自然な 習得 順序 の 仮説 (クラッシェン の 「第二言語 習得 理論 」2 )
自然な 習得 順序 の 仮説 (TheNaturalOrderHypothesis)
この 説 に は 先立つ 研究 が ある 。
ブラウン (R.Brown)は 、3 人 の 幼児 (1 ~2 歳 )を 被験者 として 、母語 の 言語 発達 の 過程 を 調査 する ために 約 2 年間 、彼ら の 発話 を 録音 ・書写 し 、その データ を 分析 する という 縦断的 研究 を 行った 。
その 結果 、3 人 の 被験者 の 形態素 の 習得 順序 に 共通性 が 認められた 。 続いて 、ドゥーレイ (H.Dulay)と バート (M.Burt)も 、この 研究 結果 に 触発 さ れ 、第 一言 語 を 習得 している 幼児 だけ で はなく 、第二 言語 を 習得 している 子供 に も 、同様の 習得 順序 が 存在する ので はないか と いう 仮説 を 立て 、調査 研究 を 行った 。
そして 、ブラウン の 研究 結果 と 詳細 は 異なる が 、やはり 第 二 言語 の 習得 に おいて も 、共通 した 形態素 の 習得 順序 が ある こと を 発見した 。
クラッシェン は 、実証 的 研究 に より 、ドゥーレイ と バート の 説 を 支持 した 。
そして 、第 二 言語 として 英語 を 習得 する 人 (‘学習 'で は なく 、英語 が 話されている 環境 の 中 で 自然に 英語 を ‘習得 'している 人 ;成人 も 含む )の 形態素 の 習得 順序 として 、次 の ような もの を 発表した 。 A : 進行 形 、 複数 形 、 連結 詞 ( 主語 と 述語 を つなぐ語 ; be , become , seem など ) B : 助動詞 、 冠 詞 C : 不規則 過去 形 D : 規則 過去 形 、3人 称 単数 現在 形 (- s )、 所有 格 (' s )
クラッシェン に よる と 、英語 を 第 二 言語 として 習得 していく 人 は 、第 一言 語 が 何 である か に かかわらず 、 A → B → C → D の 順序 で 形態素 を 習得していく のだが 、それぞれ の グループ 内 の 形態素 の 習得 順序 は 入れ替わる こと が ある が 、 A → B → C → D の 順序 は 決して 入れ替わる こと は ない 、と 言う 。
つまり 、例えば A グループ の 進行形 、複数形 、連結詞 の 習得 順序 は どれ が 先 と も 後 とも 言えない が 、これら よりも 先に B 、 C 、 D に 示された 形態素 が 習得される こと は 絶対に ない 、と いう こと である 。 クラッシェン の 主張 が 真実 だ と する と 、(‘習得 'で は なく ‘学習 'において の 話 と なる が )一般的に 教科書 は 文法 事項 の 単純な もの から 複雑な もの へ 配列 されている ので 、上記 の ような 順序 と は 必ずしも 一致しておらず 、したがって 、効率 の 悪い 学習 を 強要している こと に なる 。 例えば 、3 人称 単数 現在 の -s など は 、教科書 で は 早い 段階 で 現れる もの である が 、自然な 習得 順序 において は 、遅い 段階 で 身に付く もの である ので 、学習 において も 他の 形態素 の 習得 よりも 遅れて 身に付く こと が 予想される 。
だから 、その 事実 を 知っていれば 、英語 の 学習 を はじめて 間 も ない 頃 に 、三人称 単数 現在 の -s を うまく 使いこなせない こと が あっても 、「こんな 簡単な 文法 が できない なんて 情けない 」など と 考えて 英語 学習 へ の 意欲 を 失う 、といった 不条理 が 避けられる かもしれない わけである 。 形態 素 の 習得 順序 に 関して は 、特に 教育 現場 で は 重大な 問題 である ので 、やはり 賛否 両論 、活発な 論争 が 生じた 。
クラッシェン の 示した 習得 順序 に 沿った 教案 が 出さ れる など 、この 考え方 の 支持 も 見られた 反面 、順序 決定 の 裏付け と なった 調査 ・実験 の 方法 や 、研究 結果 に 対する 疑念 が 表明 される など 、仮説 に 対する 反動的な 立場 も 現れたり して 、誰 も が 納得する ような 結論 は まだ 下されていない 。 ただ 、なにか 習得 の 順序 らしい もの が ある こと は 否定 できない ので 、今後 も 研究 が 続けられる こと に なる だろう 。