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悪人 (Villain) (2nd book), 悪人 下 (4) – Текст для чтения

悪人 (Villain) (2nd book), 悪人 下 (4)

Продвинутый 2 Урок японского для практики чтения

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悪人 下 (4)

夕方 に なって 、数 組 の 客 が 同時に 訪れた 。 うち 馬 込 光代 が 受け持った の は 、二十 代 半 ば の 男性 二 人 組 で 、スーツ を 選び ながら の まるで 漫才 の ような 掛け合い を 聞いて いる 限り で は 、背 の 低い ほう が 最近 やっと 再 就職 の 面接 に 受かった ようで 、友人 を 引き連れて 来店 した らしかった 。 「これ まで ずっと 作業 服 や つけん 、スーツ って いまいち どれ を 買えば よか とか 分から ん けん な 」「しかし 、普通 、スーツ とか 買う とき は 、女房 連れて こんや ? 」「馬鹿 言え 、あれ と 一緒に 来たら 、シャシ から ネクタイ まで 、一式 最 安値 商品 で 揃えられる 」「なんや 、高級 スーツ 買う つもり や ?

」第 四 章 彼 は 誰 に 出会った か ? 「 そう じゃ なか けど 、 中級 さ 、 中級 」 なんだ かんだ と 言い ながら 、 ラック に 吊られた スーツ を 片っ端から 手 に 取って 、 二人 仲良く 胸 に 当てて いく 。 光代 は 「まだ 若く 見える が 、もう この 年代 でも 結婚している んだ なあ 」と 思いながら 、つかず 離れず 、気長に 声をかけられる の を 待っていた 。 試着 室 の 前 に は メジャー を 首 に かけた 売り場 主任 の 水谷 和子 が 立って いた 。

さっき 休憩 を 終えて フロア へ 戻って きた 水谷 に 、光代 は 今夜 少し 時間 が ない か と 尋ねた 。 もし あれば 軽く 飲み に 行か ない か と 。 珍しい 誘い に 、一瞬 、水谷 は 首 を 捻った が 、「大丈夫 よ 。 うち の 旦那 も ちょっと 遅う かいてん ずし なるって 言い よった し 、どこ 行こう か ?

この 前 ビックリ バー の 隣 に 出来た 回転 寿司 で も ょかたい ね 」と 妙に 乗り気に なって くれた 。 じゃあ 、その 回転 寿司 に 行こう と 決まって 、光代 が 持ち場 へ 戻ろう と する と 、水谷 が さっと その 手 を 掴み 、「この 前 の 土 日 、珍しゅう 休み 取ったり する けん 、なんか ある と やろう なぁ と は 思う とった けど ……。 よか 話 ね ? 」と ニャニヤ する 。

光代 は 、「いや 、大した こと じゃ なか です よ 。 ただ 、久しぶりに 水谷 さん と ごはん でもって 思う て 」と その 場 を 逃れた が 、顔 が ほころぶ の を 止められ なかった 。 土曜 の 昼 に 会った 清水 祐一 と 、結局 丸一 日 以上 一緒に 過ごした 。 うなぎ を 食べて 、灯台 へ 行く つもりで ホテル を 出た のに 、うなぎ を 食べて 店 を 出る と 、とつぜん の どしゃぶり に なり 、結局 、ドライブ は 諦めて 、また 別 の ホテル に 入った 。

日曜 の 晩 、祐一 に アパート まで 送って もらい 、車 の 中 で 長い キス を して 、別れた の が おととい 、翌月 曜 の 夜 に は 電話 で 三 時間 も 話 を した 。 途中 、妹 の 珠代 が 旅行 から 戻った ので 、最後 の 三十 分 は 寒風 吹きすさぶ アパート の 階段 に 腰かけて 。 あれ から まだ 丸一 日 も 経って いない 。 なのに もう 祐一 の 声 が 聞きたくて 仕方 が ない 。

気 が つく と 、漫才 コンビ の ような 二 人 組 は 、壁 際 の ラック に かかった スーツ を 手 に 取って いた 。 壁 際 の ほう は セット 料金 で 三千 円 高く なって いる 上 に 、替え の ズボン が つい てい ない 。 威圧 感 を 与え ない 程度 に 近寄る と 、男 たち の 会話 が 聞こえて くる 。 「そう 言えば 、この 前 、『釣り バカ 」観 に 行った けん な 」「一 人 で ?

」「まさか 、息子 と 二 人 で 」「お前 、息子 連れて 、あげ ん 映画 に 行く と や ? 」「子供 、けつ こう 喜ぶ と ぞ 」「マジ で ? うち の ガキ なんか 、まん が 祭り 以外 全然 興味 なか けど な 」二十 代 半ば 、見かけ は 大学 の 友人 同士 と 言って も 通用 する 。 そんな 二 人 が スーツ を 選 ぴ ながら 互い の 子供 の 話 なんか を して いる 。

光代 は そんな 二 人 の 背中 を 微笑ましく 見つめていた 。 その 視線 に 気づいた の か 、「すいません 。 これ 、ちょっと 試着しても よか です か ? 」と 背 の 低い ほう の 子 が 振り返る 。

すると 、すぐに 隣 の 子 が その スーツ を 奪い 、「なん や 、結局 、これ に する と や ? なんか ホスト っぽう ない や ? 」と 茶化す 。 言わ れた ほう も 根 が 素直 な よう で 、「そう や ?

」と せっかく 決めた スーツ を 眺めて 首 を 傾げる 。 「よかったら 、試着 して みたら どう です か ? 」と 光代 は 笑顔 を 向けた 。 「手 に したら 、ちょっと 光る 感じ も します けど 、中 に 白い シャシ とか 合わせたら 、落ち着いた 感じ に なります よ 」光代 の 言葉 に 、男 は 自信 を 取り戻した ようで 素直に 試着 室 へ ついてきた 。

残った ほう は いかにも 買う 気 が ない 客 らしく 、目 に ついた スーツ の 値札 を 次 から 次 に 捲って 回る 。 サイズ は ぴったり だった 。 様子 を 見る ため に 光代 が 渡した 白い シャシ も 、男 の 童顔 に 妙に 合って いる 。 「いかがですか ?

」鏡 の 前 で 身 を 振り ながら 確認 する 男 に 声 を かける と 、いつの間にか やってきていた 男 の 連れ が 、「あら 、ほんと 、そげん 派手 じゃ なか な 〜」と 背後 から 声 を かけてくる 。 「よか ご たる な ? 」狭い 試着 室 で 、男 が 鏡 に 映った 光代 と 友人 に 頷いて みせる 。 光代 は 使い込んだ メジャー を ポケット から 出して 、ズボン の 裾 上げ に 取りかかった 。

続く とき に は 続く もの で 、その 後 も 客 は ひっきりなしに 来店 し 、来店 する ばかり か 、次々 に スーツ が 売れて いった 。 閉店 時間 を 回り 、フロア の 照明 を 半分 落とした レジ の テーブル で 、光代 が 補整 に 出す 商品 伝票 を 整理している と 、「たまに 飲み に 行こうって いう H に 限って これ や ねえ 」と 言いながら 、水谷 が 同じ ように 伝票 の 束 を 掴んで やってくる 。 「ほんとです ね 」光代 は 相づち を 打ち ながら 時計 を 確認した 。 八 時 四十五 分 。

普段 なら すでに 着替えて 、自転車 を 漕いで いる 時間 だ 。 「まだ かかり そう ? 」すでに 整理 を 終えた らしい 水谷 に 訊かれ 、光代 は 、「十五 分 も あれば 」と 伝票 を 捲って みせた 。 「じゃあ 、更衣室 で 待つ とく けん 」水谷 が そう 言い残して 階段 を 下りて いく 。

半分 照明 が 落とされ た フロア は 薄暗く 、暖房 も 切られて いる ので 、足元 から 底冷えしてくる 。 レジ 台 の 上 に 置かれた 携帯 の 着信 音 が 聞こえた の は その とき だった 。 珠代 か と 思って 手 に 取る と 、そこ に 祐一 の 名前 が ある 。 光代 は 伝票 の 間 に 親指 を 入れた まま 、もう 片方 の 手 で 出た 。

「もしもし 。 俺 」受話器 の 向こう から 祐一 の 声 が 聞こえて くる 。 光代 は 薄暗い フロア に 誰 も いない の を 確認 し 、「もしもし 。 どうした と ?

」と 嬉しそうな 声 を 返した 。 「まだ 仕事 中 ? 」祐一 の 問いかけ に →光代 は 、「うん 、なんで ? 」と 問い返した 。

「今日 、なんか 用 ある ? 」「今日って 、今 からって こと ? 」フロア に 響いた 自分 の 声 が 、もう すでに 喜んで いる 。 「だって 長崎 やろ ?

仕事 もう 終わった と ? 」と 光代 は 訊いた 。 「六 時 に 終わった 。 今日 、自分 の 車 で 現場 に 行った けん 、そこ から 直接 そっち に 行こう か と 思う て 」運転 中 な の か 、ときどき 電波 が 途切れる 。

「今 、どこ ? 」と 光代 は 訊いた 。 知らぬ 間 に 立ち上がって いて 、伝票 に 差し込んで いた 親指 も 抜けて いる 。 「今 、もう 高速 降りる 」「え ?

高速 って 、佐賀 大和 ? 」光代 は 思わず ガラス 窓 へ 目 を 向けた 。 佐賀 大和 の インター から なら 、ここ まで 十分 と かから ない 。 光代 は 椅子 に 座り 直す と 、「来て くれる なら 、もっと 早う 知らせて くれ れば よか と に 」と 、嬉しくて 文句 を 言った 。

隣 に ある ファーストフード 店 の 駐車 場 で 待ち合わせる こと に して 、光代 は 祐一 から の 電話 を 切った 。 平日 の 夜 、思い も 寄ら ぬ 祐一 の 行動 に 、からだ が カツ と する ほど の 幸福 感 が 押し寄せて 〃くる 。 残って いた 伝票 を 手早く 処理 し ながら も 、高速 を 降りた 祐一 の 車 が 、今 、走り抜けて いる 街道 の 風景 が 浮かび 、一 枚 確認 済み の はんこ を 押す 度 に 、車 が 近づいて くる の が 感じられる 。 十五 分 は かかる と 思っていた 仕事 を 、光代 は 五 分 で 終わらせた 。

フロア の 電気 を 消して 、一階 の 更衣室 へ 駆け込む と 、すでに 着替えた 水谷 が いつも 持参している 水筒 から 、どくだみ 茶 を 注いで 飲んでいる 。 「あら 、もう 終わった と ? 」水谷 に 尋ねられ 、光代 は 一瞬 、「あ 、えっと 」と 言葉 を 詰まらせた 。 これ から 二 人 で 回転 寿司 に 行く 約束 を 忘れて いた わけ で は なかった が 、あまり の 急 展開 に 断る 言い訳 を 考えて い なかった のだ 。

「どうした と ? 」言葉 を 詰まらせた 光代 を 見つめ 、水谷 が 心配 そうに 訊いてくる 。 「あの 、えっと ……」「どうしたと? なんか あった ?

」 「 いや 、 そう じゃ なくて 、 今 、 ちょっと 電話 が あって ……」 「 電話 ? 誰 から ? 」 光代 は また 口ごもった 。 水谷 に は 、これ から 行く はず の 回転 寿司 店 で 、祐一 と の 出会い について 話そう と して いた くせ に 、いざ と なる と それ が 口 から すっと 出て こない 。

光代 の 様子 を じっと 見つめて いた 水谷 が 、「また 今度 に する ? 私 は いっでも よか よ 」と 意味 深 な 笑み を 浮かべる 。 「すいません ……」と光代は謝 った。 「彼 氏 が 急に 迎え に きた と やる ?

」急な 変更 を 気 に も せず 、水谷 が 微笑む 。 「 なんか あった と やろう と は 思う とった よ 。 珍しゅう 週 末 に 休み 取ったり する し 、 昨日 から 幸せ そうな 顔 し とった もん 」 「 すいません ….:」 と 光代 は また 謝った 。 「 ほんと 、 気 に せ んで よ かって 。

:。 … で 、 佐賀 の 人 ね ? 」 「 いや 、 長崎 の ……」 「 へえ 、 長崎 から 急に 会い に 来た と ? あら ら 、じゃあ 、私 と 回転 寿司 なんか 食べ とる 場合 じゃ なか ねえ 。

ほら 、早う 着替えて 行か ん ね 」水谷 は そう 言って 、突っ立って いる 光代 の 尻 を 叩いた 。 水谷 が 先 に 帰り 、誰 も い なく なった 更衣室 で 光代 は 急いで 着替えた 。 着替えて いる 最 中 に 携帯 が 鳴り 、「今 、着いた 」と いう 祐一 から の メール が 入って いる 。 革 ジャケット を 着て きて よかった 。

いつも 着て いる ダウン ジャケット の 襟 が 汚れて い て 、今朝 、もう 一 日 着て から クリーニング に 出そう か と 思った のだ が 、なんとなく やめた のだ 。 週末 、祐一 に 会った とき に も 、この 革 ジャケット を 着て いた 。 一 年 ほど 前 、珠代 と バス で 博多 に 買い物 に 行った とき 、十一万 円 という 値段 に 跨踏 は した が 、十 年 に 一 度 と 奮発して 買った もの だった 。 更衣室 の 鍵 を 閉め 、管理 室 の 警備 貝 に 渡して 通用口 を 出た 。

寒風 が 足元 を 吹き抜け 、マフラー を しっかり と 首 に 巻き 直す 。 がらんと した 駐車 場 に は 白線 だけ が くっきり と 浮かび 、フェンス の 向こう に は 、休 閑中 の 畑 と 鉄塔 が ある 。 視線 を 転じる と 、隣 に ある ファーストフード 店 の 駐車 場 に 、見覚え の ある 白い 車 が 停まって いる 。 さほど 混んでいない が 、よく 磨かれた 祐一 の 車 だけ が 、駐車場 の 照明 に きらきらと 輝いている 。

光代 は 一旦 駐車場 から 国道 に 出て 、フェンス の 向こう を 覗きながら 、隣 の 駐車場 へ と 急いだ 。 ファーストフード 店 の 駐車場 に 入る と 、祐一 の 車 の ライト が チカッと 光った 。 隣から 歩いてくる 自分 の 姿 を ずっと 見ていた らしい 。 光代 は 暗い 車 内 に いる だろう 祐一 に 向かって 、小さく 手 を 振って 見せた 。

近寄って いく と 、祐一 が 助手 席 の ドア を 内側 から 開けて くれた 。 開いた とたん 、車 内 が 明るく なり 、作業 服 を 着た 祐一 の 姿 が 見える 。 光代 は 車 に 駆け寄り 、「さぶ〜い 」と 身震い し ながら 助手 席 に 乗り込んだ 。 その 間 、 一 度 も 祐一 と は 目 を 合わせ なかった が 、 ドア が 閉まり 、 また 車 内 が 暗く なった とたん 、 「 ほんとに 仕事 終わって すぐに 来た と ?

」 と 祐一 の ほう へ 顔 を 向けた 。 「 家 に 帰って から や と 、 もっと 遅う なる けん 」 祐一 が 車 内 の 暖房 を 強め ながら 言う 。 「 もっと 早う 電話 くれれば よかった と に 」 「 しよう か なって 思う た けど 、 仕事 中 やろう と 思う て 」 「 もし 、 今日 、 会 えんかつ たら どう する つもり やった と ? 」光代 が ちょっと 意地悪く 尋ねる と 、「もし 会え ん かつ たら 、そのまま 帰る つもり やった 」と 生真面目に 答える 。

光代 は シフト レバー に 置かれた 祐一 の 手 に 自分 の 手 を のせた 。 祐一 の 作業 着 の せい か 、車 内 に 廃 嘘 の ような 匂い が した 。 車 は ファーストフード 店 の 駐車 場 に 停められた まま 、なかなか 動き出さ なかった 。 すでに 三 組 ほど 、店内 から 出てきた 客 が 車 に 乗り込み 、駐車場 から 走り去っている 。

逆に 入ってくる 車 が ない ので 、車 が 減る たびに 、まるで 大海 の 小舟 の ように 自分たち の 車 だ けが 残される 。 もう 何分 くらい 経つ の か 、光代 の 指 と 祐一 の 指 は 、未だに シフトレバー の 上 で 絡み合っている 。 言葉 は なく 、ただ 指先 だけ が 、もう 何分 も 話 を している 。 「 明日 も 仕事 、 早い と やる ?

」光代 は 祐一 の 中指 を 握り ながら 尋ねた 。 フェンス の 向こう に 見える 国道 を 、スピード を 上げた 車 が 走って いく 。 「五 時 半 起き 」祐一 が 光代 の 手首 を 親指 の 腹 で 撫でる 。 「ここ から 長崎 まで 二 時間 くらい かかる よ ね ?

あんまり 時間ない ね 」 「 ちょっと 顔 見 たかった だけ やけん ..…・」 エンジン を かけた まま の 車 の 中 で 、 デジタル 時計 が 9” 肥 を 示して いる 。 「 帰る と やる ? 」と 光代 は 尋ねた 。 指 の 動き を 止めた 祐一 が 、「……うん、今夜の うち に帰らんと、明日三時起きになるし」と苦笑する。

会い たくて 、 会い たくて 、 仕方 が なくなった ん だ 。 仕方 が なくて 、 仕事場 から 真っす ぐ 走って きた んだ 。 祐一 が そう 言って くれる こと は なかった が 、自分 の 手首 を 撫でる 祐一 の 指 の 動き で 、そんな 気持ち が 伝わってきた 。 これ から 近く の ラブ ホテル に 入れば 、二 時間 くらい は 一緒に いられる 。

ただ 、それ から 長崎 へ 帰る と なる と 、到着 は 深夜 一 時 過ぎ に なる 。 すぐに 寝ても 、四 時間 ほど しか 眠らず に 、祐一 は きつい 仕事 へ 出かけなければならない 。 二 時間 で いい から 一緒に いたい 。 でも 、一 時間 でも 多く 、祐一 を 眠ら せて あげたい 。

「うち に 妹 が おらん やったら ね :…・」思わずそん な言葉が漏れて、光代は自分で自分の言葉にハツとした。 これ まで 妹 の 珠 代 を 邪魔 だ と 思った こと は ない 。 逆に いつも 妹 の 帰り ばかり を 心配 して いる 生活 だった のだ 。 「 ホテル .:… 行く ?

」祐一 が ぼそっと 訊いてきた 。 その 訊き 方 が 、明日 の 朝 を 心配している の か 、どこか 跨踏している 。 「でも 今 から 入ったら 、帰る の 遅くなる よ 」「……そうやけど」シフト レバーの上で、祐一の指先に力が入る。 「なんか 、やっぱり 佐賀 と 長崎 って 遠い ね 」光代 は ふと そう 眩いて しまい 、すぐに 、「あ 、じゃ なくて 」と 首 を 振った 。

「::: そう じゃ なくて 、 なんか 、 せっかく 来て くれた と に 、 ゆっくり する 時間 もない 〆 一 1 し 」 「 平日 やけん 、 仕方 なか よ 」 祐一 が 諦めた よう に 眩 く ・ それ が どこ か 冷たく 響き 、「 祐一って 真面目 か ょね 」 と 思 わ ず 光代 は 言い返した 。 「仕事 は 休めん よ 。 おじさん の 会社 やし 」「でも 、土 日 は 私 が なかなか 仕事 休めん よ 。 この 前 の ように 二 日 続けて 一緒に おる んな ん て 、滅多に でき ん かも 」少し 意地悪な 言い 方 だった 。

その とたん 、祐一 の 指先 から 力 が なくなる 。 私 に 会い に きて くれた 人 な のだ 、と 光代 は 思う 。 自分 たち に は 会う 時間 が ない んだ と 、そんな こと を わざわざ 聞き に きた わけ で は なくて 、きつい だろう 仕事 を 終えた その 足 で 、二 時間 も 車 を 走らせて 、わざわざ 私 に 会い に 来て くれた 人 な の だ と 。 「ねえ 、隣 の 駐車場 に 移動せん ?

」光代 は 力 の 抜けた 祐一 の 指 を 引っ張った 。 「もう 店 も 終わっとる し 、他 の 車 が 入ってくる こと も ない けん 、ゆっくり 話 できる よ 。 建物 の 裏 に 停めれば 、通り から も 見えん し 」光代 の 言葉 に 祐一 が フェンス の 向こう 、すでに 照明 も 消され た 紳士 服 店 の 駐車場 に 目 を 向け 、すぐに サイドブレーキ を 下ろそう と する 。 「あ 、ちょっと 待って 。

晩 ご飯 まだ 食べ とら ん と やる ? そこ で なんか 買って くる け ん 」 光代 が 慌てて そう 言う と 、「 いや 、 高速の サービス エリア で うどん 食 うて きた 。 我慢 でき ん で 」と 祐一 は 笑った 。 車 は ファーストフード 店 の 駐車 場 を 出て 、紳士 服 店 「若葉 」の 駐車 場 に 入った 。

店舗 の 裏 に 回る と 辺り は 真っ暗 で 、フェンス の 向こう に 見える 畑 の 中 、ライト アップ さ れた 化粧 品 の 大きな 看板 だけ が 風景 に なる 。 「私 、今度 の 金曜日 、公休 やけん 、長崎 に 行こう か な 。 日帰り やけど 」車 が 停まる と 、光代 は ハンドル を 握った まま の 祐一 に 言った 。 その 瞬間 、祐一 の 腕 が 伸びてきて 、耳元 から 首すじ に かけて 、熱い 手のひら が 置か れる 。

祐一 は 何も 言わず に キス を してきた 。 一瞬 焦った が 、あっという間 に 祐一 の からだ が のしかかってくる 。 光代 は 目 を 閉じて 、からだ を 任せた 。 駐車 場 を 出た の は 、 十 時 を 回った ころ だった 。

いつまで でも 抱き合って い たかった が 、それ 以上 に 、明日 の 朝 、祐一 に つらい 思い を さ せ たく ない と いう 気持ち が 強かった 。 車 を 出す と 、祐一 は 案内 も なし に 光代 の アパート へ 向かった 。 器用に 車線 を 変更 し 、次々 と 他 の 車 を 抜いて いく 。 「じゃあ 、しあさって バス で 長崎 に 行く ね 」光代 は すでに 慣れた 車 の 揺れ に 身 を 任せ ながら 言った 。

「六 時 に は 仕事 終わる けん 」祐一 が 前 の 車 を 煽り ながら 眩く ・「せっかく やけん 、午前 中 に 行って 、一 人 で 観光 しょっと 。 長崎 市 内 に 行く とって 、も う 何 年 ぶり やろ ……、去年、妹たち と ハウステンボスには行ったけど」「俺が案内できればいいとけど。 …:」 「 大丈夫 。 ちゃんぽん 食べて 、 教会 と か 見て :…・」 297 第 四 章 彼 は 誰 に 出会った か ?

自転車 で 十五 分 かかる 距離 が 、祐一 の 運転 だ と ほんの 三 分 だった 。 祐一 は 先日 と 同じ ように 未 舗装 の アパート 敷地 内 に 車 を 入れた 。 「あ 〜、やっぱり 、妹 、もう 帰っと る 」光代 は 明かり の ついた 二 階 の 窓 を 見上げた 。 「……さっき会うたば っかりとにね」そう眩く光代の唇に、祐一の乾いた唇が重なる。

「気 を つけて 帰って よ 」光代 は 唇 を つけた まま 言った 。 祐一 も そのまま で 頷いた 。 一瞬 、祐一 が 何 か 言い かけ た ような 気 が して 、「え ? 」 と 光代 は からだ を 離した 。

しかし 祐一 は 目 を 伏せた だけ だった 。 光代 は 敷地 から 出て いく 車 を 見送った 。 車道 へ 出る と 、祐一 は 一 度 クラクション を 鳴らし 、あっという間 に 走り去った 。 もう 寂しかった 。

もう 会い たく なって いた 。 光代 は 赤い テールランプ が 見え なく なる まで 立って いた 。 あれ は いつ だった か 、珠代 が 美容 師 の 男の子 と 付き合って いる ころ 、同じ ような こと を 言って いた 。 デート が 終わる と もう 寂しい 。

もう 会いたくて 仕方ない 。 当時 は その 気 持ち が いまいち 理解 でき ず に いた が 、今 なら 分かる 。 分かる どころ か 、こんな 気持ち に なって 、よく 平気で いられた もの だ と さえ 思う 。 光代 は 車 を 追いかけて 走り出したい 気分 だった 。

座り込んで 、声 を 上げて 泣き たかった 。 祐一 と 一緒に いられる ならば 、なん だって でき そうな 気 さえ した 。

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