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Aozora Bunko, トロッコ (2/3)

トロッコ (2/3)

その後 十 日 余り たって から 、 良平 は 又 たった 一 人 、 午 過ぎ の 工事 場 に 佇み ながら 、 トロッコ の 来る の を 眺めて いた 。

すると 土 を 積んだ トロッコ の 外 に 、 枕木 を 積んだ トロッコ が 一 輛 、 これ は 本線 に なる 筈 の 、 太い 線路 を 登って 来た 。 この トロッコ を 押して いる の は 、 二 人 と も 若い 男 だった 。 良平 は 彼等 を 見た 時 から 、 何だか 親しみ 易い ような 気 が した 。 「 この 人 たち ならば 叱ら れ ない 」―― 彼 は そう 思い ながら 、 トロッコ の 側 へ 駈 け て 行った 。 「 おじさん 。 押して やろうか ? 」 その 中 の 一 人 、―― 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 俯 向き に トロッコ を 押した まま 、 思った 通り 快い 返事 を した 。 「 おお 、 押して くよう 」 良平 は 二 人 の 間 に は いる と 、 力一杯 押し 始めた 。 「 われ は 中 中 力 が ある な 」 他の 一 人 、―― 耳 に 巻 煙草 を 挟んだ 男 も 、 こう 良平 を 褒めて くれた 。 その 内 に 線路 の 勾配 は 、 だんだん 楽に なり 始めた 。 「 もう 押さ なく と も 好い 」―― 良平 は 今にも 云われる か と 内心 気がかりで なら なかった 。 が 、 若い 二 人 の 土 工 は 、 前 より も 腰 を 起した ぎり 、 黙黙と 車 を 押し 続けて いた 。 良平 は とうとう こらえ 切れ ず に 、 怯ず 怯ず こんな 事 を 尋ねて 見た 。 「 何時までも 押して いて 好い ? 」 「 好い とも 」 二 人 は 同時に 返事 を した 。 良平 は 「 優しい 人 たち だ 」 と 思った 。 五六 町 余り 押し 続けたら 、 線路 は もう 一 度 急 勾配 に なった 。 其処 に は 両側 の 蜜柑 畑 に 、 黄色い 実 が いくつ も 日 を 受けて いる 。 「 登り 路 の 方 が 好い 、 何時までも 押さ せて くれる から 」―― 良平 は そんな 事 を 考え ながら 、 全身 で トロッコ を 押す ように した 。 蜜柑 畑 の 間 を 登り つめる と 、 急に 線路 は 下り に なった 。 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 良平 に 「 やい 、 乗れ 」 と 云 った 。 良平 は 直 に 飛び乗った 。 トロッコ は 三 人 が 乗り移る と 同時に 、 蜜柑 畑 の におい を 煽り ながら 、 ひた 辷 り に 線路 を 走り出した 。 「 押す より も 乗る 方 が ずっと 好い 」―― 良平 は 羽織 に 風 を 孕ま せ ながら 、 当り前の 事 を 考えた 。 「 行き に 押す 所 が 多ければ 、 帰り に 又 乗る 所 が 多い 」―― そう も また 考えたり した 。 竹藪 の ある 所 へ 来る と 、 トロッコ は 静かに 走る の を 止めた 。 三 人 は 又 前 の ように 、 重い トロッコ を 押し 始めた 。 竹藪 は 何時か 雑木林 に なった 。 爪先 上 り の 所 所 に は 、 赤錆 の 線路 も 見え ない 程 、 落葉 の たまって いる 場所 も あった 。 その 路 を やっと 登り 切ったら 、 今度 は 高い 崖 の 向う に 、 広広 と 薄ら寒い 海 が 開けた 。 と 同時に 良平 の 頭 に は 、 余り 遠く 来 過ぎた 事 が 、 急に はっきり と 感じ られた 。 三 人 は 又 トロッコ へ 乗った 。 車 は 海 を 右 に し ながら 、 雑木 の 枝 の 下 を 走って 行った 。 しかし 良平 は さっき の ように 、 面白い 気もち に は なれ なかった 。 「 もう 帰って くれれば 好い 」―― 彼 は そう も 念じて 見た 。 が 、 行く 所 まで 行きつか なければ 、 トロッコ も 彼等 も 帰れ ない 事 は 、 勿論 彼 に も わかり切って いた 。 その 次に 車 の 止まった の は 、 切崩した 山 を 背負って いる 、 藁 屋根 の 茶店 の 前 だった 。 二 人 の 土 工 は その 店 へ は いる と 、 乳呑児 を おぶった 上さん を 相手 に 、 悠悠と 茶 など を 飲み 始めた 。 良平 は 独り いらいら し ながら 、 トロッコ の まわり を まわって 見た 。 トロッコ に は 頑丈な 車台 の 板 に 、 跳ねかえった 泥 が 乾いて いた 。 暫く の 後 茶店 を 出て 来 しな に 、 巻 煙草 を 耳 に 挟んだ 男 は 、( その 時 は もう 挟んで い なかった が ) トロッコ の 側 に いる 良平 に 新聞 紙 に 包んだ 駄菓子 を くれた 。 良平 は 冷淡に 「有難う」 と 云った 。 が 、 直 に 冷淡に して は 、 相手 に すまない と 思い 直した 。 彼 は その 冷淡 さ を 取り繕う ように 、 包み 菓子 の 一 つ を 口 へ 入れた 。 菓子 に は 新聞 紙 に あった らしい 、 石油 の に おい が しみついて いた 。 三 人 は トロッコ を 押し ながら 緩い 傾斜 を 登って 行った 。 良平 は 車 に 手 を かけて いて も 、 心 は 外 の 事 を 考えて いた 。 その 坂 を 向う へ 下り 切る と 、 又 同じ ような 茶店 が あった 。 土 工 たち が その 中 へ は いった 後 、 良平 は トロッコ に 腰 を かけ ながら 、 帰る 事 ばかり 気 に して いた 。 茶 店 の 前 に は 花 の さいた 梅 に 、 西日 の 光 が 消え かかって いる 。 「 もう 日 が 暮れる 」―― 彼 は そう 考える と 、 ぼんやり 腰かけて も い られ なかった 。 トロッコ の 車輪 を 蹴って 見たり 、 一 人 で は 動か ない の を 承知 し ながら うん うん それ を 押して 見たり 、―― そんな 事 に 気もち を 紛ら せて いた 。 ところが 土 工 たち は 出て 来る と 、 車 の 上 の 枕木 に 手 を かけ ながら 、 無造作に 彼 に こう 云 った 。 「 われ は もう 帰 ん な 。 おれたち は 今日 は 向う 泊り だ から 」 「 あんまり 帰り が 遅く なる と われ の 家 でも 心配 する ず ら 」 良平 は 一 瞬間 呆気 に とられた 。 もう かれこれ 暗く なる 事 、 去年 の 暮 母 と 岩村 まで 来た が 、 今日 の 途 は その 三四 倍 ある 事 、 それ を 今 から たった 一 人 、 歩いて 帰ら なければ なら ない 事 、―― そう 云 う 事 が 一 時 に わかった のである 。


トロッコ (2/3) とろっこ Wagen (2/3) Minecart (2/3) Carro (2/3) Chariot (2/3) Carrello (2/3) 토롯코 (2/3) Carrinho (2/3) 礦車 (2/3)

その後 十 日 余り たって から 、 良平 は 又 たった 一 人 、 午 過ぎ の 工事 場 に 佇み ながら 、 トロッコ の 来る の を 眺めて いた 。 そのご|じゅう|ひ|あまり|||りょうへい||また||ひと|じん|うま|すぎ||こうじ|じょう||たたずみ||とろっこ||くる|||ながめて| After ten days thereafter, Ryohei watching the arrival of the truck while standing alone in the construction site in the afternoon.

すると 土 を 積んだ トロッコ の 外 に 、 枕木 を 積んだ トロッコ が 一 輛 、 これ は 本線 に なる 筈 の 、 太い 線路 を 登って 来た 。 |つち||つんだ|とろっこ||がい||まくらぎ||つんだ|とろっこ||ひと|りょう|||ほんせん|||はず||ふとい|せんろ||のぼって|きた Then, besides the mine truck with the soil, there was one mine truck with the sleepers, which climbed the thick railroad track, which should become the main line. この トロッコ を 押して いる の は 、 二 人 と も 若い 男 だった 。 |とろっこ||おして||||ふた|じん|||わかい|おとこ| It was both young men who were pushing this truck. 良平 は 彼等 を 見た 時 から 、 何だか 親しみ 易い ような 気 が した 。 りょうへい||かれら||みた|じ||なんだか|したしみ|やすい||き|| From the time I saw them, Ryohei felt that it was kind of familiar. 「 この 人 たち ならば 叱ら れ ない 」―― 彼 は そう 思い ながら 、 トロッコ の 側 へ 駈 け て 行った 。 |じん|||しから|||かれ|||おもい||とろっこ||がわ||く|||おこなった “These guys can't be scolded.”—He thought, he went to the side of the truck. 「 おじさん 。 押して やろうか ? おして|やろう か Shall I push you? 」   その 中 の 一 人 、―― 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 俯 向き に トロッコ を 押した まま 、 思った 通り 快い 返事 を した 。 |なか||ひと|じん|しま||しゃつ||きて||おとこ||うつむ|むき||とろっこ||おした||おもった|とおり|こころよい|へんじ|| "One of them, a man wearing a striped shirt, responded as expected while holding the trolley in the heel. 「 おお 、 押して くよう 」   良平 は 二 人 の 間 に は いる と 、 力一杯 押し 始めた 。 |おして||りょうへい||ふた|じん||あいだ|||||ちからいっぱい|おし|はじめた “Oh, let's push it.” Ryohei began to push as much as he was between them. 「 われ は 中 中 力 が ある な 」   他の 一 人 、―― 耳 に 巻 煙草 を 挟んだ 男 も 、 こう 良平 を 褒めて くれた 。 ||なか|なか|ちから||||たの|ひと|じん|みみ||かん|たばこ||はさんだ|おとこ|||りょうへい||ほめて| "I'm in the middle," said one other man, a man with a cigarette in his ear and a cigarette, also praised Ryohei. その 内 に 線路 の 勾配 は 、 だんだん 楽に なり 始めた 。 |うち||せんろ||こうばい|||らくに||はじめた In the meantime, the slope of the track began to become easier. 「 もう 押さ なく と も 好い 」―― 良平 は 今にも 云われる か と 内心 気がかりで なら なかった 。 |おさ||||この い|りょうへい||いまにも|うん われる|||ないしん|きがかりで|| "I don't want to push anymore." が 、 若い 二 人 の 土 工 は 、 前 より も 腰 を 起した ぎり 、 黙黙と 車 を 押し 続けて いた 。 |わかい|ふた|じん||つち|こう||ぜん|||こし||おこした||もくもくと|くるま||おし|つづけて| However, the two young earthworks kept their silence and pushing the car as long as they stood up more than before. 良平 は とうとう こらえ 切れ ず に 、 怯ず 怯ず こんな 事 を 尋ねて 見た 。 りょうへい||||きれ|||きょう ず|きょう ず||こと||たずねて|みた Ryohei wasn't scared at last, and he asked and saw something like this. 「 何時までも 押して いて 好い ? いつまでも|おして||この い "Can you keep pushing for as long as you want? 」 「 好い とも 」   二 人 は 同時に 返事 を した 。 この い|と も|ふた|じん||どうじに|へんじ|| "I like it," the two replied at the same time. 良平 は 「 優しい 人 たち だ 」 と 思った 。 りょうへい||やさしい|じん||||おもった Ryohei thought, "They are kind people." 五六 町 余り 押し 続けたら 、 線路 は もう 一 度 急 勾配 に なった 。 ごろく|まち|あまり|おし|つづけたら|せんろ|||ひと|たび|きゅう|こうばい|| If I kept pushing it too much, the railroad track became steep again. 其処 に は 両側 の 蜜柑 畑 に 、 黄色い 実 が いくつ も 日 を 受けて いる 。 そこ|||りょうがわ||みかん|はたけ||きいろい|み||いく つ||ひ||うけて| There are also yellow fruits in the tangerine fields on both sides. 「 登り 路 の 方 が 好い 、 何時までも 押さ せて くれる から 」―― 良平 は そんな 事 を 考え ながら 、 全身 で トロッコ を 押す ように した 。 のぼり|じ||かた||この い|いつまでも|おさ||||りょうへい|||こと||かんがえ||ぜんしん||とろっこ||おす|| ``I prefer the uphill road, because it will let me push as long as I want.'' Thinking this, Ryohei pushed the trolley with all his might. 蜜柑 畑 の 間 を 登り つめる と 、 急に 線路 は 下り に なった 。 みかん|はたけ||あいだ||のぼり|||きゅうに|せんろ||くだり|| After climbing up through the mandarin orange fields, the track suddenly descended. 縞 の シャツ を 着て いる 男 は 、 良平 に 「 やい 、 乗れ 」 と 云 った 。 しま||しゃつ||きて||おとこ||りょうへい|||のれ||うん| The man in the striped shirt said to Ryohei, "Come on, get on." 良平 は 直 に 飛び乗った 。 りょうへい||なお||とびのった Ryohei jumped in immediately. トロッコ は 三 人 が 乗り移る と 同時に 、 蜜柑 畑 の におい を 煽り ながら 、 ひた 辷 り に 線路 を 走り出した 。 とろっこ||みっ|じん||のりうつる||どうじに|みかん|はたけ||||あおり|||すべり|||せんろ||はしりだした At the same time as the three people were transferred, the truck started running on the track, whilst scorching the citrus field. 「 押す より も 乗る 方 が ずっと 好い 」―― 良平 は 羽織 に 風 を 孕ま せ ながら 、 当り前の 事 を 考えた 。 おす|||のる|かた|||この い|りょうへい||はおり||かぜ||はらま|||あたりまえの|こと||かんがえた “It ’s much better to ride than to push.” — Ryohei thought about what was natural, while hareing the wind. 「 行き に 押す 所 が 多ければ 、 帰り に 又 乗る 所 が 多い 」―― そう も また 考えたり した 。 いき||おす|しょ||おおければ|かえり||また|のる|しょ||おおい||||かんがえたり| "If there are many places to push to go, there are many places to get on the way home again." 竹藪 の ある 所 へ 来る と 、 トロッコ は 静かに 走る の を 止めた 。 たけやぶ|||しょ||くる||とろっこ||しずかに|はしる|||とどめた When I came to a place with a bamboo basket, the minecart stopped running quietly. 三 人 は 又 前 の ように 、 重い トロッコ を 押し 始めた 。 みっ|じん||また|ぜん|||おもい|とろっこ||おし|はじめた The three of them started pushing the heavy trolley again. 竹藪 は 何時か 雑木林 に なった 。 たけやぶ||いつか|ぞうきばやし|| At some point, the bamboo grove became a thicket. 爪先 上 り の 所 所 に は 、 赤錆 の 線路 も 見え ない 程 、 落葉 の たまって いる 場所 も あった 。 つまさき|うえ|||しょ|しょ|||あかさび||せんろ||みえ||ほど|らくよう||||ばしょ|| There was a place where the fallen leaves were accumulated in the place on the tip of the toe so that the red rust line could not be seen. その 路 を やっと 登り 切ったら 、 今度 は 高い 崖 の 向う に 、 広広 と 薄ら寒い 海 が 開けた 。 |じ|||のぼり|きったら|こんど||たかい|がけ||むかい う||ひろびろ||うすらさむい|うみ||あけた When I finally reached the top of the road, I found myself facing a high cliff with a vast, cold sea on the other side. と 同時に 良平 の 頭 に は 、 余り 遠く 来 過ぎた 事 が 、 急に はっきり と 感じ られた 。 |どうじに|りょうへい||あたま|||あまり|とおく|らい|すぎた|こと||きゅうに|||かんじ| At the same time, Ryohei's mind suddenly became clear that he had come too far. 三 人 は 又 トロッコ へ 乗った 。 みっ|じん||また|とろっこ||のった The three of them boarded the trolley again. 車 は 海 を 右 に し ながら 、 雑木 の 枝 の 下 を 走って 行った 。 くるま||うみ||みぎ||||ぞうき||えだ||した||はしって|おこなった しかし 良平 は さっき の ように 、 面白い 気もち に は なれ なかった 。 |りょうへい|||||おもしろい|き もち|||| 「 もう 帰って くれれば 好い 」―― 彼 は そう も 念じて 見た 。 |かえって||この い|かれ||||ねんじて|みた が 、 行く 所 まで 行きつか なければ 、 トロッコ も 彼等 も 帰れ ない 事 は 、 勿論 彼 に も わかり切って いた 。 |いく|しょ||ゆきつか||とろっこ||かれら||かえれ||こと||もちろん|かれ|||わかりきって| その 次に 車 の 止まった の は 、 切崩した 山 を 背負って いる 、 藁 屋根 の 茶店 の 前 だった 。 |つぎに|くるま||とまった|||きりくずした|やま||せおって||わら|やね||ちゃみせ||ぜん| 二 人 の 土 工 は その 店 へ は いる と 、 乳呑児 を おぶった 上さん を 相手 に 、 悠悠と 茶 など を 飲み 始めた 。 ふた|じん||つち|こう|||てん|||||ちち どんじ||お ぶった|のぼさ ん||あいて||ゆうゆうと|ちゃ|||のみ|はじめた When the two earthworkers went to the store, they started drinking Yuu and tea, etc., against the boss who had a baby. 良平 は 独り いらいら し ながら 、 トロッコ の まわり を まわって 見た 。 りょうへい||ひとり||||とろっこ|||||みた トロッコ に は 頑丈な 車台 の 板 に 、 跳ねかえった 泥 が 乾いて いた 。 とろっこ|||がんじょうな|くるま だい||いた||はねかえった|どろ||かわいて| 暫く の 後 茶店 を 出て 来 しな に 、 巻 煙草 を 耳 に 挟んだ 男 は 、( その 時 は もう 挟んで い なかった が ) トロッコ の 側 に いる 良平 に 新聞 紙 に 包んだ 駄菓子 を くれた 。 しばらく||あと|ちゃみせ||でて|らい|||かん|たばこ||みみ||はさんだ|おとこ|||じ|||はさんで||||とろっこ||がわ|||りょうへい||しんぶん|かみ||つつんだ|だがし|| 良平 は 冷淡に 「有難う」 と 云った 。 りょうへい||れいたんに|ありがたう||うん った が 、 直 に 冷淡に して は 、 相手 に すまない と 思い 直した 。 |なお||れいたんに|||あいて||||おもい|なおした However, I was reminded that I'm sorry for the other party if I was apathetic. 彼 は その 冷淡 さ を 取り繕う ように 、 包み 菓子 の 一 つ を 口 へ 入れた 。 かれ|||れいたん|||とりつくろう||つつみ|かし||ひと|||くち||いれた To compensate for his indifference, he put one of the wrapped pastries in his mouth. 菓子 に は 新聞 紙 に あった らしい 、 石油 の に おい が しみついて いた 。 かし|||しんぶん|かみ||||せきゆ|||||| The pastry had a petroleum stain on it, apparently from the newspaper. 三 人 は トロッコ を 押し ながら 緩い 傾斜 を 登って 行った 。 みっ|じん||とろっこ||おし||ゆるい|けいしゃ||のぼって|おこなった The three of them pushed the trolley up the gentle slope. 良平 は 車 に 手 を かけて いて も 、 心 は 外 の 事 を 考えて いた 。 りょうへい||くるま||て|||||こころ||がい||こと||かんがえて| その 坂 を 向う へ 下り 切る と 、 又 同じ ような 茶店 が あった 。 |さか||むかい う||くだり|きる||また|おなじ||ちゃみせ|| As we descended the hill in the opposite direction, we found another similar tea store. 土 工 たち が その 中 へ は いった 後 、 良平 は トロッコ に 腰 を かけ ながら 、 帰る 事 ばかり 気 に して いた 。 つち|こう||||なか||||あと|りょうへい||とろっこ||こし||||かえる|こと||き||| After the construction workers entered the trolley, Ryohei sat on the trolley and thought about going home. 茶 店 の 前 に は 花 の さいた 梅 に 、 西日 の 光 が 消え かかって いる 。 ちゃ|てん||ぜん|||か|||うめ||にしび||ひかり||きえ|| 「 もう 日 が 暮れる 」―― 彼 は そう 考える と 、 ぼんやり 腰かけて も い られ なかった 。 |ひ||くれる|かれ|||かんがえる|||こしかけて|||| "It's already dark."-He couldn't even sit vaguely, thinking so. トロッコ の 車輪 を 蹴って 見たり 、 一 人 で は 動か ない の を 承知 し ながら うん うん それ を 押して 見たり 、―― そんな 事 に 気もち を 紛ら せて いた 。 とろっこ||しゃりん||けって|みたり|ひと|じん|||うごか||||しょうち|||||||おして|みたり||こと||き もち||まぎら|| Kicking the wheel of the truck, and knowing that it couldn't move alone, I pushed it by yeah, and I was confused about it. ところが 土 工 たち は 出て 来る と 、 車 の 上 の 枕木 に 手 を かけ ながら 、 無造作に 彼 に こう 云 った 。 |つち|こう|||でて|くる||くるま||うえ||まくらぎ||て||||むぞうさに|かれ|||うん| But when the earthmovers came out, they put their hands on the sleepers on top of the car and told him curtly, "We're going to have to go back to the car. 「 われ は もう 帰 ん な 。 |||かえ|| "I am not going back. おれたち は 今日 は 向う 泊り だ から 」 「 あんまり 帰り が 遅く なる と われ の 家 でも 心配 する ず ら 」   良平 は 一 瞬間 呆気 に とられた 。 ||きょう||むかい う|とまり||||かえり||おそく|||||いえ||しんぱい||||りょうへい||ひと|しゅんかん|ぼけ き||とら れた We're staying over there today. "" I'm worried about my house being too late to return. "Ryohei was taken a moment by dismay. もう かれこれ 暗く なる 事 、 去年 の 暮 母 と 岩村 まで 来た が 、 今日 の 途 は その 三四 倍 ある 事 、 それ を 今 から たった 一 人 、 歩いて 帰ら なければ なら ない 事 、―― そう 云 う 事 が 一 時 に わかった のである 。 ||くらく||こと|きょねん||くら|はは||いわむら||きた||きょう||と|||さんし|ばい||こと|||いま|||ひと|じん|あるいて|かえら||||こと||うん||こと||ひと|じ||| I knew at once that it was going to be dark soon, that the journey to Iwamura with my mother at the end of last year was thirty-four times longer, and that I would have to walk all the way home by myself.