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幸福な王子 The Happy Prince, 幸福の王子 -6-

幸福 の 王子 -6-

次の 日 、 ツバメ は 波止場 へ 行きました 。 大きな 船 の マスト の 上 に とまり 、 水夫 たち が 大きな 箱 を 船 倉 から ロープ で 引きずり出す の を 見ました 。 箱 が 一 つ 出る たび に 「 よい こらせ ! 」 と 水夫 たち は 叫びました 。 「 僕 は エジプト に 行く んだ よ ! 」 と ツバメ も 大声 を 出しました が 、 誰 も 気 に しません でした 。 月 が 出る と ツバメ は 幸福 の 王子 の ところ に 戻りました 。 「 お いとまごい に やってきました 」 ツバメ は 声 を あげました 。 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 「 もう 一晩 泊まって くれません か 」 「 もう 冬 です 」 ツバメ は 答えました 。 「 冷たい 雪 が まもなく ここ に も 降る でしょう 。 エジプト で は 太陽 の 光 が 緑 の シュロ の 木 に 温かく 注ぎ 、 ワニ たち は 泥 の 中 に 寝そべって のんびり 過ごして います 。 友人 たち は 、 バールベック 寺院 の 中 に 巣 を 作って おり 、 ピンク と 白 の ハト が それ を 見て 、 クークー と 鳴き 交わして います 。 王子 様 。 僕 は 行か なくちゃ なりません 。 あなた の こと は 決して 忘れません 。 来年 の 春 、 僕 は あなた が あげて しまった 宝石 二 つ の 代わり に 、 美しい 宝石 を 二 つ 持って 帰って きます 。 ルビー は 赤い バラ より も 赤く 、 サファイア は 大海 の ように 青い もの に なる でしょう 」

「 下 の ほう に 広場 が ある 」 と 幸福 の 王子 は 言いました 。 「 そこ に 小さな マッチ 売り の 少女 が いる 。 マッチ を 溝 に 落として しまい 、 全部 駄目に なって しまった 。 お 金 を 持って 帰れ なかったら 、 お 父さん が 女の子 を ぶつ だろう 。 だから 女の子 は 泣いて いる 。 あの 子 は 靴 も 靴下 も はいて いない し 、 何も 頭 に かぶって いない 。 私 の 残って いる 目 を 取り出して 、 あの 子 に やって ほしい 。 そう すれば お 父さん から ぶた れ ない だろう 」

「 もう 一晩 、 あなた の ところ に 泊まりましょう 」 ツバメ は 言いました 。 「 でも 、 あなた の 目 を 取り出す なんて できません 。 そんな こと を したら 、 あなた は 何も 見え なく なって しまいます 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 「 私 が 命じた とおり に して おくれ 」

そこ で ツバメ は 王子 の もう 片方 の 目 を 取り出して 、 下 へ 飛んで いきました 。 ツバメ は マッチ 売り の 少女 の ところ まで さっと 降りて 、 宝石 を 手 の 中 に 滑り込ま せました 。 「 とっても きれいな ガラス 玉 ! 」 その 女の子 は 言いました 。 そして 笑い ながら 走って 家 に 帰りました 。 それ から ツバメ は 王子 の ところ に 戻りました 。 「 あなた は もう 何も 見え なく なりました 」 と ツバメ は 言いました 。 「 だ から 、 ずっと あなた と 一緒に いる こと に します 」 「 いや 、 小さな ツバメ さん 」 と かわいそうな 王子 は 言いました 。 「 あなた は エジプト に 行か なくちゃ いけない 」

「 僕 は ずっと あなた と 一緒に います 」 ツバメ は 言いました 。 そして 王子 の 足元 で 眠りました 。 < 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 http :// www . genpaku . org /


幸福 の 王子 -6- こうふく||おうじ Prince of Happiness -6- 快乐王子-6- 幸福王子 -6-.

次の 日 、 ツバメ は 波止場 へ 行きました 。 つぎの|ひ|つばめ||はとば||いき ました The next day, the swallows went to the dock. 大きな 船 の マスト の 上 に とまり 、 水夫 たち が 大きな 箱 を 船 倉 から ロープ で 引きずり出す の を 見ました 。 おおきな|せん||ますと||うえ|||すいふ|||おおきな|はこ||せん|くら||ろーぷ||ひきずりだす|||み ました Perched on the mast of a large ship, I saw the sailors pulling a large box out of the hold with a rope. 箱 が 一 つ 出る たび に 「 よい こらせ ! はこ||ひと||でる|||| Every time one box comes out, "Good luck! 」 と 水夫 たち は 叫びました 。 |すいふ|||さけび ました The sailors shouted. 「 僕 は エジプト に 行く んだ よ ! ぼく||えじぷと||いく|| "I'm going to Egypt! 」 と ツバメ も 大声 を 出しました が 、 誰 も 気 に しません でした 。 |つばめ||おおごえ||だし ました||だれ||き||し ませ ん| The swallow shouted, but nobody noticed. 月 が 出る と ツバメ は 幸福 の 王子 の ところ に 戻りました 。 つき||でる||つばめ||こうふく||おうじ||||もどり ました At the end of the moon, the swallows returned to the happy prince. 「 お いとまごい に やってきました 」 ツバメ は 声 を あげました 。 |||やってき ました|つばめ||こえ||あげ ました "I'm really happy," said the swallow. 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 つばめ||つばめ||ちいさな|つばめ|||おうじ||いい ました "Swallows, swallows, little swallows," said the prince. 「 もう 一晩 泊まって くれません か 」 「 もう 冬 です 」 ツバメ は 答えました 。 |ひとばん|とまって|くれ ませ ん|||ふゆ||つばめ||こたえ ました "Will you stay overnight again?" "It's already winter," swallows replied. 「 冷たい 雪 が まもなく ここ に も 降る でしょう 。 つめたい|ゆき||||||ふる| “Cold snow will soon fall here. エジプト で は 太陽 の 光 が 緑 の シュロ の 木 に 温かく 注ぎ 、 ワニ たち は 泥 の 中 に 寝そべって のんびり 過ごして います 。 えじぷと|||たいよう||ひかり||みどり||しゅろ||き||あたたかく|そそぎ|わに|||どろ||なか||ねそべって||すごして|い ます In Egypt, the sun's rays warm the green palm trees, and the crocodiles lie in the mud and relax. 友人 たち は 、 バールベック 寺院 の 中 に 巣 を 作って おり 、 ピンク と 白 の ハト が それ を 見て 、 クークー と 鳴き 交わして います 。 ゆうじん||||じいん||なか||す||つくって||ぴんく||しろ||はと||||みて|||なき|かわして|い ます Friends are nesting inside the Baalbek Temple, with pink and white pigeons observing it and squealing in Kuku. 王子 様 。 おうじ|さま Prince. 僕 は 行か なくちゃ なりません 。 ぼく||いか||なり ませ ん I have to go あなた の こと は 決して 忘れません 。 ||||けっして|わすれ ませ ん I'll never forget you. 来年 の 春 、 僕 は あなた が あげて しまった 宝石 二 つ の 代わり に 、 美しい 宝石 を 二 つ 持って 帰って きます 。 らいねん||はる|ぼく||||||ほうせき|ふた|||かわり||うつくしい|ほうせき||ふた||もって|かえって|き ます Next spring, I'll bring back two beautiful gems instead of the two gems you gave. ルビー は 赤い バラ より も 赤く 、 サファイア は 大海 の ように 青い もの に なる でしょう 」 るびー||あかい|ばら|||あかく|さふぁいあ||たいかい|||あおい|||| Ruby will be redrather than red roses, and sapphire will be bluer like the oceans.''

「 下 の ほう に 広場 が ある 」 と 幸福 の 王子 は 言いました 。 した||||ひろば||||こうふく||おうじ||いい ました "There is a plaza down below," said the Prince of Happiness. 「 そこ に 小さな マッチ 売り の 少女 が いる 。 ||ちいさな|まっち|うり||しょうじょ|| "There is a little match-selling girl there. マッチ を 溝 に 落として しまい 、 全部 駄目に なって しまった 。 まっち||みぞ||おとして||ぜんぶ|だめに|| I dropped the match into the groove and it was all gone. お 金 を 持って 帰れ なかったら 、 お 父さん が 女の子 を ぶつ だろう 。 |きむ||もって|かえれ|||とうさん||おんなのこ||| If I couldn't come home with the money, my dad would hit a girl. だから 女の子 は 泣いて いる 。 |おんなのこ||ないて| So the girl is crying. あの 子 は 靴 も 靴下 も はいて いない し 、 何も 頭 に かぶって いない 。 |こ||くつ||くつした|||||なにも|あたま||| The child has no shoes, no socks, and nothing on his head. 私 の 残って いる 目 を 取り出して 、 あの 子 に やって ほしい 。 わたくし||のこって||め||とりだして||こ||| Take out my remaining eyes and ask that child to do it. そう すれば お 父さん から ぶた れ ない だろう 」 |||とうさん||||| Then you won't be hit by your father."

「 もう 一晩 、 あなた の ところ に 泊まりましょう 」 ツバメ は 言いました 。 |ひとばん|||||とまり ましょう|つばめ||いい ました “Let's stay at you another night,” said Swallow. 「 でも 、 あなた の 目 を 取り出す なんて できません 。 |||め||とりだす||でき ませ ん "But I can't get your eyes out. そんな こと を したら 、 あなた は 何も 見え なく なって しまいます 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 ||||||なにも|みえ|||しまい ます|つばめ||つばめ||ちいさな|つばめ|||おうじ||いい ました If you do that, you will not be able to see anything." "Swallows, swallows, little swallows," said the prince. 「 私 が 命じた とおり に して おくれ 」 わたくし||めいじた|||| "Give me what I have ordered."

そこ で ツバメ は 王子 の もう 片方 の 目 を 取り出して 、 下 へ 飛んで いきました 。 ||つばめ||おうじ|||かたほう||め||とりだして|した||とんで|いき ました There the swallow took out the prince's other eye and flew down. ツバメ は マッチ 売り の 少女 の ところ まで さっと 降りて 、 宝石 を 手 の 中 に 滑り込ま せました 。 つばめ||まっち|うり||しょうじょ|||||おりて|ほうせき||て||なか||すべりこま|せま した The swallow quickly descended to the match-selling girl and slipped the gem into her hand. 「 とっても きれいな ガラス 玉 ! ||がらす|たま "A very beautiful glass ball! 」 その 女の子 は 言いました 。 |おんなのこ||いい ました The girl said. そして 笑い ながら 走って 家 に 帰りました 。 |わらい||はしって|いえ||かえり ました Then I laughed and ran home. それ から ツバメ は 王子 の ところ に 戻りました 。 ||つばめ||おうじ||||もどり ました Then the swallow returned to the prince. 「 あなた は もう 何も 見え なく なりました 」 と ツバメ は 言いました 。 |||なにも|みえ||なり ました||つばめ||いい ました "You have lost sight of anything," said Swallow. 「 だ から 、 ずっと あなた と 一緒に いる こと に します 」 「 いや 、 小さな ツバメ さん 」 と かわいそうな 王子 は 言いました 。 |||||いっしょに||||し ます||ちいさな|つばめ||||おうじ||いい ました "So, I'll stay with you all the time." "No, little swallows," said the poor little prince. 「 あなた は エジプト に 行か なくちゃ いけない 」 ||えじぷと||いか|| "You have to go to Egypt"

「 僕 は ずっと あなた と 一緒に います 」 ツバメ は 言いました 。 ぼく|||||いっしょに|い ます|つばめ||いい ました “I am with you all the time,” said Swallow. そして 王子 の 足元 で 眠りました 。 |おうじ||あしもと||ねむり ました And he slept at the feet of the prince. < 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 はんけん|ひょうじ|||さく|ゆうき|ひろし|やく|copyright|c|hiroshiyuki|ゆうき|ひろし||||||||ほん|ほんやく|||はんけん|ひょうじ||のこす|かぎり|やくしゃ||ちょしゃ|に たいして|きょか|||しよう|りょう||しはらったり|||いっさい|||しょうぎょう|りよう||ふくむ||かた||じゆうに|りよう|ふくせい||みとめ られ ます <Copyright notice> Translated by Oscar Wilde Translated by Hiroshi Yuki Copyright (C) 2000 HiroshiYuki http :// www .hyuki .com / trans / prince .html You are free to use and copy it in any form, including commercial use, without any permission or payment of usage fees. プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 ぷろじぇくと|すぎた|げん|しろ|せいしき|さんか|さくひん http :// www . genpaku . org /