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盾の勇者成りがり02, 盾の勇者の成り上がり 02 Chapter 05 (2)

盾 の 勇者 の 成り 上がり 02 Chapter 05 (2)

ビッチ は 馬車 から 騎竜 を 外し 、 その 背中 に 元康 が 乗る 。

「 勝負 は 村 の 外周 を 三 周 ! 村人 が 地面 に 線 を 引いて 即席 の コース を 作る 。

「 ナオフミ 様 、 頑張って ください ね 。 フィーロ も ナオフミ 様 を 頼みました よ ? 「 ああ 」

「 グア ! 「 絶対 に 勝って やる ! 領主 が 俺 達 の 前 に 立って 手 を 高く 上げる 。 あれ を 降ろしたら 始まり の 合図 だ 。

「 それでは …… 始め ! バッ と 降ろさ れた 手 に 合わせて 俺 達 は 飛び出した !

よし ! スタート ダッシュ で は 殆ど 同時 だ 。

ドッドッドッド と 、 フィーロ は 軽快に 走って いく 。

ん ? 基本 速度 じゃ 元康 の 騎竜 より も 遥かに 速い んじゃ ない か ?

こりゃ あ 余裕 だ な 。 振り向いて いられる 余裕 が ある ぞ 。 「 何 して んだ ! ほら ! もっと 速く 走れ ! 元康 が 必死に 騎竜 に 命じて いる 。 騎竜 も フィーロ に 負け じ と 体 を 前 に 出す が 、 それ でも 敵 わ ない 。

スペック 的に は 完全に 有利だ 。

あえて 言う の なら オートバイ 相手 に 原 付 バイク で 争って いる ような 状態 だ 。 もちろん 俺 が オートバイ で 元康 が 原 付 だ 。 それ くらい 速度 に 差 が ある 。

「 グアアアアアアアア ! フィーロ も 余裕 を 見せて 鳴き ながら 走って いく 。 文字通り バイク の ように 風 を 切り 、 辺り の 景色 が 高速で 流れて いる 。 そうして 一 周 目 は 五 馬 身 くらい 引き離して 終了 した 。

「 くっ! ビッチ が 悔し そうに 声 を 上げて いる の が 見える 。

はは は 、 爽快だ な 。 余裕 に も 程 が ある 。

と 、 村 の 外周 で 観衆 の 視界 に 入り 掛かった 頃 。

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 我が 前 に 穴 を 作れ 』

「 アースホール ! 城 の 騎士 が コース アウト し ない か 見張って いる 所 で 、 道 に 穴 を 開け や がった !

「 卑怯 だ ぞ ! プイッ と 騎士 は 顔 を 逸ら して 素知らぬ 顔 を する 。

ズルッ と フィーロ が 転んで 落馬 し かける 。

「 グア !?」

「 チャンス ! 「 何 が チャンス だ 。 ふざけ ん な ! 元康 の 野郎 、 知った こと で は ない と いう ように 走り去って い きや がる 。

しかも だ 。

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 上げよ 』

「 ファスト ・ スピード ! 速度 アップ の 援護 魔法 を かけて もらって や がる 。 しかも フィーロ が こけた 穴 は 、 証拠 隠滅 と ばかり に 魔法 で 隠し や がった 。 どこ まで 姑息な んだ よ 、 この 国 の 連中 は !

「 フィーロ 、 あんな 奴 に 負けて たまる か ! いく ぞ ! 「 グアアアアアアアアアアア ! 俺 の 言葉 に フィーロ は ぐ ぐ ぐっと 立ち上がった 。 やがて まだ 行ける と 口 に する が 如く 闘志 を 燃やし 、 先ほど より も 遥かに 速い 速度 で 走り出した 。

あっという間 に 元康 の 横 を 通り過ぎる 。

「 何 !?」

卑怯 な 事 を さ れたって 、 負けて たまる か ! 俺 の 想い に 応える ように フィーロ は 力強く 走り 、 援護 魔法 を 受けた 騎竜 の 速度 を ものともせず 二 周 目 に 入り 、 どうにか 遅れ を 取り戻す 。

丁度 、 村人 共 が 見える 部分 で 抗議 の 意思 を 示し ながら 俺 は 騎士 を 指差す 。

異変 を 察知 した 村人 が 回り込み を 始めた 。

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 落とせ ! 「 ファスト ・ スピード ダウン ! 「 グア !?」

目に見えて フィーロ の 速度 が 下がる 。

「 いい加減に しろ よ 、 お前 ! 騎士 を 含めて 関係 者 が そっぽ を 向く 。

元康 が 遅れた 俺 達 に 追いついて 通り過ぎて いく 。

幾ら なんでも 気付いて んだ ろ ? あの 馬鹿 。 どこ まで 卑怯 な んだ よ !

くそ …… このまま やられっぱなし と いう の は 非常に 腹 が 立つ 。 どうにか する 手段 は ない か ?

「 グアアアア ! さすが に フィーロ も 腹 が 立った の か 怒り を 露 わに して 深く 頭 を 下げ 、 前傾 姿勢 で 翼 を 広げる 。

お ! 速度 が 上がった 。 その代わり に 曲がる の が 難しく なった 。 カーブ で 端 の 方 へ 寄って しまう 。

だが 、 俺 の ゲーム 経験 を 侮って もらって は 困る な ! バイク 系 の ゲーム の 体重 を 掛けて 曲がる と いう の を 再現 して いる んだ よ !

俺 は フィーロ の コーナリング を アシスト する ため 、 コーナー の 内側 に 向けて 全体 重 を 掛ける 。 フィーロ の 横っ腹 に ぶら下がって いる ように 見える だろう な 。 だが 、 俺 の お陰 で フィーロ は 速度 を 維持 した まま 曲がる こと に 成功 した 。

よし ! 三 周 目 に 入る と 同時に 元康 の 後ろ に 追いついた 。

後 は 最 高速で 追い抜く だけ 。

騎士 の 奴 、 村人 に 見張られて 妨害 が でき そうに ない し 、 これ で 勝つ こと が でき そう ── と いう ところ で 騎士 が 村人 に 剣 を 抜いて 、 逆 切れ して 追い散らした 。 もはや 支離滅裂だ な 。 また 騎士 が 妨害 を しよう と 魔法 を 唱え 始めて いる 。

そっち が その 気 なら こっち に も 考え が ある 。

「 エアストシールド ! 騎士 が 先ほど より も 大きな 穴 を 作りだした ので 、 その 場所 に 俺 は 盾 を 召喚 した 。

「 行け ! フィーロ 、 そして その 速 さ を 見せつける んだ ! 「 グアアアアアアアアアアアアアア ! よし 、 余裕 だ な 。 その ついで に ──。

「 フィーロ ! 「 グア ! 若干 コース アウト して 妨害 した 騎士 の 前 に 着地 し 、 俺 は 騎士 を 睨みつける 。

「 う 、 あ ……」

フィーロ も 妨害 に 怒り を 露 わに して 騎士 を 睨む 。 騎士 の 目 に は 、 さながら 俺 が 世紀 末 覇者 に 見えた かも しれ ん な 。

ズル を した 騎士 を フィーロ の 後ろ足 で ゲシっと 蹴り 飛ばして 昏倒 さ せる 。 「 ゴー ! フィーロ が 高らかに 鳴き 、 俺 達 は 圧勝 と いう 形 で ゴール した 。

「 ま 、 負けた ……」「 卑怯 よ ! 不正 よ ! やり 直し を 要求 する わ ! 「 卑怯 ? どっち が だ よ 。 お前 の 指示 じゃ ない の か ? 俺 は 昏倒 さ せた 騎士 を 指差して 告げる 。

「 何の 事 よ ? 「 そこ に いる 奴 が レース 中 に 妨害 工作 を して いやがった んだ よ 」

「 そう だった の か !?」

元康 が 知ら なかった か の よう に 今更 に なって 言い放つ 。

チャンス ! って 言った の は 忘れて ない ぞ !

「 そんな 事 知ら ない わ 。 彼等 が 勝手に やった こと だ もの 。 そんな 事 より も 不正 を 罰し なきゃ ! 自分 達 が 負けたら ズルって か ? ふざけ ん な 。

「…… とても そう は 思えません でした 」 領主 の 言葉 に 、 村人 達 が 揃って 頷く 。 「 盾 の 勇者 様 の 証言 通り 、 コース 上 に 魔法 の 形跡 が ある ぜ ? しかも 俺 達 を 騎士 が 追い払おう と した から 証言 も バッチリ だ 」

そう 、 騎士 を 蹴り 飛ばした の は 証拠 隠滅 を 妨害 する ため だ 。 派手に 吹き飛ばした から 、 すぐに 村人 が 駆けつけて きた 。 コース 上 に ある 大きな 穴 が あれば 誰 だって 犯人 が わかる はずだ 。

「 た 、 盾 の 勇者 が 証拠 を でっちあげた の よ ! 「 それ は ない わ ね 」

ん ? 魔法 屋 が 人ごみ から 現れて 注意 する 。 そうい や この 村 に 孫 が いる んだった か 。

「 盾 の 勇者 様 の 魔法 適性 は 回復 と 援護 よ ? 一緒に いる 子 だって 光 と 闇 の 魔法 系 だ し 、 土 を 弄る 魔法 は でき ない わ ね 」

「 たかが 魔法 屋 が 何 を 偉 そうに ! と 、 ビッチ が 言った ところ で 、 忍者 集団 が 取り囲む 。

「…… どうやら 槍 の 勇者 の 支持 者 が 不正 を 行った の は 明白 。 ご 同行 を 願いましょう 」 元康 が ビッチ を 宥 め ながら 言い放つ 。 「 今回 は 俺 達 の 負け だ 。 約束 通り この 村 を 領地 に する の は 無し だ な 」

「 ああ 。 さっさと 出て いけ 」

「 次 は 負け ない 」

「 負けっぱなし が 言う な 。 卑怯 者 ! 「 俺 は 卑怯 者 じゃ ない ! 「 槍 の 勇者 殿 、 喧嘩 は お やめ ください 。 盾 の 勇者 殿 も 」

忍者 集団 に 諭さ れ 、 元康 達 は 去って いく 。

いや 、 騎竜 が 置いて いかれて いる 。 「 盾 に 負けた 奴 なんて いら ない 。 捨てて いき なさい 」

キュウ …… と 、 悲しげな 声 を 上げて 騎竜 は その 場 に 放置 さ れた 。

なんか 、 可哀想だ な 。 別に コイツ が 悪い わけじゃ ない だろう に 。

すると そこ に 村 の 連中 が 騎竜 を 宥めて 手綱 を 持つ 。

「 一応 、 村 で 預かる と しましょう 」 「 そう です ね 」 負けた 騎竜 は トボトボ と 村 の 連中 に 連れて いか れた 。 「 さて 、 勝った 報酬 を 寄越せ 」

「 ナオフミ 様 、 いきなり です か ? 「 盾 の 勇者 様 は この 村 の 恩人 です 。 あんな 重税 を 掛けられれば この 村 は 破滅 して しまう ところ でした 。 しかし 、 数 日 待って くださいません か ? その他 に 金銭 を お 渡し します ので 」 「 復興 に 金 を 使って いる んじゃ ない の か ? 「…… 痛い ところ を 突きます ね 」 「 復興 費 を 削って 渡さ れたら 意味 が ない だろう 。 そっち は 気持ち だけ 受け取る 」

変な 因縁 を つけられたら 困る 。 タダ で さえ 悪 名 が 轟 とどろいて いる んだ 。 この 村 から 金 を 巻き上げた と か 言わ れたら たまった もの じゃ ない 。

「 では 、 確実に 便利な 物 を お 渡し する ので …… 勇者 様 は 行商 に 興味 は ありません かな ? 「 行商 ? 「 ええ 、 村 から 村 、 町 から 町 へ 商品 を 売り 歩く 商売 です 。 勇者 様 は 薬 や 素材 を 売って 金銭 を 稼いで おら れる ご 様子 。 興味 が お あり なら その 類 で お 手伝い できる か と 思います 」 「 ふむ 」 行商 か 。 つまり 薬 を 買い取って もらう ので は なく 、 売れる と いう 利点 が ある の か 。

これ は 考え なければ いけない な 。

今 まで は 生産 者 側 であった が 、 販売 者 側 に も 回れる ように なる 。 これ は 大きな 利点 だろう 。

「 幸いに も 盾 の 勇者 様 に は 俊足 で 健脚 の フィロリアル が おります 。 馬車 と 、 行商 を する 上 で 役 に 立つ 商業 通行 手形 を 進呈 致します 」 「 商業 通行 手形 ? 「 はい 。 この 国 で は 行商 を する 時 、 各 々 の 村 、 町 に 着いたら 一定 の 金銭 を その 地域 の 領主 に 支払わ ねば なりません 。 そこ で 私 の 判 を 押した 商業 通行 手形 の 出番 です 。 これ さえ あれば 基本 的に は 金銭 を 払う 必要 は なくなります 。 どうか お 役 に 立てて ください 」

考えて みれば 、 ここ は メルロマルク 国 の 近く に ある 農村 だ 。 交通 の 便 も 良い ので 、 ここ の 領主 を して いる と いう の は それ だけ 権力 や 威厳 も 必要 と なる 。 俺 が 波 で 被害 を 最小 限 に 抑えた の は リユート 村 の 連中 の 耳 に 入って いる 。 悪 名 が 響き 、 王様 に 睨まれて も 村人 の ため に 苦渋 の 決断 を 背負わ さ れた 。 横暴な 国 から の 暴挙 を 俺 が 撥ね除けた わけだ から 協力 的に も なって くれる と いう こと か 。

「…… アナタ の 悪 名 が 商売 の 障害 に なら ない ように と の 配慮 です 。 これ で 金銭 を 稼ぎ やすく なる か と 」

善意 的に 受け取って くれて いる 。 だから 俺 は 素直に 感謝 する 。

「 感謝 する 。 使わ せて もらう 」

確かに これ は 相当 便利な 報酬 だ 。 しかも 近々 フィーロ に 馬車 を 作って くれる らしい 。

良かった な 。 荷車 じゃ なくて 。

「 ま 、 とりあえず は 復興 作業 に 戻る か 」

「 はい 」

村 の 連中 は ラフタリア と 一緒に 頷き 、 復興 作業 に 戻って いった 。

「 グア ♪」

自分 用 の 荷車 を 用意 されて フィーロ は 機嫌 が 良い 。 「 よし ! 今日 は 森 へ 出発 だ ! 「 はい ! 「 グア ! 俺 が 行く 方向 を 指差す と 、 フィーロ は 元気 良く 荷車 を 引き出した 。

ゴトンゴトン !

と 、 の ん 気 な ……。

ゴトンゴトンゴトン ! ガラガラガラガラガラ !

徐々に 車輪 から 大きな 音 を 響かせ 、 景色 が 高速で 通り過ぎて いく 。

「 速い ! 速い ! スピード 落とせ ! 「 グア ……」

速度 を 落とし 、 フィーロ は トコトコ と 不満 そうに 鳴き ながら 歩く 。

「 なんか 気持ち 悪く なって きました ……」 ラフタリア が 乗り物酔い を した の か 、 ぐったり して 荷車 で 横 に なって いる 。 「 大丈夫 か ? 「 ええ …… でも 、 あんまり 揺らさ ないで ……」

「 そう か 、 ラフタリア は 乗り物酔い を する んだ な 」

「…… みたいです 。 ナオフミ 様 は 大丈夫な のです か ? 「 俺 は 酔った こと が ない んだ よ なぁ ……」

酒 も 然ること ながら 乗り物酔い と も 無縁だ 。

小学生 の 頃 、 学校 の 遠足 で バス に 乗った 時 、 リュック に 入れた 漫画 と ライトノベル を 読んで いたら 、 隣 の 座席 の 奴 が 尽く 気持ち 悪い と 俺 の 方 を 見 ながら 言って 、 席 替え を さ せられた 覚え が ある 。 その他 、 親戚 に 会い に 行く ため に 丸一 日 の 船旅 で 家族 全員 が 船酔い で ダウン する 中 、 船 内 で 携帯 ゲーム を やって いた 覚え も ある 。

「 まあ ゆっくり と して いろ 。 フィーロ と 俺 が 目的 地 まで 運んで やる から 」

「 お 言葉 に 甘えて 休ま せて もらいます ……」 「 グアアアアアアアア ! 「 あの …… もっと ゆっくり 走って ください 」

ラフタリア の 声 が 耳 に 入ら ない くらい 晴れやかな 様子 で フィーロ は 走って いく のだった 。

その後 、 ラフタリア は 道中 で リバース し 、 森 へ 辿 たどり着いた 頃 に は 限界 を 迎えて いた 。

「 う …… う う ……」

青い 顔 を して 唸る ラフタリア に やり すぎた と 反省 する 。

「 すま ん 」

「 グア ……」

それ は フィーロ も 同じ ようで 、 申し訳な さ そうに 意気消沈 して いる 。

「 だ 、 大丈夫です …… よ 」

「 とても そう は 見え ない 。 どこ か で 休める と 良い んだ が 」

「 あ 、 盾 の 勇者 様 です ね 」

森 の 近く に は 小屋 が あり 、 そこ から 木 こり らしき 村人 が 出て くる 。

「 ああ 、 村 の 連中 に 頼まれて な 。 木材 を 貰い に きた のだ が 」

「 あの …… お 連れ の 方 は 大丈夫です か ? 「 たぶん 、 大丈夫じゃ ない と 思う 。 休ま せて おきたい のだ が 良い 場所 は ない か ? 「 では こちら に 寝床 が ある ので 、 寝かせましょう 」 木 こり が 案内 する 小屋 の 方 へ 向かって 、 俺 は ラフタリア に 肩 を 貸して 歩き 、 ベッド に 寝か せた 。 「 フィーロ が 戦える 範囲 の 敵 を 軽く 相手 に する 程度 に して 、 今日 は 荷物 運び に 従事 する と しよう 」

ラフタリア は 乗り物 に 弱い みたいだ し 、 しばらく 慣れる まで は 荷車 で 爆走 する の は やめよう 。

「 と いう わけだ 。 申し訳ない が 荷車 に 材木 を 載せて おいて くれ 。 しばらく したら もう 一 度 来る 」

「 あ 、 はい 」

フィーロ は 荷車 を 外されて 、 小屋 の 外 から こちら の 様子 を 眺めて いた 。 「 じゃあ 行く ぞ 」

「 グア ! 元康 を アレ だけ 蹴り 飛ばした んだ 。 攻撃 力 は 相当 期待 できる 。

軽く 森 の 中 を 回って こよう 。

森 の 中 に 入る と 意外に も 魔物 と は 遭遇 し なかった 。 静かな 森 の 中 を フィーロ と 一緒に 歩いて 回る 。 森林 浴 と は 言う けれど 、 なんとなく 空気 が 澄んで いる ような 気 が した 。

そう いえば この 世界 に 来て 、 こんな ゆっくり と 景色 を 見て 回る ような 真似 を した 覚え が ない 。

原因 は 何 だろう 。 あの 元康 が 苦痛 に 歪む 顔 を 見たら 全て が 吹き飛んで しまった 。

…… 違う 。

ラフタリア が 信じて くれた から だ と 思う 。

その ラフタリア が 乗り物酔い で ここ に いない 。 なんとなく 寂しい 。

考えて みれば まだ 半月 、 三 週間 くらい しか 一緒に いない のに 、 もう 一緒に いる の が 当たり前の ような 関係 に なって いる 。 小さかった 頃 の ラフタリア が もう 随分 前 の ように さえ 感じる 。

ラフタリア の 親 代わり に なる と 決めた は 良い が 、 何 を すれば 良い だろう 。 もちろん 波 の 事 も ある 。 まだ 一 ヶ月 以上 先 だ が …… どうした もの か 。

「 乗り物酔い に 効く 薬 と か あれば 良い んだ けど な 」


盾 の 勇者 の 成り 上がり 02 Chapter 05 (2) たて||ゆうしゃ||なり|あがり|chapter Rise of the Shield Heroes 02 Chapter 05 (2)

ビッチ は 馬車 から 騎竜 を 外し 、 その 背中 に 元康 が 乗る 。 ||ばしゃ||きりゅう||はずし||せなか||もとやす||のる

「 勝負 は 村 の 外周 を 三 周 ! しょうぶ||むら||がいしゅう||みっ|しゅう 村人 が 地面 に 線 を 引いて 即席 の コース を 作る 。 むらびと||じめん||せん||ひいて|そくせき||こーす||つくる

「 ナオフミ 様 、 頑張って ください ね 。 |さま|がんばって|| フィーロ も ナオフミ 様 を 頼みました よ ? |||さま||たのみ ました| 「 ああ 」

「 グア ! 「 絶対 に 勝って やる ! ぜったい||かって| 領主 が 俺 達 の 前 に 立って 手 を 高く 上げる 。 りょうしゅ||おれ|さとる||ぜん||たって|て||たかく|あげる あれ を 降ろしたら 始まり の 合図 だ 。 ||おろしたら|はじまり||あいず|

「 それでは …… 始め ! |はじめ バッ と 降ろさ れた 手 に 合わせて 俺 達 は 飛び出した ! ||おろさ||て||あわせて|おれ|さとる||とびだした

よし ! スタート ダッシュ で は 殆ど 同時 だ 。 すたーと|だっしゅ|||ほとんど|どうじ|

ドッドッドッド と 、 フィーロ は 軽快に 走って いく 。 ||||けいかいに|はしって|

ん ? 基本 速度 じゃ 元康 の 騎竜 より も 遥かに 速い んじゃ ない か ? きほん|そくど||もとやす||きりゅう|||はるかに|はやい|||

こりゃ あ 余裕 だ な 。 ||よゆう|| 振り向いて いられる 余裕 が ある ぞ 。 ふりむいて|いら れる|よゆう||| 「 何 して んだ ! なん|| ほら ! もっと 速く 走れ ! |はやく|はしれ 元康 が 必死に 騎竜 に 命じて いる 。 もとやす||ひっしに|きりゅう||めいじて| 騎竜 も フィーロ に 負け じ と 体 を 前 に 出す が 、 それ でも 敵 わ ない 。 きりゅう||||まけ|||からだ||ぜん||だす||||てき||

スペック 的に は 完全に 有利だ 。 |てきに||かんぜんに|ゆうりだ

あえて 言う の なら オートバイ 相手 に 原 付 バイク で 争って いる ような 状態 だ 。 |いう|||おーとばい|あいて||はら|つき|ばいく||あらそって|||じょうたい| もちろん 俺 が オートバイ で 元康 が 原 付 だ 。 |おれ||おーとばい||もとやす||はら|つき| それ くらい 速度 に 差 が ある 。 ||そくど||さ||

「 グアアアアアアアア ! フィーロ も 余裕 を 見せて 鳴き ながら 走って いく 。 ||よゆう||みせて|なき||はしって| 文字通り バイク の ように 風 を 切り 、 辺り の 景色 が 高速で 流れて いる 。 もじどおり|ばいく|||かぜ||きり|あたり||けしき||こうそくで|ながれて| そうして 一 周 目 は 五 馬 身 くらい 引き離して 終了 した 。 |ひと|しゅう|め||いつ|うま|み||ひきはなして|しゅうりょう|

「 くっ! ビッチ が 悔し そうに 声 を 上げて いる の が 見える 。 ||くやし|そう に|こえ||あげて||||みえる

はは は 、 爽快だ な 。 は は||そうかいだ| 余裕 に も 程 が ある 。 よゆう|||ほど||

と 、 村 の 外周 で 観衆 の 視界 に 入り 掛かった 頃 。 |むら||がいしゅう||かんしゅう||しかい||はいり|かかった|ころ

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 ちから||こんげん||われ||めいずる 理 を 今一 度 読み 解き 、 我が 前 に 穴 を 作れ 』 り||いまいち|たび|よみ|とき|わが|ぜん||あな||つくれ

「 アースホール ! 城 の 騎士 が コース アウト し ない か 見張って いる 所 で 、 道 に 穴 を 開け や がった ! しろ||きし||こーす|あうと||||みはって||しょ||どう||あな||あけ||

「 卑怯 だ ぞ ! ひきょう|| プイッ と 騎士 は 顔 を 逸ら して 素知らぬ 顔 を する 。 ||きし||かお||はやら||そしらぬ|かお||

ズルッ と フィーロ が 転んで 落馬 し かける 。 ||||ころんで|らくば||

「 グア !?」

「 チャンス ! ちゃんす 「 何 が チャンス だ 。 なん||ちゃんす| ふざけ ん な ! 元康 の 野郎 、 知った こと で は ない と いう ように 走り去って い きや がる 。 もとやす||やろう|しった||||||||はしりさって|||

しかも だ 。

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 ちから||こんげん||われ||めいずる 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 上げよ 』 り||いまいち|たび|よみ|とき|かれ||もの||そくど||あげよ

「 ファスト ・ スピード ! |すぴーど 速度 アップ の 援護 魔法 を かけて もらって や がる 。 そくど|あっぷ||えんご|まほう||||| しかも フィーロ が こけた 穴 は 、 証拠 隠滅 と ばかり に 魔法 で 隠し や がった 。 ||||あな||しょうこ|いんめつ||||まほう||かくし|| どこ まで 姑息な んだ よ 、 この 国 の 連中 は ! ||こそくな||||くに||れんちゅう|

「 フィーロ 、 あんな 奴 に 負けて たまる か ! ||やつ||まけて|| いく ぞ ! 「 グアアアアアアアアアアア ! 俺 の 言葉 に フィーロ は ぐ ぐ ぐっと 立ち上がった 。 おれ||ことば|||||||たちあがった やがて まだ 行ける と 口 に する が 如く 闘志 を 燃やし 、 先ほど より も 遥かに 速い 速度 で 走り出した 。 ||いける||くち||||ごとく|とうし||もやし|さきほど|||はるかに|はやい|そくど||はしりだした

あっという間 に 元康 の 横 を 通り過ぎる 。 あっというま||もとやす||よこ||とおりすぎる

「 何 !?」 なん

卑怯 な 事 を さ れたって 、 負けて たまる か ! ひきょう||こと|||れた って|まけて|| 俺 の 想い に 応える ように フィーロ は 力強く 走り 、 援護 魔法 を 受けた 騎竜 の 速度 を ものともせず 二 周 目 に 入り 、 どうにか 遅れ を 取り戻す 。 おれ||おもい||こたえる||||ちからづよく|はしり|えんご|まほう||うけた|きりゅう||そくど|||ふた|しゅう|め||はいり||おくれ||とりもどす

丁度 、 村人 共 が 見える 部分 で 抗議 の 意思 を 示し ながら 俺 は 騎士 を 指差す 。 ちょうど|むらびと|とも||みえる|ぶぶん||こうぎ||いし||しめし||おれ||きし||ゆびさす

異変 を 察知 した 村人 が 回り込み を 始めた 。 いへん||さっち||むらびと||まわりこみ||はじめた

『 力 の 根源 たる 我 が 命ずる 。 ちから||こんげん||われ||めいずる 理 を 今一 度 読み 解き 、 彼 の 者 の 速度 を 落とせ ! り||いまいち|たび|よみ|とき|かれ||もの||そくど||おとせ 「 ファスト ・ スピード ダウン ! |すぴーど|だうん 「 グア !?」

目に見えて フィーロ の 速度 が 下がる 。 めにみえて|||そくど||さがる

「 いい加減に しろ よ 、 お前 ! いいかげんに|||おまえ 騎士 を 含めて 関係 者 が そっぽ を 向く 。 きし||ふくめて|かんけい|もの||||むく

元康 が 遅れた 俺 達 に 追いついて 通り過ぎて いく 。 もとやす||おくれた|おれ|さとる||おいついて|とおりすぎて|

幾ら なんでも 気付いて んだ ろ ? いくら||きづいて|| あの 馬鹿 。 |ばか どこ まで 卑怯 な んだ よ ! ||ひきょう|||

くそ …… このまま やられっぱなし と いう の は 非常に 腹 が 立つ 。 ||やられ っぱなし|||||ひじょうに|はら||たつ どうにか する 手段 は ない か ? ||しゅだん|||

「 グアアアア ! さすが に フィーロ も 腹 が 立った の か 怒り を 露 わに して 深く 頭 を 下げ 、 前傾 姿勢 で 翼 を 広げる 。 ||||はら||たった|||いかり||ろ|||ふかく|あたま||さげ|ぜんけい|しせい||つばさ||ひろげる

お ! 速度 が 上がった 。 そくど||あがった その代わり に 曲がる の が 難しく なった 。 そのかわり||まがる|||むずかしく| カーブ で 端 の 方 へ 寄って しまう 。 かーぶ||はし||かた||よって|

だが 、 俺 の ゲーム 経験 を 侮って もらって は 困る な ! |おれ||げーむ|けいけん||あなどって|||こまる| バイク 系 の ゲーム の 体重 を 掛けて 曲がる と いう の を 再現 して いる んだ よ ! ばいく|けい||げーむ||たいじゅう||かけて|まがる|||||さいげん||||

俺 は フィーロ の コーナリング を アシスト する ため 、 コーナー の 内側 に 向けて 全体 重 を 掛ける 。 おれ||||||あしすと|||こーなー||うちがわ||むけて|ぜんたい|おも||かける フィーロ の 横っ腹 に ぶら下がって いる ように 見える だろう な 。 ||よこ っ はら||ぶらさがって|||みえる|| だが 、 俺 の お陰 で フィーロ は 速度 を 維持 した まま 曲がる こと に 成功 した 。 |おれ||おかげ||||そくど||いじ|||まがる|||せいこう|

よし ! 三 周 目 に 入る と 同時に 元康 の 後ろ に 追いついた 。 みっ|しゅう|め||はいる||どうじに|もとやす||うしろ||おいついた

後 は 最 高速で 追い抜く だけ 。 あと||さい|こうそくで|おいぬく|

騎士 の 奴 、 村人 に 見張られて 妨害 が でき そうに ない し 、 これ で 勝つ こと が でき そう ── と いう ところ で 騎士 が 村人 に 剣 を 抜いて 、 逆 切れ して 追い散らした 。 きし||やつ|むらびと||みはら れて|ぼうがい|||そう に|||||かつ|||||||||きし||むらびと||けん||ぬいて|ぎゃく|きれ||おいちらした もはや 支離滅裂だ な 。 |しりめつれつだ| また 騎士 が 妨害 を しよう と 魔法 を 唱え 始めて いる 。 |きし||ぼうがい||||まほう||となえ|はじめて|

そっち が その 気 なら こっち に も 考え が ある 。 |||き|||||かんがえ||

「 エアストシールド ! 騎士 が 先ほど より も 大きな 穴 を 作りだした ので 、 その 場所 に 俺 は 盾 を 召喚 した 。 きし||さきほど|||おおきな|あな||つくりだした|||ばしょ||おれ||たて||しょうかん|

「 行け ! いけ フィーロ 、 そして その 速 さ を 見せつける んだ ! |||はや|||みせつける| 「 グアアアアアアアアアアアアアア ! よし 、 余裕 だ な 。 |よゆう|| その ついで に ──。

「 フィーロ ! 「 グア ! 若干 コース アウト して 妨害 した 騎士 の 前 に 着地 し 、 俺 は 騎士 を 睨みつける 。 じゃっかん|こーす|あうと||ぼうがい||きし||ぜん||ちゃくち||おれ||きし||にらみつける

「 う 、 あ ……」

フィーロ も 妨害 に 怒り を 露 わに して 騎士 を 睨む 。 ||ぼうがい||いかり||ろ|||きし||にらむ 騎士 の 目 に は 、 さながら 俺 が 世紀 末 覇者 に 見えた かも しれ ん な 。 きし||め||||おれ||せいき|すえ|はしゃ||みえた||||

ズル を した 騎士 を フィーロ の 後ろ足 で ゲシっと 蹴り 飛ばして 昏倒 さ せる 。 |||きし||||うしろあし||ゲシ っと|けり|とばして|こんとう|| 「 ゴー ! フィーロ が 高らかに 鳴き 、 俺 達 は 圧勝 と いう 形 で ゴール した 。 ||たからかに|なき|おれ|さとる||あっしょう|||かた||ごーる|

「 ま 、 負けた ……」「 卑怯 よ ! |まけた|ひきょう| 不正 よ ! ふせい| やり 直し を 要求 する わ ! |なおし||ようきゅう|| 「 卑怯 ? ひきょう どっち が だ よ 。 お前 の 指示 じゃ ない の か ? おまえ||しじ|||| 俺 は 昏倒 さ せた 騎士 を 指差して 告げる 。 おれ||こんとう|||きし||ゆびさして|つげる

「 何の 事 よ ? なんの|こと| 「 そこ に いる 奴 が レース 中 に 妨害 工作 を して いやがった んだ よ 」 |||やつ||れーす|なか||ぼうがい|こうさく|||||

「 そう だった の か !?」

元康 が 知ら なかった か の よう に 今更 に なって 言い放つ 。 もとやす||しら||||||いまさら|||いいはなつ

チャンス ! ちゃんす って 言った の は 忘れて ない ぞ ! |いった|||わすれて||

「 そんな 事 知ら ない わ 。 |こと|しら|| 彼等 が 勝手に やった こと だ もの 。 かれら||かってに|||| そんな 事 より も 不正 を 罰し なきゃ ! |こと|||ふせい||ばっし| 自分 達 が 負けたら ズルって か ? じぶん|さとる||まけたら|ズル って| ふざけ ん な 。

「…… とても そう は 思えません でした 」 領主 の 言葉 に 、 村人 達 が 揃って 頷く 。 |||おもえ ませ ん||りょうしゅ||ことば||むらびと|さとる||そろって|うなずく 「 盾 の 勇者 様 の 証言 通り 、 コース 上 に 魔法 の 形跡 が ある ぜ ? たて||ゆうしゃ|さま||しょうげん|とおり|こーす|うえ||まほう||けいせき||| しかも 俺 達 を 騎士 が 追い払おう と した から 証言 も バッチリ だ 」 |おれ|さとる||きし||おいはらおう||||しょうげん|||

そう 、 騎士 を 蹴り 飛ばした の は 証拠 隠滅 を 妨害 する ため だ 。 |きし||けり|とばした|||しょうこ|いんめつ||ぼうがい||| 派手に 吹き飛ばした から 、 すぐに 村人 が 駆けつけて きた 。 はでに|ふきとばした|||むらびと||かけつけて| コース 上 に ある 大きな 穴 が あれば 誰 だって 犯人 が わかる はずだ 。 こーす|うえ|||おおきな|あな|||だれ||はんにん|||

「 た 、 盾 の 勇者 が 証拠 を でっちあげた の よ ! |たて||ゆうしゃ||しょうこ|||| 「 それ は ない わ ね 」

ん ? 魔法 屋 が 人ごみ から 現れて 注意 する 。 まほう|や||ひとごみ||あらわれて|ちゅうい| そうい や この 村 に 孫 が いる んだった か 。 そう い|||むら||まご||||

「 盾 の 勇者 様 の 魔法 適性 は 回復 と 援護 よ ? たて||ゆうしゃ|さま||まほう|てきせい||かいふく||えんご| 一緒に いる 子 だって 光 と 闇 の 魔法 系 だ し 、 土 を 弄る 魔法 は でき ない わ ね 」 いっしょに||こ||ひかり||やみ||まほう|けい|||つち||いじる|まほう|||||

「 たかが 魔法 屋 が 何 を 偉 そうに ! |まほう|や||なん||えら|そう に と 、 ビッチ が 言った ところ で 、 忍者 集団 が 取り囲む 。 |||いった|||にんじゃ|しゅうだん||とりかこむ

「…… どうやら 槍 の 勇者 の 支持 者 が 不正 を 行った の は 明白 。 |やり||ゆうしゃ||しじ|もの||ふせい||おこなった|||めいはく ご 同行 を 願いましょう 」 元康 が ビッチ を 宥 \ め ながら 言い放つ 。 |どうこう||ねがい ましょう|もとやす||||ゆう|||いいはなつ 「 今回 は 俺 達 の 負け だ 。 こんかい||おれ|さとる||まけ| 約束 通り この 村 を 領地 に する の は 無し だ な 」 やくそく|とおり||むら||りょうち|||||なし||

「 ああ 。 さっさと 出て いけ 」 |でて|

「 次 は 負け ない 」 つぎ||まけ|

「 負けっぱなし が 言う な 。 まけ っぱなし||いう| 卑怯 者 ! ひきょう|もの 「 俺 は 卑怯 者 じゃ ない ! おれ||ひきょう|もの|| 「 槍 の 勇者 殿 、 喧嘩 は お やめ ください 。 やり||ゆうしゃ|しんがり|けんか|||| 盾 の 勇者 殿 も 」 たて||ゆうしゃ|しんがり|

忍者 集団 に 諭さ れ 、 元康 達 は 去って いく 。 にんじゃ|しゅうだん||さとさ||もとやす|さとる||さって|

いや 、 騎竜 が 置いて いかれて いる 。 |きりゅう||おいて|いか れて| 「 盾 に 負けた 奴 なんて いら ない 。 たて||まけた|やつ||| 捨てて いき なさい 」 すてて||

キュウ …… と 、 悲しげな 声 を 上げて 騎竜 は その 場 に 放置 さ れた 。 ||かなしげな|こえ||あげて|きりゅう|||じょう||ほうち||

なんか 、 可哀想だ な 。 |かわいそうだ| 別に コイツ が 悪い わけじゃ ない だろう に 。 べつに|||わるい||||

すると そこ に 村 の 連中 が 騎竜 を 宥めて 手綱 を 持つ 。 |||むら||れんちゅう||きりゅう||なだめて|たづな||もつ

「 一応 、 村 で 預かる と しましょう 」 「 そう です ね 」 負けた 騎竜 は トボトボ と 村 の 連中 に 連れて いか れた 。 いちおう|むら||あずかる||し ましょう||||まけた|きりゅう||とぼとぼ||むら||れんちゅう||つれて|| 「 さて 、 勝った 報酬 を 寄越せ 」 |かった|ほうしゅう||よこせ

「 ナオフミ 様 、 いきなり です か ? |さま||| 「 盾 の 勇者 様 は この 村 の 恩人 です 。 たて||ゆうしゃ|さま|||むら||おんじん| あんな 重税 を 掛けられれば この 村 は 破滅 して しまう ところ でした 。 |じゅうぜい||かけ られれば||むら||はめつ|||| しかし 、 数 日 待って くださいません か ? |すう|ひ|まって|ください ませ ん| その他 に 金銭 を お 渡し します ので 」 「 復興 に 金 を 使って いる んじゃ ない の か ? そのほか||きんせん|||わたし|し ます||ふっこう||きむ||つかって||||| 「…… 痛い ところ を 突きます ね 」 「 復興 費 を 削って 渡さ れたら 意味 が ない だろう 。 いたい|||つき ます||ふっこう|ひ||けずって|わたさ||いみ||| そっち は 気持ち だけ 受け取る 」 ||きもち||うけとる

変な 因縁 を つけられたら 困る 。 へんな|いんねん||つけ られたら|こまる タダ で さえ 悪 名 が 轟 とどろいて いる んだ 。 ただ|||あく|な||とどろき||| この 村 から 金 を 巻き上げた と か 言わ れたら たまった もの じゃ ない 。 |むら||きむ||まきあげた|||いわ|||||

「 では 、 確実に 便利な 物 を お 渡し する ので …… 勇者 様 は 行商 に 興味 は ありません かな ? |かくじつに|べんりな|ぶつ|||わたし|||ゆうしゃ|さま||ぎょうしょう||きょうみ||あり ませ ん| 「 行商 ? ぎょうしょう 「 ええ 、 村 から 村 、 町 から 町 へ 商品 を 売り 歩く 商売 です 。 |むら||むら|まち||まち||しょうひん||うり|あるく|しょうばい| 勇者 様 は 薬 や 素材 を 売って 金銭 を 稼いで おら れる ご 様子 。 ゆうしゃ|さま||くすり||そざい||うって|きんせん||かせいで||||ようす 興味 が お あり なら その 類 で お 手伝い できる か と 思います 」 「 ふむ 」 行商 か 。 きょうみ||||||るい|||てつだい||||おもい ます||ぎょうしょう| つまり 薬 を 買い取って もらう ので は なく 、 売れる と いう 利点 が ある の か 。 |くすり||かいとって|||||うれる|||りてん||||

これ は 考え なければ いけない な 。 ||かんがえ|||

今 まで は 生産 者 側 であった が 、 販売 者 側 に も 回れる ように なる 。 いま|||せいさん|もの|がわ|||はんばい|もの|がわ|||まわれる|| これ は 大きな 利点 だろう 。 ||おおきな|りてん|

「 幸いに も 盾 の 勇者 様 に は 俊足 で 健脚 の フィロリアル が おります 。 さいわいに||たて||ゆうしゃ|さま|||しゅんそく||けんきゃく||||おり ます 馬車 と 、 行商 を する 上 で 役 に 立つ 商業 通行 手形 を 進呈 致します 」 「 商業 通行 手形 ? ばしゃ||ぎょうしょう|||うえ||やく||たつ|しょうぎょう|つうこう|てがた||しんてい|いたし ます|しょうぎょう|つうこう|てがた 「 はい 。 この 国 で は 行商 を する 時 、 各 々 の 村 、 町 に 着いたら 一定 の 金銭 を その 地域 の 領主 に 支払わ ねば なりません 。 |くに|||ぎょうしょう|||じ|かく|||むら|まち||ついたら|いってい||きんせん|||ちいき||りょうしゅ||しはらわ||なり ませ ん そこ で 私 の 判 を 押した 商業 通行 手形 の 出番 です 。 ||わたくし||はん||おした|しょうぎょう|つうこう|てがた||でばん| これ さえ あれば 基本 的に は 金銭 を 払う 必要 は なくなります 。 |||きほん|てきに||きんせん||はらう|ひつよう||なくなり ます どうか お 役 に 立てて ください 」 ||やく||たてて|

考えて みれば 、 ここ は メルロマルク 国 の 近く に ある 農村 だ 。 かんがえて|||||くに||ちかく|||のうそん| 交通 の 便 も 良い ので 、 ここ の 領主 を して いる と いう の は それ だけ 権力 や 威厳 も 必要 と なる 。 こうつう||びん||よい||||りょうしゅ||||||||||けんりょく||いげん||ひつよう|| 俺 が 波 で 被害 を 最小 限 に 抑えた の は リユート 村 の 連中 の 耳 に 入って いる 。 おれ||なみ||ひがい||さいしょう|げん||おさえた||||むら||れんちゅう||みみ||はいって| 悪 名 が 響き 、 王様 に 睨まれて も 村人 の ため に 苦渋 の 決断 を 背負わ さ れた 。 あく|な||ひびき|おうさま||にらま れて||むらびと||||くじゅう||けつだん||せおわ|| 横暴な 国 から の 暴挙 を 俺 が 撥ね除けた わけだ から 協力 的に も なって くれる と いう こと か 。 おうぼうな|くに|||ぼうきょ||おれ||はねのけた|||きょうりょく|てきに|||||||

「…… アナタ の 悪 名 が 商売 の 障害 に なら ない ように と の 配慮 です 。 ||あく|な||しょうばい||しょうがい|||||||はいりょ| これ で 金銭 を 稼ぎ やすく なる か と 」 ||きんせん||かせぎ||||

善意 的に 受け取って くれて いる 。 ぜんい|てきに|うけとって|| だから 俺 は 素直に 感謝 する 。 |おれ||すなおに|かんしゃ|

「 感謝 する 。 かんしゃ| 使わ せて もらう 」 つかわ||

確かに これ は 相当 便利な 報酬 だ 。 たしかに|||そうとう|べんりな|ほうしゅう| しかも 近々 フィーロ に 馬車 を 作って くれる らしい 。 |ちかぢか|||ばしゃ||つくって||

良かった な 。 よかった| 荷車 じゃ なくて 。 にぐるま||

「 ま 、 とりあえず は 復興 作業 に 戻る か 」 |||ふっこう|さぎょう||もどる|

「 はい 」

村 の 連中 は ラフタリア と 一緒に 頷き 、 復興 作業 に 戻って いった 。 むら||れんちゅう||||いっしょに|うなずき|ふっこう|さぎょう||もどって|

「 グア ♪」

自分 用 の 荷車 を 用意 されて フィーロ は 機嫌 が 良い 。 じぶん|よう||にぐるま||ようい|さ れて|||きげん||よい 「 よし ! 今日 は 森 へ 出発 だ ! きょう||しげる||しゅっぱつ| 「 はい ! 「 グア ! 俺 が 行く 方向 を 指差す と 、 フィーロ は 元気 良く 荷車 を 引き出した 。 おれ||いく|ほうこう||ゆびさす||||げんき|よく|にぐるま||ひきだした

ゴトンゴトン !

と 、 の ん 気 な ……。 |||き|

ゴトンゴトンゴトン ! ガラガラガラガラガラ !

徐々に 車輪 から 大きな 音 を 響かせ 、 景色 が 高速で 通り過ぎて いく 。 じょじょに|しゃりん||おおきな|おと||ひびかせ|けしき||こうそくで|とおりすぎて|

「 速い ! はやい 速い ! はやい スピード 落とせ ! すぴーど|おとせ 「 グア ……」

速度 を 落とし 、 フィーロ は トコトコ と 不満 そうに 鳴き ながら 歩く 。 そくど||おとし|||||ふまん|そう に|なき||あるく

「 なんか 気持ち 悪く なって きました ……」 ラフタリア が 乗り物酔い を した の か 、 ぐったり して 荷車 で 横 に なって いる 。 |きもち|わるく||き ました|||のりものよい|||||||にぐるま||よこ||| 「 大丈夫 か ? だいじょうぶ| 「 ええ …… でも 、 あんまり 揺らさ ないで ……」 |||ゆらさ|

「 そう か 、 ラフタリア は 乗り物酔い を する んだ な 」 ||||のりものよい||||

「…… みたいです 。 ナオフミ 様 は 大丈夫な のです か ? |さま||だいじょうぶな|| 「 俺 は 酔った こと が ない んだ よ なぁ ……」 おれ||よった||||||

酒 も 然ること ながら 乗り物酔い と も 無縁だ 。 さけ||さること||のりものよい|||むえんだ

小学生 の 頃 、 学校 の 遠足 で バス に 乗った 時 、 リュック に 入れた 漫画 と ライトノベル を 読んで いたら 、 隣 の 座席 の 奴 が 尽く 気持ち 悪い と 俺 の 方 を 見 ながら 言って 、 席 替え を さ せられた 覚え が ある 。 しょうがくせい||ころ|がっこう||えんそく||ばす||のった|じ|りゅっく||いれた|まんが||||よんで||となり||ざせき||やつ||つく|きもち|わるい||おれ||かた||み||いって|せき|かえ|||せら れた|おぼえ|| その他 、 親戚 に 会い に 行く ため に 丸一 日 の 船旅 で 家族 全員 が 船酔い で ダウン する 中 、 船 内 で 携帯 ゲーム を やって いた 覚え も ある 。 そのほか|しんせき||あい||いく|||まるいち|ひ||ふなたび||かぞく|ぜんいん||ふなよい||だうん||なか|せん|うち||けいたい|げーむ||||おぼえ||

「 まあ ゆっくり と して いろ 。 フィーロ と 俺 が 目的 地 まで 運んで やる から 」 ||おれ||もくてき|ち||はこんで||

「 お 言葉 に 甘えて 休ま せて もらいます ……」 「 グアアアアアアアア ! |ことば||あまえて|やすま||もらい ます| 「 あの …… もっと ゆっくり 走って ください 」 |||はしって|

ラフタリア の 声 が 耳 に 入ら ない くらい 晴れやかな 様子 で フィーロ は 走って いく のだった 。 ||こえ||みみ||はいら|||はれやかな|ようす||||はしって||

その後 、 ラフタリア は 道中 で リバース し 、 森 へ 辿 たどり着いた 頃 に は 限界 を 迎えて いた 。 そのご|||どうちゅう||||しげる||てん|たどりついた|ころ|||げんかい||むかえて|

「 う …… う う ……」

青い 顔 を して 唸る ラフタリア に やり すぎた と 反省 する 。 あおい|かお|||うなる||||||はんせい|

「 すま ん 」

「 グア ……」

それ は フィーロ も 同じ ようで 、 申し訳な さ そうに 意気消沈 して いる 。 ||||おなじ||もうしわけな||そう に|いきしょうちん||

「 だ 、 大丈夫です …… よ 」 |だいじょうぶです|

「 とても そう は 見え ない 。 |||みえ| どこ か で 休める と 良い んだ が 」 |||やすめる||よい||

「 あ 、 盾 の 勇者 様 です ね 」 |たて||ゆうしゃ|さま||

森 の 近く に は 小屋 が あり 、 そこ から 木 こり らしき 村人 が 出て くる 。 しげる||ちかく|||こや|||||き|||むらびと||でて|

「 ああ 、 村 の 連中 に 頼まれて な 。 |むら||れんちゅう||たのま れて| 木材 を 貰い に きた のだ が 」 もくざい||もらい||||

「 あの …… お 連れ の 方 は 大丈夫です か ? ||つれ||かた||だいじょうぶです| 「 たぶん 、 大丈夫じゃ ない と 思う 。 |だいじょうぶじゃ|||おもう 休ま せて おきたい のだ が 良い 場所 は ない か ? やすま||おき たい|||よい|ばしょ||| 「 では こちら に 寝床 が ある ので 、 寝かせましょう 」 木 こり が 案内 する 小屋 の 方 へ 向かって 、 俺 は ラフタリア に 肩 を 貸して 歩き 、 ベッド に 寝か せた 。 |||ねどこ||||ねかせ ましょう|き|||あんない||こや||かた||むかって|おれ||||かた||かして|あるき|べっど||ねか| 「 フィーロ が 戦える 範囲 の 敵 を 軽く 相手 に する 程度 に して 、 今日 は 荷物 運び に 従事 する と しよう 」 ||たたかえる|はんい||てき||かるく|あいて|||ていど|||きょう||にもつ|はこび||じゅうじ|||

ラフタリア は 乗り物 に 弱い みたいだ し 、 しばらく 慣れる まで は 荷車 で 爆走 する の は やめよう 。 ||のりもの||よわい||||なれる|||にぐるま||ばくそう||||

「 と いう わけだ 。 申し訳ない が 荷車 に 材木 を 載せて おいて くれ 。 もうしわけない||にぐるま||ざいもく||のせて|| しばらく したら もう 一 度 来る 」 |||ひと|たび|くる

「 あ 、 はい 」

フィーロ は 荷車 を 外されて 、 小屋 の 外 から こちら の 様子 を 眺めて いた 。 ||にぐるま||はずさ れて|こや||がい||||ようす||ながめて| 「 じゃあ 行く ぞ 」 |いく|

「 グア ! 元康 を アレ だけ 蹴り 飛ばした んだ 。 もとやす||||けり|とばした| 攻撃 力 は 相当 期待 できる 。 こうげき|ちから||そうとう|きたい|

軽く 森 の 中 を 回って こよう 。 かるく|しげる||なか||まわって|

森 の 中 に 入る と 意外に も 魔物 と は 遭遇 し なかった 。 しげる||なか||はいる||いがいに||まもの|||そうぐう|| 静かな 森 の 中 を フィーロ と 一緒に 歩いて 回る 。 しずかな|しげる||なか||||いっしょに|あるいて|まわる 森林 浴 と は 言う けれど 、 なんとなく 空気 が 澄んで いる ような 気 が した 。 しんりん|よく|||いう|||くうき||すんで|||き||

そう いえば この 世界 に 来て 、 こんな ゆっくり と 景色 を 見て 回る ような 真似 を した 覚え が ない 。 |||せかい||きて||||けしき||みて|まわる||まね|||おぼえ||

原因 は 何 だろう 。 げんいん||なん| あの 元康 が 苦痛 に 歪む 顔 を 見たら 全て が 吹き飛んで しまった 。 |もとやす||くつう||ゆがむ|かお||みたら|すべて||ふきとんで|

…… 違う 。 ちがう

ラフタリア が 信じて くれた から だ と 思う 。 ||しんじて|||||おもう

その ラフタリア が 乗り物酔い で ここ に いない 。 |||のりものよい|||| なんとなく 寂しい 。 |さびしい

考えて みれば まだ 半月 、 三 週間 くらい しか 一緒に いない のに 、 もう 一緒に いる の が 当たり前の ような 関係 に なって いる 。 かんがえて|||はんつき|みっ|しゅうかん|||いっしょに||||いっしょに||||あたりまえの||かんけい||| 小さかった 頃 の ラフタリア が もう 随分 前 の ように さえ 感じる 。 ちいさかった|ころ|||||ずいぶん|ぜん||||かんじる

ラフタリア の 親 代わり に なる と 決めた は 良い が 、 何 を すれば 良い だろう 。 ||おや|かわり||||きめた||よい||なん|||よい| もちろん 波 の 事 も ある 。 |なみ||こと|| まだ 一 ヶ月 以上 先 だ が …… どうした もの か 。 |ひと|かげつ|いじょう|さき|||||

「 乗り物酔い に 効く 薬 と か あれば 良い んだ けど な 」 のりものよい||きく|くすり||||よい|||