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悪人 (Villain) (1st Book), 第一章 彼女は誰に会いたかったか?7

第一章 彼女は誰に会いたかったか?7

警察署 で の 身元 確認 を 終えた 寺内 から 、 天神 営業所 へ 連絡 が 入った の は 、 午後 三時 を 回った ころ だった 。

寺内 を 送り出した あと 、 不安な 気持ち で その 帰り を 待って いた 営業所員 たち は 、 沙里 を 中心 に 応接室 で テレビ を 囲み 、 事件 を 伝える 番組 を 探して 、 忙しく チャンネル を 変えて いた 。

寺内 から の 電話 を 受けた 社員 の 声 が 響く と 、 真っ先 に 駆けつけた の は 沙里 だった 。

その 後ろ姿 を 目 で 追い ながら 、 眞子 は なぜ かしら 、「 ああ 、 やっぱり 佳乃 ちゃん 殺された んだ ......」 と 直感 した 。

その 直後 、 受話器 を 受け取った 沙里 が 、「 えー ! 」 と 叫ぶ 悲鳴 が 響いた 。

テレビ の 前 に いた 数 人 から 、 眞子 は 一斉に 目 を 向けられ 、 思わず 、「 ほら 、 やっぱり ......」 と 消え 入る ような 声 を こぼした 。 寺内 から の 報告 を 受けた 沙里 は 、 受話器 を 置く と 感電 でも した ように 喋り 始めた 。

伝えなければ ならない こと が たくさん あって 、 その 言葉 が 一斉に 口 から こぼれ出して いる ようだった 。

やはり 被害者 が 佳乃 だった こと 、 首 を 絞められて いた こと 、 寺内 が 戻る まで ここ で 待機 する ように 言わ れた こと など 、 まるで 喘ぐ ように 伝える 沙里 を 見て いる うち に 、 眞子 の からだ は ガタガタ と 音 を 立てる ほど 震え 出した 。 横 に いた 誰 か が 、「 大丈夫 ? 」 と 肩 を 抱いて くれた の は 分かった が 、 それ が 誰 な の か 見上げる こと も でき なかった 。

いつも は がらんと した 印象 の 昼 の 営業所 が 、 急に 窮屈に 感じられた 。 息 を 吸おう と して も 、 もう 他の 誰 か に 吸われて 、 いくら 吸って も 空気 が からだ に 入ってこない 。 目の前 で 沙 里 が 喋り 続けて いる のだ が 、 その 声 が 聞こえ ない 。 みんな が 口々に 何 か 言って いる のだ が 、 まるで みんな 溺れて いる ように 、 その 口 が パクパク と 動いて いる だけ に しか 見え ない 。 誰 か 泣いて ! と 眞子 は 心 の 中 で 叫んだ 。 今 ここ で 誰 か が 泣いて くれたら 、 自分 も すぐに 泣き 出せる 。 泣き 出せれば 、 きっと 呼吸 も 楽に できる 。 「 これ から 警察 の 人 が 来るって ! 昨日 、 佳乃 ちゃん と どこ で どう 別れた か 、 詳しく 説明 する ようにって ! 」 まるで 脅迫 する ような 沙里 の 声 に 、 眞子 は 辛うじて 頷いた 。 自分 でも 気づかぬ うち に 椅子 から 立ち上がって いた 。 膝 が ガクガク と 震えて いる 。 足元 が 遠かった 。 まるで 自分 が とても 高い 場所 に 立たされて いる ようだった 。 元々 、 佳乃 と 沙里 は 張り合って いる ような ところ が あった と 眞子 は 思う 。 もちろん 直接 、 何 か を 言い合う ような こと は なかった が 、 自分 を 仲介役 に して 相手 を 中傷して いた のだ と 思う 。 たとえば 佳乃 は 、 自分 が 出会い系サイト など を 利用 して 、 ときどき その 相手 と デート を して いる こと を 眞子 に は 自慢げ に 教える くせ に 、「 この 話 、 絶対 に 沙里 ちゃん に は 内緒 やけん 」 と 、 沙里 に 知られる こと を 嫌がった 。 眞子 と して は 、 別に そういう 相手 と たまに 会って 食事 を する くらい 、 隠す こと も ない んじゃ ない か と 思う のだ が 、 佳乃 に とって は 、 楽しい けれども 恥ずかしい こと で も ある ようで 、 そういう 弱み を 沙里 に 握られたくなかった のだ と 思う 。 「 フェアリー 博多 」 に 入居 した ばかりの ころ 、「 佳乃 ちゃんって 久留米 が 実家 な ん やろ ? 苗字 が 石橋って こと は 、 もしかして ブリヂストン の 社長 と 親戚 ? 」 と 、 沙里 が 冗談半分 で 訊いた こと が あった 。 その とき すでに 、 眞子 は 佳乃 の 実家 が 床屋 だ と 知っていた ので 、 当然 否定 する だろう と 思って いた のだ が 、「 え ? うち ? 遠い 親戚っちゃ ん ね 」 と しれっと 答えた のだ 。 「 うそ ー ! 」 もちろん 沙里 は 悲鳴 の ような 声 を 上げた 。 その 声 に 逆に 驚いて 、「 で 、 でも 、 本当に 、 遠い 遠い 親戚っちゃ けん 」 と 佳乃 は 慌てて 付け加えた 。 沙里 が いなくなる と 、「 うち が 床屋って こと 、 誰 に も 言わん どって よ 」 と 佳乃 に 言われた 。 一瞬 、 何 か 言い返そう か と も 思った のだ が 、 そこ に あった 佳乃 の 顔 が あまりに 凶暴で 、 せっかく できた 友達 を 失う こと も 怖く 、「 うん 、 分かった 」 と 眞子 は 小さく 頷いた 。

なんで 佳乃 が そんな 嘘 を つく の か 分からなかった 。

せっかく 三 人 仲良く なれた のに 、 どうして そんな 嘘 を つく の か 不思議で 仕方なかった 。 詳しい 人数 まで は 知らない が 、 佳乃 に は 少なくとも 常時 四 、 五 人 の メル友 が いた 。

ときどき 沙里 が いない とき など に 、 佳乃 は それら 男たち から の メール を 眞子 に 見せた 。 「 ねぇ 、 超キモい やろ 」 など と 言い ながら 見せて くれる メール に は 、《 写真 ありがと ! マジ 可愛い ! 一 時間 くらい ずっと 眺めちゃった よ ! 》 と いう 本当に 気持ち の 悪い もの も 多かった 。

佳乃 は その 手 の サイト で 知り合った 男 たち と 、 三 人 、 いや 四 人 ぐらい は 、 実際 に 会って いた はずだ 。

メール で 知り合った 男 と 会う と 、 佳乃 は 必ず 眞子 に 報告 した 。 それ が 何歳 くらい の 男 で 、 何 を やって いる 人 で 、 どんな 顔 な の か を 教えて くれる わけで は なく 、「 有名な 鉄板焼き の 店 で 、 一万五千 円 も する テンダーロインステーキ を 奢ってもらった と よ 」 と か 、「 その 人 ね 、 BM に 乗っとる と や ん 」 と か 、 本人 の 付属品 の ような もの だけ を 。 そんな 話 を 眞子 は いつも 黙って 聞いて いた 。

羨ましい と 思った こと は 一 度 も なかった 。 初対面 の 相手 と 食事 を して も 緊張 する だけ だし 、 それ より は 部屋 で 本 でも 読んで いる ほう が 、 自分 に は 合って いる と 思って いた 。 その せい も あって 、 眞子 は 佳乃 の 話 を 聞く の が 苦痛 で は なかった 。

まるで 自分 に は 縁 の ない 青春 を 、 佳乃 が 代わり に 謳歌 して くれて いる ような 気 が する こと さえ あった 。

「 沙里 ちゃん は 、 昨日 の 晩 、 佳乃 ちゃん が 会い に 行った の は 増尾 くん じゃ ない ような 気 が するって 話した らしい です けど 、 私 は 、 やっぱり 佳乃 ちゃん 、 増尾 圭吾って いう 人 と 待ち合わせ を してたんだ と 思います 」 「 フェアリー 博多 」 の エントランスホール で 個別 に 行われた 警察 から の 聴取 で 、 眞子 は そう 答えて いる 。 「...... 増尾圭吾って 人 の 行方 が 、 何日 か 前 から 分からなくなって たって 話 は 、 仲町 鈴香 さん から 聞いてます 。 でも 、 連絡 を 取り合おう と 思えば 取り合える し 、 もし その 増尾圭吾って 人 に 何 か 事情 が あって 、 昨日 の 晩 、 ちょっと だけ でも 会おう と した の かもしれません し ......」 この とき 、 眞子 は 話し ながら 少し 後悔 して いた 。 若い 刑事 から 、「 石橋 佳乃 さん の こと で 何 か 知っている こと が あれば 教えて もらえ ないで す か ? 」 と 訊かれた とき 、 つい 沙 里 と 実は 仲 が 良く ない こと や 、 メル 友 が 大勢 いた こと など から 話し出して しまった 自分 が 、 佳乃 の 印象 を 悪く して しまった ような 気 が した のだ 。 エントランスホール に は 若い 刑事 と 眞子 しか いなかった 。 いや 、 ときどき 制服 を 着た 警官 たち が 慌ただしく 若い 刑事 に 報告 に 来る こと は あった が 、 ビニール製 の レース風クロス が かけられた ガラス の テーブル で 対峙して いる の は 眞子 と 若い 刑事 だけ で 、 もちろん 刑事 と 面 と 向かって 話 を する など 、 生まれて 初めて の 経験 だった 。 若い 刑事 の 右眉 の 横 に 、 小さな 縫い傷 が あった 。

二の腕 の 筋肉 が スーツ に 皺 を 作って いた 。 「 石橋 佳乃 さん の メル 友 の 話 を 、 もう 少し 詳しく 聞か せて もらえません か ? あれ は 先月 の 上旬 だった か 、 朝 から 冷たい 雨 の 降る 日曜日 だった 。 それほど 激しく も なかった が 、 眞子 が 暮らす 三 階 の ベランダ から 眺める と 、 街全体 から 音 を 奪う ような 雨 だった 。 そんな 景色 を 眺めて いる と 、 部屋 に やってきた 佳乃 に コンビニ へ 行こう と 誘われた 。

たかが コンビニ くらい 一 人 で 行けば いい のに 、 と いつも 思う のだ が 、 そう 言えば 角 が 立つ し 、 かといって 「 用 が ある ん よ 」 など と 嘘 を ついて 断る ほど の こと で も ない 。

傘 を 差して 吉塚 駅前 の コンビニ へ 向かう 道すがら 、 水たまり を 避け ながら 歩いて いる と 、「 ちょっと これ 見て 」 と 、 佳乃 に 携帯 を 差し出された 。 そこ に は 見知らぬ 若い 男 の 画像 が あって 、「 これ ね 、 最近 、 メール の やりとり 始めた 人 な ん よ 」

と 佳乃 が 教えて くれる 。

眞子 は 水滴 の ついた 液晶 画面 に 目 を 向けた 。 決して 映り の いい 画像 で は なかった が 、 野性 的 と いう の か 、 浅黒い 肌 に 、 鼻筋 が 通って 、 こちら を 見つめて いる 目 が 、 どこ か 寂しげ な 、 つい 見入って しまう ほど カッコ よかった 。

「 どう ? 」 と 佳乃 に 訊かれて 、「 むちゃくちゃ 、 カッコよくない ? 」 と 眞子 は 素直に 答えた 。 正直 、 こういう 男性 と 知り合える なら 、 出会い系サイト も 悪くない と さえ 思った 。

眞子 の 感想 に 、 佳乃 も 満足 した ようで 、「 でも もう 会う 気 は ない ん よ 。 だって 、 ほら 、 増尾 くん が おる し 」 と わざと 乱暴に 携帯 を 閉じる 。

「 もう 会う 気 ないって ......、 じゃあ 、 もう 会った と ? と 眞子 は 訊いた 。 「 この前 の 日曜日 」「 え ? そうなん ? 「 ほら 、 ソラリア の 前 の 公園 で 、 男 に 声 かけられたって 話 ......」 佳乃 に そこ まで 言われて 、 眞子 は 、「 あっ」 と 声 を 上げた 。 「 沙里 ちゃん に は 内緒 よ 。 あれ ね 、 本当 は 偶然 ナンパされた んじゃ なくて 、 待ち合わせ しとった と よ 、 この 人 と 」

「 へぇ 、 そう やった と ......」

出会い系サイト で 男 と 知り合う の が 恥ずかしい の なら 、 やめれば いい のに と 眞子 は 思う 。

自分 でも 恥ずかしい と 思って いる くせ に 、 こう やって 自慢げ に 男 の 写真 を 見せる 佳乃 の 性格 が 、 眞子 に は 理解 でき なかった 。

「 顔 は いい と やけど ね 、 ほんとに 話 は 面白くない し 、 一緒 おって 、 ぜんぜん 楽しくないっちゃん ね 。 仕事 も 肉体 労働系 で 、 ぱっとせんし 」

傘 を 畳んで コンビニ へ 入り ながら も 、 佳乃 は 男 の 話 を 続けた 。 別に 買いたい もの が あって 来た わけで は なかった が 、 コンビニ に 入る と 、 とたんに 眞子 は 甘い もの が 食べ たく なって くる 。 「...... セックス だけ なら 、 いい と やけど 」

とつぜん 佳乃 に 耳元 で 囁かれた とき 、 眞子 は 苺プリン に 手 を 伸ばそう と して いた 。 「 え ? 」 思わず 、 眞子 は 辺り を 窺った 。 幸い 、 お 菓子 売り場 に 客 は おらず 、 二人 の 店員 は レジ で 宅配便 を 送ろう と する おばあさん に かかりきり に なって いる 。

「 だけん 、 セックス は いい と よ 」 佳乃 が 小声 で 眞子 に 囁き 、 意味深な 笑み を 浮かべて 、 目の前 の エクレア に 手 を 伸ばす 。

「って こと は 、 もう ...... した と ? 初めて 会った 日 に ? と 眞子 は 目 を 丸くした 。 数種類 ある エクレア を 順番 に 手 に 取り ながら 、「 だって 、 その ため に 会うたん やけん 」

と 佳乃 が 嫌な 笑い方 を する 。

「 なんか 、 すごい うまい と やん ね 。 自然に 声 が 出て しまうって いう か 、 ベッド の 上 で 自由に 動かされて しまう ような 感じ 。 すごい 指 の 動き と か が 滑らかで 、 仰向け やった はずな のに 、 気づいたら うつ伏せ に されとって 、 背中 と か お 尻 と か を 、 その 指 が 動いていく と やん 。 からだ から 力 が 抜けていくって いう か 、 自分 で は 力 を 入れとる つもりっちゃ けど 、 その 人 の 手 が 膝 に 置かれた だけ で 足 から 力 が 抜けて しまうって いう か 、 普通 は 声 なんか 出す の 、 少し は 照れるっちゃ けど 、 その 人 が 相手 や と 、 ぜんぜん 恥ずかしく ない と や ん 。 おもいっきり 声 が 出せる ん よ 。 で 、 声 、 出せば 出す ほど 、 自分 の からだ が いう こと きかん ように なって 、 狭い ホテル の 部屋 な のに 、 なんか えらい 広いとこ に ぽつんと おる ような 気 に なって きて 、 私 、 男 の 人 の 指 、 あんなに 夢中 で 舐めた の 、 ほんと 初めて やった 」

場所 も わきまえない 佳乃 の 破廉恥な 話 を 、 眞子 は 辺り を 気 に しながら 聞いて いた 。 心 で は 話 を 拒絶して いる くせ に 、 愛撫 から 逃れる ように 白い シーツ の 上 を 這う 自分 の 姿 が 浮かんで くる 。 そして そんな 自分 の 肌 で 、 さっき 佳乃 が 写真 を 見せて くれた 男 の 指 が 動き 、「 我慢せん で いいん よ 」 と 、 会った こと も ない のに その 声 が 聞こえる 。

コンビニ の 外 、 雨 に 濡れた 街 の 景色 が 重かった 。 さっき まで 男 と の 行為 を 恥ずかしげ も なく 語って いた くせ に 、 佳乃 は レジ で 会計 を 済ます と 、 最近 観た 「 バトル ・ ロワイアル 」 と いう 映画 の 暴力 シーン が 残酷 過ぎて 気分 が 悪く なった 、 と 別の 話 を 始めて いた 。 「 じゃあ 、 その 人 と は もう 会う 気 ない ん ? 」 と 眞子 は 訊いた 。 一瞬 、 佳乃 の 目 に 意地悪 そうな 色 が 浮かんで 、「 あ 、 もし あれ やったら 、 眞子 ちゃん に 紹介 しよっか ? 」 と 言った 。

眞子 は 慌てて 、「 いや 、 やめて よ 」 と 断った 。 まるで さっき 佳乃 の 話 を 聞き ながら 、 想像 して しまった 自分 の 痴態 を 盗み見られた ようだった 。 佳乃 が 、 女 と して 自分 の こと を 下 に 見て いる こと を 、 眞子 は なんとなく 感じて いた 。 たしかに 二十 歳 に なって も 男 と 付き合った こと が なく 、 それ を 沙里 の ように 隠そう と も しなければ 、 三人 の 中 で 一番 経験 が 豊富な 佳乃 に 軽く 見られて も 仕方 は ない 。 ただ 、 これ まで いくら 男 の 話 を されよう と も 、 佳乃 に 対して 、 劣等感 を 持った こと は ない 。 出会い系 で 知り合った 男 たち と の デート の 話 も 、 増尾 圭吾 と の その後 の なりゆき も 、 どこ か 遠く 、 ちょうど テレビ ドラマ でも 見て いる ようで 、 羨ましく も なければ 、 軽蔑 する わけで も なかった 。 が 、 今回 に 限って 、 眞子 の 心 に 佳乃 の 男 が 侵入 して きた 。 佳乃 の 男 関係 など 、 聞き流して 忘れて しまえば いい はずな のに 、 雨 の 日 の コンビニ で 、 会った こと も ない 男 に 愛撫 を 受ける 自分 の 姿 を 想像 して しまい 、 その 愛撫 を 実際 に 受けた 佳乃 が 羨ましく 、 そして 増尾 圭吾 と いう 男 が いながら 出会い系サイト で 知り合った 男 と 、 初めて会った 日 に そんな こと を した と いう 佳乃 を 、 心 の 底 から はしたない 女 だ と 蔑んで いた 。

ただ 、 蔑めば 蔑む ほど 、 自分 が そんな 女 に なりたがっている ので は ない か と 不安に なった 。 自分 は 佳乃 の ように 出会い系サイト まで 使って 男 と 知り合いたい と 思う 女 じゃ ない 。 かといって 、 沙里 の ように 行動 できず に 悶々 と して 、 行動 できる 佳乃 を 陰 で 悪く 言う ような 女 で も ない 。 できれば 熊本 出身 の 人 と 結婚 し 、 いつか は 熊本 で 幸せな 家庭 を 持ちたい 。 それ だけ を 望んで いる のに 、 佳乃 の 男 に 愛撫 される 自分 を 想像 した とたん 、 まるで その 夢 が 壊される ため に ある ような 気 が して 仕方なかった 。 「 えっと ......」 右眉 の 横 に 小さな 縫い傷 の 刑事 が 、 眞子 の 顔 を 覗き込む 。 エントランスホール に は 強い 夕日 が 差し込んで いる 。 自動 ドア に 少し 隙間 が ある の か 、 風 が 集まり 、 ヒュー 、 ヒュー 、 と 気味 の 悪い 音 を 立てて いる 。 眞子 に 話 を 聞く 刑事 と は 別に 、 五 、 六 人 の 警官 たち が さっき から 二 階 に ある 佳乃 の 部屋 と エントランス を 行ったり 来たり して いる 。 佳乃 の 部屋 に あった 品物 が 段ボール に 入れられて 運び出される たび に 、 ああ 、 ほんとに 佳乃 ちゃん は 殺された んだ 、 と 思い は する の だ が 、 先 に 話 を 聞か れた 沙里 の ように 、 大声 で 泣き崩れる こと が 眞子 に は できない 。 もちろん 悲しく ない わけで は ない 。 ただ 、 どうしても 涙 が 出て こ ない 。 ¶「 じゃあ 、 石橋 佳乃 さん から 直接 お 聞き に なった の は 、 その 三 人 だけ です ね ? 」 若い 刑事 の 質問 に 、 眞子 は ふと 我 に 返って 、「 え 、 ええ 。 はい 」 と 頷いた 。

「 夏 ごろ に 二 人 、 そして 秋 の 終わり ごろ に 一 人 。 夏 ごろ に 会った 男 たち は 、 二 人 と も 福岡 の 人間 で 、 食事 に 連れてって もらったり 、 洋服 なんか を 買って くれる ような 男 で 、 年齢 は 分から ん が 、 かなり 年上 の 人 」 「 はい 、 そう です 」 「 で 、 秋 の 終わり ごろ に 聞いた の が 、 佐賀 の 男性 で 、 こちら は 大学生 、 たまに ドライブ なんか に 出かけ とった ? 「 はい 。 そう 聞きました 」 「 他 に は おらん のです ね ? 「 はい 。 はっきり 覚えて る の は 三 人 だけ です 。 他 に も 聞いた こと が あった かも しれません けど ......。 もちろん メール を 交換 する だけ の 人 なら もっと 大勢 いた と 思います 」 眞子 は そこ まで 一気に 言う と 、 自分 は 佳乃 の 捜査 に 協力 して いる のであって 、 佳乃 の こと を 悪く 言って いる わけで は ない 、 と 心 の 中 で 自分 に 言いきかせた 。 「 えっと 、 あなた の 他 に も 、 石橋 佳乃 さん から そういう 話 を 聞いて る ような 人 は おら んです か ね ? 若い 刑事 の 長い 指 に は 、 健康 そうな 爪 が ついて いた 。

癖 な の か 、 その 爪先 を 指の腹 に 突き立て 、 深い 爪 の あと を 残す 。

「 私 に しか 、 話して ない と 思います 」 眞子 は 答えた 。 「 じゃあ 、 繰り返し に なります けど 、 やっぱり 昨日 の 晩 、 石橋 佳乃 さん は 、 その 増尾 圭吾 に 会い に 行った と 思います か ? 大きく ため息 を ついた 刑事 に 、 眞子 は 、「 沙里 ちゃん は 疑っとるみたい やけど 、 それ は ほんとだ と 思います 」 と 強く 頷いた 。 「 そう です か ......」

「 その あと に 誰 か に 連れていかれた と か ......」

「 もちろん そっち も 調べとります 」 刑事 に さっと 遮られ 、 眞子 は 出過ぎた こと を 言った と 、 すぐに 俯いた 。 「 やっぱり 、 その 増尾 圭吾 と 会うたん やろう ねぇ 。 行方 が 分からんって いう し ......」 刑事 が 下手くそな 字 の 並ぶ 手帳 に 視線 を 落とす 。 「...... 分かりました 。 すいません ね 、 いろいろ 訊いて しもうて から 」

刑事 に とつぜん そう 言わ れ 、 眞子 は 一瞬 、「 え ? もう 終わり です か ? 」 と 訊 き 返し そうに なった 。

そんな 眞子 の 気持ち も 知らず に 、 さっさと 立ち上がった 刑事 が 、「 お ー い ! 」 と 玄関口 に 立って いる 警官 に 声 を かける 。

「 あの ......」 と 眞子 は 声 を かけた 。

「 何 か ? 「 もう いいんでしょう か ? 「 あ 、 はいはい 。 ほんと 時間 取らせて すいません でした ね 。 お 友達 が こんな こと に なって 大変な とき に 」

廊下 へ 出る と 、 次に 話 を 聞かれる らしい 仲町 鈴香 が 、 泣き腫らした 目 で 立って いた 。

眞子 は 黙って すれ違った 。

エレベーター に 乗った とたん 、 なんで 言わ なかった のだろう か と 眞子 は 思った 。

もちろん この 事件 に 関係ない と は 思う 。

しかし 佳乃 が 出会い系サイト で 知り合った 男 で 、 眞子 が 覚えて いる の は もう 一人 いる 。

でも 、 その 男 の こと が どうしても 若い 刑事 に 言えなかった 。

言えば 、 自分 まで 佳乃 と 同類 の 女 だ と 思われ そうだった 。

出会い系 で 男 を 求める ような 女 の 友達 。 そう 思われる の が 嫌で 、 若い 刑事 に 言えなかった 。

この 判断 が 、 その後 の 捜査 方向 を 狂わせて しまう こと も 知らず に 。

第一章 彼女は誰に会いたかったか?7 だい ひと しょう|かのじょ は だれ に あい たかった か Kapitel 1: Wen hat sie vermisst?7 Chapter 1: Who Did She Want to See? Capítulo 1: ¿A quién echaba de menos?7 Chapitre 1 : Qui lui a manqué?7 제1장 그녀는 누구를 만나고 싶었나? 第 1 章:她错过了谁?

警察署 で の 身元 確認 を 終えた 寺内 から 、 天神 営業所 へ 連絡 が 入った の は 、 午後 三時 を 回った ころ だった 。 けいさつ しょ|||みもと|かくにん||おえた|てらうち||てんじん|えいぎょう しょ||れんらく||はいった|||ごご|みっじ||まわった|| It was around 3 pm when the temple office, which had confirmed its identity at the police station, contacted the Tenjin Sales Office.

寺内 を 送り出した あと 、 不安な 気持ち で その 帰り を 待って いた 営業所員 たち は 、 沙里 を 中心 に 応接室 で テレビ を 囲み 、 事件 を 伝える 番組 を 探して 、 忙しく チャンネル を 変えて いた 。 てらうち||おくりだした||ふあんな|きもち|||かえり||まって||えいぎょう しょいん|||いさご さと||ちゅうしん||おうせつ しつ||てれび||かこみ|じけん||つたえる|ばんぐみ||さがして|いそがしく|ちゃんねる||かえて| After sending out Terauchi, the sales staff, who were anxious and awaiting their return, were busy changing TV channels, surrounding TV in the reception room centering on Sari and looking for a program to tell the incident.

寺内 から の 電話 を 受けた 社員 の 声 が 響く と 、 真っ先 に 駆けつけた の は 沙里 だった 。 てらうち|||でんわ||うけた|しゃいん||こえ||ひびく||まっさき||かけつけた|||いさご さと| When the voice of the employee who received the phone call from Terauchi echoed, it was Sara who rushed to the forefront.

その 後ろ姿 を 目 で 追い ながら 、 眞子 は なぜ かしら 、「 ああ 、 やっぱり 佳乃 ちゃん 殺された んだ ......」 と 直感 した 。 |うしろすがた||め||おい||まさこ||||||よしの||ころされた|||ちょっかん| While observing its back, Mako wondered why, "Oh, after all, Yoshino-chan was killed ...".

その 直後 、 受話器 を 受け取った 沙里 が 、「 えー ! |ちょくご|じゅわき||うけとった|いさご さと|| Shortly after that, Sato, who received the handset, said, "Eh! 」 と 叫ぶ 悲鳴 が 響いた 。 |さけぶ|ひめい||ひびいた A scream sounded.

テレビ の 前 に いた 数 人 から 、 眞子 は 一斉に 目 を 向けられ 、 思わず 、「 ほら 、 やっぱり ......」 と 消え 入る ような 声 を こぼした 。 てれび||ぜん|||すう|じん||まさこ||いっせいに|め||むけ られ|おもわず||||きえ|はいる||こえ|| A few people in front of the TV looked at Mako all at once, and suddenly spilled a voice that seemed to disappear, "Here, after all." 寺内 から の 報告 を 受けた 沙里 は 、 受話器 を 置く と 感電 でも した ように 喋り 始めた 。 てらうち|||ほうこく||うけた|いさご さと||じゅわき||おく||かんでん||||しゃべり|はじめた Upon receiving the report from Terauchi, Sari began talking as if she received an electric shock when she put her handset on.

伝えなければ ならない こと が たくさん あって 、 その 言葉 が 一斉に 口 から こぼれ出して いる ようだった 。 つたえ なければ|なら ない||||||ことば||いっせいに|くち||こぼれ だして|| There were so many things that had to be conveyed that the words seemed to be spilling all at once.

やはり 被害者 が 佳乃 だった こと 、 首 を 絞められて いた こと 、 寺内 が 戻る まで ここ で 待機 する ように 言わ れた こと など 、 まるで 喘ぐ ように 伝える 沙里 を 見て いる うち に 、 眞子 の からだ は ガタガタ と 音 を 立てる ほど 震え 出した 。 |ひがい しゃ||よしの|||くび||しめ られて|||てらうち||もどる||||たいき|||いわ|||||あえぐ||つたえる|いさご さと||みて||||まさこ||||がたがた||おと||たてる||ふるえ|だした After all, while the victim was Yoshino, he was squeezed, he was told to wait here until Terauchi returned, and so on, while looking at Sara, who was telling her to panting, it was because of Masako. Trembled with a rattling noise. 横 に いた 誰 か が 、「 大丈夫 ? よこ|||だれ|||だいじょうぶ Someone beside me said, "Are you okay? 」 と 肩 を 抱いて くれた の は 分かった が 、 それ が 誰 な の か 見上げる こと も でき なかった 。 |かた||いだいて||||わかった||||だれ||||みあげる|||| I knew I was hugging my shoulder, but I couldn't even look up who it was.

いつも は がらんと した 印象 の 昼 の 営業所 が 、 急に 窮屈に 感じられた 。 ||||いんしょう||ひる||えいぎょう しょ||きゅうに|きゅうくつに|かんじ られた Das normalerweise formelle Büro zur Mittagszeit fühlte sich plötzlich beengt an. 息 を 吸おう と して も 、 もう 他の 誰 か に 吸われて 、 いくら 吸って も 空気 が からだ に 入ってこない 。 いき||すおう|||||たの|だれ|||すわ れて||すって||くうき||||はいって こ ない Selbst wenn Sie versuchen, einzuatmen, hat jemand anderes die Luft bereits abgesaugt, und egal, wie viel Sie einatmen, es gelangt keine Luft in Ihren Körper. When you try to breathe in, someone else is already sucking it in, and no matter how much you inhale, no air enters your body. 目の前 で 沙 里 が 喋り 続けて いる のだ が 、 その 声 が 聞こえ ない 。 めのまえ||いさご|さと||しゃべり|つづけて|||||こえ||きこえ| みんな が 口々に 何 か 言って いる のだ が 、 まるで みんな 溺れて いる ように 、 その 口 が パクパク と 動いて いる だけ に しか 見え ない 。 ||くちぐちに|なん||いって||||||おぼれて||||くち||||うごいて|||||みえ| 誰 か 泣いて ! だれ||ないて と 眞子 は 心 の 中 で 叫んだ 。 |まさこ||こころ||なか||さけんだ 今 ここ で 誰 か が 泣いて くれたら 、 自分 も すぐに 泣き 出せる 。 いま|||だれ|||ないて||じぶん|||なき|だせる 泣き 出せれば 、 きっと 呼吸 も 楽に できる 。 なき|だせれば||こきゅう||らくに| If you can cry it out, you can breathe easier. 「 これ から 警察 の 人 が 来るって ! ||けいさつ||じん||くる って 昨日 、 佳乃 ちゃん と どこ で どう 別れた か 、 詳しく 説明 する ようにって ! きのう|よしの||||||わかれた||くわしく|せつめい||ように って 」 まるで 脅迫 する ような 沙里 の 声 に 、 眞子 は 辛うじて 頷いた 。 |きょうはく|||いさご さと||こえ||まさこ||かろうじて|うなずいた " Mako barely nodded at Sari's voice, which sounded as if it was threatening her. 自分 でも 気づかぬ うち に 椅子 から 立ち上がって いた 。 じぶん||きづか ぬ|||いす||たちあがって| 膝 が ガクガク と 震えて いる 。 ひざ||がくがく||ふるえて| 足元 が 遠かった 。 あしもと||とおかった まるで 自分 が とても 高い 場所 に 立たされて いる ようだった 。 |じぶん|||たかい|ばしょ||たた されて|| 元々 、 佳乃 と 沙里 は 張り合って いる ような ところ が あった と 眞子 は 思う 。 もともと|よしの||いさご さと||はりあって|||||||まさこ||おもう もちろん 直接 、 何 か を 言い合う ような こと は なかった が 、 自分 を 仲介役 に して 相手 を 中傷して いた のだ と 思う 。 |ちょくせつ|なん|||いいあう||||||じぶん||ちゅうかい やく|||あいて||ちゅうしょう して||||おもう Of course, they never directly argued with each other, but I think they were using me as an intermediary to slander each other. たとえば 佳乃 は 、 自分 が 出会い系サイト など を 利用 して 、 ときどき その 相手 と デート を して いる こと を 眞子 に は 自慢げ に 教える くせ に 、「 この 話 、 絶対 に 沙里 ちゃん に は 内緒 やけん 」 と 、 沙里 に 知られる こと を 嫌がった 。 |よしの||じぶん||であい けい さいと|||りよう||||あいて||でーと||||||まさこ|||じまんげ||おしえる||||はなし|ぜったい||いさご さと||||ないしょ|||いさご さと||しら れる|||いやがった For example, Kano is always proud to tell Mako that she uses a dating site and sometimes goes on dates with the people she meets, but she also says, "Don't tell Sari-chan about this, okay?" He did not want Sari to know. 眞子 と して は 、 別に そういう 相手 と たまに 会って 食事 を する くらい 、 隠す こと も ない んじゃ ない か と 思う のだ が 、 佳乃 に とって は 、 楽しい けれども 恥ずかしい こと で も ある ようで 、 そういう 弱み を 沙里 に 握られたくなかった のだ と 思う 。 まさこ||||べつに||あいて|||あって|しょくじ||||かくす||||||||おもう|||よしの||||たのしい||はずかしい|||||||よわみ||いさご さと||にぎら れ たく なかった|||おもう Mako probably has nothing to hide, except for the occasional dinner with such a partner, but for Kano, it was both fun and embarrassing, and I think she did not want Sari to see that kind of weakness in her. 「 フェアリー 博多 」 に 入居 した ばかりの ころ 、「 佳乃 ちゃんって 久留米 が 実家 な ん やろ ? |はかた||にゅうきょ||||よしの|ちゃん って|くるめ||じっか||| 苗字 が 石橋って こと は 、 もしかして ブリヂストン の 社長 と 親戚 ? なえ あざ||いしばし って|||もし かして|ぶりぢすとん||しゃちょう||しんせき 」 と 、 沙里 が 冗談半分 で 訊いた こと が あった 。 |いさご さと||じょうだん はんぶん||じん いた||| その とき すでに 、 眞子 は 佳乃 の 実家 が 床屋 だ と 知っていた ので 、 当然 否定 する だろう と 思って いた のだ が 、「 え ? |||まさこ||よしの||じっか||とこや|||しっていた||とうぜん|ひてい||||おもって|||| うち ? 遠い 親戚っちゃ ん ね 」 と しれっと 答えた のだ 。 とおい|しんせき っちゃ|||||こたえた| 「 うそ ー ! |- 」 もちろん 沙里 は 悲鳴 の ような 声 を 上げた 。 |いさご さと||ひめい|||こえ||あげた その 声 に 逆に 驚いて 、「 で 、 でも 、 本当に 、 遠い 遠い 親戚っちゃ けん 」 と 佳乃 は 慌てて 付け加えた 。 |こえ||ぎゃくに|おどろいて|||ほんとうに|とおい|とおい|しんせき っちゃ|||よしの||あわてて|つけくわえた 沙里 が いなくなる と 、「 うち が 床屋って こと 、 誰 に も 言わん どって よ 」 と 佳乃 に 言われた 。 いさご さと||い なく なる||||とこや って||だれ|||いわ ん|ど って|||よしの||いわれた 一瞬 、 何 か 言い返そう か と も 思った のだ が 、 そこ に あった 佳乃 の 顔 が あまりに 凶暴で 、 せっかく できた 友達 を 失う こと も 怖く 、「 うん 、 分かった 」 と 眞子 は 小さく 頷いた 。 いっしゅん|なん||いいかえそう||||おもった||||||よしの||かお|||きょうぼうで|||ともだち||うしなう|||こわく||わかった||まさこ||ちいさく|うなずいた For a moment, I thought about saying something back, but the look on Yoshino's face was so ferocious that I was afraid of losing the friend I had made, so I said, "Yeah, okay. Mako nodded slightly.

なんで 佳乃 が そんな 嘘 を つく の か 分からなかった 。 |よしの|||うそ|||||わから なかった

せっかく 三 人 仲良く なれた のに 、 どうして そんな 嘘 を つく の か 不思議で 仕方なかった 。 |みっ|じん|なかよく|||||うそ|||||ふしぎで|しかたなかった Ich konnte nicht umhin, mich zu fragen, warum sie eine solche Lüge erzählte, wo wir drei doch so gut miteinander auskamen. 詳しい 人数 まで は 知らない が 、 佳乃 に は 少なくとも 常時 四 、 五 人 の メル友 が いた 。 くわしい|にんずう|||しら ない||よしの|||すくなくとも|じょうじ|よっ|いつ|じん||メル とも||

ときどき 沙里 が いない とき など に 、 佳乃 は それら 男たち から の メール を 眞子 に 見せた 。 |いさご さと||||||よしの||それ ら|おとこ たち|||めーる||まさこ||みせた 「 ねぇ 、 超キモい やろ 」 など と 言い ながら 見せて くれる メール に は 、《 写真 ありがと ! |ちょう キモ い||||いい||みせて||めーる|||しゃしん|あり が と マジ 可愛い ! |かわいい 一 時間 くらい ずっと 眺めちゃった よ ! ひと|じかん|||ながめちゃ った| 》 と いう 本当に 気持ち の 悪い もの も 多かった 。 ||ほんとうに|きもち||わるい|||おおかった Viele von ihnen fühlten sich wirklich unwohl. Many of them were really unpleasant.

佳乃 は その 手 の サイト で 知り合った 男 たち と 、 三 人 、 いや 四 人 ぐらい は 、 実際 に 会って いた はずだ 。 よしの|||て||さいと||しりあった|おとこ|||みっ|じん||よっ|じん|||じっさい||あって||

メール で 知り合った 男 と 会う と 、 佳乃 は 必ず 眞子 に 報告 した 。 めーる||しりあった|おとこ||あう||よしの||かならず|まさこ||ほうこく| それ が 何歳 くらい の 男 で 、 何 を やって いる 人 で 、 どんな 顔 な の か を 教えて くれる わけで は なく 、「 有名な 鉄板焼き の 店 で 、 一万五千 円 も する テンダーロインステーキ を 奢ってもらった と よ 」 と か 、「 その 人 ね 、 BM に 乗っとる と や ん 」 と か 、 本人 の 付属品 の ような もの だけ を 。 ||なん さい|||おとこ||なん||||じん|||かお|||||おしえて|||||ゆうめいな|てっぱん やき||てん||いちまんごせん|えん|||||しゃって もらった||||||じん||bm||のっとる||||||ほんにん||ふぞく しな||||| He didn't tell me how old he was, what he did, or what he looked like, but rather said, "He bought me a 15,000-yen tenderloin steak at a famous teppanyaki restaurant. "That person is on the BM, isn't he? or just something that is an accessory to the person in question. そんな 話 を 眞子 は いつも 黙って 聞いて いた 。 |はなし||まさこ|||だまって|きいて|

羨ましい と 思った こと は 一 度 も なかった 。 うらやま し い||おもった|||ひと|たび|| I have never been envious of them. 初対面 の 相手 と 食事 を して も 緊張 する だけ だし 、 それ より は 部屋 で 本 でも 読んで いる ほう が 、 自分 に は 合って いる と 思って いた 。 しょたいめん||あいて||しょくじ||||きんちょう|||||||へや||ほん||よんで||||じぶん|||あって|||おもって| Ich dachte, dass mich ein Essen mit jemandem, den ich noch nie zuvor getroffen hatte, nur nervös machen würde und dass ich besser in meinem Zimmer sitzen und ein Buch lesen sollte. I thought that having a meal with someone I had never met before would only make me nervous, and that I would be better suited to reading a book in my room. その せい も あって 、 眞子 は 佳乃 の 話 を 聞く の が 苦痛 で は なかった 。 ||||まさこ||よしの||はなし||きく|||くつう||| This was one of the reasons why it was not difficult for Mako to listen to Kano's story.

まるで 自分 に は 縁 の ない 青春 を 、 佳乃 が 代わり に 謳歌 して くれて いる ような 気 が する こと さえ あった 。 |じぶん|||えん|||せいしゅん||よしの||かわり||おうか|||||き||||| Es fühlte sich sogar so an, als ob Yoshino eine Jugend feierte, zu der sie keine Verbindung hatte. I even felt as if Yoshino was enjoying my youth, which I had no connection to, on my behalf.

「 沙里 ちゃん は 、 昨日 の 晩 、 佳乃 ちゃん が 会い に 行った の は 増尾 くん じゃ ない ような 気 が するって 話した らしい です けど 、 私 は 、 やっぱり 佳乃 ちゃん 、 増尾 圭吾って いう 人 と 待ち合わせ を してたんだ と 思います 」 「 フェアリー 博多 」 の エントランスホール で 個別 に 行われた 警察 から の 聴取 で 、 眞子 は そう 答えて いる 。 いさご さと|||きのう||ばん|よしの|||あい||おこなった|||ますお|||||き||する って|はなした||||わたくし|||よしの||ますお|けい われって||じん||まちあわせ||して た ん だ||おもい ます||はかた||||こべつ||おこなわれた|けいさつ|||ちょうしゅ||まさこ|||こたえて| Sari told me that she thought it wasn't Masuo who Kano went to see yesterday night, but I think Kano was meeting someone named Keigo Masuo. "Fairy Hakata" Mako stated as much in a separate police interview in the entrance hall of the 「...... 増尾圭吾って 人 の 行方 が 、 何日 か 前 から 分からなくなって たって 話 は 、 仲町 鈴香 さん から 聞いてます 。 ますお けい われって|じん||ゆくえ||なん にち||ぜん||わから なく なって||はなし||なかまち|すず かおり|||きいて ます ...... Suzuka Nakamachi hat uns mitgeteilt, dass der Aufenthaltsort von Keigo Masuo seit einigen Tagen unbekannt ist. でも 、 連絡 を 取り合おう と 思えば 取り合える し 、 もし その 増尾圭吾って 人 に 何 か 事情 が あって 、 昨日 の 晩 、 ちょっと だけ でも 会おう と した の かもしれません し ......」 この とき 、 眞子 は 話し ながら 少し 後悔 して いた 。 |れんらく||とりあおう||おもえば|とり あえる||||ますお けい われって|じん||なん||じじょう|||きのう||ばん||||あおう||||かも しれません||||まさこ||はなし||すこし|こうかい|| 若い 刑事 から 、「 石橋 佳乃 さん の こと で 何 か 知っている こと が あれば 教えて もらえ ないで す か ? わかい|けいじ||いしばし|よしの|||||なん||しっている||||おしえて|||| A young detective asked, "Can you tell us anything you know about Yoshino Ishibashi? 」 と 訊かれた とき 、 つい 沙 里 と 実は 仲 が 良く ない こと や 、 メル 友 が 大勢 いた こと など から 話し出して しまった 自分 が 、 佳乃 の 印象 を 悪く して しまった ような 気 が した のだ 。 |じん かれた|||いさご|さと||じつは|なか||よく|||||とも||おおぜい|||||はなしだして||じぶん||よしの||いんしょう||わるく||||き||| " When she asked me if I was actually close with Sari or if I had a lot of e-mail friends, I felt that I had made a bad impression on Kano. エントランスホール に は 若い 刑事 と 眞子 しか いなかった 。 |||わかい|けいじ||まさこ||い なかった The only people in the entrance hall were the young detective and Mako. いや 、 ときどき 制服 を 着た 警官 たち が 慌ただしく 若い 刑事 に 報告 に 来る こと は あった が 、 ビニール製 の レース風クロス が かけられた ガラス の テーブル で 対峙して いる の は 眞子 と 若い 刑事 だけ で 、 もちろん 刑事 と 面 と 向かって 話 を する など 、 生まれて 初めて の 経験 だった 。 ||せいふく||きた|けいかん|||あわただしく|わかい|けいじ||ほうこく||くる|||||びにーる せい||れーす かぜ くろす||かけ られた|がらす||てーぶる||たいじ して||||まさこ||わかい|けいじ||||けいじ||おもて||むかって|はなし||||うまれて|はじめて||けいけん| Nein, manchmal eilten uniformierte Beamte herbei, um dem jungen Detektiv Bericht zu erstatten, aber Mako und der junge Detektiv waren die einzigen, die sich an dem mit einem Spitzentuch aus Vinyl bedeckten Glastisch gegenübersaßen, und natürlich war es das erste Mal in ihrem Leben, dass sie ein persönliches Gespräch mit einem Detektiv führte. No, sometimes uniformed officers would rush to report to the young detective, but Mako and the young detective were the only ones facing each other at the glass table covered with a vinyl lace cloth, and of course, it was the first time in her life that she had ever had a face-to-face conversation with a detective. 若い 刑事 の 右眉 の 横 に 、 小さな 縫い傷 が あった 。 わかい|けいじ||みぎ まゆ||よこ||ちいさな|ぬい いた||

二の腕 の 筋肉 が スーツ に 皺 を 作って いた 。 にのうで||きんにく||すーつ||しわ||つくって| 「 石橋 佳乃 さん の メル 友 の 話 を 、 もう 少し 詳しく 聞か せて もらえません か ? いしばし|よしの||||とも||はなし|||すこし|くわしく|きか||もらえ ませ ん| あれ は 先月 の 上旬 だった か 、 朝 から 冷たい 雨 の 降る 日曜日 だった 。 ||せんげつ||じょうじゅん|||あさ||つめたい|あめ||ふる|にちようび| それほど 激しく も なかった が 、 眞子 が 暮らす 三 階 の ベランダ から 眺める と 、 街全体 から 音 を 奪う ような 雨 だった 。 |はげしく||||まさこ||くらす|みっ|かい||べらんだ||ながめる||がい ぜんたい||おと||うばう||あめ| It wasn't too heavy, but from the third-floor balcony where Mako lives, the rain was taking the sound away from the entire city. そんな 景色 を 眺めて いる と 、 部屋 に やってきた 佳乃 に コンビニ へ 行こう と 誘われた 。 |けしき||ながめて|||へや|||よしの||こんびに||いこう||さそわれた Während ich mir die Landschaft anschaute, kam Kano in mein Zimmer und bat mich, in den Supermarkt zu gehen. While I was looking at the scenery, Kano came to my room and asked me to go to the convenience store.

たかが コンビニ くらい 一 人 で 行けば いい のに 、 と いつも 思う のだ が 、 そう 言えば 角 が 立つ し 、 かといって 「 用 が ある ん よ 」 など と 嘘 を ついて 断る ほど の こと で も ない 。 |こんびに||ひと|じん||いけば|||||おもう||||いえば|かど||たつ|||よう|||||||うそ|||ことわる|||||| Ich war immer der Meinung, dass sie allein in den Supermarkt gehen sollte, aber das würde aufsehen erregen, also sagte ich: "Ich muss etwas erledigen." Es reicht nicht aus, zu lügen und nein zu sagen. I always think, "Why don't you just go to the convenience store by yourself?" But I know that would raise some red flags, so I just say, "I've got to go do something." It is not worth lying and refusing to do so.

傘 を 差して 吉塚 駅前 の コンビニ へ 向かう 道すがら 、 水たまり を 避け ながら 歩いて いる と 、「 ちょっと これ 見て 」 と 、 佳乃 に 携帯 を 差し出された 。 かさ||さして|よしづか|えきまえ||こんびに||むかう|みちすがら|みずたまり||さけ||あるいて|||||みて||よしの||けいたい||さしだされた そこ に は 見知らぬ 若い 男 の 画像 が あって 、「 これ ね 、 最近 、 メール の やりとり 始めた 人 な ん よ 」 |||みしらぬ|わかい|おとこ||がぞう|||||さいきん|めーる|||はじめた|じん||| There was an image of a young man I didn't know, and he said, "You know, this is someone I recently started e-mailing with.

と 佳乃 が 教えて くれる 。 |よしの||おしえて|

眞子 は 水滴 の ついた 液晶 画面 に 目 を 向けた 。 まさこ||すいてき|||えきしょう|がめん||め||むけた 決して 映り の いい 画像 で は なかった が 、 野性 的 と いう の か 、 浅黒い 肌 に 、 鼻筋 が 通って 、 こちら を 見つめて いる 目 が 、 どこ か 寂しげ な 、 つい 見入って しまう ほど カッコ よかった 。 けっして|うつり|||がぞう|||||やせい|てき|||||あさぐろい|はだ||はなすじ||かよって|||みつめて||め||||さびし げ|||みいって|||かっこ| Die Bilder waren nicht sehr gut, aber die Wildheit der dunklen Haut, der Nasenrücken und die Augen, die mich anschauten, waren so cool, dass ich nicht anders konnte, als sie anzustarren. It was not a very good image, but the dark skin, the bridge of the nose, and the eyes staring at me were so cool that I couldn't help but gaze at them.

「 どう ? 」 と 佳乃 に 訊かれて 、「 むちゃくちゃ 、 カッコよくない ? |よしの||じん かれて||かっこ よく ない 」 と 眞子 は 素直に 答えた 。 |まさこ||すなおに|こたえた 正直 、 こういう 男性 と 知り合える なら 、 出会い系サイト も 悪くない と さえ 思った 。 しょうじき||だんせい||しり あえる||であい けい さいと||わるく ない|||おもった To be honest, I even thought that dating sites are not so bad if you can meet men like this.

眞子 の 感想 に 、 佳乃 も 満足 した ようで 、「 でも もう 会う 気 は ない ん よ 。 まさこ||かんそう||よしの||まんぞく|||||あう|き|||| Mako's impression seemed to satisfy Kano, and she said, "But I don't want to see him anymore. だって 、 ほら 、 増尾 くん が おる し 」 と わざと 乱暴に 携帯 を 閉じる 。 ||ますお|||||||らんぼうに|けいたい||とじる Because, you know, there's Masuo. I deliberately and violently close my phone.

「 もう 会う 気 ないって ......、 じゃあ 、 もう 会った と ? |あう|き|ない って|||あった| He says he doesn't want to see her anymore. ...... So you've already met him? と 眞子 は 訊いた 。 |まさこ||じん いた 「 この前 の 日曜日 」「 え ? この まえ||にちようび| そうなん ? そう な ん 「 ほら 、 ソラリア の 前 の 公園 で 、 男 に 声 かけられたって 話 ......」 佳乃 に そこ まで 言われて 、 眞子 は 、「 あっ」 と 声 を 上げた 。 |||ぜん||こうえん||おとこ||こえ|かけ られた って|はなし|よしの||||いわ れて|まさこ||||こえ||あげた 「 沙里 ちゃん に は 内緒 よ 。 いさご さと||||ないしょ| あれ ね 、 本当 は 偶然 ナンパされた んじゃ なくて 、 待ち合わせ しとった と よ 、 この 人 と 」 ||ほんとう||ぐうぜん|ナンパ された|||まちあわせ|し とった||||じん| You know, I wasn't picked up by chance, but I was meeting someone, this person."

「 へぇ 、 そう やった と ......」 へ ぇ|||

出会い系サイト で 男 と 知り合う の が 恥ずかしい の なら 、 やめれば いい のに と 眞子 は 思う 。 であい けい さいと||おとこ||しりあう|||はずかしい|||||||まさこ||おもう Mako thinks that if you are embarrassed to meet men on dating sites, why don't you just stop?

自分 でも 恥ずかしい と 思って いる くせ に 、 こう やって 自慢げ に 男 の 写真 を 見せる 佳乃 の 性格 が 、 眞子 に は 理解 でき なかった 。 じぶん||はずかしい||おもって||||||じまんげ||おとこ||しゃしん||みせる|よしの||せいかく||まさこ|||りかい|| Mako couldn't understand why Kano was so proud to show pictures of men, even though she herself was embarrassed by it.

「 顔 は いい と やけど ね 、 ほんとに 話 は 面白くない し 、 一緒 おって 、 ぜんぜん 楽しくないっちゃん ね 。 かお|||||||はなし||おもしろく ない||いっしょ|||たのしく な いっちゃん| I like your face, but you really aren't interesting to talk to, and I really don't enjoy being with you at all. 仕事 も 肉体 労働系 で 、 ぱっとせんし 」 しごと||にくたい|ろうどう けい||ぱっと せんし Meine Arbeit ist körperlich, und ich bin nicht sehr gut darin. Моя работа - это тоже физический труд, и я не получаю никакой работы".

傘 を 畳んで コンビニ へ 入り ながら も 、 佳乃 は 男 の 話 を 続けた 。 かさ||たたんで|こんびに||はいり|||よしの||おとこ||はなし||つづけた 別に 買いたい もの が あって 来た わけで は なかった が 、 コンビニ に 入る と 、 とたんに 眞子 は 甘い もの が 食べ たく なって くる 。 べつに|かい たい||||きた|||||こんびに||はいる||とたん に|まさこ||あまい|||たべ||| She had not come here to buy anything, but once she entered the convenience store, she instantly felt a craving for something sweet. 「...... セックス だけ なら 、 いい と やけど 」 せっくす||||| "... Si es solo sexo, está bien, pero estoy quemado".

とつぜん 佳乃 に 耳元 で 囁かれた とき 、 眞子 は 苺プリン に 手 を 伸ばそう と して いた 。 |よしの||みみもと||ささやかれた||まさこ||いちご ぷりん||て||のばそう||| Mako was about to reach for the strawberry pudding when Kano suddenly whispered in her ear. 「 え ? 」 思わず 、 眞子 は 辺り を 窺った 。 おもわず|まさこ||あたり||き った 幸い 、 お 菓子 売り場 に 客 は おらず 、 二人 の 店員 は レジ で 宅配便 を 送ろう と する おばあさん に かかりきり に なって いる 。 さいわい||かし|うりば||きゃく||おら ず|ふた り||てんいん||れじ||たくはい びん||おくろう|||おばあ さん||かかり きり||| Zum Glück sind keine Kunden in der Konditorei, und die beiden Angestellten an der Kasse sind mit einer Dame beschäftigt, die ein Paket verschicken will. Fortunately, there are no customers in the confectionery section, and the two clerks at the cash register are occupied with a grandmother who is trying to send a parcel.

「 だけん 、 セックス は いい と よ 」 佳乃 が 小声 で 眞子 に 囁き 、 意味深な 笑み を 浮かべて 、 目の前 の エクレア に 手 を 伸ばす 。 だけ ん|せっくす|||||よしの||こごえ||まさこ||ささやき|いみ ふか な|えみ||うかべて|めのまえ||||て||のばす

「って こと は 、 もう ...... した と ? 初めて 会った 日 に ? はじめて|あった|ひ| と 眞子 は 目 を 丸くした 。 |まさこ||め||まるく した 数種類 ある エクレア を 順番 に 手 に 取り ながら 、「 だって 、 その ため に 会うたん やけん 」 すう しゅるい||||じゅんばん||て||とり||||||あう たん| Er nahm ein Eclair nach dem anderen und sagte: "Weil wir uns deshalb treffen". Taking each eclair in turn, he said, "That's why we're meeting, you know.

と 佳乃 が 嫌な 笑い方 を する 。 |よしの||いやな|わらい かた||

「 なんか 、 すごい うまい と やん ね 。 ||||や ん| "It's kind of, like, really good, y'know? 自然に 声 が 出て しまうって いう か 、 ベッド の 上 で 自由に 動かされて しまう ような 感じ 。 しぜんに|こえ||でて|しまう って|||べっど||うえ||じゆうに|うごかさ れて|||かんじ I feel as if my voice comes out naturally, as if I am being moved freely on the bed. すごい 指 の 動き と か が 滑らかで 、 仰向け やった はずな のに 、 気づいたら うつ伏せ に されとって 、 背中 と か お 尻 と か を 、 その 指 が 動いていく と やん 。 |ゆび||うごき||||なめらかで|あおむけ||||きづいたら|うつぶせ||さ れ とって|せなか||||しり|||||ゆび||うごいて いく||や ん Die Finger bewegten sich so sanft, und ich lag auf dem Rücken, aber dann merkte ich, dass ich auf dem Rücken lag, und die Finger bewegten sich meinen Rücken hinauf und meine Hüften hinunter. The fingers were moving so smoothly, and I was on my back, but the next thing I know I'm on my back, and they're moving up my back and down my butt, y'know? からだ から 力 が 抜けていくって いう か 、 自分 で は 力 を 入れとる つもりっちゃ けど 、 その 人 の 手 が 膝 に 置かれた だけ で 足 から 力 が 抜けて しまうって いう か 、 普通 は 声 なんか 出す の 、 少し は 照れるっちゃ けど 、 その 人 が 相手 や と 、 ぜんぜん 恥ずかしく ない と や ん 。 ||ちから||ぬけて いくって|||じぶん|||ちから||いれ とる|つもり っちゃ|||じん||て||ひざ||おかれた|||あし||ちから||ぬけて|しまう って|||ふつう||こえ||だす||すこし||てれる っちゃ|||じん||あいて||||はずかしく|||| Es ist, als würde ich Kraft aus meinem eigenen Körper schöpfen, aber wenn die Hand dieser Person auf meinem Knie liegt, kann ich meine Beine entspannen, und normalerweise wäre es mir ein wenig peinlich, etwas zu sagen, aber wenn ich mit dieser Person spreche, ist es überhaupt nicht peinlich. It's as if my body relaxes, or I think I'm putting in a lot of effort, but when that person's hand is on my knee, my legs relax. Normally I would be a little embarrassed to speak out, but when I'm talking to that person, it's not embarrassing at all. おもいっきり 声 が 出せる ん よ 。 |こえ||だせる|| で 、 声 、 出せば 出す ほど 、 自分 の からだ が いう こと きかん ように なって 、 狭い ホテル の 部屋 な のに 、 なんか えらい 広いとこ に ぽつんと おる ような 気 に なって きて 、 私 、 男 の 人 の 指 、 あんなに 夢中 で 舐めた の 、 ほんと 初めて やった 」 |こえ|だせば|だす||じぶん|||||||||せまい|ほてる||へや|||||ひろい とこ|||||き||||わたくし|おとこ||じん||ゆび||むちゅう||なめた|||はじめて|

場所 も わきまえない 佳乃 の 破廉恥な 話 を 、 眞子 は 辺り を 気 に しながら 聞いて いた 。 ばしょ||わきまえ ない|よしの||はれんちな|はなし||まさこ||あたり||き||し ながら|きいて| Mako was listening to Kano's shameless talk with no sense of place, while paying attention to her surroundings. 心 で は 話 を 拒絶して いる くせ に 、 愛撫 から 逃れる ように 白い シーツ の 上 を 這う 自分 の 姿 が 浮かんで くる 。 こころ|||はなし||きょぜつ して||||あい ぶ||のがれる||しろい|しーつ||うえ||はう|じぶん||すがた||うかんで| For all the years I have refused to talk about it, I can picture myself crawling on the white sheets to escape from the caresses. そして そんな 自分 の 肌 で 、 さっき 佳乃 が 写真 を 見せて くれた 男 の 指 が 動き 、「 我慢せん で いいん よ 」 と 、 会った こと も ない のに その 声 が 聞こえる 。 ||じぶん||はだ|||よしの||しゃしん||みせて||おとこ||ゆび||うごき|がまん せ ん|||||あった||||||こえ||きこえる Und dann, auf meiner Haut, bewegte sich der Finger des Mannes, von dem Kano mir vorhin das Foto gezeigt hatte, und sagte: "Halte dich nicht zurück. Ich kann seine Stimme hören, obwohl ich ihm noch nie begegnet bin. And then, on my skin, the finger of the man Kano had just shown me the photo of moved, and he said, "Don't hold back. I hear his voice, even though I have never met him before.

コンビニ の 外 、 雨 に 濡れた 街 の 景色 が 重かった 。 こんびに||がい|あめ||ぬれた|がい||けしき||おもかった Outside the convenience store, the view of the rain-soaked city was heavy. さっき まで 男 と の 行為 を 恥ずかしげ も なく 語って いた くせ に 、 佳乃 は レジ で 会計 を 済ます と 、 最近 観た 「 バトル ・ ロワイアル 」 と いう 映画 の 暴力 シーン が 残酷 過ぎて 気分 が 悪く なった 、 と 別の 話 を 始めて いた 。 ||おとこ|||こうい||はずかし げ|||かたって||||よしの||れじ||かいけい||すます||さいきん|みた|||||えいが||ぼうりょく|しーん||ざんこく|すぎて|きぶん||わるく|||べつの|はなし||はじめて| Für jemanden, der noch vor wenigen Minuten so schamlos über seine männlichen Aktivitäten gesprochen hat, bezahlt Kano ihre Rechnung an der Kasse und sieht sich dann das aktuelle "Battle Royale" an. Er begann eine weitere Geschichte über eine Gewaltszene in einem Film namens "The Last Time I Saw You", die so brutal war, dass ihm schlecht wurde. For someone who was so shamelessly talking about her male escapades earlier, Kano paid her bill at the cash register and watched "Battle Royale," a movie she had recently seen. He started another story, saying that a scene of violence in a movie called "The Last Airbender" was so cruel that it made him feel sick. 「 じゃあ 、 その 人 と は もう 会う 気 ない ん ? ||じん||||あう|き|| So, you don't want to see that person anymore? 」 と 眞子 は 訊いた 。 |まさこ||じん いた 一瞬 、 佳乃 の 目 に 意地悪 そうな 色 が 浮かんで 、「 あ 、 もし あれ やったら 、 眞子 ちゃん に 紹介 しよっか ? いっしゅん|よしの||め||いじわる|そう な|いろ||うかんで|||||まさこ|||しょうかい|し よっか For a moment, a mean look appeared in Kano's eyes, and then she asked, "Oh, if you do that, do you want me to introduce you to Mako? 」 と 言った 。 |いった

眞子 は 慌てて 、「 いや 、 やめて よ 」 と 断った 。 まさこ||あわてて|||||たった まるで さっき 佳乃 の 話 を 聞き ながら 、 想像 して しまった 自分 の 痴態 を 盗み見られた ようだった 。 ||よしの||はなし||きき||そうぞう|||じぶん||ちたい||ぬすみ みられた| Es war, als hätte ich Kanos Geschichte belauscht und mir meine eigene Laszivität ausgemalt. It was as if I had overheard Yoshino's story and imagined my own lasciviousness. 佳乃 が 、 女 と して 自分 の こと を 下 に 見て いる こと を 、 眞子 は なんとなく 感じて いた 。 よしの||おんな|||じぶん||||した||みて||||まさこ|||かんじて| Mako somehow sensed that Kano looked down on her as a woman. たしかに 二十 歳 に なって も 男 と 付き合った こと が なく 、 それ を 沙里 の ように 隠そう と も しなければ 、 三人 の 中 で 一番 経験 が 豊富な 佳乃 に 軽く 見られて も 仕方 は ない 。 |にじゅう|さい||||おとこ||つきあった||||||いさご さと|||かくそう|||し なければ|みっり||なか||ひと ばん|けいけん||ほうふな|よしの||かるく|み られて||しかた|| It is true that at 20 years old, she has never had a relationship with a man, and if she does not try to hide it like Sari does, it is no wonder that Yoshino, who has the most experience among the three of them, looks down on her. ただ 、 これ まで いくら 男 の 話 を されよう と も 、 佳乃 に 対して 、 劣等感 を 持った こと は ない 。 ||||おとこ||はなし||さ れよう|||よしの||たいして|れっとう かん||もった||| However, no matter how many times she has talked about men, I have never felt inferior to Yoshino. 出会い系 で 知り合った 男 たち と の デート の 話 も 、 増尾 圭吾 と の その後 の なりゆき も 、 どこ か 遠く 、 ちょうど テレビ ドラマ でも 見て いる ようで 、 羨ましく も なければ 、 軽蔑 する わけで も なかった 。 であい けい||しりあった|おとこ||||でーと||はなし||ますお|けい われ|||そのご||||||とおく||てれび|どらま||みて|||うらやま しく|||けいべつ|||| Die Geschichten über Verabredungen mit Männern, die sie auf Dating-Websites kennengelernt hatte, und über das, was danach mit Keigo Masuo geschah, waren etwas distanziert, wie ein Fernsehdrama, und weder zu beneiden noch zu verachten. The stories of dates with guys I met on dating sites and what happened afterwards with Keigo Masuo seemed so far away, just like watching a TV drama, that I neither envied nor despised them. が 、 今回 に 限って 、 眞子 の 心 に 佳乃 の 男 が 侵入 して きた 。 |こんかい||かぎって|まさこ||こころ||よしの||おとこ||しんにゅう|| However, this one time, Yoshino's man intruded into Mako's mind. 佳乃 の 男 関係 など 、 聞き流して 忘れて しまえば いい はずな のに 、 雨 の 日 の コンビニ で 、 会った こと も ない 男 に 愛撫 を 受ける 自分 の 姿 を 想像 して しまい 、 その 愛撫 を 実際 に 受けた 佳乃 が 羨ましく 、 そして 増尾 圭吾 と いう 男 が いながら 出会い系サイト で 知り合った 男 と 、 初めて会った 日 に そんな こと を した と いう 佳乃 を 、 心 の 底 から はしたない 女 だ と 蔑んで いた 。 よしの||おとこ|かんけい||ききながして|わすれて|||||あめ||ひ||こんびに||あった||||おとこ||あい ぶ||うける|じぶん||すがた||そうぞう||||あい ぶ||じっさい||うけた|よしの||うらやま しく||ますお|けい われ|||おとこ|||であい けい さいと||しりあった|おとこ||はじめて あった|ひ||||||||よしの||こころ||そこ|||おんな|||さげすんで| Although she should have just listened and forgotten about Kano's relationships with men, she imagined herself being caressed by a man she had never met at a convenience store on a rainy day, and envied Kano for actually receiving such caresses. She despised Yoshino from the bottom of her heart for doing such a thing with a man she met on a dating website on their first day together, despite the fact that she had a man named Keigo Masuo.

ただ 、 蔑めば 蔑む ほど 、 自分 が そんな 女 に なりたがっている ので は ない か と 不安に なった 。 |さげすめば|さげすむ||じぶん|||おんな||なり た がって いる||||||ふあんに| But the more I despised her, the more I worried that I wanted to be like her. 自分 は 佳乃 の ように 出会い系サイト まで 使って 男 と 知り合いたい と 思う 女 じゃ ない 。 じぶん||よしの|||であい けい さいと||つかって|おとこ||しりあい たい||おもう|おんな|| I am not a woman who wants to meet men by using dating sites like Kano. かといって 、 沙里 の ように 行動 できず に 悶々 と して 、 行動 できる 佳乃 を 陰 で 悪く 言う ような 女 で も ない 。 |いさご さと|||こうどう|でき ず||もんもん|||こうどう||よしの||かげ||わるく|いう||おんな||| On the other hand, I am not the kind of woman who agonizes over not being able to act like Sari, and speaks ill of Kano, who can act, behind her back. できれば 熊本 出身 の 人 と 結婚 し 、 いつか は 熊本 で 幸せな 家庭 を 持ちたい 。 |くまもと|しゅっしん||じん||けっこん||||くまもと||しあわせな|かてい||もち たい それ だけ を 望んで いる のに 、 佳乃 の 男 に 愛撫 される 自分 を 想像 した とたん 、 まるで その 夢 が 壊される ため に ある ような 気 が して 仕方なかった 。 |||のぞんで|||よしの||おとこ||あい ぶ|さ れる|じぶん||そうぞう|||||ゆめ||こわさ れる|||||き|||しかたなかった Ich wünschte mir nichts sehnlicher als das, aber sobald ich mir vorstellte, von Kanos Mann gestreichelt zu werden, hatte ich das Gefühl, dass dieser Traum zerstört werden sollte. I wanted nothing more than to be caressed by Yoshino's man, but as soon as I imagined myself being caressed by him, I couldn't help but feel as if this dream was meant to be destroyed. 「 えっと ......」 右眉 の 横 に 小さな 縫い傷 の 刑事 が 、 眞子 の 顔 を 覗き込む 。 えっ と|みぎ まゆ||よこ||ちいさな|ぬい いた||けいじ||まさこ||かお||のぞきこむ エントランスホール に は 強い 夕日 が 差し込んで いる 。 |||つよい|ゆうひ||さしこんで| 自動 ドア に 少し 隙間 が ある の か 、 風 が 集まり 、 ヒュー 、 ヒュー 、 と 気味 の 悪い 音 を 立てて いる 。 じどう|どあ||すこし|すきま|||||かぜ||あつまり||||きみ||わるい|おと||たてて| 眞子 に 話 を 聞く 刑事 と は 別に 、 五 、 六 人 の 警官 たち が さっき から 二 階 に ある 佳乃 の 部屋 と エントランス を 行ったり 来たり して いる 。 まさこ||はなし||きく|けいじ|||べつに|いつ|むっ|じん||けいかん|||||ふた|かい|||よしの||へや||||おこなったり|きたり|| Apart from the detectives who were interviewing Mako, five or six police officers were going back and forth between Kano's room on the second floor and the entrance. 佳乃 の 部屋 に あった 品物 が 段ボール に 入れられて 運び出される たび に 、 ああ 、 ほんとに 佳乃 ちゃん は 殺された んだ 、 と 思い は する の だ が 、 先 に 話 を 聞か れた 沙里 の ように 、 大声 で 泣き崩れる こと が 眞子 に は できない 。 よしの||へや|||しなもの||だんぼーる||いれ られて|はこびださ れる|||||よしの|||ころされた|||おもい||||||さき||はなし||きか||いさご さと|||おおごえ||なきくずれる|||まさこ|||でき ない Every time an item from Kano's room was put in a cardboard box and taken away, I thought that Kano had really been killed, but I couldn't break down and cry out loud like Sari, who had been told about it earlier. もちろん 悲しく ない わけで は ない 。 |かなしく|||| Of course, this does not mean that I am not sad. ただ 、 どうしても 涙 が 出て こ ない 。 ||なみだ||でて|| ¶\「 じゃあ 、 石橋 佳乃 さん から 直接 お 聞き に なった の は 、 その 三 人 だけ です ね ? |いしばし|よしの|||ちょくせつ||きき||||||みっ|じん||| So, those are the only three people who heard directly from Yoshino Ishibashi, right? 」 若い 刑事 の 質問 に 、 眞子 は ふと 我 に 返って 、「 え 、 ええ 。 わかい|けいじ||しつもん||まさこ|||われ||かえって|| " At the young detective's question, Mako suddenly came to her senses and said, "Yes, yes. はい 」 と 頷いた 。 ||うなずいた Yes." He nodded.

「 夏 ごろ に 二 人 、 そして 秋 の 終わり ごろ に 一 人 。 なつ|||ふた|じん||あき||おわり|||ひと|じん "Two in "Thought of Summer" and one in "Thought of Autumn". 夏 ごろ に 会った 男 たち は 、 二 人 と も 福岡 の 人間 で 、 食事 に 連れてって もらったり 、 洋服 なんか を 買って くれる ような 男 で 、 年齢 は 分から ん が 、 かなり 年上 の 人 」 「 はい 、 そう です 」 なつ|||あった|おとこ|||ふた|じん|||ふくおか||にんげん||しょくじ||つれて って||ようふく|||かって|||おとこ||ねんれい||わから||||としうえ||じん||| 「 で 、 秋 の 終わり ごろ に 聞いた の が 、 佐賀 の 男性 で 、 こちら は 大学生 、 たまに ドライブ なんか に 出かけ とった ? |あき||おわり|||きいた|||さが||だんせい||||だいがくせい||どらいぶ|||でかけ| 「 はい 。 そう 聞きました 」 |きき ました 「 他 に は おらん のです ね ? た|||おら ん|| "Is there no one else? 「 はい 。 はっきり 覚えて る の は 三 人 だけ です 。 |おぼえて||||みっ|じん|| 他 に も 聞いた こと が あった かも しれません けど ......。 た|||きいた|||||しれ ませ ん| You may have heard of others. ...... もちろん メール を 交換 する だけ の 人 なら もっと 大勢 いた と 思います 」 眞子 は そこ まで 一気に 言う と 、 自分 は 佳乃 の 捜査 に 協力 して いる のであって 、 佳乃 の こと を 悪く 言って いる わけで は ない 、 と 心 の 中 で 自分 に 言いきかせた 。 |めーる||こうかん||||じん|||おおぜい|||おもい ます|まさこ||||いっきに|いう||じぶん||よしの||そうさ||きょうりょく||||よしの||||わるく|いって||||||こころ||なか||じぶん||いいきかせた Of course, I think there were many more people who just wanted to exchange e-mails." Mako said that she was cooperating with the investigation of Kano and not saying anything bad about him. 「 えっと 、 あなた の 他 に も 、 石橋 佳乃 さん から そういう 話 を 聞いて る ような 人 は おら んです か ね ? えっ と|||た|||いしばし|よしの||||はなし||きいて|||じん||||| 若い 刑事 の 長い 指 に は 、 健康 そうな 爪 が ついて いた 。 わかい|けいじ||ながい|ゆび|||けんこう|そう な|つめ|||

癖 な の か 、 その 爪先 を 指の腹 に 突き立て 、 深い 爪 の あと を 残す 。 くせ|||||つまさき||ゆび の はら||つき たて|ふかい|つめ||||のこす Er hat die Angewohnheit, seine Zehen in den Bauch seiner Finger zu stecken, was tiefe Nagelabdrücke hinterlässt. As a habit, he sticks his toes into the belly of his fingers, leaving deep nail marks.

「 私 に しか 、 話して ない と 思います 」 眞子 は 答えた 。 わたくし|||はなして|||おもい ます|まさこ||こたえた 「 じゃあ 、 繰り返し に なります けど 、 やっぱり 昨日 の 晩 、 石橋 佳乃 さん は 、 その 増尾 圭吾 に 会い に 行った と 思います か ? |くりかえし||なり ます|||きのう||ばん|いしばし|よしの||||ますお|けい われ||あい||おこなった||おもい ます| 大きく ため息 を ついた 刑事 に 、 眞子 は 、「 沙里 ちゃん は 疑っとるみたい やけど 、 それ は ほんとだ と 思います 」 と 強く 頷いた 。 おおきく|ためいき|||けいじ||まさこ||いさご さと|||うたがっと るみたい||||||おもい ます||つよく|うなずいた The detective sighed heavily, and Mako said, "Sari seems to be suspicious of you, but I think that's true. He nodded strongly. 「 そう です か ......」 Is that right? ......"

「 その あと に 誰 か に 連れていかれた と か ......」 |||だれ|||つれて いかれた|| "Dann hat ihn jemand weggebracht oder so. ......" "Then someone took him or her to ......."

「 もちろん そっち も 調べとります 」 刑事 に さっと 遮られ 、 眞子 は 出過ぎた こと を 言った と 、 すぐに 俯いた 。 |||しらべ とります|けいじ|||さえぎら れ|まさこ||で すぎた|||いった|||うつむいた Natürlich gehen wir auch dem nach. Sie wurde schnell von dem Detektiv unterbrochen, der sagte, dass Mako über das Ziel hinausgeschossen sei und sich sofort umdrehte. "Of course, we're checking that one, too." The detective quickly interrupted her, and Mako immediately turned over, saying that she had said something out of line. 「 やっぱり 、 その 増尾 圭吾 と 会うたん やろう ねぇ 。 ||ますお|けい われ||あう たん|| I'm sure you're meeting that Keigo Masuo, right? 行方 が 分からんって いう し ......」 刑事 が 下手くそな 字 の 並ぶ 手帳 に 視線 を 落とす 。 ゆくえ||わから んって|||けいじ||へたくそな|あざ||ならぶ|てちょう||しせん||おとす I don't know where he is and I can't find him. ......" The detective looks down at his notebook, which is lined with badly written characters. 「...... 分かりました 。 わかり ました すいません ね 、 いろいろ 訊いて しもうて から 」 |||じん いて|しも うて| Es tut mir leid, dass ich dir so viele Fragen gestellt habe."

刑事 に とつぜん そう 言わ れ 、 眞子 は 一瞬 、「 え ? けいじ||||いわ||まさこ||いっしゅん| もう 終わり です か ? |おわり|| 」 と 訊 き 返し そうに なった 。 |じん||かえし|そう に| " I was about to ask back.

そんな 眞子 の 気持ち も 知らず に 、 さっさと 立ち上がった 刑事 が 、「 お ー い ! |まさこ||きもち||しら ず|||たちあがった|けいじ|||-| Unaware of Mako's feelings, the detective quickly stood up and said, "Hey! 」 と 玄関口 に 立って いる 警官 に 声 を かける 。 |げんかん くち||たって||けいかん||こえ|| " I call out to the policeman standing at the entrance.

「 あの ......」 と 眞子 は 声 を かけた 。 ||まさこ||こえ||

「 何 か ? なん| 「 もう いいんでしょう か ? |いい ん でしょう| 「 あ 、 はいはい 。 |は いはい ほんと 時間 取らせて すいません でした ね 。 |じかん|とら せて||| お 友達 が こんな こと に なって 大変な とき に 」 |ともだち||||||たいへんな|| I'm so sorry to hear about your friend going through this.

廊下 へ 出る と 、 次に 話 を 聞かれる らしい 仲町 鈴香 が 、 泣き腫らした 目 で 立って いた 。 ろうか||でる||つぎに|はなし||きか れる||なかまち|すず かおり||なきはらした|め||たって| When I went out into the hallway, I saw Suzuka Nakamachi standing there with swollen eyes, apparently about to be interviewed next.

眞子 は 黙って すれ違った 。 まさこ||だまって|すれちがった Mako passed by without saying a word.

エレベーター に 乗った とたん 、 なんで 言わ なかった のだろう か と 眞子 は 思った 。 えれべーたー||のった|||いわ|||||まさこ||おもった As soon as she got on the elevator, she wondered why she had not told me.

もちろん この 事件 に 関係ない と は 思う 。 ||じけん||かんけいない|||おもう Of course, I don't think it has anything to do with this case.

しかし 佳乃 が 出会い系サイト で 知り合った 男 で 、 眞子 が 覚えて いる の は もう 一人 いる 。 |よしの||であい けい さいと||しりあった|おとこ||まさこ||おぼえて|||||ひとり| Es gibt jedoch noch einen anderen Mann, den Kano auf einer Dating-Website kennengelernt hat und an den sich Mako erinnert. However, there is another man whom Kano met on a dating site that Mako remembers.

でも 、 その 男 の こと が どうしても 若い 刑事 に 言えなかった 。 ||おとこ|||||わかい|けいじ||いえ なかった But I couldn't tell the young detective about the man.

言えば 、 自分 まで 佳乃 と 同類 の 女 だ と 思われ そうだった 。 いえば|じぶん||よしの||どうるい||おんな|||おもわ れ|そう だった Wenn ich es ihnen sagen würde, würden sie denken, dass ich eine Frau wie Yoshino bin. If I told them, they might think I was just like Yoshino.

出会い系 で 男 を 求める ような 女 の 友達 。 であい けい||おとこ||もとめる||おんな||ともだち I am friends with a woman who is looking for a man in the dating scene. そう 思われる の が 嫌で 、 若い 刑事 に 言えなかった 。 |おもわ れる|||いやで|わかい|けいじ||いえ なかった

この 判断 が 、 その後 の 捜査 方向 を 狂わせて しまう こと も 知らず に 。 |はんだん||そのご||そうさ|ほうこう||くるわせて||||しら ず| Sie waren sich nicht bewusst, dass diese Entscheidung zu einer späteren Fehlleitung der Untersuchung hätte führen können. They were unaware that this decision would skew the course of the investigation. Sin saber que esta decisión trastornaría el rumbo de las investigaciones posteriores.