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世界から猫が消えたなら (If Cats Disappeared from the World), 世界から猫が消えたなら:世界から電話が消えたなら:2

世界から猫が消えたなら:世界から電話が消えたなら:2

時計台 の 下 で 一 時間 が 経ち 、 寒さ で 僕 の 足 が 石畳 の 地面 と 同化 した その頃 、 彼女 が 小走り に やっ て きた 。

七 年 前 と まったく 変わって い ない 。

その 服装 も 、 走り 方 も 。 ひと つ だけ 違う の は 、 肩 まで あった 髪 が ばっさり 切ら れ 、 短く なって いる こと ぐらい だ 。

真っ白な 顔 を して いる 僕 を 見て 、 彼女 は 心配 そうに 声 を かける 。

「 どうした の ? 大丈夫 ?」

「 元気だった ?」

でも 「 お 久しぶり !」 で も なく 、 一言 目 が 「 大丈夫 ?」 と は 悲しい 限り だ 。 話せば 、 やはり 僕 が 一 時間 ほど 約束 の 時間 を 勘違い して いた ようだ 。

「 不便だ な 」 と 僕 が 言う と 、

「 そう かしら ?」 と 、 彼女 は 笑って 答えた 。

「 もう すぐ 死ぬ かも しれ ない んだ 」 彼女 と 入った カフェ で 僕 は あたたかい コーヒー を 飲み ながら 告白 した 。

彼女 は しばらく 押し黙り 、 ゆっくり と ココア を 飲む 。

そして 僕 の 方 を 向いて 言った 。 「 ふ 〜 ん 、 そう な の ?」

あまりに も 軽すぎる 反応 に 僕 は 愕然と する 。

僕 の 想定 の なか で は 、梅 「 どうして ?何 が あった の ? 」

竹 「 私 に できる こと が あったら 何でも 言って !」

松 「 うっ うっ うっ ( 押し黙った まま 嗚咽 )」

と いう こと だった のだ が 、 まさか の 梅 以下 の 反応 だ 。

でも 思い返して みれば 、 僕 自身 も 死 を 宣告 さ れた とき に 、 ずいぶん と 落ち着いて いた 。

自分 でも 実感 が なかった こと に 対して 、 他人 が 驚き 、 失望 し 、 嘆き 悲しむ こと が でき ない の は 当然 だ 。

どうして 人 は 、 自分 でも でき ない こと を 他人 に 期待 して しまう のだろう か 。

僕 は 彼女 に 、 驚いて ほしかった の か 、 それとも 悲しんで ほしかった の か 。

「 でも どうして 急に ?」

「 ちょっと ガン で さ ……」

「 そう …… 大変 ね 。 でも 全然 、 悲し そう じゃない の ね 。 人 って 死ぬ かも しれ ない って とき は 案外 そういう も の な の かしら ね 」

だって 悪魔 に 寿命 を 延ばして もらって る から 、 と は とても 言え ない 。

死ぬ 間際 に 、 初恋 の 人 に 頭 が おかしく なった と 思わ れ たい 男 は 世界中 に ひと り も い ない はずだ 。 それ に 僕 が し たい 話 は 、 こんな こと じゃ な い 。

「 で ね 、」

「 何 ?」

「 死ぬ かも しれ ない と なる と 、 自分 に ついて いろいろ と 聞いて みたり 、 確かめたり し たく なる もの で さ 」

「 ふ ー ん 、 そんな もの ?」

「 有り体 に 言う と 、 自分 の 生きて きた 意味 と いう か ね 」

「 やっぱ そういう の 気 に なる んだ 」

「 そりゃ 気 に なる よ 。 だから 僕 と 君 と の 思い出 の なか で 、 覚えて いる こと を いく つ か 聞いて おき たい んだ 。 どんな 些細 な こと でも 構わ ない 」

そこ まで 早口 に 伝える と 、 僕 は ぬるく なった コーヒー を 一気に 飲み干した 。

彼女 は 「 そんな ん だったら 前もって 言って おいて 欲しかった なあ 」 など と ぶつぶつ 言い ながら 考え 始めた 。

あまりに 居づらく なって 、 僕 は トイレ で ゆっくり と 用 を 足して 、 席 へ 戻った 。

「 トイレ の 回数 」

「 え ?」

「 多かった 」

開口一番 彼女 は 言った 。

「 あと 長かった 。 男 の くせ に 」

なんだ なんだ 。

いきなり そんな 話 か ?

しかも そんな こと 一 回 も 聞いた こと が なかった 。

でも よく 考える と 、 多い し 長い ような 気 が する 。 トイレ で は ついつい 考え込んで 別 世界 に いって しまい 、 のろのろ と 用 を 足し 、 手 を 洗って いる 自分 が いる 。 それ に 引き換え 、 彼女 は めったに トイレ に 行か なかった し 、 一緒に トイレ に 行って も いつも 僕 より 先 に 出て 、 僕 の こと を 待って いた 。

「 あと 、 ため息 多 すぎ 。 どんだけ 人生 悩んで る んだ よ ! って いつも 思って た 」

「 そう だった …… っけ ?」

「 お 酒 も 全然 飲め ない し 」

「 すみません ……」

「 そうそう 。 あと レストラン に 入る と 全然 注文 を 決め られ なかった 。 男 の くせ に 。 しかも 結局 いつも 頼む の は カレー の くせ に 。 それ で 怒る と すぐ へこんで 、 その うえ 立ち直り も 遅い 」

そこ まで 一気に 話す と 、 すごく 満足 した 表情 で 彼女 は ココア を ゆっくり と 飲んだ 。

う う 、 これ が 人生 最後に 聞く 話 な の か 。

僕 の 生きて きた 意味 は ? その 価値 は ?

非情 すぎる 。

仮にも かつて 愛した 男 に 対する 思い出 が これ な の か ? いや 非情な ので は ない 。 彼女 も 、 世 の 女性 たち と 同じく 、 過去 の 男 に 対して どこまでも シビア で ドライ だ と いう こと だ 。 きっと そう な のだ 。 僕 は 自分 に 言い聞かせた 。

「 あ 、 あと あれ だ 。電話 の とき は たくさん 話す くせ に 、 こう やって 会って る と 全然 話して くれ なかった 」

確かに そう だった かも しれ ない 。

あの 頃 、 僕ら は 電話 で は 二 時間 でも 三 時間 でも 話し 続ける こと が できた 。

歩いて 三十 分 の 距離 な の に 、 ときに は 八 時間 も 電話 して 「 これ なら 会って 話した 方 が よかった なあ 」 など と よく 笑い 合った 。

でも それ は 違った 。

僕ら は 会った ところ で 、 話す こと なんて なかった んだ 。 電話 の 、 その 物理 的に は 遠い けれども 、 心理 的に は 近い 距離 感 が 僕ら に 語る べき こと を 与え 、 何気ない 話 を 鮮やかに 彩って いた んだ と 思う 。

それにしても 、 僕 へ の 評価 が 低 すぎる 。

最後 な のだ から 、 もう 少し サービス が あって も よい ので は ない か ? 心 が 折れ そうに なり ながら も 僕 は 踏み込む 。

「 しかし 、 あれ だ ね 。 そんなに 駄目 で 、 よく 僕 と 三 年 半 も 付き合って くれた ね 」

「 ほんと !でも 、」

「 でも ?」

「 私 は 、 あなた の 電話 が 好きだった 。 何でもない 音楽 と か 小説 の こと を 、 あたかも 世界 が 変わる こと か の よう に 話して くれる 、 あなた が 好きだった 。 会う と ほとんど 話せ ない くせ に ね 」

「 確かに 僕 も 、 君 が その 日 に 観た 映画 の こと を 話して くれる の を 電話 で 聞いて 、 世界 が 変わる ような 気 が して いた よ 」

その あと も 僕ら は 、 ただただ とりとめ の ない 話 を 続けた 。

同級 生 の 中 で 一 番 痩せて いた 男 が 、 いま は 百二十 キロ の 巨漢 に なって しまった こと 。

一 番 地味 だった 女の子 が 卒業 後 すぐ 結婚 して 、 もう 四 人 も 子ども が いる こと 。

そんな 話 を して いたら 、 外 が 暗く なり はじめ 、 僕 は 彼女 を 家 まで 送って いく こと に なった 。

彼女 の 家 は 、 勤め先 の 映画 館 だった 。

映画 館 の 上 の 部屋 に 住んで いる のだ と いう 。

「 ついに 映画 と 結婚 した んだ ね 」 と 僕 が 言う と 、「 こら こら 、 そういう 冗談 は やめ なさい 」 と 彼女 は 笑い ながら 言った 。

「 お 父さん 、 元気 ?」

石畳 の 道 を ゆっくり と 歩き ながら 彼女 は 尋ねた 。

「 うーん …… どう な んだ ろ 」

「 まだ 、 仲直り して ない んだ ……」

「 母さん が 死んで から は 会って ない 」

「 お 母さん 、 ふたり に 仲良く して もらい たい って よく 言って た けど 」

「 期待 に は 応え られ ず 、 だ な 」

付き合って 半年 ぐらい の とき 、 彼女 を 家 に 連れて いった こと が ある 。

父 は 仕事場 から 出て こ なかった が 、 母さん は 彼女 の こと を とても 気 に 入り 、 お 菓子 を 出し 、 食事 を 出 し 、 そして また お 菓子 を 出して 、 なかなか 彼女 の こと を 帰さ なかった 。

「 ほんと は 女の子 が 欲しかった の よ 」 と 母さん は 彼女 に 言った 。 母さん に は 男 兄弟 しか い なかった し 、 レタス も キャベツ も オス だった 。

その あと も 、 僕 の 知ら ない ところ で 母さん は 彼女 の こと を 誘って 、 よく ふたり で 遊んで いた らしい 。

「 お 母さん 、 ほん と 素敵な 人 だった 」

彼女 は 笑う 。

「 そう ?」

「 新しい レストラン が できた ! と か 言って よく 連れて いって くれた し 。 料理 も 教えて くれた 。 あと 一緒に 美容院 に 行ったり ね 」

「 美容院 !? ぜんぜん 知ら なかった 」

母さん が 死んだ の は 、 僕 が 彼女 と 別れて から 三 年 が 経った 頃 だった 。

葬式 に やってきた 彼女 は 震え ながら 泣いて いた 。

そして 葬式 が 終わる まで 、 ずっと キャベツ を 抱いて い た 。 ひどく 混乱 し 、 うろうろ と 歩きまわる キャベツ を 見て い られ なかった のだ と 思う 。

母さん は 僕ら が 別れて から も 、 あの 子 は 良かった わ と 、 こと ある ごと に 言って いた 。

その 意味 が 、 キャベツ を 抱き ながら 泣いて いる 彼女 の 姿 を 見た とき に 分かった 気 が した 。

「 キャベツ くん は 元気 ?」

「 元気だ よ 」

「 でも どう する の ?

あなた が 死んだら 、 誰 が 面倒 みる の ?」

「 誰 か に 預けよう と は 思って る よ 」

「 そっか 。 どう しよう も なかったら 、 言って ね 」

「 ありがとう 」

急な 坂道 を 下った 先 に 映画 館 の 光 が 見えて きた 。

久しぶりに 見る その 映画 館 が 、 なぜ だ か とても 小さ く なって しまった ように 思える 。 あの 頃 の 僕 に は 、 もっと 大きくて 、 もっと カラフル に 見えて いた 。

同じ 感覚 は 、 あの 時計 台 で 待って いる とき に も あった 。

不動産 屋 や レストラン 、 学習 塾 に 花屋 。 スーパーマーケット が 改装 した こと 以外 は 、 町並み に さほど 大きな 変化 は なかった 。 けれども 今 の 僕 に は 、 見 慣れて いた 町 が ぐっと 小さく なって 、 ちょっと した ミニチュア に なって しまった か の ような 気 が した 。 それ は 町 が 縮小 して しまった の か 、 それとも 僕 の 感覚 が 拡大 した の か 、 おそらく その 両方 な のだろう と 僕 は 自分 を 納得 させた 。

「 あの さ 、」

「 何 ?」

「 僕たち 、 なんで 別れた んだ と 思う ?」

「 どうした の 突然 」

「 確かに 理由 が あった と 思う んだ けど 、 どうしても 思い出せ ない んだ 」

実は 今日 最後に 、 その こと を 彼女 に 聞こう と 思って いた 。

僕ら は なぜ 別れた の か 。

倦怠 と いえば それ まで な のだ が 、 どんなに 考えて も 決定 的な 理由 は 思い出せ なかった 。

「 じゃあ さ 、 覚えて る ?」

しばらく 黙って いた 彼女 は 突然 僕 の 方 を 向き 尋ねる 。

「 え ?」

「 私 の 好きな 食べ物 」

不意な 質問 。

十五 秒 経過 。

「 うーん 、 エビ フライ だ っけ ?」

「 不 正解 ! とうもろこし の 天ぷら ! 」

惜しい 。

揚げもの 違い だった か 。 と いう か 、 なんだ この 展開 ?

「 じゃあ 私 の 好きな 動物 は ?」

「 えっ ? うーん ……」

「 ニホンザル だ よ 」

そう だ そうだ と 相槌 を 打つ 間 も ない 。

「 じゃあ 、 私 が 一 番 好きな 飲み物 は ?」

なんだろう か 。

まったく 思い出せ ない 。

「 うーん …… すまない 。 降参 だ 」

「 ココア 。 さっき も 飲んで た でしょ 。 忘れた の ?」

そう だった 。

思い出した 。 彼女 は とうもろこし の 天ぷら が 大好きで 、 季節 に なる と 必ず 注文 して 、 これ が 世界 で 一 番 好きな 食べ物 だ と よく 話して いた 。 動物 園 に 行く と ニホンザル が 集まる 猿 山 から 離れ なか っ たし 、 冬 でも 夏 で も あたたかい ココア を 飲んで いた 。

別に 忘れて は い なかった 。

でも 思い出せ なかった 。 心 が 漬物 石 の ように 蓋 を して 、 彼女 と の 記憶 を 閉じ 込めよう と して いた のだろう 。

人 は 何 か を 覚える ため に 忘れる 、 と 聞いた こと が ある 。

忘却 は 前進 の ため に ある と 。 果たして そう な の だろう か 。 いざ 自分 が 死に 直面 して みる と 、 思い出す の は 無数に ある 瑣末 な 思い出 ばかり だ 。

「 忘れちゃ う もの な の ね 。 まあ でも 予想 通り 。 私 たち が 別れた 理由 も そんな もの よ 。 覚えて おく ほど の もの で も ない 」

「 そう かな ……」

「 でも きっかけ が ある と したら 卒業 旅行 かも しれ ない ね 」

「…… ブエノスアイレス か 。 懐かしい ね 」

あの 頃 の 僕ら は 、 とにかく 町 から 出 なかった 。

デート と いって も この 町 の なか を モノポリー の ように グルグル と 回って いる だけ 。 それ でも 僕ら は 退屈 する こと が なかった 。

大学 の 授業 が 終わる と 図書 館 で 待ち合わせ を して 、 映画 館 で 映画 を 観て 、 行きつけ の カフェ で のんびり 話して 、 彼女 の 部屋 で セックス を した 。

ときに は 彼女 が 弁当 を 作って 、 ケーブルカー に 乗って 町 一 番 の 見晴らし の よい 場所 で 食事 を したり も した けれど 、 その くらい で 僕ら に は 十分 だった 。

いま から 考える と ちょっと 信じ られ ない けれど 、 この 町 の サイズ 感 と 、 その とき の 僕ら ふたり の サイズ 感 が ちょうど 良かった のだ と 思う 。

僕ら は 三 年 半 ほど 付き合った 。

その 間 に 、 一 回 だけ 海外 旅行 に 行った こと が ある 。

アルゼンチン 、 ブエノスアイレス 。

それ が 最初で 最後 の 海外 旅行 だった 。

当時 の 僕ら は 、 香港 の 映画 監督 が その 街 を 舞台 に して 撮った 映画 に 夢中に なり 、 学生 最後 の 長い 休み に その 街 へ 旅行 する こと に した のだ 。

安い アメリカ 系 の 航空 会社 の 飛行機 ( やたら 寒くて 、 機内 食 が 粘土 の ようだった ) を 乗り継ぎ 、 二十 六 時間 かけて 僕ら は ブエノスアイレス に 到着 した 。

エセイサ 空港 から 、 怪しげな タクシー に 乗って セントロ へ 。

ホテル の 部屋 に 飛び込み ベッド に 倒れ込む 。 けれども 、 眠れ ない 。 ものすごく 疲れて いる はずな のに 、 体内 時計 は まだまだ 日本 時間 で 、 眠る こと が でき ない 。 ここ は 地球 の 裏側 だった 。

僕ら は 観念 し 、 ベッド から 飛び起きて 街 を 散策 する こと に した 。

街 に 響く バンドネオン の 音色 、 石畳 の 路上 で 踊る タンゴダンサー たち 。

空 が 低い ブエノスアイレス の 街並み を 眺め ながら 、 レコレータ 墓地 に 向かう 。 迷路 の ような 墓地 を さまよい 、 ようやく エビータ の 墓 を 見つける 。 白髪 の 老 ギタリスト が 奏でる タンゴ の メロディー を 聴き ながら 、 カフェ で 昼食 を とる 。

夕方 に なる と バス に 乗って ボカ へ 行く 。

三十 分 ほど 走り 、 バス が 狭い 道 を 抜ける と 、 カラフルな 街並み が 姿 を 現す 。 スカイブルー に マスタードイエロー 、 エメラルドグリーン や サーモンピンク 。 パステルカラー に 彩られた 木造 住宅 が 、 ところ 狭し と 並び 立つ 。 夕日 に 照らさ れて 光る 、 おもちゃ の ような 街 を 散歩 して 、 夜 は サン ・ テルモ の タンゲリーア 「 ラ ・ ベンタナ 」 へ 。 タンゴ の 熱気 が 僕ら を 異世界 へ と 連れて いく 。

それ から 数 日間 、 僕ら は 熱 に うかされた ように ブエノスアイレス の 街 を 歩き回った 。

泊まった 安宿 に は 、 トム さん が いた 。

トム さん と いって も 日本 人 だ 。

二十九 歳 の 青年 で 、 働いて いた CM 制作 会社 を 辞めて 、 世界 一 周 旅行 を して いた 。

夜 に なる と 、 僕ら は トム さん と 近く の スーパー マーケット で ワイン や 肉 や チーズ を 買い込み 、 共同 の ダイニング で それ ら を 食べ ながら 、 夜な夜な 語り合った 。

トム さん は 、 僕ら に いろいろな 世界 に ついて 話して くれた 。

インド の 横柄な 牛 たち 、 チベット の 小さな お 坊さん たち 、 イスタンブール の 青い モスク 、 ヘルシンキ の 白い 夜 、 リスボン で 見た どこまでも 広がる 海 。

トム さん は 、 酒 を 飲み 、 深く 酔い 、 まるで 夢 を 見る ように 話し 続けた 。

「 この 世界 に は たくさんの 残酷な こと が ある 。

でも それ と 同じ くらい 美しい もの が ある んだ 」

その 話 は 、 あの 小さな 町 を ぐるぐる と 回って いた 僕たち に は まったく 想像 が でき なかった 。

トム さん は 、 ときに 笑い 、 ときに 泣き ながら 、 僕ら の 話 に も 付き合って くれた 。 地球 の 裏側 で 、 僕ら 三 人 は とめど なく 話 し 続けた 。

いよいよ 日本 に 帰る 日 が 迫って きた ある 日 、 トム さん は 宿 に 帰って こ なかった 。

僕 と 彼女 は ワイン を 飲み ながら ずっと 待って いた が 、 結局 トム さん は 来 なかった 。

翌朝 、 僕ら は トム さん が 死んだ こと を 知った 。

アルゼンチン と チリ と の 国境 に ある キリスト 像 を 見 に 行き 、 乗って いた バス が 崖 下 へ 転落 した のだ と いう 。

まるで 夢 の なか に いる ような 気分 だった 。

まったく 実感 が なかった 。 いま でも トム さん が 、 ワインボトル を 片手 に 「 飲もう よ ! 」 と ダイニング に 入って くる 気 が した 。 でも トム さん は 帰って こ なかった 。 まるで 雲 の 上 に いる か の ように 、 現実感 が ない 一 日 を 僕ら は 過ごした 。

最後 の 日 、 僕ら は イグアス の 滝 に 向かった 。

空港 から 車 で 三十 分 。

そこ から 二 時間 歩き 〝 悪魔 の 喉笛 〟 に 到着 した 。 あの 香港 映画 に も 登場 した 、 世界 最大 の 滝 の 頂上 だ 。

そこ から は 大量 の 水 が 壮絶な 勢い で 流れ 落ちて いく 。

自然の 暴力 を 感じる 光景 だった 。

気付く と 、 隣 で 彼女 は 泣いて いた 。

声 を 上げ ながら 泣いて いた 。

だが 泣いて も 泣いて も 、 その 声 は 滝 の 音 に かき消さ れて いく 。

その とき 僕 は 実感 した 。

トム さん は 死んだ 。 もう 会う こと は でき ない 。 夜中 まで 語り合ったり 、 お 酒 を 飲んだり 、 食事 を したり する こと は もう でき ない のだ 。 それ は 僕 に とって も 彼女 に とって も 生まれて 初めて の 〝 実感 ある 死 〟 だった 。

あまりに も 人間 が 無力な その 場所 で 、 彼女 は 泣き 続けた 。

僕 は どう する こと も でき ず 、 地球 の なか に 飲みこま れて いく 白濁 した 水 を 呆然と 見つめ 続けた

世界から猫が消えたなら:世界から電話が消えたなら:2 せかい から ねこ が きえた なら|せかい から でんわ が きえた なら Wenn die Katze aus der Welt verschwindet: wenn das Telefon aus der Welt verschwindet: 2 If the cat disappeared from the world: If the phone disappeared from the world: 2 Si el gato desapareciera del mundo: si el teléfono desapareciera del mundo: 2 Si le chat disparaissait du monde : si le téléphone disparaissait du monde : 2 Se il gatto sparisse dal mondo: se il telefono sparisse dal mondo: 2 세상에서 고양이가 사라졌다면: 세상에서 전화가 사라졌다면: 전화기 Als de kat van de wereld verdween: als de telefoon van de wereld verdween: 2 Se o gato desaparecesse do mundo: se o telefone desaparecesse do mundo: 2 Если бы кошка исчезла из мира: если бы телефон исчез из мира: 2 Om katten försvann från världen: om telefonen försvann från världen: 2 如果猫从世界上消失:如果电话从世界上消失:2 如果猫从世界上消失:如果电话从世界上消失:2

時計台 の 下 で 一 時間 が 経ち 、 寒さ で 僕 の 足 が 石畳 の 地面 と 同化 した その頃 、 彼女 が 小走り に やっ て きた 。 とけい だい||した||ひと|じかん||たち|さむ さ||ぼく||あし||いしだたみ||じめん||どうか||そのころ|かのじょ||こばしり|||| Eine Stunde ging unter dem Glockenturm vorbei, und als mir die Kälte zu Füßen lag, um den Kopfsteinpflasterboden zu assimilieren, kam sie mit einem kleinen Schlag. An hour had passed under the clock tower, and my feet had become like the cobblestone ground from the cold, when she came trotting up to me. 钟楼下已经过去了一个小时,正当我的脚因寒冷而与鹅卵石地面同化时,她小跑着走了过来。 在鐘架下一個小時,當寒冷使我的腳吸收到鵝卵石地面中時,她開始衝刺。

七 年 前 と まったく 変わって い ない 。 なな|とし|ぜん|||かわって|| Es hat sich vor sieben Jahren überhaupt nicht verändert. Nothing has changed at all from seven years ago.

その 服装 も 、 走り 方 も 。 |ふくそう||はしり|かた| Beide Kleider und Laufweise. The way they dress, the way they run. ひと つ だけ 違う の は 、 肩 まで あった 髪 が ばっさり 切ら れ 、 短く なって いる こと ぐらい だ 。 |||ちがう|||かた|||かみ|||きら||みじかく||||| Eine Sache, die anders ist, ist, dass das Haar, das bis zur Schulter war, abgeschnitten ist und es kürzer ist. The only difference is that the hair that was up to the shoulders has been cut off and shortened. 唯一不同的是,她齐肩的头发被剪掉了,变得更短了。

真っ白な 顔 を して いる 僕 を 見て 、 彼女 は 心配 そうに 声 を かける 。 まっしろな|かお||||ぼく||みて|かのじょ||しんぱい|そう に|こえ|| Sieht mich an, die ein weißes Gesicht hat, ruft sie mich ängstlich an. Looking at me who has a white face, she calls me anxiously.

「 どうした の ? "Was ist los?" What's wrong? 大丈夫 ?」 だいじょうぶ Bist du in Ordnung? Are you okay?

「 元気だった ?」 げんきだった "Wie warst du?

でも 「 お 久しぶり !」 で も なく 、 一言 目 が 「 大丈夫 ?」 と は 悲しい 限り だ 。 ||ひさしぶり||||いちげん|め||だいじょうぶ|||かなしい|かぎり| "Aber" Lange nicht gesehen! But it's not "it's been a long time!", But the first word is "is it okay?" As long as it's sad. 但令人难过的是,她的第一句话是“你还好吗?”而不是“好久不见了!” 但令人難過的是,她的第一句話是“你還好嗎?”而不是“好久不見了!” 話せば 、 やはり 僕 が 一 時間 ほど 約束 の 時間 を 勘違い して いた ようだ 。 はなせば||ぼく||ひと|じかん||やくそく||じかん||かんちがい||| Nun, der erste ist "Bist du OK?" Speaking of which, it seems that I had misunderstood the promised time for about an hour. 原来我对承诺的时间有一个小时左右的误解。 原來我對承諾的時間有一個小時左右的誤解。

「 不便だ な 」 と 僕 が 言う と 、 ふべんだ|||ぼく||いう| Es ist traurig, solange es traurig ist. It is sad as long as it is sad. 我说:“那很不方便。”

「 そう かしら ?」 と 、 彼女 は 笑って 答えた 。 |||かのじょ||わらって|こたえた Wie es scheint, habe ich die festgesetzte Zeit für ungefähr eine Stunde schon falsch verstanden. As if speaking, it seems that I had already misunderstood the appointed time for about an hour. “我想是吧?”她笑着回答。 「我猜是這樣?」她笑著回答。

「 もう すぐ 死ぬ かも しれ ない んだ 」 ||しぬ|||| Wenn ich sage "Es ist unbequem", "Ist das so?" "Maybe I'll die soon." 彼女 と 入った カフェ で 僕 は あたたかい コーヒー を 飲み ながら 告白 した 。 かのじょ||はいった|かふぇ||ぼく|||こーひー||のみ||こくはく| Sie antwortete mit einem Lächeln. At the cafe I entered with her, I confessed over a cup of warm coffee. 我一边在咖啡馆喝着热咖啡,一边向她表白了自己的感受。 我一邊在咖啡館喝著熱咖啡,一邊向她表白了自己的感受。

彼女 は しばらく 押し黙り 、 ゆっくり と ココア を 飲む 。 かのじょ|||おしだまり|||ここあ||のむ "Du kannst jetzt sterben." 她沉默了一會兒,慢慢地喝了可可。

そして 僕 の 方 を 向いて 言った 。 |ぼく||かた||むいて|いった And he turned to me and said. 然后他转向我说道。 「 ふ 〜 ん 、 そう な の ?」 “嗯,是这样吗?”

あまりに も 軽すぎる 反応 に 僕 は 愕然と する 。 ||かる すぎる|はんのう||ぼく||がくぜんと| I was astonished at how lightly he reacted. 我對反應如此之輕感到驚訝。

僕 の 想定 の なか で は 、梅 「 どうして ?何 が あった の ? 」 ぼく||そうてい|||||うめ||なん||| In my assumption, Ume "Why? What happened?" 在我的假設中,Ume 說:“為什麼?發生了什麼?”

竹 「 私 に できる こと が あったら 何でも 言って !」 たけ|わたくし||||||なんでも|いって I am stunned by the reaction that is too light. 采取:“如果有什么我能做的,就告诉我!”

松 「 うっ うっ うっ ( 押し黙った まま 嗚咽 )」 まつ||||おしだまった||おえつ Matsu "Uuuuuuu (Silenced and sobbing)"

と いう こと だった のだ が 、 まさか の 梅 以下 の 反応 だ 。 ||||||||うめ|いか||はんのう| That was the reaction below Ume.

でも 思い返して みれば 、 僕 自身 も 死 を 宣告 さ れた とき に 、 ずいぶん と 落ち着いて いた 。 |おもいかえして||ぼく|じしん||し||せんこく|||||||おちついて| But in retrospect, when I was sentenced to death, I was quite calm. 但回想起来,当我被判死刑时,我自己却很平静。

自分 でも 実感 が なかった こと に 対して 、 他人 が 驚き 、 失望 し 、 嘆き 悲しむ こと が でき ない の は 当然 だ 。 じぶん||じっかん|||||たいして|たにん||おどろき|しつぼう||なげき|かなしむ|||||||とうぜん| Bamboo "Tell me anything you can do for me! 其他人对他们自己没有意识到的事情感到惊讶、失望和悲伤是很自然的。

どうして 人 は 、 自分 でも でき ない こと を 他人 に 期待 して しまう のだろう か 。 |じん||じぶん||||||たにん||きたい|||| Matsu "Wow (you kept silent aside)"

僕 は 彼女 に 、 驚いて ほしかった の か 、 それとも 悲しんで ほしかった の か 。 ぼく||かのじょ||おどろいて|||||かなしんで||| Although it was to say, it is no less a reaction than Ume.

「 でも どうして 急に ?」 ||きゅうに

「 ちょっと ガン で さ ……」 |がん|| It is no wonder that others could be surprised, disappointed, lamented and saddened against what they did not feel.

「 そう …… 大変 ね 。 |たいへん| Why do people expect others to do things they can not do? でも 全然 、 悲し そう じゃない の ね 。 |ぜんぜん|かなし||じゃ ない|| Did I want her to be surprised or sad? 人 って 死ぬ かも しれ ない って とき は 案外 そういう も の な の かしら ね 」 じん||しぬ|||||||あんがい||||||| When people may die, I wonder if that is the case. " 当你想到一个人死亡的可能性时,我想知道当你想到它时是否会发生这种情况。

だって 悪魔 に 寿命 を 延ばして もらって る から 、 と は とても 言え ない 。 |あくま||じゅみょう||のばして|||||||いえ| "A little bit of cancer ......"

死ぬ 間際 に 、 初恋 の 人 に 頭 が おかしく なった と 思わ れ たい 男 は 世界中 に ひと り も い ない はずだ 。 しぬ|まぎわ||はつこい||じん||あたま|||||おもわ|||おとこ||せかいじゅう||||||| There must be no man in the world who wants to think that his first love is crazy just before he dies. 我想世界上没有哪个男人会希望他的初恋情人在他快要死的时候认为他疯了。 我想世界上沒有一個人會希望他的初戀情人在他快要死的時候認為他瘋了。 それ に 僕 が し たい 話 は 、 こんな こと じゃ な い 。 ||ぼく||||はなし|||||| But it is not sad at all. Ale wcale nie wygląda to smutno. 再说了,这也不是我想讲的故事。

「 で ね 、」 I wonder if people might die, I wonder if that's the way it is. Zastanawiam się, czy to nieoczekiwane, że ludzie mogą umrzeć. ”

「 何 ?」 なん Because the devil has longevity extended, I can not say very much. Nie mogę tego powiedzieć, ponieważ diabeł przedłużył moje życie. “ 什么 ?”

「 死ぬ かも しれ ない と なる と 、 自分 に ついて いろいろ と 聞いて みたり 、 確かめたり し たく なる もの で さ 」 しぬ|||||||じぶん|||||きいて||たしかめたり|||||| Before the death, there should be no one in the world who wants to think that the head of the first love became frail. Na świecie nie powinno być człowieka, który chciałby zwariować na punkcie swojej pierwszej miłości w chwili śmierci. “当你认为自己可能会死时,你会想询问并找出很多关于你自己的事情。” “當你認為自己可能會死時,你會想詢問並找出很多關於你自己的事情。”

「 ふ ー ん 、 そんな もの ?」 |-||| "Hmm, is that something like that?" “嗯,类似的事?”

「 有り体 に 言う と 、 自分 の 生きて きた 意味 と いう か ね 」 あり からだ||いう||じぶん||いきて||いみ|||| "To put it tangibly, it means that I have lived." “如果具体地说,这就是我生命的意义。” “如果具體地說,這就是我生命的意義。”

「 やっぱ そういう の 気 に なる んだ 」 や っぱ|||き||| "Ich wusste, dass du dich für solche Dinge interessierst." "I feel like that." “这就是我好奇的。”

「 そりゃ 気 に なる よ 。 |き||| "If you think you may die, you will want to ask about various things about you and make sure of it." ``这让我很好奇。 だから 僕 と 君 と の 思い出 の なか で 、 覚えて いる こと を いく つ か 聞いて おき たい んだ 。 |ぼく||きみ|||おもいで||||おぼえて|||||||きいて||| So I want to ask you some of the things you remember in your memories of me and you. 这就是为什么我想问你一些我记得的关于你和我的事情。 どんな 些細 な こと でも 構わ ない 」 |ささい||||かまわ| "If you talk about a body, do you mean the meaning of your life?" 这件事有多么微不足道并不重要。”

そこ まで 早口 に 伝える と 、 僕 は ぬるく なった コーヒー を 一気に 飲み干した 。 ||はやくち||つたえる||ぼく||||こーひー||いっきに|のみほした I told him so quickly that I drank the slimy coffee all at once. 说得很快,我一口气喝掉了温热的咖啡。 說得很快,我一口氣喝掉了溫熱的咖啡。

彼女 は 「 そんな ん だったら 前もって 言って おいて 欲しかった なあ 」 など と ぶつぶつ 言い ながら 考え 始めた 。 かのじょ|||||まえもって|いって||ほしかった|||||いい||かんがえ|はじめた "Oh my goodness. 她一边想,一边嘟囔道:“如果是这样的话,我希望你能提前告诉我。” 她一邊想,一邊嘟囔道:“如果是這樣的話,我希望你能提前告訴我。”

あまりに 居づらく なって 、 僕 は トイレ で ゆっくり と 用 を 足して 、 席 へ 戻った 。 |い づらく||ぼく||といれ||||よう||たして|せき||もどった So in my memory with you I want to hear some things I remember. 我感觉太不舒服了,去卫生间解了个便,然后回到了座位上。 我覺得太不舒服了,就去衛生間解了個便,然後回到了座位上。

「 トイレ の 回数 」 といれ||かいすう I do not mind what a trivial thing is. "

「 え ?」 " Huh ?"

「 多かった 」 おおかった She began thinking while saying "I wanted you to say it beforehand if it was so".

開口一番 彼女 は 言った 。 かいこういちばん|かのじょ||いった It became too hard to stay, I slowly added the rest in the toilet and returned to the seat. 她说了第一句话。 她說了第一句話。

「 あと 長かった 。 |ながかった "It was a long time. ``那是很长一段时间了。 男 の くせ に 」 おとこ||| To the habit of a man "

なんだ なんだ 。 What is it?

いきなり そんな 話 か ? ||はなし|

しかも そんな こと 一 回 も 聞いた こと が なかった 。 |||ひと|かい||きいた||| "It's been long. 我从来没有听说过这样的事情。

でも よく 考える と 、 多い し 長い ような 気 が する 。 ||かんがえる||おおい||ながい||き|| To a man 's habit " トイレ で は ついつい 考え込んで 別 世界 に いって しまい 、 のろのろ と 用 を 足し 、 手 を 洗って いる 自分 が いる 。 といれ||||かんがえこんで|べつ|せかい||||||よう||たし|て||あらって||じぶん|| 进了卫生间,我陷入了沉思,恍惚间进入了另一个世界,悠闲地大小便、洗手。 進了浴室,我陷入了沉思,恍惚間進入了另一個世界,悠閒地大小便、洗手。 それ に 引き換え 、 彼女 は めったに トイレ に 行か なかった し 、 一緒に トイレ に 行って も いつも 僕 より 先 に 出て 、 僕 の こと を 待って いた 。 ||ひきかえ|かのじょ|||といれ||いか|||いっしょに|といれ||おこなって|||ぼく||さき||でて|ぼく||||まって| Suddenly such a story? 另一方面,她很少去洗手间,即使我们一起去洗手间,她也总是比我先出来等我。

「 あと 、 ため息 多 すぎ 。 |ためいき|おお| Moreover, I have never heard such a thing once. 「还有,我叹息太多了。 どんだけ 人生 悩んで る んだ よ ! どん だけ|じんせい|なやんで||| I'm worried about my life! 你对生活有多少担忧? って いつも 思って た 」 ||おもって| In the toilet, I thought about going to another world, adding my work and adding my hands, and I am washing my hands.

「 そう だった …… っけ ?」 In exchange, she rarely went to the toilet, and even when I went to the toilet with her, she always left me ahead of me and was waiting for me.

「 お 酒 も 全然 飲め ない し 」 |さけ||ぜんぜん|のめ|| "There are too many sighs. “我根本不能喝酒。”

「 すみません ……」 How long have you been suffering from life! Jak bardzo martwisz się o swoje życie!

「 そうそう 。 そう そう I always thought that. " あと レストラン に 入る と 全然 注文 を 決め られ なかった 。 |れすとらん||はいる||ぜんぜん|ちゅうもん||きめ|| " Was it so ? 而且,当我走进餐厅时,我根本无法决定点什么。 男 の くせ に 。 おとこ||| "I can't drink at all." „W ogóle nie mogę pić alkoholu”. 尽管我是个男人。 しかも 結局 いつも 頼む の は カレー の くせ に 。 |けっきょく||たのむ|||かれー||| Moreover, after all, I always ask for curry. それ で 怒る と すぐ へこんで 、 その うえ 立ち直り も 遅い 」 ||いかる||||||たちなおり||おそい So when I get angry, I get dented, and I'm slow to recover. " 所以当我生气的时候,我很快就会变得沮丧,而且恢复起来也很慢。”

そこ まで 一気に 話す と 、 すごく 満足 した 表情 で 彼女 は ココア を ゆっくり と 飲んだ 。 ||いっきに|はなす|||まんぞく||ひょうじょう||かのじょ||ここあ||||のんだ After entering the restaurant I could not decide an order at all. Potem, kiedy wszedłem do restauracji, nie mogłem w ogóle zdecydować o kolejności.

う う 、 これ が 人生 最後に 聞く 話 な の か 。 ||||じんせい|さいごに|きく|はなし||| To a man 's habit. Być mężczyzną.

僕 の 生きて きた 意味 は ? ぼく||いきて||いみ| In the end, I always ask for curry. I w końcu zawsze proszę o nawyki curry. その 価値 は ? |かち| As soon as he gets angry he will soon hesitate, and he will be brought back again. " Kiedy się denerwuję, od razu się wgniatam, a potem powoli wracam do zdrowia ”.

非情 すぎる 。 ひじょう| Talking all the way to the end, she slowly drank cocoa with a very satisfying expression. 太没心没肺了。 太沒心沒肺了。

仮にも かつて 愛した 男 に 対する 思い出 が これ な の か ? かりにも||あいした|おとこ||たいする|おもいで||||| Well, is this the last story you hear in life? 即使这是我曾经爱过的男人的记忆? いや 非情な ので は ない 。 |ひじょうな||| What is the meaning of my life? 不,不是因为我没心没肺。 彼女 も 、 世 の 女性 たち と 同じく 、 過去 の 男 に 対して どこまでも シビア で ドライ だ と いう こと だ 。 かのじょ||よ||じょせい|||おなじく|かこ||おとこ||たいして||しびあ||どらい||||| What is its value? 她和世界上所有的女人一样,对过去的男人极其严厉和冷漠。 她和世界上所有的女人一樣,對過去的男人極為嚴厲和冷漠。 きっと そう な のだ 。 It is too heartless. 僕 は 自分 に 言い聞かせた 。 ぼく||じぶん||いいきかせた Is this a memorial for a man I once loved? 我告诉自己。 我告訴自己。

「 あ 、 あと あれ だ 。電話 の とき は たくさん 話す くせ に 、 こう やって 会って る と 全然 話して くれ なかった 」 ||||でんわ|||||はなす|||||あって|||ぜんぜん|はなして|| No, it is not ruthless. “哦,还有那个。我们打电话的时候他会说很多话,但是当我们这样见面的时候,他就根本不说话了。”

確かに そう だった かも しれ ない 。 たしかに||||| She, like the ladies of the world, is told that it is severe and severe to any past man.

あの 頃 、 僕ら は 電話 で は 二 時間 でも 三 時間 でも 話し 続ける こと が できた 。 |ころ|ぼくら||でんわ|||ふた|じかん||みっ|じかん||はなし|つづける||| It must be so.

歩いて 三十 分 の 距離 な の に 、 ときに は 八 時間 も 電話 して 「 これ なら 会って 話した 方 が よかった なあ 」 など と よく 笑い 合った 。 あるいて|さんじゅう|ぶん||きょり||||||やっ|じかん||でんわ||||あって|はなした|かた|||||||わらい|あった I told myself.

でも それ は 違った 。 |||ちがった "Oh, after that. „Och, to wszystko.

僕ら は 会った ところ で 、 話す こと なんて なかった んだ 。 ぼくら||あった|||はなす|||| Even though I talked a lot when I was on the phone, I did not talk at all when I saw this way. " Musiałem dużo rozmawiać, gdy rozmawiałem przez telefon, ale wcale mi nie powiedział, że się spotykam. ” 当我们见面时,我们没有什么可谈的。 電話 の 、 その 物理 的に は 遠い けれども 、 心理 的に は 近い 距離 感 が 僕ら に 語る べき こと を 与え 、 何気ない 話 を 鮮やかに 彩って いた んだ と 思う 。 でんわ|||ぶつり|てきに||とおい||しんり|てきに||ちかい|きょり|かん||ぼくら||かたる||||あたえ|なにげない|はなし||あざやかに|いろどって||||おもう It may have been true. Może tak było. 我认为电话这种物理上遥远但心理上亲密的感觉让我们有话可说,并让普通的谈话变得愉快。 我認為電話這種物理上遙遠但心理上親密的感覺讓我們有話要說,並讓普通的談話變得愉快。

それにしても 、 僕 へ の 評価 が 低 すぎる 。 |ぼく|||ひょうか||てい| At that time, we were able to continue talking on the phone for two or three hours. 即便如此,你对我的评价还是太低了。

最後 な のだ から 、 もう 少し サービス が あって も よい ので は ない か ? さいご|||||すこし|さーびす|||||||| Even though it was a distance of 30 minutes on foot, sometimes I called the eighth hour and laughed a lot with laughing, such as "It was better for the person to meet and talk to you". 既然是最后一次了,服务再多一点不是更好吗? 心 が 折れ そうに なり ながら も 僕 は 踏み込む 。 こころ||おれ|そう に||||ぼく||ふみこむ I go in, even though my heart is about to break. 尽管我的心快要碎了,但我还是坚持了下来。 儘管我的心快要碎了,我還是堅持了下來。

「 しかし 、 あれ だ ね 。 We met, we never talked. そんなに 駄目 で 、 よく 僕 と 三 年 半 も 付き合って くれた ね 」 |だめ|||ぼく||みっ|とし|はん||つきあって|| Though physically far from the phone, psychologically close feeling of distance gave us what to tell us, I think that the casual story was vividly coloring. 他没那么坏,所以他陪了我三年半。”

「 ほんと !でも 、」 Even so, the evaluation for me is too low.

「 でも ?」 As it is the last time, is there any way to have a little more services?

「 私 は 、 あなた の 電話 が 好きだった 。 わたくし||||でんわ||すきだった I will step on despite my heart being broken. 何でもない 音楽 と か 小説 の こと を 、 あたかも 世界 が 変わる こと か の よう に 話して くれる 、 あなた が 好きだった 。 なんでもない|おんがく|||しょうせつ|||||せかい||かわる||||||はなして||||すきだった "But that's it. 我喜欢你谈论音乐和小说等琐碎的事情,就好像它们会改变世界一样。 我喜歡你談論音樂和小說等瑣碎的事情,就好像它們會改變世界一樣。 会う と ほとんど 話せ ない くせ に ね 」 あう|||はなせ|||| It was not that much, I often danced with me for three and a half years. " 尽管我们见面时几乎不说话。”

「 確かに 僕 も 、 君 が その 日 に 観た 映画 の こと を 話して くれる の を 電話 で 聞いて 、 世界 が 変わる ような 気 が して いた よ 」 たしかに|ぼく||きみ|||ひ||みた|えいが||||はなして||||でんわ||きいて|せかい||かわる||き|||| "Sure, I also felt like the world would change when I heard on the phone that you would talk about the movie you watched that day." “当我在电话里听到你告诉我那天你看的电影时,我感觉世界都变了。”

その あと も 僕ら は 、 ただただ とりとめ の ない 話 を 続けた 。 |||ぼくら||||||はなし||つづけた After that, we continued to talk about nothing more than what we could think of. 之後我們就繼續閒聊。

同級 生 の 中 で 一 番 痩せて いた 男 が 、 いま は 百二十 キロ の 巨漢 に なって しまった こと 。 どうきゅう|せい||なか||ひと|ばん|やせて||おとこ||||ひゃくにじゅう|きろ||きょかん|||| The skinniest guy in my class has now become a huge man weighing 120 kilograms. 那个曾经是同学中最瘦的男人,现在已经变成了一个体重120公斤的巨人。

一 番 地味 だった 女の子 が 卒業 後 すぐ 結婚 して 、 もう 四 人 も 子ども が いる こと 。 ひと|ばん|じみ||おんなのこ||そつぎょう|あと||けっこん|||よっ|じん||こども||| "I liked your phone. 那个最谦虚的女孩一毕业就结婚了,现在有四个孩子。

そんな 話 を して いたら 、 外 が 暗く なり はじめ 、 僕 は 彼女 を 家 まで 送って いく こと に なった 。 |はなし||||がい||くらく|||ぼく||かのじょ||いえ||おくって|||| I like you like music that is nothing and novels, as if the world changed. Lubiłem cię, ponieważ mówili o muzyce lub powieściach, które były niczym innym, jak gdyby świat się zmieniał. 当我们谈论这件事时,外面天开始黑了,我决定送她回家。

彼女 の 家 は 、 勤め先 の 映画 館 だった 。 かのじょ||いえ||つとめさき||えいが|かん| You can hardly talk when you meet. " Kiedy cię spotykam, prawie nie mogę z tobą rozmawiać ”. 她的家就是她工作的电影院。

映画 館 の 上 の 部屋 に 住んで いる のだ と いう 。 えいが|かん||うえ||へや||すんで|||| "To be sure, I also felt that the world would change as I listened to the phone that you told me about the movie you saw that day."

「 ついに 映画 と 結婚 した んだ ね 」 と 僕 が 言う と 、「 こら こら 、 そういう 冗談 は やめ なさい 」 と 彼女 は 笑い ながら 言った 。 |えいが||けっこん|||||ぼく||いう|||||じょうだん|||||かのじょ||わらい||いった After that, we just continued to talk about rambly. Potem kontynuowaliśmy wędrującą historię. “你终于嫁给了电影,”我说,她笑着说,“别再开这样的玩笑了。”

「 お 父さん 、 元気 ?」 |とうさん|げんき The man who was the thinnest among classmates has now become a giant of 120 kilometers. Człowiek, który był najcieńszym z jego kolegów z klasy, stał się gigantem o wadze 120 kilogramów.

石畳 の 道 を ゆっくり と 歩き ながら 彼女 は 尋ねた 。 いしだたみ||どう||||あるき||かのじょ||たずねた The girl who was pretty simple got married immediately after graduation and that there are four more children. Najbardziej zwyczajna dziewczyna wyszła za mąż wkrótce po ukończeniu studiów i ma teraz czworo dzieci.

「 うーん …… どう な んだ ろ 」 "Hmmm, ......, was denkst du?" After doing such a story, outside began to gloom, I decided to send her home. Kiedy mówiłem o takich rzeczach, na zewnątrz zaczęło ciemnieć i postanowiłem odesłać ją do domu. “嗯……我想知道发生了什么事。”

「 まだ 、 仲直り して ない んだ ……」 |なかなおり||| Her house was a movie theater where I worked. “我们还没和好……”

「 母さん が 死んで から は 会って ない 」 かあさん||しんで|||あって| It is said to live in a room above the movie theater.

「 お 母さん 、 ふたり に 仲良く して もらい たい って よく 言って た けど 」 |かあさん|ふた り||なかよく||||||いって|| "I finally got married to the movie," I said, "Please stop these jokes," she said with laughter. “妈妈,您总是说你们俩想要和睦相处。”

「 期待 に は 応え られ ず 、 だ な 」 きたい|||こたえ||||

付き合って 半年 ぐらい の とき 、 彼女 を 家 に 連れて いった こと が ある 。 つきあって|はんとし||||かのじょ||いえ||つれて|||| When we had been dating for about six months, I once took her home.

父 は 仕事場 から 出て こ なかった が 、 母さん は 彼女 の こと を とても 気 に 入り 、 お 菓子 を 出し 、 食事 を 出 し 、 そして また お 菓子 を 出して 、 なかなか 彼女 の こと を 帰さ なかった 。 ちち||しごとば||でて||||かあさん||かのじょ|||||き||はいり||かし||だし|しょくじ||だ|||||かし||だして||かのじょ||||かえさ| "Well ... how is it?" 她爸爸没有下班,但妈妈却很疼她,给她吃糖,然后给她饭菜,然后再给她更多的糖,从来不让她回家。

「 ほんと は 女の子 が 欲しかった の よ 」 と 母さん は 彼女 に 言った 。 ||おんなのこ||ほしかった||||かあさん||かのじょ||いった "I have not reconciled yet ..." “实际上,我想要一个女孩,”她的母亲告诉她。 母さん に は 男 兄弟 しか い なかった し 、 レタス も キャベツ も オス だった 。 かあさん|||おとこ|きょうだい|||||れたす||きゃべつ||おす| "I have not met since my mother died."

その あと も 、 僕 の 知ら ない ところ で 母さん は 彼女 の こと を 誘って 、 よく ふたり で 遊んで いた らしい 。 |||ぼく||しら||||かあさん||かのじょ||||さそって||ふた り||あそんで|| "My mother said that I wanted to make friends get along well."

「 お 母さん 、 ほん と 素敵な 人 だった 」 |かあさん|||すてきな|じん| "I can not respond to expectations,"

彼女 は 笑う 。 かのじょ||わらう I have brought her home when I dated about six months.

「 そう ?」 My father did not come out of work, but her mother cared a lot about her, gave her sweets, had dinner, and got some sweets, and she did not return her very easily. Mój ojciec nie wyszedł z pracy, ale mama bardzo się o nią martwiła, podawała słodycze, jadła posiłek i znów podawała słodycze i nie zwróciła jej łatwo.

「 新しい レストラン が できた ! あたらしい|れすとらん|| "I really wanted a girl," she told her. „Naprawdę chciałam dziewczynę” - powiedziała jej matka. と か 言って よく 連れて いって くれた し 。 ||いって||つれて||| My mother had only brothers, both lettuce and cabbage were males. Moja matka miała tylko brata, a sałata i kapusta były płci męskiej. 他经常带我一起去。 料理 も 教えて くれた 。 りょうり||おしえて| Even after that, my mother invited her in a location I do not know, he seems to have played well in the lid. Potem wydaje się, że matka często ją zapraszała i bawiła się z nią w miejscu, którego nie znałem. あと 一緒に 美容院 に 行ったり ね 」 |いっしょに|びよういん||おこなったり| We also go to the beauty salon together." „Mamo, to była naprawdę miła osoba”.

「 美容院 !? ぜんぜん 知ら なかった 」 びよういん||しら| "Beauty salon!? I didn't know that at all." Ona się śmieje.

母さん が 死んだ の は 、 僕 が 彼女 と 別れて から 三 年 が 経った 頃 だった 。 かあさん||しんだ|||ぼく||かのじょ||わかれて||みっ|とし||たった|ころ| "Tak?

葬式 に やってきた 彼女 は 震え ながら 泣いて いた 。 そうしき|||かのじょ||ふるえ||ないて| "We have a new restaurant! „Mamy nową restaurację!

そして 葬式 が 終わる まで 、 ずっと キャベツ を 抱いて い た 。 |そうしき||おわる|||きゃべつ||いだいて|| He told me to go with him often. Często zabierałem go ze sobą. ひどく 混乱 し 、 うろうろ と 歩きまわる キャベツ を 見て い られ なかった のだ と 思う 。 |こんらん||||あるきまわる|きゃべつ||みて||||||おもう He also taught me cooking. Nauczyłem się także gotować. 我认为他太困惑了,以至于无法忍受看着卷心菜四处游荡。 我認為他太困惑了,以至於無法忍受看著捲心菜四處遊蕩。

母さん は 僕ら が 別れて から も 、 あの 子 は 良かった わ と 、 こと ある ごと に 言って いた 。 かあさん||ぼくら||わかれて||||こ||よかった|||||||いって| And we ’re going to Bionin together. ” Pójdę też razem do Biyoin ”. 即使我们分手后,我妈妈还是时不时地说她有多好。 即使我們分手後,我媽媽還是時不時地說她有多好。

その 意味 が 、 キャベツ を 抱き ながら 泣いて いる 彼女 の 姿 を 見た とき に 分かった 気 が した 。 |いみ||きゃべつ||いだき||ないて||かのじょ||すがた||みた|||わかった|き|| "Beauty salon !? I never knew it."

「 キャベツ くん は 元気 ?」 きゃべつ|||げんき Three years have passed since my mother broke up with her as she died.

「 元気だ よ 」 げんきだ| She came at the funeral and was crying while trembling.

「 でも どう する の ? But what are you going to do? “但是我们要做什么呢?

あなた が 死んだら 、 誰 が 面倒 みる の ?」 ||しんだら|だれ||めんどう|| I think that I was terribly confused and I could not watch the cabbage walking around. 如果你死了谁来照顾你? ”

「 誰 か に 預けよう と は 思って る よ 」 だれ|||あずけよう|||おもって|| My mother said that even though we broke up, that girl was okay. Nawet po rozstaniu moja matka powiedziała, że jest dobra, za każdym razem, gdy coś się dzieje. “我正在考虑把它留给某人。”

「 そっか 。 I felt that the meaning was understood when I saw her appearing crying while embracing the cabbage. どう しよう も なかったら 、 言って ね 」 ||||いって| 如果你无能为力,就告诉我吧。”

「 ありがとう 」

急な 坂道 を 下った 先 に 映画 館 の 光 が 見えて きた 。 きゅうな|さかみち||くだった|さき||えいが|かん||ひかり||みえて| 在陡坡的尽头,我可以看到一家电影院的灯光。

久しぶりに 見る その 映画 館 が 、 なぜ だ か とても 小さ く なって しまった ように 思える 。 ひさしぶりに|みる||えいが|かん||||||ちいさ|||||おもえる Who cares if you die? 好久没去电影院了,不知道为什么,电影院显得那么小。 あの 頃 の 僕 に は 、 もっと 大きくて 、 もっと カラフル に 見えて いた 。 |ころ||ぼく||||おおきくて||からふる||みえて| "I think I will deposit it with someone" „Myślę o powierzeniu tego komuś”. 那时我觉得它更大,更丰富多彩。 那時我覺得它更大,更豐富多彩。

同じ 感覚 は 、 あの 時計 台 で 待って いる とき に も あった 。 おなじ|かんかく|||とけい|だい||まって||||| 我在钟楼等候时也有同样的感觉。

不動産 屋 や レストラン 、 学習 塾 に 花屋 。 ふどうさん|や||れすとらん|がくしゅう|じゅく||はなや If you can not do anything, please say it. " スーパーマーケット が 改装 した こと 以外 は 、 町並み に さほど 大きな 変化 は なかった 。 ||かいそう|||いがい||まちなみ|||おおきな|へんか|| Except for the remodeling of the supermarket, not much has changed in the townscape. 除了超市翻新外,市容没有太大变化。 けれども 今 の 僕 に は 、 見 慣れて いた 町 が ぐっと 小さく なって 、 ちょっと した ミニチュア に なって しまった か の ような 気 が した 。 |いま||ぼく|||み|なれて||まち|||ちいさく||||みにちゅあ|||||||き|| The light of the movie theater appeared before I got off the steep slope. Światło kina było widoczne tuż przed zjazdem ze stromego zbocza. 然而,现在对我来说,我习惯看到的小镇已经缩小了很多,变成了一个缩影。 然而,現在對我來說,我習慣看到的小鎮已經縮小了很多,變成了一個縮影。 それ は 町 が 縮小 して しまった の か 、 それとも 僕 の 感覚 が 拡大 した の か 、 おそらく その 両方 な のだろう と 僕 は 自分 を 納得 させた 。 ||まち||しゅくしょう||||||ぼく||かんかく||かくだい||||||りょうほう||||ぼく||じぶん||なっとく|さ せた It seems that the movie theater I have seen after a long time has become very small for some reason. 我说服自己,要么是因为城镇缩小了,要么是因为我的感官扩大了,或者两者兼而有之。

「 あの さ 、」 To me in those days, it looked bigger and more colorful.

「 何 ?」 なん The same feeling was there when I was waiting on that clock tower.

「 僕たち 、 なんで 別れた んだ と 思う ?」 ぼくたち||わかれた|||おもう Florists in real estate stores, restaurants, and study schools. “你觉得我们为什么分手?”

「 どうした の 突然 」 ||とつぜん Other than the supermarket renovation, there was not much change in the streets.

「 確かに 理由 が あった と 思う んだ けど 、 どうしても 思い出せ ない んだ 」 たしかに|りゆう||||おもう||||おもいだせ|| But for me now, I felt as if the town I was used to was getting smaller and became a little miniature. Jednak teraz czułem się tak, jakby miasto, do którego byłem przyzwyczajony, stawało się coraz mniejsze i stawało się trochę miniaturowe.

実は 今日 最後に 、 その こと を 彼女 に 聞こう と 思って いた 。 じつは|きょう|さいごに||||かのじょ||きこう||おもって| I convinced myself that the town has shrunk or my senses have expanded, or perhaps both. Byłem przekonany, że to miasto się kurczy, moje zmysły się rozszerzają i być może jedno i drugie. 事实上,我今天正想最后一次问她这个问题。

僕ら は なぜ 別れた の か 。 ぼくら|||わかれた||

倦怠 と いえば それ まで な のだ が 、 どんなに 考えて も 決定 的な 理由 は 思い出せ なかった 。 けんたい|||||||||かんがえて||けってい|てきな|りゆう||おもいだせ| 说到疲劳,仅此而已,但无论我如何努力,我都想不起确切的原因。

「 じゃあ さ 、 覚えて る ?」 ||おぼえて| "Why do you think we broke up?

しばらく 黙って いた 彼女 は 突然 僕 の 方 を 向き 尋ねる 。 |だまって||かのじょ||とつぜん|ぼく||かた||むき|たずねる After a moment of silence, she suddenly turns to me and asks, "What do you want me to do? 她沉默了一会儿,突然转向我问道:

「 え ?」 "I'm sure there was a reason, but I just can't remember."

「 私 の 好きな 食べ物 」 わたくし||すきな|たべもの Actually, last time, I was thinking of asking her about it.

不意な 質問 。 ふいな|しつもん 一个意想不到的问题。 一個意想不到的問題。

十五 秒 経過 。 じゅうご|びょう|けいか Speaking of boredom, it was not until then, but I could not remember the decisive reason no matter how I thought. Byłem zmęczony, ale nie pamiętałem decydującego powodu, bez względu na to, jak o tym myślałem. 十五秒过去了。

「 うーん 、 エビ フライ だ っけ ?」 |えび|ふらい|| "Ummm, fried shrimp?"

「 不 正解 ! ふ|せいかい Suddenly for a while, she suddenly turns to me and asks. “ 不正确的答案 ! とうもろこし の 天ぷら ! 」 ||てんぷら Corn Tempura ! Corn Tempura! 玉米天妇罗! ”

惜しい 。 おしい "My favorite food"

揚げもの 違い だった か 。 あげもの|ちがい|| Was it the difference between fried foods? と いう か 、 なんだ この 展開 ? |||||てんかい 15 seconds have passed. 或者更确切地说,这个发展是什么? 或者更確切地說,這個發展是什麼?

「 じゃあ 私 の 好きな 動物 は ?」 |わたくし||すきな|どうぶつ|

「 えっ ? うーん ……」

「 ニホンザル だ よ 」 にほんざる|| “这是一只日本猕猴。”

そう だ そうだ と 相槌 を 打つ 間 も ない 。 ||そう だ||あいづち||うつ|あいだ|| Was it different from fried? Czy była różnica w smażonym jedzeniu? 没时间说“是”,没错。 沒時間說是,沒錯。

「 じゃあ 、 私 が 一 番 好きな 飲み物 は ?」 |わたくし||ひと|ばん|すきな|のみもの| Or rather, what is this deployment?

なんだろう か 。

まったく 思い出せ ない 。 |おもいだせ| I can't remember at all. 我根本不记得了。

「 うーん …… すまない 。 降参 だ 」 こうさん| 投降。” 投降。”

「 ココア 。 ここあ There is nothing to beat you off when it seems so. Zgadza się, nie ma czasu, aby uderzyć młotkiem. さっき も 飲んで た でしょ 。 ||のんで|| 忘れた の ?」 わすれた|

そう だった 。

思い出した 。 おもいだした 彼女 は とうもろこし の 天ぷら が 大好きで 、 季節 に なる と 必ず 注文 して 、 これ が 世界 で 一 番 好きな 食べ物 だ と よく 話して いた 。 かのじょ||||てんぷら||だいすきで|きせつ||||かならず|ちゅうもん||||せかい||ひと|ばん|すきな|たべもの||||はなして| 動物 園 に 行く と ニホンザル が 集まる 猿 山 から 離れ なか っ たし 、 冬 でも 夏 で も あたたかい ココア を 飲んで いた 。 どうぶつ|えん||いく||にほんざる||あつまる|さる|やま||はなれ||||ふゆ||なつ||||ここあ||のんで|

別に 忘れて は い なかった 。 べつに|わすれて||| 我真的没有忘记什么。

でも 思い出せ なかった 。 |おもいだせ| Did you forget ? 心 が 漬物 石 の ように 蓋 を して 、 彼女 と の 記憶 を 閉じ 込めよう と して いた のだろう 。 こころ||つけもの|いし|||ふた|||かのじょ|||きおく||とじ|こめよう|||| I think my mind was trying to keep a lid on my memories of her, like a pickle stone, and I was trying to shut them away. 我想我的心正像一块腌制的石头一样试图合上我的盖子,锁住我和她的记忆。

人 は 何 か を 覚える ため に 忘れる 、 と 聞いた こと が ある 。 じん||なん|||おぼえる|||わすれる||きいた||| Ich habe gehört, dass die Leute etwas vergessen, um sich daran zu erinnern. 我曾经听说人们为了记住某件事而忘记它。

忘却 は 前進 の ため に ある と 。 ぼうきゃく||ぜんしん||||| She loves corn tempura, she always ordered when it comes to the season and talked a lot that she liked the best food in the world. 忘记是为了前进。 果たして そう な の だろう か 。 はたして||||| When I went to the zoo, I didn't leave the monkey mountain where Japanese macaques gathered, and I was drinking warm cocoa in winter and summer. 真的是这样吗? いざ 自分 が 死に 直面 して みる と 、 思い出す の は 無数に ある 瑣末 な 思い出 ばかり だ 。 |じぶん||しに|ちょくめん||||おもいだす|||むすうに||さまつ||おもいで|| I didn't forget it. Nie zapomniałem tego 当我发现自己面临死亡时,我所记得的只是无数琐碎的回忆。

「 忘れちゃ う もの な の ね 。 わすれちゃ||||| But I couldn't remember. Ale nie mogłem sobie przypomnieć. “这是你忘记的事情。” まあ でも 予想 通り 。 ||よそう|とおり The heart would have covered the memory like a pickled stone to confine her memory. 마음이 피클 돌처럼 뚜껑을 덮고 그녀의 기억을 닫 담으려고했던 것이다. 私 たち が 別れた 理由 も そんな もの よ 。 わたくし|||わかれた|りゆう|||| I have heard that people forget to grasp something. Słyszałem, że ludzie coś zapominają, aby to zapamiętać. 这也是我们分手的原因。 覚えて おく ほど の もの で も ない 」 おぼえて||||||| Forgetting is for progress. 甚至不值得记住。”

「 そう かな ……」 Is that true? “ 我不这么认为 ……”

「 でも きっかけ が ある と したら 卒業 旅行 かも しれ ない ね 」 ||||||そつぎょう|りょこう|||| When I face death, I can only remember countless memories. “但如果有机会的话,可能就是毕业旅行。”

「…… ブエノスアイレス か 。 ぶえのすあいれす| "It's something you'll forget. 『...布宜諾斯艾利斯? 懐かしい ね 」 なつかしい|

あの 頃 の 僕ら は 、 とにかく 町 から 出 なかった 。 |ころ||ぼくら|||まち||だ| That's why we parted. Dlatego się rozdzieliliśmy.

デート と いって も この 町 の なか を モノポリー の ように グルグル と 回って いる だけ 。 でーと|||||まち|||||||ぐるぐる||まわって|| It is not as much as I remember. " Nie jest tak niezapomniany, jak jest. 尽管我们称之为约会,但我们只是像大富翁一样绕着这个小镇转圈。 それ でも 僕ら は 退屈 する こと が なかった 。 ||ぼくら||たいくつ|||| But we were never bored.

大学 の 授業 が 終わる と 図書 館 で 待ち合わせ を して 、 映画 館 で 映画 を 観て 、 行きつけ の カフェ で のんびり 話して 、 彼女 の 部屋 で セックス を した 。 だいがく||じゅぎょう||おわる||としょ|かん||まちあわせ|||えいが|かん||えいが||みて|ゆきつけ||かふぇ|||はなして|かのじょ||へや||せっくす|| "But if there was a chance, it might be a graduation trip," 大学放学后,我们在图书馆见面,在电影院看电影,在常去的咖啡馆闲聊,在她的房间里做爱。

ときに は 彼女 が 弁当 を 作って 、 ケーブルカー に 乗って 町 一 番 の 見晴らし の よい 場所 で 食事 を したり も した けれど 、 その くらい で 僕ら に は 十分 だった 。 ||かのじょ||べんとう||つくって|||のって|まち|ひと|ばん||みはらし|||ばしょ||しょくじ|||||||||ぼくら|||じゅうぶん| Sometimes she would make lunch and we would take the cable car to the best vantage point in town for a meal, but that was enough for us. 有时她会做盒饭,然后坐缆车到镇上风景最好的地方去吃,但这对我们来说就足够了。

いま から 考える と ちょっと 信じ られ ない けれど 、 この 町 の サイズ 感 と 、 その とき の 僕ら ふたり の サイズ 感 が ちょうど 良かった のだ と 思う 。 ||かんがえる|||しんじ|||||まち||さいず|かん|||||ぼくら|ふた り||さいず|かん|||よかった|||おもう It's hard to believe now, but I think the size of the town and the size of the two of us at that time were just right. 现在想起来都很难相信,但我觉得当时这个小镇的大小和我们俩的大小刚刚好。

僕ら は 三 年 半 ほど 付き合った 。 ぼくら||みっ|とし|はん||つきあった At that time, we didn't get out of town anyway. 我们约会了大约三年半。

その 間 に 、 一 回 だけ 海外 旅行 に 行った こと が ある 。 |あいだ||ひと|かい||かいがい|りょこう||おこなった||| Even if it's a date, it just goes around like a monopoly in this town. 那段时间,我只出国旅行过一次。

アルゼンチン 、 ブエノスアイレス 。 あるぜんちん|ぶえのすあいれす But we never got bored.

それ が 最初で 最後 の 海外 旅行 だった 。 ||さいしょで|さいご||かいがい|りょこう| At the end of the college class, I met at the library, watched a movie at the cinema, talked leisurely at my favorite café, and had sex in her room. Po lekcjach college'u spotkałem się w bibliotece, oglądałem film w kinie, rozmawiałem w mojej ulubionej kawiarni i uprawiałem seks w jej pokoju. 那是我第一次也是最后一次出国旅行。

当時 の 僕ら は 、 香港 の 映画 監督 が その 街 を 舞台 に して 撮った 映画 に 夢中に なり 、 学生 最後 の 長い 休み に その 街 へ 旅行 する こと に した のだ 。 とうじ||ぼくら||ほんこん||えいが|かんとく|||がい||ぶたい|||とった|えいが||むちゅうに||がくせい|さいご||ながい|やすみ|||がい||りょこう||||| Sometimes she made a bento and took a cable car to eat in the city's best view, but that was enough for us. Czasami robiła lunch i jechała kolejką linową, aby zjeść najlepszy widok na miasto, ale nam to wystarczyło. 当时,我们对一部以香港为背景的香港电影导演拍摄的电影很着迷,并决定在学生时代的最后一个长假期间去那里旅行。

安い アメリカ 系 の 航空 会社 の 飛行機 ( やたら 寒くて 、 機内 食 が 粘土 の ようだった ) を 乗り継ぎ 、 二十 六 時間 かけて 僕ら は ブエノスアイレス に 到着 した 。 やすい|あめりか|けい||こうくう|かいしゃ||ひこうき||さむくて|き ない|しょく||ねんど||||のりつぎ|にじゅう|むっ|じかん||ぼくら||ぶえのすあいれす||とうちゃく| I can not believe it for a moment though, I think that the sense of size of this town and the size of the two of us at that time were just right. 经过美国廉价航空公司 26 小时的飞行(天气非常寒冷,机上食物尝起来像粘土),我们抵达布宜诺斯艾利斯。

エセイサ 空港 から 、 怪しげな タクシー に 乗って セントロ へ 。 |くうこう||あやしげな|たくしー||のって|| We have been together for about three and a half years. Jesteśmy razem przez około trzy i pół roku. 从埃塞萨机场出发,我乘坐出租车前往市中心。 從埃塞薩機場,我搭乘一輛可疑的計程車前往市中心。

ホテル の 部屋 に 飛び込み ベッド に 倒れ込む 。 ほてる||へや||とびこみ|べっど||たおれこむ In the meantime, I have traveled abroad only once. W tym czasie byłem tylko na jednej zagranicznej podróży. 我跑进旅馆房间,倒在床上。 けれども 、 眠れ ない 。 |ねむれ| Buenos Aires, Argentyna. ものすごく 疲れて いる はずな のに 、 体内 時計 は まだまだ 日本 時間 で 、 眠る こと が でき ない 。 |つかれて||||からだ ない|とけい|||にっぽん|じかん||ねむる|||| That was the first and last overseas trip. To była pierwsza i ostatnia zagraniczna podróż. ここ は 地球 の 裏側 だった 。 ||ちきゅう||うらがわ| At that time, we were obsessed with a movie taken by a Hong Kong film director on the stage, and decided to travel to the city on the last long holidays of the students. W tym czasie byliśmy pochłonięci filmem, który kręcił w Hongkongu filmowiec, i postanowiliśmy pojechać do miasta podczas ostatnich długich wakacji studentów. 这是在世界的另一边。

僕ら は 観念 し 、 ベッド から 飛び起きて 街 を 散策 する こと に した 。 ぼくら||かんねん||べっど||とびおきて|がい||さんさく|||| We decided to jump out of bed and go for a walk in the city. Wzięliśmy tani samolot amerykańskiej linii lotniczej (było tak zimno, że posiłek podczas lotu był jak glina) i przyjechaliśmy do Buenos Aires na dwadzieścia sześć godzin. 我们决定从床上跳起来,在城里散步。 我們決定從床上跳起來,在城裡散步。

街 に 響く バンドネオン の 音色 、 石畳 の 路上 で 踊る タンゴダンサー たち 。 がい||ひびく|||ねいろ|いしだたみ||ろじょう||おどる|| From Ezeiza Airport, take a dubious taxi to Centro. Z lotniska Ezeiza weź podejrzaną taksówkę do Centro.

空 が 低い ブエノスアイレス の 街並み を 眺め ながら 、 レコレータ 墓地 に 向かう 。 から||ひくい|ぶえのすあいれす||まちなみ||ながめ|||ぼち||むかう Dive into the hotel room and fall into the bed. Wskocz do pokoju hotelowego i padnij na łóżko. 迷路 の ような 墓地 を さまよい 、 ようやく エビータ の 墓 を 見つける 。 めいろ|||ぼち||||||はか||みつける But I can't sleep. Ale nie mogę spać. 在迷宫般的墓地中徘徊后,他终于找到了艾薇塔的坟墓。 白髪 の 老 ギタリスト が 奏でる タンゴ の メロディー を 聴き ながら 、 カフェ で 昼食 を とる 。 しらが||ろう|||かなでる|たんご||めろでぃー||きき||かふぇ||ちゅうしょく|| Even though I should be extremely tired, my internal clock is still in Japan time and I cannot sleep. Mimo że musi być bardzo zmęczony, jego wewnętrzny zegar wciąż jest w Japonii i nie mogę spać.

夕方 に なる と バス に 乗って ボカ へ 行く 。 ゆうがた||||ばす||のって|||いく This was the other side of the earth. To była druga strona ziemi. 晚上,我乘巴士前往博卡。

三十 分 ほど 走り 、 バス が 狭い 道 を 抜ける と 、 カラフルな 街並み が 姿 を 現す 。 さんじゅう|ぶん||はしり|ばす||せまい|どう||ぬける||からふるな|まちなみ||すがた||あらわす We thought and decided to jump out of bed and walk around the city. 行驶约30分钟后,公交车穿过一条狭窄的道路,一幅色彩斑斓的城市景观出现在眼前。 スカイブルー に マスタードイエロー 、 エメラルドグリーン や サーモンピンク 。 Tango dancers dancing on the cobblestone street, the sound of a bandoneon reverberating in the city. Tancerze tango tańczą na ulicach kamiennego chodnika, dźwięk bandoneonu rozbrzmiewa w mieście. 天蓝色、芥末黄色、翠绿色和鲑鱼粉色。 天藍色、芥末黃色、翠綠色和鮭魚粉紅色。 パステルカラー に 彩られた 木造 住宅 が 、 ところ 狭し と 並び 立つ 。 ||いろどられた|もくぞう|じゅうたく|||せまし||ならび|たつ While heading towards the city of Buenos Aires where the sky is low, head towards the Recoleta Cemetery. 漆成柔和色彩的木屋排列成狭窄的行。 漆成柔和色彩的木屋排列成狹窄的行。 夕日 に 照らさ れて 光る 、 おもちゃ の ような 街 を 散歩 して 、 夜 は サン ・ テルモ の タンゲリーア 「 ラ ・ ベンタナ 」 へ 。 ゆうひ||てらさ||ひかる||||がい||さんぽ||よ|||||||| Wander through the maze-like cemetery, and finally find Evita's grave. 漫步穿过在夕阳下闪闪发光的玩具般的小镇,然后在傍晚前往圣特尔莫的 tangueria ``La Ventana''。 漫步穿過在夕陽下閃閃發光的玩具般的小鎮,然後在傍晚前往聖特爾莫的 tangueria ``La Ventana''。 タンゴ の 熱気 が 僕ら を 異世界 へ と 連れて いく 。 たんご||ねっき||ぼくら||い せかい|||つれて| Lunch at the cafe while listening to the tango melody played by the old-haired guitarist. 探戈的熱情將我們帶入另一個世界。

それ から 数 日間 、 僕ら は 熱 に うかされた ように ブエノスアイレス の 街 を 歩き回った 。 ||すう|にち かん|ぼくら||ねつ||||ぶえのすあいれす||がい||あるきまわった 接下来的几天,我们在布宜诺斯艾利斯的街道上走来走去,感觉发烧了。 接下來的幾天,我們在布宜諾斯艾利斯的街道上走來走去,感覺發燒了。

泊まった 安宿 に は 、 トム さん が いた 。 とまった|やす やど|||とむ||| Running for about 30 minutes, when the bus goes through narrow streets, the colorful cityscape reveals itself. 湯姆住在我們住的便宜旅館。

トム さん と いって も 日本 人 だ 。 とむ|||||にっぽん|じん| Mustard yellow, emerald green and salmon pink in sky blue.

二十九 歳 の 青年 で 、 働いて いた CM 制作 会社 を 辞めて 、 世界 一 周 旅行 を して いた 。 にじゅうきゅう|さい||せいねん||はたらいて||cm|せいさく|かいしゃ||やめて|せかい|ひと|しゅう|りょこう||| Wooden houses colored with pastel colors stand side by side narrowly.

夜 に なる と 、 僕ら は トム さん と 近く の スーパー マーケット で ワイン や 肉 や チーズ を 買い込み 、 共同 の ダイニング で それ ら を 食べ ながら 、 夜な夜な 語り合った 。 よ||||ぼくら||とむ|||ちかく||すーぱー|まーけっと||わいん||にく||ちーず||かいこみ|きょうどう||だいにんぐ|||||たべ||よなよな|かたりあった Taking a stroll around the city like a toy that glows under the sunset, and in the evening to San Telmo's Tangeriere "La Ventana". Wybierz się na spacer po zabawkowym mieście, które świeci w zachodzącym słońcu, a nocą udaj się do Tangerii „La Ventana” w San Telmo. 晚上,湯姆和我會從附近的超市買酒、肉和奶酪,然後我們會在公共餐廳邊吃邊聊一整晚。

トム さん は 、 僕ら に いろいろな 世界 に ついて 話して くれた 。 とむ|||ぼくら|||せかい|||はなして| Tango's enthusiasm will bring us to the other world. 汤姆告诉我们世界上的各种事情。

インド の 横柄な 牛 たち 、 チベット の 小さな お 坊さん たち 、 イスタンブール の 青い モスク 、 ヘルシンキ の 白い 夜 、 リスボン で 見た どこまでも 広がる 海 。 いんど||おうへいな|うし||ちべっと||ちいさな||ぼうさん||||あおい|もすく|へるしんき||しろい|よ|りすぼん||みた||ひろがる|うみ A few days later, we walked around the city of Buenos Aires just like being touched by heat. 印度的牛,西藏的小和尚,伊斯坦堡的藍色清真寺,赫爾辛基的白夜,里斯本看到的一望無際的大海。

トム さん は 、 酒 を 飲み 、 深く 酔い 、 まるで 夢 を 見る ように 話し 続けた 。 とむ|||さけ||のみ|ふかく|よい||ゆめ||みる||はなし|つづけた There was Tom in the hotel where I stayed.

「 この 世界 に は たくさんの 残酷な こと が ある 。 |せかい||||ざんこくな||| Even Tom is a Japanese.

でも それ と 同じ くらい 美しい もの が ある んだ 」 |||おなじ||うつくしい|||| He was a 29-year-old young man who left the CM production company where he worked and traveled around the world.

その 話 は 、 あの 小さな 町 を ぐるぐる と 回って いた 僕たち に は まったく 想像 が でき なかった 。 |はなし|||ちいさな|まち||||まわって||ぼくたち||||そうぞう||| At night, we talked to Tom at night, buying wine, meat and cheese at a nearby supermarket and eating them with joint dinning.

トム さん は 、 ときに 笑い 、 ときに 泣き ながら 、 僕ら の 話 に も 付き合って くれた 。 とむ||||わらい||なき||ぼくら||はなし|||つきあって| Tom told us about various worlds. Tom rozmawiał z nami o różnych światach. 我们谈话时,汤姆时而笑,时而哭。 地球 の 裏側 で 、 僕ら 三 人 は とめど なく 話 し 続けた 。 ちきゅう||うらがわ||ぼくら|みっ|じん||||はなし||つづけた Indian arrogant cows, small Tibetan monks, the Istanbul's blue mosque, the white night in Helsinki, the sea spreading out in Lisbon. 在世界的另一邊,我們三個人無休無止地交談著。

いよいよ 日本 に 帰る 日 が 迫って きた ある 日 、 トム さん は 宿 に 帰って こ なかった 。 |にっぽん||かえる|ひ||せまって|||ひ|とむ|||やど||かえって|| Tom continued to talk about drinking, drunk, and dreaming.

僕 と 彼女 は ワイン を 飲み ながら ずっと 待って いた が 、 結局 トム さん は 来 なかった 。 ぼく||かのじょ||わいん||のみ|||まって|||けっきょく|とむ|||らい|

翌朝 、 僕ら は トム さん が 死んだ こと を 知った 。 よくあさ|ぼくら||とむ|||しんだ|||しった But there is something as beautiful as that. " 第二天早上,我们得知汤姆去世了。

アルゼンチン と チリ と の 国境 に ある キリスト 像 を 見 に 行き 、 乗って いた バス が 崖 下 へ 転落 した のだ と いう 。 あるぜんちん||ちり|||くにざかい|||きりすと|ぞう||み||いき|のって||ばす||がけ|した||てんらく|||| The story couldn't be imagined at all by those who were going around the little town. 当他乘坐的巴士从悬崖上掉下来时,他正在阿根廷和智利边境参观基督雕像。

まるで 夢 の なか に いる ような 気分 だった 。 |ゆめ||||||きぶん| Tom laughed and smiled, sometimes crying, he also attended to our story.

まったく 実感 が なかった 。 |じっかん|| In the back side of the Earth, we three men continued to talk endlessly. いま でも トム さん が 、 ワインボトル を 片手 に 「 飲もう よ ! ||とむ|||||かたて||のもう| One day when the day to return to Japan is nearing, Tom has not returned to the inn. 」 と ダイニング に 入って くる 気 が した 。 |だいにんぐ||はいって||き|| I and she waited for a while drinking wine, but Tom didn't come after all. でも トム さん は 帰って こ なかった 。 |とむ|||かえって|| The next morning, we knew Tom was dead. まるで 雲 の 上 に いる か の ように 、 現実感 が ない 一 日 を 僕ら は 過ごした 。 |くも||うえ||||||げん じっかん|||ひと|ひ||ぼくら||すごした We spent the day as if we were on a cloud, with no sense of reality.

最後 の 日 、 僕ら は イグアス の 滝 に 向かった 。 さいご||ひ|ぼくら||||たき||むかった It felt like I was in a dream. Czułem się, jakbym śnił. 最後一天,我們前往伊瓜蘇瀑布。

空港 から 車 で 三十 分 。 くうこう||くるま||さんじゅう|ぶん I had no real feeling at all.

そこ から 二 時間 歩き 〝 悪魔 の 喉笛 〟 に 到着 した 。 ||ふた|じかん|あるき|あくま||のど ふえ||とうちゃく| Nawet teraz Tom mówi: „Wypijmy z butelką wina!” 从那里,我们步行了两个小时,到达了“魔鬼喉咙”。 從那裡,我們步行了兩個小時,到達了“魔鬼喉嚨”。 あの 香港 映画 に も 登場 した 、 世界 最大 の 滝 の 頂上 だ 。 |ほんこん|えいが|||とうじょう||せかい|さいだい||たき||ちょうじょう| I felt like coming into the dining room. Miałem ochotę wejść do jadalni. 它是世界上最大瀑布的顶部,香港电影也曾在此取景。

そこ から は 大量 の 水 が 壮絶な 勢い で 流れ 落ちて いく 。 |||たいりょう||すい||そうぜつな|いきおい||ながれ|おちて| 从那里,大量的水带着巨大的力量流了下来。

自然の 暴力 を 感じる 光景 だった 。 しぜんの|ぼうりょく||かんじる|こうけい| We spent a day with no real feeling as if we were on a cloud. 那一幕让我感受到了大自然的暴力。

気付く と 、 隣 で 彼女 は 泣いて いた 。 きづく||となり||かのじょ||ないて| On the last day, we headed for Iguazu Falls. 当我醒来时,她在我旁边哭泣。

声 を 上げ ながら 泣いて いた 。 こえ||あげ||ないて| Thirty minutes by car from the airport. Trzydzieści minut samochodem od lotniska.

だが 泣いて も 泣いて も 、 その 声 は 滝 の 音 に かき消さ れて いく 。 |ないて||ないて|||こえ||たき||おと||かきけさ|| From there I walked for two hours and arrived at the Devil's throat flute. Stamtąd szedłem przez dwie godziny i dotarłem do Diabelskiego Gardła.

その とき 僕 は 実感 した 。 ||ぼく||じっかん| It is the summit of the world's largest waterfall that appeared in that Hong Kong movie. Jest to szczyt największego wodospadu na świecie, który pojawił się także w filmie z Hongkongu. 就在那时我意识到了。

トム さん は 死んだ 。 とむ|||しんだ From there a large amount of water falls with a spectacular momentum. もう 会う こと は でき ない 。 |あう|||| It was a scene that feels natural violence. 夜中 まで 語り合ったり 、 お 酒 を 飲んだり 、 食事 を したり する こと は もう でき ない のだ 。 よなか||かたりあったり||さけ||のんだり|しょくじ||||||||| When she noticed, she was crying next door. それ は 僕 に とって も 彼女 に とって も 生まれて 初めて の 〝 実感 ある 死 〟 だった 。 ||ぼく||||かのじょ||||うまれて|はじめて||じっかん||し| It was the first "realistic death" for me and for her to be born. 这是我和她一生中第一次“真正的死亡”经历。

あまりに も 人間 が 無力な その 場所 で 、 彼女 は 泣き 続けた 。 ||にんげん||むりょくな||ばしょ||かのじょ||なき|つづけた However, whether you cry or cry, the voice is drowned out by the sound of the waterfall. 在那个人类如此无助的地方,她继续哭泣。

僕 は どう する こと も でき ず 、 地球 の なか に 飲みこま れて いく 白濁 した 水 を 呆然と 見つめ 続けた ぼく||||||||ちきゅう||||のみこま|||しろ にご||すい||ぼうぜんと|みつめ|つづけた I couldn't do anything about it, and I kept staring at the cloudy water swallowed up in the earth. 我无能为力,继续呆呆地看着浑水被大地吞噬。