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君の名は, 君 の 名 は 1課 (2)

君 の 名 は 1課 (2)

と いう か 、 そ の 授業 を 受けた 記憶 じたい が ない 。

まるで 、 一 週 ぶん 見 そこねた テレビ ドラ マ の 続き を 見て いる ようだ 。

しかし 、 それ だけ の こと なら 、 ちょっと 専門 の 病院 を 探して み ます か 程度 の こと で 済んだ はずだ 。

まったく 、 それ で 済んで く れたら よかった のだ 。

受けた 覚え のな いそ の 授業 の ノート が 、 知ら ない ひつ 筆 せき 跡 で とって ある 。

いや 、 知ら ない 筆跡 と いう の は 、 語弊 が ある 。 正確に いえば 、 瀧 は その 筆跡 を 見 た こと が ある 。

夢 の 中 で 。

それ は 宮 水 三葉 の ノート の 文字 と 同じ 筆跡 だった のだ 。

( たぶん 、 俺 と ほとんど 同じ タイミング で 、 あいつ も 筆跡 の こと に 気づいた んだろう な ……)

極め つけ に は 、 携帯 の 日記 アプリ に 、 記憶 が 吹っ飛んだ 一 日 ぶん の あいだ に 起こった らしい 出来事 の 記録 が 、 やたら はしゃいだ 文体 で 書きつけて あった 。

その 日記 の 末尾 に 、「 三葉 」 と いう 署名 が ある 。

朝 、 瀧 が 自分 の 部屋 で 目 を 覚ます と 、左腕 の 内側 に 油性 ペン で 大きく 「 みつ は 」 と 落書き が して あった こと も ある 。

その 下 に 「 参上 」 と 書いて ない の が 不思議な くらい だ 。

ここ まで くる と 、 お互いに 、 気づか ない わ け に は いか ない 。

つまり 、 これ は 夢 で は なく 。

宮 水 三葉 と いう の は 幻 の 世界 の 登場 人物 など で は なく 。

彼女 も 、 彼女 の 周り の 世界 も 、 現実 の もの と して 存在 して いる のであり 、 自分 は いつのまにか 意識 だけ が 彼女 の からだ 身体 に 入り込んで おり 、 そして 、 その 間 は 、 宮 水 三葉 の 意識 が 、 自分 の 身体 に 入り込 ん で 活動 して いる のだ と いう こと だ 。

それ に 関する 、 立花 瀧 の 最初の 反応 は こう であった 。

「 うそ 噓 だ ろ !?」 一方 、 宮 水 三葉 が 携帯 の メモ 機能 で 伝えて きた 第一声 は こう だ 。

〈 変態 ッ !!〉

変態 じゃ ねえ よ !

と メモ の 下 に 即座 に 書き 足した 瀧 である 。

意図 的に 女 の 子 の 生活 に し の 忍び込んだ の なら 変態 と 呼ばれても しかたがない が 、 これ は 完全に 不可 抗力 だ 。

こんな ややこしい 事態 を 自 分 から 望む やつ が いる もの か 。

フリック 入力 で そう 書き込んで 抗議 した のだ が 、 〈 私 の 身体 を 自由に して る んだ から 、 変態 に 決まってる でしょう !?〉 次に 入れ替わった とき に 、 けん も ほろろ に そんな 返事 が 返って きた 。

身体 を 自由に する って 何 だ よ 。

こいつ 、 相当 きわどい こと 言って る の に 、 自分 で 気づいて ない の か 。

だいたい その くらい の 段階 で 、 宮 水 三 葉 と いう 人格 が 、 と ぼ 乏しい 情報 の 中 、 お ぼ ろ げ に りん 輪 かく 郭 を 取り 始めた 。

── この 女 、 結構 アホ だ ぞ 。

布団 を 上げた 。

パジャマ を ぬ 脱いで たたみ 畳 に 落とした 。

胸 を 揉んで いる とき より も 服 を 脱ぐ とき の ほう が 、 瀧 は 後ろめたく なる 。 なげ し 長 押 に かかって いた 制服 を 身 に つける 。

この おそ 恐ろしい スカート と いう もの 、 フック と ファスナー だけ で 、 ベルト も なし に 身体 に 固定 さ れる こと に いつも おどろ 驚く 。

くびれ が あ る って 、 こういう こと か 。

そして この 細い 小 さい 白い シャツ に する り と 身体 が 通って 、 きちんと ボタン が 留まる こと に も き 奇 みよう 妙な かん 感 が い 慨 を 覚えて しまう 。

そういう こと に 、 いちいち 驚いて しまう 。

かみ 髪 の 毛 を まとめて 束ねて 、 ゴム で 留め る 。

本物 の 三葉 は 、 もっと こ 凝った ゆ 結 いか た を して いる の かも しれ ない が 、 瀧 に は こ れ が せい 精 いつ 一 ぱい 杯 だ 。

装備 品 を 装着 して しまう と 、 いやおう な く 、 気合い が 入る 。

今 日一日 、 なんとか して 、 女 を 演じ きる ぞ 。

気合い でも 入れ なければ 、 心 が くじけ て しまう 。

《 あんた 、 だれ 誰 ? 誰 か に 突然 、 真顔 で き 訊 かれ そうで こわ 恐 い 。

そんな こと を 言わ れよう もの なら 、 確 実に 心臓 が 止まる 。

これ まで 周囲 の 反応 を 見て きた 結果 、 宮 水 三葉 が どんな しゃべり 方 を する の か 、 おぼろげ ながら わかって きた ところ だ 。

わかって は きた のだ が 、 さすが に 一 日 じゅう それ で 通す の は 難しい のだ 。 昼 より 前 に は 、 確実に ぼろ が 出 始める 。

知ら ず 知ら ず 、 男 言葉 に 戻って いて 、 学校 の 連 中 を ぎょっと さ せて しまう 瀧 である 。

いつも 反省 する のだ が 、 それ でも なかなか 直ら ない 。

もう 少し 、 チューニング が 必要 かも しれ ない 。

「── あ 、 そう だ 」 目の前 に 、 絶好 の テキスト が ある こと に 気 が ついた 。

三葉 が 携帯 の 中 に 残した メモ だ 。 ようするに こいつ は 、 宮 水 三葉 の 肉声 みたいな もの だろう 。

これ を 自然に し や べ 喋れる ように なれば いい わけだ 。

ため 試して みた 。

「…… ほん っと に ッ 、 とにかく ッ 、 私 の 体 で 勝手な こと し ないで よね ! 」 自分 の こと ながら 、 実に わざとらしい 。

ア マチュア 劇団 の しろうと 素人 しば 芝 い 居 の ようだ 。

「── あと 、 わかって る と 思う けれど ! 女 子 更衣室 に 入ったり したら 何らか の 形 で 復讐 する ! 」 がんばって すご 凄んで みた のだ が 、 この 声 で は いまひとつ はく 迫 り よく 力 が 出 ない 。

二 、 三 回 、 そう やって 読んで みた が 、 ば 馬 か 鹿 ば 馬 か 鹿 しく なって やめて しまった 。

ふと 、 何 か の 気配 を 感じて 視線 を 泳が せて み る と 、 ふすま が うっすら 開いて いて 、 その すき 隙 ま 間 から 小さな 目 が こちら を のぞ 覗いて いた 。 そ の 目 が まばたき して 、 きょ ろ り と 動いた 。

「 う おう ! 芝居 どころ で は なく リアルに 声 が 出て し まった 。

うす 薄 ぐ ら 暗い 日本間 の 中 で そんな こと を さ れたら まる きり よこ 横 みぞ 溝 せい 正 し 史 の みん 民 ぞく 俗 的 きよう 恐 ふ 怖 の 世界 である 。

妹 の よつ 四 は 葉 だ 。

三葉 と は 歳 が は な 離れて い て 、 まだ 小学生 くらい だ 。

うすく 開いた ふ すま の 向こう で 、 小学生 は 口 もと を ゆが め て 、 まゆ 眉 を たがいちがい に して 、 し ゅる しゅ る と え 海 び 老 みたいに 後ずさり ながら そっと ふ すま を 閉めた 。

まったく の 無言 だった が 、 その 表情 を あえて せりふ 台詞 に する なら 、 「 う へえ 」 そういう 顔 だった 。

時間 に 追い立て られる ように 家 を 出 た 。

学校 まで の 道のり は 、 半ば まで は 妹 と いつ 一 しよ 緒 だった ので 迷う こと は なく 、 妹 と 別 れて から も 一 本道 だった ので 何の 問題 も なかった 。

この 糸 守 町 と いう 小さな 町 は 、 糸 守 湖 を ぐるり と 取り囲む ように できて いる 。

糸 守 湖 は 、 山地 の 真ん中 に ぽっかり と くぼ んだ 、 それほど 大きく も ない 湖 だ 。 深い 山 の 奥 に とう 唐 とつ 突 に 湖 が 現出 する 、 と いう 風 景 は なかなか げん 幻 そう 想 的である 。

湖 は 山地 に 取り囲ま れた 状態 に なって いる ので 、 湖 の 周辺 は すべて しや 斜 めん 面 であり 、 民家 や 道路 は 、 斜面 を ところどころ 盛ったり けず 削 っ たり して 半ば 無理やり 作った 水 平地 に で きて いる 。

だから 道路 は おおむね かん 環 じよう 状 線 だ し 、 行って も もど 戻って も だいたい 同じ 場所 に 着く 。

瀧 は 左 方向 の 景色 に 目 を やった 。

道 より も 低い 斜面 に 植わった 樹木 が と ぎ れ 、 遠景 が 目 に 入って きた 。

風 に 吹か れて 小さく 波打った 糸 守 湖 の すい 水 めん 面 に 、 朝 の 光 が 当たって 、 カット ガラス みたいに キラキラ して いた 。

その 向こう に 、 緑色 の 木々 に 全面 を おお 覆 われた 山 の 景色 が 、 あちら は かすかに あわ 淡 く 、 また あちら は 深く こ 濃く 、 と いう ふうに 、 複 雑な いん 陰 えい 影 を 作って いた 。

そんな 山々 の 複雑な 表情 を 視線 で な で まわして いる と 、 瀧 の 心 の 中 に 、 感動 に 近い もの が わき上がる 。

ひょっとして 、 これ が きよう 郷 しゆう 愁 と いう やつ な の だろう か 。

生まれ も 育ち も 東京 二十三 区 、 しかも やま の 山 て 手 線 の 内側 で 、 地方 の 故郷 と いう も の を 瀧 は 持た ない 。

帰省 と か いう もの も し た こと が ない 。

だ から 、 里心 が つく と いう 感覚 が 、 よく わ から ない のだ が 、 何やら くすぐったい 感じ だ 。

瀧 は ふと 立ち止まって 、 その 景色 を じ っ と み 見 す 据えた 。 視界 を 広く とり 、 全体 像 を 、 意識 の 中 に 焼き付けよう と した 。

光 は 湖面 に 反射 して おど 躍り 、 山 は くろ ぐ ろ と 静まりかえって いて 、 その 景色 から 、 風 が ふ 吹き込んで きて 身体 を なぶる 。

髪 を ゆ 揺らす 。

風 に は 、 に お 匂い が あった 。

水 と 土 と 樹木 の 気配 が 、 見え ない くらい 小さな とう 透 めい 明 な カプセル に ふう 封じ込ま れて いて 、 それ が 風 に 混じって ほお 頰 に 当たって ふと はじ 弾ける よう な 、 そんな かすかな 匂い だ 。

風 に 匂い が ある と いう こと を 、 瀧 は この 町 で 、 初めて 体験 した 。

予感 が ある 。

これ から 先 、 自分 は 、 なつ 懐かしい と いう がい 概 ねん 念 を 、 この 景色 と ワン セット で 想起 する だ ろう 。

この 景色 は ──。

どこ か に かえ 還って ゆく 、 と いう 概念 を 持た ない 瀧 に 、 神 が あた 与えた 、〝 故郷 〟 なる もの の イメージ 像 な ので は ある まい か 。

言葉 と して はっきり と そう にん 認 しき 識 した わけ で は ない が 、 そういった こと を 、 瀧 は 感じて いる 。

「 朝っぱら から 何 たそがれ とる の ? 後ろ から 、 かた 肩 に 誰 か の あご 顎 が 乗った 。

振り返る と 、 な 名 とり 取 さ 早 や 耶 か 香 が おさげ を 揺らし て 立って いた 。

その 背後 から 、 ボウズ 頭 で 体格 の 大き い て 勅 し 使 がわ 河 ら 原 かつ 克 ひ こ 彦 が 、 ママチャリ を 引いて あくび を し ながら 追いついて くる 。

瀧 の これ まで の 観察 結果 に よれば 、 こ の 二 人 と 三葉 は 、 家族 ぐるみ の 幼なじみ だ 。

学校 内 で は ほぼ 三 人 一緒に 行動 し て いる 。

この 周辺 の 言い 方 で 表現 すれば 「 つれ 」 と いう こと に なる 。

瀧 は 当初 、「 三葉 の こと を 知り つ 尽くして いる 人物 と 、 長 時間 行動 を 共に する の は まずい 」 と 考えて 、 けい 警 かい 戒 して いた のだ が 、 すぐに そう で は ない と いう こと が わか っ て きた 。

二 人 と も 、 ひ 比 かく 較 てき 的 おっとり した 人 物 な ので 、 三葉 の 人格 ( の 中身 ) を そう そう 疑ったり は し なかった し 、 特に 早 耶香 は 、 多少 ふ 不 しん 審 な こと が あった と して も 、

「 何 やって ん の ? と 訊 いて くれる ので 、 すぐ に 調整 が きく のだ 。 正直 助かる 。

そういった 理由 で 、 瀧 は 学校 で は 、 なる べく この 二 人 に くっついて いる こと に 決めて いた 。

三葉 の 行動 と して も 、 それ が 自然 な ようだ 。

リアリティ を 追求 する なら 、「 サ ヤ ちん 」「 テッシー 」 と 呼びかけ ねば なら な い のだ が 、 さすが に そこ まで きよ 距 り 離 を つ 詰める の は 気 が 引けて 、「 えっ と 」 と か 「 あの さ 」 と いう 感じ で ごまかして いる 。

「 また 、 髪 の 毛 くしゃくしゃ 。

スカート も 折 っ と らんし 」 名取 早 耶香 が 、 頭 の 上 で ひと 束 に まとめた だけ の 瀧 の ( と いう か 三葉 の ) 髪 を 、 軽く つまんだ 。

「 また ね 寝 ぼう 坊 した の ? 」 「 寝坊 も した けど 。

これ が 精一杯 で す ……」

瀧 は 泣き そうな 顔 を 作った 。

すでに し て 、 オリジナルの 三葉 らしい 口調 で 喋ろう と いう 決意 が くず 崩れて いる 。

君 の 名 は 1課 (2) きみ||な||か Your Name is (2)

と いう か 、 そ の 授業 を 受けた 記憶 じたい が ない 。 |||||じゅぎょう||うけた|きおく||| Or rather, I have no recollection of taking that class.

まるで 、 一 週 ぶん 見 そこねた テレビ ドラ マ の 続き を 見て いる ようだ 。 |ひと|しゅう||み||てれび|どら|||つづき||みて|| It's like watching the continuation of a TV drama that you missed all week.

しかし 、 それ だけ の こと なら 、 ちょっと 専門 の 病院 を 探して み ます か 程度 の こと で 済んだ はずだ 。 |||||||せんもん||びょういん||さがして||||ていど||||すんだ| However, if that's all there is to it, it should be enough to find a hospital that specializes in it. No entanto, se isso é tudo, deve ser suficiente encontrar um hospital especializado nisso.

まったく 、 それ で 済んで く れたら よかった のだ 。 |||すんで|||| I really wish I could have done with that. Eu realmente gostaria de ter feito isso.

受けた 覚え のな いそ の 授業 の ノート が 、 知ら ない ひつ 筆 せき 跡 で とって ある 。 うけた|おぼえ||||じゅぎょう||のーと||しら|||ふで||あと||| I took notes from a class I didn't remember taking, with an unknown handwriting.

いや 、 知ら ない 筆跡 と いう の は 、 語弊 が ある 。 |しら||ひっせき|||||ごへい|| No, it's a bit of a misnomer to say that I don't know the handwriting. 正確に いえば 、 瀧 は その 筆跡 を 見 た こと が ある 。 せいかくに||たき|||ひっせき||み|||| To be precise, Taki has seen the handwriting.

夢 の 中 で 。 ゆめ||なか|

それ は 宮 水 三葉 の ノート の 文字 と 同じ 筆跡 だった のだ 。 ||みや|すい|みつば||のーと||もじ||おなじ|ひっせき|| It was the same handwriting as that of Miyamizu Mitsuha's notebook.

( たぶん 、 俺 と ほとんど 同じ タイミング で 、 あいつ も 筆跡 の こと に 気づいた んだろう な ……) |おれ|||おなじ|たいみんぐ||||ひっせき||||きづいた|| (Perhaps, at about the same time as me, he also noticed the handwriting...)

極め つけ に は 、 携帯 の 日記 アプリ に 、 記憶 が 吹っ飛んだ 一 日 ぶん の あいだ に 起こった らしい 出来事 の 記録 が 、 やたら はしゃいだ 文体 で 書きつけて あった 。 きわめ||||けいたい||にっき|||きおく||ふっとんだ|ひと|ひ|||||おこった||できごと||きろく||||ぶんたい||かきつけて| To keep it silly, the record of events that seemed to have occurred during a day when memories blew away was written in a portable diary application with a stylishly stylistic style.

その 日記 の 末尾 に 、「 三葉 」 と いう 署名 が ある 。 |にっき||まつび||みつば|||しょめい|| At the end of the diary at the end of the diary, there is a signature "San leaf".

朝 、 瀧 が 自分 の 部屋 で 目 を 覚ます と 、左腕 の 内側 に 油性 ペン で 大きく 「 みつ は 」 と 落書き が して あった こと も ある 。 あさ|たき||じぶん||へや||め||さます||さわん||うちがわ||ゆせい|ぺん||おおきく||||らくがき|||||| In the morning, when Taki woke up in his room, it was left gutted left by the oil pen inside the arm and scribbled as "Mitsuwa" sometimes.

その 下 に 「 参上 」 と 書いて ない の が 不思議な くらい だ 。 |した||さんじょう||かいて||||ふしぎな|| It is strange that it does not write "kyoko" under it.

ここ まで くる と 、 お互いに 、 気づか ない わ け に は いか ない 。 ||||おたがいに|きづか||||||| You can not stop noticing each other when you come here.

つまり 、 これ は 夢 で は なく 。 |||ゆめ||| In other words, this is not a dream.

宮 水 三葉 と いう の は 幻 の 世界 の 登場 人物 など で は なく 。 みや|すい|みつば|||||まぼろし||せかい||とうじょう|じんぶつ|||| Miyamizu Miba is not a character in a phantom fantasy world.

彼女 も 、 彼女 の 周り の 世界 も 、 現実 の もの と して 存在 して いる のであり 、 自分 は いつのまにか 意識 だけ が 彼女 の からだ 身体 に 入り込んで おり 、 そして 、 その 間 は 、 宮 水 三葉 の 意識 が 、 自分 の 身体 に 入り込 ん で 活動 して いる のだ と いう こと だ 。 かのじょ||かのじょ||まわり||せかい||げんじつ|||||そんざい||||じぶん|||いしき|||かのじょ|||からだ||はいりこんで||||あいだ||みや|すい|みつば||いしき||じぶん||からだ||はいりこ|||かつどう||||||| She and the world around her exist as real things, and before I know it, my consciousness is the only thing that has entered her body, and in the meantime, Miyamizu Mitsuha's consciousness is there. However, it is that they are active inside their own bodies.

それ に 関する 、 立花 瀧 の 最初の 反応 は こう であった 。 ||かんする|たちばな|たき||さいしょの|はんのう||| This was Taki Tachibana's first reaction to this.

「 うそ 噓 だ ろ !?」   一方 、 宮 水 三葉 が 携帯 の メモ 機能 で 伝えて きた 第一声 は こう だ 。 ||||いっぽう|みや|すい|みつば||けいたい||めも|きのう||つたえて||だいいっせい|||

〈 変態 ッ !!〉 へんたい|

変態 じゃ ねえ よ ! へんたい|||

と メモ の 下 に 即座 に 書き 足した 瀧 である 。 |めも||した||そくざ||かき|たした|たき| This is Taki who immediately added it under the memo.

意図 的に 女 の 子 の 生活 に し の 忍び込んだ の なら 変態 と 呼ばれても しかたがない が 、 これ は 完全に 不可 抗力 だ 。 いと|てきに|おんな||こ||せいかつ||||しのびこんだ|||へんたい||よばれて も|||||かんぜんに|ふか|こうりょく| If he deliberately sneaked into a girl's life, he could be called a pervert, but this is completely force majeure.

こんな ややこしい 事態 を 自 分 から 望む やつ が いる もの か 。 ||じたい||じ|ぶん||のぞむ|||||

フリック 入力 で そう 書き込んで 抗議 した のだ が 、 〈 私 の 身体 を 自由に して る んだ から 、 変態 に 決まってる でしょう !?〉   次に 入れ替わった とき に 、 けん も ほろろ に そんな 返事 が 返って きた 。 |にゅうりょく|||かきこんで|こうぎ||||わたくし||からだ||じゆうに|||||へんたい||きまってる||つぎに|いれかわった|||||ほろ ろ|||へんじ||かえって| I protested by writing that with a flick input, but ``Since I'm freeing my body, it's decided that I'm going to be a pervert!?'' I'm back.

身体 を 自由に する って 何 だ よ 。 からだ||じゆうに|||なん||

こいつ 、 相当 きわどい こと 言って る の に 、 自分 で 気づいて ない の か 。 |そうとう|||いって||||じぶん||きづいて|||

だいたい その くらい の 段階 で 、 宮 水 三 葉 と いう 人格 が 、 と ぼ 乏しい 情報 の 中 、 お ぼ ろ げ に りん 輪 かく 郭 を 取り 始めた 。 ||||だんかい||みや|すい|みっ|は|||じんかく||||とぼしい|じょうほう||なか|||||||りん||かく||とり|はじめた

── この 女 、 結構 アホ だ ぞ 。 |おんな|けっこう|||

布団 を 上げた 。 ふとん||あげた

パジャマ を ぬ 脱いで たたみ 畳 に 落とした 。 ぱじゃま|||ぬいで||たたみ||おとした

胸 を 揉んで いる とき より も 服 を 脱ぐ とき の ほう が 、 瀧 は 後ろめたく なる 。 むね||もんで|||||ふく||ぬぐ|||||たき||うしろめたく| なげ し 長 押 に かかって いた 制服 を 身 に つける 。 ||ちょう|お||||せいふく||み||

この おそ 恐ろしい スカート と いう もの 、 フック と ファスナー だけ で 、 ベルト も なし に 身体 に 固定 さ れる こと に いつも おどろ 驚く 。 ||おそろしい|すかーと||||||ふぁすなー|||べると||||からだ||こてい|||||||おどろく

くびれ が あ る って 、 こういう こと か 。

そして この 細い 小 さい 白い シャツ に する り と 身体 が 通って 、 きちんと ボタン が 留まる こと に も き 奇 みよう 妙な かん 感 が い 慨 を 覚えて しまう 。 ||ほそい|しょう||しろい|しゃつ|||||からだ||かよって||ぼたん||とどまる|||||き||みょうな||かん|||がい||おぼえて|

そういう こと に 、 いちいち 驚いて しまう 。 ||||おどろいて|

かみ 髪 の 毛 を まとめて 束ねて 、 ゴム で 留め る 。 |かみ||け|||たばねて|ごむ||とどめ|

本物 の 三葉 は 、 もっと こ 凝った ゆ 結 いか た を して いる の かも しれ ない が 、 瀧 に は こ れ が せい 精 いつ 一 ぱい 杯 だ 。 ほんもの||みつば||||こった||けつ|||||||||||たき|||||||せい||ひと||さかずき|

装備 品 を 装着 して しまう と 、 いやおう な く 、 気合い が 入る 。 そうび|しな||そうちゃく|||||||きあい||はいる

今 日一日 、 なんとか して 、 女 を 演じ きる ぞ 。 いま|ひいちにち|||おんな||えんじ||

気合い でも 入れ なければ 、 心 が くじけ て しまう 。 きあい||いれ||こころ||||

《 あんた 、 だれ 誰 ? ||だれ 誰 か に 突然 、 真顔 で き 訊 かれ そうで こわ 恐 い 。 だれ|||とつぜん|まがお|||じん||そう で||こわ|

そんな こと を 言わ れよう もの なら 、 確 実に 心臓 が 止まる 。 |||いわ||||かく|じつに|しんぞう||とまる

これ まで 周囲 の 反応 を 見て きた 結果 、 宮 水 三葉 が どんな しゃべり 方 を する の か 、 おぼろげ ながら わかって きた ところ だ 。 ||しゅうい||はんのう||みて||けっか|みや|すい|みつば||||かた||||||||||

わかって は きた のだ が 、 さすが に 一 日 じゅう それ で 通す の は 難しい のだ 。 |||||||ひと|ひ||||とおす|||むずかしい| 昼 より 前 に は 、 確実に ぼろ が 出 始める 。 ひる||ぜん|||かくじつに|||だ|はじめる

知ら ず 知ら ず 、 男 言葉 に 戻って いて 、 学校 の 連 中 を ぎょっと さ せて しまう 瀧 である 。 しら||しら||おとこ|ことば||もどって||がっこう||れん|なか||||||たき|

いつも 反省 する のだ が 、 それ でも なかなか 直ら ない 。 |はんせい|||||||なおら|

もう 少し 、 チューニング が 必要 かも しれ ない 。 |すこし|||ひつよう|||

「── あ 、 そう だ 」   目の前 に 、 絶好 の テキスト が ある こと に 気 が ついた 。 |||めのまえ||ぜっこう||てきすと|||||き||

三葉 が 携帯 の 中 に 残した メモ だ 。 みつば||けいたい||なか||のこした|めも| ようするに こいつ は 、 宮 水 三葉 の 肉声 みたいな もの だろう 。 |||みや|すい|みつば||にくせい|||

これ を 自然に し や べ 喋れる ように なれば いい わけだ 。 ||しぜんに||||しゃべれる||||

ため 試して みた 。 |ためして|

「…… ほん っと に ッ 、 とにかく ッ 、 私 の 体 で 勝手な こと し ないで よね ! ||||||わたくし||からだ||かってな|||| 」   自分 の こと ながら 、 実に わざとらしい 。 じぶん||||じつに|

ア マチュア 劇団 の しろうと 素人 しば 芝 い 居 の ようだ 。 ||げきだん|||しろうと||しば||い||

「── あと 、 わかって る と 思う けれど ! ||||おもう| 女 子 更衣室 に 入ったり したら 何らか の 形 で 復讐 する ! おんな|こ|こういしつ||はいったり||なんらか||かた||ふくしゅう| 」   がんばって すご 凄んで みた のだ が 、 この 声 で は いまひとつ はく 迫 り よく 力 が 出 ない 。 ||すごんで|||||こえ|||||さこ|||ちから||だ|

二 、 三 回 、 そう やって 読んで みた が 、 ば 馬 か 鹿 ば 馬 か 鹿 しく なって やめて しまった 。 ふた|みっ|かい|||よんで||||うま||しか||うま||しか||||

ふと 、 何 か の 気配 を 感じて 視線 を 泳が せて み る と 、 ふすま が うっすら 開いて いて 、 その すき 隙 ま 間 から 小さな 目 が こちら を のぞ 覗いて いた 。 |なん|||けはい||かんじて|しせん||えい が||||||||あいて||||すき||あいだ||ちいさな|め|||||のぞいて| そ の 目 が まばたき して 、 きょ ろ り と 動いた 。 ||め||||||||うごいた

「 う おう ! 芝居 どころ で は なく リアルに 声 が 出て し まった 。 しばい|||||りあるに|こえ||でて||

うす 薄 ぐ ら 暗い 日本間 の 中 で そんな こと を さ れたら まる きり よこ 横 みぞ 溝 せい 正 し 史 の みん 民 ぞく 俗 的 きよう 恐 ふ 怖 の 世界 である 。 |うす|||くらい|にっぽん かん||なか||||||||||よこ||みぞ||せい||し|||たみ||ぞく|てき||こわ||こわ||せかい|

妹 の よつ 四 は 葉 だ 。 いもうと|||よっ||は|

三葉 と は 歳 が は な 離れて い て 、 まだ 小学生 くらい だ 。 みつば|||さい||||はなれて||||しょうがくせい||

うすく 開いた ふ すま の 向こう で 、 小学生 は 口 もと を ゆが め て 、 まゆ 眉 を たがいちがい に して 、 し ゅる しゅ る と え 海 び 老 みたいに 後ずさり ながら そっと ふ すま を 閉めた 。 |あいた||||むこう||しょうがくせい||くち|||||||まゆ|||||||||||うみ||ろう||あとずさり||||||しめた

まったく の 無言 だった が 、 その 表情 を あえて せりふ 台詞 に する なら 、 「 う へえ 」   そういう 顔 だった 。 ||むごん||||ひょうじょう||||せりふ|||||||かお|

時間 に 追い立て られる ように 家 を 出 た 。 じかん||おいたて|||いえ||だ|

学校 まで の 道のり は 、 半ば まで は 妹 と いつ 一 しよ 緒 だった ので 迷う こと は なく 、 妹 と 別 れて から も 一 本道 だった ので 何の 問題 も なかった 。 がっこう|||みちのり||なかば|||いもうと|||ひと||お|||まよう||||いもうと||べつ||||ひと|ほんどう|||なんの|もんだい||

この 糸 守 町 と いう 小さな 町 は 、 糸 守 湖 を ぐるり と 取り囲む ように できて いる 。 |いと|しゅ|まち|||ちいさな|まち||いと|しゅ|こ||||とりかこむ|||

糸 守 湖 は 、 山地 の 真ん中 に ぽっかり と くぼ んだ 、 それほど 大きく も ない 湖 だ 。 いと|しゅ|こ||さんち||まんなか|||||||おおきく|||こ| 深い 山 の 奥 に とう 唐 とつ 突 に 湖 が 現出 する 、 と いう 風 景 は なかなか げん 幻 そう 想 的である 。 ふかい|やま||おく|||とう||つ||こ||げんしゅつ||||かぜ|けい||||まぼろし||おも|てきである

湖 は 山地 に 取り囲ま れた 状態 に なって いる ので 、 湖 の 周辺 は すべて しや 斜 めん 面 であり 、 民家 や 道路 は 、 斜面 を ところどころ 盛ったり けず 削 っ たり して 半ば 無理やり 作った 水 平地 に で きて いる 。 こ||さんち||とりかこま||じょうたい|||||こ||しゅうへん||||しゃ||おもて||みんか||どうろ||しゃめん|||もったり||けず||||なかば|むりやり|つくった|すい|へいち||||

だから 道路 は おおむね かん 環 じよう 状 線 だ し 、 行って も もど 戻って も だいたい 同じ 場所 に 着く 。 |どうろ||||かん||じょう|せん|||おこなって|||もどって|||おなじ|ばしょ||つく

瀧 は 左 方向 の 景色 に 目 を やった 。 たき||ひだり|ほうこう||けしき||め||

道 より も 低い 斜面 に 植わった 樹木 が と ぎ れ 、 遠景 が 目 に 入って きた 。 どう|||ひくい|しゃめん||うわった|じゅもく|||||えんけい||め||はいって|

風 に 吹か れて 小さく 波打った 糸 守 湖 の すい 水 めん 面 に 、 朝 の 光 が 当たって 、 カット ガラス みたいに キラキラ して いた 。 かぜ||ふか||ちいさく|なみうった|いと|しゅ|こ|||すい||おもて||あさ||ひかり||あたって|かっと|がらす||きらきら||

その 向こう に 、 緑色 の 木々 に 全面 を おお 覆 われた 山 の 景色 が 、 あちら は かすかに あわ 淡 く 、 また あちら は 深く こ 濃く 、 と いう ふうに 、 複 雑な いん 陰 えい 影 を 作って いた 。 |むこう||みどりいろ||きぎ||ぜんめん|||おお||やま||けしき||||||あわ|||||ふかく||こく||||ふく|ざつな||かげ||かげ||つくって|

そんな 山々 の 複雑な 表情 を 視線 で な で まわして いる と 、 瀧 の 心 の 中 に 、 感動 に 近い もの が わき上がる 。 |やまやま||ふくざつな|ひょうじょう||しせん|||||||たき||こころ||なか||かんどう||ちかい|||わきあがる

ひょっとして 、 これ が きよう 郷 しゆう 愁 と いう やつ な の だろう か 。 ||||ごう||しゅう|||||||

生まれ も 育ち も 東京 二十三 区 、 しかも やま の 山 て 手 線 の 内側 で 、 地方 の 故郷 と いう も の を 瀧 は 持た ない 。 うまれ||そだち||とうきょう|にじゅうさん|く||||やま||て|せん||うちがわ||ちほう||こきょう||||||たき||もた|

帰省 と か いう もの も し た こと が ない 。 きせい||||||||||

だ から 、 里心 が つく と いう 感覚 が 、 よく わ から ない のだ が 、 何やら くすぐったい 感じ だ 。 ||さとごころ|||||かんかく||||||||なにやら||かんじ|

瀧 は ふと 立ち止まって 、 その 景色 を じ っ と み 見 す 据えた 。 たき|||たちどまって||けしき||||||み||すえた 視界 を 広く とり 、 全体 像 を 、 意識 の 中 に 焼き付けよう と した 。 しかい||ひろく||ぜんたい|ぞう||いしき||なか||やきつけよう||

光 は 湖面 に 反射 して おど 躍り 、 山 は くろ ぐ ろ と 静まりかえって いて 、 その 景色 から 、 風 が ふ 吹き込んで きて 身体 を なぶる 。 ひかり||こめん||はんしゃ|||おどり|やま||||||しずまりかえって|||けしき||かぜ|||ふきこんで||からだ||

髪 を ゆ 揺らす 。 かみ|||ゆらす

風 に は 、 に お 匂い が あった 。 かぜ|||||におい||

水 と 土 と 樹木 の 気配 が 、 見え ない くらい 小さな とう 透 めい 明 な カプセル に ふう 封じ込ま れて いて 、 それ が 風 に 混じって ほお 頰 に 当たって ふと はじ 弾ける よう な 、 そんな かすかな 匂い だ 。 すい||つち||じゅもく||けはい||みえ|||ちいさな||とおる||あき||かぷせる|||ふうじこま|||||かぜ||まじって||||あたって|||はじける|||||におい|

風 に 匂い が ある と いう こと を 、 瀧 は この 町 で 、 初めて 体験 した 。 かぜ||におい|||||||たき|||まち||はじめて|たいけん|

予感 が ある 。 よかん||

これ から 先 、 自分 は 、 なつ 懐かしい と いう がい 概 ねん 念 を 、 この 景色 と ワン セット で 想起 する だ ろう 。 ||さき|じぶん|||なつかしい||||おおむね||ねん|||けしき||わん|せっと||そうき|||

この 景色 は ──。 |けしき|

どこ か に かえ 還って ゆく 、 と いう 概念 を 持た ない 瀧 に 、 神 が あた 与えた 、〝 故郷 〟 なる もの の イメージ 像 な ので は ある まい か 。 ||||かえって||||がいねん||もた||たき||かみ|||あたえた|こきょう||||いめーじ|ぞう||||||

言葉 と して はっきり と そう にん 認 しき 識 した わけ で は ない が 、 そういった こと を 、 瀧 は 感じて いる 。 ことば|||||||にん||しき||||||||||たき||かんじて|

「 朝っぱら から 何 たそがれ とる の ? あさっぱら||なん||| 後ろ から 、 かた 肩 に 誰 か の あご 顎 が 乗った 。 うしろ|||かた||だれ||||あご||のった

振り返る と 、 な 名 とり 取 さ 早 や 耶 か 香 が おさげ を 揺らし て 立って いた 。 ふりかえる|||な||と||はや||や||かおり||||ゆらし||たって|

その 背後 から 、 ボウズ 頭 で 体格 の 大き い て 勅 し 使 がわ 河 ら 原 かつ 克 ひ こ 彦 が 、 ママチャリ を 引いて あくび を し ながら 追いついて くる 。 |はいご|||あたま||たいかく||おおき|||ちょく||つか||かわ||はら||かつ|||ひこ||||ひいて|||||おいついて|

瀧 の これ まで の 観察 結果 に よれば 、 こ の 二 人 と 三葉 は 、 家族 ぐるみ の 幼なじみ だ 。 たき|||||かんさつ|けっか|||||ふた|じん||みつば||かぞく|||おさななじみ|

学校 内 で は ほぼ 三 人 一緒に 行動 し て いる 。 がっこう|うち||||みっ|じん|いっしょに|こうどう|||

この 周辺 の 言い 方 で 表現 すれば 「 つれ 」 と いう こと に なる 。 |しゅうへん||いい|かた||ひょうげん|||||||

瀧 は 当初 、「 三葉 の こと を 知り つ 尽くして いる 人物 と 、 長 時間 行動 を 共に する の は まずい 」 と 考えて 、 けい 警 かい 戒 して いた のだ が 、 すぐに そう で は ない と いう こと が わか っ て きた 。 たき||とうしょ|みつば||||しり||つくして||じんぶつ||ちょう|じかん|こうどう||ともに||||||かんがえて||けい||かい|||||||||||||||||

二 人 と も 、 ひ 比 かく 較 てき 的 おっとり した 人 物 な ので 、 三葉 の 人格 ( の 中身 ) を そう そう 疑ったり は し なかった し 、 特に 早 耶香 は 、 多少 ふ 不 しん 審 な こと が あった と して も 、 ふた|じん||||ひ||かく||てき|||じん|ぶつ|||みつば||じんかく||なかみ||||うたがったり|||||とくに|はや|やかおり||たしょう||ふ||しん|||||||

「 何 やって ん の ? なん||| と 訊 いて くれる ので 、 すぐ に 調整 が きく のだ 。 |じん||||||ちょうせい||| 正直 助かる 。 しょうじき|たすかる

そういった 理由 で 、 瀧 は 学校 で は 、 なる べく この 二 人 に くっついて いる こと に 決めて いた 。 |りゆう||たき||がっこう||||||ふた|じん||||||きめて|

三葉 の 行動 と して も 、 それ が 自然 な ようだ 。 みつば||こうどう||||||しぜん||

リアリティ を 追求 する なら 、「 サ ヤ ちん 」「 テッシー 」 と 呼びかけ ねば なら な い のだ が 、 さすが に そこ まで きよ 距 り 離 を つ 詰める の は 気 が 引けて 、「 えっ と 」 と か 「 あの さ 」 と いう 感じ で ごまかして いる 。 ||ついきゅう||||||||よびかけ||||||||||||きょ||はな|||つめる|||き||ひけて|||||||||かんじ|||

「 また 、 髪 の 毛 くしゃくしゃ 。 |かみ||け|

スカート も 折 っ と らんし 」 名取 早 耶香 が 、 頭 の 上 で ひと 束 に まとめた だけ の 瀧 の ( と いう か 三葉 の ) 髪 を 、 軽く つまんだ 。 すかーと||お||||なとり|はや|やかおり||あたま||うえ|||たば|||||たき|||||みつば||かみ||かるく|

「 また ね 寝 ぼう 坊 した の ? ||ね||ぼう|| 」 「 寝坊 も した けど 。 ねぼう|||

これ が 精一杯 で す ……」 ||せいいっぱい||

瀧 は 泣き そうな 顔 を 作った 。 たき||なき|そう な|かお||つくった

すでに し て 、 オリジナルの 三葉 らしい 口調 で 喋ろう と いう 決意 が くず 崩れて いる 。 |||おりじなるの|みつば||くちょう||しゃべろう|||けつい|||くずれて|