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Fairy Tales, 勝海舟の写し本

勝海 舟 の 写し 本

勝海舟 の 写し 本

明治 時代 を 築く のに 大 活躍 を した 人物 に 、 勝海舟 が い ます 。 彼 は 下級 旗本 だった 父親 の 期待 を 受けて 蘭学 や 剣 術 を よく 学び 、 三十三 歳 の 若 さ で 幕府 の 役職 に 就き ました 。 長崎 で は 海軍 技術 を 学び 、 弟子 の 坂本 竜 馬 と ともに 海軍 操 練 所 を つくって い ます 。 その後 も 反 幕府 派 と の 関係 修復 に 力 を つくした 勝海舟 は 、1868 年 、 江戸 を 攻めよう と する 官軍 に 江戸 城 を 明け渡して 江戸 を 戦火 から 守った 人物 です 。 これ は 、 その 勝海舟 が 若い 頃 の お 話し です 。

勝海舟 は 大変な 勉強 好きです が 、 お 金 が ない ので 毎日 の 様 に 古本 屋 に 通って 本 を 読んで い ました 。

ある 日 の 事 、 勝海舟 が 読んで いた 兵 法 ( へいほう → 戦術 ) の 本 が 見当たり ませ ん 。 そこ で 勝海舟 は 、 古本 屋 の 主人 に たずね ました 。 「 主人 、 あの 本 は どこ に ある のだ ? 」 「 はい 、 あの 本 と は ? 」 「 昨日 まで この たな に あった 、 兵 法 の 本 だ 」 「・・・ ああ 、 あれ です か 。 申し訳 ございませ ん 。 あれ は さきほど 、 四 谷 の 奉行 所 の お 役 人さま が 買わ れて いき ました 」 「 四 谷 の ・・・。 おおっ 、 その お 役人 なら 知って いる ぞ 」 そこ で 勝海舟 は 、 さっそく その 役人 の 家 まで 行く と 、 「 どうか 、 あなた さま が お 買い に なった 兵 法 の ご 本 を 、 わたし に 貸して ください 」 と 、 頼み 込んだ のです 。 でも その 役人 は 、 首 を 横 に 振って 断り ました 。 「 だめだ 、 だめだ 。 今 買った ばかりで 、 まだ 読んで い ない のだ から 」 しかし 、 ここ で あきらめる 様 な 勝海舟 で は あり ませ ん 。 「 では 夜 に 、 ご 本 を うつさ せて いただいて も よろしい でしょう か ? あなた さま が 、 お やすみ に なった 後 で 」 「・・・ うむ 、 まあ 、 それ なら いい が 。 しかし あれ は 、 かなり 分厚い 本 だ ぞ 」 「 はい 、 承知 して おり ます 」 それ から 勝海舟 は 夜 に なる と 役人 の 家 に やって 来て 、 朝 に なる まで ずっと 本 を うつし 続けた のです 。 やがて 、 半年 が 過ぎ ました 。

ある 秋 の 朝 、 勝海舟 は 起きて きた 役人 に 、 深々と 頭 を 下げて 言い ました 。 「 おかげ さ まで 、 全部 うつし 終わり ました 。 ありがとう ございます 」 それ を 聞いて 、 役人 は びっくり です 。 「 あれ を 、 全部 うつし 終えた の か ? それ は 何とも 、 感心な 人 だ 。 それほど 気 に 入った 本 なら 、 あなた に 差し上げ ましょう 」 「 いえいえ 、 とんでもない 。 それ に わたし は 、 うつさ せて いただき ました から 」 すると 役人 は 、 頭 を かき ながら こう 言い ました 。 「 あはは は は 。 いや 実は ね 、 あの 本 は 読む ため で なく 、 人 に 自慢 する ため に 買った んだ よ 。 『 わたし は 、 こんなに 難しい 本 を 読んで い ます よ 』 って ね 。 試しに 少し だけ 読んで みた が 、 ぜんぜん 分から なかった よ 。 あはは は は 」

おしまい


勝海 舟 の 写し 本 かつみ|ふね||うつし|ほん Transcript of Katsukaishu

勝海舟 の 写し 本 かつみ ふね||うつし|ほん

明治 時代 を 築く のに 大 活躍 を した 人物 に 、 勝海舟 が い ます 。 めいじ|じだい||きずく||だい|かつやく|||じんぶつ||かつみ ふね||| Kaishu Katsu was one of the people who played an important role in establishing the Meiji era. 彼 は 下級 旗本 だった 父親 の 期待 を 受けて 蘭学 や 剣 術 を よく 学び 、 三十三 歳 の 若 さ で 幕府 の 役職 に 就き ました 。 かれ||かきゅう|はたもと||ちちおや||きたい||うけて|らんがく||けん|じゅつ|||まなび|さんじゅうさん|さい||わか|||ばくふ||やくしょく||つき| In response to the expectations of his father, who was a low-ranking hatamoto, he studied Dutch studies and swordsmanship well, and at the young age of 33, he was appointed to an official position in the Shogunate. 長崎 で は 海軍 技術 を 学び 、 弟子 の 坂本 竜 馬 と ともに 海軍 操 練 所 を つくって い ます 。 ながさき|||かいぐん|ぎじゅつ||まなび|でし||さかもと|りゅう|うま|||かいぐん|みさお|ね|しょ|||| In Nagasaki, he studied naval technology and built a navy training center with his disciple Ryoma Sakamoto. その後 も 反 幕府 派 と の 関係 修復 に 力 を つくした 勝海舟 は 、1868 年 、 江戸 を 攻めよう と する 官軍 に 江戸 城 を 明け渡して 江戸 を 戦火 から 守った 人物 です 。 そのご||はん|ばくふ|は|||かんけい|しゅうふく||ちから|||かつみ ふね||とし|えど||せめよう|||かんぐん||えど|しろ||あけわたして|えど||せんか||まもった|じんぶつ| Katsu Kaishu, who continued to work hard to restore relations with the anti-shogunate faction, was the person who in 1868 surrendered Edo Castle to the government army, which was about to attack Edo, and protected Edo from the fires of war. これ は 、 その 勝海舟 が 若い 頃 の お 話し です 。 |||かつみ ふね||わかい|ころ|||はなし| This is the story of Kaishu Katsu when he was young.

勝海舟 は 大変な 勉強 好きです が 、 お 金 が ない ので 毎日 の 様 に 古本 屋 に 通って 本 を 読んで い ました 。 かつみ ふね||たいへんな|べんきょう|すきです|||きむ||||まいにち||さま||ふるほん|や||かよって|ほん||よんで|| Kaishu Katsu loved to study very much, but he didn't have money, so he went to second-hand bookstores almost every day and read books.

ある 日 の 事 、 勝海舟 が 読んで いた 兵 法 ( へいほう → 戦術 ) の 本 が 見当たり ませ ん 。 |ひ||こと|かつみ ふね||よんで||つわもの|ほう||せんじゅつ||ほん||みあたり|| One day, I couldn't find the book on tactics Kaishu Katsu was reading. そこ で 勝海舟 は 、 古本 屋 の 主人 に たずね ました 。 ||かつみ ふね||ふるほん|や||あるじ||| Kaishu Katsu then asked the owner of the used bookstore. 「 主人 、 あの 本 は どこ に ある のだ ? あるじ||ほん||||| "Master, where is that book? 」 「 はい 、 あの 本 と は ? ||ほん|| "Yes, what is that book?" 」 「 昨日 まで この たな に あった 、 兵 法 の 本 だ 」 「・・・ ああ 、 あれ です か 。 きのう||||||つわもの|ほう||ほん||||| "It's a book on martial arts that was on this shelf until yesterday." 申し訳 ございませ ん 。 もうしわけ|| I'm sorry . あれ は さきほど 、 四 谷 の 奉行 所 の お 役 人さま が 買わ れて いき ました 」 「 四 谷 の ・・・。 |||よっ|たに||ぶぎょう|しょ|||やく|ひとさま||かわ||||よっ|たに| It was just bought by an official at the magistrate's office in Yotsuya." "In Yotsuya... おおっ 、 その お 役人 なら 知って いる ぞ 」   そこ で 勝海舟 は 、 さっそく その 役人 の 家 まで 行く と 、 「 どうか 、 あなた さま が お 買い に なった 兵 法 の ご 本 を 、 わたし に 貸して ください 」 と 、 頼み 込んだ のです 。 おお っ|||やくにん||しって|||||かつみ ふね||||やくにん||いえ||いく|||||||かい|||つわもの|ほう|||ほん||||かして|||たのみ|こんだ| でも その 役人 は 、 首 を 横 に 振って 断り ました 。 ||やくにん||くび||よこ||ふって|ことわり| 「 だめだ 、 だめだ 。 今 買った ばかりで 、 まだ 読んで い ない のだ から 」   しかし 、 ここ で あきらめる 様 な 勝海舟 で は あり ませ ん 。 いま|かった|||よんで|||||||||さま||かつみ ふね||||| 「 では 夜 に 、 ご 本 を うつさ せて いただいて も よろしい でしょう か ? |よ|||ほん|||||||| あなた さま が 、 お やすみ に なった 後 で 」 「・・・ うむ 、 まあ 、 それ なら いい が 。 |||||||あと||||||| しかし あれ は 、 かなり 分厚い 本 だ ぞ 」 「 はい 、 承知 して おり ます 」   それ から 勝海舟 は 夜 に なる と 役人 の 家 に やって 来て 、 朝 に なる まで ずっと 本 を うつし 続けた のです 。 ||||ぶあつい|ほん||||しょうち||||||かつみ ふね||よ||||やくにん||いえ|||きて|あさ|||||ほん|||つづけた| After that, Katsu Kaishu would come to the official's house at night and keep the book on his desk until the morning. やがて 、 半年 が 過ぎ ました 。 |はんとし||すぎ| Six months passed.

ある 秋 の 朝 、 勝海舟 は 起きて きた 役人 に 、 深々と 頭 を 下げて 言い ました 。 |あき||あさ|かつみ ふね||おきて||やくにん||しんしんと|あたま||さげて|いい| One autumn morning, Arthur Katsu Kaishu woke up and bowed to a government official. 「 おかげ さ まで 、 全部 うつし 終わり ました 。 |||ぜんぶ||おわり| ありがとう ございます 」   それ を 聞いて 、 役人 は びっくり です 。 ||||きいて|やくにん||| 「 あれ を 、 全部 うつし 終えた の か ? ||ぜんぶ||おえた|| それ は 何とも 、 感心な 人 だ 。 ||なんとも|かんしんな|じん| それほど 気 に 入った 本 なら 、 あなた に 差し上げ ましょう 」 「 いえいえ 、 とんでもない 。 |き||はいった|ほん||||さしあげ||| それ に わたし は 、 うつさ せて いただき ました から 」   すると 役人 は 、 頭 を かき ながら こう 言い ました 。 ||||||||||やくにん||あたま|||||いい| 「 あはは は は 。 あ は は|| いや 実は ね 、 あの 本 は 読む ため で なく 、 人 に 自慢 する ため に 買った んだ よ 。 |じつは|||ほん||よむ||||じん||じまん||||かった|| 『 わたし は 、 こんなに 難しい 本 を 読んで い ます よ 』 って ね 。 |||むずかしい|ほん||よんで||||| 試しに 少し だけ 読んで みた が 、 ぜんぜん 分から なかった よ 。 ためしに|すこし||よんで||||わから|| あはは は は 」 あ は は||

おしまい