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銀河鉄道の夜 『宮沢賢治』(Night on the Galactic Railroad), 9-4. ジョバンニ の 切符 (4)

9-4. ジョバンニ の 切符 (4)

もう そこら が 一ぺん に まっくらに なった ように 思いました 。 その とき 、

「 おまえ は いったい 何 を 泣いて いる の 。 ちょっと こっち を ごらん 」 いま まで たびたび 聞こえた 、 あの やさしい セロ の ような 声 が 、 ジョバンニ の うしろ から 聞こえました 。 ジョバンニ は 、 はっと 思って 涙 を はらって そっち を ふり向きました 、 さっき まで カムパネルラ の すわって いた 席 に 黒い 大きな 帽子 を かぶった 青白い 顔 の やせた 大人 が 、 やさしく わらって 大きな 一 冊 の 本 を もって いました 。 「 おまえ の ともだち が どこ か へ 行った のだろう 。 あの ひと は ね 、 ほんとうに こんや 遠く へ 行った のだ 。 おまえ は もう カムパネルラ を さがして も むだだ 」

「 ああ 、 どうして な んです か 。 ぼく は カムパネルラ と いっしょに まっすぐに 行こう と 言った んです 」

「 ああ 、 そうだ 。 みんな が そう 考える 。 けれども いっしょに 行け ない 。 そして みんな が カムパネルラ だ 。 おまえ が あう どんな ひと でも 、 みんな 何べん も おまえ と いっしょに りんご を たべたり 汽車 に 乗ったり した のだ 。 だから やっぱり おまえ は さっき 考えた ように 、 あらゆる ひと の いちばん の 幸福 を さがし 、 みんな と いっしょに 早く そこ に 行く が いい 、 そこ で ばかり おまえ は ほんとうに カムパネルラ と いつまでも いっしょに 行ける のだ 」

「 ああ ぼく は きっと そう します 。 ぼく は どうして それ を 求めたら いい でしょう 」

「 ああ わたくし も それ を もとめて いる 。 おまえ は おまえ の 切符 を しっかり もって おい で 。 そして 一心に 勉強 し なけ ぁ いけない 。 おまえ は 化学 を 習ったろう 、 水 は 酸素 と 水素 から できて いる と いう こと を 知っている 。 いま は たれ だって それ を 疑 やしない 。 実験 して みる と ほんとうに そう な んだ から 。 けれども 昔 は それ を 水銀 と 塩 で できて いる と 言ったり 、 水銀 と 硫黄 で できて いる と 言ったり いろいろ 議論 した のだ 。 みんな が めいめい じぶん の 神さま が ほんとうの 神さま だ と いう だろう 、 けれども お互い ほか の 神さま を 信ずる 人 たち の した こと でも 涙 が こぼれる だろう 。 それ から ぼくたち の 心 が いい と か わるい と か 議論 する だろう 。 そして 勝負 が つか ない だろう 。 けれども 、 もし おまえ が ほんとうに 勉強 して 実験 で ちゃんと ほんとうの 考え と 、 うそ の 考え と を 分けて しまえば 、 その 実験 の 方法 さえ きまれば 、 もう 信仰 も 化学 と 同じ ように なる 。 けれども 、 ね 、 ちょっと この 本 を ごらん 、 いい かい 、 これ は 地理 と 歴史 の 辞典 だ よ 。 この 本 の この 頁 は ね 、 紀元 前 二千二百 年 の 地理 と 歴史 が 書いて ある 。 よく ごらん 、 紀元 前 二千二百 年 の こと で ない よ 、 紀元 前 二千二百 年のころ に みんな が 考えて いた 地理 と 歴史 と いう もの が 書いて ある 。

だから この 頁 一 つ が 一 冊 の 地 歴 の 本 に あたる んだ 。 いい かい 、 そして この 中 に 書いて ある こと は 紀元 前 二千二百 年 ころ に はたいてい 本当だ 。 さがす と 証拠 も ぞくぞく 出て いる 。 けれども それ が 少し どう か な と こう 考え だして ごらん 、 そら 、 それ は 次の 頁 だ よ 。

紀元 前 一千 年 。 だいぶ 、 地理 も 歴史 も 変わって る だろう 。 この とき に は こう な のだ 。 変な 顔 を して は いけない 。 ぼくたち は ぼくたち の からだ だって 考え だって 、 天の川 だって 汽車 だって 歴史 だって 、 ただ そう 感じて いる のな んだ から 、 そら ごらん 、 ぼく と いっしょに すこし こころもち を しずかに して ごらん 。 いい か 」

その ひと は 指 を 一 本 あげて しずかに それ を おろしました 。 すると いきなり ジョバンニ は 自分 と いう もの が 、 じぶん の 考え と いう もの が 、 汽車 や その 学者 や 天の川 や 、 みんな いっしょに ぽかっと 光って 、 しいん と なくなって 、 ぽかっと ともって また なくなって 、 そして その 一 つ が ぽかっと ともる と 、 あらゆる 広い 世界 が がらんと ひらけ 、 あらゆる 歴史 が そなわり 、 すっと 消える と 、 もう がらんと した 、 ただ もう それっきり に なって しまう の を 見ました 。 だんだん それ が 早く なって 、 まもなく すっかり もと の とおり に なりました 。 「 さあ いい か 。 だから おまえ の 実験 は 、 この きれぎれの 考え の はじめ から 終わり すべて に わたる ようで なければ いけない 。 それ が むずかしい こと な のだ 。 けれども 、 もちろん その とき だけ の で も いい のだ 。 ああ ごらん 、 あす こ に プレシオス が 見える 。 おまえ は あの プレシオス の 鎖 を 解か なければ なら ない 」

その とき まっくらな 地平 線 の 向こう から 青じろい のろし が 、 まるで ひるま の ように うちあげられ 、 汽車 の 中 は すっかり 明るく なりました 。 そして のろし は 高く そら に かかって 光り つづけました 。 「 ああ マジェラン の 星雲 だ 。 さあ もう きっと 僕 は 僕 の ため に 、 僕 の お母さん の ため に 、 カムパネルラ の ため に 、 みんな の ため に 、 ほんとうの ほんとうの 幸福 を さがす ぞ 」 ジョバンニ は 唇 を 噛んで 、 その マジェラン の 星雲 を のぞんで 立ちました 。 その いちばん 幸福な その ひと の ため に !

「 さあ 、 切符 を しっかり 持って おい で 。 お前 は もう 夢 の 鉄道 の 中 で なし に ほんとうの 世界 の 火 や はげしい 波 の 中 を 大股 に まっすぐに 歩いて 行か なければ いけない 。 天の川 の なか で たった 一 つ の 、 ほんとうの その 切符 を 決して おまえ は なくして は いけない 」

あの セロ の ような 声 が した と 思う と ジョバンニ は 、 あの 天の川 が もう まるで 遠く 遠く なって 風 が 吹き 自分 は まっすぐに 草 の 丘 に 立って いる の を 見 、 また 遠く から あの ブルカニロ 博士 の 足音 の しずかに 近づいて 来る の を ききました 。 「 ありがとう 。 私 はたいへん いい 実験 を した 。 私 は こんな しずかな 場所 で 遠く から 私 の 考え を 人 に 伝える 実験 を したい と さっき 考えて いた 。 お前 の 言った 語 は みんな 私 の 手帳 に とって ある 。 さあ 帰って お やすみ 。 お前 は 夢 の 中 で 決心 した とおり まっすぐに 進んで 行く が いい 。 そして これ から なんでも いつでも 私 の とこ へ 相談 に おい で なさい 」

「 僕 きっと まっすぐに 進みます 。 きっと ほんとうの 幸福 を 求めます 」 ジョバンニ は 力強く 言いました 。 「 ああ で は さよなら 。 これ は さっき の 切符 です 」

博士 は 小さく 折った 緑 いろ の 紙 を ジョバンニ の ポケット に 入れました 。 そして もう その かたち は 天気 輪 の 柱 の 向こう に 見え なく なって いました 。 ジョバンニ は まっすぐに 走って 丘 を おりました 。 そして ポケット がたいへん 重く カチカチ 鳴る のに 気 が つきました 。 林 の 中 で とまって それ を しらべて みましたら 、 あの 緑 いろ の さっき 夢 の 中 で 見た あやしい 天 の 切符 の 中 に 大きな 二 枚 の 金貨 が 包んで ありました 。 「 博士 ありがとう 、 おっか さん 。 すぐ 乳 を もって行きます よ 」 ジョバンニ は 叫んで また 走り はじめました 。 何 か いろいろの もの が 一ぺん に ジョバンニ の 胸 に 集まって なんとも 言え ず かなしい ような 新しい ような 気 が する のでした 。

琴 の 星 が ず うっと 西 の 方 へ 移って そして また 夢 の ように 足 を のばして いました 。 ジョバンニ は 眼 を ひらきました 。 もと の 丘 の 草 の 中 に つかれて ねむって いた のでした 。 胸 は なんだか おかしく 熱 り 、 頬 に は つめたい 涙 が ながれて いました 。 ジョバンニ は ばね の ように はね起きました 。 町 は すっかり さっき の 通り に 下 で たくさんの 灯 を 綴って は いました が 、 その 光 は なんだか さっき より は 熱した と いう ふうでした 。 そして たったいま 夢 であるいた 天の川 も やっぱり さっき の 通り に 白く ぼんやり かかり 、 まっ黒 な 南 の 地平 線 の 上 で は ことに けむった ように なって 、 その 右 に は 蠍座 の 赤い 星 が うつくしく きらめき 、 そら ぜんたい の 位置 は そんなに 変わって も いない ようでした 。 ジョバンニ は いっさ んに 丘 を 走って 下りました 。 まだ 夕 ごはん を たべ ないで 待って いる お母さん の こと が 胸 いっぱい に 思いださ れた のです 。 どんどん 黒い 松 の 林 の 中 を 通って 、 それ から ほの白い 牧場 の 柵 を まわって 、 さっき の 入口 から 暗い 牛舎 の 前 へ また 来ました 。 そこ に は 誰 か が いま 帰った らしく 、 さっき なかった 一 つ の 車 が 何 か の 樽 を 二 つ 載っけ て 置いて ありました 。 「 今晩 は 」 ジョバンニ は 叫びました 。 「 はい 」 白い 太い ず ぼん を はいた 人 が すぐ 出て 来て 立ちました 。 「 なんの ご用 です か 」

「 今日 牛乳 が ぼく の ところ へ 来 なかった のです が 」

「 あ 、 済みません でした 」 その 人 は すぐ 奥 へ 行って 一 本 の 牛乳 瓶 を もって 来て ジョバンニ に 渡し ながら 、 また 言いました 。 「 ほんとうに 済みません でした 。 今日 は ひるすぎ 、 うっかり して こうし の 柵 を あけて おいた もん です から 、 大将 さっそく 親 牛 の ところ へ 行って 半分 ばかり のんで しまい まして ね ……」

その 人 は わらいました 。 「 そう です か 。 では いただいて 行きます 」 「 ええ 、 どうも 済みません でした 」 「 いいえ 」 ジョバンニ は まだ 熱い 乳 の 瓶 を 両方 の てのひら で 包む ように もって 牧場 の 柵 を 出ました 。 そして しばらく 木 の ある 町 を 通って 大通り へ 出て また しばらく 行きます と みち は 十文字 に なって 、 その 右手 の 方 、 通り の はずれ に さっき カムパネルラ たち の あかり を 流し に 行った 川 へ かかった 大きな 橋 の やぐら が 夜 の そらに ぼんやり 立って いました 。 ところが その 十字 に なった 町 かど や 店 の 前 に 女 たち が 七 、 八 人 ぐらい ずつ 集まって 橋 の 方 を 見 ながら 何 か ひそひそ 談 して いる のです 。 それ から 橋 の 上 に も いろいろな あかり が いっぱいな のでした 。

ジョバンニ は なぜか さあっと 胸 が 冷たく なった ように 思いました 。 そして いきなり 近く の 人 たち へ 、

「 何 か あった んです か 」 と 叫ぶ ように ききました 。 「 こども が 水 へ 落ちた んです よ 」 一 人 が 言います と 、 その 人 たち は 一斉に ジョバンニ の 方 を 見ました 。 ジョバンニ は まるで 夢中で 橋 の 方 へ 走りました 。 橋 の 上 は 人 で いっぱいで 河 が 見えません でした 。 白い 服 を 着た 巡査 も 出て いました 。 ジョバンニ は 橋 の たもと から 飛ぶ ように 下 の 広い 河原 へ おりました 。 その 河原 の 水ぎわ に 沿って たくさんの あかり が せわしく のぼったり 下ったり して いました 。 向こう岸 の 暗い どて に も 火 が 七 つ 八 つ うごいて いました 。 その まん 中 を もう 烏 瓜 の あかり も ない 川 が 、 わずかに 音 を たてて 灰 いろ に しずかに 流れて いた のでした 。

河原 の いちばん 下流 の 方 へ 洲 の ように なって 出た ところ に 人 の 集まり が くっきり まっ黒 に 立って いました 。 ジョバンニ は どんどん そっち へ 走りました 。 すると ジョバンニ は いきなり さっき カムパネルラ と いっしょだった マルソ に 会いました 。 マルソ が ジョバンニ に 走り 寄って 言いました 。 「 ジョバンニ 、 カムパネルラ が 川 へ はいった よ 」

「 どうして 、 いつ 」

「 ザネリ が ね 、 舟 の 上 から 烏 うり の あかり を 水 の 流れる 方 へ 押して やろう と した んだ 。 その とき 舟 が ゆれた もん だ から 水 へ 落っこったろう 。 すると カムパネルラ が すぐ 飛びこんだ んだ 。 そして ザネリ を 舟 の 方 へ 押して よこした 。 ザネリ は カトウ に つかまった 。 けれども あと カムパネルラ が 見え ない んだ 」

「 みんな さがして る んだろう 」

「 ああ 、 すぐ みんな 来た 。 カムパネルラ の お 父さん も 来た 。 けれども 見つから ない んだ 。 ザネリ は うち へ 連れられてった 」 ジョバンニ は みんな の いる そっち の 方 へ 行きました 。 そこ に 学生 たち や 町 の 人 たち に 囲まれて 青じろい とがった あご を した カムパネルラ の お 父さん が 黒い 服 を 着て まっすぐに 立って 左手 に 時計 を 持って じっと 見つめて いた のです 。 みんな も じっと 河 を 見て いました 。 誰 も 一言 も 物 を 言う 人 も ありません でした 。 ジョバンニ は わくわく わくわく 足 が ふるえました 。 魚 を とる とき の アセチレンランプ が たくさん せわしく 行ったり 来たり して 、 黒い 川 の 水 は ちらちら 小さな 波 を たてて 流れて いる の が 見える のでした 。

下流 の 方 の 川はば いっぱい 銀河 が 大きく 写って 、 まるで 水 の ない そのまま の そら の ように 見えました 。 ジョバンニ は 、 その カムパネルラ は もう あの 銀河 の はずれ に しか いない と いう ような 気 が して しかたなかった のです 。 けれども みんな は まだ 、 どこ か の 波 の 間 から 、

「 ぼく ずいぶん 泳いだ ぞ 」 と 言い ながら カムパネルラ が 出て 来る か 、 あるいは カムパネルラ が どこ か の 人 の 知ら ない 洲 に でも 着いて 立って いて 誰 か の 来る の を 待って いる か と いう ような 気 が して しかたない らしい のでした 。 けれども にわかに カムパネルラ の お 父さん が きっぱり 言いました 。 「 もう 駄目です 。 落ちて から 四十五 分 たちました から 」 ジョバンニ は 思わず かけよって 博士 の 前 に 立って 、 ぼく は カムパネルラ の 行った 方 を 知っています 、 ぼく は カムパネルラ と いっしょに 歩いて いた のです 、 と 言おう と しました が 、 もう のど が つまって なんとも 言えません でした 。 すると 博士 は ジョバンニ が あいさつ に 来た と でも 思った もの です か 、 しばらく しげしげ ジョバンニ を 見て いました が 、 「 あなた は ジョバンニ さん でした ね 。 どうも 今晩は ありがとう 」 と ていねいに 言いました 。 ジョバンニ は 何も 言え ず に ただ おじぎ を しました 。 「 あなた の お 父さん は もう 帰って います か 」 博士 は 堅く 時計 を 握った まま 、 また ききました 。 「 いいえ 」 ジョバンニ は かすかに 頭 を ふりました 。 「 どうした の か なあ 、 ぼく に は 一昨日たいへん 元気な 便り が あった んだ が 。 今日 あたり もう 着く ころ な んだ が 。 船 が 遅れた んだ な 。 ジョバンニ さん 。 あした 放課後 みなさん とうち へ 遊び に 来て ください ね 」

そう 言い ながら 博士 は また 、 川下 の 銀河 の いっぱいに うつった 方 へ じっと 眼 を 送りました 。 ジョバンニ は もう いろいろな こと で 胸 が いっぱいで 、 なんにも 言え ず に 博士 の 前 を はなれて 、 早く お母さん に 牛乳 を 持って行って 、 お 父さん の 帰る こと を 知らせよう と 思う と 、 もう いちもくさんに 河原 を 街 の 方 へ 走りました 。

9-4. ジョバンニ の 切符 (4) ||きっぷ 9-4. Fahrschein von Giovanni (4) 9-4. ticket of Giovanni (4) 9-4. billete de Giovanni (4) 9-4. biglietto di Giovanni (4) 9-4. 조반니 티켓 (4) 9-4. kaartje van Giovanni (4) 9-4. билет Джованни (4) 9-4. biljett för Giovanni (4) 9-4. 乔瓦尼的票 (4) 9-4. 喬瓦尼的票 (4)

もう そこら が 一ぺん に まっくらに なった ように 思いました 。 |||いっぺん|||||おもい ました 感覺整個地方都徹底黑了。 その とき 、

「 おまえ は いったい 何 を 泣いて いる の 。 |||なん||ないて|| “你到底哭什麼? ちょっと こっち を ごらん 」 いま まで たびたび 聞こえた 、 あの やさしい セロ の ような 声 が 、 ジョバンニ の うしろ から 聞こえました 。 |||||||きこえた||||||こえ||||||きこえ ました 看看這裡。」喬瓦尼身後傳來我以前聽過很多次的輕柔、嘰嘰喳喳的聲音。 ジョバンニ は 、 はっと 思って 涙 を はらって そっち を ふり向きました 、 さっき まで カムパネルラ の すわって いた 席 に 黒い 大きな 帽子 を かぶった 青白い 顔 の やせた 大人 が 、 やさしく わらって 大きな 一 冊 の 本 を もって いました 。 |||おもって|なみだ|||||ふりむき ました|||||||せき||くろい|おおきな|ぼうし|||あおじろい|かお|||おとな||||おおきな|ひと|さつ||ほん|||い ました 喬凡尼眨了眨眼,擦去了淚水,轉頭看向康帕內拉剛才坐的地方,一個瘦削、臉色蒼白、戴著一頂黑色大帽子的男人,輕輕地拿著一本大書。 「 おまえ の ともだち が どこ か へ 行った のだろう 。 |||||||おこなった| I wonder where your friends have gone. あの ひと は ね 、 ほんとうに こんや 遠く へ 行った のだ 。 ||||||とおく||おこなった| That man really went a long way. 那個人真的已經走得很遠了。 おまえ は もう カムパネルラ を さがして も むだだ 」 You are no longer wasting your time looking for Kampanella. 你已經在徒勞地尋找康帕內拉了。”

「 ああ 、 どうして な んです か 。 "Ah, why is that? ぼく は カムパネルラ と いっしょに まっすぐに 行こう と 言った んです 」 ||||||いこう||いった| 我說,我們直接去康帕內拉吧。”

「 ああ 、 そうだ 。 |そう だ みんな が そう 考える 。 |||かんがえる けれども いっしょに 行け ない 。 ||いけ| そして みんな が カムパネルラ だ 。 And everyone is a camperla. 每個人都是坎帕內拉。 おまえ が あう どんな ひと でも 、 みんな 何べん も おまえ と いっしょに りんご を たべたり 汽車 に 乗ったり した のだ 。 |||||||なんべん||||||||きしゃ||のったり|| 你遇到的每個人都吃過蘋果,和你一起坐過火車。 だから やっぱり おまえ は さっき 考えた ように 、 あらゆる ひと の いちばん の 幸福 を さがし 、 みんな と いっしょに 早く そこ に 行く が いい 、 そこ で ばかり おまえ は ほんとうに カムパネルラ と いつまでも いっしょに 行ける のだ 」 |||||かんがえた|||||||こうふく||||||はやく|||いく|||||||||||||いける| So, as I thought earlier, you should seek out the greatest happiness of all and go there with everyone else as quickly as possible, only there you can truly be with the Kam Panela forever. 所以,正如你之前所想的,你應該去尋找所有人最大的幸福,並儘快和大家一起去那裡,這樣你才能真正和康帕內拉永遠走下去。”

「 ああ ぼく は きっと そう します 。 |||||し ます 「哦,我確信我會的。 ぼく は どうして それ を 求めたら いい でしょう 」 |||||もとめたら|| Why should I ask for it? " 我為什麼要問這個?”

「 ああ わたくし も それ を もとめて いる 。 I have sought it out as well. 「哦,這也是我正在尋找的。 おまえ は おまえ の 切符 を しっかり もって おい で 。 ||||きっぷ||||| You should hold on to your ticket. 請務必保留好您的車票。 そして 一心に 勉強 し なけ ぁ いけない 。 |いっしんに|べんきょう|||| 而且我必須努力學習。 おまえ は 化学 を 習ったろう 、 水 は 酸素 と 水素 から できて いる と いう こと を 知っている 。 ||かがく||ならったろう|すい||さんそ||すいそ||||||||しっている 您可能學過化學,並且知道水是由氧和氫組成的。 いま は たれ だって それ を 疑 やしない 。 ||||||うたが| Now, they are all people and I don't doubt it. 現在沒有人懷疑這一點。 実験 して みる と ほんとうに そう な んだ から 。 じっけん|||||||| 當我嘗試過之後,我發現確實如此。 けれども 昔 は それ を 水銀 と 塩 で できて いる と 言ったり 、 水銀 と 硫黄 で できて いる と 言ったり いろいろ 議論 した のだ 。 |むかし||||すいぎん||しお|||||いったり|すいぎん||いおう|||||いったり||ぎろん|| みんな が めいめい じぶん の 神さま が ほんとうの 神さま だ と いう だろう 、 けれども お互い ほか の 神さま を 信ずる 人 たち の した こと でも 涙 が こぼれる だろう 。 |||||かみさま|||かみさま||||||おたがい|||かみさま||しんずる|じん||||||なみだ||| Everyone will say that their true god is the true god, but tears will also spill over what each other believes in other gods. 每個人都會說自己的神是真神,但也會為那些信別神的人的所作所為而流淚。 それ から ぼくたち の 心 が いい と か わるい と か 議論 する だろう 。 ||||こころ||||||||ぎろん|| Then we will argue that our hearts are good or bad. 然後我們再討論我們的心是好是壞。 そして 勝負 が つか ない だろう 。 |しょうぶ|||| And there will be no winner. 而且不會有贏家。 けれども 、 もし おまえ が ほんとうに 勉強 して 実験 で ちゃんと ほんとうの 考え と 、 うそ の 考え と を 分けて しまえば 、 その 実験 の 方法 さえ きまれば 、 もう 信仰 も 化学 と 同じ ように なる 。 |||||べんきょう||じっけん||||かんがえ||||かんがえ|||わけて|||じっけん||ほうほう||||しんこう||かがく||おなじ|| But if you really study, if you really separate the true from the false ideas by experiment, if you can even determine the method of the experiment, then faith is no more than chemistry. 然而,如果你真的研究和實驗來區分真實的想法和錯誤的想法,如果你知道如何進行實驗,你的信念就會變得像化學一樣。 けれども 、 ね 、 ちょっと この 本 を ごらん 、 いい かい 、 これ は 地理 と 歴史 の 辞典 だ よ 。 ||||ほん|||||||ちり||れきし||じてん|| But, look, this is a geography and history dictionary. 但是,你知道,看看這本書,它是一本地理和歷史詞典。 この 本 の この 頁 は ね 、 紀元 前 二千二百 年 の 地理 と 歴史 が 書いて ある 。 |ほん|||ぺーじ|||きげん|ぜん|にせんにひゃく|とし||ちり||れきし||かいて| よく ごらん 、 紀元 前 二千二百 年 の こと で ない よ 、 紀元 前 二千二百 年のころ に みんな が 考えて いた 地理 と 歴史 と いう もの が 書いて ある 。 ||きげん|ぜん|にせんにひゃく|とし||||||きげん|ぜん|にせんにひゃく|としのころ||||かんがえて||ちり||れきし|||||かいて| Look carefully, it's not about the year 220 A.D. It's about what people thought geography and history were like in the year 220 A.D. 仔細看,這不是公元前2200年的事,而是關於公元前2200年大家都在思考的地理和歷史的事。

だから この 頁 一 つ が 一 冊 の 地 歴 の 本 に あたる んだ 。 ||ぺーじ|ひと|||ひと|さつ||ち|れき||ほん||| So each page is a book of geography. 所以每一頁都像一本地質史書。 いい かい 、 そして この 中 に 書いて ある こと は 紀元 前 二千二百 年 ころ に はたいてい 本当だ 。 ||||なか||かいて||||きげん|ぜん|にせんにひゃく|とし|||はたいて い|ほんとうだ 聽著,你在這裡讀到的大部分內容在公元前 2200 年左右都是正確的。 さがす と 証拠 も ぞくぞく 出て いる 。 ||しょうこ|||でて| When I looked for evidence, I found a lot of evidence. 如果你尋找它,你會發現大量證據。 けれども それ が 少し どう か な と こう 考え だして ごらん 、 そら 、 それ は 次の 頁 だ よ 。 |||すこし||||||かんがえ||||||つぎの|ぺーじ|| 但如果你開始思考這一點,那就是下一頁了。

紀元 前 一千 年 。 きげん|ぜん|いっせん|とし 西元前1000年。 だいぶ 、 地理 も 歴史 も 変わって る だろう 。 |ちり||れきし||かわって|| 地理和歷史將會發生很大的變化。 この とき に は こう な のだ 。 This is what happens at this time. 這就是此時發生的情況。 変な 顔 を して は いけない 。 へんな|かお|||| Do not make a funny face. 不要做出奇怪的表情。 ぼくたち は ぼくたち の からだ だって 考え だって 、 天の川 だって 汽車 だって 歴史 だって 、 ただ そう 感じて いる のな んだ から 、 そら ごらん 、 ぼく と いっしょに すこし こころもち を しずかに して ごらん 。 ||||||かんがえ||あまのがわ||きしゃ||れきし||||かんじて||||||||||||||| Because our bodies, our thoughts, the Milky Way, trains, and history are just how we feel, so come on, be at peace with me. 我們就是我們的身體、我們的思想、銀河系、火車、歷史等等。這就是我們的感受,所以請花點時間和我一起安靜。 いい か 」 I'm fine."

その ひと は 指 を 一 本 あげて しずかに それ を おろしました 。 |||ゆび||ひと|ほん|||||おろし ました The man raised one finger and calmly put it down. 那人抬起一根手指,又輕輕放下。 すると いきなり ジョバンニ は 自分 と いう もの が 、 じぶん の 考え と いう もの が 、 汽車 や その 学者 や 天の川 や 、 みんな いっしょに ぽかっと 光って 、 しいん と なくなって 、 ぽかっと ともって また なくなって 、 そして その 一 つ が ぽかっと ともる と 、 あらゆる 広い 世界 が がらんと ひらけ 、 あらゆる 歴史 が そなわり 、 すっと 消える と 、 もう がらんと した 、 ただ もう それっきり に なって しまう の を 見ました 。 ||||じぶん|||||||かんがえ|||||きしゃ|||がくしゃ||あまのがわ||||ぽか っと|ひかって||||ぽか っと||||||ひと|||ぽか っと||||ひろい|せかい|||||れきし|||す っと|きえる|||||||||||||み ました Suddenly Giovanni's own thoughts, the train, its scholars, the Milky Way, all shined together, disappeared, and disappeared again. When one of them popped up, I saw that every wide world was open, all history was there, and when it disappeared, it was empty, and it was just clear. 突然,喬凡尼覺得他就是他自己,他的思想,火車,學者,銀河,所有的一切,都一起閃爍,突然消失,突然又消失。當其中一個突然亮起時,我看到整個廣闊的世界打開了,它所有的歷史都消失了,它變得空虛,除了它自己什麼都沒有。 だんだん それ が 早く なって 、 まもなく すっかり もと の とおり に なりました 。 |||はやく||||||||なり ました It gradually became faster and faster, and soon it was back to its original state. 情況逐漸惡化,很快一切又恢復正常。 「 さあ いい か 。 だから おまえ の 実験 は 、 この きれぎれの 考え の はじめ から 終わり すべて に わたる ようで なければ いけない 。 |||じっけん||||かんがえ||||おわり|||||| So your experiment must be like this, from the beginning to the end of this clean slate. 所以你的實驗必須從頭到尾涵蓋所有這些零碎的想法。 それ が むずかしい こと な のだ 。 這就是困難所在。 けれども 、 もちろん その とき だけ の で も いい のだ 。 But, of course, it's fine only then. 但是,當然,如果只是為了那一刻也沒關係。 ああ ごらん 、 あす こ に プレシオス が 見える 。 |||||||みえる Oh look, there you see Plesios. 哦,看,明天我就能看到 Plesios。 おまえ は あの プレシオス の 鎖 を 解か なければ なら ない 」 |||||くさり||とか||| You must break the chains of Plesios." 你必須打破那個普萊西奧斯的鎖鏈。”

その とき まっくらな 地平 線 の 向こう から 青じろい のろし が 、 まるで ひるま の ように うちあげられ 、 汽車 の 中 は すっかり 明るく なりました 。 |||ちへい|せん||むこう||あおじろい|||||||うちあげ られ|きしゃ||なか|||あかるく|なり ました 就在這時,黑色的地平線之外,一根藍白色的蠟燭如陽光般升起,車廂內變得一片明亮。 そして のろし は 高く そら に かかって 光り つづけました 。 |||たかく||||ひかり|つづけ ました And the sky shone high in the sky. 而詛咒高懸在天空,持續閃耀。 「 ああ マジェラン の 星雲 だ 。 |||せいうん| さあ もう きっと 僕 は 僕 の ため に 、 僕 の お母さん の ため に 、 カムパネルラ の ため に 、 みんな の ため に 、 ほんとうの ほんとうの 幸福 を さがす ぞ 」 ジョバンニ は 唇 を 噛んで 、 その マジェラン の 星雲 を のぞんで 立ちました 。 |||ぼく||ぼく||||ぼく||お かあさん||||||||||||||こうふく||||||くちびる||かんで||||せいうん|||たち ました I am sure I will find true, true happiness for me, for my mother, for Campanella, for everyone. 「現在,我確信我會為自己、為母親、為康帕內拉、為所有人找到真正的幸福。」喬瓦尼咬著嘴唇,抬頭看著麥哲倫星雲。我站了起來。 その いちばん 幸福な その ひと の ため に ! ||こうふくな||||| 為了那個最幸福的人!

「 さあ 、 切符 を しっかり 持って おい で 。 |きっぷ|||もって|| 「現在,拿著你的票。 お前 は もう 夢 の 鉄道 の 中 で なし に ほんとうの 世界 の 火 や はげしい 波 の 中 を 大股 に まっすぐに 歩いて 行か なければ いけない 。 おまえ|||ゆめ||てつどう||なか|||||せかい||ひ|||なみ||なか||おおまた|||あるいて|いか|| You are no longer on a dream train, but must walk straight through the real world of fire and bald waves with your thighs wide open. 你不再是在夢想的列車上,但現在你必須筆直地穿越現實世界的火海和洶湧的波濤。 天の川 の なか で たった 一 つ の 、 ほんとうの その 切符 を 決して おまえ は なくして は いけない 」 あまのがわ|||||ひと|||||きっぷ||けっして||||| You must never lose that one true ticket in the Milky Way. 你絕對不能失去那一張真正的銀河系門票。”

あの セロ の ような 声 が した と 思う と ジョバンニ は 、 あの 天の川 が もう まるで 遠く 遠く なって 風 が 吹き 自分 は まっすぐに 草 の 丘 に 立って いる の を 見 、 また 遠く から あの ブルカニロ 博士 の 足音 の しずかに 近づいて 来る の を ききました 。 ||||こえ||||おもう|||||あまのがわ||||とおく|とおく||かぜ||ふき|じぶん|||くさ||おか||たって||||み||とおく||||はかせ||あしおと|||ちかづいて|くる|||きき ました Giovanni heard a voice like Cyril's, and saw the Milky Way seemingly far away, the wind was blowing and he was standing straight on a grassy hill, and from afar he heard the footsteps of Dr. Vulcanillo approaching at the same time. 「 ありがとう 。 私 はたいへん いい 実験 を した 。 わたくし|は たいへん||じっけん|| I did a very good experiment. 私 は こんな しずかな 場所 で 遠く から 私 の 考え を 人 に 伝える 実験 を したい と さっき 考えて いた 。 わたくし||||ばしょ||とおく||わたくし||かんがえ||じん||つたえる|じっけん||し たい|||かんがえて| I had just thought that I would like to conduct an experiment to convey my thoughts to people from a distance in such a quiet place. お前 の 言った 語 は みんな 私 の 手帳 に とって ある 。 おまえ||いった|ご|||わたくし||てちょう||| I have all the words you mentioned in my notebook. さあ 帰って お やすみ 。 |かえって|| お前 は 夢 の 中 で 決心 した とおり まっすぐに 進んで 行く が いい 。 おまえ||ゆめ||なか||けっしん||||すすんで|いく|| You should go straight as you decided in your dreams. そして これ から なんでも いつでも 私 の とこ へ 相談 に おい で なさい 」 |||||わたくし||||そうだん||||

「 僕 きっと まっすぐに 進みます 。 ぼく|||すすみ ます きっと ほんとうの 幸福 を 求めます 」 ジョバンニ は 力強く 言いました 。 ||こうふく||もとめ ます|||ちからづよく|いい ました 「 ああ で は さよなら 。 これ は さっき の 切符 です 」 ||||きっぷ|

博士 は 小さく 折った 緑 いろ の 紙 を ジョバンニ の ポケット に 入れました 。 はかせ||ちいさく|おった|みどり|||かみ||||ぽけっと||いれ ました そして もう その かたち は 天気 輪 の 柱 の 向こう に 見え なく なって いました 。 |||||てんき|りん||ちゅう||むこう||みえ|||い ました ジョバンニ は まっすぐに 走って 丘 を おりました 。 |||はしって|おか||おり ました Giovanni ran straight down the hill. そして ポケット がたいへん 重く カチカチ 鳴る のに 気 が つきました 。 |ぽけっと|が たいへん|おもく|かちかち|なる||き||つき ました Then I noticed that my pockets were very heavy and clinked. 林 の 中 で とまって それ を しらべて みましたら 、 あの 緑 いろ の さっき 夢 の 中 で 見た あやしい 天 の 切符 の 中 に 大きな 二 枚 の 金貨 が 包んで ありました 。 りん||なか||||||み ましたら||みどり||||ゆめ||なか||みた||てん||きっぷ||なか||おおきな|ふた|まい||きんか||つつんで|あり ました 「 博士 ありがとう 、 おっか さん 。 はかせ||お っか| Thank you, Mr. Okka. すぐ 乳 を もって行きます よ 」 ジョバンニ は 叫んで また 走り はじめました 。 |ちち||もっていき ます||||さけんで||はしり|はじめ ました I will bring milk to you soon. Giovanni shouted and started running again. 何 か いろいろの もの が 一ぺん に ジョバンニ の 胸 に 集まって なんとも 言え ず かなしい ような 新しい ような 気 が する のでした 。 なん|||||いっぺん||||むね||あつまって||いえ||||あたらしい||き||| It was a new feeling, a feeling that was both indescribably sad and new, that all these things had gathered together in one place on Giovanni's chest.

琴 の 星 が ず うっと 西 の 方 へ 移って そして また 夢 の ように 足 を のばして いました 。 こと||ほし|||う っと|にし||かた||うつって|||ゆめ|||あし|||い ました ジョバンニ は 眼 を ひらきました 。 ||がん||ひらき ました もと の 丘 の 草 の 中 に つかれて ねむって いた のでした 。 ||おか||くさ||なか||つか れて||| He was sleeping in the grass on the hill where he used to be. 胸 は なんだか おかしく 熱 り 、 頬 に は つめたい 涙 が ながれて いました 。 むね||||ねつ||ほお||||なみだ|||い ました ジョバンニ は ばね の ように はね起きました 。 |||||はね おきました 町 は すっかり さっき の 通り に 下 で たくさんの 灯 を 綴って は いました が 、 その 光 は なんだか さっき より は 熱した と いう ふうでした 。 まち|||||とおり||した|||とう||つづって||い ました|||ひかり||||||ねっした||| そして たったいま 夢 であるいた 天の川 も やっぱり さっき の 通り に 白く ぼんやり かかり 、 まっ黒 な 南 の 地平 線 の 上 で は ことに けむった ように なって 、 その 右 に は 蠍座 の 赤い 星 が うつくしく きらめき 、 そら ぜんたい の 位置 は そんなに 変わって も いない ようでした 。 ||ゆめ||あまのがわ|||||とおり||しろく|||まっ くろ||みなみ||ちへい|せん||うえ||||||||みぎ|||さそり ざ||あかい|ほし|||||||いち|||かわって||| And the Milky Way, which I had just dreamed about, was still a dim white, and on the black southern horizon it looked as if it was swirling, and to its right the red star of Scorpio was shining brightly, and the whole of the sky did not seem to have changed its position that much. Млечный Путь, о котором я только что мечтал, по-прежнему оставался белым пятном, а на черном южном горизонте словно пекло, а справа от него красные звезды Скорпиона сияли так ярко, что казалось, все небо не так уж сильно изменило свое положение. 而我剛剛夢到的銀河,還是一如既往的潔白而模糊,在漆黑的南方地平線上,顯得格外黑暗,而在它的右邊,天蠍座的紅色星星閃爍著美麗的光芒。他們的立場似乎並沒有發生太大變化。 ジョバンニ は いっさ んに 丘 を 走って 下りました 。 ||||おか||はしって|くだり ました まだ 夕 ごはん を たべ ないで 待って いる お母さん の こと が 胸 いっぱい に 思いださ れた のです 。 |ゆう|||||まって||お かあさん||||むね|||おもいださ|| 我的心裡充滿了對媽媽的回憶,她還在等我吃晚餐。 どんどん 黒い 松 の 林 の 中 を 通って 、 それ から ほの白い 牧場 の 柵 を まわって 、 さっき の 入口 から 暗い 牛舎 の 前 へ また 来ました 。 |くろい|まつ||りん||なか||かよって|||ほのじろい|ぼくじょう||さく|||||いりぐち||くらい|ぎゅうしゃ||ぜん|||き ました 我越走越遠,穿過黑松林,繞過一片牧場的淡白色柵欄,從漆黑的牛棚入口回來。 そこ に は 誰 か が いま 帰った らしく 、 さっき なかった 一 つ の 車 が 何 か の 樽 を 二 つ 載っけ て 置いて ありました 。 |||だれ||||かえった||||ひと|||くるま||なん|||たる||ふた||の っけ||おいて|あり ました Someone had just left, and there was a car with two barrels of something in it that was not there earlier. 「 今晩 は 」 ジョバンニ は 叫びました 。 こんばん||||さけび ました 「 はい 」 白い 太い ず ぼん を はいた 人 が すぐ 出て 来て 立ちました 。 |しろい|ふとい|||||じん|||でて|きて|たち ました 「 なんの ご用 です か 」 |ごよう||

「 今日 牛乳 が ぼく の ところ へ 来 なかった のです が 」 きょう|ぎゅうにゅう||||||らい|||

「 あ 、 済みません でした 」 その 人 は すぐ 奥 へ 行って 一 本 の 牛乳 瓶 を もって 来て ジョバンニ に 渡し ながら 、 また 言いました 。 |すみ ませ ん|||じん|||おく||おこなって|ひと|ほん||ぎゅうにゅう|びん|||きて|||わたし|||いい ました 「 ほんとうに 済みません でした 。 |すみ ませ ん| 今日 は ひるすぎ 、 うっかり して こうし の 柵 を あけて おいた もん です から 、 大将 さっそく 親 牛 の ところ へ 行って 半分 ばかり のんで しまい まして ね ……」 きょう||ひる すぎ|||こう し||さく|||||||たいしょう||おや|うし||||おこなって|はんぶん||||| It's too chilly today, and I inadvertently opened this fence, so I went to the general's cow and half of it ... " 我今天太冷了,不小心把牛的柵欄打開了,所以我就直接走到牛那裡,吞下了大約一半。”

その 人 は わらいました 。 |じん||わらい ました 「 そう です か 。 では いただいて 行きます 」 「 ええ 、 どうも 済みません でした 」 「 いいえ 」 ||いき ます|||すみ ませ ん|| ジョバンニ は まだ 熱い 乳 の 瓶 を 両方 の てのひら で 包む ように もって 牧場 の 柵 を 出ました 。 |||あつい|ちち||びん||りょうほう||||つつむ|||ぼくじょう||さく||で ました そして しばらく 木 の ある 町 を 通って 大通り へ 出て また しばらく 行きます と みち は 十文字 に なって 、 その 右手 の 方 、 通り の はずれ に さっき カムパネルラ たち の あかり を 流し に 行った 川 へ かかった 大きな 橋 の やぐら が 夜 の そらに ぼんやり 立って いました 。 ||き|||まち||かよって|おおどおり||でて|||いき ます||||じゅうもんじ||||みぎて||かた|とおり||||||||||ながし||おこなった|かわ|||おおきな|きょう||||よ||||たって|い ました After passing through the town with trees for a while, we came to the main street and went on for a while again. The street turned into a crossroads, and on the right side, at the end of the street, there was a big bridge over the river where we had gone to wash away the light of our friends. 然後,穿過一個有樹的小鎮,我來到大街上,繼續前行,直到道路變成了十字形,在右手邊,街道的盡頭,有一個十字路口。一座橫跨河流的大橋,康帕內拉和他的朋友們剛剛在那裡放了燈。一座塔在夜空中朦朧地矗立著。 ところが その 十字 に なった 町 かど や 店 の 前 に 女 たち が 七 、 八 人 ぐらい ずつ 集まって 橋 の 方 を 見 ながら 何 か ひそひそ 談 して いる のです 。 ||じゅうじ|||まち|||てん||ぜん||おんな|||なな|やっ|じん|||あつまって|きょう||かた||み||なん|||だん||| それ から 橋 の 上 に も いろいろな あかり が いっぱいな のでした 。 ||きょう||うえ|||||||

ジョバンニ は なぜか さあっと 胸 が 冷たく なった ように 思いました 。 ||なぜ か||むね||つめたく|||おもい ました Giovanni felt a cold sensation in his chest. 不知為何,喬凡尼忽然感覺胸口一涼。 そして いきなり 近く の 人 たち へ 、 ||ちかく||じん||

「 何 か あった んです か 」 と 叫ぶ ように ききました 。 なん||||||さけぶ||きき ました I asked, "Did something happen? 「 こども が 水 へ 落ちた んです よ 」 一 人 が 言います と 、 その 人 たち は 一斉に ジョバンニ の 方 を 見ました 。 ||すい||おちた|||ひと|じん||いい ます|||じん|||いっせいに|||かた||み ました ジョバンニ は まるで 夢中で 橋 の 方 へ 走りました 。 |||むちゅうで|きょう||かた||はしり ました Giovanni ran towards the bridge as if he were crazy. 橋 の 上 は 人 で いっぱいで 河 が 見えません でした 。 きょう||うえ||じん|||かわ||みえ ませ ん| The bridge was so crowded that I could not see the river. 白い 服 を 着た 巡査 も 出て いました 。 しろい|ふく||きた|じゅんさ||でて|い ました ジョバンニ は 橋 の たもと から 飛ぶ ように 下 の 広い 河原 へ おりました 。 ||きょう||||とぶ||した||ひろい|かわはら||おり ました Giovanni flew from the foot of the bridge down to the open riverbed below. その 河原 の 水ぎわ に 沿って たくさんの あかり が せわしく のぼったり 下ったり して いました 。 |かわはら||みずぎわ||そって||||||くだったり||い ました Along the water's edge, many lights were streaming up and down the riverbank. 向こう岸 の 暗い どて に も 火 が 七 つ 八 つ うごいて いました 。 むこうぎし||くらい||||ひ||なな||やっ|||い ました On the other side of the river, in the darkness, there were seven or eight fires burning. その まん 中 を もう 烏 瓜 の あかり も ない 川 が 、 わずかに 音 を たてて 灰 いろ に しずかに 流れて いた のでした 。 ||なか|||からす|うり|||||かわ|||おと|||はい||||ながれて||

河原 の いちばん 下流 の 方 へ 洲 の ように なって 出た ところ に 人 の 集まり が くっきり まっ黒 に 立って いました 。 かわはら|||かりゅう||かた||す||||でた|||じん||あつまり|||まっ くろ||たって|い ました A small group of people were standing on a sandbank at the bottom of the riverbed. ジョバンニ は どんどん そっち へ 走りました 。 |||||はしり ました すると ジョバンニ は いきなり さっき カムパネルラ と いっしょだった マルソ に 会いました 。 ||||||||||あい ました Giovanni suddenly met Marso, who had been with Campanella earlier. マルソ が ジョバンニ に 走り 寄って 言いました 。 ||||はしり|よって|いい ました 「 ジョバンニ 、 カムパネルラ が 川 へ はいった よ 」 |||かわ|||

「 どうして 、 いつ 」

「 ザネリ が ね 、 舟 の 上 から 烏 うり の あかり を 水 の 流れる 方 へ 押して やろう と した んだ 。 |||ふね||うえ||からす|||||すい||ながれる|かた||おして|||| "Zanelli tried to push the light of the crow from the top of the boat toward the flow of water. その とき 舟 が ゆれた もん だ から 水 へ 落っこったろう 。 ||ふね||||||すい||おと っこ ったろう すると カムパネルラ が すぐ 飛びこんだ んだ 。 ||||とびこんだ| そして ザネリ を 舟 の 方 へ 押して よこした 。 |||ふね||かた||おして| He then pushed Zanelli toward the boat. ザネリ は カトウ に つかまった 。 Zanelli was grabbed by Katoh. 札內利被加藤抓住。 けれども あと カムパネルラ が 見え ない んだ 」 ||||みえ||

「 みんな さがして る んだろう 」

「 ああ 、 すぐ みんな 来た 。 |||きた カムパネルラ の お 父さん も 来た 。 |||とうさん||きた けれども 見つから ない んだ 。 |みつから|| ザネリ は うち へ 連れられてった 」 ジョバンニ は みんな の いる そっち の 方 へ 行きました 。 ||||つれ られて った||||||||かた||いき ました そこ に 学生 たち や 町 の 人 たち に 囲まれて 青じろい とがった あご を した カムパネルラ の お 父さん が 黒い 服 を 着て まっすぐに 立って 左手 に 時計 を 持って じっと 見つめて いた のです 。 ||がくせい|||まち||じん|||かこま れて|あおじろい||||||||とうさん||くろい|ふく||きて||たって|ひだりて||とけい||もって||みつめて|| Surrounded by students and townspeople, Campanella's dad, with his blue-pointed chin, stood upright in black clothes, holding a clock in his left hand and staring at him. みんな も じっと 河 を 見て いました 。 |||かわ||みて|い ました 誰 も 一言 も 物 を 言う 人 も ありません でした 。 だれ||いちげん||ぶつ||いう|じん||あり ませ ん| ジョバンニ は わくわく わくわく 足 が ふるえました 。 ||||あし||ふるえ ました Giovanni was thrilled, excited, and his feet were shaking. 魚 を とる とき の アセチレンランプ が たくさん せわしく 行ったり 来たり して 、 黒い 川 の 水 は ちらちら 小さな 波 を たてて 流れて いる の が 見える のでした 。 ぎょ|||||||||おこなったり|きたり||くろい|かわ||すい|||ちいさな|なみ|||ながれて||||みえる|

下流 の 方 の 川はば いっぱい 銀河 が 大きく 写って 、 まるで 水 の ない そのまま の そら の ように 見えました 。 かりゅう||かた||かわ は ば||ぎんが||おおきく|うつって||すい||||||||みえ ました Downstream, the river was so full of galaxies that it looked like the sky without any water. ジョバンニ は 、 その カムパネルラ は もう あの 銀河 の はずれ に しか いない と いう ような 気 が して しかたなかった のです 。 |||||||ぎんが|||||||||き|||| Giovanni felt that the Campanella was only on the outskirts of that galaxy. けれども みんな は まだ 、 どこ か の 波 の 間 から 、 |||||||なみ||あいだ| But everyone is still somewhere between the waves,

「 ぼく ずいぶん 泳いだ ぞ 」 と 言い ながら カムパネルラ が 出て 来る か 、 あるいは カムパネルラ が どこ か の 人 の 知ら ない 洲 に でも 着いて 立って いて 誰 か の 来る の を 待って いる か と いう ような 気 が して しかたない らしい のでした 。 ||およいだ|||いい||||でて|くる||||||||じん||しら||す|||ついて|たって||だれ|||くる|||まって||||||き||||| It's like if Campanella comes out while saying, "I've swam a lot," or if Campanella is standing in an unfamiliar island and waiting for someone to come. It seemed that there was no choice. けれども にわかに カムパネルラ の お 父さん が きっぱり 言いました 。 |||||とうさん|||いい ました 「 もう 駄目です 。 |だめです 落ちて から 四十五 分 たちました から 」 おちて||しじゅうご|ぶん|たち ました| ジョバンニ は 思わず かけよって 博士 の 前 に 立って 、 ぼく は カムパネルラ の 行った 方 を 知っています 、 ぼく は カムパネルラ と いっしょに 歩いて いた のです 、 と 言おう と しました が 、 もう のど が つまって なんとも 言えません でした 。 ||おもわず||はかせ||ぜん||たって|||||おこなった|かた||しってい ます||||||あるいて||||いおう||し ました|||||||いえ ませ ん| Giovanni ran over to stand in front of the doctor and tried to tell him that he knew where he was going and that he was walking with him, but he couldn't say anything anymore. すると 博士 は ジョバンニ が あいさつ に 来た と でも 思った もの です か 、 しばらく しげしげ ジョバンニ を 見て いました が 、 |はかせ||||||きた|||おもった||||||||みて|い ました| The doctor, perhaps thinking that Giovanni had come to say hello, looked at Giovanni with a curious gaze for a while, 「 あなた は ジョバンニ さん でした ね 。 どうも 今晩は ありがとう 」 と ていねいに 言いました 。 |こんばん は||||いい ました ジョバンニ は 何も 言え ず に ただ おじぎ を しました 。 ||なにも|いえ||||||し ました 「 あなた の お 父さん は もう 帰って います か 」 博士 は 堅く 時計 を 握った まま 、 また ききました 。 |||とうさん|||かえって|い ます||はかせ||かたく|とけい||にぎった|||きき ました 「 いいえ 」 ジョバンニ は かすかに 頭 を ふりました 。 ||||あたま||ふり ました 「 どうした の か なあ 、 ぼく に は 一昨日たいへん 元気な 便り が あった んだ が 。 |||||||いっさくじつ たいへん|げんきな|たより|||| What's the matter? I received a very cheerful letter the day before yesterday. 今日 あたり もう 着く ころ な んだ が 。 きょう|||つく|||| We should be there by the end of the day. 船 が 遅れた んだ な 。 せん||おくれた|| The ship must have been delayed. ジョバンニ さん 。 あした 放課後 みなさん とうち へ 遊び に 来て ください ね 」 |ほうかご||||あそび||きて||

そう 言い ながら 博士 は また 、 川下 の 銀河 の いっぱいに うつった 方 へ じっと 眼 を 送りました 。 |いい||はかせ|||かわしも||ぎんが||||かた|||がん||おくり ました With these words, he looked down the river toward the galaxy-filled river. ジョバンニ は もう いろいろな こと で 胸 が いっぱいで 、 なんにも 言え ず に 博士 の 前 を はなれて 、 早く お母さん に 牛乳 を 持って行って 、 お 父さん の 帰る こと を 知らせよう と 思う と 、 もう いちもくさんに 河原 を 街 の 方 へ 走りました 。 ||||||むね||||いえ|||はかせ||ぜん|||はやく|お かあさん||ぎゅうにゅう||もっていって||とうさん||かえる|||しらせよう||おもう||||かわはら||がい||かた||はしり ました Giovanni was so full of emotions that he left the doctor's office without saying a word. He decided to take the milk to his mother and let her know that his father was coming home.