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I Am a Cat by Soseki Natsume, Chapter I - 05

Chapter I - 05

我 儘 で 思い出した から ちょっと 吾輩 の 家 の 主人 が この 我 儘 で 失敗 した 話 を しよう 。 元来 この 主人 は 何と いって 人 に 勝 れて 出来る 事 も ない が 、 何 に でも よく 手 を 出し た がる 。 俳 句 を やって ほととぎす へ 投書 を したり 、 新 体 詩 を 明星 へ 出したり 、 間違い だらけ の 英文 を かいたり 、 時に よる と 弓 に 凝ったり 、 謡 を 習ったり 、 また ある とき は ヴァイオリン など を ブーブー 鳴らしたり する が 、 気の毒な 事 に は 、 どれ も これ も 物 に なって おら ん 。 その 癖 やり出す と 胃 弱 の 癖 に いやに 熱心だ 。 後 架 の 中 で 謡 を うたって 、 近所 で 後 架 先生 と 渾名 を つけ られて いる に も 関せ ず 一 向 平気な もの で 、 や は り これ は 平 の 宗 盛 にて 候 を 繰返して いる 。 みんな が そら 宗 盛 だ と 吹き出す くらい である 。 この 主人 が どういう 考 に なった も の か 吾輩 の 住み込んで から 一 月 ばかり 後 の ある 月 の 月給 日 に 、 大きな 包み を 提げて あわただしく 帰って 来た 。 何 を 買って 来た の か と 思う と 水彩 絵 具 と 毛筆 と ワットマン と いう 紙 で 今日 から 謡 や 俳句 を やめて 絵 を かく 決心 と 見えた 。 果して 翌日 から 当分 の 間 と いう もの は 毎日 毎日 書斎 で 昼寝 も し ないで 絵 ばか り か いて いる 。 しかし その かき上げた もの を 見る と 何 を かいた もの やら 誰 に も 鑑定 が つか ない 。 当人 も あまり 甘く ない と 思った もの か 、 ある 日 その 友人 で 美学 と か を やって いる 人 が 来た 時 に 下 の ような 話 を して いる の を 聞いた 。 「 どうも 甘く かけ ない もの だ ね 。 人 の を 見る と 何でもない ようだ が 自ら 筆 を とって 見る と 今更 の ように むずかしく 感ずる 」 これ は 主人 の 述懐 である 。 なるほど 詐 り のな い 処 だ 。 彼 の 友 は 金 縁 の 眼鏡 越 に 主人 の 顔 を 見 ながら 、「 そう 初め から 上手に は かけ ない さ 、 第 一室 内 の 想像 ばかり で 画 が かける 訳 の もの で は ない 。 昔 し 以太 利 の 大家 アンドレア ・ デル ・ サルト が 言った 事 が ある 。 画 を かく なら 何でも 自然 その物 を 写せ 。 天 に 星 辰 あり 。 地 に 露 華 あり 。 飛ぶ に 禽 あり 。 走る に 獣 あり 。 池 に 金魚 あり 。 枯木 に 寒 鴉 あり 。 自然 は これ 一 幅 の 大 活 画 なり と 。 どう だ 君 も 画 らしい 画 を か こう と 思う なら ち と 写生 を したら 」「 へえ アンドレア ・ デル ・ サルト が そんな 事 を いった 事 が ある かい 。 ちっとも 知ら なかった 。 なるほど こりゃ もっともだ 。 実に その 通り だ 」 と 主人 は 無 暗に 感心 して いる 。 金 縁 の 裏 に は 嘲 ける ような 笑 が 見えた 。

Chapter I - 05 chapter|i Chapter I - 05

我 儘 で 思い出した から ちょっと 吾輩 の 家 の 主人 が この 我 儘 で 失敗 した 話 を しよう 。 われ|まま||おもいだした|||わがはい||いえ||あるじ|||われ|まま||しっぱい||はなし|| As I remembered in this story, let's talk a little about the master of my house who failed in this story. 元来 この 主人 は 何と いって 人 に 勝 れて 出来る 事 も ない が 、 何 に でも よく 手 を 出し た がる 。 がんらい||あるじ||なんと||じん||か||できる|こと||||なん||||て||だし|| Originally this husband did not have any ability to beat people, but he wanted to take out his hands well in everything. 俳 句 を やって ほととぎす へ 投書 を したり 、 新 体 詩 を 明星 へ 出したり 、 間違い だらけ の 英文 を かいたり 、 時に よる と 弓 に 凝ったり 、 謡 を 習ったり 、 また ある とき は ヴァイオリン など を ブーブー 鳴らしたり する が 、 気の毒な 事 に は 、 どれ も これ も 物 に なって おら ん 。 はい|く|||||とうしょ|||しん|からだ|し||みょうじょう||だしたり|まちがい|||えいぶん|||ときに|||ゆみ||こったり|うたい||ならったり|||||ヴぁいおりん||||ならしたり|||きのどくな|こと|||||||ぶつ|||| Doing haiku and writing to Hotogisu, writing new poems to the star, writing mistaken English, and sometimes sticking to the bow, learning the rhyme, and sometimes playing the violin. It sounds, but when it's a pity, none of this is a thing. その 癖 やり出す と 胃 弱 の 癖 に いやに 熱心だ 。 |くせ|やりだす||い|じゃく||くせ|||ねっしんだ I am enthusiastic about the habit of having a weak stomach when the habit begins. 後 架 の 中 で 謡 を うたって 、 近所 で 後 架 先生 と 渾名 を つけ られて いる に も 関せ ず   一 向 平気な もの で 、 や は り これ は 平 の 宗 盛 にて 候 を 繰返して いる 。 あと|か||なか||うたい|||きんじょ||あと|か|せんせい||こんめい|||||||かんせ||ひと|むかい|へいきな||||||||ひら||はじめ|さかり||こう||くりかえして| In the back rack, he was singing a song, and although he was named after the teacher in the neighborhood, he was sympathetic, and in the end, it repeated the weather in a flat manner. .. みんな が そら 宗 盛 だ と 吹き出す くらい である 。 |||はじめ|さかり|||ふきだす|| It's about as if everyone is Sora Somori. この 主人 が どういう 考 に なった も の か 吾輩 の 住み込んで から 一 月 ばかり 後 の ある 月 の 月給 日 に 、 大きな 包み を 提げて あわただしく 帰って 来た 。 |あるじ|||こう||||||わがはい||すみこんで||ひと|つき||あと|||つき||げっきゅう|ひ||おおきな|つつみ||さげて||かえって|きた What kind of thought did this owner have, he came back in a hurry with a large package on the monthly salary of a month, about one month after I lived in. 何 を 買って 来た の か と 思う と 水彩 絵 具 と 毛筆 と ワットマン と いう 紙 で 今日 から 謡 や 俳句 を やめて 絵 を かく 決心 と 見えた 。 なん||かって|きた||||おもう||すいさい|え|つぶさ||もうひつ|||||かみ||きょう||うたい||はいく|||え|||けっしん||みえた I wondered what he had bought: watercolors, a brush, and a piece of paper called Watman, which he had decided to use for painting today instead of chanting or writing haiku. 果して 翌日 から 当分 の 間 と いう もの は 毎日 毎日 書斎 で 昼寝 も し ないで 絵 ばか り か いて いる 。 はたして|よくじつ||とうぶん||あいだ|||||まいにち|まいにち|しょさい||ひるね||||え||||| For the next day and for the time being, I spent every day in my study, not even taking a nap, just painting. しかし その かき上げた もの を 見る と 何 を かいた もの やら 誰 に も 鑑定 が つか ない 。 ||かきあげた|||みる||なん|||||だれ|||かんてい||| However, looking at the scratched-up items, no one can appraise what was said to have been done. 当人 も あまり 甘く ない と 思った もの か 、 ある 日 その 友人 で 美学 と か を やって いる 人 が 来た 時 に 下 の ような 話 を して いる の を 聞いた 。 とうにん|||あまく|||おもった||||ひ||ゆうじん||びがく||||||じん||きた|じ||した|||はなし||||||きいた I heard that the person was not too uncomfortable, and one day when a friend of mine who was doing aesthetics came, he heard the following story. 「 どうも 甘く かけ ない もの だ ね 。 |あまく||||| "It's not easy to make a good bet, is it? 人 の を 見る と 何でもない ようだ が 自ら 筆 を とって 見る と 今更 の ように むずかしく 感ずる 」 これ は 主人 の 述懐 である 。 じん|||みる||なんでもない|||おのずから|ふで|||みる||いまさら||||かんずる|||あるじ||じゅっかい| When I look at people's things, they seem to be nothing, but when I look at them by myself, I feel it is as difficult as it is now.” なるほど 詐 り のな い 処 だ 。 |さ||||しょ| I see that there is no fraud. 彼 の 友 は 金 縁 の 眼鏡 越 に 主人 の 顔 を 見 ながら 、「 そう 初め から 上手に は かけ ない さ 、 第 一室 内 の 想像 ばかり で 画 が かける 訳 の もの で は ない 。 かれ||とも||きむ|えん||めがね|こ||あるじ||かお||み|||はじめ||じょうずに|||||だい|いっしつ|うち||そうぞう|||が|||やく||||| While looking at the master's face through his golden spectacles, his friend said, “Yes, from the beginning, I can't do well, and it's not just the imagination in the first room. 昔 し 以太 利 の 大家 アンドレア ・ デル ・ サルト が 言った 事 が ある 。 むかし||いた|り||たいか|||||いった|こと|| There is something said by Andrea del Sart, the landlord of the ancient world. 画 を かく なら 何でも 自然 その物 を 写せ 。 が||||なんでも|しぜん|そのもの||うつせ If you draw a picture, just copy the natural thing. 天 に 星 辰 あり 。 てん||ほし|たつ| There is a star dragon in heaven. 地 に 露 華 あり 。 ち||ろ|はな| There is dew on the ground. 飛ぶ に 禽 あり 。 とぶ||きん| There are birds to fly. 走る に 獣 あり 。 はしる||けだもの| 池 に 金魚 あり 。 いけ||きんぎょ| There are goldfish in the pond. 枯木 に 寒 鴉 あり 。 かれき||さむ|からす| There is a cold crow on a dead tree. 自然 は これ 一 幅 の 大 活 画 なり と 。 しぜん|||ひと|はば||だい|かつ|が|| どう だ 君 も 画 らしい 画 を か こう と 思う なら ち と 写生 を したら 」「 へえ アンドレア ・ デル ・ サルト が そんな 事 を いった 事 が ある かい 。 ||きみ||が||が|||||おもう||||しゃせい|||||||||こと|||こと||| And if you're so inclined, why don't you do some sketching? "Well, did Andrea del Sarto ever say anything like that? ちっとも 知ら なかった 。 |しら| I had no idea. なるほど こりゃ もっともだ 。 Well, that makes sense. 実に その 通り だ 」 と 主人 は 無 暗に 感心 して いる 。 じつに||とおり|||あるじ||む|あんに|かんしん|| That's exactly the case," said the owner, impressed. 金 縁 の 裏 に は 嘲 ける ような 笑 が 見えた 。 きむ|えん||うら|||あざけ|||わら||みえた