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刀語, Katanagatari Episode 7 (1)

Katanagatari Episode 7 (1)

かわいそう ね

こんな 所 で 神様 の ように 特別 扱い さ れちゃ って

まるで わたし み たい

これ は 軽そう だし 手ごろな 大き さ いい でしょう

いえ 悪い の かしら

何といっても 「 悪 刀 · 鐚 」 な のだ から

なるほど 理解 した わ

じゃあ 手 土産 も できた こと だ し 善 は 急げ

いえ 悪 は 急げ かしら

何 を 勝手に わたし の 肌 に 触って いる のです か

この 草 が 草 が 草 が 草 が 草 が

どこ か 目立つ 場所 で 待って いれば

きっと 向こう から 会い に 来て くれる はず

半年 ぶり に なる の かしら

ちょっと は 成長 して いて くれる と うれしい んだ けれど

七 花

それにしても いい 気分 だ わ

いえ 悪い 気分 かしら

七 実 お前 は お前 は あまりに も 例外 過ぎて

俺 に は お前 を 育てる こと は でき ぬ

育てる こと は でき ぬ

お前 は 化け物 だ

お前 は 生まれて くる べきで は なかった

かわいそう

かわいそうな 子

あなた は 本当に かわいそう

あなた は 楽に 死ぬ こと さえ も でき ない なんて

あなた は 死ぬ こと も でき ず 生きる こと も でき ず

この 生き 損ない

あなた は

あなた なんて

あなた なんて

死ねば いい のに

くだらない

死霊 山 神 衛 隊 の 降 霊 術

物 は 試しに と 使って みた けど

こんな もの ただ の 記憶 じゃ ない

七 実

七 実

消えろ

あなた たち に 言わ れる まで も ない の よ そんな こと

右 衛 門 左 衛 門 殿

何 だ 奇 策 士 殿

そ なた は ここ まで の 道 案内 が 役目 だった のであろう

だったら どう だ もう 帰って も よい のだ ぞ

いら ず

そのような 気遣い は 必要な い

ふん そ なた とそ なた の 大事な お姫さま が 何 を しよう と

この わたし に は 関係 の ない こと だ が な

ただ 思いのほか そな たら も 暇な のだ な と

監察 所 の 将来 を 憂えた だけ だ

及ば ず

わたし は こうして いる 今 も 十全に 職務 を 全うして いる 最中 だ

奇 策 士 殿 の 刀 が いったい どのような 刀 な の か

間近で 見る だけ で 十分に それ は わたし の 仕事 と なる

どうして 俺 と 姉ちゃん が やり合わ なきゃ なら ない んだ

七 花 いいかげんに し なさい

観客 の お 二 人 が 退屈 して 雑談 を 始めて しまった で は あり ませ ん か

こんなふうに にらみ合って いて も 始まり ませ ん よ

姉ちゃん は いつも そんなふうに 上 から 物 を 言う

俺 だって この 半年 遊んで いた わけじゃ ねえ んだ ぜ

へ ぇ それ は 見れば 少し は そう だ と 分かる けど

俺 は 姉ちゃん と 1 年 前 に 立ち合った とき より ずっと 強く なって いる

姉ちゃん を ケガ さ せ たく ない んだ

ケガ

何 を 甘い こと を 言って いる の

真剣 勝負 だ と 言った でしょう

殺す 気 で 来 なさい

殺す 気 って

やっぱり ぬるく なった の ね

まったく 最初 から 心配 は して いた のだ けれど

誰 の せい な の かしら

宇練 銀閣 さん

敦賀 迷彩 さん

錆 白 兵 さん

校倉 必 さん

それとも 凍 空 こなゆき さん

あるいは あなた の せい な のでしょう か 奇 策 士 と が めさ ん

姉ちゃん が おとなしく 四季 崎 の 刀 を とがめ に 渡して くれりゃ あ

それ で 全部 丸く 収まる

剣士 と 剣士 が 向かい合って いる の よ

戦わ ない 理由 が どこ に ある と いう の

姉ちゃん は 剣士 じゃ ないだ ろ

そう かも しれ ない わ ね

わたし は 刀 だ わ

あなた は 違う の かしら

あなた に とって 戦う 理由 が 必要でしょう から

わたし は わざわざ 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 を 見つけて きた んじゃ ない

刀 が 欲しければ わたし を 倒す しか ない

とても 分かり やすい 方程式 でしょう

父さん は あなた を

自分 の 所有 者 より も 姉 を 優先 する ような 育て 方 は して い ない はずだ けれど

分かった よ

どう なって も 知ら ねえ ぞ

おい とがめ う ん

合図 頼む よ

そう か

いざ 尋常に

始め

七 花

真剣 勝負 の 最中 に 何 です が

久しぶりに 教育 して あげ ましょう

あなた は 間違って い ます

まず あなた が この 半年 数々 の 戦場 を 駆け抜け

わたし より も 強く なって いた と して も

そんな こと に 意味 は あり ませ ん

わたし に は この 目 が あり ます

全て を のみ込む わたし の 目

この 目 に かかれば あなた の 強 さ は そのまま わたし の もの と なる

一 度 見た 技 を そのまま 自分 の もの と して 習得 できる

恐るべき 戦闘 技術 秘 技 · 見 稽古

どんな 技 も どんな 動き も どんな 弱点 も

彼女 は 何の 修行 も ない まま に ただ 見て いる だけ で

虚 刀 流 の 技 を 全て 身 に 付けて しまって いる

そんな こと が あり 得る の か

いや 現に 今 七 花 は 翻弄 さ れて いる で は ない か

虚 刀 流 最終 奥義

七 花 八 裂

そして 現 時点 でも 半年 前 と 変わら ず

あなた は わたし より も ずっと 弱い

姉ちゃん 今 何 を した

あなた の 腰 を 持って 放り投げた の よ

な っ バカな こと 言う な よ

そ そうだ

姉ちゃん の 細い 腕 で 俺 を ぶん 投げ られる わけ ないだ ろ

確か 蝦夷 の 彼女 凍 空 こなゆき さん と いった わ ね

この 怪力 に 覚え が ない わけじゃ ない でしょ

そ なた さては 凍 空 一族 の 村 を

ご 明 察 です

さすが は とがめ さ ん

七 花 気 を 付けろ 七 実は こなゆき の 怪力 を 見取って いる

いや こなゆき の ような 年 端 も 行か ぬ 童 の もの で は ない

凍 空 一族 の あろう こと か 大人 の 怪力 を

村 を 襲う こと で 会得 して おる のだ

あ 生き残り が いた と は 想定 外 でした が まあ その とおり です

凍 空 の 村 を 滅ぼした の は わたし です

死霊 山 を 壊滅 さ せ たって の は 聞いて た けど よ

何で

村 を 滅ぼす 必要 が あった

うん

踊 山 で の こと も そう だ それ に この 寺 で の こと だって そう だ ろ

どうして わざわざ 全滅 さ せる 必要 が あった

姉ちゃん が そんな こと した せい で こなゆき は

変わった こと を 言う ように なった わ ねえ 七 花

雑草 を いくらか 引き抜いた ところ で やい の やい の 言わ れる 覚え は ない わ

草 むしり は わたし の 趣味 な の よ

それとも 七 花

あなた 刀 が 斬る 相手 を 選ぼう と いう の

とがめ さ ん

あなた に 七 花 を 預けた の は 失敗 だった の かも しれ ませ ん ね

確か 安心 して 任せた はずな のに

その 言い ぶり は 筋違いだ な

わたし の 刀 を わたし が どのように 使おう が わたし の 勝手だ

そう で は ない か

その とおり です ね

確かに 筋違いの 逆恨み でした

閑話 休 題

七 花 つまり そういう こと よ

この 護 剣 寺 に たどりつく まで

わたし も それなり の 戦火 を くぐり抜けて きて いる

真庭 虫 組 の 方々 を はじめ

凍 空 一族 死霊 山 神 衛 隊 そして この 護 剣 寺 で

いろんな 人 たち と 戦わ せて もらった わ

そして その 全て を 吸収 して いる

この 目 で ね

姉ちゃん ま にわ に と も 戦って た の か

むちゃくちゃだ

あなた の 七 花 八 裂く らい なら 一 度 見れば それ で 十 分

弱点 は 一 度 自分 で 使って みる まで は 分から なかった けど ね

やっぱり 気付いて い なかった の ね

よかった わ ね 七 花

これ まで の 敵 が 弱い 方 ばっかり で

こんな 明白な 弱点 を 誰 も 見抜け なかった の ね

弱点 って 何 だ よ

それ を あなた に 教えて あげる ため に わたし は 島 を 出て きた のだ けれど

ふ ぬけた あなた を 見て 気 が 変わった わ

教えて あげる もの です か

安心 し なさい

あなた に 対して 真剣 勝負 など と 言った わたし の 方 が 大人げなかった わ

今 の あなた は わたし と 立ち合う 資格 さえ も ない

あなた を 相手 に する の に は この 小指 1 本 で 十 分 よ

思い上がる の も たいがい に しろ

虚 刀 流 雛 罌粟 から 沈丁花 まで

打撃 技 混成 接続

ちなみに 忍法 足 軽 応用 編

打撃 から 全て 重 さ を 取り除いて おいて あげた わ

わたし が その 気 だったら

あなた は そうして 倒れる まで に 272 回 死んで いる

どうした の 七 花

言い たい こと が あれば 言って いい の よ

何 が 小指 1 本 しか 使わ ないだ よ

それ は あなた が 聞き 違い を した の よ

わたし は 「 この 小指 1 本 以外 の 全て で 十 分 」 と 言った の

姉ちゃん 今 の どういう こと だ よ

とぼける な あんな 無 茶 な 技

姉ちゃん の 体力 で 272 回 も の 打撃 を 繰り 出せる はず ないだ ろ

そう だ 七 実に 唯一 弱点 が ある と すれば 体 が 弱い こと

体力 持久 力 が ない こと だ

ああ まだ 話して なかった わ ね

こういう こと よ

何 だ と

姉ちゃん

そう 取り乱さ ないで ちょうだい

悪 刀 · 鐚 の これ が 正しい 使い 方 よ

いか ず ち を 帯びた この くない を 体 の 中央 に 刺し 込む こと に よって

わたし の 病 は 強制 的に 癒 や さ れる

無理やり 人体 を 活性 化 さ せる それ が 悪 刀 · 鐚

そう 悪 刀 七 実 と 言う べきでしょう か

わたし に は もう 弱点 も 死角 も あり ませ ん

顔 を 洗って 出直して き なさい

1 カ月 前 蝦夷 踊 山 を 後 に した 奇 策 士 とがめ と 鑢 七 花 は

今度 こそ 尾張 に 戻る つもりだった のです が

陸奥 の 死霊 山 に まつら れて いた 悪 刀 が 何者 か に 奪わ れた と の 知らせ を 聞き

急きょ その 下手人 の 足取り を 追う こと と なり ました

なぜ そ なた が ここ に いる

言わ ず

誰 尾張 の お姫さま の 懐 刀 左 右田 右 衛 門 左 衛 門 殿 だ

ひどい 変わり者 だ

うなずか ず あなた に 言わ れ たく は ない

あの 不愉快な 女 に 言わ れて

わたし たち の 動向 を 探って いる のであろう

外れ ず

ま ぁ その とおり だ が な しかし こ たび の わたし は ただ の 連絡 係 だ

下手人 の 潜伏 先 を 教えよう

そう だ その 死霊 山 から 刀 を 奪った やつ は どこ に 隠れて おる のだ

隠れ ず

ふてぶてしく も その 下手人 は

剣士 の 聖地 清涼 院 護 剣 寺 に 居座って おる

否 清涼 院 護 剣 寺 を 乗っ取った と 言う べき か

壱 級 災害 指定 地域 死霊 山 を 壊滅 に 追い込み

今 剣士 の 聖地 たる 清涼 院 護 剣 寺 を 制圧 して いる

悪 刀 · 鐚 の 所有 者 の 名 は

鑢 七 実

えー っ

ただ今 戻り ました

遅い

いつも いつも 本当に いつまで 待た せる 気 よ この 愚か 者

申し訳 あり ませ ん

それ で 死霊 山 が 全滅 した なんて バカげた 噂 は

どこ まで が 真実だった

はっ それ が 全て

全て 嘘 だった

全て 本当でした

いえ 死霊 山 の こと だけ に かぎり ませ ん

鑢 七 実 と いう 虚 刀 流 の 姉 化け物 です

は ぁ

今ごろ は どう なって いる の か な

はっ はい

死霊 山 を 壊滅 さ せた 化け物 が まさか 虚 刀 流 の 姉 だった なんて

死霊 山 だけ で は ない

蝦夷 の 踊 山 も また

虚 刀 流 の 姉 鑢 七 実に よって 滅ぼさ れて いた のだろう

お 主 が あの 後 集めて きた 情報 に よれば な

あっ はい

全 日本 最強 鑢 七 実 か

凍 空 一族 を 全滅 どう やったら そんな こと が できる の よ

その 時点 じゃ その お 姉ちゃん は

悪 刀 · 鐚 を 所有 して は い なかった んでしょ

はな から 十分に 化け物 だった と いう こと です


Katanagatari Episode 7 (1) Katanagatari Episode 7 (1)

かわいそう ね

こんな 所 で 神様 の ように 特別 扱い さ れちゃ って |しょ||かみさま||よう に|とくべつ|あつかい|||

まるで わたし み たい

これ は 軽そう だし   手ごろな 大き さ   いい でしょう ||けいそう||てごろな|おおき|||

いえ   悪い の かしら |わるい||

何といっても 「 悪 刀 · 鐚 」 な のだ から なんといっても|あく|かたな|びた|||

なるほど   理解 した わ |りかい||

じゃあ   手 土産 も できた こと だ し   善 は 急げ |て|みやげ||||||ぜん||いそげ

いえ   悪 は 急げ かしら |あく||いそげ|

何 を 勝手に   わたし の 肌 に 触って いる のです か なん||かってに|||はだ||さわって||の です|

この 草 が 草 が 草 が 草 が 草 が |くさ||くさ||くさ||くさ||くさ|

どこ か 目立つ 場所 で 待って いれば ||めだつ|ばしょ||まって|

きっと 向こう から 会い に 来て くれる はず |むこう||あい||きて||

半年 ぶり に なる の かしら はんとし|||||

ちょっと は 成長 して いて くれる と うれしい んだ けれど ||せいちょう|||||||

七 花 なな|か

それにしても   いい 気分 だ わ ||きぶん||

いえ   悪い 気分 かしら |わるい|きぶん|

七 実   お前 は   お前 は あまりに も 例外 過ぎて なな|み|おまえ||おまえ||||れいがい|すぎて

俺 に は お前 を 育てる こと は でき ぬ おれ|||おまえ||そだてる||||

育てる こと は でき ぬ そだてる||||

お前 は 化け物 だ おまえ||ばけもの|

お前 は 生まれて くる べきで は なかった おまえ||うまれて||||

かわいそう

かわいそうな 子 |こ

あなた は 本当に かわいそう ||ほんとうに|

あなた は 楽に 死ぬ こと さえ も でき ない なんて ||らくに|しぬ||||||

あなた は 死ぬ こと も でき ず   生きる こと も でき ず ||しぬ|||||いきる||||

この 生き 損ない |いき|そこない

あなた は

あなた なんて

あなた なんて

死ねば いい のに しねば||

くだらない

死霊 山 神 衛 隊 の 降 霊 術 しりょう|やま|かみ|まもる|たい||ふ|れい|じゅつ

物 は 試しに と 使って みた けど ぶつ||ためしに||つかって||

こんな もの ただ の 記憶 じゃ ない ||||きおく||

七 実 なな|み

七 実 なな|み

消えろ きえろ

あなた たち に 言わ れる まで も ない の よ   そんな こと |||いわ||||||||

右 衛 門 左 衛 門 殿 みぎ|まもる|もん|ひだり|まもる|もん|しんがり

何 だ   奇 策 士 殿 なん||き|さく|し|しんがり

そ なた は ここ まで の 道 案内 が 役目 だった のであろう ||||||どう|あんない||やくめ||

だったら どう だ もう 帰って も よい のだ ぞ ||||かえって||||

いら ず

そのような 気遣い は 必要な い |きづかい||ひつような|

ふん   そ なた とそ なた の 大事な お姫さま が 何 を しよう と ||||||だいじな|おひめさま||なん|||

この わたし に は 関係 の ない こと だ が な ||||かんけい||||||

ただ   思いのほか そな たら も 暇な のだ な と |おもいのほか||||ひまな|||

監察 所 の 将来 を 憂えた だけ だ かんさつ|しょ||しょうらい||うれえた||

及ば ず およば|

わたし は こうして いる 今 も   十全に 職務 を 全うして いる 最中 だ ||||いま||じゅうぜんに|しょくむ||まっとうして||さい なか|

奇 策 士 殿 の 刀 が いったい   どのような 刀 な の か き|さく|し|しんがり||かたな||||かたな|||

間近で 見る だけ で 十分に   それ は わたし の 仕事 と なる まぢかで|みる|||じゅうぶんに|||||しごと||

どうして 俺 と 姉ちゃん が やり合わ なきゃ なら ない んだ |おれ||ねえちゃん||やりあわ||||

七 花   いいかげんに し なさい なな|か|||

観客 の お 二 人 が 退屈 して 雑談 を 始めて しまった で は あり ませ ん か かんきゃく|||ふた|じん||たいくつ||ざつだん||はじめて|||||||

こんなふうに にらみ合って いて も   始まり ませ ん よ |にらみあって|||はじまり|||

姉ちゃん は いつも そんなふうに   上 から 物 を 言う ねえちゃん||||うえ||ぶつ||いう

俺 だって この 半年   遊んで いた わけじゃ ねえ んだ ぜ おれ|||はんとし|あそんで|||||

へ ぇ   それ は 見れば 少し は そう だ   と 分かる けど ||||みれば|すこし|||||わかる|

俺 は 姉ちゃん と 1 年 前 に 立ち合った とき より   ずっと 強く なって いる おれ||ねえちゃん||とし|ぜん||たちあった||||つよく||

姉ちゃん を ケガ さ せ たく ない んだ ねえちゃん||けが|||||

ケガ けが

何 を 甘い こと を 言って いる の なん||あまい|||いって||

真剣 勝負 だ と 言った でしょう しんけん|しょうぶ|||いった|

殺す 気 で 来 なさい ころす|き||らい|

殺す 気 って ころす|き|

やっぱり ぬるく なった の ね

まったく   最初 から 心配 は して いた のだ けれど |さいしょ||しんぱい|||||

誰 の せい な の かしら だれ|||||

宇練 銀閣 さん うれん|ぎんかく|

敦賀 迷彩 さん つるが|めいさい|

錆 白 兵 さん さび|しろ|つわもの|

校倉 必 さん あぜくら|ひつ|

それとも 凍 空 こなゆき さん |こお|から||

あるいは   あなた の せい な のでしょう か   奇 策 士 と が めさ ん |||||||き|さく|し||||

姉ちゃん が おとなしく 四季 崎 の 刀 を とがめ に 渡して くれりゃ あ ねえちゃん|||しき|さき||かたな||||わたして||

それ で 全部 丸く 収まる ||ぜんぶ|まるく|おさまる

剣士 と 剣士 が 向かい合って いる の よ けんし||けんし||むかいあって|||

戦わ ない 理由 が どこ に ある と いう の たたかわ||りゆう|||||||

姉ちゃん は 剣士 じゃ ないだ ろ ねえちゃん||けんし|||

そう かも しれ ない わ ね

わたし は 刀 だ わ ||かたな||

あなた は 違う の かしら ||ちがう||

あなた に とって 戦う 理由 が 必要でしょう から |||たたかう|りゆう||ひつようでしょう|

わたし は わざわざ 四季 崎記 紀 の 変 体 刀 を 見つけて きた んじゃ ない |||しき|さきき|き||へん|からだ|かたな||みつけて|||

刀 が 欲しければ   わたし を 倒す しか ない かたな||ほしければ|||たおす||

とても 分かり やすい 方程式 でしょう |わかり||ほうていしき|

父さん は あなた を とうさん|||

自分 の 所有 者 より も 姉 を 優先 する ような 育て 方 は して い ない はずだ けれど じぶん||しょゆう|もの|||あね||ゆうせん|||そだて|かた||||||

分かった よ わかった|

どう なって も 知ら ねえ ぞ |||しら||

おい   とがめ う ん

合図   頼む よ あいず|たのむ|

そう か

いざ 尋常に |じんじょうに

始め はじめ

七 花 なな|か

真剣 勝負 の 最中 に 何 です が しんけん|しょうぶ||さい なか||なん||

久しぶりに 教育 して あげ ましょう ひさしぶりに|きょういく|||

あなた は 間違って い ます ||まちがって||

まず あなた が この 半年 数々 の 戦場 を 駆け抜け ||||はんとし|かずかず||せんじょう||かけぬけ

わたし より も 強く なって いた と して も |||つよく|||||

そんな こと に 意味 は あり ませ ん |||いみ||||

わたし に は この 目 が あり ます ||||め|||

全て を のみ込む わたし の 目 すべて||のみこむ|||め

この 目 に かかれば   あなた の 強 さ は そのまま わたし の もの と なる |め|||||つよ||||||||

一 度 見た 技 を そのまま 自分 の もの と して 習得 できる ひと|たび|みた|わざ|||じぶん|||||しゅうとく|

恐るべき 戦闘 技術 秘 技 · 見 稽古 おそるべき|せんとう|ぎじゅつ|ひ|わざ|み|けいこ

どんな 技 も   どんな 動き も   どんな 弱点 も |わざ|||うごき|||じゃくてん|

彼女 は 何の 修行 も ない まま に   ただ 見て いる だけ で かのじょ||なんの|しゅぎょう||||||みて|||

虚 刀 流 の 技 を 全て 身 に 付けて しまって いる きょ|かたな|りゅう||わざ||すべて|み||つけて||

そんな こと が あり 得る の か ||||える||

いや   現に 今   七 花 は 翻弄 さ れて いる で は ない か |げんに|いま|なな|か||ほんろう|||||||

虚 刀 流 最終 奥義 きょ|かたな|りゅう|さいしゅう|おうぎ

七 花 八 裂 なな|か|やっ|さ

そして 現 時点 でも 半年 前 と 変わら ず |げん|じてん||はんとし|ぜん||かわら|

あなた は わたし より も ずっと 弱い ||||||よわい

姉ちゃん   今 何 を した ねえちゃん|いま|なん||

あなた の 腰 を 持って 放り投げた の よ ||こし||もって|ほうりなげた||

な っ バカな こと 言う な よ ||ばかな||いう||

そ   そうだ |そう だ

姉ちゃん の 細い 腕 で   俺 を ぶん 投げ られる わけ ないだ ろ ねえちゃん||ほそい|うで||おれ|||なげ||||

確か 蝦夷 の 彼女   凍 空 こなゆき さん と いった わ ね たしか|えぞ||かのじょ|こお|から||||||

この 怪力 に 覚え が ない わけじゃ ない でしょ |かいりき||おぼえ|||||

そ なた さては 凍 空 一族 の 村 を |||こお|から|いちぞく||むら|

ご 明 察 です |あき|さっ|

さすが は とがめ さ ん

七 花   気 を 付けろ   七 実は こなゆき の 怪力 を 見取って いる なな|か|き||つけろ|なな|じつは|||かいりき||みとって|

いや   こなゆき の ような 年 端 も 行か ぬ 童 の もの で は ない ||||とし|はし||いか||わらべ|||||

凍 空 一族 の あろう こと か 大人 の 怪力 を こお|から|いちぞく|||||おとな||かいりき|

村 を 襲う こと で 会得 して おる のだ むら||おそう|||えとく|||

あ 生き残り が いた と は 想定 外 でした が |いきのこり|||||そうてい|がい|| まあ   その とおり です

凍 空 の 村 を 滅ぼした の は   わたし です こお|から||むら||ほろぼした||||

死霊 山 を 壊滅 さ せ たって の は 聞いて た けど よ しりょう|やま||かいめつ||||||きいて|||

何で なんで

村 を 滅ぼす 必要 が あった むら||ほろぼす|ひつよう||

うん

踊 山 で の こと も そう だ   それ に この 寺 で の こと だって そう だ ろ おどり|やま||||||||||てら|||||||

どうして わざわざ 全滅 さ せる 必要 が あった ||ぜんめつ|||ひつよう||

姉ちゃん が そんな こと した せい で   こなゆき は ねえちゃん||||||||

変わった こと を 言う ように なった わ ねえ   七 花 かわった|||いう|よう に||||なな|か

雑草 を いくらか 引き抜いた ところ で   やい の やい の 言わ れる 覚え は ない わ ざっそう|||ひきぬいた|||||||いわ||おぼえ|||

草 むしり は わたし の 趣味 な の よ くさ|||||しゅみ|||

それとも   七 花 |なな|か

あなた 刀 が 斬る 相手 を 選ぼう と いう の |かたな||きる|あいて||えらぼう|||

とがめ さ ん

あなた に 七 花 を 預けた の は 失敗 だった の かも しれ ませ ん ね ||なな|か||あずけた|||しっぱい|||||||

確か 安心 して 任せた はずな のに たしか|あんしん||まかせた||

その 言い ぶり は 筋違いだ な |いい|||すじちがいだ|

わたし の 刀 を わたし が どのように 使おう が わたし の 勝手だ ||かたな||||どのよう に|つかおう||||かってだ

そう で は ない か

その とおり です ね

確かに 筋違いの 逆恨み でした たしかに|すじちがいの|さかうらみ|

閑話 休 題 かんわ|きゅう|だい

七 花   つまり そういう こと よ なな|か||||

この 護 剣 寺 に たどりつく まで |まもる|けん|てら|||

わたし も それなり の 戦火 を くぐり抜けて きて いる ||||せんか||くぐりぬけて||

真庭 虫 組 の 方々 を はじめ まにわ|ちゅう|くみ||ほうぼう||

凍 空 一族   死霊 山 神 衛 隊   そして この 護 剣 寺 で こお|から|いちぞく|しりょう|やま|かみ|まもる|たい|||まもる|けん|てら|

いろんな 人 たち と 戦わ せて もらった わ |じん|||たたかわ|||

そして その 全て を 吸収 して いる ||すべて||きゅうしゅう||

この 目 で ね |め||

姉ちゃん   ま にわ に と も 戦って た の か ねえちゃん||||||たたかって|||

むちゃくちゃだ

あなた の 七 花 八 裂く らい なら   一 度 見れば それ で 十 分 ||なな|か|やっ|さく|||ひと|たび|みれば|||じゅう|ぶん

弱点 は 一 度 自分 で 使って みる まで は 分から なかった けど ね じゃくてん||ひと|たび|じぶん||つかって||||わから|||

やっぱり 気付いて い なかった の ね |きづいて||||

よかった わ ね   七 花 |||なな|か

これ まで の 敵 が 弱い 方 ばっかり で |||てき||よわい|かた||

こんな 明白な 弱点 を 誰 も 見抜け なかった の ね |めいはくな|じゃくてん||だれ||みぬけ|||

弱点 って 何 だ よ じゃくてん||なん||

それ を あなた に 教えて あげる ため に わたし は 島 を 出て きた のだ けれど ||||おしえて||||||しま||でて|||

ふ ぬけた あなた を 見て 気 が 変わった わ ||||みて|き||かわった|

教えて あげる もの です か おしえて||||

安心 し なさい あんしん||

あなた に 対して 真剣 勝負 など と 言った わたし の 方 が 大人げなかった わ ||たいして|しんけん|しょうぶ|||いった|||かた||おとなげなかった|

今 の あなた は わたし と 立ち合う 資格 さえ も ない いま||||||たちあう|しかく|||

あなた を 相手 に する の に は   この 小指 1 本 で 十 分 よ ||あいて|||||||こゆび|ほん||じゅう|ぶん|

思い上がる の も   たいがい に しろ おもいあがる|||||

虚 刀 流   雛 罌粟 から 沈丁花 まで きょ|かたな|りゅう|ひな|けし||じんちょうげ|

打撃 技 混成 接続 だげき|わざ|こんせい|せつぞく

ちなみに 忍法 足 軽 応用 編 |にんぽう|あし|けい|おうよう|へん

打撃 から 全て 重 さ を 取り除いて おいて あげた わ だげき||すべて|おも|||とりのぞいて|||

わたし が その 気 だったら |||き|

あなた は そうして 倒れる まで に 272 回 死んで いる |||たおれる|||かい|しんで|

どうした の   七 花 ||なな|か

言い たい こと が あれば 言って いい の よ いい|||||いって|||

何 が 小指 1 本 しか 使わ ないだ よ なん||こゆび|ほん||つかわ||

それ は あなた が 聞き 違い を した の よ ||||きき|ちがい||||

わたし は 「 この 小指 1 本 以外 の 全て で 十 分 」 と 言った の |||こゆび|ほん|いがい||すべて||じゅう|ぶん||いった|

姉ちゃん   今 の どういう こと だ よ ねえちゃん|いま|||||

とぼける な   あんな 無 茶 な 技 |||む|ちゃ||わざ

姉ちゃん の 体力 で  272 回 も の 打撃 を 繰り 出せる はず ないだ ろ ねえちゃん||たいりょく||かい|||だげき||くり|だせる|||

そう だ   七 実に 唯一 弱点 が ある と すれば   体 が 弱い こと ||なな|じつに|ゆいいつ|じゃくてん|||||からだ||よわい|

体力   持久 力 が ない こと だ たいりょく|じきゅう|ちから||||

ああ   まだ 話して なかった わ ね ||はなして|||

こういう こと よ

何 だ と なん||

姉ちゃん ねえちゃん

そう 取り乱さ ないで ちょうだい |とりみださ||

悪 刀 · 鐚 の これ が 正しい 使い 方 よ あく|かたな|びた||||ただしい|つかい|かた|

いか ず ち を 帯びた この くない を 体 の 中央 に 刺し 込む こと に よって ||||おびた||||からだ||ちゅうおう||さし|こむ|||

わたし の 病 は 強制 的に 癒 や さ れる ||びょう||きょうせい|てきに|いや|||

無理やり 人体 を 活性 化 さ せる   それ が 悪 刀 · 鐚 むりやり|じんたい||かっせい|か|||||あく|かたな|びた

そう   悪 刀 七 実 と 言う べきでしょう か |あく|かたな|なな|み||いう||

わたし に は もう 弱点 も 死角 も あり ませ ん ||||じゃくてん||しかく||||

顔 を 洗って 出直して き なさい かお||あらって|でなおして||

1 カ月 前   蝦夷 踊 山 を 後 に した 奇 策 士 とがめ と 鑢 七 花 は かげつ|ぜん|えぞ|おどり|やま||あと|||き|さく|し|||やすり|なな|か|

今度 こそ 尾張 に 戻る つもりだった のです が こんど||おわり||もどる||の です|

陸奥 の 死霊 山 に まつら れて いた 悪 刀 が 何者 か に 奪わ れた と の 知らせ を 聞き むつ||しりょう|やま|||||あく|かたな||なにもの|||うばわ||||しらせ||きき

急きょ その 下手人 の 足取り を 追う こと と なり ました きゅうきょ||げしゅにん||あしどり||おう||||

なぜ そ なた が ここ に いる

言わ ず いわ|

誰 尾張 の お姫さま の 懐 刀 だれ|おわり||おひめさま||ふところ|かたな 左 右田 右 衛 門 左 衛 門 殿 だ ひだり|みぎた|みぎ|まもる|もん|ひだり|まもる|もん|しんがり|

ひどい 変わり者 だ |かわりもの|

うなずか ず   あなた に 言わ れ たく は ない ||||いわ||||

あの 不愉快な 女 に 言わ れて |ふゆかいな|おんな||いわ|

わたし たち の 動向 を 探って いる のであろう |||どうこう||さぐって||

外れ ず はずれ|

ま ぁ   その とおり だ が な   しかし こ たび の わたし は ただ の 連絡 係 だ |||||||||||||||れんらく|かかり|

下手人 の 潜伏 先 を 教えよう げしゅにん||せんぷく|さき||おしえよう

そう だ   その 死霊 山 から 刀 を 奪った やつ は どこ に 隠れて おる のだ |||しりょう|やま||かたな||うばった|||||かくれて||

隠れ ず かくれ|

ふてぶてしく も その 下手人 は |||げしゅにん|

剣士 の 聖地 清涼 院 護 剣 寺 に   居座って おる けんし||せいち|せいりょう|いん|まもる|けん|てら||いすわって|

否   清涼 院 護 剣 寺 を 乗っ取った と 言う べき か いな|せいりょう|いん|まもる|けん|てら||のっとった||いう||

壱 級 災害 指定 地域 死霊 山 を 壊滅 に 追い込み いち|きゅう|さいがい|してい|ちいき|しりょう|やま||かいめつ||おいこみ

今 剣士 の 聖地 たる 清涼 院 護 剣 寺 を 制圧 して いる いま|けんし||せいち||せいりょう|いん|まもる|けん|てら||せいあつ||

悪 刀 · 鐚 の 所有 者 の 名 は あく|かたな|びた||しょゆう|もの||な|

鑢 七 実 やすり|なな|み

えー っ

ただ今 戻り ました ただいま|もどり|

遅い おそい

いつも いつも 本当に いつまで 待た せる 気 よ   この 愚か 者 ||ほんとうに||また||き|||おろか|もの

申し訳 あり ませ ん もうし わけ|||

それ で   死霊 山 が 全滅 した なんて バカげた 噂 は ||しりょう|やま||ぜんめつ|||ばかげた|うわさ|

どこ まで が 真実だった |||しんじつだった

はっ   それ が 全て |||すべて

全て 嘘 だった すべて|うそ|

全て 本当でした すべて|ほんとうでした

いえ   死霊 山 の こと だけ に かぎり ませ ん |しりょう|やま|||||||

鑢 七 実 と いう 虚 刀 流 の 姉   化け物 です やすり|なな|み|||きょ|かたな|りゅう||あね|ばけもの|

は ぁ

今ごろ は どう なって いる の か な いまごろ|||||||

はっ はい

死霊 山 を 壊滅 さ せた 化け物 が   まさか 虚 刀 流 の 姉 だった なんて しりょう|やま||かいめつ|||ばけもの|||きょ|かたな|りゅう||あね||

死霊 山 だけ で は ない しりょう|やま||||

蝦夷 の 踊 山 も また えぞ||おどり|やま||

虚 刀 流 の 姉 鑢 七 実に よって   滅ぼさ れて いた のだろう きょ|かたな|りゅう||あね|やすり|なな|じつに||ほろぼさ|||

お 主 が あの 後 集めて きた 情報 に よれば な |おも|||あと|あつめて||じょうほう|||

あっ はい

全 日本 最強 鑢 七 実 か ぜん|にっぽん|さいきょう|やすり|なな|み|

凍 空 一族 を 全滅   どう やったら そんな こと が できる の よ こお|から|いちぞく||ぜんめつ||||||||

その 時点 じゃ その お 姉ちゃん は |じてん||||ねえちゃん|

悪 刀 · 鐚 を 所有 して は い なかった んでしょ あく|かたな|びた||しょゆう|||||

はな から 十分に 化け物 だった と いう こと です ||じゅうぶんに|ばけもの|||||