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三姉妹探偵団 2 キャンパス篇, 三姉妹探偵団(2) Chapter 06 (1)

三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 06 (1)

6 廊下 武勇 伝 結構 夜 遅く ホテル に チェック ・ イン する 客 が いる んだ 、 と いう の は 、 夕 里子 に とって 、 新 発見 だった 。 夕 里子 は 見かけ に よら ず (? ) 神経質な ところ が あって ── と いう より 、 母親 代り に 、 みんな を 起こさ なくて は いけない から だ が 、 ちょっと した 物音 で 、 目 を 覚ます こと が あった 。 廊下 を 通って 行く 話し声 。 どこ か の 部屋 から 響く 笑い声 。 バス を 使う 音 ……。 もう 夜中 の 二 時 を 過ぎて いる のに 、 一向に 音 は 途切れ ない のである 。 ホテル の 部屋 と いう の は 、 カーテン を 引いて 、 明り を 消す と 、 本当に 真 暗 に なって しまう 。 綾子 の 静かな 寝息 と 、 夜食 に お茶 漬 を とって 、 満足の 珠美 の 軽い いびき が 聞こえる 。 さて 、 寝 なきゃ 。 ── 明日 は どうした もの か 。 珠美 は ともかく 、 学校 に やら なくて は なら ない 。 ── 夕 里子 と して は 、 ドア の 取付 も ある し 、 警察 の 捜査 も ある だろう から 、 家 に い なくて は なら ない 。 学校 を 休む の は 仕方ない ( と いう より 、 嬉しい ! ) と して も 、 問題 は 綾子 の こと であった 。 文化 祭 まで あと 三 日 ── いや 二 日 しか ない 。 幹事 と して は 、 休む わけに も いく まい 。 しかし 、 爆弾 を 仕掛けた 犯人 が 、 また 綾子 を 狙う こと も 、 大いに 考え られる し 、 綾子 の 方 は 、 全く 無 警戒 な のだ 。 いつでも 殺して 下さい 、 と いう ところ である 。 綾子 に ついて行って 、 見張って いて も いい が 、 それ じゃ 、 ずっと 学校 を 休ま なきゃ いけない し ……。 「 全く 、 次女 って こんなに 忙しい もん な の かしら ? 」 と 夕 里子 は 呟いた 。 あ 、 そうだ 。 ── 夕 里子 は 起き上った 。 ルーム サービス の 盆 を 、 廊下 へ 出して おく んだった 。 忘れて た 。 別に 朝 だって いい のだろう が 、 思い立つ と やって しまわ なくて は 気 の 済まない 夕 里子 である 。 ベッド から そっと 出る と 、 フットライト の 明り を 頼り に 、 テーブル の 方 へ と 歩いて 行った 。 ── あった あった 。 盆 を かかえて 、 ドア の 方 へ と 歩いて 行く 。 ドア の 下 の 隙間 から 、 廊下 の 光 が 筋 の ように 洩 れて 見えて いた 。 「 よい しょ 、 と ……」 盆 を 一旦 片手 で 支えて 、 チェーン を 外し 、 ドア を 開ける 。 廊下 は 、 低く 音楽 らしい もの が 流れて いた が 、 それ 以外 、 何も 聞こえ なかった 。 却って 、 暗い 部屋 の 中 に いた 方 が 、 色々な 音 が 耳 に 入って 来る のだ 。 妙な もの だ わ 、 と 思った 。 盆 を わき へ 置いて 、 さて 、 ドア を 閉めよう と した とき だった 。 いきなり 、 隣 の ドア が 開いた と 思う と 、 「 いや ! 」 と 金切り声 を 上げて 、 女の子 が 飛び出して 来た のだ 。 夕 里子 は 目 を 丸く した 。 ── 十七 、 八 と 見える その 女の子 ── つまり 、 夕 里子 と 同じ くらい の 年齢 らしかった が ── 丸裸 だった のである 。 「 おい ! 待てよ ! 」 と 、 男 が 追いかける ように 飛び出して 来る 。 こっち は 一応 パンツ だけ は いて いる もの の 、 やはり 夕 里子 と して は 、 目 を そらし たい ところ だった 。 それ に 、 見 映え の する 体 なら ともかく 、 すっかり お腹 の 出た 中年 男 である 。 男 は 、 裸 の 女の子 の 腕 を つかんで 、 「 何 だって んだ ! どうして 逃げる んだ よ ! 」 「 話 が 違う じゃ ない の ! 」 と 、 女の子 の 方 が やり返す 。 「 何 だ と ! 三万 も 払わせ と いて 、 いや と は どういう こと だ ! 」 「 触る だけ だって 言った じゃ ない の ! 」 「 ふざける な ! それ ぐらい 分 って る はずだ ぞ ! 」 「 なめる んじゃ ない よ ! 私 、 未 成年 な んだ から ね ! 訴えて やる から ! 」 夕 里子 と して は 、 最初 は 女の子 の 方 に 味方 しよう か と 思った のだ が 、 聞いて いる 内 に 、 馬鹿らしく なって 来た 。 「── ともかく 入れよ 」 と 、 男 の 方 は 女の子 を 部屋 へ 引きずり込もう と する が 、 女の子 は 、 「 や あ よ ! 触 ん ないで よ ! 」 と 振り払う 。 「── 何 やって ん の ? 」 と 、 珠美 が 起き 出して 、 顔 を 出す 。 「 あんた は 見ちゃ だめ ! 」 と 、 夕 里子 は あわてて 言った 。 「 何 だ 、 痴話 ゲンカ か 」 と 、 珠美 が つまらな そうに 言った 。 「── 金 を 返せ ! 」 「 冗談 じゃ ない わ ! 散々 好きな こと やっと いて 、 タダ で 逃げる 気 ? 」 と 、 まだ 二 人 は やり合って いる 。 「 は は 、 面白い 」 と 、 珠美 は 呑気 に 言って 、「 いくら 払った ん だって ? 」 「 三万 だって さ 」 と 、 夕 里子 が 低い 声 で 言った 。 「 ふ ー ん 」 珠美 は 、 もみ合って いる 二 人 を 眺めて 、「 あの 体 に 三万 じゃ 高い よ 」 と 言った 。 「 馬鹿 ! 」 夕 里子 が 赤く なって 、「 さ 、 寝 ま しょ 」 と ドア を 閉めよう と した とき 、 「 どうした ん です ? 」 と 声 が した 。 見れば 、 中年 の ガードマン が 急ぎ足 で やって 来る 。 裸 の 二 人 、 あわてて 部屋 へ 戻る ── か と 思う と 、 さ に あら ず で 、 「 この 人 が 私 に 乱暴 しよう と した の ! 」 と 女の子 が 訴えれば 、 「 ただ の 遊び だ よ 」 と 、 男 の 方 は ごまかそう と する 。 いくら 何でも 、 お 金 で 買った と は 、 男 の 方 から は 言え ない のだろう 。 「 違う わ よ ! 」 と 、 女の子 は 譲ら ない 。 「── 何なら 、 あの 子 に 訊 いて よ 」 と 、 夕 里子 の 方 を 指さした 。 夕 里子 は ギョッ と した ……。 「 何 か ある と 、 一応 、 報告 し なきゃ いけない んだ 」 「 いいえ 」 夕 里子 は 首 を 振った 。 「 どうせ 目 が 覚めちゃ った から 」 ガードマン の いる 、〈 保安 センター 〉 の 中 だった 。 「 あの 二 人 、 今ごろ は また ベッド へ 戻って る かも しれ ない な 」 と 、 その ガードマン は 言って 、 ため息 を ついた 。 「 時代 も 変った よ 」 〈 北山 〉 と いう ネーム プレート を 、 夕 里子 は 目 に 止めた 。 「 北山 さん ── って いう んです か 」 「 うん 」 「 あの ── 前 、 ここ で ガードマン やって た 、 太田 って 人 、 知って ます か ? 」 「 太田 ? 」 と 、 その 北山 と いう ガードマン は 訊 き 返した 。 「 三 年 くらい 前 に 辞めた ……」 「 それ くらい です 」 「 今 は 大学 の ガードマン を やって る と か 聞いた けど 。 ── その 太田 なら 知って る よ 」 「 その 人 です 。 姉 が その 大学 に 行って て 」 「 そうかい 。 元気で やって る の か な 」 北山 は 、 嬉し そうに 言った 。 「 だ と 思い ます 。 ── その 人 から 、 姉 が 、 ここ の ホテル は 夜中 まで ルーム サービス が ある と 聞いて た んで 、 ここ へ 泊った んです 」 「 そう か 。 ── いや 、 実に いい 男 だった よ 」 北山 は 肯 いた 。 「 あんな こと で 辞め させる なんて 、 ホテル も ずいぶん ひどい こと を した もん だ ! 」 「── 何 か 、 あった んです か ? 」 夕 里子 は 訊 いた 。 「 太田 は 話さ なかった の か な 」 「 さあ 。 ── 私 は 聞いて ませ ん けど 」 「 あいつ の こと だ 。 黙って ろ と 言わ れりゃ 、 ずっと 黙って る かも しれ ん な 」 「 どんな こと だった んです か ? 」 夕 里子 は 好奇心 を かき立て られた 。 「 うん ……。 まあ 、 もう 三 年 前 の 話 だ から いい だろう 」 と 、 北山 は 言った 。 「 神 山田 タカシ って 歌手 を 知って る か ね 」 夕 里子 は 、 この 一言 で 、 完全に 目 が 覚めた ! 「 神 山田 タカシ が ……」 「 太田 は ね 、 あいつ を 殴って ノックアウト した んだ 」 北山 の 言葉 に 、 夕 里子 は 目 を 丸く した 。 「 殴った んです か ? 」 「 うん 。 しかし 、 それ も 当り前な んだ 」 北山 から 、 当時 の 事情 を 聞いて 、 夕 里子 は 奇妙な 印象 を 受けた 。 いや 、 太田 と いう ガードマン を 、 夕 里子 は 直接 知って は い ない 。 ただ 、 綾子 の 友だち 、 石原 茂子 の 恋人 だ と 聞いて いる だけ だ 。 しかし ……。 その 太田 が いる 大学 へ 、 神山 田 タカシ が やって 来る 。 そして マネージャー が 何者 か に 殺さ れた 。 これ は 偶然 かしら ? もし 、 偶然で ない と したら ……。 太田 に とって 、 神山 田 タカシ は 、 やはり 憎らしい 相手 だろう 。 その 当人 が 、 コンサート を やり に 来る 。 太田 は 、 その 、 昔 殴った 相手 を 、 ガード する 立場 な のだ 。 ── もう 三 年 も 前 の こと だ 。 今 は 何でもない の かも しれ ない 。 しかし 、 それ なら 、「 まだ 三 年 」 と いう 言い 方 も できる わけだ 。 「── そんな こと が あった んです か 」 と 、 夕 里子 は 言った 。 「 で 、 神山 田 タカシ の 方 は 、 何も ? 」 「 被害 者 の 女の子 が 、 姿 を 消し ち まった から ね 。 もし ばれて たら 、 ただ じゃ 済まなかったろう が 、 訴え も し なかった から 、 助かった わけだ 。 代り に 太田 だけ が 、 客 を 殴った と いう ので 、 クビ に なった 」 「 ひどい 話 です ね 」 「 ああ 。 あんな こと を やって た んじゃ 、 人気 が 落ち目 に なる の も 当り前だ と 思う よ 」 夕 里子 は 、 ちょっと 考えて いた が 、 「── もう 戻って いい です か ? 」 と 訊 いた 。 「 ああ 、 構わ ない よ 。 悪かった ね 」 北山 が ドア を 開けて くれる 。 「 大丈夫です 。 どうせ 妹 も 起きて る し 、 一 人 で 戻れ ます から 」 「 そうかい 。 もし 君 が 太田 に 会う こと が あったら 、 よろしく 言って くれ 」 「 はい 。 ── お やすみ なさい 」 夕 里子 は 、 エレベーター の 方 へ 歩き かけて 、 ふと 振り向いた 。 「 北山 さん ──」 「 何 だ ね ? 」 「 その とき 、 神山 田 タカシ は 一 人 だった んです か ? 」 「 その とき ……。 ああ 、 太田 が 殴った とき 、 って こと かい ? 」 「 ええ 」 「 いや ── 確か 他 に も 誰 かいた はずだ 」 北山 は 眉 を 寄せて 考え込み 、「── そうだ 。 太田 が 言って たよ 、『 他の 奴 も 殴って やり たかった 』 って ね 」 「 他の 奴 って 、 誰 の こと だった か 、 分 り ませ ん か ? 」 「 それ は 訊 か なかった ね 。 太田 なら 、 きっと 憶 え てる だろう 」 「 そう です ね ……」 ── 部屋 へ と 戻り ながら 、 夕 里子 は 考えて いた 。 神山 田 タカシ が 、 その ファン の 少女 に 手 を 出した とき 、 もし 一緒に あの マネージャー 、 黒木 も いた と したら ? ただ 何も し ない で 見て いた だろう か ? いや ── たぶん 神 山田 タカシ と 一緒に なって 少女 に 乱暴 した だろう 。 太田 が 、 今 でも 神山 田 タカシ を 恨んで いたら 、 一緒に いた 「 誰 か 」 を も 恨んで 当然の こと だ 。 しかし ── 太田 が あの 黒木 と いう 男 を 殺した 、 と いう 点 に なる と 、 どうも 無理に 思えて 来る 。 その 男 の せい で 、 クビ に なった と いう だけ で 、 殺したり する もの だろう か ? しかも 、 太田 は 今 、 ちゃんと 仕事 を 持って いる のだ 。 して みる と 、 太田 と 神山 田 タカシ の 関係 は 、 ただ 、 偶然 の もの な の かも しれ ない ……。 エレベーター を 出て 、 夕 里子 は 足 を 止めた 。 目の前 に 、 さっき の 女の子 が 立って いた のである 。 もっとも 、 今度 は ちゃんと 服 を 着て いた 。 「 あら 、 あんた 」 と 、 夕 里子 を 見て 、「 さっき は ごめん ね 、 びっくり さ せて 」 「 いいえ 」 と 夕 里子 は 言った 。 あの 程度 の こと で びっくり する 夕 里子 で は ない 。 何しろ 殺人 犯 と 対決 した こと だって ある のだ から 。 「 もう 用 は 済んだ の ? 」 と 、 夕 里子 は 訊 いた 。 「 うん 。 ── しつこい わりに ケチ で ね 。 あれ だ から 、 中年 って いや よ 」 その 女の子 は 、 エレベーター に 乗って 、「 じゃ 、 バイバイ 」 と 手 を 振った 。 「 どうも ……」 あの アッケラカン と した 様子 ! とても 夕 里子 に は 真似 でき ない 。 「 遅れて る の か なあ 」 と 、 呟いて 、 夕 里子 は 首 を 振った 。 部屋 の 方 へ 歩いて 行く と 、 ヒョイ と ドア が 開いて 、 夕 里子 は ギョッ と した 。 さっき の 中年 男 が 、 真 赤 な 顔 で 出て 来た 。 こちら は 相 変ら ず パンツ 一 つ 。 「── 何 だ 、 さっき の 子 か 。 見 なかった か ? 」 「 一緒に いた 子 です か ? 」 「 そう だ 」 「 今 エレベーター で 降りて 行き ました よ 」 「 畜生 ! 」 と 、 男 は 歯ぎしり せ ん ばかり 。 「 どうした ん です か ? 」 「 機嫌 が 直った と か 言い おって 、 風呂 へ 入る と いう から 、 先 に 入って 待って たら 、 逃げ ち まった ! 詐欺 だ ! 」 夕 里子 は 、 思わず 笑い 出し そうに なる の を こらえた 。 「 お 気の毒でした 。 ── お やすみ なさい 」 と 、 隣 の 自分 の 部屋 の ドア を 叩こう と する と 、 「 おい 、 君 、 どう だ 」 と 、 男 が 夕 里子 の 腕 を 、 やにわに つかむ 。 「 離して 下さい 」 「 なかなか 可愛い と 思って た んだ よ 、 さっき 見て 。 ── 三十 分 付き合って くれたら 、 二万 出す 。 どう だ ? 」 夕 里子 は 、 男 の 股 間 を 膝 で けり 上げた 。 ドア を ノック する と 、 すぐに 、 「 お 帰り 」 と 、 珠美 が 出て 来る 。 「── あの 人 、 何 やって ん の ? 」 と 、 廊下 に 引っくり返って 呻いて いる 男 を 見て 、 目 を 丸く する 。 「 さあ 。 発作 でも 起こした んでしょ 」 と 、 夕 里子 は 言って 、「 もう 寝よう 。 朝 に なっちゃ うよ 」 と 、 部屋 に 入って ドア を 閉めた ……。 ホテル の 朝食 コーナー 。 ── 朝 から バイキング スタイル で 、 ホットケーキ だの 、 ハム 、 ベーコン 、 ポテト と いった もの が 食べ られる 。


三 姉妹 探偵 団 (2) Chapter 06 (1) みっ|しまい|たんてい|だん|chapter

6  廊下 武勇 伝   結構 夜 遅く ホテル に チェック ・ イン する 客 が いる んだ 、 と いう の は 、 夕 里子 に とって 、 新 発見 だった 。 ろうか|ぶゆう|つたい|けっこう|よ|おそく|ほてる||ちぇっく|いん||きゃく||||||||ゆう|さとご|||しん|はっけん| 夕 里子 は 見かけ に よら ず (? ゆう|さとご||みかけ||| Evening evening without looking (? ) 神経質な ところ が あって ── と いう より 、 母親 代り に 、 みんな を 起こさ なくて は いけない から だ が 、 ちょっと した 物音 で 、 目 を 覚ます こと が あった 。 しんけいしつな|||||||ははおや|かわり||||おこさ|||||||||ものおと||め||さます||| 廊下 を 通って 行く 話し声 。 ろうか||かよって|いく|はなしごえ どこ か の 部屋 から 響く 笑い声 。 |||へや||ひびく|わらいごえ バス を 使う 音 ……。 ばす||つかう|おと もう 夜中 の 二 時 を 過ぎて いる のに 、 一向に 音 は 途切れ ない のである 。 |よなか||ふた|じ||すぎて|||いっこうに|おと||とぎれ|| ホテル の 部屋 と いう の は 、 カーテン を 引いて 、 明り を 消す と 、 本当に 真 暗 に なって しまう 。 ほてる||へや|||||かーてん||ひいて|あかり||けす||ほんとうに|まこと|あん||| 綾子 の 静かな 寝息 と 、 夜食 に お茶 漬 を とって 、 満足の 珠美 の 軽い いびき が 聞こえる 。 あやこ||しずかな|ねいき||やしょく||おちゃ|し|||まんぞくの|たまみ||かるい|||きこえる さて 、 寝 なきゃ 。 |ね| ── 明日 は どうした もの か 。 あした|||| 珠美 は ともかく 、 学校 に やら なくて は なら ない 。 たまみ|||がっこう|||||| ── 夕 里子 と して は 、 ドア の 取付 も ある し 、 警察 の 捜査 も ある だろう から 、 家 に い なくて は なら ない 。 ゆう|さとご||||どあ||とりつ||||けいさつ||そうさ|||||いえ|||||| ── For Yuriko, there are door installations and police investigations, so you have to stay home. 学校 を 休む の は 仕方ない ( と いう より 、 嬉しい ! がっこう||やすむ|||しかたない||||うれしい ) と して も 、 問題 は 綾子 の こと であった 。 |||もんだい||あやこ||| 文化 祭 まで あと 三 日 ── いや 二 日 しか ない 。 ぶんか|さい|||みっ|ひ||ふた|ひ|| 幹事 と して は 、 休む わけに も いく まい 。 かんじ||||やすむ|||| しかし 、 爆弾 を 仕掛けた 犯人 が 、 また 綾子 を 狙う こと も 、 大いに 考え られる し 、 綾子 の 方 は 、 全く 無 警戒 な のだ 。 |ばくだん||しかけた|はんにん|||あやこ||ねらう|||おおいに|かんがえ|||あやこ||かた||まったく|む|けいかい|| However, it can be thought that the culprit who set the bomb aim for Ayako again, Ayako is completely alarmed. いつでも 殺して 下さい 、 と いう ところ である 。 |ころして|ください|||| 綾子 に ついて行って 、 見張って いて も いい が 、 それ じゃ 、 ずっと 学校 を 休ま なきゃ いけない し ……。 あやこ||ついていって|みはって||||||||がっこう||やすま||| You can follow Ayako and keep an eye on it, but then you have to take a rest from school. 「 全く 、 次女 って こんなに 忙しい もん な の かしら ? まったく|じじょ|||いそがしい|||| 」   と 夕 里子 は 呟いた 。 |ゆう|さとご||つぶやいた あ 、 そうだ 。 |そう だ ── 夕 里子 は 起き上った 。 ゆう|さとご||おきあがった ルーム サービス の 盆 を 、 廊下 へ 出して おく んだった 。 るーむ|さーびす||ぼん||ろうか||だして|| 忘れて た 。 わすれて| 別に 朝 だって いい のだろう が 、 思い立つ と やって しまわ なくて は 気 の 済まない 夕 里子 である 。 べつに|あさ|||||おもいたつ||||||き||すまない|ゆう|さとご| Even if it's okay in the morning, I'm Yukiko who can't help but think about it. ベッド から そっと 出る と 、 フットライト の 明り を 頼り に 、 テーブル の 方 へ と 歩いて 行った 。 べっど|||でる||||あかり||たより||てーぶる||かた|||あるいて|おこなった ── あった あった 。 盆 を かかえて 、 ドア の 方 へ と 歩いて 行く 。 ぼん|||どあ||かた|||あるいて|いく ドア の 下 の 隙間 から 、 廊下 の 光 が 筋 の ように 洩 れて 見えて いた 。 どあ||した||すきま||ろうか||ひかり||すじ|||えい||みえて| 「 よい しょ 、 と ……」   盆 を 一旦 片手 で 支えて 、 チェーン を 外し 、 ドア を 開ける 。 |||ぼん||いったん|かたて||ささえて|ちぇーん||はずし|どあ||あける 廊下 は 、 低く 音楽 らしい もの が 流れて いた が 、 それ 以外 、 何も 聞こえ なかった 。 ろうか||ひくく|おんがく||||ながれて||||いがい|なにも|きこえ| 却って 、 暗い 部屋 の 中 に いた 方 が 、 色々な 音 が 耳 に 入って 来る のだ 。 かえって|くらい|へや||なか|||かた||いろいろな|おと||みみ||はいって|くる| 妙な もの だ わ 、 と 思った 。 みょうな|||||おもった 盆 を わき へ 置いて 、 さて 、 ドア を 閉めよう と した とき だった 。 ぼん||||おいて||どあ||しめよう|||| It was when I tried to close the door, leaving the tray behind. いきなり 、 隣 の ドア が 開いた と 思う と 、 「 いや ! |となり||どあ||あいた||おもう|| 」   と 金切り声 を 上げて 、 女の子 が 飛び出して 来た のだ 。 |かなきりごえ||あげて|おんなのこ||とびだして|きた| 夕 里子 は 目 を 丸く した 。 ゆう|さとご||め||まるく| ── 十七 、 八 と 見える その 女の子 ── つまり 、 夕 里子 と 同じ くらい の 年齢 らしかった が ── 丸裸 だった のである 。 じゅうしち|やっ||みえる||おんなのこ||ゆう|さとご||おなじ|||ねんれい|||まるはだか|| 「 おい ! 待てよ ! まてよ 」   と 、 男 が 追いかける ように 飛び出して 来る 。 |おとこ||おいかける||とびだして|くる "Man jumps out as if to chasing. こっち は 一応 パンツ だけ は いて いる もの の 、 やはり 夕 里子 と して は 、 目 を そらし たい ところ だった 。 ||いちおう|ぱんつ||||||||ゆう|さとご||||め||||| それ に 、 見 映え の する 体 なら ともかく 、 すっかり お腹 の 出た 中年 男 である 。 ||み|はえ|||からだ||||おなか||でた|ちゅうねん|おとこ| Besides that, it is a middle-aged man who is completely hungry, no matter what the body looks like. 男 は 、 裸 の 女の子 の 腕 を つかんで 、 「 何 だって んだ ! おとこ||はだか||おんなのこ||うで|||なん|| どうして 逃げる んだ よ ! |にげる|| 」 「 話 が 違う じゃ ない の ! はなし||ちがう||| "" The story is different! 」   と 、 女の子 の 方 が やり返す 。 |おんなのこ||かた||やりかえす 「 何 だ と ! なん|| 三万 も 払わせ と いて 、 いや と は どういう こと だ ! さんまん||はらわせ|||||||| 」 「 触る だけ だって 言った じゃ ない の ! さわる|||いった||| "You said you just touched! 」 「 ふざける な ! それ ぐらい 分 って る はずだ ぞ ! ||ぶん|||| 」 「 なめる んじゃ ない よ ! "I'm not licking! 私 、 未 成年 な んだ から ね ! わたくし|み|せいねん|||| 訴えて やる から ! うったえて|| 」   夕 里子 と して は 、 最初 は 女の子 の 方 に 味方 しよう か と 思った のだ が 、 聞いて いる 内 に 、 馬鹿らしく なって 来た 。 ゆう|さとご||||さいしょ||おんなのこ||かた||みかた||||おもった|||きいて||うち||ばからしく||きた "As for Yuriko, at first I thought about trying to lend it to girls, but as I heard it came to be ridiculous. 「── ともかく 入れよ 」   と 、 男 の 方 は 女の子 を 部屋 へ 引きずり込もう と する が 、 女の子 は 、 「 や あ よ ! |いれよ||おとこ||かた||おんなのこ||へや||ひきずりこもう||||おんなのこ|||| "─ ─ Anyway put it in", the man tries to drag the girl into the room, but the girl said, "Oh yeah! 触 ん ないで よ ! さわ||| 」   と 振り払う 。 |ふりはらう 「── 何 やって ん の ? なん||| 」   と 、 珠美 が 起き 出して 、 顔 を 出す 。 |たまみ||おき|だして|かお||だす 「 あんた は 見ちゃ だめ ! ||みちゃ| 」   と 、 夕 里子 は あわてて 言った 。 |ゆう|さとご|||いった 「 何 だ 、 痴話 ゲンカ か 」   と 、 珠美 が つまらな そうに 言った 。 なん||ちわ|げんか|||たまみ|||そう に|いった "What, it is a mischievous genka?", Said Ms. Mayumi to be boring. 「── 金 を 返せ ! きむ||かえせ 」 「 冗談 じゃ ない わ ! じょうだん||| 散々 好きな こと やっと いて 、 タダ で 逃げる 気 ? さんざん|すきな||||ただ||にげる|き 」   と 、 まだ 二 人 は やり合って いる 。 ||ふた|じん||やりあって| 「 は は 、 面白い 」   と 、 珠美 は 呑気 に 言って 、「 いくら 払った ん だって ? ||おもしろい||たまみ||のんき||いって||はらった|| 」 「 三万 だって さ 」   と 、 夕 里子 が 低い 声 で 言った 。 さんまん||||ゆう|さとご||ひくい|こえ||いった 「 ふ ー ん 」   珠美 は 、 もみ合って いる 二 人 を 眺めて 、「 あの 体 に 三万 じゃ 高い よ 」   と 言った 。 |-||たまみ||もみあって||ふた|じん||ながめて||からだ||さんまん||たかい|||いった 「 馬鹿 ! ばか 」   夕 里子 が 赤く なって 、「 さ 、 寝 ま しょ 」   と ドア を 閉めよう と した とき 、 「 どうした ん です ? ゆう|さとご||あかく|||ね||||どあ||しめよう|||||| 」   と 声 が した 。 |こえ|| 見れば 、 中年 の ガードマン が 急ぎ足 で やって 来る 。 みれば|ちゅうねん||がーどまん||いそぎあし|||くる 裸 の 二 人 、 あわてて 部屋 へ 戻る ── か と 思う と 、 さ に あら ず で 、 「 この 人 が 私 に 乱暴 しよう と した の ! はだか||ふた|じん||へや||もどる|||おもう||||||||じん||わたくし||らんぼう|||| Two people naked, in a hurry to return to the room ─ ─ ─ ─ ___ ___ ___ ___ ___ 0 」   と 女の子 が 訴えれば 、 「 ただ の 遊び だ よ 」   と 、 男 の 方 は ごまかそう と する 。 |おんなのこ||うったえれば|||あそび||||おとこ||かた|||| "If the girl sued," The man is just playing, "the man tries to cheat. いくら 何でも 、 お 金 で 買った と は 、 男 の 方 から は 言え ない のだろう 。 |なんでも||きむ||かった|||おとこ||かた|||いえ|| 「 違う わ よ ! ちがう|| 」   と 、 女の子 は 譲ら ない 。 |おんなのこ||ゆずら| 「── 何なら 、 あの 子 に 訊 いて よ 」   と 、 夕 里子 の 方 を 指さした 。 なんなら||こ||じん||||ゆう|さとご||かた||ゆびさした 夕 里子 は ギョッ と した ……。 ゆう|さとご|||| 「 何 か ある と 、 一応 、 報告 し なきゃ いけない んだ 」 「 いいえ 」   夕 里子 は 首 を 振った 。 なん||||いちおう|ほうこく||||||ゆう|さとご||くび||ふった 「 どうせ 目 が 覚めちゃ った から 」   ガードマン の いる 、〈 保安 センター 〉 の 中 だった 。 |め||さめちゃ|||がーどまん|||ほあん|せんたー||なか| 「 あの 二 人 、 今ごろ は また ベッド へ 戻って る かも しれ ない な 」   と 、 その ガードマン は 言って 、 ため息 を ついた 。 |ふた|じん|いまごろ|||べっど||もどって||||||||がーどまん||いって|ためいき|| 「 時代 も 変った よ 」 〈 北山 〉 と いう ネーム プレート を 、 夕 里子 は 目 に 止めた 。 じだい||かわった||きたやま|||ねーむ|ぷれーと||ゆう|さとご||め||とどめた 「 北山 さん ── って いう んです か 」 「 うん 」 「 あの ── 前 、 ここ で ガードマン やって た 、 太田 って 人 、 知って ます か ? きたやま||||||||ぜん|||がーどまん|||おおた||じん|しって|| 」 「 太田 ? おおた 」   と 、 その 北山 と いう ガードマン は 訊 き 返した 。 ||きたやま|||がーどまん||じん||かえした 「 三 年 くらい 前 に 辞めた ……」 「 それ くらい です 」 「 今 は 大学 の ガードマン を やって る と か 聞いた けど 。 みっ|とし||ぜん||やめた||||いま||だいがく||がーどまん||||||きいた| ── その 太田 なら 知って る よ 」 「 その 人 です 。 |おおた||しって||||じん| 姉 が その 大学 に 行って て 」 「 そうかい 。 あね|||だいがく||おこなって|| 元気で やって る の か な 」   北山 は 、 嬉し そうに 言った 。 げんきで||||||きたやま||うれし|そう に|いった 「 だ と 思い ます 。 ||おもい| ── その 人 から 、 姉 が 、 ここ の ホテル は 夜中 まで ルーム サービス が ある と 聞いて た んで 、 ここ へ 泊った んです 」 「 そう か 。 |じん||あね||||ほてる||よなか||るーむ|さーびす||||きいて|||||とまった||| ── いや 、 実に いい 男 だった よ 」   北山 は 肯 いた 。 |じつに||おとこ|||きたやま||こう| 「 あんな こと で 辞め させる なんて 、 ホテル も ずいぶん ひどい こと を した もん だ ! |||やめ|さ せる||ほてる|||||||| 」 「── 何 か 、 あった んです か ? なん|||| 」   夕 里子 は 訊 いた 。 ゆう|さとご||じん| 「 太田 は 話さ なかった の か な 」 「 さあ 。 おおた||はなさ||||| ── 私 は 聞いて ませ ん けど 」 「 あいつ の こと だ 。 わたくし||きいて||||||| 黙って ろ と 言わ れりゃ 、 ずっと 黙って る かも しれ ん な 」 「 どんな こと だった んです か ? だまって|||いわ|||だまって|||||||||| 」   夕 里子 は 好奇心 を かき立て られた 。 ゆう|さとご||こうきしん||かきたて| 「 うん ……。 まあ 、 もう 三 年 前 の 話 だ から いい だろう 」   と 、 北山 は 言った 。 ||みっ|とし|ぜん||はなし||||||きたやま||いった 「 神 山田 タカシ って 歌手 を 知って る か ね 」   夕 里子 は 、 この 一言 で 、 完全に 目 が 覚めた ! かみ|やまだ|たかし||かしゅ||しって||||ゆう|さとご|||いちげん||かんぜんに|め||さめた "Do you know Takashi Kamiyada Takashi?" Eric Riko woke up completely in this single word! 「 神 山田 タカシ が ……」 「 太田 は ね 、 あいつ を 殴って ノックアウト した んだ 」   北山 の 言葉 に 、 夕 里子 は 目 を 丸く した 。 かみ|やまだ|たかし||おおた|||||なぐって|のっくあうと|||きたやま||ことば||ゆう|さとご||め||まるく| 「 殴った んです か ? なぐった|| 」 「 うん 。 しかし 、 それ も 当り前な んだ 」   北山 から 、 当時 の 事情 を 聞いて 、 夕 里子 は 奇妙な 印象 を 受けた 。 |||あたりまえな||きたやま||とうじ||じじょう||きいて|ゆう|さとご||きみょうな|いんしょう||うけた いや 、 太田 と いう ガードマン を 、 夕 里子 は 直接 知って は い ない 。 |おおた|||がーどまん||ゆう|さとご||ちょくせつ|しって||| ただ 、 綾子 の 友だち 、 石原 茂子 の 恋人 だ と 聞いて いる だけ だ 。 |あやこ||ともだち|いしはら|しげこ||こいびと|||きいて||| しかし ……。 その 太田 が いる 大学 へ 、 神山 田 タカシ が やって 来る 。 |おおた|||だいがく||かみやま|た|たかし|||くる そして マネージャー が 何者 か に 殺さ れた 。 |まねーじゃー||なにもの|||ころさ| And someone was killed by a manager. これ は 偶然 かしら ? ||ぐうぜん| もし 、 偶然で ない と したら ……。 |ぐうぜんで||| 太田 に とって 、 神山 田 タカシ は 、 やはり 憎らしい 相手 だろう 。 おおた|||かみやま|た|たかし|||にくらしい|あいて| その 当人 が 、 コンサート を やり に 来る 。 |とうにん||こんさーと||||くる 太田 は 、 その 、 昔 殴った 相手 を 、 ガード する 立場 な のだ 。 おおた|||むかし|なぐった|あいて||がーど||たちば|| ── もう 三 年 も 前 の こと だ 。 |みっ|とし||ぜん||| 今 は 何でもない の かも しれ ない 。 いま||なんでもない|||| It may not be what it is now. しかし 、 それ なら 、「 まだ 三 年 」 と いう 言い 方 も できる わけだ 。 ||||みっ|とし|||いい|かた||| 「── そんな こと が あった んです か 」   と 、 夕 里子 は 言った 。 |||||||ゆう|さとご||いった 「 で 、 神山 田 タカシ の 方 は 、 何も ? |かみやま|た|たかし||かた||なにも 」 「 被害 者 の 女の子 が 、 姿 を 消し ち まった から ね 。 ひがい|もの||おんなのこ||すがた||けし|||| もし ばれて たら 、 ただ じゃ 済まなかったろう が 、 訴え も し なかった から 、 助かった わけだ 。 |||||すまなかったろう||うったえ|||||たすかった| 代り に 太田 だけ が 、 客 を 殴った と いう ので 、 クビ に なった 」 「 ひどい 話 です ね 」 「 ああ 。 かわり||おおた|||きゃく||なぐった||||くび||||はなし||| あんな こと を やって た んじゃ 、 人気 が 落ち目 に なる の も 当り前だ と 思う よ 」   夕 里子 は 、 ちょっと 考えて いた が 、 「── もう 戻って いい です か ? ||||||にんき||おちめ|||||あたりまえだ||おもう||ゆう|さとご|||かんがえて||||もどって||| 」   と 訊 いた 。 |じん| 「 ああ 、 構わ ない よ 。 |かまわ|| 悪かった ね 」   北山 が ドア を 開けて くれる 。 わるかった||きたやま||どあ||あけて| 「 大丈夫です 。 だいじょうぶです どうせ 妹 も 起きて る し 、 一 人 で 戻れ ます から 」 「 そうかい 。 |いもうと||おきて|||ひと|じん||もどれ||| もし 君 が 太田 に 会う こと が あったら 、 よろしく 言って くれ 」 「 はい 。 |きみ||おおた||あう|||||いって|| If you ever meet Ota, please say hello. "" Yes. ── お やすみ なさい 」   夕 里子 は 、 エレベーター の 方 へ 歩き かけて 、 ふと 振り向いた 。 |||ゆう|さとご||えれべーたー||かた||あるき|||ふりむいた 「 北山 さん ──」 「 何 だ ね ? きたやま||なん|| 」 「 その とき 、 神山 田 タカシ は 一 人 だった んです か ? ||かみやま|た|たかし||ひと|じん||| 」 「 その とき ……。 ああ 、 太田 が 殴った とき 、 って こと かい ? |おおた||なぐった|||| 」 「 ええ 」 「 いや ── 確か 他 に も 誰 かいた はずだ 」   北山 は 眉 を 寄せて 考え込み 、「── そうだ 。 ||たしか|た|||だれ|||きたやま||まゆ||よせて|かんがえこみ|そう だ "Yeah" "No, well - surely there was anyone else." Kitayama thought with eyebrows and thought, "─ ─ that's right. 太田 が 言って たよ 、『 他の 奴 も 殴って やり たかった 』 って ね 」 「 他の 奴 って 、 誰 の こと だった か 、 分 り ませ ん か ? おおた||いって||たの|やつ||なぐって|||||たの|やつ||だれ|||||ぶん|||| 」 「 それ は 訊 か なかった ね 。 ||じん||| 太田 なら 、 きっと 憶 え てる だろう 」 「 そう です ね ……」  ── 部屋 へ と 戻り ながら 、 夕 里子 は 考えて いた 。 おおた|||おく|||||||へや|||もどり||ゆう|さとご||かんがえて| 神山 田 タカシ が 、 その ファン の 少女 に 手 を 出した とき 、 もし 一緒に あの マネージャー 、 黒木 も いた と したら ? かみやま|た|たかし|||ふぁん||しょうじょ||て||だした|||いっしょに||まねーじゃー|くろき|||| ただ 何も し ない で 見て いた だろう か ? |なにも||||みて||| いや ── たぶん 神 山田 タカシ と 一緒に なって 少女 に 乱暴 した だろう 。 ||かみ|やまだ|たかし||いっしょに||しょうじょ||らんぼう|| 太田 が 、 今 でも 神山 田 タカシ を 恨んで いたら 、 一緒に いた 「 誰 か 」 を も 恨んで 当然の こと だ 。 おおた||いま||かみやま|た|たかし||うらんで||いっしょに||だれ||||うらんで|とうぜんの|| しかし ── 太田 が あの 黒木 と いう 男 を 殺した 、 と いう 点 に なる と 、 どうも 無理に 思えて 来る 。 |おおた|||くろき|||おとこ||ころした|||てん|||||むりに|おもえて|くる その 男 の せい で 、 クビ に なった と いう だけ で 、 殺したり する もの だろう か ? |おとこ||||くび|||||||ころしたり|||| Is it due to the man killing just by being fired? しかも 、 太田 は 今 、 ちゃんと 仕事 を 持って いる のだ 。 |おおた||いま||しごと||もって|| Besides, Ota has a job properly now. して みる と 、 太田 と 神山 田 タカシ の 関係 は 、 ただ 、 偶然 の もの な の かも しれ ない ……。 |||おおた||かみやま|た|たかし||かんけい|||ぐうぜん||||||| エレベーター を 出て 、 夕 里子 は 足 を 止めた 。 えれべーたー||でて|ゆう|さとご||あし||とどめた 目の前 に 、 さっき の 女の子 が 立って いた のである 。 めのまえ||||おんなのこ||たって|| もっとも 、 今度 は ちゃんと 服 を 着て いた 。 |こんど|||ふく||きて| 「 あら 、 あんた 」   と 、 夕 里子 を 見て 、「 さっき は ごめん ね 、 びっくり さ せて 」 「 いいえ 」   と 夕 里子 は 言った 。 |||ゆう|さとご||みて||||||||||ゆう|さとご||いった あの 程度 の こと で びっくり する 夕 里子 で は ない 。 |ていど||||||ゆう|さとご||| It is not Yuriko who is surprised at that extent. 何しろ 殺人 犯 と 対決 した こと だって ある のだ から 。 なにしろ|さつじん|はん||たいけつ|||||| 「 もう 用 は 済んだ の ? |よう||すんだ| 」   と 、 夕 里子 は 訊 いた 。 |ゆう|さとご||じん| 「 うん 。 ── しつこい わりに ケチ で ね 。 あれ だ から 、 中年 って いや よ 」   その 女の子 は 、 エレベーター に 乗って 、「 じゃ 、 バイバイ 」   と 手 を 振った 。 |||ちゅうねん|||||おんなのこ||えれべーたー||のって||||て||ふった 「 どうも ……」   あの アッケラカン と した 様子 ! |||||ようす とても 夕 里子 に は 真似 でき ない 。 |ゆう|さとご|||まね|| 「 遅れて る の か なあ 」   と 、 呟いて 、 夕 里子 は 首 を 振った 。 おくれて||||||つぶやいて|ゆう|さとご||くび||ふった 部屋 の 方 へ 歩いて 行く と 、 ヒョイ と ドア が 開いて 、 夕 里子 は ギョッ と した 。 へや||かた||あるいて|いく||||どあ||あいて|ゆう|さとご|||| さっき の 中年 男 が 、 真 赤 な 顔 で 出て 来た 。 ||ちゅうねん|おとこ||まこと|あか||かお||でて|きた こちら は 相 変ら ず パンツ 一 つ 。 ||そう|かわら||ぱんつ|ひと| 「── 何 だ 、 さっき の 子 か 。 なん||||こ| 見 なかった か ? み|| 」 「 一緒に いた 子 です か ? いっしょに||こ|| 」 「 そう だ 」 「 今 エレベーター で 降りて 行き ました よ 」 「 畜生 ! ||いま|えれべーたー||おりて|いき|||ちくしょう 」   と 、 男 は 歯ぎしり せ ん ばかり 。 |おとこ||はぎしり||| 「 どうした ん です か ? 」 「 機嫌 が 直った と か 言い おって 、 風呂 へ 入る と いう から 、 先 に 入って 待って たら 、 逃げ ち まった ! きげん||なおった|||いい||ふろ||はいる||||さき||はいって|まって||にげ|| 詐欺 だ ! さぎ| 」   夕 里子 は 、 思わず 笑い 出し そうに なる の を こらえた 。 ゆう|さとご||おもわず|わらい|だし|そう に|||| 「 お 気の毒でした 。 |きのどくでした ── お やすみ なさい 」   と 、 隣 の 自分 の 部屋 の ドア を 叩こう と する と 、 「 おい 、 君 、 どう だ 」   と 、 男 が 夕 里子 の 腕 を 、 やにわに つかむ 。 ||||となり||じぶん||へや||どあ||たたこう|||||きみ||||おとこ||ゆう|さとご||うで||| 「 離して 下さい 」 「 なかなか 可愛い と 思って た んだ よ 、 さっき 見て 。 はなして|ください||かわいい||おもって|||||みて ── 三十 分 付き合って くれたら 、 二万 出す 。 さんじゅう|ぶん|つきあって||にまん|だす どう だ ? 」   夕 里子 は 、 男 の 股 間 を 膝 で けり 上げた 。 ゆう|さとご||おとこ||また|あいだ||ひざ|||あげた Yuriko raised his crotch with a knee. ドア を ノック する と 、 すぐに 、 「 お 帰り 」   と 、 珠美 が 出て 来る 。 どあ|||||||かえり||たまみ||でて|くる 「── あの 人 、 何 やって ん の ? |じん|なん||| 」   と 、 廊下 に 引っくり返って 呻いて いる 男 を 見て 、 目 を 丸く する 。 |ろうか||ひっくりかえって|うめいて||おとこ||みて|め||まるく| 「 さあ 。 発作 でも 起こした んでしょ 」   と 、 夕 里子 は 言って 、「 もう 寝よう 。 ほっさ||おこした|||ゆう|さとご||いって||ねよう 朝 に なっちゃ うよ 」   と 、 部屋 に 入って ドア を 閉めた ……。 あさ|||||へや||はいって|どあ||しめた ホテル の 朝食 コーナー 。 ほてる||ちょうしょく|こーなー ── 朝 から バイキング スタイル で 、 ホットケーキ だの 、 ハム 、 ベーコン 、 ポテト と いった もの が 食べ られる 。 あさ||ばいきんぐ|すたいる||||はむ|べーこん|ぽてと|||||たべ|