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Fairy Tales, じょうるり半七

じょうるり 半 七

じょうるり 半 七

むかし むかし 、 ある 村 に 、 半 七 ( はんし ち ) と いう 、 じょうるり (→ 物語 を 語る こと ) 好き の 若者 が い ました 。 自分 で は そこそこ 上手な つもりです が 、 誰 も 半 七 の じょうるり を ほめて くれ ませ ん 。

そんな ある 日 の こと 。 半 七 の ところ へ 山奥 から 、 一 人 の お 百姓 ( ひゃくしょう ) が たずねて き ました 。 「 半 七 さま 。 わし に は 、 よく 働く 娘 が 一 人 おり ます 。 その 娘 が 今度 、 婿 ( むこ ) を とる こと に なり ました 」 「 は あ 、 それ は おめでたい こと で 」 「 その 祝い に 、 ぜひとも 半 七 さま に じょうるり を 語って いただき たい ので ございます 」 「 へっ ? わたし の ? ・・・ は いはい ! 喜んで 引き受け ましょう 」

あくる 朝 、 半 七 は 教え られた 山 へ と 出かけ ました 。 「 確かに 、 この 道 で 間違い ない はずだ が 」 長い 間 歩き ました が 、 いくら 歩いて も 頼ま れた 百姓 の 家 が 見つかり ませ ん 。 「 もし かして 、 道 を 間違えた かな ? 」 辺り が だんだん 暗く なって きて 、 半 七 が 心細く なった 頃 、 ようやく 向こう の 山 に 明かり が 見え ました 。 「 ああ 、 あそこ に ちがいない 」 明かり を 目指して いく と 立派な 百姓 家 が あって 、 にぎやかな 人 の 声 が 聞こえて き ます 。 半 七 が 屋敷 を のぞく と 、 昨日 の お 百姓 が 羽織 ( はおり ) はか まで 現れて 、 「 これ は これ は 半 七 さま 。 さあ さあ 、 どうぞ こちら へ 」 と 、 半 七 を 屋敷 の 奥 に 案内 し ました 。 屋敷 の 広い 座敷 ( ざしき ) に は 、 百姓 の 女房 や 娘 夫婦 、 そして 近所 の 人 たち が 集まって おり 、 すでに にぎやかな 酒盛り が 始まって い ました 。 お 百姓 は 半 七 を 座敷 の 上座 ( かみざ → 目上 の 者 が 座る 席 ) に 案内 する と 、 おいしい 料理 や お 酒 を どんどん すすめ ました 。 これほど ていねいな もてなし を 受けた の は 初めて で 、 半 七 は すっかり うれしく なり ました 。 そして 自慢 の じょうるり を 、 いつも より 心 を 込めて 語り ました 。 みんな は 半 七 の じょうるり が あまりに も 見事な ので 、 すっかり 聞きほれて い ます 。 そして 一 段 が 語り 終わる と 、 「 どうぞ 、 もう 一 段 」 そこ で 、 また 一 段 を 語り 終わる と また 、 「 ぜひ 、 もう 一 段 」 と 、 何度 も 何度 も のぞま れ ました 。 何度 も 何度 も 語る うち に 、 半 七 は 自分 でも ビックリ する ほど うまく 語る 事 が 出来る ように なって い ました 。

ようやく 語り 終わった 半 七 は 、 夜 も ふけて いた ので この 家 に 泊まる 事 に なり ました 。 半 七 は 、 今 まで 寝た こと も ない ような フカフカ の 上等の ふとん で 、 ゆっくり 眠り ました 。 「 ああ 、 芸 と いう もの は 、 ありがたい もの じゃ 。 こんなに 良い 目 に あえる と は 」

次の 朝 、 半 七 は 目 を 覚まして ビックリ です 。 「 これ は また 、 どうした 事 じゃ ? 」 半 七 は フカフカ の 上等の ふとん で は なく 、 わら の 上 に 寝て いた のです 。 あたり を 見 回す と 、 そこ は 立派な 百姓 家 で は なく 、 ボロボロ の ひどい あばら家 でした 。 「 もしや 、 これ も ? 」 半 七 が お 礼 に もらった 祝儀 袋 ( しゅうぎ ぶ くろ ) を 開けて みる と 、 中 から ヒラヒラ と 一 枚 の 木 の 葉 が 落ちて き ました 。 里 に 戻った 半 七 は 、 この 不思議な 出来事 を 村 一 番 の 物知り じいさん に 話し ました 。 する と 、 物知り じいさん は 、 「 半 七 や 。 わし が 若い 頃 も タヌキ が 人間 に 化けて 、 山奥 から 芝居 を して くれ と 頼み に 来た こと が あった わ 。 お前 も 、 タヌキ の 婚礼 ( こんれい → 結婚 式 ) に 呼ば れた のじゃ ろう 」 「 なるほど 、 そう かも しれ ん 。 それにしても 、 よう まあ 、 あんなに 身 を 入れて 聞いて くれた もん じゃ 。 ありがたい こと じゃ 。 ありがたい こと じゃ 」 半 七 は だまさ れ ながら も 、 あの 晩 の 事 を とても うれしく 思い 、 それ から 芸 に も いっそう はげむ ように なり ました 。

この 事 が あって から 、 半 七 の じょうるり は 大変な 人気 を よんで 、『 竹本 狸 太 夫 ( たけ もと たぬき だ ゆう )』 と 呼ば れる ように なり ました 。 そして 遠く の 町 から も 、 じょうるり を 語って くれ と 呼ば れる ように なった そうです 。

おしまい


じょうるり 半 七 |はん|なな type of baggy tobi trousers with the baggy part taking up seven-tenths of the full length of the trouser leg

じょうるり 半 七 |はん|なな

むかし むかし 、 ある 村 に 、 半 七 ( はんし ち ) と いう 、 じょうるり (→ 物語 を 語る こと ) 好き の 若者 が い ました 。 |||むら||はん|なな||||||ものがたり||かたる||すき||わかもの||| 自分 で は そこそこ 上手な つもりです が 、 誰 も 半 七 の じょうるり を ほめて くれ ませ ん 。 じぶん||||じょうずな|||だれ||はん|なな||||||| Je pense que je suis plutôt doué, mais personne ne fait jamais l'éloge de mon Joruri à demi-sept.

そんな ある 日 の こと 。 ||ひ|| 半 七 の ところ へ 山奥 から 、 一 人 の お 百姓 ( ひゃくしょう ) が たずねて き ました 。 はん|なな||||やまおく||ひと|じん|||ひゃくしょう||||| 「 半 七 さま 。 はん|なな| わし に は 、 よく 働く 娘 が 一 人 おり ます 。 ||||はたらく|むすめ||ひと|じん|| その 娘 が 今度 、 婿 ( むこ ) を とる こと に なり ました 」 「 は あ 、 それ は おめでたい こと で 」 「 その 祝い に 、 ぜひとも 半 七 さま に じょうるり を 語って いただき たい ので ございます 」 「 へっ ? |むすめ||こんど|むこ||||||||||||||||いわい|||はん|なな|||||かたって|||||へ っ わたし の ? ・・・ は いはい ! 喜んで 引き受け ましょう 」 よろこんで|ひきうけ|

あくる 朝 、 半 七 は 教え られた 山 へ と 出かけ ました 。 |あさ|はん|なな||おしえ||やま|||でかけ| 「 確かに 、 この 道 で 間違い ない はずだ が 」   長い 間 歩き ました が 、 いくら 歩いて も 頼ま れた 百姓 の 家 が 見つかり ませ ん 。 たしかに||どう||まちがい||||ながい|あいだ|あるき||||あるいて||たのま||ひゃくしょう||いえ||みつかり|| 「 もし かして 、 道 を 間違えた かな ? ||どう||まちがえた| 」   辺り が だんだん 暗く なって きて 、 半 七 が 心細く なった 頃 、 ようやく 向こう の 山 に 明かり が 見え ました 。 あたり|||くらく|||はん|なな||こころぼそく||ころ||むこう||やま||あかり||みえ| 「 ああ 、 あそこ に ちがいない 」   明かり を 目指して いく と 立派な 百姓 家 が あって 、 にぎやかな 人 の 声 が 聞こえて き ます 。 ||||あかり||めざして|||りっぱな|ひゃくしょう|いえ||||じん||こえ||きこえて|| 半 七 が 屋敷 を のぞく と 、 昨日 の お 百姓 が 羽織 ( はおり ) はか まで 現れて 、 「 これ は これ は 半 七 さま 。 はん|なな||やしき||||きのう|||ひゃくしょう||はおり||||あらわれて|||||はん|なな| さあ さあ 、 どうぞ こちら へ 」 と 、 半 七 を 屋敷 の 奥 に 案内 し ました 。 ||||||はん|なな||やしき||おく||あんない|| 屋敷 の 広い 座敷 ( ざしき ) に は 、 百姓 の 女房 や 娘 夫婦 、 そして 近所 の 人 たち が 集まって おり 、 すでに にぎやかな 酒盛り が 始まって い ました 。 やしき||ひろい|ざしき||||ひゃくしょう||にょうぼう||むすめ|ふうふ||きんじょ||じん|||あつまって||||さかもり||はじまって|| お 百姓 は 半 七 を 座敷 の 上座 ( かみざ → 目上 の 者 が 座る 席 ) に 案内 する と 、 おいしい 料理 や お 酒 を どんどん すすめ ました 。 |ひゃくしょう||はん|なな||ざしき||かみざ||めうえ||もの||すわる|せき||あんない||||りょうり|||さけ|||| これほど ていねいな もてなし を 受けた の は 初めて で 、 半 七 は すっかり うれしく なり ました 。 ||||うけた|||はじめて||はん|なな||||| そして 自慢 の じょうるり を 、 いつも より 心 を 込めて 語り ました 。 |じまん||||||こころ||こめて|かたり| みんな は 半 七 の じょうるり が あまりに も 見事な ので 、 すっかり 聞きほれて い ます 。 ||はん|なな||||||みごとな|||ききほれて|| そして 一 段 が 語り 終わる と 、 「 どうぞ 、 もう 一 段 」   そこ で 、 また 一 段 を 語り 終わる と また 、 「 ぜひ 、 もう 一 段 」 と 、 何度 も 何度 も のぞま れ ました 。 |ひと|だん||かたり|おわる||||ひと|だん||||ひと|だん||かたり|おわる|||||ひと|だん||なんど||なんど|||| 何度 も 何度 も 語る うち に 、 半 七 は 自分 でも ビックリ する ほど うまく 語る 事 が 出来る ように なって い ました 。 なんど||なんど||かたる|||はん|なな||じぶん||びっくり||||かたる|こと||できる||||

ようやく 語り 終わった 半 七 は 、 夜 も ふけて いた ので この 家 に 泊まる 事 に なり ました 。 |かたり|おわった|はん|なな||よ||||||いえ||とまる|こと||| 半 七 は 、 今 まで 寝た こと も ない ような フカフカ の 上等の ふとん で 、 ゆっくり 眠り ました 。 はん|なな||いま||ねた|||||||じょうとうの||||ねむり| 「 ああ 、 芸 と いう もの は 、 ありがたい もの じゃ 。 |げい||||||| こんなに 良い 目 に あえる と は 」 |よい|め||||

次の 朝 、 半 七 は 目 を 覚まして ビックリ です 。 つぎの|あさ|はん|なな||め||さまして|びっくり| 「 これ は また 、 どうした 事 じゃ ? ||||こと| 」   半 七 は フカフカ の 上等の ふとん で は なく 、 わら の 上 に 寝て いた のです 。 はん|なな||||じょうとうの|||||||うえ||ねて|| あたり を 見 回す と 、 そこ は 立派な 百姓 家 で は なく 、 ボロボロ の ひどい あばら家 でした 。 ||み|まわす||||りっぱな|ひゃくしょう|いえ||||ぼろぼろ|||あばらや| 「 もしや 、 これ も ? 」   半 七 が お 礼 に もらった 祝儀 袋 ( しゅうぎ ぶ くろ ) を 開けて みる と 、 中 から ヒラヒラ と 一 枚 の 木 の 葉 が 落ちて き ました 。 はん|なな|||れい|||しゅうぎ|ふくろ|||||あけて|||なか||ひらひら||ひと|まい||き||は||おちて|| 里 に 戻った 半 七 は 、 この 不思議な 出来事 を 村 一 番 の 物知り じいさん に 話し ました 。 さと||もどった|はん|なな|||ふしぎな|できごと||むら|ひと|ばん||ものしり|||はなし| する と 、 物知り じいさん は 、 「 半 七 や 。 ||ものしり|||はん|なな| わし が 若い 頃 も タヌキ が 人間 に 化けて 、 山奥 から 芝居 を して くれ と 頼み に 来た こと が あった わ 。 ||わかい|ころ||たぬき||にんげん||ばけて|やまおく||しばい|||||たのみ||きた|||| お前 も 、 タヌキ の 婚礼 ( こんれい → 結婚 式 ) に 呼ば れた のじゃ ろう 」 「 なるほど 、 そう かも しれ ん 。 おまえ||たぬき||こんれい||けっこん|しき||よば|||||||| それにしても 、 よう まあ 、 あんなに 身 を 入れて 聞いて くれた もん じゃ 。 ||||み||いれて|きいて||| ありがたい こと じゃ 。 ありがたい こと じゃ 」   半 七 は だまさ れ ながら も 、 あの 晩 の 事 を とても うれしく 思い 、 それ から 芸 に も いっそう はげむ ように なり ました 。 |||はん|なな|||||||ばん||こと||||おもい|||げい|||||||

この 事 が あって から 、 半 七 の じょうるり は 大変な 人気 を よんで 、『 竹本 狸 太 夫 ( たけ もと たぬき だ ゆう )』 と 呼ば れる ように なり ました 。 |こと||||はん|なな||||たいへんな|にんき|||たけもと|たぬき|ふと|おっと|||||||よば|||| そして 遠く の 町 から も 、 じょうるり を 語って くれ と 呼ば れる ように なった そうです 。 |とおく||まち|||||かたって|||よば||||そう です

おしまい