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幸福な王子 The Happy Prince, 幸福 の 王子 -3-

幸福 の 王子 -3-

幸福 の 王子 の 両眼 は 涙 で いっぱいに なって いました 。 そして その 涙 は 王子 の 黄金 の 頬 を 流れて いた のです 。 王子 の 顔 は 月光 の 中 で とても 美しく 、 小さな ツバメ は かわいそうな 気持ち で いっぱいに なりました 。 「 あなた は どなた です か 」 ツバメ は 尋ねました 。 「 私 は 幸福 の 王子 だ 」

「 それ なら 、 どうして 泣いて いる んです か 」 と ツバメ は 尋ねました 。 「 もう 僕 は ぐしょぬれ です よ 」

「 まだ 私 が 生きて いて 、 人間 の 心 を 持って いた とき の こと だった 」 と 像 は 答えました 。 「 私 は 涙 と いう もの が どんな もの か を 知ら なかった 。 と いう の は 私 は サンスーシ の 宮殿 に 住んで いて 、 そこ に は 悲しみ が 入り込む こと は なかった から だ 。 昼間 は 友人 たち と 庭園 で 遊び 、 夜 に なる と 大広間 で 先頭 切って ダンス を 踊った のだ 。 庭園 の 周り に は とても 高い 塀 が めぐらされて いて 、 私 は 一 度 も その 向こう に 何 が ある の か を 気 に かけた こと が なかった 。 周り に は 、 非常に 美しい もの しか なかった 。 廷臣 たち は 私 を 幸福 の 王子 と 呼んだ 。 実際 、 幸福だった のだ 、 もしも 快楽 が 幸福だ と いう ならば 。 私 は 幸福に 生き 、 幸福に 死んだ 。 死んで から 、 人々 は 私 を この 高い 場所 に 置いた 。 ここ から は 町 の すべて の 醜悪な こと 、 すべて の 悲惨な こと が 見える 。 私 の 心臓 は 鉛 で できて いる けれど 、 泣か ず に は いられ ない のだ 」 「 何 だって ! この 王子 は 中 まで 金 で できて いる んじゃ ない の か 」 と ツバメ は 心 の 中 で 思いました 。 けれど ツバメ は 礼儀正しかった ので 、 個人 的な 意見 は 声 に 出しません でした 。 「 ずっと 向こう の 」 と 、 王子 の 像 は 低く 調子 の よい 声 で 続けました 。 「 ずっと 向こう の 小さな 通り に 貧しい 家 が ある 。 窓 が 一 つ 開いて いて 、 テーブル に ついた ご 婦人 が 見える 。 顔 は やせこけ 、 疲れて いる 。 彼女 の 手 は 荒れ 、 縫い 針 で 傷ついて 赤く なって いる 。 彼女 は お 針 子 を して いる のだ 。 その 婦人 は トケイソウ の 花 を サテン の ガウン に 刺繍 しよう と して いる 。 その ガウン は 女王 様 の 一 番 可愛い 侍女 の ため の もの で 、 次の 舞踏 会 に 着る こと に なって いる のだ 。 その 部屋 の 隅 の ベッド で は 、 幼い 息子 が 病 の ため に 横 に なって いる 。 熱 が あって 、 オレンジ が 食べたい と 言って いる 。 母親 が 与えられる もの は 川 の 水 だけ な ので 、 その 子 は 泣いて いる 。 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 。 私 の 剣 の つか から ルビー を 取り出して 、 あの 婦人 に あげて くれ ない か 。 両足 が この 台座 に 固定 されて いる から 、 私 は 行け ない のだ 」 〔 訳 注 : トケイソウ ( passion - flower ) この 花 の 副 花 冠 は キリスト の いばら の 冠 に 似て いる と いう 〕 < 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 http :// www . genpaku . org /

幸福 の 王子 -3- こうふく||おうじ Prinz des Glücks -3-. Prince of Happiness -3- Príncipe de la Felicidad -3-. Príncipe da Felicidade -3-. 幸福王子-3- 幸福王子-3-

幸福 の 王子 の 両眼 は 涙 で いっぱいに なって いました 。 こうふく||おうじ||りょうがん||なみだ||||い ました Die Augen des Fürsten des Glücks waren voller Tränen. The eyes of the Prince of Happiness were filled with tears. そして その 涙 は 王子 の 黄金 の 頬 を 流れて いた のです 。 ||なみだ||おうじ||おうごん||ほお||ながれて|| Und die Tränen liefen über die goldenen Wangen des Prinzen. And the tears were flowing down the golden cheeks of the prince. 王子 の 顔 は 月光 の 中 で とても 美しく 、 小さな ツバメ は かわいそうな 気持ち で いっぱいに なりました 。 おうじ||かお||げっこう||なか|||うつくしく|ちいさな|つばめ|||きもち|||なり ました Das Gesicht des Prinzen war im Mondlicht sehr schön, und die kleinen Schwalben waren voller schlechter Gefühle. The prince's face was very beautiful in the moonlight, and the little swallows were filled with poor feelings. 「 あなた は どなた です か 」 ツバメ は 尋ねました 。 |||||つばめ||たずね ました "Wer bist du?", Fragte Swallow. "Who are you?" Swallow asked. 「 私 は 幸福 の 王子 だ 」 わたくし||こうふく||おうじ| "I am the prince of happiness."

「 それ なら 、 どうして 泣いて いる んです か 」 と ツバメ は 尋ねました 。 |||ないて|||||つばめ||たずね ました "Warum weinst du dann?", Fragte die Schwalbe. "Then why are you crying?" Asked the swallow. 「 もう 僕 は ぐしょぬれ です よ 」 |ぼく||ぐ しょ ぬれ|| "Ich bin schon nass." "I'm already wet."

「 まだ 私 が 生きて いて 、 人間 の 心 を 持って いた とき の こと だった 」 と 像 は 答えました 。 |わたくし||いきて||にんげん||こころ||もって|||||||ぞう||こたえ ました "Es war, als ich noch lebte und ein menschliches Herz hatte", antwortete die Statue. "It was when I was still alive and had a human heart," the statue replied. “那时我还活着,还有一颗人类的心。”雕像回答道。 「 私 は 涙 と いう もの が どんな もの か を 知ら なかった 。 わたくし||なみだ|||||||||しら| "Ich wusste nicht, wie Tränen waren. "I didn't know what tears were like. と いう の は 私 は サンスーシ の 宮殿 に 住んで いて 、 そこ に は 悲しみ が 入り込む こと は なかった から だ 。 ||||わたくし||||きゅうでん||すんで|||||かなしみ||はいりこむ||||| Weil ich in einem Palast in Sanssouci lebte und keine Traurigkeit darin war. Because I lived in a palace in Sans Souci and there was no sorrow in it. 昼間 は 友人 たち と 庭園 で 遊び 、 夜 に なる と 大広間 で 先頭 切って ダンス を 踊った のだ 。 ひるま||ゆうじん|||ていえん||あそび|よ||||おおひろま||せんとう|きって|だんす||おどった| Tagsüber spielte er mit seinen Freunden im Garten und abends übernahm er die Führung in der Halle und tanzte. In the daytime, he played with his friends in the garden, and at night he danced at the front of the hall. 庭園 の 周り に は とても 高い 塀 が めぐらされて いて 、 私 は 一 度 も その 向こう に 何 が ある の か を 気 に かけた こと が なかった 。 ていえん||まわり||||たかい|へい||めぐらさ れて||わたくし||ひと|たび|||むこう||なん||||||き||||| Es gab eine sehr hohe Mauer um den Garten, und ich habe mich nie gefragt, was dahinter steckt. There was a very tall fence around the garden, and I had never wondered what was beyond it. 周り に は 、 非常に 美しい もの しか なかった 。 まわり|||ひじょうに|うつくしい||| All around was very beautiful. 廷臣 たち は 私 を 幸福 の 王子 と 呼んだ 。 ていしん|||わたくし||こうふく||おうじ||よんだ The court officials called me the Prince of Happiness. 実際 、 幸福だった のだ 、 もしも 快楽 が 幸福だ と いう ならば 。 じっさい|こうふくだった|||かいらく||こうふくだ||| Tatsächlich war ich glücklich, wenn das Vergnügen glücklich war. In fact, I was happy, if pleasure was happy. 私 は 幸福に 生き 、 幸福に 死んだ 。 わたくし||こうふくに|いき|こうふくに|しんだ I lived happily and died happily. 死んで から 、 人々 は 私 を この 高い 場所 に 置いた 。 しんで||ひとびと||わたくし|||たかい|ばしょ||おいた After I died, people put me in this high place. ここ から は 町 の すべて の 醜悪な こと 、 すべて の 悲惨な こと が 見える 。 |||まち||||しゅうあくな||||ひさんな|||みえる From here you can see all the ugly things and all the misery of the town. 私 の 心臓 は 鉛 で できて いる けれど 、 泣か ず に は いられ ない のだ 」 「 何 だって ! わたくし||しんぞう||なまり|||||なか||||いら れ|||なん| Mein Herz besteht aus Blei, aber ich kann nicht anders als zu weinen. «» Was! My heart is made of lead, but I can't help crying." "What! この 王子 は 中 まで 金 で できて いる んじゃ ない の か 」 と ツバメ は 心 の 中 で 思いました 。 |おうじ||なか||きむ|||||||||つばめ||こころ||なか||おもい ました Isn't this prince made entirely of gold?" Swallow thought in his heart. けれど ツバメ は 礼儀正しかった ので 、 個人 的な 意見 は 声 に 出しません でした 。 |つばめ||れいぎただしかった||こじん|てきな|いけん||こえ||だし ませ ん| However, the swallows were polite, so I didn't give their personal opinion. 「 ずっと 向こう の 」 と 、 王子 の 像 は 低く 調子 の よい 声 で 続けました 。 |むこう|||おうじ||ぞう||ひくく|ちょうし|||こえ||つづけ ました "Da drüben", fuhr die Statue des Prinzen mit leiser, gut gestimmter Stimme fort. "It's all over the place," continued the statue of the prince with a low, healthy voice. 「 ずっと 向こう の 小さな 通り に 貧しい 家 が ある 。 |むこう||ちいさな|とおり||まずしい|いえ|| "There is a poor house on a small street all the way over. 窓 が 一 つ 開いて いて 、 テーブル に ついた ご 婦人 が 見える 。 まど||ひと||あいて||てーぶる||||ふじん||みえる Ein Fenster ist offen und ich kann die Dame am Tisch sehen. One window is open and you can see the lady on the table. 顔 は やせこけ 、 疲れて いる 。 かお|||つかれて| Mein Gesicht ist dünn und müde. His face is thin and tired. 彼女 の 手 は 荒れ 、 縫い 針 で 傷ついて 赤く なって いる 。 かのじょ||て||あれ|ぬい|はり||きずついて|あかく|| Her hands are rough and scarred by the sewing needles, making them red. 彼女 は お 針 子 を して いる のだ 。 かのじょ|||はり|こ|||| She has a needle. その 婦人 は トケイソウ の 花 を サテン の ガウン に 刺繍 しよう と して いる 。 |ふじん||||か||||がうん||ししゅう|||| The woman is trying to embroider passionflower flowers in a satin gown. その ガウン は 女王 様 の 一 番 可愛い 侍女 の ため の もの で 、 次の 舞踏 会 に 着る こと に なって いる のだ 。 |がうん||じょおう|さま||ひと|ばん|かわいい|じじょ||||||つぎの|ぶとう|かい||きる||||| The gown is for the Queen's cutest maid, and is supposed to wear her next ball. その 部屋 の 隅 の ベッド で は 、 幼い 息子 が 病 の ため に 横 に なって いる 。 |へや||すみ||べっど|||おさない|むすこ||びょう||||よこ||| In the corner bed of the room, a young son is lying due to illness. 房间角落的床上,我年幼的儿子病重地躺着。 熱 が あって 、 オレンジ が 食べたい と 言って いる 。 ねつ|||おれんじ||たべ たい||いって| He has a fever and says he wants to eat oranges. 母親 が 与えられる もの は 川 の 水 だけ な ので 、 その 子 は 泣いて いる 。 ははおや||あたえ られる|||かわ||すい|||||こ||ないて| The only thing the mother gives him is the river water, so the child is crying. ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 。 つばめ||つばめ||ちいさな|つばめ| Swallows, swallows, little swallows. 私 の 剣 の つか から ルビー を 取り出して 、 あの 婦人 に あげて くれ ない か 。 わたくし||けん||||るびー||とりだして||ふじん||||| Can you take out a ruby from one of my swords and give it to that lady? 両足 が この 台座 に 固定 されて いる から 、 私 は 行け ない のだ 」 〔 訳 注 : トケイソウ ( passion - flower ) この 花 の 副 花 冠 は キリスト の いばら の 冠 に 似て いる と いう 〕 < 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 りょうあし|||だいざ||こてい|さ れて|||わたくし||いけ|||やく|そそ|||||か||ふく|か|かん||きりすと||||かん||にて||||はんけん|ひょうじ|||さく|ゆうき|ひろし|やく|copyright|c|hiroshiyuki|ゆうき|ひろし||||||||ほん|ほんやく|||はんけん|ひょうじ||のこす|かぎり|やくしゃ||ちょしゃ|に たいして|きょか|||しよう|りょう||しはらったり|||いっさい|||しょうぎょう|りよう||ふくむ||かた||じゆうに|りよう|ふくせい||みとめ られ ます I can't go because both feet are fixed to this pedestal." [Passion-flower (sub-corollary of this flower is said to resemble the crown of thorns of Christ)] > Oscar Wilde Translated by Hiroshi Yuki Copyright (C) 2000 HiroshiYuki http :// www .hyuki .com / trans / prince .html Free use and copying are permitted in all forms, including commercial use, without any payment or usage fees. プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 ぷろじぇくと|すぎた|げん|しろ|せいしき|さんか|さくひん Project Genshiro Sugita Officially participating work. http :// www . genpaku . org /