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江戸小話, なむあみだぶつ

なむあみだぶつ

両 国 ( りょう ごく ) で 、 クマ の 見せ物 を して いる お じいさん が い ました 。 見せ物 に は 、 なにより お 天気 が 第 一 です 。 この ところ 、 ずっと お 天気 続き な ので 、 毎日 が 大入り 満員 ( おおいり まんいん → お 客 で いっぱいの 様子 ) です 。 お じいさん は すっかり 喜んで 、 自分 も 出入り口 に 現れる と 、 「 さあ 、 クマ だ 、 クマ だ 。 日本 一 の 、 大 グマ だ 。 江戸 で は 、 初めて の おめみえ 。 そ ー れ 、 よって らっしゃい 、 見て らっしゃい 」 と 、 大声 を 張り上げて 、 お 客 を 呼び込んで い ました 。

ところが この お じいさん 、 突然の 病気 に なって 、 あと は 息 を ひきとる ばかりです 。 それなのに 、 店 に 出る と 大声 を あげて 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 日本 一 の 大 グマ だ ー ! 」 と 、 怒鳴って ばかりです 。 もう すぐ 死ぬ と いう のに 、 念仏 ( ねんぶつ ) を となえる どころ で は あり ませ ん 。 「 ああ 、 こんな 事 で は 、 後生 ( ごしょう → 死んで から 生まれ変わる こと ) が 悪かろう 」 心配 した お ばあさん は 、 お じいさん に 言い ました 。 「 さあ 、 お前 さん 。 もう すぐ 、 お迎え が 来る んだ よ 、 なむあみだぶつ の 一 つ ぐらい は 、 唱え ない と 」 しかし お じいさん は 、 念仏 を 唱える どころ か 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 日本 一 の 大 グマ だ ー ! 」 と 、 わめく ばかり 。 集まった 身内 の 者 たち も 、 口々に に 念仏 を 進め ました が 、 お じいさん は 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 日本 一 の 大 グマ だ ー ! 」 の 一点ばり です 。 これ を 見た 医者 が 、 おばあ さん や 身内 に 言い ました 。 「 どれ 、 この わたし が 、 お じいさん に 念仏 を 言わ せて みせ ましょう 」 そして 医者 は 、 お じいさん の 耳 に 口 を よせて 言い ました 。 「 じいさん 、 明日 は 大雨 だ ぞ 」 する と お じいさん は 、 急に 大人 しく なって 、 「 ああ 、 なむあみだぶつ 、 なむあみだぶつ 」 と 、 唱えた そうです 。

おしまい


なむあみだぶつ

両 国 ( りょう ごく ) で 、 クマ の 見せ物 を して いる お じいさん が い ました 。 りょう|くに||||くま||みせもの|||||||| 見せ物 に は 、 なにより お 天気 が 第 一 です 。 みせもの|||||てんき||だい|ひと| この ところ 、 ずっと お 天気 続き な ので 、 毎日 が 大入り 満員 ( おおいり まんいん → お 客 で いっぱいの 様子 ) です 。 ||||てんき|つづき|||まいにち||おおいり|まんいん||||きゃく|||ようす| お じいさん は すっかり 喜んで 、 自分 も 出入り口 に 現れる と 、 「 さあ 、 クマ だ 、 クマ だ 。 ||||よろこんで|じぶん||でいりぐち||あらわれる|||くま||くま| 日本 一 の 、 大 グマ だ 。 にっぽん|ひと||だい|| 江戸 で は 、 初めて の おめみえ 。 えど|||はじめて|| そ ー れ 、 よって らっしゃい 、 見て らっしゃい 」 と 、 大声 を 張り上げて 、 お 客 を 呼び込んで い ました 。 |-||||みて|||おおごえ||はりあげて||きゃく||よびこんで||

ところが この お じいさん 、 突然の 病気 に なって 、 あと は 息 を ひきとる ばかりです 。 ||||とつぜんの|びょうき|||||いき|||ばかり です それなのに 、 店 に 出る と 大声 を あげて 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 |てん||でる||おおごえ|||くま||くま| 日本 一 の 大 グマ だ ー ! にっぽん|ひと||だい|||- 」 と 、 怒鳴って ばかりです 。 |どなって|ばかり です もう すぐ 死ぬ と いう のに 、 念仏 ( ねんぶつ ) を となえる どころ で は あり ませ ん 。 ||しぬ||||ねんぶつ||||||||| 「 ああ 、 こんな 事 で は 、 後生 ( ごしょう → 死んで から 生まれ変わる こと ) が 悪かろう 」   心配 した お ばあさん は 、 お じいさん に 言い ました 。 ||こと|||ごしょう||しんで||うまれかわる|||わるかろう|しんぱい||||||||いい| 「 さあ 、 お前 さん 。 |おまえ| もう すぐ 、 お迎え が 来る んだ よ 、 なむあみだぶつ の 一 つ ぐらい は 、 唱え ない と 」   しかし お じいさん は 、 念仏 を 唱える どころ か 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 ||おむかえ||くる|||||ひと||||となえ|||||||ねんぶつ||となえる|||くま||くま| 日本 一 の 大 グマ だ ー ! にっぽん|ひと||だい|||- 」 と 、 わめく ばかり 。 集まった 身内 の 者 たち も 、 口々に に 念仏 を 進め ました が 、 お じいさん は 、 「 クマ だ 、 クマ だ 。 あつまった|みうち||もの|||くちぐちに||ねんぶつ||すすめ||||||くま||くま| 日本 一 の 大 グマ だ ー ! にっぽん|ひと||だい|||- 」 の 一点ばり です 。 |いってんばり| これ を 見た 医者 が 、 おばあ さん や 身内 に 言い ました 。 ||みた|いしゃ|||||みうち||いい| 「 どれ 、 この わたし が 、 お じいさん に 念仏 を 言わ せて みせ ましょう 」   そして 医者 は 、 お じいさん の 耳 に 口 を よせて 言い ました 。 |||||||ねんぶつ||いわ|||||いしゃ|||||みみ||くち|||いい| 「 じいさん 、 明日 は 大雨 だ ぞ 」   する と お じいさん は 、 急に 大人 しく なって 、 「 ああ 、 なむあみだぶつ 、 なむあみだぶつ 」 と 、 唱えた そうです 。 |あした||おおあめ||||||||きゅうに|おとな|||||||となえた|そう です

おしまい