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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 31. 十五夜 の お 月 様 - 村山 籌子

31. 十五夜 の お 月 様 - 村山 籌子

十五夜 の お 月 様 - 村山 籌子

大きい 森 の むか ふ から 、 ブルブル ブル と 小さい 音 が 響いて 来ました 。 木 の 上 で ねて ゐた 真 黒 な 小人 は それ を 聞く と 、 とびおきて 、 青い 着物 を きて 、 赤い 帽子 を かぶ つて 音 の する 方 へ 飛んで ゆきました 。 ・・

「 お 月 様 、 今晩 は 。 ず ゐ 分 早く おでかけ です ね 。」 と 、 小人 が 申しました 。 ブルブル と 音 を たてて ゐた の は 赤い お 月 様 でした 。 ・・

「 たくさんの 子供 たち が 、 あなた の いら つ し やる の を どんなに 待つ て ゐる で せ う 。 さあ でかけ ませ う 。」 と 小人 は 言 つて 、 お 月 様 と 二 人 で 森 を 出て 、 野原 を と ほり すぎて 、 街 に まゐりました 。 ・・

「 お 月 様 。 街 の 灯 は どうして あんなに 赤くて きれいな んで せ うね 。 家 に は みんな 窓 が ついて 、 きれいだ なあ 。 おや 、 あの 家 の 窓 から かわいゝ 女の子 が 、 お 月 様 と 僕 と を 見て 笑 つて ゐます よ 。」 と 小人 が 指さしました 。 ・・

「 ほんとに 、 私 たち の 方 を 見て 笑 つて ゐる や う です ね 。 おや 、 あれ は 私 の 子供 です よ 。」 とお つ しや いました 。 ・・

「 え ? ほんとです か 。 お 月 様 。」 と 、 小人 は び つくり しました 。 ・・

「 ほんとです と も 。 うそ と 思 ふ なら あす こ へ 行 つて きいて ごらん なさい 。」 と 、 お 月 様 は お 笑 ひな さ いました 。 ・・

そこ で 小人 は 大いそぎで 、 一 とび に 女の子 の ゐる 窓 に とびついて 、・・

「 今晩 は 。 かわいい お嬢さん 。 あなた は お 月 様 の 子供 だ さ う です が 、 ほんとです か 。」 と ききます と 、 女の子 は 、・・

「 え ゝ 、 さ う です 。 私 は お 月 様 の 子供 です 。」 と 笑 ひました 。 ・・

「 ほんとに 、 あなた の お 顔 は お 月 様 の や う に きれいです ね 。 あなた は この 家 で 毎日 なに を して い ら つ し やる のです か 。 この 街 は ほんとに 美しい 街 です ね 。」 と 、 小人 が 聞きました 。 ・・

「 この お家 は 私 の 家 で 赤 いきれ や 、 お もち やや 、 いろんな おもしろい お 話 を かいた 本 を うつて ゐる のです 。 その なか に は 、 あなた の こと も 、 お 月 様 の こと も かいて あります よ 。 私 は 毎日 、 そんな ご 本 を よんだり 、 お 人形 を つく つた りして あそんで ゐま す 。 私 は 、 小さい 時 に 、 お 月 様 の ところ から 、 この 家 へ もら はれて 来た のです よ 。 これ を お 月 様 に さしあげて 下さい 。」 と 、 女の子 は 、 自分 の 頭 から 赤い リボン を と つて 、 小人 に わたしました 。 小人 は それ を もら つて 、 また お 月 様 の あと を お つ かけました 。 お 月 様 は 女の子 に もら つた リボン を 、 頭 に お かけ に なりました 。 お 月 様 は まるで かわい ゝ かわい ゝ 女の子 に 見えました 。 ・・

「 まあ 。 お 月 様 。 あなた が その リボン を お かけ に なる と あの 女の子 に そつ くり です よ 。」 と 、 小人 が 大よろこびで 言 ひました 。 お 月 様 もたいへん うれし さ うに 、 その 晩 中 、 ニコニコ と 笑 つて いら つ しや いました 。 ・・

その 晩 は 丁度 十五夜 でした 。

31. 十五夜 の お 月 様 - 村山 籌子 じゅうごや|||つき|さま|むらやま|ちゅうこ 31. the Moon on the Fifteenth Night - Murayama Preparator 31. la luna en la noche del decimoquinto día del mes - Preparador Murayama 31. a lua na noite do décimo quinto dia do mês - Preparador Murayama 31. Луна в ночь на пятнадцатый день месяца - Препаратор Мураяма 31. 第十五夜的月亮 - 村山惠子

十五夜 の お 月 様 - 村山 籌子 じゅうごや|||つき|さま|むらやま|ちゅうこ The Moon of the Fifteen Nights-Kazuko Murayama

大きい 森 の むか ふ から 、 ブルブル ブル と 小さい 音 が 響いて 来ました 。 おおきい|しげる|||||ぶるぶる|ぶる||ちいさい|おと||ひびいて|き ました 木 の 上 で ねて ゐた 真 黒 な 小人 は それ を 聞く と 、 とびおきて 、 青い 着物 を きて 、 赤い 帽子 を かぶ つて 音 の する 方 へ 飛んで ゆきました 。 き||うえ||||まこと|くろ||こびと||||きく|||あおい|きもの|||あかい|ぼうし||||おと|||かた||とんで|ゆき ました When the black dwarf, who was sleeping on the tree, heard it, he jumped, put on a blue kimono, put on a red hat, and flew toward the sound. ・・

「 お 月 様 、 今晩 は 。 |つき|さま|こんばん| "Good evening, Mr. Moon. ず ゐ 分 早く おでかけ です ね 。」 ||ぶん|はやく||| You're going out a minute earlier, aren't you? " と 、 小人 が 申しました 。 |こびと||もうし ました ブルブル と 音 を たてて ゐた の は 赤い お 月 様 でした 。 ぶるぶる||おと||||||あかい||つき|さま| It was the red moon that made a buzzing sound. ・・

「 たくさんの 子供 たち が 、 あなた の いら つ し やる の を どんなに 待つ て ゐる で せ う 。 |こども||||||||||||まつ||||| "How many children can wait for your frustration." さあ でかけ ませ う 。」 Come on, let's go out. と 小人 は 言 つて 、 お 月 様 と 二 人 で 森 を 出て 、 野原 を と ほり すぎて 、 街 に まゐりました 。 |こびと||げん|||つき|さま||ふた|じん||しげる||でて|のはら|||||がい||ま ゐりました The dwarf and the moon left the forest and traveled through the fields to the city. ・・

「 お 月 様 。 |つき|さま 街 の 灯 は どうして あんなに 赤くて きれいな んで せ うね 。 がい||とう||||あかくて|||| Why are the lights in the city so red and beautiful? 家 に は みんな 窓 が ついて 、 きれいだ なあ 。 いえ||||まど|||| Everybody in the house has windows and it's beautiful. おや 、 あの 家 の 窓 から かわいゝ 女の子 が 、 お 月 様 と 僕 と を 見て 笑 つて ゐます よ 。」 ||いえ||まど||かわい ゝ|おんなのこ|||つき|さま||ぼく|||みて|わら||ゐま す| と 小人 が 指さしました 。 |こびと||ゆびさし ました Pointed to the dwarf. ・・

「 ほんとに 、 私 たち の 方 を 見て 笑 つて ゐる や う です ね 。 |わたくし|||かた||みて|わら|||||| おや 、 あれ は 私 の 子供 です よ 。」 |||わたくし||こども|| Oh, that's my child. とお つ しや いました 。 |||い ました It was easy to say. ・・

「 え ? ほんとです か 。 Really? お 月 様 。」 |つき|さま Moon." と 、 小人 は び つくり しました 。 |こびと||||し ました The dwarf was astonished. ・・

「 ほんとです と も 。 うそ と 思 ふ なら あす こ へ 行 つて きいて ごらん なさい 。」 ||おも||||||ぎょう|||| If you lie and think, go to Asuko and see. " と 、 お 月 様 は お 笑 ひな さ いました 。 ||つき|さま|||わら|||い ました The moon laughed. ・・

そこ で 小人 は 大いそぎで 、 一 とび に 女の子 の ゐる 窓 に とびついて 、・・ ||こびと||おおいそぎで|ひと|||おんなのこ|||まど|| Then the dwarf rushed to the window where the girl was sitting and...

「 今晩 は 。 こんばん| Good evening. かわいい お嬢さん 。 |おじょうさん Cute lady. あなた は お 月 様 の 子供 だ さ う です が 、 ほんとです か 。」 |||つき|さま||こども||||||| Is it true that you are the child of the moon? と ききます と 、 女の子 は 、・・ |きき ます||おんなのこ|

「 え ゝ 、 さ う です 。 Yes, that's right. 私 は お 月 様 の 子供 です 。」 わたくし|||つき|さま||こども| と 笑 ひました 。 |わら|ひ ました He laughed. ・・

「 ほんとに 、 あなた の お 顔 は お 月 様 の や う に きれいです ね 。 ||||かお|||つき|さま|||||| Really, your face is as beautiful as the moon. あなた は この 家 で 毎日 なに を して い ら つ し やる のです か 。 |||いえ||まいにち|||||||||| What do you do every day in this house? この 街 は ほんとに 美しい 街 です ね 。」 |がい|||うつくしい|がい|| This city is really beautiful. と 、 小人 が 聞きました 。 |こびと||きき ました The dwarf asked. ・・

「 この お家 は 私 の 家 で 赤 いきれ や 、 お もち やや 、 いろんな おもしろい お 話 を かいた 本 を うつて ゐる のです 。 |おいえ||わたくし||いえ||あか|||||||||はなし|||ほん|||| This is my house, where I keep books about red beans, mochi, and all kinds of interesting stories. その なか に は 、 あなた の こと も 、 お 月 様 の こと も かいて あります よ 。 |||||||||つき|さま|||||あり ます| In it, there are words about you and the moon. 私 は 毎日 、 そんな ご 本 を よんだり 、 お 人形 を つく つた りして あそんで ゐま す 。 わたくし||まいにち|||ほん||||にんぎょう||||||| I play with such books and make dolls every day. 私 は 、 小さい 時 に 、 お 月 様 の ところ から 、 この 家 へ もら はれて 来た のです よ 。 わたくし||ちいさい|じ|||つき|さま|||||いえ||||きた|| I was brought to this house by the moon when I was a small child. これ を お 月 様 に さしあげて 下さい 。」 |||つき|さま|||ください Please give this to the moon. と 、 女の子 は 、 自分 の 頭 から 赤い リボン を と つて 、 小人 に わたしました 。 |おんなのこ||じぶん||あたま||あかい|りぼん||||こびと||わたし ました The girl took a red ribbon from her head and gave it to the dwarf. 小人 は それ を もら つて 、 また お 月 様 の あと を お つ かけました 。 こびと||||||||つき|さま||||||かけ ました The dwarf took it and followed the moon again. お 月 様 は 女の子 に もら つた リボン を 、 頭 に お かけ に なりました 。 |つき|さま||おんなのこ||||りぼん||あたま|||||なり ました お 月 様 は まるで かわい ゝ かわい ゝ 女の子 に 見えました 。 |つき|さま|||||||おんなのこ||みえ ました The moon looked like a cute, cute, cute girl. ・・

「 まあ 。 お 月 様 。 |つき|さま あなた が その リボン を お かけ に なる と あの 女の子 に そつ くり です よ 。」 |||りぼん||||||||おんなのこ||||| When you put on the ribbon, it looks just like that girl. " と 、 小人 が 大よろこびで 言 ひました 。 |こびと||おおよろこびで|げん|ひ ました お 月 様 もたいへん うれし さ うに 、 その 晩 中 、 ニコニコ と 笑 つて いら つ しや いました 。 |つき|さま|も たいへん|||||ばん|なか|にこにこ||わら|||||い ました ・・

その 晩 は 丁度 十五夜 でした 。 |ばん||ちょうど|じゅうごや|