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屍鬼, Shiki Episode 14

( 沙 子 ) わたし たち 屍 鬼 と は 人 を 狩る もの 。

( 梓 ) 「 夏野 くん が 死 ん で いる の を 見 まし た 」

( 信明 ) 節子 さん や 幹 康 君 も あんな 様子 だった の か ?

( 恵 ) 大 っ 嫌い な やつ を 苦しめる って 最高 !

( 少年 ) 痛 っ ! ( 敏夫 ) 染みる か ?

う うん 。 ( 敏夫 ) 偉い ぞ 。 フッフフ 。

( ドア の 開閉 音 )

( 少年 ) 先生 ? ( 敏夫 ) ああ … 。

これ で いい 。

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 篤 ) あー っ !

( 篤 ) クソ ババア が … 。

フゥー !

( 浪江 ) 篤 ! ! わたし が たばこ が 嫌い って →

お 知り で ない の かい ? ( 篤 ) うる せ ぇ な ー 。

たばこ は 吸って る 人 より 周り の 人間 に 害 を なす ん だ よ !

分かった ! お前 わたし を 殺す 気 だ ね !

あぁ ?

富雄 ! 富雄 って ば ! ( 篤 ) と … えっ !

( 富雄 ) どう し た ? おふくろ 。

何とか し て おくれ よ ー 。 わたし が 心配 し て →

「 たばこ は お よし よ 。 体 に 悪い よ 」 って 言ったら →

「 ぶち 殺す ぞ 」 って 。 ( 篤 ) ちょ っ … 違 … 。

( 富雄 ) 篤 ぃぃ ぃ ! !

う ぐ っ !

ウフフ ~ 。

うん ?

( 千鶴 ) こんばんは 。 ( 篤 ) フガッ フガッ !

( 千鶴 ) この 村 は 夜 が 早い の ね 。 ( 篤 ) お っ !

( 千鶴 ) まだ こんな 時間 な のに 人 っ子 一 人 歩 い て ない の 。

お … 臆病 者 ばっかり な ん だ よ 。 夜 が お っか ない ん だ と さ 。

でも あなた は 平気 な の ね ? 豪 胆 な の ね 。

当ったり め え だ ろ !

( 千鶴 ) あなた なら 話し相手 に なって くれる かしら ?

( 篤 ) 上がって き な よ 。 裏 に 階段 が ある から 。

いい の ? ( 篤 ) いい ぜ 。

あり が と 。 ウフッ 。

( 律子 ) 聡子 ちゃん 。 おはよう 。

( 聡子 ) あの … 。 雪 ちゃん 来 て ます ?

( 下山 ) 雪 ちゃん ? まだ みたい だ よ 。

( やす よ ) どう し た の ?

( 聡子 ) 昨日 の 仕事 の 後 家 に 戻って こ ない って 。

( やす よ ) まさか 事故 ? ( 聡子 ) 分かり ませ ん 。 →

とにかく 心当たり を 当たって みる って 。 →

それ でも 見つから なかったら 警察 に 届け を 出す そう です 。

あっ 先生 。 →

先生 ! 雪 ちゃん が 行方 不明 な ん です 。

そう か 。

どう し ま しょ う ? 雪 ちゃん に 何 か あったら 。

ああ … 。

先生 冷たい 。

( やす よ ) まあ 先生 も 人 の 子 だ から 。

奥さん が 危篤 と 言って も いい よう な 状態 だ し 。

でも 雪 ちゃん だって これ まで ずっと 勤め て き た ん です よ 。 →

その 雪 ちゃん が 行方 不明 に なった って いう のに →

「 そう か 」 って … 。 そんな 受け答え って あり です か ?

( ドア の 開閉 音 )

( 下山 ) そうです か 。 安 森 の … 。

( やす よ ) 徳次郎 さん … 。

( 下山 ) 徳次郎 さん が 亡くなった そう です 。

( やす よ ) これ で 工務 店 に は 誰 も い なく なっちゃ っ た わ ね 。

( 下山 ) そうです ね 。

( 律子 ) 先生 も もう 限界 な ん だ と 思う の 。 →

疲れ てる の よ 。

( 聡子 ) ええ 。 そう です ね 。

( 静 信 ) 徳次郎 さん が お 亡くなり に なり まし た 。

そう か 。

( 静 信 ) それ と 田 茂 の 広 也 君 が … 。

( 信明 ) ついに 田 茂 から も … 。 ( 静 信 ) はい 。 →

世話 役 は どう し たら いい でしょ う ? →

安 森 家 に 不幸 が あった 場合 →

田 茂 家 が 葬儀 を 仕切って い た の です が 。

竹村 吾平 老人 に 相談 しろ 。 ( 静 信 ) 分かり まし た 。

( ドア の 開く 音 ) ( 信明 ) 待て 。 →

手紙 を … 。

( 静 信 ) 桐 敷 家 に です か ? ( 信明 ) 出し て おい て くれ 。

単なる あいさつ 状 だ 。

( 静 信 ) 《 父 は 桐 敷 家 が 全て の 元凶 だ と →

気付 い て いる の か ? 》

( ノック )

( かおり ) 誰 ? ( 恵 ) あんた の 父親 は 死 ん だ よ 。

( 恵 ) かおり 。 聞こえ た ?

め … 恵 ちゃん !

( 恵 ) あんた の 父親 は 死 ん だ から ね 。

ざま あ 見ろ !

昭 ! 昭 っ ! !

( 昭 ) ん … 。 うん ? ( かおり ) 恵 ちゃん が !

窓 の 外 に ! !

( 昭 ) かおり !

お 父さん が 死 ん だ って !

( 昭 ) 父ちゃん !

い ない 。 どこ だ ?

( かおり ) わたし お 風呂 場 !

( 佐知子 ) 何 な の ?

( 昭 ) かおり !

あっ !

お 父さん ! お 父さん ! ( 昭 ) 父ちゃん !

( 佐知子 ) なあ に ? もう … 。

母ちゃん 。 父ちゃん が 死 ん だ !

は ぁ … 。 死 ん でる わけない でしょ 。

( 呼び出し 音 )

( 江 渕 ) はい 江 渕 クリニック 。

あの … 夜分 に 申し訳 あり ませ ん 。

その … 田中 と 言い ます が … 。

ああ ! 田中 良和 さん の ご 家族 です か 。 →

まさか 良和 さん に 何 か ?

あの … 倒れ まし て 。 すぐ 伺い ます 。

( 通話 の 切れる 音 )

( 江 渕 ) ごめん ください 。 ( 佐知子 ) えっ ? →

早い わ ね … 。

( 江 渕 ) 江 渕 と 申し ます 。 →

入って も よろしい でしょう か 。

( 孝江 ) 今夜 も 恭子 さん に 付い て いる の ?

( 敏夫 ) ああ 。

( 孝江 ) 恭子 さん は どう な の ?

実家 に 連絡 し ない で いい の ?

嫌 です よ 後 に なって あちら の 家 から →

つべこべ 言わ れる の は 。 ( 敏夫 ) ああ 。

お前 大丈夫 な の ? ( 敏夫 ) ああ … 。

たぶん 今夜 が 峠 だ ろ う 。

あした に は 向こう の 両親 に 連絡 する こと に なる かも しれ ない 。

( 孝江 の ため 息 )

《 恭子 の 死後 すでに 丸 四 日 が 経過 し て いる 》 →

《 屍 鬼 の 存在 が 知ら れ て ない こと から 考え て も →

死後 1 日 2 日 通夜 や 葬儀 が 行わ れ て いる 間 に →

蘇生 する こと は あり 得 ない 》 →

《 起き上がる の は 最低 でも 死後 3 日 →

72 時間 以上 たって から と いう こと だ 》 →

《 だが その 時間 は とうに 過ぎ もう 五 日 目 に 入 ろ う と して いる 》

《 もう 限界 だ 。 死体 を 抱え て いる と いう プレッシャー に →

これ 以上 耐え られ ない 》

《 今夜 一晩 。 朝 まで 待って も 起き上がら なけ れ ば あきらめる 》

( ドア の 開閉 音 )

( 敏夫 の ため 息 )

こんな もの か … 。

( 脳波 計 の 音 )

ん ?

( 敏夫 ) 《 この 死体 は 完全 に 死 ん で は い ない 》

《 違う 》 →

《 極めて ゆっくり と 腐敗 と は 別種 の 変化 が 進行 し て いる ん だ 》

恭子 。

( 佳枝 ) ほら ! 早く 寝床 に 入り な 。

( 恵 ) 佳枝 さん 。 ( 佳枝 ) うん ?

聞き たい こと が ある の 。 ( 佳枝 ) どう し た の ?

結城 君 は まだ 起き上がら ない ん です か ?

あぁ … 。

( 恵 ) 彼 の 遺体 朝 に 運ば れ た って 聞き まし た 。 →

彼 は どこ へ 行った ん です か ? ( 佳枝 ) 分から ない ん だ よ 。

朝 って こと は わたし たち と は 別 の 葬儀 社 って こと に なる ね 。

彼 の 父親 は 都会 の 人間 だ も の 当然 ちゃ 当然 かも 。

じゃあ 捜し に 行か ない と 。

( 佳枝 ) 恵 ちゃん 。 都会 は 土葬 じゃ なく て 火葬 な ん だ よ 。

そんな … 。

それ じゃ 結城 君 は … 。

嫌 ぁぁ ぁぁ ! !

( 正雄 ) 夏野 火葬 さ れ た の ?

焼か れ た って 灰 に なっちゃ っ た ん だ 。 →

じゃあ 完全 に 蘇生 は なし って こと ?

( 恵 ) ふざけ ん じゃ な いわ よ ! !

( 正雄 ) う っ … ! う が っ !

どうして あんた み たい な くず が 起き上がって →

結城 君 が 焼か れ ちゃ う の ? 今 すぐ 代わり に 死に なさい よ ! !

ひ … ひど 過ぎる よ 清水 。 ( 恵 ) うるさい ! !

結城 君 が 仲間 に なって たら すぐに 幹部 クラス に なった のに 。 →

ろくに 人 も 殺せ ない あんた と 違って 。

女 って ホント →

夏野 み たい な 中身 の ない スカ し た やつ が 好き … 。

まあまあ 。 長い 人生 だ 。 ( 正雄 ) 殺さ れる … 。

その うち もっと いい 男 が 見つかる さ 。

それ に さ 都会 班 に 回し て もらえ る かも しれ ない し 。

えっ ?

( 佳枝 ) 恵 ちゃん 。 田中 きょう だい の 父親 を やった の よ ね ?

はい 。 ( 正雄 ) 都会 班 ?

知ら ない の ?

夜 の 間 に 都会 から 人間 を 間引 い て くる の 。

村 に 狩り を し に 行け ない か い 性 なし の 屍 鬼 や →

起き上がった ばかり の 屍 鬼 の ため に 。

10 月 1 5 日 4 時 17 分 。 →

俺 は これ から 起こる こと を 全て 記録 しよ う と 思う 。 →

尾崎 恭子 。 10 月 10 日 に 死亡 を 確認 。 →

死因 は 数 度 に わたる 出血 。 →

昨日 19 時 18 分 。 わずか だ が 脳波 計 が 反応 を 示し た 。 →

まぶた を 開く と 角膜 が 澄 ん で き て いる の が 分かった 。 →

死後 硬直 も 完全 に 解け て いる 。 →

脳波 が 頻繁 に 波 を 打ち 始め た 。 →

5 時 24 分 。 死 斑 が 消え 肌 が 透明 感 を 取り戻し た 。 →

6 時 32 分 。 瞳孔 反射 が 現れ た 。 →

肌 も … 。

あっ 肌 が !

( 敏夫 ) これ は ! ?

《 これ が 屍 鬼 か 》

( やす よ ) はい 橋口 です けど 。

( 敏夫 ) やす よ さ ん ? 尾崎 だ が 。

あら ! どう なさった ん です ? こんな 時間 に 。

急 で 悪い ん だ が 今日 は 休診 に する 。

えっ ! 恭子 の 具合 が よく ない 。

危篤 と 言って も いい 状態 だ 。

先生 … 。 分かり まし た 。 →

みんな に は そう 連絡 し ます 。 先生 人手 は ?

俺 だけ で いい 。 →

いや できる こと は もう いくら も ない ん だ 。 →

ただ 目 を 離し たく ない 。

分かり まし た 。

( 不 通 音 )

17 時 6 分 。 血液 を 採取 する 。

( 敏夫 ) 針 の 穴 が ふさがる の も 早い 。 →

数 分 で 完治 する 。 →

血液 に も 変容 が 起こって いる 。 →

採血 し た まま 放置 し て も 凝固 も 分離 も し ない 。 →

様々 な 薬品 に も 反応 は なかった 。 →

ただ 時間 を かけ て 暗紅 色 へ と 変わって いく 。

( 恭子 ) ん ん … 。 ん ん … 。 →

ん ん … 。

( 恭子 ) ん ん ん … 。

( 敏夫 ) 気分 は どう だ ? ( 恭子 ) ん … ん ん … 。

( 敏夫 ) 19 時 9 分 。 恭子 が 目 を 覚まし た 。 →

心配 する な 。 すぐに 眠ら せ て やる 。 ( 恭子 ) ん ん ん … ! ん ん … !

( 静 信 ) 《 まだ 進路 に 迷う 子供 だった ころ →

敏夫 と 話し た こと が ある 》

( 静 信 ) 《 僕ら は 家 を 残す ため の 道具 じゃ ない 》

《 自由 に 生きる 権利 が ある 》

《 自由 に … 。 自由 に なったら どこ へ 行 こ う と いう ん だ 》

《 僕ら に は 村 の 人 たち の 期待 が ある 》 →

《 寺 や 尾崎 を 捨て たら 村人 は どんなに か 失望 する だ ろ う 》

( 恭子 ) ん ー ! ん ー !

う ぅ … ! ん っ ! →

やっ … め っ … 。 ( 敏夫 ) 麻酔 は 効か ない 。

( 恭子 ) ん ん ! ! う ぐ っ ! ん ぐ ぐ っ !

( 敏夫 ) チオペンタール 。 ケタ ミン 。 →

ペンタゾミン や モルヒネ も 効果 が ない 。

と … と し … と し … 。

ん ー ! ( 敏夫 ) 試しに 農薬 を 注射 し て みる 。

( 恭子 ) ん ー ! ん ん っ ! →

ん ん っ ! →

ん ー っ ! !

( 鈴 の 音 )

( 敏夫 ) 鈴 の 音 。 澄 ん だ 金属 音 は 総じて 恐怖 心 を 喚起 する よう だ 。

ん っ ! う ぅ … !

( 敏夫 ) 仏壇 から 拝借 し た 本尊 に も 目 に 見え て 反応 する 。 →

脳 が 変容 し て ある 種 の 図形 や 音 に →

恐怖 する よう に なった の も かも しれ ない 。

ん ん ー っ !

( 敏夫 ) 呪術 は 有効 だ 。 →

これ で 襲撃 を かなり の ところ 回避 できる だ ろ う 。 →

問題 は →

どう やって 屍 鬼 を 停止 に 至ら しめる か 。

ん ん ! ?

ん ー っ !

( 敏夫 ) 切開 創 自体 が すぐに ふさがる 。 あと 一 つ ない 。 →

前 肘 部 を 切開 。 →

肘 正 皮 静脈 を 露出 し て 切断 する 。 →

どこ か で 血管 を 遮断 さ れ た よう に 出血 し なく なった 。 →

切 開 創 も ふさがった 。 →

なまじ な 方法 で は 負傷 さ せる の も 難しい 。

最初 に 蘇生 し た の は 脳 だった 。 脳 を 破壊 すれ ば … 。

無駄 か … 。 →

残る は 血液 の 遮断 頭部 の 切断 か →

大 動脈 大 静脈 が 集中 する 個所 の 破壊 。

ん っ ! ん ん ん ん っ ! !

これ で 駄目 なら もう … 。

( 恭子 ) ん ー ! ! ん ー ! ! →

ん ん ん ! ん ん ん ! !

( 恭子 の 悲鳴 )

( チャイム )

( 敏夫 ) 静 信 か 。 ( 静 信 ) そう 。

俺 の 部屋 の 窓 が 開 い てる から あっ ち から 回って くれ 。 手術 室 だ 。

あっ !

( 敏夫 ) いい ところ に 来 た 。

片付ける の を 手伝って くれ 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て


( 沙 子 ) わたし たち 屍 鬼 と は 人 を 狩る もの 。

( 梓 ) 「 夏野 くん が 死 ん で いる の を 見 まし た 」

( 信明 ) 節子 さん や 幹 康 君 も あんな 様子 だった の か ?

( 恵 ) 大 っ 嫌い な やつ を 苦しめる って 最高 !

( 少年 ) 痛 っ ! ( 敏夫 ) 染みる か ?

う うん 。 ( 敏夫 ) 偉い ぞ 。 フッフフ 。

( ドア の 開閉 音 )

( 少年 ) 先生 ? ( 敏夫 ) ああ … 。

これ で いい 。

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 篤 ) あー っ !

( 篤 ) クソ ババア が … 。

フゥー !

( 浪江 ) 篤 ! ! わたし が たばこ が 嫌い って →

お 知り で ない の かい ? ( 篤 ) うる せ ぇ な ー 。

たばこ は 吸って る 人 より 周り の 人間 に 害 を なす ん だ よ !

分かった ! お前 わたし を 殺す 気 だ ね !

あぁ ?

富雄 ! 富雄 って ば ! ( 篤 ) と … えっ !

( 富雄 ) どう し た ? おふくろ 。

何とか し て おくれ よ ー 。 わたし が 心配 し て →

「 たばこ は お よし よ 。 体 に 悪い よ 」 って 言ったら →

「 ぶち 殺す ぞ 」 って 。 ( 篤 ) ちょ っ … 違 … 。

( 富雄 ) 篤 ぃぃ ぃ ! !

う ぐ っ !

ウフフ ~ 。

うん ?

( 千鶴 ) こんばんは 。 ( 篤 ) フガッ フガッ !

( 千鶴 ) この 村 は 夜 が 早い の ね 。 ( 篤 ) お っ !

( 千鶴 ) まだ こんな 時間 な のに 人 っ子 一 人 歩 い て ない の 。

お … 臆病 者 ばっかり な ん だ よ 。 夜 が お っか ない ん だ と さ 。

でも あなた は 平気 な の ね ? 豪 胆 な の ね 。

当ったり め え だ ろ !

( 千鶴 ) あなた なら 話し相手 に なって くれる かしら ?

( 篤 ) 上がって き な よ 。 裏 に 階段 が ある から 。

いい の ? ( 篤 ) いい ぜ 。

あり が と 。 ウフッ 。

( 律子 ) 聡子 ちゃん 。 おはよう 。

( 聡子 ) あの … 。 雪 ちゃん 来 て ます ?

( 下山 ) 雪 ちゃん ? まだ みたい だ よ 。

( やす よ ) どう し た の ?

( 聡子 ) 昨日 の 仕事 の 後 家 に 戻って こ ない って 。

( やす よ ) まさか 事故 ? ( 聡子 ) 分かり ませ ん 。 →

とにかく 心当たり を 当たって みる って 。 →

それ でも 見つから なかったら 警察 に 届け を 出す そう です 。

あっ 先生 。 →

先生 ! 雪 ちゃん が 行方 不明 な ん です 。

そう か 。

どう し ま しょ う ? 雪 ちゃん に 何 か あったら 。

ああ … 。

先生 冷たい 。

( やす よ ) まあ 先生 も 人 の 子 だ から 。

奥さん が 危篤 と 言って も いい よう な 状態 だ し 。

でも 雪 ちゃん だって これ まで ずっと 勤め て き た ん です よ 。 →

その 雪 ちゃん が 行方 不明 に なった って いう のに →

「 そう か 」 って … 。 そんな 受け答え って あり です か ?

( ドア の 開閉 音 )

( 下山 ) そうです か 。 安 森 の … 。

( やす よ ) 徳次郎 さん … 。

( 下山 ) 徳次郎 さん が 亡くなった そう です 。

( やす よ ) これ で 工務 店 に は 誰 も い なく なっちゃ っ た わ ね 。

( 下山 ) そうです ね 。

( 律子 ) 先生 も もう 限界 な ん だ と 思う の 。 →

疲れ てる の よ 。

( 聡子 ) ええ 。 そう です ね 。

( 静 信 ) 徳次郎 さん が お 亡くなり に なり まし た 。

そう か 。

( 静 信 ) それ と 田 茂 の 広 也 君 が … 。

( 信明 ) ついに 田 茂 から も … 。 ( 静 信 ) はい 。 →

世話 役 は どう し たら いい でしょ う ? →

安 森 家 に 不幸 が あった 場合 →

田 茂 家 が 葬儀 を 仕切って い た の です が 。

竹村 吾平 老人 に 相談 しろ 。 ( 静 信 ) 分かり まし た 。

( ドア の 開く 音 ) ( 信明 ) 待て 。 →

手紙 を … 。

( 静 信 ) 桐 敷 家 に です か ? ( 信明 ) 出し て おい て くれ 。

単なる あいさつ 状 だ 。

( 静 信 ) 《 父 は 桐 敷 家 が 全て の 元凶 だ と →

気付 い て いる の か ? 》

( ノック )

( かおり ) 誰 ? ( 恵 ) あんた の 父親 は 死 ん だ よ 。

( 恵 ) かおり 。 聞こえ た ?

め … 恵 ちゃん !

( 恵 ) あんた の 父親 は 死 ん だ から ね 。

ざま あ 見ろ !

昭 ! 昭 っ ! !

( 昭 ) ん … 。 うん ? ( かおり ) 恵 ちゃん が !

窓 の 外 に ! !

( 昭 ) かおり !

お 父さん が 死 ん だ って !

( 昭 ) 父ちゃん !

い ない 。 どこ だ ?

( かおり ) わたし お 風呂 場 !

( 佐知子 ) 何 な の ?

( 昭 ) かおり !

あっ !

お 父さん ! お 父さん ! ( 昭 ) 父ちゃん !

( 佐知子 ) なあ に ? もう … 。

母ちゃん 。 父ちゃん が 死 ん だ !

は ぁ … 。 死 ん でる わけない でしょ 。

( 呼び出し 音 )

( 江 渕 ) はい 江 渕 クリニック 。

あの … 夜分 に 申し訳 あり ませ ん 。

その … 田中 と 言い ます が … 。

ああ ! 田中 良和 さん の ご 家族 です か 。 →

まさか 良和 さん に 何 か ?

あの … 倒れ まし て 。 すぐ 伺い ます 。

( 通話 の 切れる 音 )

( 江 渕 ) ごめん ください 。 ( 佐知子 ) えっ ? →

早い わ ね … 。

( 江 渕 ) 江 渕 と 申し ます 。 →

入って も よろしい でしょう か 。

( 孝江 ) 今夜 も 恭子 さん に 付い て いる の ?

( 敏夫 ) ああ 。

( 孝江 ) 恭子 さん は どう な の ?

実家 に 連絡 し ない で いい の ?

嫌 です よ 後 に なって あちら の 家 から →

つべこべ 言わ れる の は 。 ( 敏夫 ) ああ 。

お前 大丈夫 な の ? ( 敏夫 ) ああ … 。

たぶん 今夜 が 峠 だ ろ う 。

あした に は 向こう の 両親 に 連絡 する こと に なる かも しれ ない 。

( 孝江 の ため 息 )

《 恭子 の 死後 すでに 丸 四 日 が 経過 し て いる 》 →

《 屍 鬼 の 存在 が 知ら れ て ない こと から 考え て も →

死後 1 日 2 日 通夜 や 葬儀 が 行わ れ て いる 間 に →

蘇生 する こと は あり 得 ない 》 →

《 起き上がる の は 最低 でも 死後 3 日 →

72 時間 以上 たって から と いう こと だ 》 →

《 だが その 時間 は とうに 過ぎ もう 五 日 目 に 入 ろ う と して いる 》

《 もう 限界 だ 。 死体 を 抱え て いる と いう プレッシャー に →

これ 以上 耐え られ ない 》

《 今夜 一晩 。 朝 まで 待って も 起き上がら なけ れ ば あきらめる 》

( ドア の 開閉 音 )

( 敏夫 の ため 息 )

こんな もの か … 。

( 脳波 計 の 音 )

ん ?

( 敏夫 ) 《 この 死体 は 完全 に 死 ん で は い ない 》

《 違う 》 →

《 極めて ゆっくり と 腐敗 と は 別種 の 変化 が 進行 し て いる ん だ 》

恭子 。

( 佳枝 ) ほら ! 早く 寝床 に 入り な 。

( 恵 ) 佳枝 さん 。 ( 佳枝 ) うん ?

聞き たい こと が ある の 。 ( 佳枝 ) どう し た の ?

結城 君 は まだ 起き上がら ない ん です か ?

あぁ … 。

( 恵 ) 彼 の 遺体 朝 に 運ば れ た って 聞き まし た 。 →

彼 は どこ へ 行った ん です か ? ( 佳枝 ) 分から ない ん だ よ 。

朝 って こと は わたし たち と は 別 の 葬儀 社 って こと に なる ね 。

彼 の 父親 は 都会 の 人間 だ も の 当然 ちゃ 当然 かも 。

じゃあ 捜し に 行か ない と 。

( 佳枝 ) 恵 ちゃん 。 都会 は 土葬 じゃ なく て 火葬 な ん だ よ 。

そんな … 。

それ じゃ 結城 君 は … 。

嫌 ぁぁ ぁぁ ! !

( 正雄 ) 夏野 火葬 さ れ た の ?

焼か れ た って 灰 に なっちゃ っ た ん だ 。 →

じゃあ 完全 に 蘇生 は なし って こと ?

( 恵 ) ふざけ ん じゃ な いわ よ ! !

( 正雄 ) う っ … ! う が っ !

どうして あんた み たい な くず が 起き上がって →

結城 君 が 焼か れ ちゃ う の ? 今 すぐ 代わり に 死に なさい よ ! !

ひ … ひど 過ぎる よ 清水 。 ( 恵 ) うるさい ! !

結城 君 が 仲間 に なって たら すぐに 幹部 クラス に なった のに 。 →

ろくに 人 も 殺せ ない あんた と 違って 。

女 って ホント →

夏野 み たい な 中身 の ない スカ し た やつ が 好き … 。

まあまあ 。 長い 人生 だ 。 ( 正雄 ) 殺さ れる … 。

その うち もっと いい 男 が 見つかる さ 。

それ に さ 都会 班 に 回し て もらえ る かも しれ ない し 。

えっ ?

( 佳枝 ) 恵 ちゃん 。 田中 きょう だい の 父親 を やった の よ ね ?

はい 。 ( 正雄 ) 都会 班 ?

知ら ない の ?

夜 の 間 に 都会 から 人間 を 間引 い て くる の 。

村 に 狩り を し に 行け ない か い 性 なし の 屍 鬼 や →

起き上がった ばかり の 屍 鬼 の ため に 。

10 月 1 5 日 4 時 17 分 。 →

俺 は これ から 起こる こと を 全て 記録 しよ う と 思う 。 →

尾崎 恭子 。 10 月 10 日 に 死亡 を 確認 。 →

死因 は 数 度 に わたる 出血 。 →

昨日 19 時 18 分 。 わずか だ が 脳波 計 が 反応 を 示し た 。 →

まぶた を 開く と 角膜 が 澄 ん で き て いる の が 分かった 。 →

死後 硬直 も 完全 に 解け て いる 。 →

脳波 が 頻繁 に 波 を 打ち 始め た 。 →

5 時 24 分 。 死 斑 が 消え 肌 が 透明 感 を 取り戻し た 。 →

6 時 32 分 。 瞳孔 反射 が 現れ た 。 →

肌 も … 。

あっ 肌 が !

( 敏夫 ) これ は ! ?

《 これ が 屍 鬼 か 》

( やす よ ) はい 橋口 です けど 。

( 敏夫 ) やす よ さ ん ? 尾崎 だ が 。

あら ! どう なさった ん です ? こんな 時間 に 。

急 で 悪い ん だ が 今日 は 休診 に する 。

えっ ! 恭子 の 具合 が よく ない 。

危篤 と 言って も いい 状態 だ 。

先生 … 。 分かり まし た 。 →

みんな に は そう 連絡 し ます 。 先生 人手 は ?

俺 だけ で いい 。 →

いや できる こと は もう いくら も ない ん だ 。 →

ただ 目 を 離し たく ない 。

分かり まし た 。

( 不 通 音 )

17 時 6 分 。 血液 を 採取 する 。

( 敏夫 ) 針 の 穴 が ふさがる の も 早い 。 →

数 分 で 完治 する 。 →

血液 に も 変容 が 起こって いる 。 →

採血 し た まま 放置 し て も 凝固 も 分離 も し ない 。 →

様々 な 薬品 に も 反応 は なかった 。 →

ただ 時間 を かけ て 暗紅 色 へ と 変わって いく 。

( 恭子 ) ん ん … 。 ん ん … 。 →

ん ん … 。

( 恭子 ) ん ん ん … 。

( 敏夫 ) 気分 は どう だ ? ( 恭子 ) ん … ん ん … 。

( 敏夫 ) 19 時 9 分 。 恭子 が 目 を 覚まし た 。 →

心配 する な 。 すぐに 眠ら せ て やる 。 ( 恭子 ) ん ん ん … ! ん ん … !

( 静 信 ) 《 まだ 進路 に 迷う 子供 だった ころ →

敏夫 と 話し た こと が ある 》

( 静 信 ) 《 僕ら は 家 を 残す ため の 道具 じゃ ない 》

《 自由 に 生きる 権利 が ある 》

《 自由 に … 。 自由 に なったら どこ へ 行 こ う と いう ん だ 》

《 僕ら に は 村 の 人 たち の 期待 が ある 》 →

《 寺 や 尾崎 を 捨て たら 村人 は どんなに か 失望 する だ ろ う 》

( 恭子 ) ん ー ! ん ー !

う ぅ … ! ん っ ! →

やっ … め っ … 。 ( 敏夫 ) 麻酔 は 効か ない 。

( 恭子 ) ん ん ! ! う ぐ っ ! ん ぐ ぐ っ !

( 敏夫 ) チオペンタール 。 ケタ ミン 。 →

ペンタゾミン や モルヒネ も 効果 が ない 。

と … と し … と し … 。

ん ー ! ( 敏夫 ) 試しに 農薬 を 注射 し て みる 。

( 恭子 ) ん ー ! ん ん っ ! →

ん ん っ ! →

ん ー っ ! !

( 鈴 の 音 )

( 敏夫 ) 鈴 の 音 。 澄 ん だ 金属 音 は 総じて 恐怖 心 を 喚起 する よう だ 。

ん っ ! う ぅ … !

( 敏夫 ) 仏壇 から 拝借 し た 本尊 に も 目 に 見え て 反応 する 。 →

脳 が 変容 し て ある 種 の 図形 や 音 に →

恐怖 する よう に なった の も かも しれ ない 。

ん ん ー っ !

( 敏夫 ) 呪術 は 有効 だ 。 →

これ で 襲撃 を かなり の ところ 回避 できる だ ろ う 。 →

問題 は →

どう やって 屍 鬼 を 停止 に 至ら しめる か 。

ん ん ! ?

ん ー っ !

( 敏夫 ) 切開 創 自体 が すぐに ふさがる 。 あと 一 つ ない 。 →

前 肘 部 を 切開 。 →

肘 正 皮 静脈 を 露出 し て 切断 する 。 →

どこ か で 血管 を 遮断 さ れ た よう に 出血 し なく なった 。 →

切 開 創 も ふさがった 。 →

なまじ な 方法 で は 負傷 さ せる の も 難しい 。

最初 に 蘇生 し た の は 脳 だった 。 脳 を 破壊 すれ ば … 。

無駄 か … 。 →

残る は 血液 の 遮断 頭部 の 切断 か →

大 動脈 大 静脈 が 集中 する 個所 の 破壊 。

ん っ ! ん ん ん ん っ ! !

これ で 駄目 なら もう … 。

( 恭子 ) ん ー ! ! ん ー ! ! →

ん ん ん ! ん ん ん ! !

( 恭子 の 悲鳴 )

( チャイム )

( 敏夫 ) 静 信 か 。 ( 静 信 ) そう 。

俺 の 部屋 の 窓 が 開 い てる から あっ ち から 回って くれ 。 手術 室 だ 。

あっ !

( 敏夫 ) いい ところ に 来 た 。

片付ける の を 手伝って くれ 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て