×

Мы используем cookie-файлы, чтобы сделать работу LingQ лучше. Находясь на нашем сайте, вы соглашаетесь на наши правила обработки файлов «cookie».


image

三姉妹探偵団 1, 三姉妹探偵団01 chapter 13 (1)

三 姉妹 探偵 団 01 chapter 13 (1)

13 一 か 八 か の 勝負

珠美 は 、 左右 を 見回した 。

誰 も 見て い ない 。 よし 、 と ばかり に 、 ヒラリ と 身 を 躍ら せて 、 庭 の 中 へ 降り立った 。

安東 の 家 である 。

しばらく いた のだ から 、 どの 戸 の 鍵 が 馬鹿に なって いる か 、 知り尽くして いる 。 珠美 は 、 その 窓 の 戸 を そっと 引いた 。 ── 巧 く 開く 。

もちろん 、 安東 も 岐子 も い ない はずだ 。 計算 高い 珠美 が 、 これほど 思い切った こと を する のだ から 、 成算 も ある はずな のである 。

窓 から 忍び込む の は 、 予想 以上 に 大変であった 。

やっと の 思い で 、 入り込んだ 。 窓 を 閉めて しまえば 、 もう 大丈夫だ 。

「 さて 、 と ……」

安東 が 犯人 だ と して も 、 何ら 具体 的な 証拠 は ない 。 そう なる と 、 たとえ 警察 に 訴えて も 、 取り上げて は くれ ない だろう 。

何 か 動か ぬ 証拠 が 必要な のである 。

時間 は ある だろう が 、 そう のんびり して は い られ ない 。 安東 が 会う 相手 が 、 おそらく 綾子 である の は 、 珠美 も 、 想像 が ついて いた 。

しかし 、 どこ で 会う つもりな の か は 、 見当 が つか ない から 、 手 の 打ち よう も ない 。 それ に 、 会う と いって も 、 どこ か の 喫茶 店 で 会う だけ かも しれ ない のだ 。

別に そう 危険 は ある まい 。 むしろ 、 安東 が 帰って 来 ない の が 確実な のだ から 、 この 機会 を 活用 しよう 、 と 考えた のだった 。

もちろん 、 何 か 見付けたら 、 只 で は 済まさ ない つもりである 。

と いって 、 珠美 も プロ の 空 巣 と いう わけで は ない 。 どこ を 捜せば いい の か 、 はっきり と あて は ない のだ 。

まず タンス 。 珠美 は オーソドックスな スタート を 切った 。

「 や あ 、 君 か 」

と 、 植松 は 、 多少 、 照れくさ そうな 声 で 言った 。

「 こんな 所 で 、 何 して る んです か ? 「 見りゃ 分 る だろう が 」

「 でも …… 会社 は ? と 、 夕 里子 は 訊 いた 。

「 知ら ん の か ? 私 は クビ に なった 」

「 クビ ? 「 そう と も 、 課長 の 椅子 から 追わ れ 、 夫 の 座 から も 追わ れた 」

「 じゃ 、 奥さん と 別れた んです か ? 「 ああ 。 あんな 女 、 こっち が 捨てて やった んだ ! どうも 、 客観 的に は 逆の 印象 である 。

「 ふん 、 あいつ め 、 俺 に 、 就職 の 世話 を して やる 、 と ぬかし や がった ! 何 だ と 思う ? あの ビル の 管理人 だ ぞ 。 毎日 、 自分 の いた 会社 の 社員 に 見 られて 、 笑われる ため に 、 受付 に 座 っと る んだ ! ── 全く 、 人 を 馬鹿に しや が って ! なるほど 、 大した 奥さん だ 、 と 夕 里子 は 思った 。

「 それ で 、 ここ に ? 「 うん 。 ゆうべ 、 飲み すぎて 、 ここ で 眠 っち まったん だ 。 目 が 覚める と 、 上 に 毛布 が かけて ある 。 この 人 のだった よ 」

と 、 王様 を 指さす 。 「 それ で 、 すっかり 参っちゃ った の さ 。 人間 らしい 人間 の いる の は ここ しか ない ! そう 力強く 言って 、 植松 は 、 酒宴 の 中 に 加わった 。

夕 里子 が 、 複雑な 気持 で 見て いる と 、 王様 が やって 来て 、

「 大丈夫です よ 」

と 言った 。

「 え ? 「 あの 人 は 、 まだ 現実 の 欲望 に 未練 が ある 。 また 少し すれば 戻って 行き ます 」

「 どうして 私 の 考えて いる こと を ──」

王様 は にっこり 笑った 。

「 私 たち は 、 心 の 中 を 空 に して い ます から ね 。 他人 の 心 を よく 読める んです よ 」

夕 里子 は 、 分 った ような 、 分 ら ない ような 気分 で 、 肯 いた 。

そこ へ 、

「 王様 ! と 、 浮 浪 者 の 一 人 が 小走り に やって 来た 。

「 どうした ん だ ? 「 あの 三 人 を 見付け ました 」

「 三 人 ? ── ドクター を 傷つけた 三 人 か 」

「 そうです 」

「 どこ に いる ? 「 酔い潰れて る んです 、 上 の ゴミ 捨て場 で 」

王様 は 夕 里子 を 見た 。

「 一緒に 行き ます か ? 「 ええ 、 ぜひ ! 夕 里子 は 、 王様 と 一緒に 地下 街 を 通り 、 出口 の 一 つ から 、 地上 へ と 出た 。

「 あの ビル の 裏 です 」

案内 さ れて 、 出た の は 、 ゴミ の 袋 が 、 山 を なして 、 悪臭 の ひどい 路地 だった 。 夕 里子 が 思わず 鼻 を 手 で 押えた 。

「 待って いらっしゃい 」

と 、 王様 は 言った 。 「 今 、 ここ へ 連れて 来 ましょう 」

夕 里子 は 少し 後退 した 。 やはり 自分 は この 「 仲間 」 に は 入れ ない 、 と 思った 。

「 やめて くれ ! 「 勘弁 して ! と 、 悲鳴 が 聞こえて 、 十 人 近い 浮 浪 者 たち に 引きずら れる ように して 、 夕 里子 を 襲った 三 人 が 、 連れて 来 られた 。

「 この 男 たち です ね 」

と 王様 が 訊 く 。

「 はい 。 間違い あり ませ ん 」

三 人 は 、 地面 に 倒れた きり 、 起き上る 元気 も ない 様子 で 、 顔 だけ を 上げた 。

「 あ ── いけ ねえ 、 あの 娘 だ ! と 、 這って 逃げよう と する が 、 たちまち 引き戻さ れて しまう 。

「 訊 く こと が ある のだ 」

と 王様 は 言った 。 「 なぜ 、 この 娘 さん を 襲った ? 「 金 が …… 欲しかった んだ 」

と 一 人 が 、 弱々しい 声 で 答える 。

「 本当の こと を 言え ! 王様 の 言葉 は 、 あたかも 、 本物 の それ の ように 、 厳しく 響き渡った 。

「 言い ます よ 」

一 人 が 投げやりな 口調 で 、「 隠し とく ほど の 義理 も ねえ んだ から 」

「 何 を 隠す んだ ? 「 頼ま れた んです よ 。 金 を もらって 。 この 娘 の バッグ を かっぱ ら えと 」

「 ついでに 乱暴 して 来れば 、 一 人 一万 円 やる と 言わ れて ね 。 楽しんで 金 が 入る なら いい 話 だ と 思って ……」

「 頼んだ の は 、 誰 ? と 夕 里子 が 前 へ 出て 訊 いた 。

「 名前 は 知ら ねえ よ 」

一 人 が 、 ふてくされた ように 答える 。

「 どんな 男 ? 夕 里子 が 訊 く と 、 その 浮 浪 者 は 、 目 を パチクリ さ せた 。

「 男 じゃ ねえ よ 。 女 だった ぜ 」

割と 大変な の ね 、 空 巣 って の も 。

珠美 は 、 額 の 汗 を 拭った 。

何しろ 素人 の (? ) 空 巣 である 。 捜す 物 も はっきり し ない ので は 、 一向に はかどら ない の も 当然 。

しかし 、 引出し や 押入れ を 調べる こと 自体 は 、 そう 苦労で は なかった 。 あまり 感心 した こと で は ない が 、 覗き見 的 楽し さ も ある 。

しかし 、 総 て を 、 気付か れ ない ように 、 元通りに して おく 、 と いう の が 、 想像 も して い ない 大 仕事 であった 。

考えて みれば 、 空 巣 は 捜した 後 は そのまま めちゃくちゃで いい のだ から 、 楽である 。

「 いい なあ 、 空 巣 は 」

と 変な こと を 羨 し がり ながら 、 押入れ の 奥 を かき回して いる と ……。

「 あれ ? ふと 、 手 が 止まった 。 ── バッグ である 。 そう 変った バッグ で は ない 。 しかし 、 どうにも 場違いな 所 に 置いて あって 、 目 に ついた 。

しかも 、 布 を かけて 、 まるで 隠して ある ように 見えた のである 。

取り出して みて 、 珠美 は 、 しばらく それ を 眺めて いた 。

「 この バッグ …… 似て る なあ 」

と 呟く 。

珠美 は 、 割合い に バッグ に も うるさい 。

殺さ れた 片瀬 紀子 が 持って いた バッグ の 一 つ に 、 良く 似て いる のである 。

「 中 は 空か な 」

開けて みて 、 驚いた 。 あれこれ と 詰まって いる のだ 。 ハンカチ 、 化粧 品 、 タオル まで ある 。 手帳 が 出て 来た 。

開いて みる と 、 予定 欄 など に 書き込み が ある 。 ── おかしい 、 こんな 手帳 を 入れた バッグ が 、 なぜ 、 こんな 押入れ の 奥 に 入って いる の か ?

手帳 の 最後 の ページ を 見た 珠美 は 、 啞然 と した 。 名前 が 記して ある 。 住所 と 電話 も 。

「 片瀬 紀子 」 と 名 が ある のだ 。

これ は 、 殺さ れた 片瀬 紀子 が 奪わ れた バッグ な のだ ! つまり 、 殺した の は ……。

襖 が 、 ガラリ と 開いて 、 珠美 は 飛び上り そうに なった 。

「 何 を して る の ? 安東 岐子 が 、 立って いた 。

そして 、 バッグ に 気付く と 、 険しい 目 で 、 珠美 を 見据えた 。

これ は 、 正に 珠美 と して も 計算 外 の 出来事 である 。

お邪魔 して ます 、 と でも 言う のだろう か ?

しかし 、 どうも この 場面 に ふさわしい と は 思え なかった 。 やはり ここ は 他 に 手 が ない 。

逃げる んだ !

珠美 は 、 バッグ を 岐子 めがけて 投げつける と 、 玄関 へ 向 って 一目散に 突っ走る ── はずだった 。 しかし 、 計算 して い なかった の は 、 座り込んで 、 押入れ の 中 を かき回して いた ので 、 座り 慣れ ない 現代 っ子 、 足 が 痺れて いた こと だった 。

二 、 三 歩行 って よろける と 、 つまずいて 転んで しまった 。 とたん に 、 上 から 安東 岐子 が のしかかって 来る 。

「 見て しまった の ね ! どうして ── どうして ──」

安東 岐子 は 、 涙声 に なって いた 。 両手 が 、 珠美 の 首 に かかった 。 うつ伏せ に なった まま 、 珠美 は 身動き が 取れ ない 。

指 が 、 珠美 の 首 に 食い込んで 来た 。 珠美 は 声 を 出そう と した が 、 もう それ は 声 に なら なかった 。 指 は 、 更に 深く 、 食い入って 来た ……。

もう すぐ 二 時 だ 。

綾子 は 泣き たく なって 来た 。 もちろん 、 それ を 予期 して 一 時間 も 前 に 着く ように 、 早く 出て 来た のだ 。

いや 、 出て 来た と いえば 、 朝 から 表 に は 出て いる 。 十二 時 過ぎ に 安東 へ 電話 して 、 待ち合わせる 喫茶 店 の 場所 を 詳しく 教えて もらった 。

そこ なら 、 電話 した 場所 から 、 十五 分 も あれば 行け そうだった ので 、 綾子 も 安心 して いた のである 。 そして 、 それ でも 万一 を 考えて 早く そこ へ と 向 った 。

それでいて …… 綾子 は また 道 が 分 ら なく なって しまった のだ 。

綾子 は 立ち止まった 。 行く も なら ず 、 戻る も なら ず 、 と いう ところ である 。 行けば 行く ほど 、 目的 地 から 遠 去 かり そうで 、 戻れば 戻った で 、 絶対 に もと の 場所 に は 出 ない 性格 (? ) な のだ から 。

「 もう …… や ん なっちゃ う 」

本当に 泣き たい 気分 だった 。

誰 か に 道 を 訊 く と いった って ……。 誰 に 訊 け ば いい だろう ?

一 番 いい の は 交番 の お巡りさん だ 。 しかし 、 その 交番 が どこ に ある か 分 ら ない 。

通りがかり の 人 に 訊 く ほど の 度胸 が あれば いい のだ が 。

と いって 、 お巡りさん に 知り合い は ない し 。 知り合い ? ── そう いえば 国友 って 刑事 さん が いた 。

交番 の お巡りさん と 刑事 を 一緒に して いい か どう か 。 綾子 とて 、 ちょっと 考え ないで は なかった が 、 他 に 誰 も い ない 。

国友 の 電話 は 、 何 か の とき の ため に 、 と 夕 里子 から 教え られて 手帳 に 書いて あった 。

しかし 、 国友 に 電話 したら 、 安東 と 会う こと を 夕 里子 に 知ら れて しまう ので は ない か ? 何しろ 夕 里子 は 、 安東 が 犯人 じゃ ない か なんて 、 とんでもない こと を 考えて いる のだ 。

「 でも ── 大丈夫 か 」

何も 、 ホテル の 場所 を 訊 くわけ じゃ ない 。 待ち合わせ の 喫茶 店 の 場所 さえ 分 れば いい のだ 。 その先 、 どこ で 誰 と 会う か なんて 、 国友 に 分 る はず が ない で は ない か 。

赤 電話 は 見える 所 に あった 。 これ なら 綾子 も 迷わ ず に 辿りつける 。

決心 して 電話 を かける こと に した 。

「── 国友 です 」

「 あ 、 あの 、 綾子 です が 。 佐々 本 綾子 」

「 や あ 、 どうも 。 何 か 用 ? 「 あの 、 ちょっと 教えて いただき たい こと が あって ……」

「 何 だい ? 僕 で 分 る こと なら 」

「 あの …… 私 、 方向 音痴 で 道 に 迷っちゃ った んです 」

「 お やおや 」

と 国友 は 笑って 、「 どこ へ 行く の ? 綾子 は メモ に あった 喫茶 店 の 名前 を 言った 。

「 ああ 、 そこ なら 知って る 。 N ビル の 地下 じゃ ない の ? 「 そうです ! そこ です ! 綾子 は 嬉しくて 声 を 弾ま せた 。

「 で 、 今 、 どこ に いる の ? 綾子 は また 意気消沈 した 。

「 それ が 分 ら なく って ……」

「 そう か 。 迷った とき は そんな もん だ よ な 。 手近な ところ に 住所 の 表示 板 が ないかい ? 何 町 何の いく つ 、 って いう やつ が 」

キョロキョロ 見回した 。

「 あ 、 あり ます 。 ええ と 〈×× 町 3─5〉 って 書いて あり ます 」

「 OK 。 ちょっと 待って 」

しばらく 間 が あった 。 綾子 は 腕 時計 を 見た 。 もう 二 時 十分である 。 安東 は 苛々 し ながら 待って いる かも しれ ない 。

「── お 待た せ 。 分 った よ 。 君 の いる の は バス の 通り だ ね ? 「 ええ 、 広い 道 です 」

「 よし 。 その道 を ね 、 少し 坂 に なって る だ ろ ? 下って 行く んだ 。 そして 突き当ったら ……」

三 回 、 説明 を くり返して もらって 、 メモ を 取る と 、 やっと 綾子 に も 自信 が ついて 来た 。

「 どうも すみ ませ ん でした 」

「 いや 、 いい んだ 。 僕 も 割と 方向 感覚 の ない 方 で ね 。


三 姉妹 探偵 団 01 chapter 13 (1) みっ|しまい|たんてい|だん|

13  一 か 八 か の 勝負 ひと||やっ|||しょうぶ 13 One or eight games

珠美 は 、 左右 を 見回した 。 たまみ||さゆう||みまわした

誰 も 見て い ない 。 だれ||みて|| よし 、 と ばかり に 、 ヒラリ と 身 を 躍ら せて 、 庭 の 中 へ 降り立った 。 ||||ひらり||み||おどら||にわ||なか||おりたった

安東 の 家 である 。 あんどう||いえ| It is the house of Andong.

しばらく いた のだ から 、 どの 戸 の 鍵 が 馬鹿に なって いる か 、 知り尽くして いる 。 |||||と||かぎ||ばかに||||しりつくして| 珠美 は 、 その 窓 の 戸 を そっと 引いた 。 たまみ|||まど||と|||ひいた ── 巧 く 開く 。 こう||あく

もちろん 、 安東 も 岐子 も い ない はずだ 。 |あんどう||しこ|||| 計算 高い 珠美 が 、 これほど 思い切った こと を する のだ から 、 成算 も ある はずな のである 。 けいさん|たかい|たまみ|||おもいきった||||||せいさん||||

窓 から 忍び込む の は 、 予想 以上 に 大変であった 。 まど||しのびこむ|||よそう|いじょう||たいへんであった

やっと の 思い で 、 入り込んだ 。 ||おもい||はいりこんだ With a barely mind, I got in. 窓 を 閉めて しまえば 、 もう 大丈夫だ 。 まど||しめて|||だいじょうぶだ

「 さて 、 と ……」

安東 が 犯人 だ と して も 、 何ら 具体 的な 証拠 は ない 。 あんどう||はんにん|||||なんら|ぐたい|てきな|しょうこ|| そう なる と 、 たとえ 警察 に 訴えて も 、 取り上げて は くれ ない だろう 。 ||||けいさつ||うったえて||とりあげて||||

何 か 動か ぬ 証拠 が 必要な のである 。 なん||うごか||しょうこ||ひつような|

時間 は ある だろう が 、 そう のんびり して は い られ ない 。 じかん||||||||||| 安東 が 会う 相手 が 、 おそらく 綾子 である の は 、 珠美 も 、 想像 が ついて いた 。 あんどう||あう|あいて|||あやこ||||たまみ||そうぞう|||

しかし 、 どこ で 会う つもりな の か は 、 見当 が つか ない から 、 手 の 打ち よう も ない 。 |||あう|||||けんとう|||||て||うち||| それ に 、 会う と いって も 、 どこ か の 喫茶 店 で 会う だけ かも しれ ない のだ 。 ||あう|||||||きっさ|てん||あう|||||

別に そう 危険 は ある まい 。 べつに||きけん||| むしろ 、 安東 が 帰って 来 ない の が 確実な のだ から 、 この 機会 を 活用 しよう 、 と 考えた のだった 。 |あんどう||かえって|らい||||かくじつな||||きかい||かつよう|||かんがえた|

もちろん 、 何 か 見付けたら 、 只 で は 済まさ ない つもりである 。 |なん||みつけたら|ただ|||すまさ||

と いって 、 珠美 も プロ の 空 巣 と いう わけで は ない 。 ||たまみ||ぷろ||から|す||||| どこ を 捜せば いい の か 、 はっきり と あて は ない のだ 。 ||さがせば|||||||||

まず タンス 。 |たんす 珠美 は オーソドックスな スタート を 切った 。 たまみ||おーそどっくすな|すたーと||きった

「 や あ 、 君 か 」 ||きみ|

と 、 植松 は 、 多少 、 照れくさ そうな 声 で 言った 。 |うえまつ||たしょう|てれくさ|そう な|こえ||いった

「 こんな 所 で 、 何 して る んです か ? |しょ||なん|||| 「 見りゃ 分 る だろう が 」 みりゃ|ぶん|||

「 でも …… 会社 は ? |かいしゃ| と 、 夕 里子 は 訊 いた 。 |ゆう|さとご||じん|

「 知ら ん の か ? しら||| 私 は クビ に なった 」 わたくし||くび||

「 クビ ? くび 「 そう と も 、 課長 の 椅子 から 追わ れ 、 夫 の 座 から も 追わ れた 」 |||かちょう||いす||おわ||おっと||ざ|||おわ|

「 じゃ 、 奥さん と 別れた んです か ? |おくさん||わかれた|| 「 ああ 。 あんな 女 、 こっち が 捨てて やった んだ ! |おんな|||すてて|| Such a woman, I threw it away! どうも 、 客観 的に は 逆の 印象 である 。 |きゃっかん|てきに||ぎゃくの|いんしょう|

「 ふん 、 あいつ め 、 俺 に 、 就職 の 世話 を して やる 、 と ぬかし や がった ! |||おれ||しゅうしょく||せわ||||||| 何 だ と 思う ? なん|||おもう あの ビル の 管理人 だ ぞ 。 |びる||かんりにん|| 毎日 、 自分 の いた 会社 の 社員 に 見 られて 、 笑われる ため に 、 受付 に 座 っと る んだ ! まいにち|じぶん|||かいしゃ||しゃいん||み||えみわれる|||うけつけ||ざ||| ── 全く 、 人 を 馬鹿に しや が って ! まったく|じん||ばかに||| なるほど 、 大した 奥さん だ 、 と 夕 里子 は 思った 。 |たいした|おくさん|||ゆう|さとご||おもった

「 それ で 、 ここ に ? 「 うん 。 ゆうべ 、 飲み すぎて 、 ここ で 眠 っち まったん だ 。 |のみ||||ねむ||| 目 が 覚める と 、 上 に 毛布 が かけて ある 。 め||さめる||うえ||もうふ||| この 人 のだった よ 」 |じん||

と 、 王様 を 指さす 。 |おうさま||ゆびさす 「 それ で 、 すっかり 参っちゃ った の さ 。 |||まいっちゃ||| 人間 らしい 人間 の いる の は ここ しか ない ! にんげん||にんげん||||||| It is only here that there are humans like people! そう 力強く 言って 、 植松 は 、 酒宴 の 中 に 加わった 。 |ちからづよく|いって|うえまつ||しゅえん||なか||くわわった

夕 里子 が 、 複雑な 気持 で 見て いる と 、 王様 が やって 来て 、 ゆう|さとご||ふくざつな|きもち||みて|||おうさま|||きて

「 大丈夫です よ 」 だいじょうぶです|

と 言った 。 |いった

「 え ? 「 あの 人 は 、 まだ 現実 の 欲望 に 未練 が ある 。 |じん|||げんじつ||よくぼう||みれん|| また 少し すれば 戻って 行き ます 」 |すこし||もどって|いき|

「 どうして 私 の 考えて いる こと を ──」 |わたくし||かんがえて|||

王様 は にっこり 笑った 。 おうさま|||わらった

「 私 たち は 、 心 の 中 を 空 に して い ます から ね 。 わたくし|||こころ||なか||から|||||| 他人 の 心 を よく 読める んです よ 」 たにん||こころ|||よめる||

夕 里子 は 、 分 った ような 、 分 ら ない ような 気分 で 、 肯 いた 。 ゆう|さとご||ぶん|||ぶん||||きぶん||こう|

そこ へ 、

「 王様 ! おうさま と 、 浮 浪 者 の 一 人 が 小走り に やって 来た 。 |うか|ろう|もの||ひと|じん||こばしり|||きた

「 どうした ん だ ? 「 あの 三 人 を 見付け ました 」 |みっ|じん||みつけ|

「 三 人 ? みっ|じん ── ドクター を 傷つけた 三 人 か 」 どくたー||きずつけた|みっ|じん|

「 そうです 」 そう です

「 どこ に いる ? 「 酔い潰れて る んです 、 上 の ゴミ 捨て場 で 」 よいつぶれて|||うえ||ごみ|すてば|

王様 は 夕 里子 を 見た 。 おうさま||ゆう|さとご||みた

「 一緒に 行き ます か ? いっしょに|いき|| 「 ええ 、 ぜひ ! 夕 里子 は 、 王様 と 一緒に 地下 街 を 通り 、 出口 の 一 つ から 、 地上 へ と 出た 。 ゆう|さとご||おうさま||いっしょに|ちか|がい||とおり|でぐち||ひと|||ちじょう|||でた

「 あの ビル の 裏 です 」 |びる||うら|

案内 さ れて 、 出た の は 、 ゴミ の 袋 が 、 山 を なして 、 悪臭 の ひどい 路地 だった 。 あんない|||でた|||ごみ||ふくろ||やま|||あくしゅう|||ろじ| 夕 里子 が 思わず 鼻 を 手 で 押えた 。 ゆう|さとご||おもわず|はな||て||おさえた

「 待って いらっしゃい 」 まって|

と 、 王様 は 言った 。 |おうさま||いった 「 今 、 ここ へ 連れて 来 ましょう 」 いま|||つれて|らい|

夕 里子 は 少し 後退 した 。 ゆう|さとご||すこし|こうたい| やはり 自分 は この 「 仲間 」 に は 入れ ない 、 と 思った 。 |じぶん|||なかま|||いれ|||おもった

「 やめて くれ ! 「 勘弁 して ! かんべん| と 、 悲鳴 が 聞こえて 、 十 人 近い 浮 浪 者 たち に 引きずら れる ように して 、 夕 里子 を 襲った 三 人 が 、 連れて 来 られた 。 |ひめい||きこえて|じゅう|じん|ちかい|うか|ろう|もの|||ひきずら||||ゆう|さとご||おそった|みっ|じん||つれて|らい|

「 この 男 たち です ね 」 |おとこ|||

と 王様 が 訊 く 。 |おうさま||じん|

「 はい 。 間違い あり ませ ん 」 まちがい|||

三 人 は 、 地面 に 倒れた きり 、 起き上る 元気 も ない 様子 で 、 顔 だけ を 上げた 。 みっ|じん||じめん||たおれた||おきあがる|げんき|||ようす||かお|||あげた

「 あ ── いけ ねえ 、 あの 娘 だ ! ||||むすめ| と 、 這って 逃げよう と する が 、 たちまち 引き戻さ れて しまう 。 |はって|にげよう|||||ひきもどさ||

「 訊 く こと が ある のだ 」 じん|||||

と 王様 は 言った 。 |おうさま||いった 「 なぜ 、 この 娘 さん を 襲った ? ||むすめ|||おそった 「 金 が …… 欲しかった んだ 」 きむ||ほしかった|

と 一 人 が 、 弱々しい 声 で 答える 。 |ひと|じん||よわよわしい|こえ||こたえる

「 本当の こと を 言え ! ほんとうの|||いえ 王様 の 言葉 は 、 あたかも 、 本物 の それ の ように 、 厳しく 響き渡った 。 おうさま||ことば|||ほんもの|||||きびしく|ひびきわたった

「 言い ます よ 」 いい||

一 人 が 投げやりな 口調 で 、「 隠し とく ほど の 義理 も ねえ んだ から 」 ひと|じん||なげやりな|くちょう||かくし||||ぎり||||

「 何 を 隠す んだ ? なん||かくす| 「 頼ま れた んです よ 。 たのま||| 金 を もらって 。 きむ|| この 娘 の バッグ を かっぱ ら えと 」 |むすめ||ばっぐ||||

「 ついでに 乱暴 して 来れば 、 一 人 一万 円 やる と 言わ れて ね 。 |らんぼう||くれば|ひと|じん|いちまん|えん|||いわ|| 楽しんで 金 が 入る なら いい 話 だ と 思って ……」 たのしんで|きむ||はいる|||はなし|||おもって

「 頼んだ の は 、 誰 ? たのんだ|||だれ と 夕 里子 が 前 へ 出て 訊 いた 。 |ゆう|さとご||ぜん||でて|じん|

「 名前 は 知ら ねえ よ 」 なまえ||しら||

一 人 が 、 ふてくされた ように 答える 。 ひと|じん||||こたえる

「 どんな 男 ? |おとこ 夕 里子 が 訊 く と 、 その 浮 浪 者 は 、 目 を パチクリ さ せた 。 ゆう|さとご||じん||||うか|ろう|もの||め||||

「 男 じゃ ねえ よ 。 おとこ||| 女 だった ぜ 」 おんな||

割と 大変な の ね 、 空 巣 って の も 。 わりと|たいへんな|||から|す|||

珠美 は 、 額 の 汗 を 拭った 。 たまみ||がく||あせ||ぬぐった

何しろ 素人 の (? なにしろ|しろうと| ) 空 巣 である 。 から|す| 捜す 物 も はっきり し ない ので は 、 一向に はかどら ない の も 当然 。 さがす|ぶつ|||||||いっこうに|||||とうぜん

しかし 、 引出し や 押入れ を 調べる こと 自体 は 、 そう 苦労で は なかった 。 |ひきだし||おしいれ||しらべる||じたい|||くろうで|| あまり 感心 した こと で は ない が 、 覗き見 的 楽し さ も ある 。 |かんしん|||||||のぞきみ|てき|たのし|||

しかし 、 総 て を 、 気付か れ ない ように 、 元通りに して おく 、 と いう の が 、 想像 も して い ない 大 仕事 であった 。 |そう|||きづか||||もとどおりに|||||||そうぞう|||||だい|しごと|

考えて みれば 、 空 巣 は 捜した 後 は そのまま めちゃくちゃで いい のだ から 、 楽である 。 かんがえて||から|す||さがした|あと|||||||らくである

「 いい なあ 、 空 巣 は 」 ||から|す|

と 変な こと を 羨 し がり ながら 、 押入れ の 奥 を かき回して いる と ……。 |へんな|||うらや||||おしいれ||おく||かきまわして||

「 あれ ? ふと 、 手 が 止まった 。 |て||とまった ── バッグ である 。 ばっぐ| そう 変った バッグ で は ない 。 |かわった|ばっぐ||| しかし 、 どうにも 場違いな 所 に 置いて あって 、 目 に ついた 。 ||ばちがいな|しょ||おいて||め||

しかも 、 布 を かけて 、 まるで 隠して ある ように 見えた のである 。 |ぬの||||かくして|||みえた|

取り出して みて 、 珠美 は 、 しばらく それ を 眺めて いた 。 とりだして||たまみ|||||ながめて|

「 この バッグ …… 似て る なあ 」 |ばっぐ|にて||

と 呟く 。 |つぶやく

珠美 は 、 割合い に バッグ に も うるさい 。 たまみ||わりあい||ばっぐ|||

殺さ れた 片瀬 紀子 が 持って いた バッグ の 一 つ に 、 良く 似て いる のである 。 ころさ||かたせ|としこ||もって||ばっぐ||ひと|||よく|にて||

「 中 は 空か な 」 なか||あか|

開けて みて 、 驚いた 。 あけて||おどろいた あれこれ と 詰まって いる のだ 。 ||つまって|| ハンカチ 、 化粧 品 、 タオル まで ある 。 はんかち|けしょう|しな|たおる|| 手帳 が 出て 来た 。 てちょう||でて|きた

開いて みる と 、 予定 欄 など に 書き込み が ある 。 あいて|||よてい|らん|||かきこみ|| ── おかしい 、 こんな 手帳 を 入れた バッグ が 、 なぜ 、 こんな 押入れ の 奥 に 入って いる の か ? ||てちょう||いれた|ばっぐ||||おしいれ||おく||はいって|||

手帳 の 最後 の ページ を 見た 珠美 は 、 啞然 と した 。 てちょう||さいご||ぺーじ||みた|たまみ||啞ぜん|| 名前 が 記して ある 。 なまえ||しるして| 住所 と 電話 も 。 じゅうしょ||でんわ|

「 片瀬 紀子 」 と 名 が ある のだ 。 かたせ|としこ||な|||

これ は 、 殺さ れた 片瀬 紀子 が 奪わ れた バッグ な のだ ! ||ころさ||かたせ|としこ||うばわ||ばっぐ|| つまり 、 殺した の は ……。 |ころした||

襖 が 、 ガラリ と 開いて 、 珠美 は 飛び上り そうに なった 。 ふすま||がらり||あいて|たまみ||とびあがり|そう に|

「 何 を して る の ? なん|||| 安東 岐子 が 、 立って いた 。 あんどう|しこ||たって|

そして 、 バッグ に 気付く と 、 険しい 目 で 、 珠美 を 見据えた 。 |ばっぐ||きづく||けわしい|め||たまみ||みすえた

これ は 、 正に 珠美 と して も 計算 外 の 出来事 である 。 ||まさに|たまみ||||けいさん|がい||できごと| This is an uncalculated incident even if it is absolutely beautiful.

お邪魔 して ます 、 と でも 言う のだろう か ? おじゃま|||||いう||

しかし 、 どうも この 場面 に ふさわしい と は 思え なかった 。 |||ばめん|||||おもえ| やはり ここ は 他 に 手 が ない 。 |||た||て||

逃げる んだ ! にげる|

珠美 は 、 バッグ を 岐子 めがけて 投げつける と 、 玄関 へ 向 って 一目散に 突っ走る ── はずだった 。 たまみ||ばっぐ||しこ||なげつける||げんかん||むかい||いちもくさんに|つっぱしる| しかし 、 計算 して い なかった の は 、 座り込んで 、 押入れ の 中 を かき回して いた ので 、 座り 慣れ ない 現代 っ子 、 足 が 痺れて いた こと だった 。 |けいさん||||||すわりこんで|おしいれ||なか||かきまわして|||すわり|なれ||げんだい|っこ|あし||しびれて|||

二 、 三 歩行 って よろける と 、 つまずいて 転んで しまった 。 ふた|みっ|ほこう|||||ころんで| とたん に 、 上 から 安東 岐子 が のしかかって 来る 。 ||うえ||あんどう|しこ|||くる

「 見て しまった の ね ! みて||| どうして ── どうして ──」

安東 岐子 は 、 涙声 に なって いた 。 あんどう|しこ||なみだごえ||| 両手 が 、 珠美 の 首 に かかった 。 りょうて||たまみ||くび|| うつ伏せ に なった まま 、 珠美 は 身動き が 取れ ない 。 うつぶせ||||たまみ||みうごき||とれ|

指 が 、 珠美 の 首 に 食い込んで 来た 。 ゆび||たまみ||くび||くいこんで|きた 珠美 は 声 を 出そう と した が 、 もう それ は 声 に なら なかった 。 たまみ||こえ||だそう|||||||こえ||| 指 は 、 更に 深く 、 食い入って 来た ……。 ゆび||さらに|ふかく|くいいって|きた

もう すぐ 二 時 だ 。 ||ふた|じ|

綾子 は 泣き たく なって 来た 。 あやこ||なき|||きた Ayako came to want to cry. もちろん 、 それ を 予期 して 一 時間 も 前 に 着く ように 、 早く 出て 来た のだ 。 |||よき||ひと|じかん||ぜん||つく||はやく|でて|きた|

いや 、 出て 来た と いえば 、 朝 から 表 に は 出て いる 。 |でて|きた|||あさ||ひょう|||でて| 十二 時 過ぎ に 安東 へ 電話 して 、 待ち合わせる 喫茶 店 の 場所 を 詳しく 教えて もらった 。 じゅうに|じ|すぎ||あんどう||でんわ||まちあわせる|きっさ|てん||ばしょ||くわしく|おしえて|

そこ なら 、 電話 した 場所 から 、 十五 分 も あれば 行け そうだった ので 、 綾子 も 安心 して いた のである 。 ||でんわ||ばしょ||じゅうご|ぶん|||いけ|そう だった||あやこ||あんしん||| そして 、 それ でも 万一 を 考えて 早く そこ へ と 向 った 。 |||まんいち||かんがえて|はやく||||むかい|

それでいて …… 綾子 は また 道 が 分 ら なく なって しまった のだ 。 |あやこ|||どう||ぶん|||||

綾子 は 立ち止まった 。 あやこ||たちどまった 行く も なら ず 、 戻る も なら ず 、 と いう ところ である 。 いく||||もどる||||||| 行けば 行く ほど 、 目的 地 から 遠 去 かり そうで 、 戻れば 戻った で 、 絶対 に もと の 場所 に は 出 ない 性格 (? いけば|いく||もくてき|ち||とお|さ||そう で|もどれば|もどった||ぜったい||||ばしょ|||だ||せいかく ) な のだ から 。

「 もう …… や ん なっちゃ う 」

本当に 泣き たい 気分 だった 。 ほんとうに|なき||きぶん|

誰 か に 道 を 訊 く と いった って ……。 だれ|||どう||じん|||| I told someone to ask the way .... 誰 に 訊 け ば いい だろう ? だれ||じん||||

一 番 いい の は 交番 の お巡りさん だ 。 ひと|ばん||||こうばん||おまわりさん| しかし 、 その 交番 が どこ に ある か 分 ら ない 。 ||こうばん||||||ぶん||

通りがかり の 人 に 訊 く ほど の 度胸 が あれば いい のだ が 。 とおりがかり||じん||じん||||どきょう|||||

と いって 、 お巡りさん に 知り合い は ない し 。 ||おまわりさん||しりあい||| 知り合い ? しりあい ── そう いえば 国友 って 刑事 さん が いた 。 ||くにとも||けいじ|||

交番 の お巡りさん と 刑事 を 一緒に して いい か どう か 。 こうばん||おまわりさん||けいじ||いっしょに||||| 綾子 とて 、 ちょっと 考え ないで は なかった が 、 他 に 誰 も い ない 。 あやこ|||かんがえ|||||た||だれ||| With Ayako, I had not thought for a moment but nobody else.

国友 の 電話 は 、 何 か の とき の ため に 、 と 夕 里子 から 教え られて 手帳 に 書いて あった 。 くにとも||でんわ||なん||||||||ゆう|さとご||おしえ||てちょう||かいて|

しかし 、 国友 に 電話 したら 、 安東 と 会う こと を 夕 里子 に 知ら れて しまう ので は ない か ? |くにとも||でんわ||あんどう||あう|||ゆう|さとご||しら|||||| 何しろ 夕 里子 は 、 安東 が 犯人 じゃ ない か なんて 、 とんでもない こと を 考えて いる のだ 。 なにしろ|ゆう|さとご||あんどう||はんにん||||||||かんがえて||

「 でも ── 大丈夫 か 」 |だいじょうぶ|

何も 、 ホテル の 場所 を 訊 くわけ じゃ ない 。 なにも|ほてる||ばしょ||じん||| 待ち合わせ の 喫茶 店 の 場所 さえ 分 れば いい のだ 。 まちあわせ||きっさ|てん||ばしょ||ぶん||| その先 、 どこ で 誰 と 会う か なんて 、 国友 に 分 る はず が ない で は ない か 。 そのさき|||だれ||あう|||くにとも||ぶん||||||||

赤 電話 は 見える 所 に あった 。 あか|でんわ||みえる|しょ|| これ なら 綾子 も 迷わ ず に 辿りつける 。 ||あやこ||まよわ|||たどりつける

決心 して 電話 を かける こと に した 。 けっしん||でんわ|||||

「── 国友 です 」 くにとも|

「 あ 、 あの 、 綾子 です が 。 ||あやこ|| 佐々 本 綾子 」 ささ|ほん|あやこ

「 や あ 、 どうも 。 何 か 用 ? なん||よう 「 あの 、 ちょっと 教えて いただき たい こと が あって ……」 ||おしえて|||||

「 何 だい ? なん| 僕 で 分 る こと なら 」 ぼく||ぶん|||

「 あの …… 私 、 方向 音痴 で 道 に 迷っちゃ った んです 」 |わたくし|ほうこう|おんち||どう||まよっちゃ||

「 お やおや 」

と 国友 は 笑って 、「 どこ へ 行く の ? |くにとも||わらって|||いく| 綾子 は メモ に あった 喫茶 店 の 名前 を 言った 。 あやこ||めも|||きっさ|てん||なまえ||いった

「 ああ 、 そこ なら 知って る 。 |||しって| N ビル の 地下 じゃ ない の ? n|びる||ちか||| 「 そうです ! そう です そこ です ! 綾子 は 嬉しくて 声 を 弾ま せた 。 あやこ||うれしくて|こえ||はずま|

「 で 、 今 、 どこ に いる の ? |いま|||| 綾子 は また 意気消沈 した 。 あやこ|||いきしょうちん|

「 それ が 分 ら なく って ……」 ||ぶん|||

「 そう か 。 迷った とき は そんな もん だ よ な 。 まよった||||||| 手近な ところ に 住所 の 表示 板 が ないかい ? てぢかな|||じゅうしょ||ひょうじ|いた|| 何 町 何の いく つ 、 って いう やつ が 」 なん|まち|なんの||||||

キョロキョロ 見回した 。 |みまわした

「 あ 、 あり ます 。 ええ と 〈×× 町 3─5〉 って 書いて あり ます 」 ||まち||かいて||

「 OK 。 ok ちょっと 待って 」 |まって

しばらく 間 が あった 。 |あいだ|| 綾子 は 腕 時計 を 見た 。 あやこ||うで|とけい||みた もう 二 時 十分である 。 |ふた|じ|じゅうぶんである 安東 は 苛々 し ながら 待って いる かも しれ ない 。 あんどう||いらいら|||まって||||

「── お 待た せ 。 |また| 分 った よ 。 ぶん|| 君 の いる の は バス の 通り だ ね ? きみ|||||ばす||とおり|| You are a bus street, are not you? 「 ええ 、 広い 道 です 」 |ひろい|どう|

「 よし 。 その道 を ね 、 少し 坂 に なって る だ ろ ? そのみち|||すこし|さか||||| 下って 行く んだ 。 くだって|いく| そして 突き当ったら ……」 |つきあたったら

三 回 、 説明 を くり返して もらって 、 メモ を 取る と 、 やっと 綾子 に も 自信 が ついて 来た 。 みっ|かい|せつめい||くりかえして||めも||とる|||あやこ|||じしん|||きた

「 どうも すみ ませ ん でした 」

「 いや 、 いい んだ 。 僕 も 割と 方向 感覚 の ない 方 で ね 。 ぼく||わりと|ほうこう|かんかく|||かた||