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世界の昔話, 正直者のスエン

正直者のスエン

正直 者 の スエン

むかし むかし 、 重い 病気 に かかった お 百姓 が 、 三 人 の 息子 に 財産 を 分ける 事 に し ました 。 けれど 貧乏な ので 、 上 の 二 人 に 家 と 家具 を 与えて しまう と 、 末っ子 の スエン に は 何も 残り ませ ん でした 。 お 百姓 は 、 スエン に 謝り ました 。 「 スエン よ 、 すま ない ね 。 わたし が お前 に やれる の は 、 わたし の 心 と 死んだ 妻 が 作って くれた 造花 だけ だ 」 すると スエン は 、 にっこり 笑って 言い ました 。 「 お 母さん の 作って くれた 造花 は 、 この世 で 一 番 美しい 物 です 。 そして まじめで 正直な お 父さん の 心 は 、 この世 で 一 番 素晴らしい 物 です 。 その 二 つ を もらえて 、 ぼく は 幸せです よ 」 「 スエン 、・・・ ありがとう 」 やがて お 父さん が 亡くなる と 、 スエン は 造花 と 自分 が 作った 弓 を 持って 旅 に 出 ました 。

旅 に 出た スエン は 、 王さま の 住んで いる 都 に 着き ました 。 その頃 、 お 城 で は 王さま に 仕える 新しい 家来 を 探して いる ところ でした 。 「 よし 、 ぼく も 申し込んで みよう 」 お 城 へ 行った スエン が 家来 に なる 事 を 申し出る と 、 金 の 王座 に 座った 王さま が 言い ました 。 「 その様に みすぼらしい 格好で 、 よく この 城 に 来た もの だ な 。 ・・・ まあ いい 、 お前 は 弓 を 持って いる が 、 腕前 を 見せて みろ 」 そこ で スエン は 、 お姫さま の 手のひら に サクランボウ の 種 を 乗せて 、 その 種 を 見事に 射落とした のです 。 これ に は 、 王さま も 感心 して 言い ました 。 「 うむ 。 見事だ ! 他 に も 何 か 、 特技 を 持って いる か ? 」 「 はい 。 わたし は 死んだ 父 から 、 正直な 心 を 受け 継ぎ ました 。 弓 以外 の 自慢 は 、 うそ を つか ない 事 です 」 意外な 答え に 、 王さま は 笑って 言い ました 。 「 うそ を つか ない の が 、 自慢 と は 。 では 聞く が 、 姫 は この世 で 一 番 美しい かな ? 」 「 はい 、 とても お 美しい です 。 でも 、 一 番 で は あり ませ ん 。 この世 に は 、 お姫さま より も 美しい 女性 は たくさん い ます 。 そして 、 わたし が この世 で 一 番 美しい と 思う 物 は 、 母 が 作って くれた 造花 です 」 スエン が 正直に 答える と 、 お姫さま の 機嫌 が 悪く なり ました 。 でも 王さま は 、 正直に 答えた スエン が 気に入った 様子 です 。 「 よし 。 今夜 一晩 、 わし の 部屋 の 前 で 見張り を して みろ 。 うまく できたら 、 家来 に して やろう 」

その 夜 、 王さま は スエン に ごちそう を 食べ させて 、 上等の ぶどう 酒 を 飲ま せて やり ました 。 そして お腹 が いっぱいに なった スエン は 、 見張り を する ため に 王さま の 寝室 の 前 に 行き ました 。 そこ に は テーブル が あって 、 王さま の 王冠 と 金 の くさり が 乗せて あり ます 。 「 いい か 、 決して 眠って は なら ん ぞ 。 もしも 王冠 と 金 の くさり が 盗ま れたら 、 死刑 だ から な 」 王さま は そう 言う と 、 寝室 に 入って しまい ました 。 スエン は 一生懸命に 見張り を 続け ました が 、 どういう わけ か 眠たくて たまり ませ ん 。 そして 気 が つく と 、 ぐう ぐう と 寝 込んで いた のです 。 「 しまった ! 」 目 を 覚ました スエン は 、 テーブル の 上 の 王冠 と 金 の くさり が なくなって いる の を 見て 驚き ました 。 このまま で は 、 スエン は 死刑 に なって しまい ます 。 けれど 父親 から 正直な 心 を 受け 継いだ スエン に は 、 だまって 逃げる 事 が 出来 ませ ん 。

翌朝 、 王さま が 起きて くる と 、 スエン は 正直に 寝て しまった 事 を 話し ました 。 王さま は 、 スエン に 尋ね ました 。 「 なぜ 、 逃げ なかった のだ ? 死刑 に なる かも しれ ぬ と いう のに 」 スエン は 、 胸 を 張って 言い ました 。 「 父 から 正直な 心 を 受け 継いだ わたし は 、 うそ や ひきょうな 事 は し ませ ん 。 さあ 、 死刑 に して ください 」 すると 王さま は 、 スエン に ニッコリ 微笑み ました 。 「 許して くれ 。 お前 が 本当に 正直な 心 を 持って いる の か 、 試した のだ 」 そして 王さま は 、 ぶどう 酒 に 眠り 薬 を 入れた 事 を 白状 した のです 。 もちろん 王冠 と 金 の くさり を 隠した の も 、 王さま の 仕業 でした 。

こうして 王さま の 家来 に なった スエン は 正直な 心 で 人々 の 人望 を 集めて 出世 して 、 やがて お姫さま と 結婚 して この 国 の 王さま に なった のです 。 その 時 スエン は 、 お姫さま へ の 贈り物 に 宝物 の 造花 を あげた そうです 。

おしまい


正直者のスエン しょうじき しゃ の スエン Honest Suen

正直 者 の スエン しょうじき|もの|| Honest Suen

むかし むかし 、 重い 病気 に かかった お 百姓 が 、 三 人 の 息子 に 財産 を 分ける 事 に し ました 。 ||おもい|びょうき||||ひゃくしょう||みっ|じん||むすこ||ざいさん||わける|こと||| Once upon a time, a seriously ill farmer decided to divide his fortune into three sons. けれど 貧乏な ので 、 上 の 二 人 に 家 と 家具 を 与えて しまう と 、 末っ子 の スエン に は 何も 残り ませ ん でした 。 |びんぼうな||うえ||ふた|じん||いえ||かぐ||あたえて|||すえっこ|||||なにも|のこり||| However, because he was poor, when he gave the above two people a house and furniture, nothing was left for his youngest child, Suen. お 百姓 は 、 スエン に 謝り ました 。 |ひゃくしょう||||あやまり| My peasant apologized to Suen. 「 スエン よ 、 すま ない ね 。 "Suen, I'm sorry. わたし が お前 に やれる の は 、 わたし の 心 と 死んだ 妻 が 作って くれた 造花 だけ だ 」   すると スエン は 、 にっこり 笑って 言い ました 。 ||おまえ|||||||こころ||しんだ|つま||つくって||ぞうか|||||||わらって|いい| "The only thing I can do for you is my heart and the artificial flowers created by my dead wife," said Suen, smiling. 「 お 母さん の 作って くれた 造花 は 、 この世 で 一 番 美しい 物 です 。 |かあさん||つくって||ぞうか||このよ||ひと|ばん|うつくしい|ぶつ| “The artificial flowers made by my mother are the most beautiful in the world. そして まじめで 正直な お 父さん の 心 は 、 この世 で 一 番 素晴らしい 物 です 。 ||しょうじきな||とうさん||こころ||このよ||ひと|ばん|すばらしい|ぶつ| And the heart of a serious and honest father is the most wonderful thing in the world. その 二 つ を もらえて 、 ぼく は 幸せです よ 」 「 スエン 、・・・ ありがとう 」    やがて お 父さん が 亡くなる と 、 スエン は 造花 と 自分 が 作った 弓 を 持って 旅 に 出 ました 。 |ふた||||||しあわせです||||||とうさん||なくなる||||ぞうか||じぶん||つくった|ゆみ||もって|たび||だ| With these two things, I'm happy." "Suen... Thank you." Eventually, when his father died, Suen embarked on a journey with an artificial flower and a bow he made.

旅 に 出た スエン は 、 王さま の 住んで いる 都 に 着き ました 。 たび||でた|||おうさま||すんで||と||つき| On the trip, Suen arrived in the city where the king lived. その頃 、 お 城 で は 王さま に 仕える 新しい 家来 を 探して いる ところ でした 。 そのころ||しろ|||おうさま||つかえる|あたらしい|けらい||さがして||| At that time, I was in the castle looking for a new servant to serve the king. 「 よし 、 ぼく も 申し込んで みよう 」   お 城 へ 行った スエン が 家来 に なる 事 を 申し出る と 、 金 の 王座 に 座った 王さま が 言い ました 。 |||もうしこんで|||しろ||おこなった|||けらい|||こと||もうしでる||きむ||おうざ||すわった|おうさま||いい| “Okay, let me apply as well.” Suen, who went to the castle, offered to become a servant, said the King sitting on the throne of gold. 「 その様に みすぼらしい 格好で 、 よく この 城 に 来た もの だ な 。 その よう に||かっこうで|||しろ||きた||| "It looks shabby like that, and I used to come to this castle. ・・・ まあ いい 、 お前 は 弓 を 持って いる が 、 腕前 を 見せて みろ 」   そこ で スエン は 、 お姫さま の 手のひら に サクランボウ の 種 を 乗せて 、 その 種 を 見事に 射落とした のです 。 ||おまえ||ゆみ||もって|||うでまえ||みせて||||||おひめさま||てのひら||||しゅ||のせて||しゅ||みごとに|いおとした| ...Well, you have a bow, but show me your skill." There, Suen put a cherry seed on the princess' palm and shot it off. これ に は 、 王さま も 感心 して 言い ました 。 |||おうさま||かんしん||いい| The King was also impressed with this. 「 うむ 。 "Um. 見事だ ! みごとだ It ’s amazing! 他 に も 何 か 、 特技 を 持って いる か ? た|||なん||とくぎ||もって|| Do you have any other feats? 」 「 はい 。 " " Okay . わたし は 死んだ 父 から 、 正直な 心 を 受け 継ぎ ました 。 ||しんだ|ちち||しょうじきな|こころ||うけ|つぎ| I inherited an honest heart from my dead father. 弓 以外 の 自慢 は 、 うそ を つか ない 事 です 」   意外な 答え に 、 王さま は 笑って 言い ました 。 ゆみ|いがい||じまん||||||こと||いがいな|こたえ||おうさま||わらって|いい| The only pride other than the bow is that he doesn't lie. "The King laughed and said to the surprising answer. 「 うそ を つか ない の が 、 自慢 と は 。 ||||||じまん|| "I'm proud of not telling lies. では 聞く が 、 姫 は この世 で 一 番 美しい かな ? |きく||ひめ||このよ||ひと|ばん|うつくしい| Then I ask, is the princess the most beautiful in the world? 」 「 はい 、 とても お 美しい です 。 |||うつくしい| "Yes, it's very beautiful. でも 、 一 番 で は あり ませ ん 。 |ひと|ばん||||| But it's not the number one. この世 に は 、 お姫さま より も 美しい 女性 は たくさん い ます 。 このよ|||おひめさま|||うつくしい|じょせい|||| There are many women in the world who are more beautiful than princesses. そして 、 わたし が この世 で 一 番 美しい と 思う 物 は 、 母 が 作って くれた 造花 です 」   スエン が 正直に 答える と 、 お姫さま の 機嫌 が 悪く なり ました 。 |||このよ||ひと|ばん|うつくしい||おもう|ぶつ||はは||つくって||ぞうか||||しょうじきに|こたえる||おひめさま||きげん||わるく|| And the most beautiful thing in the world that I think is the artificial flower that my mother made. ”Swen answered honestly, the princess was in a bad mood. でも 王さま は 、 正直に 答えた スエン が 気に入った 様子 です 。 |おうさま||しょうじきに|こたえた|||き に はいった|ようす| But the King seems to like Suen, who answered honestly. 「 よし 。 "OK. 今夜 一晩 、 わし の 部屋 の 前 で 見張り を して みろ 。 こんや|ひとばん|||へや||ぜん||みはり||| Watch in front of my room overnight tonight. うまく できたら 、 家来 に して やろう 」 ||けらい||| If you can do it well, let's make it a servant. "

その 夜 、 王さま は スエン に ごちそう を 食べ させて 、 上等の ぶどう 酒 を 飲ま せて やり ました 。 |よ|おうさま||||||たべ|さ せて|じょうとうの||さけ||のま||| That night, the King made Suen eat a feast and drink fine grape liquor. そして お腹 が いっぱいに なった スエン は 、 見張り を する ため に 王さま の 寝室 の 前 に 行き ました 。 |おなか||||||みはり|||||おうさま||しんしつ||ぜん||いき| And when he was full, Suen went in front of the King's bedroom to keep watch. そこ に は テーブル が あって 、 王さま の 王冠 と 金 の くさり が 乗せて あり ます 。 |||てーぶる|||おうさま||おうかん||きむ||||のせて|| There is a table there, with the king's crown and a gold sword on it. 「 いい か 、 決して 眠って は なら ん ぞ 。 ||けっして|ねむって|||| "Okay, never sleep. もしも 王冠 と 金 の くさり が 盗ま れたら 、 死刑 だ から な 」   王さま は そう 言う と 、 寝室 に 入って しまい ました 。 |おうかん||きむ||||ぬすま||しけい||||おうさま|||いう||しんしつ||はいって|| If the crown and the gold sword were stolen, it would be the death penalty. "The King said, and he went into the bedroom. スエン は 一生懸命に 見張り を 続け ました が 、 どういう わけ か 眠たくて たまり ませ ん 。 ||いっしょうけんめいに|みはり||つづけ||||||ねむたくて||| Suen kept a lookout hard, but for some reason she was sleepy. そして 気 が つく と 、 ぐう ぐう と 寝 込んで いた のです 。 |き|||||||ね|こんで|| And when I noticed, I fell asleep. 「 しまった ! " Oops ! 」   目 を 覚ました スエン は 、 テーブル の 上 の 王冠 と 金 の くさり が なくなって いる の を 見て 驚き ました 。 め||さました|||てーぶる||うえ||おうかん||きむ||||||||みて|おどろき| Waking up, Suen was surprised to see the crown and gold shavings on the table gone. このまま で は 、 スエン は 死刑 に なって しまい ます 。 |||||しけい|||| At this rate, Suen would be sentenced to death. けれど 父親 から 正直な 心 を 受け 継いだ スエン に は 、 だまって 逃げる 事 が 出来 ませ ん 。 |ちちおや||しょうじきな|こころ||うけ|ついだ|||||にげる|こと||でき|| However, Suen, who inherited the honest heart from her father, could not escape.

翌朝 、 王さま が 起きて くる と 、 スエン は 正直に 寝て しまった 事 を 話し ました 。 よくあさ|おうさま||おきて|||||しょうじきに|ねて||こと||はなし| The next morning, when the King woke up, Suen honestly told him that he had fallen asleep. 王さま は 、 スエン に 尋ね ました 。 おうさま||||たずね| The King asked Suen. 「 なぜ 、 逃げ なかった のだ ? |にげ|| "Why didn't you run away? 死刑 に なる かも しれ ぬ と いう のに 」   スエン は 、 胸 を 張って 言い ました 。 しけい|||||||||||むね||はって|いい| I could be sentenced to death, "Suan said with all his heart. 「 父 から 正直な 心 を 受け 継いだ わたし は 、 うそ や ひきょうな 事 は し ませ ん 。 ちち||しょうじきな|こころ||うけ|ついだ||||||こと|||| "I inherited an honest heart from my father, and I don't lie or do anything wrong. さあ 、 死刑 に して ください 」   すると 王さま は 、 スエン に ニッコリ 微笑み ました 。 |しけい|||||おうさま||||にっこり|ほおえみ| Now, let's put it to death. ”The King smiled at Suen with a smile. 「 許して くれ 。 ゆるして| " Forgive me . お前 が 本当に 正直な 心 を 持って いる の か 、 試した のだ 」   そして 王さま は 、 ぶどう 酒 に 眠り 薬 を 入れた 事 を 白状 した のです 。 おまえ||ほんとうに|しょうじきな|こころ||もって||||ためした|||おうさま|||さけ||ねむり|くすり||いれた|こと||はくじょう|| I tried to see if you really had an honest heart. ”And the King confessed that he had put a sleeping pill in his grape liquor. もちろん 王冠 と 金 の くさり を 隠した の も 、 王さま の 仕業 でした 。 |おうかん||きむ||||かくした|||おうさま||しわざ| Of course, it was the King's job to hide the crown and the gold sword.

こうして 王さま の 家来 に なった スエン は 正直な 心 で 人々 の 人望 を 集めて 出世 して 、 やがて お姫さま と 結婚 して この 国 の 王さま に なった のです 。 |おうさま||けらい|||||しょうじきな|こころ||ひとびと||じんぼう||あつめて|しゅっせ|||おひめさま||けっこん|||くに||おうさま||| Suen, who became a servant of the king in this way, gathered the people's wishes with an honest heart and went on to advance, and eventually married a princess and became the king of this country. その 時 スエン は 、 お姫さま へ の 贈り物 に 宝物 の 造花 を あげた そうです 。 |じ|||おひめさま|||おくりもの||たからもの||ぞうか|||そう です At that time, Suen gave a treasure artificial flower as a gift to the princess.

おしまい The end