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三姉妹探偵団 4 怪奇篇, 三姉妹探偵団 4 Chapter 14

三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 14

14 狂気 の 朝

少し 時間 を 戻して ── 夕 里子 が 目 を 覚ました の は 、 やっと 夜 が 明けた ころ だった 。

「── 起きた の ?

と 、 みどり が 言った 。

「 あなた 、 寝 なかった の ?

夕 里子 は 、 燃え 続けて いる 火 を 見て 、 訊 いた 。

「 私 は 大丈夫 」

と 、 みどり は 肯 いて 、「 何 日 も 眠ら ない こと も ある の よ 」

「 体 が おかしく なら ない の ?

「 その代り 、 三 日 ぐらい 眠り っ放し の こと も ある わ 」

「 へえ 」

充分に 眠ら ない と だめな 夕 里子 に とって は 驚き である 。

「 やっぱり 、 霊感 と 関係 ある の ? 「 たぶん ね 。

── 精神 の 集中 って いう の か な 、 それ が できる と 、 三 日 ぐらい 眠ら なくて も 、 全然 平気 」

「 へえ ……」

夕 里子 が 感心 して いる と 、 奥 の 方 から 、 石垣 が 現われた 。

「 や あ 、 眠れた か ね 」

と 、 微笑み かける が 、 当人 の 目 は 充血 して いて 、 ほとんど 眠って い ない の が 分 る 。

「 ええ 。

── 外 は 明るい ようです ね 」

「 もう 少し だ ね 。

まだ 、 危 いよ 」

「 じゃ 、 明るく なったら 、 上 へ 行って み ます わ 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 姉 や 妹 、 それ に 友だち の こと も 心配です から 」

「 うん 、 分 る よ 」

石垣 は 、 火 の そば に 腰 を おろした 。

「 まだ 大丈夫だ と は 思う が ……」

夕 里子 は 、 その 前 に 座り 直した 。

「 石垣 さん 。

── この 山荘 で 、 一体 何 が あった んです か ? 夕 里子 の 問い に 、 石垣 は 、 目 を そらして 、 赤く 燃え 上る 炎 を 見 やった 。

「── 妻 の 園子 は 、 昔 から 、 異常な ほど 潔癖 で ね 」

と 、 石垣 は 言った 。

「 もちろん 、 若い 内 は よく そんな 女の子 が いる もの だ 。 私 も 、 園子 と 結婚 する とき 、 その 内 に は 園子 も ごく 普通に なる だろう と 楽観 して いた 」

「 それ が 、 そう は なら なかった んです ね 」

「 それどころか 、 逆に 極端に なる ばかりだった よ 」

と 、 石垣 は 首 を 振った 。

「 秀 哉 が 生れて 、 その とき 、 大変な 難産 だった こと も あり 、 園子 は 、 軽い ノイローゼ に なって 、 しばらく 入院 して いた 」

「 じゃ 、 あなた が あの 子供 を ?

「 ほんの 半年 ほど だ が ね 。

── しかし 、 退院 して から 、 園子 は 今度 は 極度に 疑り 深く なった 。 私 が 仕事 に 忙しくて 、 夜 遅く 帰る と 、 女 が いる のじゃ ない か と 疑って 、 ワイシャツ や 下着 まで 調べる 始末 だった 」

「 嫉妬 です か 」

「 とても 、 そんな もの じゃ なかった ね 」

石垣 は 、 苦笑 した 。

「 考えて みて くれ 。 仕事 で 、 女性 と 会う だけ でも 、 園子 は ヒステリー を 起す くらい だった 。 ── 一体 どうした の か 、 私 も 戸惑った よ 」

「 で 、 どうした ん です か ?

「 ともかく 、 差し当り は 私 が 注意 を して いれば 、 騒ぎ に は なら ない 。

── 十 年 余り は 、 それ で 無事に 過ぎた 」

と 、 石垣 は 言った 。

「 それ に 比べて 、 子供 の 秀 哉 の 方 は 、 母親 と は 逆の 意味 で 、 まともじゃ なかった 。 ── ほとんど 感情 なんて もの が ない んじゃ ない か と 思う ほど 、 いつも 冷たい んだ 」

「 母親 と 正反対です ね 」

「 そう 。

── それでいて 、 二 人 は いい パートナー だった 。 私 は 二 人 に とって 、 攻撃 の 目標 か 、 でなければ 他人 だった 」

石垣 は 、 ため息 を ついた 。

「 そして ── あの 事件 が あった 」

「 事件 ?

「 秀 哉 の ところ に 来た 家庭 教師 の 女子 学生 と 、 私 は 恋 に 落ちた のだ 」

と 、 石垣 は 言った 。

もちろん 、 今 は 石垣 の 話 だけ を 聞いて いる のだ から 、 必ずしも 事実 が その 通り だった と は 限ら ない が 、 まあ 無理 も ない 話 で は ある 。

「 笹 田 直子 と いう 女子 大 生 だった 」

と 、 石垣 は 続けた 。

「 私 も 彼女 も 充分に 用心 した つもりだった 。 もし 園子 に 気付か れたら 、 とんでもない こと に なる と 分 って いた から だ 」

「 でも 、 ばれちゃ った んでしょう 。

隠そう たって 、 無理です よ 」

夕 里子 の 言葉 に 、 石垣 は 苦笑 した 。

「 全く だ 。

妻 は 、 初め から 気付いて いた らしい 。 私 は 、 何とか 、 穏やかに 妻 と 別れて 、 笹 田 直子 と 結婚 し たい と 思って いた ……」

石垣 は 、 少し 間 を 置いて 、「 その 内 、 恐ろしい こと が 起った 。

── ある 日 、 突然 、 彼女 が 姿 を 消した んだ 。 一体 何 が あった の か 、 私 に は 分 ら なかった が 、 ともかく 園子 が 何 か を した の に 違いない と 思った 。 妻 も 姿 を 消して いた から だ 」

「 それ で ?

「 この 山荘 へ 、 電話 が あった 。

笹 田 直子 で 、 ひどく 怯えて いた 。 ホテル に いる と 言う ので 、 私 は 駆けつけた 。 と いって も 、 遠い 道 だ 。 ── 辿りついて みる と 、 彼女 は 刺し殺さ れて いた 」

「 殺さ れて ?

「 そう 。

そして 、 その そば に は 、 見た こと の ない 男 が 、 剃刀 で 手首 を 切って 、 倒れて いた のだ 。 園子 が 、 どこ から と も なく 、 姿 を 現わした ……」

「 奥さん が ── 殺した んです ね 」

「 そう 。

そして 、 その 男 も 、 園子 が 見付けて 来た のだ 。 浮 浪 者 で 、 年 格好 が 私 に 近い 男 だった 。 身 ぎれい に さ せ 、 その ホテル へ 連れて 行って 、 睡眠 薬 で 眠ら せ 、 手首 を 切って 、 自殺 に 見せかけた 」

「 じゃ ── 無理 心中 ?

「 そうだ 。

そして 園子 は 、 その 浮 浪 者 を 、 私 だ と 証言 した ……」

「 どうして 石垣 さん は 黙って た んです か ?

「 私 か ね 。

── 私 は 、 だらしない と 思わ れる だろう が 、 園子 が 怖かった のだ 。 もう 、 園子 は 完全に 狂って しまって いる 。 それ に 、 恋人 を 殺さ れた ショック ── それ も 、 私 の せい で 、 だ 。 気落ち して 、 どうにでも なれば いい と いう 気持 だった 」

石垣 は 、 そう 言って から 、「 それ に ── 秀 哉 の こと を 考えた んだ 。

まあ 、 普通の 親子 と は 違う が 、 それ でも 息子 は 息子 だ 。 園子 一 人 の そば に おく の は 不安だった 。 それ に ── 実のところ 、 私 は 、 この 山荘 へ 戻って 来て いて 、 園子 が 、 私 が 死んだ と 証言 した こと など 、 その とき に は 知ら なかった のだ よ 」

夕 里子 は 肯 いて 、

「 その 事件 の こと は 、 よく 分 り ました 。

でも 、 今度 の こと は どう な んです か ? と 訊 いた 。

「 うん ……。

その後 、 園子 は 少し 落ちついた ように 見えた 。 もちろん 、 あれ は 人 を 殺して いる 。 それ も 二 人 だ 。 しかし 、 私 と して は 、 妻 を 警察 へ 突き出す わけに も いか ない 。 それ に ──」

と 、 石垣 は 、 ちょっと 視線 を 上 の 方 へ 向けて 、「 こんな 山 の 中 で 暮して いる と 、 いわゆる 世間 の 法律 など と いう もの が 、 どうでも いい ように 思えて 来る 。

毎日 の 暮し の 方 が 、 優先 して ね 。 分 って くれる かな ? 「 何となく ……」

「 あの 山荘 は 、 もともと コテージ と して 、 客 を 泊め られる ように 作ら れて いる 。

── 園子 は 、 民宿 の ように 、 時々 、 若者 たち を 泊めて いた 。 別に 、 そう し なくて は 食べて いけ ない わけじゃ ない 。 ただ 、 私 も 、 若い 人 たち を 見る の は 好きだった し ね 」

「 こんな 所 に 三 人 だけ で いたら 、 おかしく なっちゃ い ます もの ね 」

「 その 通り 。

私 に は 、 いわば いい 刺激 だった んだ よ 」

と 、 石垣 は 肯 いた 。

「 山荘 の 仕事 の 方 は 、 ほとんど 園子 に 任せ 切って いた ので 、 私 は 、 そこ で 何 が 起って いる か 、 知ら なかった んだ ……」

石垣 は 、 言葉 を 切った 。

「 何 が …… 起って いた んです か 」

と 、 夕 里子 は 訊 いた 。

石垣 は 、 ふと 立ち上った 。

じっと 座って い られ ない 、 と いう 様子 だった 。

「 三 日 前 、 二十六 日 の こと だ 。

私 は …… 園子 と 秀 哉 が 出かけた 後 、 裏庭 を ぶらついて いて 、 地下 道 を 見付けた 」

「 地下 道 ?

「 山荘 そのもの は 新しい が 、 ここ は もともと 、 ある 政治 家 の 古い 別荘 の あった ところ だ 。

地下 道 は 、 たぶん 、 その 前 から あった もの だろう 」

「 そこ に 何 か ──」

「 私 は 、 それ を 辿 って 行って みた 。

その 更に 奥 の 地下 へ 降りた 所 に 、 部屋 が あった 。 牢獄 の ような 、 石 造り の 、 暗い 部屋 だ 」

夕 里子 は 、 何となく 、 そう 聞いた だけ で ゾッと した 。

「 見える わ 」

と 、 それ まで じっと 黙って 聞いて いた みどり が 、 突然 言った 。

夕 里子 が 見る と 、 みどり は 、 忘我 状態 に でも 入った ように 、 じっと 目 を 閉じて いる 。

「 見える 、 って ?

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 何 が 見える の ? 「 血 の 流れた 部屋 ……。

血 の 匂い の 充満 した 部屋 。 ── 女の子 が 死んで る わ 。 三 人 、 いえ 四 人 も 五 人 も ……」

みどり は 、 独り言 の ように 言った 。

「 その 通り だ 」

と 、 石垣 は 肯 いた 。

「 そこ に 、 その とき 鎖 で つなが れて いた の は 、 一 人 だった 。 しかし 、 その 前 に 、 殺さ れて は 、 どこ か に 埋め られた 娘 が いた に 違いない 。 君 は 、 その 何 人 も の イメージ を 、 見て いる んだ 」

「 殺さ れて ?

でも ── どうして ? 「 その 、 鎖 に つなが れた 娘 は 、 虫 の 息 だった が 、 まだ 死んで い なかった 。

ともかく 、 水 を やる と 、 かすかに 意識 を 取り戻した が 、 その 口 から 、 とぎれ とぎれ に 、 何 が あった の か を 聞いた のだ 」

「 それ も ── 奥さん が ?

「 そうだ 。

一体 何 が きっかけ だった の か 分 ら ない が ……。 園子 は 、 血 を ── それ も 若い 娘 の 血 を 飲む ように なって いた んだ 」

夕 里子 は 、 言葉 も なかった 。

── 吸 血 鬼 !

そんな 話 は 、 小説 と 映画 の 中 だけ の もの か と 思って いた のに !

「 しかも 、 園子 は 、 それ が 必要だ と 思って いた んだ 。

自分 に も 、 息子 に も 」

「 秀 哉 君 に も ?

「 そう 。

── 狂気 と しか 言い よう が ない 。 若者 たち を 泊めた の も 、 後 で ここ に 泊った こと が 分 ら ない ような 、 都合 の いい 娘 を 見付ける ため だった 。 捕えて は 、 その 地下 牢 へ つなぎ 、 血 を 抜き取って いた ……」

夕 里子 も 、 実際 の 歴史 上 に 、 そういう 例 が ない こと も ない と 知って いた 。

どこ だ か の 城 の 女 城主 が 、 若 さ を 保つ ため に 、 若い 娘 たち の 血 で 風呂 に 入った と か ……。 犠牲 者 は 何 百 人 に も 上った と いう こと だ が 、 しかし 、 それ は 中世 の 話 だ 。

まさか この 現代 に !

「 その 話 を して くれた 娘 も 、 こ と 切れて しまった 。

── 私 は しばし 呆然と して いた が 、 ともかく 、 放って は おけ なかった ……」

「 それ で ?

夕 里子 は 、 先 を 聞く の が 怖い ような 気 が した 。

「 私 は 、 心配だった 。

ちょうど 、 また 秀 哉 に 家庭 教師 の 女子 大 生 が 来て いた から だ 。 この ところ 、 この 山荘 に 泊る 若者 は 、 あまり い なかった から 、 その 女子 大 生 も 、 危険 かも しれ ない と 思った んだ 」

「 その 人 が ──」

あの 、 国 友 の 見た 死体 かも しれ ない 、 と 夕 里子 は 思った 。

「 私 は 、 その 女子 大 生 を 捜した 。

しかし 、 山荘 の どこ に も 、 見当ら ない 。 手遅れだった の か と 青く なり 、 それ でも 、 何とか 園子 たち に 追いつけば 、 間に合わ ない と も 限ら ない 。 私 も 車 で 、 園子 と 秀 哉 を 追って 東京 へ と 向 った ……」

「 でも 、 間に合わ なかった んです ね 」

「 その ようだ 」

石垣 は 、 ため息 を ついた 。

「 私 は 、 妻 と 息子 を 、 見付け られ なかった んだ 。 仕方ない 。 一旦 山荘 へ 戻って 、 待ち受ける こと に した 。

ところが 、 園子 たち の 車 が 見えて 、 よく 見る と 、 他 に も 大勢 乗って いる 。

私 は 、 もしかしたら 、 園子 が 、 誰 か 仲間 を 連れて 来た の かも しれ ない と 思って 、 怖く なった 。 そして 、 ここ へ 隠れる こと に した んだ よ 」

「 それ が 私 たち だった んです ね 」

「 そうだ 。

── しかし 、 園子 に とって は 、 君 ら は 正に 格好の 獲物 だ 。 ともかく 、 早く 逃げる こと だ よ 」

夕 里子 は 、 立ち上った 。

「 お 話 を 聞いて 、 姉 と 妹 の こと 、 ますます 心配に なり ました 。

もう 朝 に なった でしょう し 、 上 へ 行って み ます 」

「 そう か 。

それ が いい かも しれ ない 」

みどり も 加わり 、 三 人 は 、 洞窟 の 出口 の 方 へ と 、 足下 に 用心 し ながら 、 進んで 行った 。

「── 石垣 さん 、 ここ は どうして 見付けた んです か ?

「 この 洞窟 か ね ?

一 人 で いる とき 、 危うく 落 っこ ち かけて ね 、 この上 の 出っ張り で 、 命拾い を した んだ 。 その とき 、 偶然に ね 」

「 大きな 洞窟 です ね ──。

あら ! と 、 夕 里子 は 足 を 止めた 。

「 あの 声 ……」

その とき 、 夕 里子 は 、 国 友 と 水谷 の 呼ぶ 声 に 気付いた のである 。

夕 里子 は 駆けて 行って 、

「 国 友 さ ー ん !

と 、 力一杯 の 声 で 呼んだ ……。

「── 恨ま ない こと ね 」

と 、 園子 は 言った 。

「 どちら が 先 でも 、 同じ こと でしょ 」

珠美 は 、 じっと 園子 を にらみ つけて いた が 、 いくら にらんで も 、 この 鉄 の 足かせ が 外れる わけで は ない 。

「 珠美 ……」

綾子 が 、 言った 。

── 椅子 に 縛り つけ られて いる 。

首筋 に ピタリ と ナイフ の 刃 が 当て られて 、 少し でも 身動き すれば 、 切り裂か れ そうな 様子 だった 。

綾子 は 、 左 の 腕 を テーブル の 上 に 置いて 、 ベルト で 縛り つけ られて いた 。

右手 は 椅子 の 背 に 縛ら れ 、 両足 も 椅子 の 足 に 結びつけ られて いた 。

「 私 、 低 血圧 です 」

と 、 綾子 は 言った 。

「 それ に 、 貧血 症 です し ……」

「 結構 よ 」

園子 は 、 微笑んだ 。

「 必要な の は 『 若 さ 』 な の 。 それ に 、 この 山荘 で は 、 充分に 食べて いた でしょ ? 「 ええ 、 味 は 良かった です 」

と 、 綾子 は 呑気 な も のである 。

「 賞 め て いただいて 嬉しい わ 」

園子 は 、 少しも 無気味な 様子 で は なかった 。

魔法使い の 老婆 みたいな 声 も 出さ なければ 、 下 から 光 で 、 顔 が 浮かび 上って いる わけで も ない 。

そこ が 却って 、 薄気味悪い のだった 。

「 じゃ 、 血 を 抜き ましょう ね 」

園子 は 、 注射 針 を ゴム の 管 に セット する と 、

「 痛く は ない わ 。

ただ ── スーッ と 意識 が 薄れて 行く だけ 」

「 でも 、 死ぬ んでしょ 」

と 、 綾子 は 訊 いた 。

「 そう ね 。

その 点 は 気の毒だ けど 」

「 私 は いい んです けど 、 そこ の 妹 は 、 まだ 十五 です 。

もう 少し 、 人生 を 楽しま せて やり たい んです 」

「 お 姉ちゃん !

珠美 は 、 怒鳴った 。

「 そんな 奴 に 、 まともな 話 なんて した って むだだ よ ! 暴れて ! 逃げ なきゃ ! 「 どっち に して も 死ぬ よ 」

と 、 秀 哉 が 、 ちょっと ナイフ を 持ち 上げて 見せた 。

「 切ら れりゃ 痛い と 思う けど 」

「 自分 の 首 で も 切れば ?

すげ かえて やる から 」

と 、 珠美 は 、 かみつく ように 言った 。

「 妹 の 方 が 元 気 いい みたい 」

と 、 秀 哉 は 言った 。

「 当り前 よ !

たとえ 殺さ れた って 、 化けて 出て やる から ね ! その とき に 後悔 した って 遅い んだ から ! 「 まあ 、 大した 元気 ね 」

と 、 園子 は 笑った 。

「 じゃ 、 楽しみ は 後 に とっておき ま しょ 」

「 綾子 姉ちゃん ──」

「 珠美 」

と 、 綾子 は 、 言った 。

「 もし 、 あんた だけ 生き残ったら ──」

「 お 姉ちゃん !

「 お 墓 の 掃除 して よ ね 」

変な こと に こだわって いる 。

「 動か ないで 。

── 針 が 入ら ない から 」

と 、 園子 が 言って 、 針 を 手 に 取る と 、 綾子 の 腕 を 押える 。

「 あの ──」

と 、 綾子 が 言った 。

「 その 針 、 消毒 して あり ます ? 「 やめて !

と 、 珠美 は 叫んだ 。

「 私 を やって よ ! そんな 、 お 姉ちゃん の 血 なんか おいしく ない わ よ ! 「 珠美 !

綾子 が 、 急に キッ と なって 、「 長女 な んだ から 、 私 は 。

最初に 犠牲 に なる 立場 な の 。 分 った ? 「 お 姉ちゃん ……」

珠美 も 、 さすが に 、 シュン と して いる 。

「 さあ 、 それ じゃ 、 始め ましょう か 」

園子 は 、 綾子 の 腕 に 、 針 を 突き 立てよう と した 。

と ── ドドド 、 と いう 音 。

園子 が 顔 を 上げた 。

「 足音 だ よ 、 ママ 」

と 、 秀 哉 が 言った 。

「 お 姉ちゃん !

と 、 叫ぶ 声 が した 。

「 珠美 !

「 夕 里子 姉ちゃん だ !

珠美 が 、 飛び上ら ん ばかりに して 、「 ここ よ !

早く 来て ! と 叫んだ 。

「── ママ 」

秀 哉 が 園子 を 見る 。

「 仕方ない わ 」

園子 は 、 秀 哉 を 促して 、 壁 の 一 つ へ と 駆け寄る と 、 それ を 押した 。

壁 が 音 を 立てて 動き 、 扉 の ように 開いた 。

「 早く !

秀 哉 を 押し 込んで 、 園子 は 、 自分 も 中 へ 入った 。

その 壁 の 扉 が 、 閉じる と 同時に 、 地下 道 から の 扉 が 大きく 開いて 、 夕 里子 が 飛び 込んで 来た 。

「 お 姉ちゃん !

大丈夫 ? と 、 駆け寄って 、「 血 を 抜か れた ?

「 まだ よ 。

もし 少し でも 抜か れて たら 、 それ だけ で 貧血 起こして る わ よ 」

平然と して い られる の が 、 綾子 らしい ところ だ 。

「 大丈夫 か !

国 友 と 水谷 が 飛び 込んで 来る 。

「 国 友 さん !

珠美 を ──」

「 分 った !

国 友 は 、 珠美 の 足かせ に つながって いる 鎖 を つかんで 、 壁 から 引っこ抜こう と 必死で 引 張った が 、 とても 歯 が 立た ない 。

当り前だろう 。 すると 、

「── 国 友 さん 」

綾子 が 縄 を とか れて 、「 そこ に 鍵 が 置いて ある わ 。

私 の を 外した やつ 」

と 、 テーブル の 上 の 鍵 を 指さした のだった 。


三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 14 みっ|しまい|たんてい|だん|chapter Three Sisters Detectives 4 Chapter 14

14  狂気 の 朝 きょうき||あさ

少し 時間 を 戻して ── 夕 里子 が 目 を 覚ました の は 、 やっと 夜 が 明けた ころ だった 。 すこし|じかん||もどして|ゆう|さとご||め||さました||||よ||あけた||

「── 起きた の ? おきた|

と 、 みどり が 言った 。 |||いった

「 あなた 、 寝 なかった の ? |ね||

夕 里子 は 、 燃え 続けて いる 火 を 見て 、 訊 いた 。 ゆう|さとご||もえ|つづけて||ひ||みて|じん|

「 私 は 大丈夫 」 わたくし||だいじょうぶ

と 、 みどり は 肯 いて 、「 何 日 も 眠ら ない こと も ある の よ 」 |||こう||なん|ひ||ねむら||||||

「 体 が おかしく なら ない の ? からだ|||||

「 その代り 、 三 日 ぐらい 眠り っ放し の こと も ある わ 」 そのかわり|みっ|ひ||ねむり|っぱなし|||||

「 へえ 」

充分に 眠ら ない と だめな 夕 里子 に とって は 驚き である 。 じゅうぶんに|ねむら||||ゆう|さとご||||おどろき|

「 やっぱり 、 霊感 と 関係 ある の ? |れいかん||かんけい|| 「 たぶん ね 。

── 精神 の 集中 って いう の か な 、 それ が できる と 、 三 日 ぐらい 眠ら なくて も 、 全然 平気 」 せいしん||しゅうちゅう||||||||||みっ|ひ||ねむら|||ぜんぜん|へいき

「 へえ ……」

夕 里子 が 感心 して いる と 、 奥 の 方 から 、 石垣 が 現われた 。 ゆう|さとご||かんしん||||おく||かた||いしがき||あらわれた

「 や あ 、 眠れた か ね 」 ||ねむれた||

と 、 微笑み かける が 、 当人 の 目 は 充血 して いて 、 ほとんど 眠って い ない の が 分 る 。 |ほおえみ|||とうにん||め||じゅうけつ||||ねむって|||||ぶん|

「 ええ 。

── 外 は 明るい ようです ね 」 がい||あかるい||

「 もう 少し だ ね 。 |すこし||

まだ 、 危 いよ 」 |き|

「 じゃ 、 明るく なったら 、 上 へ 行って み ます わ 」 |あかるく||うえ||おこなって|||

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 姉 や 妹 、 それ に 友だち の こと も 心配です から 」 あね||いもうと|||ともだち||||しんぱいです|

「 うん 、 分 る よ 」 |ぶん||

石垣 は 、 火 の そば に 腰 を おろした 。 いしがき||ひ||||こし||

「 まだ 大丈夫だ と は 思う が ……」 |だいじょうぶだ|||おもう|

夕 里子 は 、 その 前 に 座り 直した 。 ゆう|さとご|||ぜん||すわり|なおした

「 石垣 さん 。 いしがき|

── この 山荘 で 、 一体 何 が あった んです か ? |さんそう||いったい|なん|||| 夕 里子 の 問い に 、 石垣 は 、 目 を そらして 、 赤く 燃え 上る 炎 を 見 やった 。 ゆう|さとご||とい||いしがき||め|||あかく|もえ|のぼる|えん||み|

「── 妻 の 園子 は 、 昔 から 、 異常な ほど 潔癖 で ね 」 つま||そのこ||むかし||いじょうな||けっぺき||

と 、 石垣 は 言った 。 |いしがき||いった

「 もちろん 、 若い 内 は よく そんな 女の子 が いる もの だ 。 |わかい|うち||||おんなのこ|||| 私 も 、 園子 と 結婚 する とき 、 その 内 に は 園子 も ごく 普通に なる だろう と 楽観 して いた 」 わたくし||そのこ||けっこん||||うち|||そのこ|||ふつうに||||らっかん||

「 それ が 、 そう は なら なかった んです ね 」

「 それどころか 、 逆に 極端に なる ばかりだった よ 」 |ぎゃくに|きょくたんに|||

と 、 石垣 は 首 を 振った 。 |いしがき||くび||ふった

「 秀 哉 が 生れて 、 その とき 、 大変な 難産 だった こと も あり 、 園子 は 、 軽い ノイローゼ に なって 、 しばらく 入院 して いた 」 しゅう|や||うまれて|||たいへんな|なんざん|||||そのこ||かるい|のいろーぜ||||にゅういん||

「 じゃ 、 あなた が あの 子供 を ? ||||こども|

「 ほんの 半年 ほど だ が ね 。 |はんとし||||

── しかし 、 退院 して から 、 園子 は 今度 は 極度に 疑り 深く なった 。 |たいいん|||そのこ||こんど||きょくどに|うたぐり|ふかく| ── However, since he left the hospital, Sonoko became extremely suspicious this time. 私 が 仕事 に 忙しくて 、 夜 遅く 帰る と 、 女 が いる のじゃ ない か と 疑って 、 ワイシャツ や 下着 まで 調べる 始末 だった 」 わたくし||しごと||いそがしくて|よ|おそく|かえる||おんな|||||||うたがって|わいしゃつ||したぎ||しらべる|しまつ|

「 嫉妬 です か 」 しっと||

「 とても 、 そんな もの じゃ なかった ね 」

石垣 は 、 苦笑 した 。 いしがき||くしょう|

「 考えて みて くれ 。 かんがえて|| 仕事 で 、 女性 と 会う だけ でも 、 園子 は ヒステリー を 起す くらい だった 。 しごと||じょせい||あう|||そのこ||||おこす|| ── 一体 どうした の か 、 私 も 戸惑った よ 」 いったい||||わたくし||とまどった|

「 で 、 どうした ん です か ?

「 ともかく 、 差し当り は 私 が 注意 を して いれば 、 騒ぎ に は なら ない 。 |さしあたり||わたくし||ちゅうい||||さわぎ||||

── 十 年 余り は 、 それ で 無事に 過ぎた 」 じゅう|とし|あまり||||ぶじに|すぎた

と 、 石垣 は 言った 。 |いしがき||いった

「 それ に 比べて 、 子供 の 秀 哉 の 方 は 、 母親 と は 逆の 意味 で 、 まともじゃ なかった 。 ||くらべて|こども||しゅう|や||かた||ははおや|||ぎゃくの|いみ||| "Compared to that, the person of Hideya who is a child is not decent, in the opposite sense to her mother. ── ほとんど 感情 なんて もの が ない んじゃ ない か と 思う ほど 、 いつも 冷たい んだ 」 |かんじょう|||||||||おもう|||つめたい| - It is always cold enough to think that there is hardly any feeling. "

「 母親 と 正反対です ね 」 ははおや||せいはんたいです|

「 そう 。

── それでいて 、 二 人 は いい パートナー だった 。 |ふた|じん|||ぱーとなー| 私 は 二 人 に とって 、 攻撃 の 目標 か 、 でなければ 他人 だった 」 わたくし||ふた|じん|||こうげき||もくひょう|||たにん| I was the target of attack for the two of us, or else was someone else. "

石垣 は 、 ため息 を ついた 。 いしがき||ためいき||

「 そして ── あの 事件 が あった 」 ||じけん||

「 事件 ? じけん

「 秀 哉 の ところ に 来た 家庭 教師 の 女子 学生 と 、 私 は 恋 に 落ちた のだ 」 しゅう|や||||きた|かてい|きょうし||じょし|がくせい||わたくし||こい||おちた|

と 、 石垣 は 言った 。 |いしがき||いった

もちろん 、 今 は 石垣 の 話 だけ を 聞いて いる のだ から 、 必ずしも 事実 が その 通り だった と は 限ら ない が 、 まあ 無理 も ない 話 で は ある 。 |いま||いしがき||はなし|||きいて||||かならずしも|じじつ|||とおり||||かぎら||||むり|||はなし||| Of course, as we are only listening to Ishigaki's story, it is not always the case that the facts were exactly the case, but it is not unreasonable talk.

「 笹 田 直子 と いう 女子 大 生 だった 」 ささ|た|なおこ|||じょし|だい|せい|

と 、 石垣 は 続けた 。 |いしがき||つづけた

「 私 も 彼女 も 充分に 用心 した つもりだった 。 わたくし||かのじょ||じゅうぶんに|ようじん|| もし 園子 に 気付か れたら 、 とんでもない こと に なる と 分 って いた から だ 」 |そのこ||きづか|||||||ぶん||||

「 でも 、 ばれちゃ った んでしょう 。

隠そう たって 、 無理です よ 」 かくそう||むりです|

夕 里子 の 言葉 に 、 石垣 は 苦笑 した 。 ゆう|さとご||ことば||いしがき||くしょう|

「 全く だ 。 まったく|

妻 は 、 初め から 気付いて いた らしい 。 つま||はじめ||きづいて|| 私 は 、 何とか 、 穏やかに 妻 と 別れて 、 笹 田 直子 と 結婚 し たい と 思って いた ……」 わたくし||なんとか|おだやかに|つま||わかれて|ささ|た|なおこ||けっこん||||おもって|

石垣 は 、 少し 間 を 置いて 、「 その 内 、 恐ろしい こと が 起った 。 いしがき||すこし|あいだ||おいて||うち|おそろしい|||おこった

── ある 日 、 突然 、 彼女 が 姿 を 消した んだ 。 |ひ|とつぜん|かのじょ||すがた||けした| 一体 何 が あった の か 、 私 に は 分 ら なかった が 、 ともかく 園子 が 何 か を した の に 違いない と 思った 。 いったい|なん|||||わたくし|||ぶん|||||そのこ||なん||||||ちがいない||おもった I did not know what was going on, but I thought that Sonoko must have done anything. 妻 も 姿 を 消して いた から だ 」 つま||すがた||けして|||

「 それ で ?

「 この 山荘 へ 、 電話 が あった 。 |さんそう||でんわ||

笹 田 直子 で 、 ひどく 怯えて いた 。 ささ|た|なおこ|||おびえて| ホテル に いる と 言う ので 、 私 は 駆けつけた 。 ほてる||||いう||わたくし||かけつけた と いって も 、 遠い 道 だ 。 |||とおい|どう| It is a long way though. ── 辿りついて みる と 、 彼女 は 刺し殺さ れて いた 」 たどりついて|||かのじょ||さしころさ||

「 殺さ れて ? ころさ|

「 そう 。

そして 、 その そば に は 、 見た こと の ない 男 が 、 剃刀 で 手首 を 切って 、 倒れて いた のだ 。 |||||みた||||おとこ||かみそり||てくび||きって|たおれて|| And by the side of it, a man who had never been seen had fallen his wrist with a razor. 園子 が 、 どこ から と も なく 、 姿 を 現わした ……」 そのこ|||||||すがた||あらわした Sonoko appeared from anywhere, ... .... "

「 奥さん が ── 殺した んです ね 」 おくさん||ころした||

「 そう 。

そして 、 その 男 も 、 園子 が 見付けて 来た のだ 。 ||おとこ||そのこ||みつけて|きた| 浮 浪 者 で 、 年 格好 が 私 に 近い 男 だった 。 うか|ろう|もの||とし|かっこう||わたくし||ちかい|おとこ| 身 ぎれい に さ せ 、 その ホテル へ 連れて 行って 、 睡眠 薬 で 眠ら せ 、 手首 を 切って 、 自殺 に 見せかけた 」 み||||||ほてる||つれて|おこなって|すいみん|くすり||ねむら||てくび||きって|じさつ||みせかけた

「 じゃ ── 無理 心中 ? |むり|しんじゅう

「 そうだ 。 そう だ

そして 園子 は 、 その 浮 浪 者 を 、 私 だ と 証言 した ……」 |そのこ|||うか|ろう|もの||わたくし|||しょうげん|

「 どうして 石垣 さん は 黙って た んです か ? |いしがき|||だまって|||

「 私 か ね 。 わたくし||

── 私 は 、 だらしない と 思わ れる だろう が 、 園子 が 怖かった のだ 。 わたくし||||おもわ||||そのこ||こわかった| もう 、 園子 は 完全に 狂って しまって いる 。 |そのこ||かんぜんに|くるって|| それ に 、 恋人 を 殺さ れた ショック ── それ も 、 私 の せい で 、 だ 。 ||こいびと||ころさ||しょっく|||わたくし|||| 気落ち して 、 どうにでも なれば いい と いう 気持 だった 」 きおち|||||||きもち| I felt depressed and I felt like I could do anything. "

石垣 は 、 そう 言って から 、「 それ に ── 秀 哉 の こと を 考えた んだ 。 いしがき|||いって||||しゅう|や||||かんがえた|

まあ 、 普通の 親子 と は 違う が 、 それ でも 息子 は 息子 だ 。 |ふつうの|おやこ|||ちがう||||むすこ||むすこ| Well, it is different from ordinary parent and child, but still my son is my son. 園子 一 人 の そば に おく の は 不安だった 。 そのこ|ひと|じん|||||||ふあんだった It was uneasy to put it near Sonoko. それ に ── 実のところ 、 私 は 、 この 山荘 へ 戻って 来て いて 、 園子 が 、 私 が 死んだ と 証言 した こと など 、 その とき に は 知ら なかった のだ よ 」 ||じつのところ|わたくし|||さんそう||もどって|きて||そのこ||わたくし||しんだ||しょうげん||||||||しら|||

夕 里子 は 肯 いて 、 ゆう|さとご||こう|

「 その 事件 の こと は 、 よく 分 り ました 。 |じけん|||||ぶん||

でも 、 今度 の こと は どう な んです か ? |こんど||||||| But what about next time? と 訊 いた 。 |じん|

「 うん ……。

その後 、 園子 は 少し 落ちついた ように 見えた 。 そのご|そのこ||すこし|おちついた||みえた もちろん 、 あれ は 人 を 殺して いる 。 |||じん||ころして| それ も 二 人 だ 。 ||ふた|じん| しかし 、 私 と して は 、 妻 を 警察 へ 突き出す わけに も いか ない 。 |わたくし||||つま||けいさつ||つきだす|||| But for me, I can not stick my wife to the police. それ に ──」

と 、 石垣 は 、 ちょっと 視線 を 上 の 方 へ 向けて 、「 こんな 山 の 中 で 暮して いる と 、 いわゆる 世間 の 法律 など と いう もの が 、 どうでも いい ように 思えて 来る 。 |いしがき|||しせん||うえ||かた||むけて||やま||なか||くらして||||せけん||ほうりつ|||||||||おもえて|くる , Ishigaki slightly turned his line of sight towards the upper side, "When I live in such a mountain, it seems like what the so-called law of the world is, I do not care.

毎日 の 暮し の 方 が 、 優先 して ね 。 まいにち||くらし||かた||ゆうせん|| 分 って くれる かな ? ぶん||| 「 何となく ……」 なんとなく

「 あの 山荘 は 、 もともと コテージ と して 、 客 を 泊め られる ように 作ら れて いる 。 |さんそう||||||きゃく||とめ|||つくら|| "That mountain villa was originally made as a cottage to accommodate guests.

── 園子 は 、 民宿 の ように 、 時々 、 若者 たち を 泊めて いた 。 そのこ||みんしゅく|||ときどき|わかもの|||とめて| 別に 、 そう し なくて は 食べて いけ ない わけじゃ ない 。 べつに|||||たべて|||| Separately, I can not eat it without doing it. ただ 、 私 も 、 若い 人 たち を 見る の は 好きだった し ね 」 |わたくし||わかい|じん|||みる|||すきだった||

「 こんな 所 に 三 人 だけ で いたら 、 おかしく なっちゃ い ます もの ね 」 |しょ||みっ|じん|||||||||

「 その 通り 。 |とおり

私 に は 、 いわば いい 刺激 だった んだ よ 」 わたくし|||||しげき|||

と 、 石垣 は 肯 いた 。 |いしがき||こう|

「 山荘 の 仕事 の 方 は 、 ほとんど 園子 に 任せ 切って いた ので 、 私 は 、 そこ で 何 が 起って いる か 、 知ら なかった んだ ……」 さんそう||しごと||かた|||そのこ||まかせ|きって|||わたくし||||なん||おこって|||しら||

石垣 は 、 言葉 を 切った 。 いしがき||ことば||きった

「 何 が …… 起って いた んです か 」 なん||おこって|||

と 、 夕 里子 は 訊 いた 。 |ゆう|さとご||じん|

石垣 は 、 ふと 立ち上った 。 いしがき|||たちのぼった

じっと 座って い られ ない 、 と いう 様子 だった 。 |すわって||||||ようす|

「 三 日 前 、 二十六 日 の こと だ 。 みっ|ひ|ぜん|にじゅうろく|ひ|||

私 は …… 園子 と 秀 哉 が 出かけた 後 、 裏庭 を ぶらついて いて 、 地下 道 を 見付けた 」 わたくし||そのこ||しゅう|や||でかけた|あと|うらにわ||||ちか|どう||みつけた

「 地下 道 ? ちか|どう

「 山荘 そのもの は 新しい が 、 ここ は もともと 、 ある 政治 家 の 古い 別荘 の あった ところ だ 。 さんそう|その もの||あたらしい||||||せいじ|いえ||ふるい|べっそう||||

地下 道 は 、 たぶん 、 その 前 から あった もの だろう 」 ちか|どう||||ぜん||||

「 そこ に 何 か ──」 ||なん|

「 私 は 、 それ を 辿 って 行って みた 。 わたくし||||てん||おこなって|

その 更に 奥 の 地下 へ 降りた 所 に 、 部屋 が あった 。 |さらに|おく||ちか||おりた|しょ||へや|| There was a room where I got off to the basement behind it. 牢獄 の ような 、 石 造り の 、 暗い 部屋 だ 」 ろうごく|||いし|つくり||くらい|へや|

夕 里子 は 、 何となく 、 そう 聞いた だけ で ゾッと した 。 ゆう|さとご||なんとなく||きいた|||ぞっと|

「 見える わ 」 みえる|

と 、 それ まで じっと 黙って 聞いて いた みどり が 、 突然 言った 。 ||||だまって|きいて||||とつぜん|いった

夕 里子 が 見る と 、 みどり は 、 忘我 状態 に でも 入った ように 、 じっと 目 を 閉じて いる 。 ゆう|さとご||みる||||ぼうわれ|じょうたい|||はいった|||め||とじて|

「 見える 、 って ? みえる|

と 、 夕 里子 は 言った 。 |ゆう|さとご||いった

「 何 が 見える の ? なん||みえる| 「 血 の 流れた 部屋 ……。 ち||ながれた|へや

血 の 匂い の 充満 した 部屋 。 ち||におい||じゅうまん||へや ── 女の子 が 死んで る わ 。 おんなのこ||しんで|| 三 人 、 いえ 四 人 も 五 人 も ……」 みっ|じん||よっ|じん||いつ|じん|

みどり は 、 独り言 の ように 言った 。 ||ひとりごと|||いった

「 その 通り だ 」 |とおり|

と 、 石垣 は 肯 いた 。 |いしがき||こう|

「 そこ に 、 その とき 鎖 で つなが れて いた の は 、 一 人 だった 。 ||||くさり||つな が|||||ひと|じん| しかし 、 その 前 に 、 殺さ れて は 、 どこ か に 埋め られた 娘 が いた に 違いない 。 ||ぜん||ころさ||||||うずめ||むすめ||||ちがいない 君 は 、 その 何 人 も の イメージ を 、 見て いる んだ 」 きみ|||なん|じん|||いめーじ||みて||

「 殺さ れて ? ころさ|

でも ── どうして ? 「 その 、 鎖 に つなが れた 娘 は 、 虫 の 息 だった が 、 まだ 死んで い なかった 。 |くさり||つな が||むすめ||ちゅう||いき||||しんで||

ともかく 、 水 を やる と 、 かすかに 意識 を 取り戻した が 、 その 口 から 、 とぎれ とぎれ に 、 何 が あった の か を 聞いた のだ 」 |すい|||||いしき||とりもどした|||くち|||||なん||||||きいた|

「 それ も ── 奥さん が ? ||おくさん|

「 そうだ 。 そう だ

一体 何 が きっかけ だった の か 分 ら ない が ……。 いったい|なん||||||ぶん||| 園子 は 、 血 を ── それ も 若い 娘 の 血 を 飲む ように なって いた んだ 」 そのこ||ち||||わかい|むすめ||ち||のむ||||

夕 里子 は 、 言葉 も なかった 。 ゆう|さとご||ことば||

── 吸 血 鬼 ! す|ち|おに

そんな 話 は 、 小説 と 映画 の 中 だけ の もの か と 思って いた のに ! |はなし||しょうせつ||えいが||なか||||||おもって||

「 しかも 、 園子 は 、 それ が 必要だ と 思って いた んだ 。 |そのこ||||ひつようだ||おもって||

自分 に も 、 息子 に も 」 じぶん|||むすこ||

「 秀 哉 君 に も ? しゅう|や|きみ||

「 そう 。

── 狂気 と しか 言い よう が ない 。 きょうき|||いい||| ─ ─ I can only say madness. 若者 たち を 泊めた の も 、 後 で ここ に 泊った こと が 分 ら ない ような 、 都合 の いい 娘 を 見付ける ため だった 。 わかもの|||とめた|||あと||||とまった|||ぶん||||つごう|||むすめ||みつける|| 捕えて は 、 その 地下 牢 へ つなぎ 、 血 を 抜き取って いた ……」 とらえて|||ちか|ろう|||ち||ぬきとって|

夕 里子 も 、 実際 の 歴史 上 に 、 そういう 例 が ない こと も ない と 知って いた 。 ゆう|さとご||じっさい||れきし|うえ|||れい|||||||しって| Evening evening, I knew that there were no such examples on actual history.

どこ だ か の 城 の 女 城主 が 、 若 さ を 保つ ため に 、 若い 娘 たち の 血 で 風呂 に 入った と か ……。 ||||しろ||おんな|じょうしゅ||わか|||たもつ|||わかい|むすめ|||ち||ふろ||はいった|| 犠牲 者 は 何 百 人 に も 上った と いう こと だ が 、 しかし 、 それ は 中世 の 話 だ 。 ぎせい|もの||なん|ひゃく|じん|||のぼった|||||||||ちゅうせい||はなし|

まさか この 現代 に ! ||げんだい|

「 その 話 を して くれた 娘 も 、 こ と 切れて しまった 。 |はなし||||むすめ||||きれて| "My daughter who told me that story has run out.

── 私 は しばし 呆然と して いた が 、 ともかく 、 放って は おけ なかった ……」 わたくし|||ぼうぜんと|||||はなって|||

「 それ で ?

夕 里子 は 、 先 を 聞く の が 怖い ような 気 が した 。 ゆう|さとご||さき||きく|||こわい||き||

「 私 は 、 心配だった 。 わたくし||しんぱいだった

ちょうど 、 また 秀 哉 に 家庭 教師 の 女子 大 生 が 来て いた から だ 。 ||しゅう|や||かてい|きょうし||じょし|だい|せい||きて||| この ところ 、 この 山荘 に 泊る 若者 は 、 あまり い なかった から 、 その 女子 大 生 も 、 危険 かも しれ ない と 思った んだ 」 |||さんそう||とまる|わかもの|||||||じょし|だい|せい||きけん|||||おもった| I have thought that young people staying at the mountain so much did not have so much, so that female college student may also be dangerous. "

「 その 人 が ──」 |じん|

あの 、 国 友 の 見た 死体 かも しれ ない 、 と 夕 里子 は 思った 。 |くに|とも||みた|したい|||||ゆう|さとご||おもった

「 私 は 、 その 女子 大 生 を 捜した 。 わたくし|||じょし|だい|せい||さがした

しかし 、 山荘 の どこ に も 、 見当ら ない 。 |さんそう|||||みあたら| 手遅れだった の か と 青く なり 、 それ でも 、 何とか 園子 たち に 追いつけば 、 間に合わ ない と も 限ら ない 。 ておくれだった||||あおく||||なんとか|そのこ|||おいつけば|まにあわ||||かぎら| It became blue whether it was too late, but even if it managed to catch up with Sonoko somehow, it is not always the case. 私 も 車 で 、 園子 と 秀 哉 を 追って 東京 へ と 向 った ……」 わたくし||くるま||そのこ||しゅう|や||おって|とうきょう|||むかい|

「 でも 、 間に合わ なかった んです ね 」 |まにあわ|||

「 その ようだ 」

石垣 は 、 ため息 を ついた 。 いしがき||ためいき||

「 私 は 、 妻 と 息子 を 、 見付け られ なかった んだ 。 わたくし||つま||むすこ||みつけ||| 仕方ない 。 しかたない 一旦 山荘 へ 戻って 、 待ち受ける こと に した 。 いったん|さんそう||もどって|まちうける|||

ところが 、 園子 たち の 車 が 見えて 、 よく 見る と 、 他 に も 大勢 乗って いる 。 |そのこ|||くるま||みえて||みる||た|||おおぜい|のって|

私 は 、 もしかしたら 、 園子 が 、 誰 か 仲間 を 連れて 来た の かも しれ ない と 思って 、 怖く なった 。 わたくし|||そのこ||だれ||なかま||つれて|きた||||||おもって|こわく| I was afraid that, perhaps, Sonoko thought that someone might have brought his companion. そして 、 ここ へ 隠れる こと に した んだ よ 」 |||かくれる|||||

「 それ が 私 たち だった んです ね 」 ||わたくし||||

「 そうだ 。 そう だ

── しかし 、 園子 に とって は 、 君 ら は 正に 格好の 獲物 だ 。 |そのこ||||きみ|||まさに|かっこうの|えもの| ともかく 、 早く 逃げる こと だ よ 」 |はやく|にげる|||

夕 里子 は 、 立ち上った 。 ゆう|さとご||たちのぼった

「 お 話 を 聞いて 、 姉 と 妹 の こと 、 ますます 心配に なり ました 。 |はなし||きいて|あね||いもうと||||しんぱいに||

もう 朝 に なった でしょう し 、 上 へ 行って み ます 」 |あさ|||||うえ||おこなって||

「 そう か 。

それ が いい かも しれ ない 」

みどり も 加わり 、 三 人 は 、 洞窟 の 出口 の 方 へ と 、 足下 に 用心 し ながら 、 進んで 行った 。 ||くわわり|みっ|じん||どうくつ||でぐち||かた|||あしもと||ようじん|||すすんで|おこなった

「── 石垣 さん 、 ここ は どうして 見付けた んです か ? いしがき|||||みつけた||

「 この 洞窟 か ね ? |どうくつ||

一 人 で いる とき 、 危うく 落 っこ ち かけて ね 、 この上 の 出っ張り で 、 命拾い を した んだ 。 ひと|じん||||あやうく|おと|||||このうえ||でっぱり||いのちびろい||| When I was alone, I slowly dropped it, I picked it up with a lug on this. その とき 、 偶然に ね 」 ||ぐうぜんに|

「 大きな 洞窟 です ね ──。 おおきな|どうくつ||

あら ! と 、 夕 里子 は 足 を 止めた 。 |ゆう|さとご||あし||とどめた

「 あの 声 ……」 |こえ

その とき 、 夕 里子 は 、 国 友 と 水谷 の 呼ぶ 声 に 気付いた のである 。 ||ゆう|さとご||くに|とも||みずたに||よぶ|こえ||きづいた|

夕 里子 は 駆けて 行って 、 ゆう|さとご||かけて|おこなって

「 国 友 さ ー ん ! くに|とも||-|

と 、 力一杯 の 声 で 呼んだ ……。 |ちからいっぱい||こえ||よんだ

「── 恨ま ない こと ね 」 うらま|||

と 、 園子 は 言った 。 |そのこ||いった

「 どちら が 先 でも 、 同じ こと でしょ 」 ||さき||おなじ|| "Either way, it's the same thing,"

珠美 は 、 じっと 園子 を にらみ つけて いた が 、 いくら にらんで も 、 この 鉄 の 足かせ が 外れる わけで は ない 。 たまみ|||そのこ||||||||||くろがね||あしかせ||はずれる|||

「 珠美 ……」 たまみ

綾子 が 、 言った 。 あやこ||いった

── 椅子 に 縛り つけ られて いる 。 いす||しばり|||

首筋 に ピタリ と ナイフ の 刃 が 当て られて 、 少し でも 身動き すれば 、 切り裂か れ そうな 様子 だった 。 くびすじ||ぴたり||ないふ||は||あて||すこし||みうごき||きりさか||そう な|ようす|

綾子 は 、 左 の 腕 を テーブル の 上 に 置いて 、 ベルト で 縛り つけ られて いた 。 あやこ||ひだり||うで||てーぶる||うえ||おいて|べると||しばり|||

右手 は 椅子 の 背 に 縛ら れ 、 両足 も 椅子 の 足 に 結びつけ られて いた 。 みぎて||いす||せ||しばら||りょうあし||いす||あし||むすびつけ||

「 私 、 低 血圧 です 」 わたくし|てい|けつあつ|

と 、 綾子 は 言った 。 |あやこ||いった

「 それ に 、 貧血 症 です し ……」 ||ひんけつ|しょう||

「 結構 よ 」 けっこう|

園子 は 、 微笑んだ 。 そのこ||ほおえんだ

「 必要な の は 『 若 さ 』 な の 。 ひつような|||わか||| それ に 、 この 山荘 で は 、 充分に 食べて いた でしょ ? |||さんそう|||じゅうぶんに|たべて|| 「 ええ 、 味 は 良かった です 」 |あじ||よかった|

と 、 綾子 は 呑気 な も のである 。 |あやこ||のんき|||

「 賞 め て いただいて 嬉しい わ 」 しょう||||うれしい|

園子 は 、 少しも 無気味な 様子 で は なかった 。 そのこ||すこしも|ぶきみな|ようす||| Sonoko did not seem a little creepy.

魔法使い の 老婆 みたいな 声 も 出さ なければ 、 下 から 光 で 、 顔 が 浮かび 上って いる わけで も ない 。 まほうつかい||ろうば||こえ||ださ||した||ひかり||かお||うかび|のぼって|||| Without a voice like an old woman 's old woman, the face is not rising up from the bottom with light.

そこ が 却って 、 薄気味悪い のだった 。 ||かえって|うすきみわるい|

「 じゃ 、 血 を 抜き ましょう ね 」 |ち||ぬき||

園子 は 、 注射 針 を ゴム の 管 に セット する と 、 そのこ||ちゅうしゃ|はり||ごむ||かん||せっと||

「 痛く は ない わ 。 いたく|||

ただ ── スーッ と 意識 が 薄れて 行く だけ 」 |||いしき||うすれて|いく|

「 でも 、 死ぬ んでしょ 」 |しぬ|

と 、 綾子 は 訊 いた 。 |あやこ||じん|

「 そう ね 。

その 点 は 気の毒だ けど 」 |てん||きのどくだ|

「 私 は いい んです けど 、 そこ の 妹 は 、 まだ 十五 です 。 わたくし|||||||いもうと|||じゅうご|

もう 少し 、 人生 を 楽しま せて やり たい んです 」 |すこし|じんせい||たのしま||||

「 お 姉ちゃん ! |ねえちゃん

珠美 は 、 怒鳴った 。 たまみ||どなった

「 そんな 奴 に 、 まともな 話 なんて した って むだだ よ ! |やつ|||はなし||||| "It's no use paying such a story," 暴れて ! あばれて 逃げ なきゃ ! にげ| 「 どっち に して も 死ぬ よ 」 ||||しぬ|

と 、 秀 哉 が 、 ちょっと ナイフ を 持ち 上げて 見せた 。 |しゅう|や|||ないふ||もち|あげて|みせた Said, Hideya lifted the knife a little.

「 切ら れりゃ 痛い と 思う けど 」 きら||いたい||おもう| "I think it hurts if it gets cut"

「 自分 の 首 で も 切れば ? じぶん||くび|||きれば

すげ かえて やる から 」

と 、 珠美 は 、 かみつく ように 言った 。 |たまみ||||いった

「 妹 の 方 が 元 気 いい みたい 」 いもうと||かた||もと|き||

と 、 秀 哉 は 言った 。 |しゅう|や||いった

「 当り前 よ ! あたりまえ|

たとえ 殺さ れた って 、 化けて 出て やる から ね ! |ころさ|||ばけて|でて||| Even though I got killed, I'll get rid of it! その とき に 後悔 した って 遅い んだ から ! |||こうかい|||おそい|| 「 まあ 、 大した 元気 ね 」 |たいした|げんき|

と 、 園子 は 笑った 。 |そのこ||わらった

「 じゃ 、 楽しみ は 後 に とっておき ま しょ 」 |たのしみ||あと||||

「 綾子 姉ちゃん ──」 あやこ|ねえちゃん

「 珠美 」 たまみ

と 、 綾子 は 、 言った 。 |あやこ||いった

「 もし 、 あんた だけ 生き残ったら ──」 |||いきのこったら

「 お 姉ちゃん ! |ねえちゃん

「 お 墓 の 掃除 して よ ね 」 |はか||そうじ|||

変な こと に こだわって いる 。 へんな||||

「 動か ないで 。 うごか|

── 針 が 入ら ない から 」 はり||はいら||

と 、 園子 が 言って 、 針 を 手 に 取る と 、 綾子 の 腕 を 押える 。 |そのこ||いって|はり||て||とる||あやこ||うで||おさえる

「 あの ──」

と 、 綾子 が 言った 。 |あやこ||いった

「 その 針 、 消毒 して あり ます ? |はり|しょうどく||| 「 やめて !

と 、 珠美 は 叫んだ 。 |たまみ||さけんだ

「 私 を やって よ ! わたくし||| そんな 、 お 姉ちゃん の 血 なんか おいしく ない わ よ ! ||ねえちゃん||ち||||| Sister's blood is not tasty like that! 「 珠美 ! たまみ

綾子 が 、 急に キッ と なって 、「 長女 な んだ から 、 私 は 。 あやこ||きゅうに||||ちょうじょ||||わたくし|

最初に 犠牲 に なる 立場 な の 。 さいしょに|ぎせい|||たちば|| 分 った ? ぶん| 「 お 姉ちゃん ……」 |ねえちゃん

珠美 も 、 さすが に 、 シュン と して いる 。 たまみ||||しゅん|||

「 さあ 、 それ じゃ 、 始め ましょう か 」 |||はじめ||

園子 は 、 綾子 の 腕 に 、 針 を 突き 立てよう と した 。 そのこ||あやこ||うで||はり||つき|たてよう||

と ── ドドド 、 と いう 音 。 ||||おと

園子 が 顔 を 上げた 。 そのこ||かお||あげた

「 足音 だ よ 、 ママ 」 あしおと|||まま

と 、 秀 哉 が 言った 。 |しゅう|や||いった

「 お 姉ちゃん ! |ねえちゃん

と 、 叫ぶ 声 が した 。 |さけぶ|こえ||

「 珠美 ! たまみ

「 夕 里子 姉ちゃん だ ! ゆう|さとご|ねえちゃん|

珠美 が 、 飛び上ら ん ばかりに して 、「 ここ よ ! たまみ||とびあがら|||||

早く 来て ! はやく|きて と 叫んだ 。 |さけんだ

「── ママ 」 まま

秀 哉 が 園子 を 見る 。 しゅう|や||そのこ||みる

「 仕方ない わ 」 しかたない|

園子 は 、 秀 哉 を 促して 、 壁 の 一 つ へ と 駆け寄る と 、 それ を 押した 。 そのこ||しゅう|や||うながして|かべ||ひと||||かけよる||||おした

壁 が 音 を 立てて 動き 、 扉 の ように 開いた 。 かべ||おと||たてて|うごき|とびら|||あいた

「 早く ! はやく

秀 哉 を 押し 込んで 、 園子 は 、 自分 も 中 へ 入った 。 しゅう|や||おし|こんで|そのこ||じぶん||なか||はいった

その 壁 の 扉 が 、 閉じる と 同時に 、 地下 道 から の 扉 が 大きく 開いて 、 夕 里子 が 飛び 込んで 来た 。 |かべ||とびら||とじる||どうじに|ちか|どう|||とびら||おおきく|あいて|ゆう|さとご||とび|こんで|きた At the same time as the door on that wall was closed, the door from the underground rock opened wide, and Riko Yuri came in.

「 お 姉ちゃん ! |ねえちゃん

大丈夫 ? だいじょうぶ と 、 駆け寄って 、「 血 を 抜か れた ? |かけよって|ち||ぬか|

「 まだ よ 。

もし 少し でも 抜か れて たら 、 それ だけ で 貧血 起こして る わ よ 」 |すこし||ぬか||||||ひんけつ|おこして|||

平然と して い られる の が 、 綾子 らしい ところ だ 。 へいぜんと||||||あやこ|||

「 大丈夫 か ! だいじょうぶ|

国 友 と 水谷 が 飛び 込んで 来る 。 くに|とも||みずたに||とび|こんで|くる

「 国 友 さん ! くに|とも|

珠美 を ──」 たまみ|

「 分 った ! ぶん|

国 友 は 、 珠美 の 足かせ に つながって いる 鎖 を つかんで 、 壁 から 引っこ抜こう と 必死で 引 張った が 、 とても 歯 が 立た ない 。 くに|とも||たまみ||あしかせ||||くさり|||かべ||ひっこぬこう||ひっしで|ひ|はった|||は||たた| Friends grasped the chain that leads to Palmi's shackle and struggled to descend from the wall desperately, but it is not very toothy.

当り前だろう 。 あたりまえだろう すると 、

「── 国 友 さん 」 くに|とも|

綾子 が 縄 を とか れて 、「 そこ に 鍵 が 置いて ある わ 。 あやこ||なわ||と か||||かぎ||おいて||

私 の を 外した やつ 」 わたくし|||はずした|

と 、 テーブル の 上 の 鍵 を 指さした のだった 。 |てーぶる||うえ||かぎ||ゆびさした|