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青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る, 青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る 5a

青春 ブタ野郎 は ホワイトクリスマス の 夢 を 見る 5a

順路 に 従って 水族館 の 中 に 進んでいく と 、角 を 曲がった ところ で 目の前 の 景色 は 突然 別世界 に 変わった 。

二階 に 繋がる 長い エントランス 階段 。 その 床 に は 、 ウミガメ が 優雅に 泳ぐ 幻想 的 な 映像 が 映し出されて いて 、 来場者 たち から 歓声 を 浴 ぴて いた 。

海 の 中 を 歩いている ような 不思議な 気分 に なる 。

その 階段 を 上がって 少し 進んだ ところ から 、海 の 生き物 たち が 姿 を 見せて くれる 。 シラス の 生育 過程 の 展示 で はじまり 、それ に 気 を 取られて いる と 、頭 の 上 を 大きな エイ が 横切って いく 。 通路 の 天井 が エイ の 水槽 に なって いる のだ 。 下 から だ と どこ か 笑った 顔 に 見える 。 多く の カップル が そんな エイ たち に スマホ の カメラ を 向けて いた 。

スロープ に なった 通路 を さらに 下る 。 一階 まで 下りる と 、視界 は 一気に 開けて 大 水槽 の 前 に 出た 。 相模湾 に 生息 する 魚 たち を 集めた 水槽 。 その 中央 で は 、数 千匹 の マイワシ の 群れ が 息の合った ダンス を 披露していた 。

ここ でも カップル たち は スマホ を 構えて いる 。 シャッター 音 が しない の は 、動画 を 撮って いる のだろう 。 家族 と 遊 ぴ に 来て いた 小さな 男の子 は 、 サメ に 興味 津 々 で 指 を 差して 、「 サメーサメ 来た ー 」 と 声 を 出して 喜んで いる 。

大 水槽 から 奥 に 進む と 、 TV など で よく 見かける 深海 生物 の コーナー や 、カラフルな 魚たち が 泳ぐ 熱帯 の エリア が 待ち構えていた 。

どこ も 今日 は 盛況 で 、カップル たち が 楽しそうに 魚 を 見て 、スマホ で 写真 を 撮っている 。 そうした 中 で 、最も 人気 だった の は クラゲ の エリア だ 。

空間 全体 が 青 や 紫 の 光 で ライト アップ さ れ 、 その 光 を 受けた クラゲ たち は 天然 の イルミネーョン と 化して いる 。 ゆらゆら と 不規則に 動く 姿 は 、街中 を 彩る 規則正しい 電飾 と は 違った 不思議な 魅力 が あった 。

実際 に 目 に する まで は 、「クラゲ って クリスマス に 見て 楽しい の か な ? 」と 疑間 に 思っていた が 、むしろ 、クリスマス に こそ 見 に 来るべき 生き物 という 気 が する 。

クラゲ に とって は クリスマス など 知った こと で はない だろう が 、こうして ライト アップ された 姿 は クリスマス らしさ で 溢れて いた 。

江ノ電 の 電車 内 で 見た 水族館 の 広告 が 、全力 で クラゲ を プッシュ していた 理由 が 今 なら わかる 。

クラゲ の 写真 を 撮った 麻衣 も 満足げだ 。

その あと は 、再び 二階 に 上がって よちよち 歩く ペンギン を 見て 、プール を 左右 に 行ったり 来たり する アザラシ に 会い に 行った 。

コツメカワウソ は 、二匹 が ハンモック の 中 で ぐるぐる と 追いかけっこ を していて 、もう 二匹 は ケージ の 中 を ぐるぐる と 追いかけっこ していた 。 周囲 の 客 から 「かわいい 」と 何度 も 声 が 上がる 。

どんどん 人 も 増えて きた ので 、咲太 と 麻衣 は 後 から 来た カップル に 場所 を 空けて 、飼育 エリア に 向かった 。

待って いた の は ぼーっと した 顔 の カピバラ だ 。

「ちょっと 咲 太 に 似てる わ ね 」

「そう です か ?

「でも 、この 子 の 方 が まだ 生き生き した 目 を してる わ ね 」

「……」

もさ も さ と 草 を 食べる カピバラ は 、最後 まで 興味 な さそうに 咲太 を 見て いた 。 咲 太 も 同じ ような 目 に なって カピバラ と 向き合って いた 。

その カピバラ を 最後 に 、水族館 を あとにする 。

誰 も が デート に 夢中だった ため 、『桜島 麻衣 』だ と 気づかれ る こと は なかった 。 だから なの か 、水族館 を 出る なり 、

「ほんと 、どうして 咲太 だけ すぐに 気づいた の かしら 」

と 、思い出した ように 麻衣 が 不満 そうに もらす 。

まさか 、あの 「桜島 麻衣 」が 堂々と デート している と は 、誰 も 思って いない から だろう 。 この 中 に 、「桜島 麻衣 」が いる と 知っていたら 、みんな 気づいた と 思う 。

「麻衣 さん 、今 何 時 ?

「あと 一 分 で 七 時 半 」

スマホ で 時刻 を 確認 した 麻衣 が 教えて くれた 。

「この あと 、どう しましょう か ?

家 に 帰って 麻衣 と 食事 を する 予定 で は ある けれど 、咲太 と しては もう 少し 寄り道 を したい 気分 だ 。

とりあえず 、傘 を 差して 駅 の 方 へ と 歩き出す 。 麻衣 は 当たり前 の ように 、咲太 の 傘 に 入って 。

134 号 線 沿い の 歩道 に は 、水族館 を 出た カップル の 列 が まばらに できている 。 その 流れ は 、すぐに 見えて きた 信号 の ところ で 、二手 に 分かれている 。

一方 が 近路 の 反対側 に 渡って 駅 に 向かう 人たち 。

もう 一方 が 真っ直ぐ 進んで 江の島 まで 足 を 延ばそう と している 人たち だ 。

冬 は 江の島 も 綺麗な イルミネーション に 彩られている 。 その 様子 は 、水族館 から の 帰り道 を 歩く 咲太 と 麻衣 に も よく 見えて いた 。

灯台 の よう に 立った シーキャンドル は 、青 から 紫 に 変化 して いく 。 雪景色 の 中 で 、それ は とても 神秘的 だ 。

「僕たち も 江の島 行きます ?

「料理 する 時間 が なくなる から 、それ は 来年 ね 」

「じゃあ 、初詣 の 帰り が いい なあ 」

二月 の 上旬 まで イルミネーション は やっている はず 。

「来年 の クリスマス って 意味 よ 」

当然 、わかって いて 言った のだ 。 そんな こと は 麻衣 も 百 も 承知 。 だからこそ 、呆れた ように 笑って いる 。 いつも の 他 愛 ない やり取り を 楽しんで いる 。

信号 の 前 まで 来る と 、丁度 青 に 変わった 。

駅 に 向かおう と 信号 を 渡ろう と する 。 だけど 、

「咲太 、こっち 」

と 、麻衣 に 腕 を 引かれて 、咲太 は 134 号 線沿い を 直進 する こと に なった 。 この 方向 に ある の は 江の島 だ 。

「江の島 は 来年 って 言ってました よね ?

麻衣 が 出演 した 映画 の ポスター が 貼られた 藤沢 市 観光 センター の 前 を 通り ながら 、咲太 は 率直な 疑問 を ぶつけた 。

「咲太 の ため に 、少し だけ 遠回り を して あげる の よ 。 江 ノ 電 で 帰れば いい でしょ 」

ここ から 一番 近い の は 小田急 江ノ島 線 の 片瀬 江ノ島 駅 だけど 、ちょっと 歩けば 江ノ電 の 江ノ島 駅 が ある 。 麻衣 が 言う ように ほんの 少し の 遠回り 。 だけど 、その分 、麻衣 と 一緒の 傘 の 下 に いられる のだから 大歓迎 だ 。

海 に 流れ込む 境川 に かかる 橋 を ふたり で 渡って いく 。 風 が 冷たくて 、麻衣 が さらに 身 を 寄せて きた 。 しれっと 咲 太 を 壁 に して いる 。

橋 を 半分 ほど 渡った ところ で 、イルミネーション と は 違う 光 が 見えた 。 赤く 回転 して いる の は パトカー の ランプ だ 。 止まって いる の は 橋 を 渡り切った 少し 先 。 道路 の 反対 側 。

「何 か あった の かしら ?

「さあ ?

近づいて いく と 周囲 に 制服 を 着た 警察官 が 四 、五人 見えた 。 場所 は 江の島 に かかる 弁天 橋 手前 の 交差点 。 パトカー の 前 に は 、フロント 部分 が 大きく 凹んだ ミニバン を 積んだ レッカー車 が ある 。

「事故 みたい ね 」

「です ね 」

警察官 の ひとり が 、二十代 後半 くらい の 男性 から 何か 話 を 聞いていた 。 男性 は 恐縮 した 様子 で 何度 も 警察官 に 頭 を 下げている 。 恐らく 、その 男性 が レッカー車 に 積まれた 車 の 持ち主 。 警察官 に 事故 の 状況 を 説明 している ようだ 。 けが人 など は 出 なかった の か 、その やり取り に は どこ か 余裕 が ある 。 そんな こと を 思って いる と 、

「単独 事故 だって 」

と 、麻衣 が 教えて くれた 。 その 手 に は スマホ が ある 。

「事故 が あった の は 、六 時 頃 みたい 。 ほら 」

麻衣 が 見せて きた スマホ の 画面 に は 、雪 で スリップ して 道路 標識 の ポール に 突っ込んだ ミニバン の 写真 が あった 。 ちょうど 居合わせた 通行人 の SNS の 画像 だ 。 巻き込まれた 人 は いない と そこ に は 書かれて いた 。

それ を 見た 瞬間 、咲太 は 妙な 感覚 に 囚われた 。 何 か 変だ と 思った とき に は 、体 の 奥底 が 激しく 疼いた 。 感情 が 一瞬 で ざわついて 、心 の 水面 が 大きく 波 を 立てる 。 気持ち に 落ち着き が なくなって 、胸 が 苦しく なって 、心臓 が どくん と 大きく 脈打った 。

直後 に 押し寄せて きた の は 、何 か 強烈な 痛み を 含んだ 喪失感 。 それ が 通り過ぎる と 、今度 は 泣き叫びたい ほど の 悲しみ が 咲太 の 体 を 支配した 。 奥歯 を 嚙み 締めて それ らの 感情 を 堪えて いる と 、誰 かの 声 が 聞こえた 気 が した 。

──咲 太 君 ──

そう 呼ばれた 気 が した 。

けれど 、それ が 誰 か は わからない 。 頭 の 中 に 響いた 声 も 、耳 に は 残ら なかった 。 すぐに 霞 ん で 消えて いく 。

「咲 大 ?

顔 を 上げる と 、ぼやけた 視界 の 何 こう に 麻衣 が 目の前 に いた 。 心配 そうに 咲 太 、を 見て いる 。 麻衣 が いる 。 ここ に 麻衣 が いる 。 それ が 今さら の ように ただ うれしくて 、今度 は 目頭 が 熱く なった 。 我慢 しよう と 思った けれど 、間に合わない 。

わけ も わからない まま 、咲太 の 目 から 涙 が こぼれて いく 。

「もう 、どうした の よ 」

やわらかくて やさしい 声 。 麻衣 を すぐ 側 に 感じて いる と 、咲太 は 自分 の 流す 涙 が あたたかい こと に 気づいた 。

すると 、突然 訪れた 感情 の 洪水 は 急速に 収まって いく 。 痛み も 、悲しみ も ……波 の ように 引いて 、戻って くる こと は なかった 。

残った の は 、涙 と 同じ あたたかい 気持ち 。 大切な 人 を 大事に したい 想い だった 。

「麻衣 さん 」

咲 太 の 手 から 傘 が 落ちる 。 それ が 逆さま に 地面 に 落下 する 前 に 、咲太 は もう 一度 「麻衣 さん 」と 呼び ながら 麻衣 を 抱き締めて いた 。

今 は 、名前 を 呼べる こと が うれしい 。

腕 の 中 に 麻衣 を 感じられる こと が うれしい 。

そんな 当たり前の 事実 に 、心 が 満たされて いく 。

「ちょっと 、咲太 、ダメ だって 」

「……」

「こういう こと は 家 に 帰って からって 言った でしょ 」

咲 太 を 咎める 麻衣 の 声 は 穏やかだ 。 一応 、抵抗 する ように 咲太 の 胸 に 両手 を ついて は いる けれど 、殆ど 力 は 入って いない 。 急に 泣き出した 咲 太 を 心配 して くれて いる 。

何 か 言いたい けれど 、言葉 が 出て こない 。

「……」

「……」

短い 沈黙 の あと で 、

「咲 太 ?

と 、名前 を 呼ばれた 。 いつも 通り 呼ばれた だけ 。 だけど 、そこ に は 「大丈夫 ? 」と 作 太 を 気遣う 麻衣 の やさしさ が あった 。

「……大丈夫 です 」

「 本当に ?

「こうして いれば 、大丈夫 です 」

悲しい わけで は ない 。 苦しい わけで も ない 。 涙 は もう 止まって いる し 、声 も 震えて は い なかった 。 ぽかぽか と 陽だまり の ような あたたかさ が 体 の 中心 に ある 。 その あたたか さ で 、麻衣 を 包んで い たかった 。

「もう 、しょうがない わ ね 。 今日 は 特別 よ 」

その 声 に 安心 して 、咲太 は 少し だけ 腕 に 力 を 込める 。

麻衣 は される が まま に 、咲太 に 身 を 委ねて くれた 。

しばらく する と 、麻衣 の 鼓動 が 静かに 伝わって くる 。 たぶん 、麻衣 に も 咲太 の 心臓 の 音 が 届いた のだろう 。 その とき だけ 、くすぐった そうな 吐息 を もらして いた 。

ただ 、気 が 付く と 、弁天 橋 手前 の 交差点 に 止まっていた パトカー は いなくなっていた 。 事故 を 起こした ミニバン を 積んだ レッカー車 も い なく なって いる 。

「咲 太 、傘 拾わない と 。 頭 の 上 、雪 積もってる 」

「平気 です 」

「風邪 引いて も 知らない から 」」

「麻衣 さん に 看病 して もらう の 楽しみ だ なぁ 」

「花 楓 ちゃん の ご飯 だけ 作り に 行って あげる 」

「みかん の 缶詰 を あ ~ん して ほしい な 」

「そんな 冗談 が 言える なら 、もう 大丈夫 ね 」

「まだ 無理 です 」

その 言葉 の 途中 で 、腰 の あたり に ぶるぶる と 振動 を 感じた 。 一定 の リズム で 震えて いる の は 、麻衣 の ダウン コート の ポケット の 中 に ある スマホ だ 。 恐らく 、電話 の 着信 。 なかなか 収まらない 。

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