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Aozora Bunko imports, 雪 の 上の おじいさん

雪 の 上の おじいさん

雪 の 上 の お じいさん

小川 未明

ある 村 に 、 人 の よい お じいさん が あり ました 。 ある 日 の こと 、 お じいさん は 、 用事 が あって 、 町 へ 出かけ ました 。 もう 、 長い 間 、 お じいさん は 、 町 に 出た こと が あり ませ ん でした 。 しかし 、 どうしても いかなければ なら ない 用事 が あり ました ので 、 つえ を ついて 、 自分 の 家 を 出 ました 。 お じいさん は 、 幾つか の 林 の あいだ を 通り 、 また 広々 と した 野原 を 過ぎ ました 。 小鳥 が 木 の こずえ に 止まって 鳴いて い ました 。 お じいさん は 、 おりおり つえ を とめて 休み ました 。 もう 、 あたり の 圃 は さびしく 枯れて い ました 。 そして 、 遠い 、 高い 山々 に は 、 雪 が きて い ました 。 お じいさん は 早く 町 へ いって 、 用事 を すまして 帰ろう と 思い ました 。 村 から 、 町 まで は 、 五 里 あまり も 隔たって い ました 。 その 間 は 、 さびしい 道 で 、 お じいさん は 、 あまり 知って いる 人 たち に も 出あい ませ ん でした 。 やっと 、 お じいさん は 、 昼 すこし 過ぎた ころ 、 その 町 に 入り ました 。 しばらく きて み なかった 間 に 、 町 の ようす も だいぶ 変わって い ました 。 お じいさん は 、 右 を 見 、 左 を ながめたり して 、 驚いて い ました 。 それ も その はず 、 お じいさん は 、 めったに 村 から 出た こと が なく 、 一 日 、 村 の 中 で 働いて いた から であり ます 。 「 私 が 、 くわ を 持って 、 毎日 、 同じ 圃 を 耕して いる 間 に 、 町 は こんなに 変わった の か 、 そして 、 この 私 まで が 、 こんなに 年 を とって しまった 。」 と 、 お じいさん は 、 独り ため息 を もらして いた のです 。 「 私 は 、 遊び に 町 へ 出た ので ない 。 早く 用事 を すまして 、 暗く ならない うち に 、 村 まで 帰ら なければ ならぬ 。」 と 、 お じいさん は 思い ました 。 そこ で 自分 の たずねる 場所 を さがして い ます と 、 公園 の 入り口 に 出 ました 。 公園 に は 、 青々 と した 木 が しげって い ました 。 人々 が 忙し そうに 、 その 前 を 通り抜けて 、 あちら の 方 へ いって しまう もの も あれば 、 また 公園 の 中 へ 入って くる もの 、 また 、 そこ から 出て ゆく もの など が 見え ました 。 しかし 、 その 人々 は 、 みんな 自分 の こと ばかり 考えて 、 だれも 、 その 入り口 の そば の 木 の 下 に 立って 、 しくしく と 泣いて いる 子供 の ある こと に 気づき ませ ん でした 。 また それ に 気 が ついて も 、 知ら ぬ 顔 を して ゆく もの ばかり であり ました 。 この お じいさん は 、 しんせつな 、 人情 深い おじい さん で 、 村 に いる とき も 、 近所 の 子供 ら から 慕われて いる ほど で あり ました から 、 すぐ に 、 その 子供 の 泣いて いる の が 目 に つき ました 。 「 なんで 、 あの 子 は 泣いて いる のだろう 。」 と 、 お じいさん は 思い ました 。 けれど 、 お じいさん は 、 用事 を 急いで い ました 。 そして 、 早く 用 を たして 、 遠い 自分 の 村 に 帰ら なければ なり ませ ん のでした 。 いま は 、 それ どころ で ない と 思った のでしょう 。 その 子供 の こと が 気 に かかり ながら 、 そこ を 通り 過ぎて しまい ました 。 しかし 、 いい お じいさん で あり ました から 、 すぐ に 、 その 子供 の こと を 忘れて しまう こと が でき ませ ん でした 。 いつまでも 、 子供 の 姿 が 目 に 残って い ました 。 「 あの 子 は 、 なんで 泣いて いた のだろう 。 母親 に でも まぐれた の か 、 それとも 、 友だち を 見失った の か 。 よく そば へ いって 、 聞いて みれば よかった 。」 と 、 お じいさん は 、 日ごろ 、 やさしい 心 に も 似ず 、 情 なく 、 そこ を 通り 過ぎて しまった の を 後悔 いたし ました 。 「 それ は 、 そう と 、 私 の たずねて いく ところ が わから ない 。」 と 、 お じいさん は 、 あちらこちら と 、 まごまご して い ました 。 そして 、 お じいさん は 、 昔 、 いった こと の ある 場所 を 忘れて しまって 、 幾人 と なく すれ違った 人々 に 聞いて い ました 。 「 あの あたり で 聞いて ごらん なさい 。」 など と いい のこして 、 さっさと いって しまう もの ばかり であり ました 。 お じいさん は 、 うろうろ して いる うち に 、 また さびしい ところ へ 出て しまい ました 。 そこ は 、 先刻 その 入り口 の 前 を 過ぎた 、 同じ 公園 の 裏手 に なって い ました 。 青々 と した 常磐木 が 、 うす 曇った 空 に 、 風 に 吹かれて 、 さやさや と 葉ずれ が して い ます 。 弱い 日 の 光 は 、 物悲し そうに 、 下 の 木 や 、 建物 や 、 その他 の すべて の もの の 上 を 照らして い ました 。 「 また 、 公園 の ところ へ 出て しまった か 。」 と 、 お じいさん は 、 もどかし そうに いい ました 。 する と 、 すぐ 目先 に 、 鉄 の さく に 寄りかかって 、 さっき 見た 六 つ ばかりの 男の子 が 、 しくしく 泣いて い ました 。 これ を 見る と 、 お じいさん は びっくり して しまい ました 。 お じいさん は 、 なにもかも 忘れて しまい ました 。 そして 、 すぐ に 泣いて いる 子供 の そば に 近寄り ました 。 「 坊 は 、 どうして 泣いて いる のだ 。」 と 、 お じいさん は 、 子供 の 頭 を なで ながら 聞き ました 。 「 お家 へ 帰り たい 。」 と 、 子供 は 、 ただ いって 泣いて いる ばかりでした 。 「 坊や の お家 は どこ だ か ? 私 が つれて いって やる だ 。」 と 、 お じいさん は 田舎 言葉 で いい ました 。 しかし 、 子供 は 、 自分 の 家 の ある 町 の 名 を よく 覚えて い ませ ん でした 。 それとも 、 悲し さ が 胸 いっぱい で 、 問われて も すぐ に は 、 頭 の 中 に 思い浮かば なかった もの か 、 「 お家 へ 帰り たい 。」 と 、 ただ 、 こう いって 泣いて いる ばかり で ありました 。 お じいさん は 、 ほんとうに 困って しまい ました 。 それにしても 、 さっき から 、 この 子供 は この 公園 の あたり で 泣いて いる のに 、 だれも 、 いま まで 、 しんせつに たずねて 、 家 へ つれて いって やろう と いう もの も ない 。 なんという 町 の 人たち は 、 薄情な もの ばかり だろう 。 それほど 、 なにか 忙しい 仕事 が ある の か と 、 お じいさん は 不思議に 感じた のでした 。 「 お家 へ 帰り たい 。」 子供 は 、 こう いって 泣き つづけて い ました 。 「 ああ 、 もう 泣かんで いい 。 私 が 、 坊や を つれて いって やる 。」 と 、 お じいさん は 、 子供 の 手 を 引いて 、 そこ の 鉄さく から 離れ ました 。 「 坊や 、 困った な 。 お家 の ある 町 が わから なくて は 。」 と 、 お じいさん は 子供 を いたわり ながら 、 小さな 手 を 引いて 歩いて き ました 。 すると 、 あちら に 、 風船 球 売り が いて 、 糸 の 先 に 、 赤い の や 、 紫 の を つけて 、 いくつも 空 に 飛ばして い ました 。 「 どれ 、 坊や に 、 風船 球 を ひと つ 買って やろう 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 子供 は 、 見る と 、 ほしくて 、 ほしくて たまらない 、 紫 の や 、 赤い の が 、 風 に 吹かれて 浮かんで い ました ので 、 泣く の を やめて 、 ぼんやり と 風船 球 に 見とれて いました 。 「 赤い の が いい か 、 紫 の が いい か 。」 と 、 お じいさん は 聞いて いました 。 「 赤い の が いい の 。」 と 、 子供 は 答えた 。 「 風船 球 屋 さん 、 その 赤い の を おくれ 。」 と いって 、 お じいさん は 、 懐 から 大きな 布 で 縫った 財布 を 出して 、 赤い の を 買って くれ ました 。 「 飛ばさない ように 、 しっかり 持って いく のだ 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 二人 は 、 また 、 そこ から 歩き ました 。 子供 は 、 風船 球 を 買って もらって 、 その うえ 、 お じいさん が ひじょうに しんせつに して くれ ます ので 、 もう 泣く の は やめて しまい ました 。 そして 、 とぼとぼ と お じいさん に 手 を 引かれて 歩いて い ました 。 「 坊や 、 おまえ は 、 どっち から きた のだ 。」 と 、 お じいさん は 、 こごんで 子供 の 顔 を のぞいて きき ました 。 子供 は 目 を くるくる さして 、 あたり を 見まわ し ました 。 けれど 、 子供 も この 辺 へ きた の は 、 はじめて だ と みえて 、 ぼんやり と して 、 ただ 驚いた ように 目 を みはって いる ばかりであり ます 。 「 坊 は 、 歩いて きた 道 を 覚えて いる だろう 、 どちら から 歩いて きた のだ 。」 と 、 お じいさん は 、 やさしく たずね ました 。 子供 は 、 再三 お じいさん に 、 こうして 問われた ので 、 なにか 返事 を し なければ 悪い と 思った の か 、 「 あっち 。」 と 、 あてもなく 、 小さい 指 で 、 にぎやかな 通り の 方 を 指した のです 。 「 坊 は 、 きた 道 を 忘れて しまった のだろう 。 無理 も ない こと だ 。 な に 、 もう すこし いったら 巡査 さん が いる だろう 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 「 お じいさん 、 巡査 さん は 、 いやだ 。」 と 、 子供 は いって 、 また しくしく と 悲し そうに 泣き 出し ました 。 お じいさん は 、 急に かわい さ を 増し ました 。 また 、 巡査 と 聞いて 、 泣き 出した 子供 を 見て おかしく なり ました 。 「 よし 、 よし 、 巡査 さん の ところ へ は つれて ゆか ない 。 お じいさん が 、 お家 へ つれて いって やる から 泣く の じゃない 。 ほら 、 みんな が 笑って いる ぞ 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 公園 の 方 で 、 鳥 の ないて いる 声 が 聞こえ ました 。 空 を 見る と 、 曇って い ました 。 そして 、 寒い 風 が 吹いて いました 。 お じいさん は 、 ほんとうに 困って しまい ました 。 どう したら 、 この 子供 を 家 へ とどけて やる こと が できる だろう か と 思い ました 。 子供 の 親 たち が 、 どんなに 心配 して いる だろう 。 そう 思う と 、 早く 、 子供 を あわして やり たい と 思い ました 。 どうして 、 この 子供 は 、 こんな ところ へ 迷って きたろう 。 この 近所 の 子供 なら 、 自分 の 家 の 方角 を 知って い そうな もの だ が と 、 お じいさん は 、 いろいろに 考え ました 。 しかし 、 世間 に は 、 怖ろしい 鬼 の ような 人間 が ある 。 自分 が 苦しい と いって 、 子供 を 捨てる ような 人間 も 住んで いる 。 そんな 人 の 心 は どんな であろう か 。 「 坊 は 、 お じいさん の 家 の 子供 に なる か 。」 と 、 お じいさん は 、 笑い ながら きき ました 。 「 なったら 、 また 、 風船 球 を 買って くれる ? 」 と 、 子供 は 、 お じいさん の 顔 を 見上げ ました 。 「 ああ 、 買って やる と も 、 いくつも 買って やる ぞ 。」 と 、 お じいさん は 、 大きな しわ の 寄った 掌 で 子供 の 頭 を なでて やり ました 。 お じいさん は 、 幾 十年 となく 、 毎日 、 圃 に 出て くわ を 持って いた ので 、 掌 は 、 堅く 、 あらくれ だって いました が 、 いま 子供 の 頭 を なでた とき に は 、 あたたかい 血 が 通って いた の であり ます 。 この とき 、 あちら から きちがい の ように 、 髪 を 振り乱して 、 女 が 駆けて きました 。 「 坊や 、 おまえ は どこ へ ゆく のだ い 。」 と 、 母親 は 子供 を しかり ました 。 子供 は 、 また お 母さん に 、 どんなに ひどい め に あわされる だろう か と 思った のでしょう 、 急に 大きな 声 で 泣き 出し ました 。 「 そんなら 、 この お 子供 さん は 、 あなた の お 子 さん です かい 。」 と 、 お じいさん は 女 の 人 に きき ました 。 「 私 の 子供 で ない かも ない もん だ 。 朝 から 、 どんなに 探した こと です か 、 警察 へ も とどけて あり ます よ 。」 と 、 女 は いい ました 。 「 さあ 、 坊や 、 お 母さん と いっしょに ゆく だ 。」 と 、 お じいさん は いい ました 。 子供 は 、 ただ 泣いて いて 、 お じいさん の そば を 離れ よう と しません 。 「 おまえ は 、 どこ へ ゆく つもり だい 。」 と 、 母親 は 怖ろしい 目 を して どなり ました 。 「 お じいさん と いっしょに ゆく のだ 。」 と 、 子供 は 泣き ながら いい ました 。 「 お じいさん 、 この 子 を どこ へ つれて ゆく つもりです か 。」 と 、 母親 は 、 お じいさん に 向かって 腹だたし げ に 問い ました 。 お じいさん は 、 なんという 気 の たった 女 だろう 。 子供 が これ で は つかない はずだ 。 きっと 家 が おもしろく なくて 、 それ で 、 あてもなく 出て 歩いて いる うち に 道 を 迷って しまった に 違いない 。 それにしても 、 あんまり 優し み の ない ところ を みる と 、 継母 である の かも しれ ない ぞ と 、 お じいさん は 、 いろいろに 考え ました が 、 こんな 女 に は 、 わかる ように いわ なければ だめだ と 思って 、 ここ まで 自分 が 子供 を つれて きた こと を すっかり 話して 聞かせた のです 。 する と 、 どんな 気 の たった 女 でも 、 お じいさん の して くれた しんせつに 対して 、 お 礼 を いわず に は いられ ません でした 。 「 それ は 、 ほんとうに お 世話 さま でした 。 さあ おまえ は 、 こちら へ おいで 。」 と 、 母親 は 、 お じいさん に 礼 を いい ながら 、 子供 の 手 を 引っ張り ました 。 「 さあ 、 お 母さん と ゆく のだ 。」 お じいさん は 、 目 に 涙 を ためて 、 子供 を 見送り ながら いい ました 。 子供 は 、 振り返り ながら 、 母親 に 連れられて ゆき ました 。 そして 、 その 姿 は 、 だんだん あちら に 、 人影 に 隠れて 見え なく なり ました 。 お じいさん は 、 ぼんやり と 、 しばらく 見送って いました が 、 もう いって しまった 子供 を どう する こと も でき ません でした 。 また 、 いつか ふたたび あわれる と いう こと も わからなかった のです 。 お じいさん は 、 自分 の 用事 の こと を 思い出し ました 。 そして 、 また 自分 の ゆく ところ を たずねて 、 町 の 中 を うろついて い ました 。 ちょうど 、 年寄り の まい子 の ように 、 お じいさん は うろうろ して いた のであり ます 。 「 ああ 、 今日 は 、 もう 遅い 。 それ に 降り に なり そうだ 。 早く 、 村 へ 帰ら なければ ならん 。」 と 、 お じいさん は 思い ました 。 お じいさん は 、 また 、 自分 の 村 を さして 帰途 に ついた のであり ます 。 途中 で 、 日 は 暮れかかり ました 。 そして 、 とうとう 雪 が 降って き ました 。 それ で なくて さえ 、 目 の よくない お じいさん は 、 どんなに 困った でしょう 。 いつのまにか 、 どこ が 原 だ やら 、 小川 だ やら 、 道 だ やら 、 ただ 一面 真っ白に 見えて わから なく なり ました 。 お じいさん は 、 つえ を たより に 、 とぼとぼ と 歩いて ゆき ました 。 その うち に 、 風 が 強く 吹いて 、 日 が まったく 暮れて しまった のです 。 まだ 、 村 まで は 、 二 里 あまり も あり ました 。 朝 くる とき に は 、 小鳥 の さえずって いた 林 も 、 雪 が かかって 、 音 も なく 、 うす暗がり の 中 に しんと して い ました 。 かわいそうに 、 お じいさん は 、 もう 疲れて 一歩 も 前 に 歩く こと が でき なく なり ました 。 だれ か こんな とき に 、 通りかかって 、 自分 を 村 まで つれて いって くれる ような 人 は ない もの か と 祈って い ました 。 雪 は 、 ますます 降って き ました 。 お じいさん は 、 雪 の 上 に すわって 、 目 を つぶり ました 。 そして 、 一心に 祈って い ました 。 する と 、 たちまち あちら に あたって 、 がやがや と 、 なに か 話し合う ような にぎやかな 声 が し ました 。 お じいさん は 、 なんだろう と 思って 、 目 を 開けて その方 を 見 ます と 、 それ は 、 みごとに も 、 ほおずき の ような 小さな 提燈 を 幾つ と なく 、 たくさんに つけて 、 それ を ば みんな が 手に手に ふりかざし ながら 、 真っ暗な 夜 の 中 を 行列 を つくって 歩いて くる のです 。 「 なんだろう ……。」 と 、 お じいさん は 、 目 を みはり ました 。 その 提燈 は 、 赤 に 、 青 に 、 紫 に 、 それはそれは みごとな もの で あり ました 。 お じいさん は 、 この 年 に なる まで 、 まだ こんな みごとな 行列 を 見た こと が なかった のです 。 これ は けっして 人間 の 行列 じゃ ない 。 魔物 か 、 きつね の 行列 であろう 。 なん に して も 、 自分 は おもしろい もの を 見る もの だ と 、 お じいさん は 喜んで 、 見て い ました 。 する と 、 その 行列 は 、 だんだん お じいさん の 方 へ 近づいて き ました 。 それ は 、 魔物 の 行列 でも 、 また 、 きつね の 行列 でも なんでも あり ませ ん 。 かわいらしい 、 かわいらしい おおぜい の 子供 の 行列 な のであり ました 。 その 行列 は すぐ 、 お じいさん の 前 を 通り かかり ました 。 子供 ら は 、 ぴかぴか と 光る 、 一 つ の 御輿 を かついで 、 あと の みんな は 、 その 御輿 の 前後 左右 を 取り巻いて 、 手 に 、 手 に 、 提燈 を 振りかざして いる のでした 。 お じいさん は 、 だれ が 、 その 御輿 の 中 に 入って いる のだろう と 思い ました 。 この とき 、 この 行列 は 、 お じいさん の 前 で 、 ふいに 止まり ました 。 お じいさん は 不思議な こと だ と 思って 、 黙って 見て い ます と 、 今日 、 町 で 道 に 迷って 、 公園 の 前 で 泣いて いた 子供 が 、 列 の 中 から 走り 出 ました 。 「 おお 、 おまえ かい 。」 と いって 、 お じいさん は 喜んで 声 を あげ ました 。 「 お じいさん 、 僕 が 迎え に きた んです 。」 と 、 その 子供 は いい ます と 、 不思議な こと に は 、 いま まで 五 つ か 、 六 つ ばかりの 小さな 子供 が 、 たちまち の うち に 十二 、 三 の 大きな 子供 に なって しまい ました 。 「 さあ 、 みんな 、 お じいさん を 御輿 の 中 に 入れて あげる のだ 。」 と 、 子供 は 、 大きな 声 で 命令 を 下し ます と 、 みんな は 、 手 に 、 手 に 、 持って いる 提燈 を 振りかざして 、 「 お じいさん 、 万歳 ! 」 「 万歳 ! 」 「 お じいさん 、 万歳 ! 万歳 ! 」 みんな が 、 口々に 叫び ました 。 そして 、 お じいさん を 御輿 の 中 に かつぎ こみ ました 。 「 さあ 、 これ から 音楽 を やって ゆく のだ 。」 と 、 例の 子供 は 、 また 、 みんな に 命令 を し ました 。 たちまち 、 いい 笛 の 音色 や 、 小さな らっぱ の 音 や 、 それ に 混じって 、 歩調 を 合わし 、 音頭 を とる 太鼓 の 音 が 起こって 、 しんと した あたり が 急に にぎやかに なり ました 。 お じいさん は 、 うれしくて 、 うれしくて 、 たまり ませ ん でした 。 そっと 輿 の 中 から のぞいて み ます と 、 あの 子供 が 、 みんな を 指揮 して い ます 。 そして 、 みんな が 口々に 、 なに か の 歌 を かわいらしい 声 で うたい ながら 行儀 よく 、 赤 ・ 青 ・ 紫 の 提燈 を 振りかざして 歩いて ゆき ました 。

雪 の 上の おじいさん ゆき||うえ の|お じいさん Großvater im Schnee old man on the snow Abuelo en la nieve Grand-père sur la neige Il nonno sulla neve 눈 위의 할아버지 Opa in de sneeuw Dziadek na śniegu O avô na neve Дедушка на снегу 雪地里的老人 雪地上的祖父

雪 の 上 の お じいさん ゆき||うえ||| Opa im Schnee Grandfather on the snow Abuelo en la nieve 눈에의 할아버지 Dziadek na śniegu Homem velho na neve

小川 未明 おがわ|みめい Ogawa Miki 시내 새벽 Ogawa Miaki

ある 村 に 、 人 の よい お じいさん が あり ました 。 |むら||じん||||||| In einem Dorf war ein guter alter Mann. There was a good old man in a village. 마을에 사람 좋은 おじい 씨가했습니다. W wiosce był dobry stary człowiek. 在某个村庄里,有一个善良的老人。 在某個村莊裡,有一位和藹可親的老人。 ある 日 の こと 、 お じいさん は 、 用事 が あって 、 町 へ 出かけ ました 。 |ひ||||||ようじ|||まち||でかけ| Eines Tages ging mein Großvater in die Stadt, weil er etwas zu tun hatte. One day, grandpa, I got errands and went out to town. 어느 날, 할아버지는 심부름을 하러 마을로 나갔다. Pewnego dnia mój dziadek wyjechał do miasta po umówionym spotkaniu. もう 、 長い 間 、 お じいさん は 、 町 に 出た こと が あり ませ ん でした 。 |ながい|あいだ||||まち||でた|||||| Mein Großvater war schon lange nicht mehr in der Stadt gewesen. For a long time my grandfather has never been to town. しかし 、 どうしても いかなければ なら ない 用事 が あり ました ので 、 つえ を ついて 、 自分 の 家 を 出 ました 。 ||いか なければ|||ようじ||||||||じぶん||いえ||だ| Da ich jedoch etwas tun musste, verließ ich mein Haus mit einem Stock. However, because there was a business I had to do, I left the house with my sticker. Cependant, je devais aller travailler, j'ai donc pris mes chaussures et j'ai quitté ma maison. 不過,我還有事要處理,所以我拿起拐杖就離開了家。 お じいさん は 、 幾つか の 林 の あいだ を 通り 、 また 広々 と した 野原 を 過ぎ ました 。 |||いく つ か||りん||||とおり||ひろびろ|||のはら||すぎ| Der alte Mann ging zwischen mehreren Wäldern vorbei an einem weiten Feld. The old man passed through several forests and passed through a spacious field. 小鳥 が 木 の こずえ に 止まって 鳴いて い ました 。 ことり||き||||とまって|ないて|| A bird was crowing and stopping in the trees. お じいさん は 、 おりおり つえ を とめて 休み ました 。 |||||||やすみ| Der Großvater stoppte die Haori und machte eine Pause. My grandfather absented an impolite and was absent. O avô descansava com os sapatos no chão. 老人掛起手杖休息了。 もう 、 あたり の 圃 は さびしく 枯れて い ました 。 |||ほ|||かれて|| The field in the neighborhood was already lonelyly withered. 此時,我們周圍的田野已經荒涼、枯萎了。 そして 、 遠い 、 高い 山々 に は 、 雪 が きて い ました 。 |とおい|たかい|やまやま|||ゆき|||| Und im fernen Hochgebirge lag Schnee. And it was snowing in the distant, high mountains. 远处的高山上覆盖着白雪。 お じいさん は 早く 町 へ いって 、 用事 を すまして 帰ろう と 思い ました 。 |||はやく|まち|||ようじ|||かえろう||おもい| Der alte Mann beschloss, früh in die Stadt zu gehen, Besorgungen zu machen und nach Hause zu gehen. My grandfather went to the town early and thought that he would go home with his business. 村 から 、 町 まで は 、 五 里 あまり も 隔たって い ました 。 むら||まち|||いつ|さと|||へだたって|| Das Dorf war zu weit von der Stadt entfernt, fünf Ri. The village and the town were separated by five villages. その 間 は 、 さびしい 道 で 、 お じいさん は 、 あまり 知って いる 人 たち に も 出あい ませ ん でした 。 |あいだ|||どう||||||しって||じん||||であい||| In der Zwischenzeit traf mein Großvater auf einer einsamen Straße nicht einmal Leute, die er so gut kannte. During that time, it was a lonely road, and my grandfather didn't meet people I knew a lot. 那段时间,路上很寂寞,也见不到很多自己很熟悉的人。 やっと 、 お じいさん は 、 昼 すこし 過ぎた ころ 、 その 町 に 入り ました 。 ||||ひる||すぎた|||まち||はいり| Finally, my grandfather entered the town when it was too late for lunch. 终于,中午时分,老人进了城。 しばらく きて み なかった 間 に 、 町 の ようす も だいぶ 変わって い ました 。 ||||あいだ||まち|||||かわって|| While I did not see for a while, the town changed quite a bit. 好久没来了,小镇变了很多。 お じいさん は 、 右 を 見 、 左 を ながめたり して 、 驚いて い ました 。 |||みぎ||み|ひだり||||おどろいて|| My grandfather was surprised to look at the right and look at the left. 老人看看右邊,又看看左邊,吃了一驚。 それ も その はず 、 お じいさん は 、 めったに 村 から 出た こと が なく 、 一 日 、 村 の 中 で 働いて いた から であり ます 。 ||||||||むら||でた||||ひと|ひ|むら||なか||はたらいて|||| Das sollte der Fall sein, weil er das Dorf selten verließ und einen Tag im Dorf arbeitete. That is also the case, because the grandfather had rarely left the village and was working in the village all day long. 这也在意料之中,因为老人很少出村,整天都在村里干活。 「 私 が 、 くわ を 持って 、 毎日 、 同じ 圃 を 耕して いる 間 に 、 町 は こんなに 変わった の か 、 そして 、 この 私 まで が 、 こんなに 年 を とって しまった 。」 わたくし||||もって|まいにち|おなじ|ほ||たがやして||あいだ||まち|||かわった|||||わたくし||||とし||| "While I was holding the hoes and cultivating the same bushes every day, how has the town changed so much, and this has taken me so old." “我每天拿着锄头在同一片土地上耕作,小镇怎么变化这么大,连我都变老了?” と 、 お じいさん は 、 独り ため息 を もらして いた のです 。 ||||ひとり|ためいき|||| And my grandfather had a single sigh. 「 私 は 、 遊び に 町 へ 出た ので ない 。 わたくし||あそび||まち||でた|| "I did not go out to town for play. “我不是去城里玩的。 早く 用事 を すまして 、 暗く ならない うち に 、 村 まで 帰ら なければ ならぬ 。」 はやく|ようじ|||くらく|なら ない|||むら||かえら||なら ぬ I have to go back to the village before it gets dark soon. " と 、 お じいさん は 思い ました 。 ||||おもい| And my grandfather thought. そこ で 自分 の たずねる 場所 を さがして い ます と 、 公園 の 入り口 に 出 ました 。 ||じぶん|||ばしょ||||||こうえん||いりぐち||だ| When I was looking for a place I would like to visit there, I went to the entrance of the park. 当我想找地方问的时候,我来到公园的入口。 公園 に は 、 青々 と した 木 が しげって い ました 。 こうえん|||あおあお|||き|||| There was a lush tree in the park. 人々 が 忙し そうに 、 その 前 を 通り抜けて 、 あちら の 方 へ いって しまう もの も あれば 、 また 公園 の 中 へ 入って くる もの 、 また 、 そこ から 出て ゆく もの など が 見え ました 。 ひとびと||いそがし|そう に||ぜん||とおりぬけて|||かた||||||||こうえん||なか||はいって||||||でて|||||みえ| I could see people going busy, passing through the front and going to other people, those coming into the park again, and those coming out of it. 我可以看到人们在它前面忙碌地经过,有的往那边走,有的进公园,有的离开。 しかし 、 その 人々 は 、 みんな 自分 の こと ばかり 考えて 、 だれも 、 その 入り口 の そば の 木 の 下 に 立って 、 しくしく と 泣いて いる 子供 の ある こと に 気づき ませ ん でした 。 ||ひとびと|||じぶん||||かんがえて|だれ も||いりぐち||||き||した||たって|||ないて||こども|||||きづき||| But they all thought about themselves and no one knew that there was a child standing under the tree near the entrance and crying hard. また それ に 気 が ついて も 、 知ら ぬ 顔 を して ゆく もの ばかり であり ました 。 |||き||||しら||かお||||||| Even when I realized it, it was just something that had an unknown face. この お じいさん は 、 しんせつな 、 人情 深い おじい さん で 、 村 に いる とき も 、 近所 の 子供 ら から 慕われて いる ほど で あり ました から 、 すぐ に 、 その 子供 の 泣いて いる の が 目 に つき ました 。 |||||にんじょう|ふかい|お じい|||むら|||||きんじょ||こども|||したわ れて||||||||||こども||ないて||||め||| This grandfather was a vulgar, kindhearted grandfather, and even when in the village he was being scolded by the children in the neighborhood, so he immediately saw the crying of that child. arrived . Este avô era um avô amigável e de bom coração e, mesmo quando estava na aldeia, era amado pelos vizinhos. chegou. 「 なんで 、 あの 子 は 泣いて いる のだろう 。」 ||こ||ないて|| "Why is that girl crying?" と 、 お じいさん は 思い ました 。 ||||おもい| Grandpa thought. けれど 、 お じいさん は 、 用事 を 急いで い ました 。 ||||ようじ||いそいで|| But my grandfather was in a hurry to do business. そして 、 早く 用 を たして 、 遠い 自分 の 村 に 帰ら なければ なり ませ ん のでした 。 |はやく|よう|||とおい|じぶん||むら||かえら||||| And I had to get used quickly and go back to my own village far away. いま は 、 それ どころ で ない と 思った のでしょう 。 |||||||おもった| Right now it seemed that it was not so far. その 子供 の こと が 気 に かかり ながら 、 そこ を 通り 過ぎて しまい ました 。 |こども||||き||||||とおり|すぎて|| I was worried about the child and passed by there. しかし 、 いい お じいさん で あり ました から 、 すぐ に 、 その 子供 の こと を 忘れて しまう こと が でき ませ ん でした 。 |||||||||||こども||||わすれて||||||| However, as it was a good old man, I could not forget the child at once. 但作为一个好老人,我不能马上忘记他。 いつまでも 、 子供 の 姿 が 目 に 残って い ました 。 |こども||すがた||め||のこって|| For a long time, the figure of the child remained in the eye. 「 あの 子 は 、 なんで 泣いて いた のだろう 。 |こ|||ないて|| "Why was he crying? 母親 に でも まぐれた の か 、 それとも 、 友だち を 見失った の か 。 ははおや|||ま ぐれた||||ともだち||みうしなった|| Have you been married to your mother or have you missed your friends? よく そば へ いって 、 聞いて みれば よかった 。」 ||||きいて|| I should go well and have listened. " と 、 お じいさん は 、 日ごろ 、 やさしい 心 に も 似ず 、 情 なく 、 そこ を 通り 過ぎて しまった の を 後悔 いたし ました 。 ||||ひごろ||こころ|||に ず|じょう||||とおり|すぎて||||こうかい|| The grandfather regretted that he passed the path without feeling like a gentle heart on a daily basis. 「 それ は 、 そう と 、 私 の たずねて いく ところ が わから ない 。」 ||||わたくし||||||| "That 's why I don't know where I'm going to go." “对了,我也不知道我在问什么。” と 、 お じいさん は 、 あちらこちら と 、 まごまご して い ました 。 And my grandfather was lying there and there. そして 、 お じいさん は 、 昔 、 いった こと の ある 場所 を 忘れて しまって 、 幾人 と なく すれ違った 人々 に 聞いて い ました 。 ||||むかし|||||ばしょ||わすれて||いく り|||すれちがった|ひとびと||きいて|| And the old man had forgotten the places I had ever heard, and asked people who passed each other without several people. 「 あの あたり で 聞いて ごらん なさい 。」 |||きいて|| "Listen to that area." “在那边听听。” など と いい のこして 、 さっさと いって しまう もの ばかり であり ました 。 There was nothing that could be said quickly, such as. 我所能做的就是说这样的话,然后说得很快。 お じいさん は 、 うろうろ して いる うち に 、 また さびしい ところ へ 出て しまい ました 。 ||||||||||||でて|| My grandfather went out to a lonely place while I was crawling. 老人在四处游荡的时候,发现自己又到了一个孤寂的地方。 そこ は 、 先刻 その 入り口 の 前 を 過ぎた 、 同じ 公園 の 裏手 に なって い ました 。 ||せんこく||いりぐち||ぜん||すぎた|おなじ|こうえん||うらて|||| It was behind the same park that passed the front of the entrance last time. 青々 と した 常磐木 が 、 うす 曇った 空 に 、 風 に 吹かれて 、 さやさや と 葉ずれ が して い ます 。 あおあお|||ときわぎ|||くもった|から||かぜ||ふか れて|さ や さ や||は ずれ|||| A lush everlasting tree is blown by the wind in a light cloudy sky, and there are pods and leaves. 弱い 日 の 光 は 、 物悲し そうに 、 下 の 木 や 、 建物 や 、 その他 の すべて の もの の 上 を 照らして い ました 。 よわい|ひ||ひかり||ものがなし|そう に|した||き||たてもの||そのほか||||||うえ||てらして|| The light of the weak day was sadly shining on the trees below, the buildings, and everything else. 「 また 、 公園 の ところ へ 出て しまった か 。」 |こうえん||||でて|| “Did you go to the park again?” と 、 お じいさん は 、 もどかし そうに いい ました 。 |||||そう に|| Said the grandfather. する と 、 すぐ 目先 に 、 鉄 の さく に 寄りかかって 、 さっき 見た 六 つ ばかりの 男の子 が 、 しくしく 泣いて い ました 。 |||めさき||くろがね||||よりかかって||みた|むっ|||おとこのこ|||ないて|| Then, as soon as I approached the iron, the six boys I saw were crying hard. これ を 見る と 、 お じいさん は びっくり して しまい ました 。 ||みる|||||||| When I saw this, my grandfather was surprised. お じいさん は 、 なにもかも 忘れて しまい ました 。 ||||わすれて|| The grandfather has forgotten everything. そして 、 すぐ に 泣いて いる 子供 の そば に 近寄り ました 。 |||ないて||こども||||ちかより| I immediately approached a crying child. 「 坊 は 、 どうして 泣いて いる のだ 。」 ぼう|||ないて|| "Why are you crying?" と 、 お じいさん は 、 子供 の 頭 を なで ながら 聞き ました 。 ||||こども||あたま||な で||きき| Said the old man, stroking the child's head. 「 お家 へ 帰り たい 。」 おいえ||かえり| “I want to go home.” と 、 子供 は 、 ただ いって 泣いて いる ばかりでした 。 |こども||||ないて|| And my child was just crying. 「 坊や の お家 は どこ だ か ? ぼうや||おいえ|||| "Where is the boy 's house? 私 が つれて いって やる だ 。」 わたくし||||| I am going to take it. " と 、 お じいさん は 田舎 言葉 で いい ました 。 ||||いなか|ことば||| And my grandfather said in the language of the country. しかし 、 子供 は 、 自分 の 家 の ある 町 の 名 を よく 覚えて い ませ ん でした 。 |こども||じぶん||いえ|||まち||な|||おぼえて|||| However, the children did not remember the name of the town where their house was located. それとも 、 悲し さ が 胸 いっぱい で 、 問われて も すぐ に は 、 頭 の 中 に 思い浮かば なかった もの か 、 「 お家 へ 帰り たい 。」 |かなし|||むね|||とわ れて|||||あたま||なか||おもいうかば||||おいえ||かえり| Or if the sadness is full of heart and you are asked something that you have not thought of in your head right away, "I want to go home." と 、 ただ 、 こう いって 泣いて いる ばかり で ありました 。 ||||ないて||||あり ました I was just crying like this. お じいさん は 、 ほんとうに 困って しまい ました 。 ||||こまって|| The grandfather was really in trouble. それにしても 、 さっき から 、 この 子供 は この 公園 の あたり で 泣いて いる のに 、 だれも 、 いま まで 、 しんせつに たずねて 、 家 へ つれて いって やろう と いう もの も ない 。 ||||こども|||こうえん||||ないて|||だれ も|||||いえ||||||||| Even so, the child has been crying around the park for a while, but no one has ever asked the home to take home. なんという 町 の 人たち は 、 薄情な もの ばかり だろう 。 |まち||じん たち||はくじょうな||| What kind of people in the town are all pitiful. それほど 、 なにか 忙しい 仕事 が ある の か と 、 お じいさん は 不思議に 感じた のでした 。 |なに か|いそがしい|しごと|||||||||ふしぎに|かんじた| The grandfather wondered if he had such a busy job. 「 お家 へ 帰り たい 。」 おいえ||かえり| “I want to go home.” 子供 は 、 こう いって 泣き つづけて い ました 。 こども||||なき||| The child was crying like this. 「 ああ 、 もう 泣かんで いい 。 ||なか んで| "Oh, you can cry already. 私 が 、 坊や を つれて いって やる 。」 わたくし||ぼうや|||| I'll do it for you. " と 、 お じいさん は 、 子供 の 手 を 引いて 、 そこ の 鉄さく から 離れ ました 。 ||||こども||て||ひいて|||てっさく||はなれ| Then the grandfather pulled the child's hand away from the iron fence. 「 坊や 、 困った な 。 ぼうや|こまった| “The boy is in trouble. お家 の ある 町 が わから なくて は 。」 おいえ|||まち|||| I need to know the town where my house is. " と 、 お じいさん は 子供 を いたわり ながら 、 小さな 手 を 引いて 歩いて き ました 。 ||||こども||||ちいさな|て||ひいて|あるいて|| The grandfather walked with a small hand while taking care of the child. すると 、 あちら に 、 風船 球 売り が いて 、 糸 の 先 に 、 赤い の や 、 紫 の を つけて 、 いくつも 空 に 飛ばして い ました 。 |||ふうせん|たま|うり|||いと||さき||あかい|||むらさき||||いく つ も|から||とばして|| Then, there was a balloon-ball seller over there, and red and purple were attached to the end of the thread, and they were always flying into the sky. 「 どれ 、 坊や に 、 風船 球 を ひと つ 買って やろう 。」 |ぼうや||ふうせん|たま||||かって| "Well, let's buy a balloon ball for a little boy." と 、 お じいさん は いい ました 。 Said the grandfather. 子供 は 、 見る と 、 ほしくて 、 ほしくて たまらない 、 紫 の や 、 赤い の が 、 風 に 吹かれて 浮かんで い ました ので 、 泣く の を やめて 、 ぼんやり と 風船 球 に 見とれて いました 。 こども||みる|||||むらさき|||あかい|||かぜ||ふか れて|うかんで||||なく||||||ふうせん|たま||みとれて|い ました When I looked at the child, I wanted to see it, and I didn't want it, and the purple and red ones were floating in the wind. 「 赤い の が いい か 、 紫 の が いい か 。」 あかい|||||むらさき|||| “Is it better to be red or purple?” と 、 お じいさん は 聞いて いました 。 ||||きいて|い ました Said the grandfather. 「 赤い の が いい の 。」 あかい|||| “Red is good.” と 、 子供 は 答えた 。 |こども||こたえた The child replied. 「 風船 球 屋 さん 、 その 赤い の を おくれ 。」 ふうせん|たま|や|||あかい||| "Balloon ball shop, give me the red one." と いって 、 お じいさん は 、 懐 から 大きな 布 で 縫った 財布 を 出して 、 赤い の を 買って くれ ました 。 |||||ふところ||おおきな|ぬの||ぬった|さいふ||だして|あかい|||かって|| However, my grandfather gave me a wallet sewed with a big cloth from my pocket and bought a red one. 「 飛ばさない ように 、 しっかり 持って いく のだ 。」 とばさ ない|||もって|| "Take it steady so as not to fly." と 、 お じいさん は いい ました 。 said the old man. 二人 は 、 また 、 そこ から 歩き ました 。 ふた り|||||あるき| The two of them also walked from there. 子供 は 、 風船 球 を 買って もらって 、 その うえ 、 お じいさん が ひじょうに しんせつに して くれ ます ので 、 もう 泣く の は やめて しまい ました 。 こども||ふうせん|たま||かって||||||||||||||なく||||| The child bought a balloon ball and, in addition, the grandfather was so obsessed that he stopped crying. そして 、 とぼとぼ と お じいさん に 手 を 引かれて 歩いて い ました 。 ||||||て||ひか れて|あるいて|| And I was walking with my hand drawn by my grandfather and grandfather. 「 坊や 、 おまえ は 、 どっち から きた のだ 。」 ぼうや|||||| "Which boy are you from?" と 、 お じいさん は 、 こごんで 子供 の 顔 を のぞいて きき ました 。 ||||こご んで|こども||かお|||| And then, Grandfather looked into the child's face. 子供 は 目 を くるくる さして 、 あたり を 見まわ し ました 。 こども||め||||||みまわ|| The child shook his eyes and looked around. けれど 、 子供 も この 辺 へ きた の は 、 はじめて だ と みえて 、 ぼんやり と して 、 ただ 驚いた ように 目 を みはって いる ばかりであり ます 。 |こども|||ほとり|||||||||||||おどろいた||め||||| However, it seems that this is the first time that a child has come to this area, and it is only vaguely and just astonished. 「 坊 は 、 歩いて きた 道 を 覚えて いる だろう 、 どちら から 歩いて きた のだ 。」 ぼう||あるいて||どう||おぼえて|||||あるいて|| "The boy remembers the way he walked, from whom he walked." と 、 お じいさん は 、 やさしく たずね ました 。 Asked the grandfather gently. 子供 は 、 再三 お じいさん に 、 こうして 問われた ので 、 なにか 返事 を し なければ 悪い と 思った の か 、 「 あっち 。」 こども||さいさん|||||とわ れた||なに か|へんじ||||わるい||おもった|||あっ ち The child was asked by his grandfather again and again, so he thought that if he hadn't answered anything, he thought it was bad. と 、 あてもなく 、 小さい 指 で 、 にぎやかな 通り の 方 を 指した のです 。 |あて も なく|ちいさい|ゆび|||とおり||かた||さした| And with no recourse, I pointed to a busy street with a small finger. 「 坊 は 、 きた 道 を 忘れて しまった のだろう 。 ぼう|||どう||わすれて|| "The boy has forgotten the way he came. 無理 も ない こと だ 。 むり|||| It is not unreasonable. な に 、 もう すこし いったら 巡査 さん が いる だろう 。」 |||||じゅんさ|||| There will be a patroller if it is a little more. " と 、 お じいさん は いい ました 。 said the old man. 「 お じいさん 、 巡査 さん は 、 いやだ 。」 ||じゅんさ||| "The grandfather and the constable are no good." と 、 子供 は いって 、 また しくしく と 悲し そうに 泣き 出し ました 。 |こども||||||かなし|そう に|なき|だし| And the child started crying again and again sadly. お じいさん は 、 急に かわい さ を 増し ました 。 |||きゅうに||||まし| The grandfather suddenly increased her cuteness. また 、 巡査 と 聞いて 、 泣き 出した 子供 を 見て おかしく なり ました 。 |じゅんさ||きいて|なき|だした|こども||みて||| Also, when I heard it was a policeman, I was crazy to see the child who cried. 「 よし 、 よし 、 巡査 さん の ところ へ は つれて ゆか ない 。 ||じゅんさ|||||||| “Yoshi, Yoshi, I ca n’t follow the policeman. お じいさん が 、 お家 へ つれて いって やる から 泣く の じゃない 。 |||おいえ||||||なく||じゃ ない Your grandfather will not cry because he will take you home. ほら 、 みんな が 笑って いる ぞ 。」 |||わらって|| Look, everyone is laughing. " と 、 お じいさん は いい ました 。 said the old man. 公園 の 方 で 、 鳥 の ないて いる 声 が 聞こえ ました 。 こうえん||かた||ちょう||||こえ||きこえ| I heard birds chirping in the park. 空 を 見る と 、 曇って い ました 。 から||みる||くもって|| When I looked at the sky, it was cloudy. そして 、 寒い 風 が 吹いて いました 。 |さむい|かぜ||ふいて|い ました And a cold wind was blowing. お じいさん は 、 ほんとうに 困って しまい ました 。 ||||こまって|| The grandfather was really in trouble. どう したら 、 この 子供 を 家 へ とどけて やる こと が できる だろう か と 思い ました 。 |||こども||いえ||||||||||おもい| I wondered how I could get this child home. 子供 の 親 たち が 、 どんなに 心配 して いる だろう 。 こども||おや||||しんぱい||| How worried are the parents of their children? そう 思う と 、 早く 、 子供 を あわして やり たい と 思い ました 。 |おもう||はやく|こども||||||おもい| When I thought so, I wanted to hurt my kids quickly. どうして 、 この 子供 は 、 こんな ところ へ 迷って きたろう 。 ||こども|||||まよって| How could this child have wandered off to a place like this? この 近所 の 子供 なら 、 自分 の 家 の 方角 を 知って い そうな もの だ が と 、 お じいさん は 、 いろいろに 考え ました 。 |きんじょ||こども||じぶん||いえ||ほうがく||しって||そう な|||||||||かんがえ| The grandfather thought a lot about this neighborhood's child who seemed to know the direction of his home. しかし 、 世間 に は 、 怖ろしい 鬼 の ような 人間 が ある 。 |せけん|||こわ ろし い|おに|||にんげん|| However, there are human beings like scary demons in the world. 自分 が 苦しい と いって 、 子供 を 捨てる ような 人間 も 住んで いる 。 じぶん||くるしい|||こども||すてる||にんげん||すんで| There are also people who say they are suffering and abandon their children. そんな 人 の 心 は どんな であろう か 。 |じん||こころ|||| What is the heart of such a person? 「 坊 は 、 お じいさん の 家 の 子供 に なる か 。」 ぼう|||||いえ||こども||| "Will Bo become a child of the grandfather 's house?" と 、 お じいさん は 、 笑い ながら きき ました 。 ||||わらい||| The old man laughed and asked. 「 なったら 、 また 、 風船 球 を 買って くれる ? ||ふうせん|たま||かって| "Would you buy a balloon ball again? 」 と 、 子供 は 、 お じいさん の 顔 を 見上げ ました 。 |こども|||||かお||みあげ| "The child looked up at his grandfather 's face. 「 ああ 、 買って やる と も 、 いくつも 買って やる ぞ 。」 |かって||||いく つ も|かって|| "Oh, I'll buy it and I'll buy a lot." と 、 お じいさん は 、 大きな しわ の 寄った 掌 で 子供 の 頭 を なでて やり ました 。 ||||おおきな|||よった|てのひら||こども||あたま|||| The grandfather stroked the child's head with his large wrinkled palm. お じいさん は 、 幾 十年 となく 、 毎日 、 圃 に 出て くわ を 持って いた ので 、 掌 は 、 堅く 、 あらくれ だって いました が 、 いま 子供 の 頭 を なでた とき に は 、 あたたかい 血 が 通って いた の であり ます 。 |||いく|じゅう ねん|と なく|まいにち|ほ||でて|||もって|||てのひら||かたく|あら くれ||い ました|||こども||あたま|||||||ち||かよって|||| The grandfather had gone out to the field every day for decades and had a hoe, so his palms were firm and confused, but now he was warm when he stroked his child's head. It was through. この とき 、 あちら から きちがい の ように 、 髪 を 振り乱して 、 女 が 駆けて きました 。 ||||きち が い|||かみ||ふりみだして|おんな||かけて|き ました At that time, a woman rushed to her, as if it was different. 「 坊や 、 おまえ は どこ へ ゆく のだ い 。」 ぼうや||||||| "Where do you go?" と 、 母親 は 子供 を しかり ました 。 |ははおや||こども||| And the mother was kidnapped. 子供 は 、 また お 母さん に 、 どんなに ひどい め に あわされる だろう か と 思った のでしょう 、 急に 大きな 声 で 泣き 出し ました 。 こども||||かあさん||||||あわさ れる||||おもった||きゅうに|おおきな|こえ||なき|だし| The child suddenly started crying in a loud voice, thinking how terrible her mother would be. 「 そんなら 、 この お 子供 さん は 、 あなた の お 子 さん です かい 。」 そんな ら|||こども||||||こ||| "So then, is this child your child?" と 、 お じいさん は 女 の 人 に きき ました 。 ||||おんな||じん||| Then the grandfather came to the woman. 「 私 の 子供 で ない かも ない もん だ 。 わたくし||こども|||||| "It may not be my child. 朝 から 、 どんなに 探した こと です か 、 警察 へ も とどけて あり ます よ 。」 あさ|||さがした||||けいさつ|||||| From the morning, you can reach the police how much you have been looking for. " と 、 女 は いい ました 。 |おんな||| The woman said. 「 さあ 、 坊や 、 お 母さん と いっしょに ゆく だ 。」 |ぼうや||かあさん|||| “Now, go with your little boy, mom.” と 、 お じいさん は いい ました 。 Said the grandfather. 子供 は 、 ただ 泣いて いて 、 お じいさん の そば を 離れ よう と しません 。 こども|||ないて|||||||はなれ|||し ませ ん The child is just crying and will not leave his grandfather. 「 おまえ は 、 どこ へ ゆく つもり だい 。」 “Where are you going to go?” と 、 母親 は 怖ろしい 目 を して どなり ました 。 |ははおや||こわ ろし い|め|||| Said the mother with frightening eyes. 「 お じいさん と いっしょに ゆく のだ 。」 "I'm going with my grandfather." と 、 子供 は 泣き ながら いい ました 。 |こども||なき||| The child said, crying. 「 お じいさん 、 この 子 を どこ へ つれて ゆく つもりです か 。」 |||こ||||||| “Grandpa, where are you going to take this child?” と 、 母親 は 、 お じいさん に 向かって 腹だたし げ に 問い ました 。 |ははおや|||||むかって|はらだたし|||とい| And the mother asked her grandfather annoyingly. お じいさん は 、 なんという 気 の たった 女 だろう 。 ||||き|||おんな| What a grandfather is, 子供 が これ で は つかない はずだ 。 こども|||||つか ない| This should not be a problem for children. きっと 家 が おもしろく なくて 、 それ で 、 あてもなく 出て 歩いて いる うち に 道 を 迷って しまった に 違いない 。 |いえ||||||あて も なく|でて|あるいて||||どう||まよって|||ちがいない Surely the house wasn't interesting, so it must have been lost while walking out of no way. それにしても 、 あんまり 優し み の ない ところ を みる と 、 継母 である の かも しれ ない ぞ と 、 お じいさん は 、 いろいろに 考え ました が 、 こんな 女 に は 、 わかる ように いわ なければ だめだ と 思って 、 ここ まで 自分 が 子供 を つれて きた こと を すっかり 話して 聞かせた のです 。 ||やさし||||||||ままはは||||||||||||かんがえ||||おんな|||||||||おもって|||じぶん||こども|||||||はなして|きか せた| Even so, when I looked at places where there was not so much kindness, my grandfather thought that it might be a stepmother, but I thought that such a woman would not be able to understand, I have told you so much that I have taken my child so far. する と 、 どんな 気 の たった 女 でも 、 お じいさん の して くれた しんせつに 対して 、 お 礼 を いわず に は いられ  ません でした 。 |||き|||おんな||||||||たいして||れい||いわ ず|||いら れ|ませ ん| As a result, no matter how sensible she was, she couldn't help thanking the grandfather for her. 「 それ は 、 ほんとうに お 世話 さま でした 。 ||||せわ|| “Thank you very much for your help. さあ おまえ は 、 こちら へ おいで 。」 Come on here. " と 、 母親 は 、 お じいさん に 礼 を いい ながら 、 子供 の 手 を 引っ張り ました 。 |ははおや|||||れい||||こども||て||ひっぱり| And the mother pulled the child's hand while thanking her grandfather. 「 さあ 、 お 母さん と ゆく のだ 。」 ||かあさん||| "Now, I'm going with my mother." お じいさん は 、 目 に 涙 を ためて 、 子供 を 見送り ながら いい ました 。 |||め||なみだ|||こども||みおくり||| The grandfather said, tearing his eyes and seeing off the child. 子供 は 、 振り返り ながら 、 母親 に 連れられて ゆき ました 。 こども||ふりかえり||ははおや||つれ られて|| The child was taken to his mother while looking back. そして 、 その 姿 は 、 だんだん あちら に 、 人影 に 隠れて 見え なく なり ました 。 ||すがた|||||ひとかげ||かくれて|みえ||| And that figure gradually disappeared, hidden behind people. お じいさん は 、 ぼんやり と 、 しばらく 見送って いました が 、 もう いって しまった 子供 を どう する こと も でき ません でした 。 ||||||みおくって|い ました|||||こども|||||||ませ ん| The grandfather had been silently refusing for a while, but couldn't do anything about the child who had already gone. また 、 いつか ふたたび あわれる と いう こと も わからなかった のです 。 |||あわ れる|||||わから なかった| I also didn't know that I would meet again someday. お じいさん は 、 自分 の 用事 の こと を 思い出し ました 。 |||じぶん||ようじ||||おもいだし| The grandfather remembered his errand. そして 、 また 自分 の ゆく ところ を たずねて 、 町 の 中 を うろついて い ました 。 ||じぶん||||||まち||なか|||| Then he wandered around the town, asking him where he would go. ちょうど 、 年寄り の まい子 の ように 、 お じいさん は うろうろ して いた のであり ます 。 |としより||まいこ|||||||||| Just like an old maiko, the grandfather was prowling. 「 ああ 、 今日 は 、 もう 遅い 。 |きょう|||おそい "Oh, it's already late today. それ に 降り に なり そうだ 。 ||ふり|||そう だ And it's going to get down. 早く 、 村 へ 帰ら なければ ならん 。」 はやく|むら||かえら||なら ん I have to go back to the village soon. " と 、 お じいさん は 思い ました 。 ||||おもい| お じいさん は 、 また 、 自分 の 村 を さして 帰途 に ついた のであり ます 。 ||||じぶん||むら|||きと|||| The grandfather also went back home to his village. 途中 で 、 日 は 暮れかかり ました 。 とちゅう||ひ||くれかかり| On the way, the sun went down. そして 、 とうとう 雪 が 降って き ました 。 ||ゆき||ふって|| And finally, it started snowing. それ で なくて さえ 、 目 の よくない お じいさん は 、 どんなに 困った でしょう 。 ||||め||よく ない|||||こまった| Even if it wasn't, how troubled the grandfather who wasn't good-looking? いつのまにか 、 どこ が 原 だ やら 、 小川 だ やら 、 道 だ やら 、 ただ 一面 真っ白に 見えて わから なく なり ました 。 |||はら|||おがわ|||どう||||いちめん|まっしろに|みえて|||| Before long, I couldn't understand where was the original, the Ogawa, the road, or just the white surface. お じいさん は 、 つえ を たより に 、 とぼとぼ と 歩いて ゆき ました 。 |||||||||あるいて|| The grandfather walked slowly with his walking stick. その うち に 、 風 が 強く 吹いて 、 日 が まったく 暮れて しまった のです 。 |||かぜ||つよく|ふいて|ひ|||くれて|| In the meantime, the wind blew strongly, and the sun had completely died. まだ 、 村 まで は 、 二 里 あまり も あり ました 。 |むら|||ふた|さと|||| Still, there were too many villages up to the village. 朝 くる とき に は 、 小鳥 の さえずって いた 林 も 、 雪 が かかって 、 音 も なく 、 うす暗がり の 中 に しんと して い ました 。 あさ|||||ことり||||りん||ゆき|||おと|||うすくらがり||なか||||| When I arrived in the morning, the forest where the birds were singing was snowing, no sound, and lingering in the dark. かわいそうに 、 お じいさん は 、 もう 疲れて 一歩 も 前 に 歩く こと が でき なく なり ました 。 |||||つかれて|ひと ほ||ぜん||あるく|||||| Poorly, the grandfather was tired and could not walk a step before. だれ か こんな とき に 、 通りかかって 、 自分 を 村 まで つれて いって くれる ような 人 は ない もの か と 祈って い ました 。 |||||とおりかかって|じぶん||むら||||||じん||||||いのって|| At such a time, she was praying to see if anyone would pass by and take her to the village. 雪 は 、 ますます 降って き ました 。 ゆき|||ふって|| The snow has fallen more and more. お じいさん は 、 雪 の 上 に すわって 、 目 を つぶり ました 。 |||ゆき||うえ|||め||| The grandfather sat on the snow and closed his eyes. そして 、 一心に 祈って い ました 。 |いっしんに|いのって|| And he prayed with all his heart. する と 、 たちまち あちら に あたって 、 がやがや と 、 なに か 話し合う ような にぎやかな 声 が し ました 。 ||||||||||はなしあう|||こえ||| Then, immediately, there was a lively voice as if we were talking about something. お じいさん は 、 なんだろう と 思って 、 目 を 開けて その方 を 見 ます と 、 それ は 、 みごとに も 、 ほおずき の ような 小さな 提燈 を 幾つ と なく 、 たくさんに つけて 、 それ を ば みんな が 手に手に ふりかざし ながら 、 真っ暗な 夜 の 中 を 行列 を つくって 歩いて くる のです 。 |||||おもって|め||あけて|そのほう||み||||||||||ちいさな|ていとう||いく つ||||||||||てにてに|||まっくらな|よ||なか||ぎょうれつ|||あるいて|| The grandfather thinks what it is and opens his eyes and looks at it. Everyone walks around in a dark night while waving in their hands. 「 なんだろう ……。」 " I wonder what ……." と 、 お じいさん は 、 目 を みはり ました 。 ||||め||| Grandpa looked up. その 提燈 は 、 赤 に 、 青 に 、 紫 に 、 それはそれは みごとな もの で あり ました 。 |ていとう||あか||あお||むらさき||||||| The tribute was red, blue, purple, and it was wonderful. お じいさん は 、 この 年 に なる まで 、 まだ こんな みごとな 行列 を 見た こと が なかった のです 。 ||||とし|||||||ぎょうれつ||みた|||| The grandfather had not seen such a wonderful procession until this year. これ は けっして 人間 の 行列 じゃ ない 。 |||にんげん||ぎょうれつ|| This is by no means a human procession. 魔物 か 、 きつね の 行列 であろう 。 まもの||||ぎょうれつ| It might be a monster or a fox procession. なん に して も 、 自分 は おもしろい もの を 見る もの だ と 、 お じいさん は 喜んで 、 見て い ました 。 ||||じぶん|||||みる|||||||よろこんで|みて|| After all, the grandfather was glad to see that he was looking at something interesting. する と 、 その 行列 は 、 だんだん お じいさん の 方 へ 近づいて き ました 。 |||ぎょうれつ||||||かた||ちかづいて|| Then, the procession gradually approached the grandfather. それ は 、 魔物 の 行列 でも 、 また 、 きつね の 行列 でも なんでも あり ませ ん 。 ||まもの||ぎょうれつ|||||ぎょうれつ||||| It is neither a demon procession nor a fox procession. かわいらしい 、 かわいらしい おおぜい の 子供 の 行列 な のであり ました 。 ||||こども||ぎょうれつ||| It was a line of pretty and pretty kids. その 行列 は すぐ 、 お じいさん の 前 を 通り かかり ました 。 |ぎょうれつ||||||ぜん||とおり|| The line soon passed by the grandfather. 子供 ら は 、 ぴかぴか と 光る 、 一 つ の 御輿 を かついで 、 あと の みんな は 、 その 御輿 の 前後 左右 を 取り巻いて 、 手 に 、 手 に 、 提燈 を 振りかざして いる のでした 。 こども|||||ひかる|ひと|||おみこし||||||||おみこし||ぜんご|さゆう||とりまいて|て||て||ていとう||ふりかざして|| The children were carrying a single shining shrine, and the rest of the people were swaying the sword in hand and hand around the front, back, left and right of the shrine. お じいさん は 、 だれ が 、 その 御輿 の 中 に 入って いる のだろう と 思い ました 。 ||||||おみこし||なか||はいって||||おもい| The grandfather wondered who was in the bowl. この とき 、 この 行列 は 、 お じいさん の 前 で 、 ふいに 止まり ました 。 |||ぎょうれつ|||||ぜん|||とまり| At this time, this procession stopped in front of the grandfather. お じいさん は 不思議な こと だ と 思って 、 黙って 見て い ます と 、 今日 、 町 で 道 に 迷って 、 公園 の 前 で 泣いて いた 子供 が 、 列 の 中 から 走り 出 ました 。 |||ふしぎな||||おもって|だまって|みて||||きょう|まち||どう||まよって|こうえん||ぜん||ないて||こども||れつ||なか||はしり|だ| The grandfather thought it was strange and looked silently, and today, a child who lost his way in the town and was crying in front of the park ran out of the line. 「 おお 、 おまえ かい 。」 "Oh, you are." と いって 、 お じいさん は 喜んで 声 を あげ ました 。 |||||よろこんで|こえ||| However, the grandfather happily shouted. 「 お じいさん 、 僕 が 迎え に きた んです 。」 ||ぼく||むかえ||| “Grandpa, I came to pick you up.” と 、 その 子供 は いい ます と 、 不思議な こと に は 、 いま まで 五 つ か 、 六 つ ばかりの 小さな 子供 が 、 たちまち の うち に 十二 、 三 の 大きな 子供 に なって しまい ました 。 ||こども|||||ふしぎな||||||いつ|||むっ|||ちいさな|こども||||||じゅうに|みっ||おおきな|こども|||| The child said that, strangely, only five or six small children have quickly become twelve or three large children. 「 さあ 、 みんな 、 お じいさん を 御輿 の 中 に 入れて あげる のだ 。」 |||||おみこし||なか||いれて|| “Now, everyone will put the grandfather in the mikoshi.” と 、 子供 は 、 大きな 声 で 命令 を 下し ます と 、 みんな は 、 手 に 、 手 に 、 持って いる 提燈 を 振りかざして 、 「 お じいさん 、 万歳 ! |こども||おおきな|こえ||めいれい||くだし|||||て||て||もって||ていとう||ふりかざして|||ばんざい And the child gives a loud voice, and everybody shakes his hand in his hand, "Grandpa! 」 「 万歳 ! ばんざい " " Banzai ! 」 「 お じいさん 、 万歳 ! ||ばんざい "Grandpa, all the years! 万歳 ! ばんざい Banzai ! 」   みんな が 、 口々に 叫び ました 。 ||くちぐちに|さけび| "Everyone screamed." そして 、 お じいさん を 御輿 の 中 に かつぎ こみ ました 。 ||||おみこし||なか|||| Then, I poured my grandfather into the mikoshi. 「 さあ 、 これ から 音楽 を やって ゆく のだ 。」 |||おんがく|||| "Now, we're going to start playing music." と 、 例の 子供 は 、 また 、 みんな に 命令 を し ました 。 |れいの|こども|||||めいれい||| And the example children also commanded everyone. たちまち 、 いい 笛 の 音色 や 、 小さな らっぱ の 音 や 、 それ に 混じって 、 歩調 を 合わし 、 音頭 を とる 太鼓 の 音 が 起こって 、 しんと した あたり が 急に にぎやかに なり ました 。 ||ふえ||ねいろ||ちいさな|||おと||||まじって|ほちょう||あわし|おんど|||たいこ||おと||おこって|||||きゅうに||| Immediately, the sound of a good whistle, the sound of a small fluttering sound, and the sound of a taiko drum that picks up the pitch and mixes with it, the area around it was suddenly lively. お じいさん は 、 うれしくて 、 うれしくて 、 たまり ませ ん でした 。 The grandfather was happy, happy, and irresistible. そっと 輿 の 中 から のぞいて み ます と 、 あの 子供 が 、 みんな を 指揮 して い ます 。 |こし||なか|||||||こども||||しき||| Gently peeking out of the cage, the child is directing everyone. そして 、 みんな が 口々に 、 なに か の 歌 を かわいらしい 声 で うたい ながら 行儀 よく 、 赤 ・ 青 ・ 紫 の 提燈 を 振りかざして 歩いて ゆき ました 。 |||くちぐちに||||うた|||こえ||||ぎょうぎ||あか|あお|むらさき||ていとう||ふりかざして|あるいて|| Then, everyone walked around with red, blue, and purple lanterns waving in the air, singing some kind of song in a cute voice.