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幸福な王子 The Happy Prince, 幸福の王子 -4-

幸福 の 王子 -4-

「 私 は エジプト に 行きたい んです 」 と ツバメ は 言いました 。 「 友人 たち は ナイル 川 に 沿って 飛びまわったり 、 大きな 蓮 の 花 に 話しかけたり して います 。 まもなく 、 みんな は 偉大な 王 の 墓 の 中 で 眠ります 。 王 も また 、 そこ の 彩ら れた 棺 の 中 に います 。 王 は 黄色 の 亜麻 布 で 包ま れ 、 香料 を 使って ミイラ に なって います 。 首 に は 青 緑色 の 翡翠 の 首 飾り が かけられ 、 王 の 両手 は まるで しおれた 葉 の ような んです よ 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 「 もう 一晩 泊まって 、 私 の お 使い を して くれ ない か 。 あの 子 は とても 喉 が 乾いて いて 、 お母さん は とても 悲しんで いる のだ よ 」 「 私 は 男の子 が 好きじゃ ない んです 」 と ツバメ は 答えました 。 「 去年 の 夏 、 川 の ほとり に いた とき 、 二 人 の 乱暴な 男の子 が おりました 。 粉 引き の 息子 たち で 、 二 人 は いつも 僕 に 石 を 投げつけました 。 もちろん 一 回 も 当たりません でした よ 。 僕たち ツバメ は そういう とき に は とても うまく 飛びます し 、 その 上 、 僕 は 機敏 さ で 有名な 家系 の 出 です から 。 でも 、 石 を 投げて くるって いう の は 失礼な 証拠 です よ ね 」 でも 、 幸福 の 王子 が とても 悲し そうな 顔 を しました ので 、 小さな ツバメ も すまない 気持ち に なりました 。 「 ここ は とても 寒い です ね 」 と ツバメ は 言いました 。 「 でも 、 あなた の ところ に 一晩 泊まって 、 あなた の お 使い を いたしましょう 」 「 ありがとう 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 そこ で ツバメ は 王子 の 剣 から 大きな ルビー を 取り出す と 、 くちばし に くわえ 、 町 の 屋根 を 飛び越えて 出かけました 。 ツバメ は 、 白い 大理石 の 天使 が 彫刻 されて いる 聖堂 の 塔 を 通りすぎました 。 宮殿 を 通りすぎる とき 、 ダンス を 踊って いる 音 が 聞こえました 。 美しい 女の子 が 恋人 と 一緒に バルコニー に 出て きました 。 「 何て 素晴らしい 星 だろう 」 彼 は 女の子 に 言いました 。 「 そして 愛 の 力 は 何と 素晴らしい こと だろう 」

「 私 の ドレス が 舞踏 会 に 間に合う と いい わ 」 と 女の子 が 答えました 。 「 ドレス に トケイソウ の 花 が 刺繍 さ れる ように 注文 した の よ 。 でも お 針子 っていう の は とっても 怠け者 だ から 」 ツバメ は 川 を 越え 、 船 の マスト に かかって いる ランタン を 見ました 。 ツバメ は 貧民 街 を 越え 、 老いた ユダヤ 人 たち が 商売 を して 、 銅 の 天秤 で お 金 を 量り 分ける の を 見ました 。 やっと 、 あの 貧しい 家 に たどり着く と 、 ツバメ は 中 を のぞき込みました 。 男の子 は ベッド の 上 で 熱 の ため に 寝返り を うち 、 お母さん は 疲れ切って 眠り 込んで おりました 。 ツバメ は 中 に 入って 、 テーブル の 上 に ある お母さん の 指ぬき の 脇 に 大きな ルビー を 置きました 。 それ から ツバメ は そっと ベッド の まわり を 飛び 、 翼 で 男の子 の 額 を あおぎました 。 「 とても 涼しい 」 と 男の子 は 言いました 。 「 僕 は きっと 元気に なる 」 そして 心地よい 眠り に 入って いきました 。 それ から ツバメ は 幸福 の 王子 の ところ に 飛んで 戻り 、 やった こと を 王子 に 伝えました 。 「 妙な こと に 」 と ツバメ は 言いました 。 「 こんなに 寒い のに 、 僕 は 今 とても 温かい 気持ち が する んです 」

「 それ は 、 いい こと を した から だ よ 」 と 王子 は 言いました 。 そこ で 小さな ツバメ は 考え 始めました が 、 やがて 眠って しまいました 。 考え ごと を する と ツバメ は いつも 眠く なる のです 。

朝 に なる と 、 ツバメ は 川 の ところ まで 飛んで いき 、 水浴び を しました 。 「 何と 驚く べき 現象 だ 」 と 鳥類 学 の 教授 が 橋 を 渡り ながら 言いました 。 「 冬 に ツバメ を 見る なんて 」 それ から 教授 は 、 この こと に ついて 長い 投書 を 地方 新聞 に あてて 書きました 。 みんな が その 投書 を 話題 に しました 。 でも 、 その 投書 は 人々 が 理解 でき ない 単語 で いっぱいでした 。

< 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 http :// www . genpaku . org /


幸福 の 王子 -4- こうふく||おうじ Prince of Happiness -4- Prince du bonheur -4-. 幸福王子-4- 快乐王子-4- 快樂王子-4-

「 私 は エジプト に 行きたい んです 」 と ツバメ は 言いました 。 わたくし||えじぷと||いき たい|||つばめ||いい ました “I want to go to Egypt,” said Swallow. “我想去埃及,”燕子说。 「 友人 たち は ナイル 川 に 沿って 飛びまわったり 、 大きな 蓮 の 花 に 話しかけたり して います 。 ゆうじん||||かわ||そって|とびまわったり|おおきな|はす||か||はなしかけたり||い ます “My friends are flying along the Nile and talking to the big lotus flowers. まもなく 、 みんな は 偉大な 王 の 墓 の 中 で 眠ります 。 |||いだいな|おう||はか||なか||ねむり ます Soon after, everyone sleeps in the tomb of the Great King. 王 も また 、 そこ の 彩ら れた 棺 の 中 に います 。 おう|||||いろどら||ひつぎ||なか||い ます The king is also in the colorful casket there. 王 は 黄色 の 亜麻 布 で 包ま れ 、 香料 を 使って ミイラ に なって います 。 おう||きいろ||あま|ぬの||つつま||こうりょう||つかって|みいら|||い ます The king is wrapped in a yellow linen cloth and made into a mummy with fragrance. 首 に は 青 緑色 の 翡翠 の 首 飾り が かけられ 、 王 の 両手 は まるで しおれた 葉 の ような んです よ 」 「 ツバメ さん 、 ツバメ さん 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 くび|||あお|みどりいろ||かわせみ||くび|かざり||かけ られ|おう||りょうて||||は|||||つばめ||つばめ||ちいさな|つばめ|||おうじ||いい ました The neck has a blue-green jade necklace, and the king's hands are like wilted leaves.” “Swallows, swallows, little swallows,” said the prince. 「 もう 一晩 泊まって 、 私 の お 使い を して くれ ない か 。 |ひとばん|とまって|わたくし|||つかい||||| "Can you stay with me one more night and use it for me?" あの 子 は とても 喉 が 乾いて いて 、 お母さん は とても 悲しんで いる のだ よ 」 「 私 は 男の子 が 好きじゃ ない んです 」 と ツバメ は 答えました 。 |こ|||のど||かわいて||お かあさん|||かなしんで||||わたくし||おとこのこ||すきじゃ||||つばめ||こたえ ました That child is very thirsty and his mother is very sad." "I don't like boys," swallows replied. 「 去年 の 夏 、 川 の ほとり に いた とき 、 二 人 の 乱暴な 男の子 が おりました 。 きょねん||なつ|かわ||||||ふた|じん||らんぼうな|おとこのこ||おり ました “Last summer, when I was on the bank of the river, there were two violent boys. 粉 引き の 息子 たち で 、 二 人 は いつも 僕 に 石 を 投げつけました 。 こな|ひき||むすこ|||ふた|じん|||ぼく||いし||なげつけ ました The sons of the powder mill, the two always threw stones at me. もちろん 一 回 も 当たりません でした よ 。 |ひと|かい||あたり ませ ん|| Of course it didn't happen once. 僕たち ツバメ は そういう とき に は とても うまく 飛びます し 、 その 上 、 僕 は 機敏 さ で 有名な 家系 の 出 です から 。 ぼくたち|つばめ||||||||とび ます|||うえ|ぼく||きびん|||ゆうめいな|かけい||だ|| We swallows fly very well at such times, and moreover, I am from a family that is famous for agility. でも 、 石 を 投げて くるって いう の は 失礼な 証拠 です よ ね 」 でも 、 幸福 の 王子 が とても 悲し そうな 顔 を しました ので 、 小さな ツバメ も すまない 気持ち に なりました 。 |いし||なげて|||||しつれいな|しょうこ|||||こうふく||おうじ|||かなし|そう な|かお||し ました||ちいさな|つばめ|||きもち||なり ました However, throwing stones is rude evidence.” But the happy prince had a very sad face, and I felt like a little swallow. 「 ここ は とても 寒い です ね 」 と ツバメ は 言いました 。 |||さむい||||つばめ||いい ました "It's very cold here," said Swallow. 「 でも 、 あなた の ところ に 一晩 泊まって 、 あなた の お 使い を いたしましょう 」 「 ありがとう 、 小さな ツバメ さん 」 と 王子 は 言いました 。 |||||ひとばん|とまって||||つかい||いたし ましょう||ちいさな|つばめ|||おうじ||いい ました "But let's stay overnight at your place and treat your messenger." "Thank you, little swallows," said the prince. そこ で ツバメ は 王子 の 剣 から 大きな ルビー を 取り出す と 、 くちばし に くわえ 、 町 の 屋根 を 飛び越えて 出かけました 。 ||つばめ||おうじ||けん||おおきな|るびー||とりだす|||||まち||やね||とびこえて|でかけ ました There, the swallow took out a large ruby from the sword of the prince and, in its beak, jumped over the roof of the town. ツバメ は 、 白い 大理石 の 天使 が 彫刻 されて いる 聖堂 の 塔 を 通りすぎました 。 つばめ||しろい|だいりせき||てんし||ちょうこく|さ れて||せいどう||とう||とおりすぎ ました The swallows pass by the tower of the cathedral, which is carved with white marble angels. 宮殿 を 通りすぎる とき 、 ダンス を 踊って いる 音 が 聞こえました 。 きゅうでん||とおりすぎる||だんす||おどって||おと||きこえ ました As I passed by the palace, I heard the sound of dancing. 美しい 女の子 が 恋人 と 一緒に バルコニー に 出て きました 。 うつくしい|おんなのこ||こいびと||いっしょに|ばるこにー||でて|き ました A beautiful girl came out on the balcony with her lover. 「 何て 素晴らしい 星 だろう 」 彼 は 女の子 に 言いました 。 なんて|すばらしい|ほし||かれ||おんなのこ||いい ました “What a wonderful star,” he told the girl. 「 そして 愛 の 力 は 何と 素晴らしい こと だろう 」 |あい||ちから||なんと|すばらしい|| "And how wonderful the power of love is!"

「 私 の ドレス が 舞踏 会 に 間に合う と いい わ 」 と 女の子 が 答えました 。 わたくし||どれす||ぶとう|かい||まにあう|||||おんなのこ||こたえ ました “I wish my dress was in time for the ball,” the girl replied. 「 ドレス に トケイソウ の 花 が 刺繍 さ れる ように 注文 した の よ 。 どれす||||か||ししゅう||||ちゅうもん||| “I ordered the dress to have passionflower flowers embroidered on it. でも お 針子 っていう の は とっても 怠け者 だ から 」 ツバメ は 川 を 越え 、 船 の マスト に かかって いる ランタン を 見ました 。 ||はり こ|って いう||||なまけもの|||つばめ||かわ||こえ|せん||ますと||||||み ました But seamstresses are so lazy.” Swallows crossed the river and saw a lantern hanging on the mast of a ship. ツバメ は 貧民 街 を 越え 、 老いた ユダヤ 人 たち が 商売 を して 、 銅 の 天秤 で お 金 を 量り 分ける の を 見ました 。 つばめ||ひんみん|がい||こえ|おいゆいた|ゆだや|じん|||しょうばい|||どう||てんびん|||きむ||はかり|わける|||み ました The swallows crossed the shanty towns and saw the old Jews doing business and weighing out the money on a copper balance. やっと 、 あの 貧しい 家 に たどり着く と 、 ツバメ は 中 を のぞき込みました 。 ||まずしい|いえ||たどりつく||つばめ||なか||のぞきこみ ました Finally, upon arriving at the poor house, the swallow looked into the interior. 男の子 は ベッド の 上 で 熱 の ため に 寝返り を うち 、 お母さん は 疲れ切って 眠り 込んで おりました 。 おとこのこ||べっど||うえ||ねつ||||ねがえり|||お かあさん||つかれきって|ねむり|こんで|おり ました The boy was rolling over on the bed because of the heat, and his mother was exhausted and fell asleep. ツバメ は 中 に 入って 、 テーブル の 上 に ある お母さん の 指ぬき の 脇 に 大きな ルビー を 置きました 。 つばめ||なか||はいって|てーぶる||うえ|||お かあさん||ゆびぬき||わき||おおきな|るびー||おき ました The swallow went inside and placed a large ruby beside Mom's thimble above the table. それ から ツバメ は そっと ベッド の まわり を 飛び 、 翼 で 男の子 の 額 を あおぎました 。 ||つばめ|||べっど||||とび|つばさ||おとこのこ||がく||あおぎ ました Then the swallows gently flew around the bed, winging the boy's forehead. 「 とても 涼しい 」 と 男の子 は 言いました 。 |すずしい||おとこのこ||いい ました "It's very cool," said the boy. 「 僕 は きっと 元気に なる 」 そして 心地よい 眠り に 入って いきました 。 ぼく|||げんきに|||ここちよい|ねむり||はいって|いき ました “I'm sure I'll be fine,” and I went into a comfortable sleep. それ から ツバメ は 幸福 の 王子 の ところ に 飛んで 戻り 、 やった こと を 王子 に 伝えました 。 ||つばめ||こうふく||おうじ||||とんで|もどり||||おうじ||つたえ ました Then the swallow flew back to the Happiness Prince and told him what he had done. 「 妙な こと に 」 と ツバメ は 言いました 。 みょうな||||つばめ||いい ました "It's strange," said Swallow. 「 こんなに 寒い のに 、 僕 は 今 とても 温かい 気持ち が する んです 」 |さむい||ぼく||いま||あたたかい|きもち||| "It's so cold, but I feel very warm now."

「 それ は 、 いい こと を した から だ よ 」 と 王子 は 言いました 。 ||||||||||おうじ||いい ました "It's because you did a good thing," said the prince. そこ で 小さな ツバメ は 考え 始めました が 、 やがて 眠って しまいました 。 ||ちいさな|つばめ||かんがえ|はじめ ました|||ねむって|しまい ました There, a small swallow started to think about it, but eventually fell asleep. 考え ごと を する と ツバメ は いつも 眠く なる のです 。 かんがえ|||||つばめ|||ねむく|| When you think about it, swallows always become sleepy.

朝 に なる と 、 ツバメ は 川 の ところ まで 飛んで いき 、 水浴び を しました 。 あさ||||つばめ||かわ||||とんで||みずあび||し ました In the morning, swallows flew to the river and bathed. 「 何と 驚く べき 現象 だ 」 と 鳥類 学 の 教授 が 橋 を 渡り ながら 言いました 。 なんと|おどろく||げんしょう|||ちょうるい|まな||きょうじゅ||きょう||わたり||いい ました “What an amazing phenomenon,” said an ornithologist professor across the bridge. 「 冬 に ツバメ を 見る なんて 」 それ から 教授 は 、 この こと に ついて 長い 投書 を 地方 新聞 に あてて 書きました 。 ふゆ||つばめ||みる||||きょうじゅ||||||ながい|とうしょ||ちほう|しんぶん|||かき ました “To see swallows in the winter,” he then wrote a long statement about this in a local newspaper. みんな が その 投書 を 話題 に しました 。 |||とうしょ||わだい||し ました Everyone talked about the letter. でも 、 その 投書 は 人々 が 理解 でき ない 単語 で いっぱいでした 。 ||とうしょ||ひとびと||りかい|||たんご|| But the letter was full of words that people didn't understand.

< 版権 表示 > オスカー ・ ワイルド 作 結城 浩 訳 Copyright ( C )2000 HiroshiYuki ( 結城 浩 ) http :// www . hyuki . com / trans / prince . html 本 翻訳 は 、 この 版権 表示 を 残す 限り 、 訳者 および 著者 にたいして 許可 を とったり 使用 料 を 支払ったり する こと 一切 なし に 、 商業 利用 を 含む あらゆる 形 で 自由に 利用 ・ 複製 が 認められます 。 はんけん|ひょうじ|||さく|ゆうき|ひろし|やく|copyright|c|hiroshiyuki|ゆうき|ひろし||||||||ほん|ほんやく|||はんけん|ひょうじ||のこす|かぎり|やくしゃ||ちょしゃ|に たいして|きょか|||しよう|りょう||しはらったり|||いっさい|||しょうぎょう|りよう||ふくむ||かた||じゆうに|りよう|ふくせい||みとめ られ ます プロジェクト 杉田 玄 白 正式 参加 作品 。 ぷろじぇくと|すぎた|げん|しろ|せいしき|さんか|さくひん Project Genshiro Sugita Officially participating work. http :// www . genpaku . org /