて|||||さま||||ぶつ|いみ|||もん||しめて|いえ||なか||ひきこもり||じん||きて||けっして|いえ||なか||いれて||||こと| Immediately cleanse your body and do things like you do. ”What is“ Monoi (→ Hikikomori)? There is no such thing. 男 は 体 を 清める と 、 じっと 家 の 中 に 引きこもって い ました 。 おとこ||からだ||きよめる|||いえ||なか||ひきこもって|| After cleansing himself, the man shut himself up inside the house. ところが その 日 の 夕方 、 ドンドン ドンと 門 を たたく 者 が あり ました 。 ||ひ||ゆうがた|どんどん|どんと|もん|||もの||| However, in the evening of that day, there was a person who hit the gate with Don Don Don. 家 の 者 が のぞいて みる と 、 そこ に いた の は 男 の 弟 です 。 いえ||もの||||||||||おとこ||おとうと| When the housekeeper peeked in, there was a man's younger brother. 弟 は 、 みちの く (→ 東北 地方 の 北部 ) の 殿さま の 家来 に なって 、 奥 州 ( おうしゅう ) に 住んで い ます 。 おとうと||||とうほく|ちほう||ほくぶ||とのさま||けらい|||おく|しゅう|||すんで|| My younger brother has become a vassal of the lord of Michinoku (the northern part of the Tohoku region) and lives in Oshu. その 弟 が 久しぶりに 京都 へ 帰る 事 に なった ので 、 その 途中 、 兄 の ところ を 訪ねて きた と いう のでした 。 |おとうと||ひさしぶりに|みやこ||かえる|こと|||||とちゅう|あに||||たずねて|||| The younger brother was supposed to return to Kyoto for the first time in a long time, so he said that he visited his brother on the way. ( より に よって 、 悪い 日 に 来た もの だ 。 |||わるい|ひ||きた|| (Of all things, it came on a bad day. しかし 弟 に 会って 、 病気 がちな 母上 の 様子 を 聞き たい 。 |おとうと||あって|びょうき||ははうえ||ようす||きき| However, I would like to meet my younger brother and hear about his mother, who tends to be ill. ・・・ しかし 今日 は 、 もの いみ の 日 だ 。 |きょう|||||ひ| ...But today is the day of the memories. 残念だ が 、 会う の は よそう )   男 は そう 思って 、 家 の 者 を 呼ぶ と 、 「 今日 は 会え ない 。 ざんねんだ||あう||||おとこ|||おもって|いえ||もの||よぶ||きょう||あえ| Unfortunately, I don't see him.) The man thought so, and when he called the housekeeper, he said, "I can't see you today. 明日 に なったら 会う から 、 今夜 は 他の 人 の 家 を 借りて 泊まる ように 」 と 、 門 の 中 から 言わ せ ました 。 あした|||あう||こんや||たの|じん||いえ||かりて|とまる|||もん||なか||いわ|| I'll meet you tomorrow, so please rent someone else's house and stay the night," he said from inside the gate. する と 、 弟 は 、 「 何 を なさけない 事 を おっしゃい ます 。 ||おとうと||なん|||こと||| Then my brother said, ``I'm telling you not to do anything. もう 、 日 も 暮れて しまい ました 。 |ひ||くれて|| Die Sonne war bereits untergegangen. It's already getting dark. わたし 一 人 なら 他の 家 を 借りる 事 も 出来 ます が 、 しかし 今日 は 家来 も 連れて いる し 、 馬 も い ます 。 |ひと|じん||たの|いえ||かりる|こと||でき||||きょう||けらい||つれて|||うま||| Wenn ich auf mich allein gestellt wäre, hätte ich ein anderes Haus mieten können, aber heute habe ich einen Vorschuss und ein Pferd bei mir. I could rent another house by myself, but today I have a servant and a horse. 他の 人 の 家 に 、 泊まる わけに は いきま せ ん 。 たの|じん||いえ||とまる||||| Wir können nicht in einem fremden Haus wohnen. I can't afford to stay at someone else's house. それ に 、 母上 が なくなら れた のです よ 。 ||ははうえ||||| Außerdem ist deine Mutter verstorben. Besides, my mother is gone. その 事 も ぜひ 、 わたし の 口 から 申し上げ たい と 思って 、 急いで まいり ました のに 」 と 、 残念 そうに 言い ました 。 |こと|||||くち||もうしあげ|||おもって|いそいで|||||ざんねん|そう に|いい| I wanted to tell you about that, so I rushed over," he said regretfully. これ を 聞いた 男 の 目 に 、 涙 が 浮かび ました 。 ||きいた|おとこ||め||なみだ||うかび| Dem Mann standen die Tränen in den Augen, als er dies hörte. Tears came to the eyes of the man who heard this. ( ああ 、 家 で 不思議な 事 が 起こった の は 、 母上 が なくなら れた と いう 知らせ であった の か )   男 は 、 もの いみ の 事 を すっかり 忘れて 、 家 の 者 に 言いつけ ました 。 |いえ||ふしぎな|こと||おこった|||ははうえ||||||しらせ||||おとこ|||||こと|||わすれて|いえ||もの||いいつけ| (Oh, did the strange thing happen at home was the news that my mother was gone?) The man completely forgot about his affair and told the house. 「 門 を すぐに 開けよ 。 もん|||あけよ Open the gate immediately. 弟 を ここ に 通せ 」   そして なつかし そうに 、 弟 を 家 に 迎え入れ ました 。 おとうと||||とおせ|||そう に|おとうと||いえ||むかえいれ| Send my little brother here." Then, looking nostalgic, he welcomed his little brother into the house.

男 と 二 人 っきり に なった 弟 は 、 泣き ながら 母 の 事 を 色々 と 話し ました 。 おとこ||ふた|じん||||おとうと||なき||はは||こと||いろいろ||はなし| Alone with the man, my younger brother cried and talked about his mother. 男 の お 嫁 さん は 隣 の 部屋 で 二 人 が 話し合って いる の を 聞いて いた のです が 、 その うち に 、 今 まで 仲 の 良かった 二 人 が 取 っ 組み合 い を 始めた のです 。 おとこ|||よめ|||となり||へや||ふた|じん||はなしあって||||きいて|||||||いま||なか||よかった|ふた|じん||と||くみあわ|||はじめた| The man's wife had heard the two talking in the next room, but in the meantime, the two who had been close to each other began to work together. 「 まあ 、 いったい 、 どう な すった のです か ! "Was in aller Welt ist denn passiert? "Well, what on earth did you do! 」   お 嫁 さん は 思わず 声 を かけて 、 二 人 の ところ に 走り 寄り ました 。 |よめ|||おもわず|こえ|||ふた|じん||||はしり|より| The bride instinctively called out and ran to the two of them. する と 男 は 、 弟 を 下 に 組 ふせ ながら 、 「 刀 を 取って 来い ! ||おとこ||おとうと||した||くみ|||かたな||とって|こい Then the man put his younger brother under him and said, "Get me a sword! まくらもと に ある 刀 を 。 |||かたな| The sword at the base of the pillow. はやく 、 はやく ! Come on, come on! 」 と 、 顔 を まっ 赤 に して 言う のです 。 |かお|||あか|||いう| ' he said, his face turning red. 「 あなた 、 気 でも 狂った のです か 。 |き||くるった|| "Are you crazy? せっかく いら した 弟 さん に 」 「 なに を 、 ぐずぐず して いる のだ ! |||おとうと|||||||| To my younger brother, who came all the way here," "What are you waiting for?! おれ に 、 死ね と いう の か ! ||しね|||| Do you mean I'm dead! 」   男 が 叫ぶ と 今 まで 下 に いた 弟 が 飛び起きて 、 今度 は 男 を 組み ふせて しまい ました 。 おとこ||さけぶ||いま||した|||おとうと||とびおきて|こんど||おとこ||くみ||| When the man shouted, his younger brother, who had been down until now, jumped up, and this time he had assembled the man. 「 き ゃあ ー ! ||- "Cha! 」   お 嫁 さん は 弟 の 顔 を 見て 、 思わず 悲鳴 を 上げ ました 。 |よめ|||おとうと||かお||みて|おもわず|ひめい||あげ| '' When the bride saw her brother's face, she involuntarily screamed. その 弟 の 顔 と いう の が 、 いつか 橋 の 上 で 追いかけ られた と 話 を して くれた 鬼 の 顔 だった のです 。 |おとうと||かお||||||きょう||うえ||おいかけ|||はなし||||おに||かお|| The younger brother's face was the face of the demon who had once told him that he had been chased on a bridge. そう 気 が ついた 時 に は 、 弟 に 化けて いた 鬼 は どこ か へ 行って しまい ました 。 |き|||じ|||おとうと||ばけて||おに|||||おこなって|| By the time I realized that, the demon disguised as my younger brother had gone somewhere. お 嫁 さん の 悲鳴 を 聞きつけて 家中 の 者 が 集まって 来 ました が 、 すでに 男 は 鬼 に のど を 食いちぎら れて い ました 。 |よめ|||ひめい||ききつけて|うちじゅう||もの||あつまって|らい||||おとこ||おに||||くいちぎら||| After hearing the bride's scream, all the people in the house gathered, but the man had already eaten his throat by the demon. 「 それでは 、 あの 弟 が 連れて 来た 家来 や 馬 は 、 どう なった のだ ? ||おとうと||つれて|きた|けらい||うま|||| "Then what happened to the servants and horses that younger brother brought? 」   みんな が 外 を 調べて みる と 、 動物 の 骨 が いく つ も 庭 に 転がって い ました 。 ||がい||しらべて|||どうぶつ||こつ|||||にわ||ころがって|| When everyone looked outside, they found many animal bones lying around in the garden. 人 や 馬 に 見えた の は 、 この 骸骨 だった のです 。 じん||うま||みえた||||がいこつ|| Was wie ein Mann oder ein Pferd aussah, war ein Skelett. It was this skeleton that looked like a person or a horse.

この 話 は 、 すぐに 殿さま たち に 知ら さ れ ました 。 |はなし|||とのさま|||しら||| This story was immediately made known to the lords. これ を 聞いた 殿さま は 、 「 つまらない 冗談 から 、 ついに 命 まで 落として しまった か 」 と 、 男 の 死 を 残念がり 、 男 の ため に お 祈り を し ました 。 ||きいた|とのさま|||じょうだん|||いのち||おとして||||おとこ||し||ざんねんがり|おとこ|||||いのり||| Upon hearing this, the lord said, "Did you finally lose your life from a boring joke?" He regretted the death of the man and prayed for him.

その後 、 鬼 は 姿 を 見せ なく なり 、 人々 は 安心 して 安 義 橋 を 渡れる 様 に なった と いう 事 です 。 そのご|おに||すがた||みせ|||ひとびと||あんしん||やす|ただし|きょう||わたれる|さま|||||こと| After that, the demons disappeared, and people were able to cross the Angi Bridge with peace of mind.

おしまい das Ende the end