この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま (19)
「 ちっく し ょお おお おお おお ! ミツルギ は 、 泣き ながら ギルド を 飛び出した 。
「…… 一体 何 だった のだ あいつ は 。 …… ところで 。 先ほど から 、 アクア が 女神 だ と か 呼ばれて いた が 、 一体 何の 話 だ ? ミツルギ が 涙 目 で ギルド を 飛び出した 後 。
先ほど の 騒ぎ で 冒険 者 達 の 好 奇 の 視線 を 浴び ながら 、 ダクネス が 言って きた 。
…… まあ 、 あれ だけ 女神 だ 何 だ と 言って いれば 当たり前 か 。
いや 、 この際 だ 。 めぐみ ん と ダクネス に は 言って しまって も いい か ?
俺 が アクア に 視線 を やる と 、 分かった と ばかり に アクア が こく り と 頷く 。
そして 、 アクア は 珍しく 真剣な 表情 で 、 ダクネス とめぐ みん に 向き直る 。
ダクネス とめぐ みん も 、 その アクア の 雰囲気 を 察し 、 真剣に 聞く 姿勢 に 入った ……。
「 今 まで 黙って いた けれど 、 あなた 達 に は 言って おく わ 。 …… 私 は アクア 。 アクシズ 教団 が 崇拝 する 、 水 を 司る 女神 。 …… そう 、 私 こそ が あの 、 女神 アクア な の よ ……! 「「って いう 、 夢 を 見た の か 」」 「 違う わ よ ! 何で 二 人 と も ハモって ん の よ ! …… まあ 、 こう なる わ なぁ ……。
その 時 だった 。
『 緊急 ! 緊急 ! 全 冒険 者 の 皆さん は 、 直ちに 武装 し 、 戦闘 態勢 で 街 の 正門 に 集まって くださいっっ! お 馴染み の 、 緊急 を 告げる アナウンス が 辺り に 響き渡った 。
「 また かよ ……? 最近 多い な 、 緊急の 呼び出し 」
行か なきゃ 駄目 か ?
駄目だろう なあ 、 でも ミツルギ と あんな 騒ぎ が あった 後 だ し 面倒臭い ……。
と 、 俺 が 気怠 げ に テーブル の 上 に だらけて いる と 。
『 緊急 ! 緊急 ! 全 冒険 者 の 皆さん は 、 直ちに 武装 し 、 戦闘 態勢 で 街 の 正門 に 集まって ください ! …… 特に 、 冒険 者 サトウカズマ さん と その 一行 は 、 大至急 で お 願い します ! 「………… えっ」 今 なんて ? 1.
俺 は 慌てて 正門 前 に 駆けつけた 。
軽装 の 俺 を 筆頭 に 、 アクア やめ ぐみん も 門 の 前 に 着く が 、 重 装備 の ダクネス だけ は 到着 が 遅れて いた 。
「 お 、 やっぱり な 。 また あいつ か 」
俺 達 が 街 の 正門 前 に 着く と 、 そこ に は 既に 多数 の 冒険 者 が 集まって いる 。
そして 多く の 駆け出し 冒険 者 達 が 遠巻き に 見守る 中 、 街 の 正門 前 に は 奴 が いた 。
そう 、 あの 魔 王 の 幹部 の デュラハン だ 。
先 に いた 冒険 者 達 の 顔色 が 悪い の が 気 に 掛かって いた が 、 デュラハン の 後ろ を 見て 、 理解 した 。
今日 は 先日 と は 違い 、 背後 に 多く の モンスター を 引き連れて いる 。
それ は 、 朽ちて 、 ボロボロ に なった 鎧 を 身 に 纏った 騎士 達 。
鎧 や 兜 の 隙間 から は 、 直視 して いる と しばらく ご飯 が 食べ られ なく なり そうな 、 トラウマ に なり そうな 腐った 体 が 見え隠れ して いる 。
その 鎧 騎士 達 は 、 ひと 目 で アンデッド だ と 分かった 。
デュラハン は 俺 とめぐ みん の 姿 を 見つける と 、 開口一番 叫び を 上げた 。
「 なぜ 城 に 来 ない のだ 、 この 人でなし ども が ああ ああ あっ!!」 俺 は めぐみ ん を 庇う 形 で 前 に 出る と 、 デュラハン に 問い掛けた 。 「 ええっと ……。 なぜ 城 に 来 ないって 、 なんで 行か なきゃ いけない んだ よ ? 後 、 人でなしって 何 だ 。 もう 爆裂 魔法 を 撃ち込んで も いない のに 、 なに を そんなに 怒って る んだ よ 」 俺 の 言葉 に 、 怒った デュラハン が 思わず 左手 に 抱えて いた 物 を 地面 に 叩きつけ …… よう と して 、 それ が 自分 の 頭 である 事 に 気づき 、 慌てて 脇 に 抱え 直す と 。 「 爆裂 魔法 を 撃ち込んで も いない ? 撃ち込んで も いない だ と !? 何 を 抜かす か 白々しいっ! そこ の 頭 の おかしい 紅 魔 の 娘 が 、 あれ から も 毎日 欠かさ ず 通って おる わ ! 「 えっ」 俺 は それ を 聞き 、 隣 の め ぐみん を 見る 。 めぐみ ん が 、 ふいっと 目 を 逸ら した 。 「………… お前 、 行った の か 。 もう 行く なって 言った のに 、 あれ から また 行った の か ! 「 ひ たた たた たた 、 いた 、 痛い です ! 違う のです 、 聞いて ください カズマ ! 今 まで ならば 、 何も ない 荒野 に 魔法 を 放つ だけ で 我慢 出来て いた のです が ……! 城 へ の 魔法 攻撃 の 魅力 を 覚えて 以来 、 大きくて 硬い モノ じゃ ない と 我慢 でき ない 体 に ……! 「 もじもじ し ながら 言う な ! 大体 お前 、 魔法 撃ったら 動け なく なる だろう が ! てこ と は 、 一緒に 通った 共犯 者 が いる だ ろ ! 一体 誰 と …………」
めぐみ ん の 頰 を 引っ張って いた 俺 の 言葉 を 聞いて 、 アクア が ふいっと 目 を 逸ら す 。 …………。
「 お前 か ああ ああ ああ ああ ! 「 わ ああ ああ ああ ーっ! だって だって 、 あの デュラハン に ろくな クエスト 請け られ ない 腹いせ が し たかった んだ もの ! 私 は あいつ の せい で 、 毎日 毎日 店長 に 叱ら れる は めに なった の よ ! バイト 先 で 怒ら れる の は お前 の 仕事 振り の せい だろう が 。
逃げよう と する アクア の 襟首 を 摑 んで いる と 、 デュラハン が 言葉 を 続けた 。
「 この 俺 が 真に 頭 に きて いる の は 何も 爆裂 魔法 の 件 だけ で は ない ! 貴 様 ら に は 仲間 を 助けよう と いう 気 は 無い の か ? 不当な 理由 で 処刑 さ れ 、 怨念 に より こうして モンスター 化 する 前 は 、 これ でも 真っ当 な 騎士 の つもりだった 。 その 俺 から 言わ せれば 、 仲間 を 庇って 呪い を 受けた 、 騎士 の 鑑 の 様 な あの クルセイダー を 見捨てる など …………! デュラハン が そこ まで 言い 掛けた 時 。
重い 鎧 を ガチャガチャ いわ せ 、 ようやく やって 来た ダクネス が 、 俺 の 隣 に そっと 立つ 。
デュラハン は 、 騎士 の 鑑 など と 褒め られ 、 赤い 顔 を して 照れて いる ダクネス と 目 が 合った 。
「…… や 、 や あ ……」
ダクネス が 、 申し訳な さ そうに おずおず と 、 デュラハン に 向けて 片手 を 挙げて ……。
「……………… あ 、 あれ え ────────────っ!?」 それ を 見た デュラハン が 素っ頓狂な 声 を 上げた 。 兜 の せい で その 表情 は 見え ない が 、 多分 、 何で !? と いった 表情 を して いる 事 だろう 。
「 なに なに ? ダクネス に 呪い を 掛けて 一 週間 が 経った のに 、 ピンピン して る から 驚いて る の ? この デュラハン 、 私 達 が 呪い を 解く ため に 城 に 来る はずだ と 思って 、 ずっと 私 達 を 待ち 続けて た の ? 帰った 後 、 あっさり 呪い 解か れちゃった と も 知ら ず に ? プークスクス ! うける んです けど ! ちょ ー うける んです けど ! アクア が 心底 楽し そうに 、 デュラハン を 指差し クスクス 笑う 。
相変わらず 表情 は 見え ない が 、 プルプル と 肩 を 震わせる デュラハン の 様子 から 、 きっと 激怒 して いる のだろう 。
しかし 、 アクア が 呪い を 解いて しまった 以上 、 罠 を 張って いる と 分かりきって いる 、 そんな 危ない 所 に わざわざ 行く 理由 が 無い 。
「…… おい 貴 様 。 俺 が その 気 に なれば 、 この 街 の 冒険 者 を 一 人 残らず 斬り 捨てて 、 街 の 住人 を 皆殺し に する 事 だって 出来る のだ 。 いつまでも 見逃して 貰える と 思う な よ ? 疲れ を 知ら ぬ この 俺 の 不 死 の 体 。 お前達 ひよっ子 冒険 者 ども で は 傷 も つけ られ ぬ わ ! アクア の 挑発 に 流石 に 限界 に きた の か 、 デュラハン が 不穏な 空気 を 滲ま せる 。
だが デュラハン が 何 か を する より 早く 、 アクア が 右手 を 突き出し 叫んで いた 。
「 見逃して あげる 理由 が 無い の は こっち の 方 よ ! 今回 は 逃がさ ない わ よ 。 アンデッド の くせ に こんなに 注目 集めて 生意気 よ ! 消えて 無く なん なさいっ、『 ターンアンデッド 』! アクア が 突き出した 手 の 先 から 、 白い 光 が 放た れる 。
だが アクア が 魔法 を 放つ の を 見て も 、 デュラハン は まるで 、 そんな 物 は 喰 らって も 余裕 だ と でも 言う か の 様 に 、 それ を 避けよう と も し ない 。 流石 は 魔 王 の 幹部 、 よほど の 自信 が ある のだろう 。
デュラハン の 体 に 、 アクア を 中心 に 放た れた 柔らかい 光 が 迫り ……!
「 魔 王 の 幹部 が 、 プリースト 対策 も 無し に 戦場 に 立つ と でも 思って いる の か ? 残念だった な 。 この 俺 を 筆頭 に 、 俺 様 率いる 、 この アンデッドナイト の 軍団 は 、 魔 王様 の 加護 に より 神聖 魔法 に 対して 強い 抵抗 を ぎ ゃあ ああ ああ ああ ああ ああ ああ ああ ー !!」
魔法 を 受けた デュラハン は 、 光 を 浴びた 部分 から 、 黒い 煙 を 吹き上げ させて いる 。
自信 たっぷり だった デュラハン は 、 体 の あちこち から 黒い 煙 を 立ち上ら せ 、 身 を 震わせて ふらつき ながら も 、 持ち堪えた 。
それ を 見て 、 アクア が 叫ぶ 。
「 ね 、 ねえ カズマ ! 変 よ 、 効いて ない わ ! いや 、 結構 効いて た 様 に 見えた んだ が 、 ぎ ゃ ーって 叫んで たし ……。 デュラハン は 、 よろめき ながら 。
「 ク 、 ククク ……。 説明 は 最後 まで 聞く もの だ 。 この 俺 は ベルディア 。 魔 王 軍 幹部 が 一 人 、 デュラハン の ベルディア だ ! 魔 王様 から の 特別な 加護 を 受けた この 鎧 と 、 そして 俺 の 力 に より 、 そこら 辺 の プリースト の ターンアンデッド など 全く 効か ぬ わ ! …… 効か ぬ のだ が …………。 な 、 な あお 前 。 お前 は 今 何 レベル な のだ ? 本当に 駆け出し か ? 駆け出し が 集まる 所 だろう 、 この 街 は ? 言い ながら 、 デュラハン は アクア を 見て いる 手 の 上 の 首 を 傾けた 。
首 を 傾げる 仕草 だろう か 。
「…… まあ いい 。 本来 は 、 この 街 周辺 に 強い 光 が 落ちて 来た だの と 、 うち の 占い 師 が 騒ぐ から 調査 に 来た のだ が ……。 面倒だ 、 いっそ この 街 ごと 無くして しまえば いい か ……」
ジャイ ● ン 並み に 理不尽な 事 を 言い出した ベルディア は 、 左手 に 自ら の 首 を 抱え 、 空いた 右手 を 高く 掲げた 。
「 フン 、 わざわざ この 俺 が 相手 を して やる まで も ない 。 …… さあ 、 お前達 ! この 俺 を コケ に した この 連中 に 、 地獄 と いう もの を 見せて やる が いい ! 「 あっ! あいつ 、 アクア の 魔法 が 意外に 効いて ビビった んだ ぜ きっと ! 自分 だけ 安全な 所 に 逃げて 、 部下 を 使って 襲う つもりだ ! 「 ちち ち 、 違う わ ! 最初 から その つもり だった のだ ! 魔 王 の 幹部 が そんな ヘタレ な 訳 が なかろう ! いきなり ボス が 戦って どう する 、 まずは 雑魚 を 片づけて から ボス の 前 に 立つ 。 これ が 昔 から の 伝統 と ……」
「『 セイクリッド ・ ターンアンデッド 』 ー ! 「 ひ ああ ああ ああ ああ ああ ああ ー ! 何 か 言い 掛けて いた ベルディア が 、 アクア に 魔法 を かけ られ 悲鳴 を 上げた 。
ベルディア の 足元 に は 白い 魔法 陣 が 浮かび上がり 、 そこ から 天 に 向かって 突き上げる 様 な 光 が 立ち上って いた 。
ベルディア は 鎧 の あちこち から 黒い 煙 を 吐き出して 、 まるで 体 に ついた 火 でも 消す か の 様 に 、 地面 を ゴロゴロ と 転げ 回って いる 。
アクア が 慌てた 様子 で 、
「 ど 、 どう しよう カズマ ! やっぱり おかしい わ ! あいつ 、 私 の 魔法 が ちっとも 効か ない の ! ひ あーって 言って たし 、 凄く 効いて る 気 が する が 。 いや 、 本来 の ターンアンデッド は 、 一撃 で アンデッド を 消滅 さ せて しまう のだろう 。
それ が …………。
「 こ 、 この ……っ! セリフ は ちゃんと 言わ せる もの だ ! ええ い 、 もう いい ! おい 、 お前 ら ……! ベルディア は 、 あちこち から 黒い 煙 を 吹き ながら も 、 ゆ ら り と 立って 右手 を 掲げ ……。
「 街 の 連中 を 。 …… 皆殺し に せよ ! その 右手 を 振り下ろした !
2.
アンデッドナイト 。
それ は 、 ゾンビ の 上位 互換 モンスター 。
ボロボロ と は いえ 、 鎧 を しっかり と 着込んだ そい つら は 、 駆け出し 冒険 者 に とって 十分な 脅威 と なる 。
「 おわ ーっ!? プリースト を ! プリースト を 呼べ ー ! 「 誰 か エリス 教 の 教会 行って 、 聖 水 ありったけ 貰って 来て くれ え ええ ! あちこち から 、 そんな 切羽詰まった 冒険 者 の 叫び が 響く 中 、 アンデッドナイト 達 が 街 中 へ と 侵入 して 来た 。
それ ら を 何とか 迎え撃とう と する 冒険 者 達 。