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I Am a Cat by Soseki Natsume, Chapter I - 08

Chapter I - 08

彼 は 身動き も し ない 。 双 眸 の 奥 から 射る ごとき 光 を 吾輩 の 矮小 なる 額 の 上 に あつめて 、 御 め え は 一体 何 だ と 云 った 。 大王 に して は 少々 言葉 が 卑しい と 思った が 何しろ その 声 の 底 に 犬 を も 挫 し ぐ べき 力 が 籠って いる ので 吾輩 は 少なからず 恐れ を 抱いた 。 しかし 挨拶 を し ない と 険呑 だ と 思った から 「 吾輩 は 猫 である 。 名前 は まだ ない 」 と なるべく 平気 を 装って 冷 然 と 答えた 。 しかし この 時 吾輩 の 心臓 は たしかに 平時 より も 烈 しく 鼓動 して おった 。 彼 は 大 に 軽蔑 せる 調子 で 「 何 、 猫 だ ? 猫 が 聞いて あきれ ら あ 。 全て え どこ に 住んで る ん だ 」 随分 傍若無人である 。 「 吾輩 は ここ の 教師 の 家 に いる のだ 」「 どうせ そんな 事 だろう と 思った 。 いやに 瘠せて る じゃ ね え か 」 と 大王 だけ に 気 焔 を 吹きかける 。 言葉 付 から 察する と どうも 良 家 の 猫 と も 思わ れ ない 。 しかし その 膏切 って 肥満 して いる ところ を 見る と 御馳走 を 食って る らしい 、 豊かに 暮して いる らしい 。 吾輩 は 「 そう 云 う 君 は 一体 誰 だい 」 と 聞か ざる を 得 なかった 。 「 己 れ あ 車屋 の 黒 よ 」 昂 然 たる もの だ 。 車屋 の 黒 は この 近辺 で 知ら ぬ 者 なき 乱暴 猫 である 。 しかし 車屋 だけ に 強い ばかりで ちっとも 教育 が ない から あまり 誰 も 交際 しな い 。 同盟 敬遠 主義 の 的に なって いる 奴 だ 。 吾輩 は 彼 の 名 を 聞いて 少々 尻 こそばゆき 感じ を 起す と 同時に 、 一方 で は 少々 軽侮 の 念 も 生じた ので ある 。 吾輩 は まず 彼 が どの くらい 無 学 である か を 試して みよう と 思って 左 の 問答 を して 見た 。 「 一体 車屋 と 教師 と は どっち が えらい だろう 」 「 車屋 の 方 が 強い に 極 って いら あな 。 御 め え の うち の 主人 を 見 ねえ 、 まるで 骨 と 皮 ばかり だ ぜ 」 「 君 も 車屋 の 猫 だけ に 大分 強そうだ 。 車屋 に いる と 御馳走 が 食える と 見える ね 」 「 何 に おれ な ん ざ 、 どこ の 国 へ 行った って 食い物 に 不自由 は しね え つもりだ 。 御 め え なんか も 茶 畠 ばかり ぐるぐる 廻って い ねえ で 、 ち っと 己 の 後 へ くっ付いて 来て 見 ねえ 。 一 と 月 と たた ねえ うち に 見違える ように 太 れる ぜ 」 「 追って そう 願う 事 に しよう 。 しかし 家 は 教師 の 方 が 車屋 より 大きい の に 住んで いる ように 思わ れる 」 「 箆棒 め 、 うち なんか いくら 大きく たって 腹 の 足し に なる もん か 」 彼 は 大 に 肝 癪 に 障った 様子 で 、 寒 竹 を そいだ ような 耳 を しきりと ぴく 付か せて あら ら か に 立ち去った 。 吾輩 が 車屋 の 黒 と 知己 に なった の は これ から である 。


Chapter I - 08 chapter|i Kapitel I - 08 Chapter I - 08 第 I-08 章

彼 は 身動き も し ない 。 かれ||みうごき||| He does not move. 双 眸 の 奥 から 射る ごとき 光 を 吾輩 の 矮小 なる 額 の 上 に あつめて 、 御 め え は 一体 何 だ と 云 った 。 そう|ひとみ||おく||いる||ひかり||わがはい||わいしょう||がく||うえ|||ご||||いったい|なん|||うん| I gathered light from the depths of Sin'in on the small amount of the fellow, and I told him what the rule was. 大王 に して は 少々 言葉 が 卑しい と 思った が 何しろ その 声 の 底 に 犬 を も 挫 し ぐ べき 力 が 籠って いる ので 吾輩 は 少なからず 恐れ を 抱いた 。 だいおう||||しょうしょう|ことば||いやしい||おもった||なにしろ||こえ||そこ||いぬ|||くじ||||ちから||こもって|||わがはい||すくなからず|おそれ||いだいた しかし 挨拶 を し ない と 険呑 だ と 思った から 「 吾輩 は 猫 である 。 |あいさつ|||||けんのん|||おもった||わがはい||ねこ| However, I thought that I was a steep man if I didn't say hello, so I said, "I'm a cat. 名前 は まだ ない 」 と なるべく 平気 を 装って 冷 然 と 答えた 。 なまえ||||||へいき||よそおって|ひや|ぜん||こたえた しかし この 時 吾輩 の 心臓 は たしかに 平時 より も 烈 しく 鼓動 して おった 。 ||じ|わがはい||しんぞう|||へいじ|||れつ||こどう|| However, at this time, my heart was certainly beating more violently than in normal times. 彼 は 大 に 軽蔑 せる 調子 で 「 何 、 猫 だ ? かれ||だい||けいべつ||ちょうし||なん|ねこ| He was in a very despised tone, "What a cat? 猫 が 聞いて あきれ ら あ 。 ねこ||きいて||| I'm afraid the cat will hear it. 全て え どこ に 住んで る ん だ 」 随分 傍若無人である 。 すべて||||すんで||||ずいぶん|ぼうじゃくぶじんである Where do you live? ”It's quite unmanned. 「 吾輩 は ここ の 教師 の 家 に いる のだ 」「 どうせ そんな 事 だろう と 思った 。 わがはい||||きょうし||いえ||||||こと|||おもった "I'm at the teacher's house here." "I wondered if that was the case. いやに 瘠せて る じゃ ね え か 」 と 大王 だけ に 気 焔 を 吹きかける 。 |やせて|||||||だいおう|||き|ほのお||ふきかける "I don't think it's ridiculous, isn't it?" 言葉 付 から 察する と どうも 良 家 の 猫 と も 思わ れ ない 。 ことば|つき||さっする|||よ|いえ||ねこ|||おもわ|| Judging from the words, it doesn't seem like a good cat. しかし その 膏切 って 肥満 して いる ところ を 見る と 御馳走 を 食って る らしい 、 豊かに 暮して いる らしい 。 ||こうせつ||ひまん|||||みる||ごちそう||くって|||ゆたかに|くらして|| However, when I see that the plaster is obese, it seems that he is eating a treat and is living affluently. 吾輩 は 「 そう 云 う 君 は 一体 誰 だい 」 と 聞か ざる を 得 なかった 。 わがはい|||うん||きみ||いったい|だれ|||きか|||とく| I had no choice but to ask, "Who are you?" 「 己 れ あ 車屋 の 黒 よ 」 昂 然 たる もの だ 。 おのれ|||くるまや||くろ||たかし|ぜん||| "I'm the black of the car shop." 車屋 の 黒 は この 近辺 で 知ら ぬ 者 なき 乱暴 猫 である 。 くるまや||くろ|||きんぺん||しら||もの||らんぼう|ねこ| The black of the car shop is a violent cat without a stranger in this area. しかし 車屋 だけ に 強い ばかりで ちっとも 教育 が ない から あまり 誰 も 交際 しな い 。 |くるまや|||つよい|||きょういく|||||だれ||こうさい|| However, since they are strong only in car dealers and have no education at all, no one is dating. 同盟 敬遠 主義 の 的に なって いる 奴 だ 。 どうめい|けいえん|しゅぎ||てきに|||やつ| He's the target of alliance pietism. 吾輩 は 彼 の 名 を 聞いて 少々 尻 こそばゆき 感じ を 起す と 同時に 、 一方 で は 少々 軽侮 の 念 も 生じた ので ある 。 わがはい||かれ||な||きいて|しょうしょう|しり||かんじ||おこす||どうじに|いっぽう|||しょうしょう|けいぶ||ねん||しょうじた|| When I heard his name, I felt a little bummed, and at the same time, I felt a little disdainful. 吾輩 は まず 彼 が どの くらい 無 学 である か を 試して みよう と 思って 左 の 問答 を して 見た 。 わがはい|||かれ||||む|まな||||ためして|||おもって|ひだり||もんどう|||みた I first tried the question and answer on the left to see how illiterate he was. 「 一体 車屋 と 教師 と は どっち が えらい だろう 」 「 車屋 の 方 が 強い に 極 って いら あな 。 いったい|くるまや||きょうし|||||||くるまや||かた||つよい||ごく||| "Which one is better, a car shop or a teacher?" "I don't want the car shop to be stronger. 御 め え の うち の 主人 を 見 ねえ 、 まるで 骨 と 皮 ばかり だ ぜ 」 「 君 も 車屋 の 猫 だけ に 大分 強そうだ 。 ご||||||あるじ||み|||こつ||かわ||||きみ||くるまや||ねこ|||だいぶ|きょうそうだ You can't see my husband, it's just bones and skin. "" You seem to be very strong only as a cat in a car shop. 車屋 に いる と 御馳走 が 食える と 見える ね 」 「 何 に おれ な ん ざ 、 どこ の 国 へ 行った って 食い物 に 不自由 は しね え つもりだ 。 くるまや||||ごちそう||くえる||みえる||なん||||||||くに||おこなった||くいもの||ふじゆう|||| When you're in the car shop, you can see that you can eat a treat. "" No matter what country you go to, you won't be inconvenienced by food. 御 め え なんか も 茶 畠 ばかり ぐるぐる 廻って い ねえ で 、 ち っと 己 の 後 へ くっ付いて 来て 見 ねえ 。 ご|||||ちゃ|はた|||まわって||||||おのれ||あと||くっついて|きて|み| Hey, I don't think I'm going around all the tea fields, so I can't see them sticking behind me. 一 と 月 と たた ねえ うち に 見違える ように 太 れる ぜ 」 「 追って そう 願う 事 に しよう 。 ひと||つき||||||みちがえる||ふと|||おって||ねがう|こと|| Hey, I'll get fat so that I can mistake it for the moon. "" Let's hope for that later. しかし 家 は 教師 の 方 が 車屋 より 大きい の に 住んで いる ように 思わ れる 」 「 箆棒 め 、 うち なんか いくら 大きく たって 腹 の 足し に なる もん か 」   彼 は 大 に 肝 癪 に 障った 様子 で 、 寒 竹 を そいだ ような 耳 を しきりと ぴく 付か せて あら ら か に 立ち去った 。 |いえ||きょうし||かた||くるまや||おおきい|||すんで|||おもわ||へらぼう|||||おおきく||はら||たし|||||かれ||だい||かん|しゃく||さわった|ようす||さむ|たけ||||みみ||||つか||||||たちさった 吾輩 が 車屋 の 黒 と 知己 に なった の は これ から である 。 わがはい||くるまや||くろ||ちき||||||| It is from now on that I became acquainted with the black car shop.