こぼれる 、こぼれる
こぼれる 、 こぼれる
むかし むかし 、 きっ ちょ むさん と 言う 、 とんち の 上手な 人 が い ました 。
ある 日 の 事 、 村 の 男 たち が お 堂 に 集まって 、 酒もり を して い ました 。
そこ へ きっ ちょ むさん が 手ぶらで やって 来て 、 酒 や ごちそう を さんざん 飲み食い する と 、 「 それでは 、 ごちそう さん 」 と 、 言って 、 さっさと 帰って しまい ました 。
その 場 に いた 男 たち は 、 カンカンです 。
「 なんだ 、 きっ ちょ むさん の やつ 。
手ぶらで 来た くせ に 、 さんざん 飲み食い し や が って 」 「 そう だ !
今度 手ぶら で 来たら 、 追い返して やろう !
」 する と 、 それ を 知った きっ ちょ むさん は 、 「 そう か 、 手ぶらで は 入れて くれ ん か 。
まあ 、 入って しまえば どう と で も なる が 」 と 、 ある 作戦 を 考え ました 。
次の 晩 、 今日 も 村 の 男 たち が お 堂 で 酒もり を して いる と 、 きょむ さん が またしても 手ぶらで やって 来 ました 。
しかし お 堂 の 戸 が 、 ピタリ と 閉め られて い ます 。
「 お ー い 、 開けて くれ 」 きっ ちょ むさん が 声 を かける と 、 中 に いる 男 たち が 言い ました 。
「 酒 を 買って 来る まで は 、 中 に 入れて やら ん 」 すると きっ ちょ むさん が 、 待って ました と ばかり に 言い ました 。
「 何 を 言って いる !
はやく 開けて くれ ん と 、 こぼれて しまう だろう !
ああ 、 こぼれ そうじゃ 、 こぼれ そうじゃ 」 「 何 じゃ 、 それ を はやく 言え 」 男 たち は てっきり 、 きっ ちょ むさん が お 酒 を 買って 来た もの だ と 思って 急いで 戸 を 開け ました 。
ところが きっ ちょ むさん は 、 いつも の 通り の 手ぶらだった のです 。
男 たち は 、 きっ ちょ むさん に 文句 を 言い ました 。
「 何 だ ?
『 こぼれ そうじゃ 』 と 言う から 開けて やった のに 、 今日 も 手ぶらじゃ ねえ か 。
きっ ちょ むさん 、 よくも うそ を ついた な !
」 すると きっ ちょ むさん は 、 平気な 顔 で 言い ました 。
「 なに が 、 うそ な もんか 。
わし は な 、 さむくて さむくて 、 鼻水 が 『 こぼれ そうじゃ 』 と 言った んじゃ 。
・・・ おや ?
今日 は なべ か 、 これ は 体 が あたたまり そうじゃ 」 きっ ちょ むさん は わざと 鼻水 を すすり 上げる と 、 またしても 手ぶらで 飲み食い を した のでした 。
おしまい
こぼれる 、こぼれる
Spill, spill, spill.
こぼれる 、 こぼれる
むかし むかし 、 きっ ちょ むさん と 言う 、 とんち の 上手な 人 が い ました 。
||||||いう|||じょうずな|じん|||
ある 日 の 事 、 村 の 男 たち が お 堂 に 集まって 、 酒もり を して い ました 。
|ひ||こと|むら||おとこ||||どう||あつまって|さかもり||||
そこ へ きっ ちょ むさん が 手ぶらで やって 来て 、 酒 や ごちそう を さんざん 飲み食い する と 、 「 それでは 、 ごちそう さん 」 と 、 言って 、 さっさと 帰って しまい ました 。
||||||てぶらで||きて|さけ|||||のみくい|||||||いって||かえって||
その 場 に いた 男 たち は 、 カンカンです 。
|じょう|||おとこ|||かんかん です
「 なんだ 、 きっ ちょ むさん の やつ 。
手ぶらで 来た くせ に 、 さんざん 飲み食い し や が って 」 「 そう だ !
てぶらで|きた||||のみくい||||||
今度 手ぶら で 来たら 、 追い返して やろう !
こんど|てぶら||きたら|おいかえして|
」 する と 、 それ を 知った きっ ちょ むさん は 、 「 そう か 、 手ぶらで は 入れて くれ ん か 。
||||しった|||||||てぶらで||いれて|||
まあ 、 入って しまえば どう と で も なる が 」 と 、 ある 作戦 を 考え ました 。
|はいって||||||||||さくせん||かんがえ|
次の 晩 、 今日 も 村 の 男 たち が お 堂 で 酒もり を して いる と 、 きょむ さん が またしても 手ぶらで やって 来 ました 。
つぎの|ばん|きょう||むら||おとこ||||どう||さかもり|||||||||てぶらで||らい|
しかし お 堂 の 戸 が 、 ピタリ と 閉め られて い ます 。
||どう||と||ぴたり||しめ|||
「 お ー い 、 開けて くれ 」 きっ ちょ むさん が 声 を かける と 、 中 に いる 男 たち が 言い ました 。
|-||あけて||||||こえ||||なか|||おとこ|||いい|
「 酒 を 買って 来る まで は 、 中 に 入れて やら ん 」 すると きっ ちょ むさん が 、 待って ました と ばかり に 言い ました 。
さけ||かって|くる|||なか||いれて||||||||まって|||||いい|
「 何 を 言って いる !
なん||いって|
はやく 開けて くれ ん と 、 こぼれて しまう だろう !
|あけて||||||
ああ 、 こぼれ そうじゃ 、 こぼれ そうじゃ 」 「 何 じゃ 、 それ を はやく 言え 」 男 たち は てっきり 、 きっ ちょ むさん が お 酒 を 買って 来た もの だ と 思って 急いで 戸 を 開け ました 。
||そう じゃ||そう じゃ|なん|||||いえ|おとこ|||||||||さけ||かって|きた||||おもって|いそいで|と||あけ|
ところが きっ ちょ むさん は 、 いつも の 通り の 手ぶらだった のです 。
|||||||とおり||てぶらだった|
男 たち は 、 きっ ちょ むさん に 文句 を 言い ました 。
おとこ|||||||もんく||いい|
「 何 だ ?
なん|
『 こぼれ そうじゃ 』 と 言う から 開けて やった のに 、 今日 も 手ぶらじゃ ねえ か 。
|そう じゃ||いう||あけて|||きょう||てぶらじゃ||
きっ ちょ むさん 、 よくも うそ を ついた な !
」 すると きっ ちょ むさん は 、 平気な 顔 で 言い ました 。
|||||へいきな|かお||いい|
「 なに が 、 うそ な もんか 。
わし は な 、 さむくて さむくて 、 鼻水 が 『 こぼれ そうじゃ 』 と 言った んじゃ 。
|||||はなみず|||そう じゃ||いった|
・・・ おや ?
今日 は なべ か 、 これ は 体 が あたたまり そうじゃ 」 きっ ちょ むさん は わざと 鼻水 を すすり 上げる と 、 またしても 手ぶらで 飲み食い を した のでした 。
きょう||||||からだ|||そう じゃ||||||はなみず|||あげる|||てぶらで|のみくい|||
おしまい