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幸福な王子 The Happy Prince, こうふくのおうじ -5-

こうふく の おうじ -5-

「 こんや 、 エジプト に いきます 」 と ツバメ は いいました 。 ツバメ は その よてい に じょうきげんでした 。 まち じゅう の めいしょ を みな おとずれて から 、 きょうかい の せんとう の てっぺん に ながい じかん と まって いました 。 ツバメ が いく ところ は どこ でも スズメ が チュンチュン ないて いて 、「 すてきな たびびと ね 」 と くちぐちに いって いました ので 、 ツバメ は とても うれしく なりました 。 つき が のぼる と 、 ツバメ は こうふく の おうじ の ところ に もどって きました 。 「 エジプト に なに か ことづけ は あります か 」 と こえ を あげました 。 「 もう すぐ しゅっぱつ します から 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 「 もう ひとばん と まって くれません か 」 「 わたし は エジプト に いきたい と おもって います 」 と ツバメ は こたえました 。 「 あした ぼく の ともだち は かわ を のぼり 、 に ばん め の たき へ とんで いく でしょう 。 そこ で は パピルス の しげみ の あいだ で カバ が やすんで います 。 そして きょだいな みかげいし の ぎょ く ざ に は メムノン しん が すわって いる んです 。 メムノン しん は 、 ほし を ひとばん じゅう みつめ つづけ 、 あけのみょうじょう が かがやく と よろこび の こえ を ひとこえ あげ 、 そして また ちんもく に もどる と いわれて います 。 しょうご に は きいろ の ライオン が みずべ に みず を のみ に やってきます 。 ライオン の め は りょく ちゅうせき の ようで 、 その ほえ ご え は たき の ごうご う と いう おと より も おおきい んです よ 」

「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 「 ずっと むこう 、 まち の はんたい が わに ある やね うら べ や にわか もの の すがた が みえる 。 かれは かみ で あふれた つくえ に もたれて いる 。 かたわら に ある タンブラー に は 、 かれた スミレ が ひと たば さして ある 。 かれ の かみ は ちゃいろ で こまかく ちぢれ 、 くちびる は ザクロ の ように あかく 、 おおきくて ゆめみる ような め を して いる 。 かれ は げきじょう の しはいにん の ため に しばい を かんせい さ せよう と して いる 。 けれど 、 あまりに も さむい ので もう かく こと が でき ない のだ 。 だんろ の なか に は ひのけ は なく 、 くうふく の ため に き を うしなわ ん ばかりに なって いる 」

「 もう ひとばん 、 あなた の ところ に とまりましょう 」 よい こころ を ほんとうに もって いる ツバメ は いいました 。 「 もう ひと つ ルビー を もっていきましょう か 」 「 ああ ! もう ルビー は ない のだ よ 」 おうじ は いいました 。 「 のこって いる の は わたし の りょうめ だけ だ 。 わたし の りょうめ は めずらしい サファイア で できて いる 。 これ は いっせ ん ねん まえ に インド から はこばれて きた もの だ 。 わたし の かた め を ぬきだして 、 かれ の ところ まで もっていって おくれ 。 かれ は それ を ほうせき や に うって 、 たべもの と まき を かって 、 しばい を かんせい さ せる こと が できる だろう 」

「 おうじ さま 」 と ツバメ は いいました 。 「 わたし に は できません 」 そして ツバメ は なき はじめました 。 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 「 わたし が めいじた とおり に して おくれ 」

そこ で ツバメ は おうじ の め を とりだして 、 やね うら べ や へ とんで いきました 。 やね に あな が あいて いた ので 、 は いる の は かんたんでした 。 ツバメ は あな を とおって さっと とびこみ 、 へや の なか に はいりました 。 その わかもの は りょうて の なか に かお を うずめる ように して おりました ので 、 とり の はばたき は きこえません でした 。 そして わかもの が かお を あげる と 、 そこ に は うつくしい サファイア が かれた スミレ の うえ に のって いた のです 。

「 わたし も よのなか に みとめられ はじめた んだ 」 わかもの は おおごえ を だしました 。 「 これ は だれ か 、 ねつれつな ファン から の もの だ な 。 これ で しばい が かんせい できる ぞ 」 わかもの は とても こうふく そうでした 。

< 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 http :// www . genpaku . org /


こうふく の おうじ -5- The Lord of the Blossoms -5- 燕子王 -5-.

「 こんや 、 エジプト に いきます 」 と ツバメ は いいました 。 |えじぷと||いき ます||つばめ||いい ました ツバメ は その よてい に じょうきげんでした 。 つばめ||||| まち じゅう の めいしょ を みな おとずれて から 、 きょうかい の せんとう の てっぺん に ながい じかん と まって いました 。 ||||||||||||||||||い ました ツバメ が いく ところ は どこ でも スズメ が チュンチュン ないて いて 、「 すてきな たびびと ね 」 と くちぐちに いって いました ので 、 ツバメ は とても うれしく なりました 。 つばめ|||||||すずめ|||||||||||い ました||つばめ||||なり ました つき が のぼる と 、 ツバメ は こうふく の おうじ の ところ に もどって きました 。 ||||つばめ|||||||||き ました 「 エジプト に なに か ことづけ は あります か 」 と こえ を あげました 。 えじぷと||||||あり ます|||||あげ ました 「 もう すぐ しゅっぱつ します から 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 |||し ます||つばめ||つばめ|||つばめ|||||いい ました 「 もう ひとばん と まって くれません か 」 「 わたし は エジプト に いきたい と おもって います 」 と ツバメ は こたえました 。 ||||くれ ませ ん||||えじぷと||いき たい|||い ます||つばめ||こたえ ました 「 あした ぼく の ともだち は かわ を のぼり 、 に ばん め の たき へ とんで いく でしょう 。 そこ で は パピルス の しげみ の あいだ で カバ が やすんで います 。 |||ぱぴるす||||||かば|||い ます そして きょだいな みかげいし の ぎょ く ざ に は メムノン しん が すわって いる んです 。 メムノン しん は 、 ほし を ひとばん じゅう みつめ つづけ 、 あけのみょうじょう が かがやく と よろこび の こえ を ひとこえ あげ 、 そして また ちんもく に もどる と いわれて います 。 |||||||||||||||||||||||||いわ れて|い ます しょうご に は きいろ の ライオン が みずべ に みず を のみ に やってきます 。 |||||らいおん||||||||やってき ます ライオン の め は りょく ちゅうせき の ようで 、 その ほえ ご え は たき の ごうご う と いう おと より も おおきい んです よ 」 らいおん||||||||||||||||||||||||

「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 つばめ||つばめ|||つばめ|||||いい ました 「 ずっと むこう 、 まち の はんたい が わに ある やね うら べ や にわか もの の すがた が みえる 。 かれは かみ で あふれた つくえ に もたれて いる 。 かれ は||||||もた れて| かたわら に ある タンブラー に は 、 かれた スミレ が ひと たば さして ある 。 かれ の かみ は ちゃいろ で こまかく ちぢれ 、 くちびる は ザクロ の ように あかく 、 おおきくて ゆめみる ような め を して いる 。 ||||||||||ざくろ|||||||||| かれ は げきじょう の しはいにん の ため に しばい を かんせい さ せよう と して いる 。 けれど 、 あまりに も さむい ので もう かく こと が でき ない のだ 。 だんろ の なか に は ひのけ は なく 、 くうふく の ため に き を うしなわ ん ばかりに なって いる 」

「 もう ひとばん 、 あなた の ところ に とまりましょう 」 よい こころ を ほんとうに もって いる ツバメ は いいました 。 ||||||とまり ましょう|||||||つばめ||いい ました 「 もう ひと つ ルビー を もっていきましょう か 」 「 ああ ! |||るびー||もっていき ましょう|| もう ルビー は ない のだ よ 」 おうじ は いいました 。 |るびー|||||||いい ました 「 のこって いる の は わたし の りょうめ だけ だ 。 わたし の りょうめ は めずらしい サファイア で できて いる 。 |||||さふぁいあ||| これ は いっせ ん ねん まえ に インド から はこばれて きた もの だ 。 |||||||いんど||はこば れて||| わたし の かた め を ぬきだして 、 かれ の ところ まで もっていって おくれ 。 かれ は それ を ほうせき や に うって 、 たべもの と まき を かって 、 しばい を かんせい さ せる こと が できる だろう 」

「 おうじ さま 」 と ツバメ は いいました 。 |||つばめ||いい ました 「 わたし に は できません 」 そして ツバメ は なき はじめました 。 |||でき ませ ん||つばめ|||はじめ ました 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 ちいさな ツバメ さん 」 と おうじ は いいました 。 つばめ||つばめ|||つばめ|||||いい ました 「 わたし が めいじた とおり に して おくれ 」

そこ で ツバメ は おうじ の め を とりだして 、 やね うら べ や へ とんで いきました 。 ||つばめ|||||||||||||いき ました やね に あな が あいて いた ので 、 は いる の は かんたんでした 。 ツバメ は あな を とおって さっと とびこみ 、 へや の なか に はいりました 。 つばめ|||||||||||はいり ました その わかもの は りょうて の なか に かお を うずめる ように して おりました ので 、 とり の はばたき は きこえません でした 。 ||||||||||||おり ました||||||きこえ ませ ん| そして わかもの が かお を あげる と 、 そこ に は うつくしい サファイア が かれた スミレ の うえ に のって いた のです 。 |||||||||||さふぁいあ|||||||||

「 わたし も よのなか に みとめられ はじめた んだ 」 わかもの は おおごえ を だしました 。 ||||みとめ られ|||||||だし ました 「 これ は だれ か 、 ねつれつな ファン から の もの だ な 。 |||||ふぁん||||| これ で しばい が かんせい できる ぞ 」 わかもの は とても こうふく そうでした 。 |||||||||||そう でした

< 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 はんけん|ひょうじ|||さく|ゆうき|ひろし|やく|copyright|c|hiroshiyuki|ゆうき|ひろし||||||||ほん|ほんやく|||はんけん|ひょうじ||のこす|かぎり|やくしゃ||ちょしゃ|に たいして|きょか|||しよう|りょう||しはらったり|||いっさい|||しょうぎょう|りよう||ふくむ||かた||じゆうに|りよう|ふくせい||みとめ られ ます プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 ぷろじぇくと|すぎた|げん|しろ|せいしき|さんか|さくひん http :// www . genpaku . org /