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ソードアート・オンライン1 アインクラッド (Sword Art Online 1: Aincrad), ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (19)

ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (19)

当然の 興味 を 顔 に 浮かべ 、クライン が 急き込む よう に 言った。

「しゅ 、出現 条件 は」

「解って りゃ もう 公開 して る」

首 を 横 に 振った 俺 に 、カタナ 使い も 、ま ぁ そうだ ろ なあ と 唸る。

出現 の 条件 が はっきり 判明 して いない 武器 スキル 、ランダム 条件 で は と さえ 言われて いる 、それ が エクストラスキル と 呼ば れる もの だ。 身近な ところ で は 、クライン の 《カタナ 》も 含ま れる。 もっとも カタナスキル は それほど レア な もの で は なく 、曲 刀 を しつこく 修行 して いれば 出現 する 場合 が 多い。

その よう に 、十 数 種類 知られて いる エクストラスキル の 殆ど は 最低で も 十 人 以上 が 習得 に 成功 して いる のだ が 、俺 が 持つ 《二 刀 流 》と 、ある 男 の スキル だけ は その 限り で は なかった。

この 二 つ は 、おそらく 習得者 が それぞれ 一 人 しか いない 《ユニーク スキル 》と でも 言う べき もの だ。 今 まで 俺 は 二 刀 流 の 存在 を ひた隠し に して いた が 、今日 から 俺 の 名 が 二 人 目 の ユニークスキル 使い と して 巷間 に 流れる こと に なる だろう。 これ だけ の 人数 の 前 で 披露 して しまって は 、とても 隠し おおせる もの で は ない。

「った く 、水臭 ぇ なあ キリト。 そんな すげ え ウラワザ 黙ってる なんて よう」

「スキル の 出し 方 が 判って れば 隠したり し ない さ。 でも さっぱり 心当たり が ない んだ」

ぼやく クライン に 、俺 は 肩 を すくめて 見せた。

言葉 に 偽り は ない。 一 年 ほど 昔 の ある 日 、何気なく スキルウインドウ を 見たら 、いきなり 《二 刀 流 》の 名前 が 出現 して いた のだ。 きっかけ など 見当もつかない。

以来 、俺 は 二 刀 流 スキル の 修行 は 常に 人 の 目 が ない 所 で のみ 行って きた。 ほぼ マスター して から は 、たとえ ソロ 攻略 中 、モンスター 相手 でも よほど の ピンチ の 時 以外 使用 して いない。 いざ と いう 時 の ため の 保身 と いう 意味 も あった が 、それ 以上 に 無用な 注目 を 集める の が 嫌だった から だ。

いっそ 俺 の 他 に 早く 二 刀 流 を 持った 奴 が 出て こ ない もの か と 思って いた のだ が──。

俺 は 指先 で 耳 の あたり を 搔 き ながら 、ぼそぼそ 言葉 を 続けた。

「……こんな レアスキル 持ってる なんて 知られたら 、しつこく 聞かれたり ……いろいろ ある だろう 、その……」

クライン が 深く 頷いた。

「ネットゲーマー は 嫉妬 深い から な。 オレ は 人間 が できて る から ともかく 、妬み 嫉み は そり ゃあ ある だろう なあ。 それ に……」

そこ で 口 を つぐむ と 、俺 に しっか と 抱きついた まま の アスナ を 意味 あり げ に 見 やり 、にやにや 笑う。

「……まあ 、苦労 も 修行 の うち と 思って 頑張り たまえ 、若者 よ」

「勝手な こと を……」

クライン は 腰 を かがめて 俺 の 肩 を ポン と 叩く と 、振り向いて 《軍 》の 生存者 たち の ほう へ と 歩いて いった。

「お前たち 、本部 まで 戻れる か?

クライン の 言葉 に 一 人 が 頷く。 まだ 十代 とおぼしき 男 だ。

「よし。 今日 あった こと を 上 に しっかり 伝える んだ。 二度と こういう 無謀な 真似 を し ない よう に な」

「はい。 ……あ 、あの ……有り難う ございました」

「礼 なら 奴 に 言え」

こちら に 向かって 親指 を 振る。 軍 の プレイヤー たち は よろよろ と 立ち上がる と 、座り込んだ まま の 俺 と アスナ に 深々と 頭 を 下げ 、部屋 から 出て いった。 回廊 に 出た ところ で 次々 と 結晶 を 使い テレポート して いく。

その 青い 光 が 収まる と 、クライン は 、さて 、と いう 感じ で 両手 を 腰 に 当てた。

「オレ たち は このまま 七十五 層 の 転移 門 を アクティベート して 行く けど 、お前 は どう する? 今日 の 立役者 だ し 、お前 が やる か?

「いや 、任せる よ。 俺 は もう ヘトヘト だ」

「そう か。 ……気 を つけて 帰れよ」

クライン は 頷く と 仲間 に 合図 した。 六 人 で 、部屋 の 奥 に ある 大 扉 の ほう に 歩いて 行く。 その 向こう に は 上層 へ と 繫 がる 階段 が ある はずだ。 扉 の 前 で 立ち止まる と 、カタナ 使い は ヒョイ と 振り向いた。

「その ……、キリト よ。 お め ぇが よ 、軍 の 連中 を 助け に 飛び込んで いった 時 な……」

「……なんだ よ?

「オレ ぁ ……なん つうか 、嬉しかった よ。 そん だけ だ 、また な」

まったく 意味不明 だ。 首 を 傾げる 俺 に 、クライン は ぐいっと 右手 の 親指 を 突き出す と 、扉 を 開けて 仲間 と 一緒に その 向こう へ 消えて いった。

だだっ広い ボス 部屋 に 、俺 と アスナ だけ が 残された。 床 から 噴き上げて いた 青い 炎 は いつの間にか 静まり 、部屋 全体 に 渦巻いて いた 妖気 も 噓 の よう に 消え去って いる。 周囲 に は 回廊 と 同じ ような 柔らかな 光 が 満ち 、先ほど の 死闘 の 痕跡 すら 残って いない。

まだ 俺 の 肩 に 頭 を 乗せた まま の アスナ に 声 を かける。

「おい ……アスナ……」

「…………怖かった ……君 が 死んじゃったら どう しよう か と ……思って……」

その 声 は 、今 まで 聞いた こと が ない ほど かぼそく 震えて いた。

「……何 言って んだ 、先 に 突っ込んで 行った の は そっち だろう」

言い ながら 、俺 は そっと アスナ の 肩 に 手 を かけた。 あまり あからさまに 触れる と ハラスメント フラグ が 立って しまう が 、今 は そんな こと を 気 に して いる 状況 で は ない だろう。

ごく 軽く 引き寄せる と 、右 耳 の すぐ 近く から 、ほとんど 音 に なら ない 声 が 響いた。

「わたし 、しばらく ギルド 休む」

「や 、休んで ……どう する んだ?

「……君 と しばらく パーティー 組むって 言った の ……もう 忘れた?

その 言葉 を 聞いた 途端。

胸 の 奥底 に 、強烈な 渇望 と しか 思え ない 感情 が 生まれた こと に 、俺 自身 が 驚愕 した。

俺 は ──ソロ プレイヤー の キリト は 、この 世界 で 生き残る ため に 、他の プレイヤー 全員 を 切り捨てた 人間 だ。 二 年 前 、全て が 始まった あの 日 に 、たった 一 人 の 友人 に 背 を 向け 、見捨てて 立ち去った 卑怯者 だ。

そんな 俺 に 、仲間 を ──まして や それ 以上 の 存在 を 求める 資格 など ない。

俺 は すでに 、その こと を 取り返しのつかない 形 で 思い知ら されて いる。 同じ 過ち は 二度と 犯さ ない 、もう 誰 の 心 も 求め ない と 、俺 は 固く 誓った はずだ。

なのに。

強張った 左手 は 、どうしても アスナ の 肩 から 離れよう と し ない。 触れあう 部分 から 伝わる 仮想 の 体温 を 、どうしても 引き剝がす こと が でき ない。

巨大な 矛盾 と 迷い 、そして 名づけられ ない 一 つ の 感情 を 抱え ながら 、俺 は ごく 短く 答えた。

「……解った」

こくり 、と 肩 の 上 で アスナ が 頷いた。

翌日。

俺 は 朝 から エギル の 雑貨 屋 の 二 階 に シケ込んで いた。 揺り椅子 に ふんぞり返って 足 を 組み 、店 の 不良在庫 な のだろう 奇妙な 風味 の お茶 を 不機嫌に 啜る。

すでに アルゲード 中 ──いや 、多分 アインクラッド 中 が 昨日 の 《事件 》で 持ちきり だった。

フロア 攻略 、新しい 街 へ の ゲート 開通 だけ でも 充分な 話題 な のに 、今回 は いろいろ オマケ が あった から だ。 曰 く 《軍 の 大 部隊 を 全滅 さ せた 悪魔 》、曰 く 《それ を 単独 撃破 した 二 刀 流 使い の 五十 連 撃》……。 尾ひれ が 付く に も ほど が ある。

どう やって 調べた の か 、俺 の ねぐら に は 早朝 から 剣士 やら 情報 屋 が 押しかけて きて 、脱出 する の に わざわざ 転移 結晶 を 使う ハメ に なった のだ。

「引っ越して やる ……どっか すげ え 田舎 フロア の 、絶対 見つから ない ような 村 に……」

ブツブツ 呟く 俺 に 、エギル が にやにや と 笑顔 を 向けて くる。

「まあ 、そう 言う な。 一 度 くらい は 有名 人 に なって みる の も いい さ。 どう だ 、いっそ 講演会 でも やって みちゃ。 会場 と チケット の 手はず は オレ が」

「する か!

叫び 、俺 は 右手 の カップ を エギル の 頭 の 右横 五十 センチ を 狙って 投げた。 が 、染み付いた 動作 に よって 投 剣 スキル が 発動 して しまい 、輝き ながら 猛烈な 勢い で すっ飛んだ カップ は 、部屋 の 壁 に 激突 して 大音響 を 撒き散らした。

幸い 、建物 本体 は 破壊 不能な ので 、視界 に 【Immortal Object 】の システム タグ が 浮かんだ だけ だった が 、家具 に 命中 したら 粉砕 して いた に 違いない。

「おわっ、殺す 気 か!

大げさに 喚 く 店主 に 、ワリ 、と 右手 を 上げて 俺 は 再び 椅子 に 沈み 込んだ。

エギル は 今 、俺 が 昨日 の 戦闘 で 手 に 入れた お 宝 を 鑑定 して いる。 時々 奇声 を 上げて いる ところ を 見る と 、それなり に 貴重品 も 含まれて いる らしい。

下取り して もらった 売上げ は アスナ と 山分け する こと に して いた が 、その アスナ は 約束 の 時間 を 過ぎて も さっぱり 現れ ない。 フレンド メッセージ を 飛ばして おいた ので ここ に 居る こと は 判って いる はずだ が。

昨日 は 、七十四 層 主 街 区 の 転移 門 で 別れた。 アスナ は ギルド に 休暇 届け を 出して くる と 言って 、KoB 本部 の ある 五十五 層 グランザム に 向かった。 クラディール と の こと も ある し 、俺 も 同行 しよう か と 申し出た のだ が 、笑顔 で 大丈夫 と 言われて は 引き下がる しか なかった。

すでに 待ち合わせ の 時刻 から 二 時間 が 経過 して いる。 ここ まで 遅れる からに は 何 か あった のだろう か。 やはり 無理矢理 に でも ついて行く べきだった か。 込み上げて くる 不安 を 抑え こむ よう に 茶 を 飲み干す。

俺 の 前 の 大きな ポット が 空 に なり 、エギル の 鑑定 が あらかた 終了 した 頃 、ようやく 階段 を トントン と 駆け上って くる 足音 が した。 勢い よく 扉 が 開か れる。

「よ 、アスナ……」

遅かった じゃ ない か 、と いう 言葉 を 俺 は 吞み込んだ。 いつも の ユニフォーム 姿 の アスナ は 顔 を 蒼白に し 、大きな 目 を 不安 そうに 見開いて いる。 両手 を 胸 の 前 で 固く 握り 、二 、三 度 唇 を 嚙み締めた あと、

「どう しよう ……キリト 君……」

と 泣き出し そうな 声 で 言った。

「大変な こと に ……なっちゃった……」

新しく 淹れた 茶 を 一口 飲み 、ようやく 顔 に 血の気 が 戻った アスナ は ぽつりぽつり と 話し はじめた。 気を利かせた エギル は 一 階 の 店先 に 出て いる。

「昨日 ……あれ から グランザム の ギルド 本部 に 行って 、あった こと を 全部 団長 に 報告 した の。 それ で 、ギルド の 活動 お 休み したいって 言って 、その 日 は 家 に 戻って……。 今朝 の ギルド 例会 で 承認 さ れる と 思った んだけど……」

俺 と 向かい合わせ の 椅子 に 座った アスナ は 、視線 を 伏せて お茶 の カップ を 両手 で 握り締め ながら 言った。

「団長 が ……わたし の 一 時 脱退 を 認める に は 、条件 が あるって……。 キリト 君 と ……立ち会いたい ……って……」

「な……」

一瞬 理解 でき なかった。 立ち会う ……と は つまり デュエル を する と いう こと だろう か。 アスナ の 活動 休止 が どうして そんな 話 に なる の か?

その 疑問 を 口 に する と、

「わたし に も 解んない……」

アスナ は 俯いて 首 を 振った。

「そんな こと して も 意味 ないって 一生懸命 説得 した んだけど ……どうしても 聞いて くれ なくって……」

「でも ……珍しい な。 あの 男 が 、そんな 条件 出して くる なんて……」

脳裏 に 、彼 の 姿 を 思い浮かべ ながら 呟く。

「そう な の よ。 団長 は 、普段 ギルド の 活動 どころ か 、フロア 攻略 の 作戦 と かも わたし たち に 一任 して ぜんぜん 命令 と かし ない の。 でも 、何で か 今回 に 限って……」

KoB の 団長 は 、その 圧倒 的な カリスマ で 己 の ギルド どころ か 攻略 組 ほぼ 全員 の 心 を 掌握 して いる が 、意外に も 指示 命令 の たぐい は ほとんど 発さ ない。 俺 も 、対 ボス 戦闘 で 何度 も 肩 を 並べた が 、無言 で 戦線 を 支え 続ける その 姿 に は 敬服 せ ず に は いられ ない もの が ある。

そんな 男 が 今回 に 限って 異論 を 差し挟み 、しかも その 内容 が 俺 と の デュエル と は 、いったい どういう こと な の か。

首 を 捻り つつ も 、俺 は アスナ を 安心 さ せる べく 言った。


ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (19) |おんらいん| Sword Art Online 1 Aincrad (19)

当然の 興味 を 顔 に 浮かべ 、クライン が 急き込む よう に 言った。 とうぜんの|きょうみ||かお||うかべ|||せきこむ|||いった

「しゅ 、出現 条件 は」 |しゅつげん|じょうけん|

「解って りゃ もう 公開 して る」 わかって|||こうかい|| If I knew that, I would have published it already."

首 を 横 に 振った 俺 に 、カタナ 使い も 、ま ぁ そうだ ろ なあ と 唸る。 くび||よこ||ふった|おれ|||つかい||||そう だ||||うなる

出現 の 条件 が はっきり 判明 して いない 武器 スキル 、ランダム 条件 で は と さえ 言われて いる 、それ が エクストラスキル と 呼ば れる もの だ。 しゅつげん||じょうけん|||はんめい|||ぶき|||じょうけん|||||いわれて||||||よば||| Weapon skills whose conditions of appearance are not known, and are even said to be random, are called extra skills. 身近な ところ で は 、クライン の 《カタナ 》も 含ま れる。 みぢかな||||||||ふくま| Familiar examples include Klein's Katana. もっとも カタナスキル は それほど レア な もの で は なく 、曲 刀 を しつこく 修行 して いれば 出現 する 場合 が 多い。 ||||||||||きょく|かたな|||しゅぎょう|||しゅつげん||ばあい||おおい The katana skill is not that rare, and often appears after persistent training with the curved sword.

その よう に 、十 数 種類 知られて いる エクストラスキル の 殆ど は 最低で も 十 人 以上 が 習得 に 成功 して いる のだ が 、俺 が 持つ 《二 刀 流 》と 、ある 男 の スキル だけ は その 限り で は なかった。 |||じゅう|すう|しゅるい|しられて||||ほとんど||さいていで||じゅう|じん|いじょう||しゅうとく||せいこう|||||おれ||もつ|ふた|かたな|りゅう|||おとこ||||||かぎり||| As such, most of the dozen or so known extra skills have been successfully mastered by at least a dozen or more people, but my own "two-sword sword" and a certain man's skills were not among them.

この 二 つ は 、おそらく 習得者 が それぞれ 一 人 しか いない 《ユニーク スキル 》と でも 言う べき もの だ。 |ふた||||しゅうとく しゃ|||ひと|じん|||ゆにーく||||いう||| These two skills should be called "unique skills," as there is probably only one person who has mastered each of them. 今 まで 俺 は 二 刀 流 の 存在 を ひた隠し に して いた が 、今日 から 俺 の 名 が 二 人 目 の ユニークスキル 使い と して 巷間 に 流れる こと に なる だろう。 いま||おれ||ふた|かたな|りゅう||そんざい||ひたかくし|||||きょう||おれ||な||ふた|じん|め|||つかい|||ちまた かん||ながれる|||| これ だけ の 人数 の 前 で 披露 して しまって は 、とても 隠し おおせる もの で は ない。 |||にんずう||ぜん||ひろう|||||かくし||||| It is impossible to hide the fact that the show was performed in front of such a large number of people.

「った く 、水臭 ぇ なあ キリト。 ||みずくさ||| You stink of water, Kirito. そんな すげ え ウラワザ 黙ってる なんて よう」 ||||だまってる|| That's amazing. I can't believe you didn't tell us.

「スキル の 出し 方 が 判って れば 隠したり し ない さ。 ||だし|かた||わかって||かくしたり||| If they knew how to conjure up a skill, they wouldn't hide it. でも さっぱり 心当たり が ない んだ」 ||こころあたり||| But I have no idea what it is.

ぼやく クライン に 、俺 は 肩 を すくめて 見せた。 |||おれ||かた|||みせた

言葉 に 偽り は ない。 ことば||いつわり|| Words cannot be false. 一 年 ほど 昔 の ある 日 、何気なく スキルウインドウ を 見たら 、いきなり 《二 刀 流 》の 名前 が 出現 して いた のだ。 ひと|とし||むかし|||ひ|なにげなく|||みたら||ふた|かたな|りゅう||なまえ||しゅつげん||| きっかけ など 見当もつかない。 ||けんとう も つか ない I have no idea how it all started.

以来 、俺 は 二 刀 流 スキル の 修行 は 常に 人 の 目 が ない 所 で のみ 行って きた。 いらい|おれ||ふた|かたな|りゅう|||しゅぎょう||とわに|じん||め|||しょ|||おこなって| ほぼ マスター して から は 、たとえ ソロ 攻略 中 、モンスター 相手 でも よほど の ピンチ の 時 以外 使用 して いない。 |ますたー|||||そろ|こうりゃく|なか||あいて||||ぴんち||じ|いがい|しよう|| Since almost mastering it, I have not used it except in a pinch, even against a monster during a solo attack. いざ と いう 時 の ため の 保身 と いう 意味 も あった が 、それ 以上 に 無用な 注目 を 集める の が 嫌だった から だ。 |||じ||||ほしん|||いみ|||||いじょう||むような|ちゅうもく||あつめる|||いやだった|| This was partly to protect themselves in case of emergency, but more importantly, because they did not want to attract unnecessary attention.

いっそ 俺 の 他 に 早く 二 刀 流 を 持った 奴 が 出て こ ない もの か と 思って いた のだ が──。 |おれ||た||はやく|ふた|かたな|りゅう||もった|やつ||でて||||||おもって||| I had hoped that someone else would emerge soon with two swords, but....

俺 は 指先 で 耳 の あたり を 搔 き ながら 、ぼそぼそ 言葉 を 続けた。 おれ||ゆびさき||みみ||||||||ことば||つづけた

「……こんな レアスキル 持ってる なんて 知られたら 、しつこく 聞かれたり ……いろいろ ある だろう 、その……」 ||もってる||しられたら||きかれたり|||| "If people know you have this ...... rare skill, they're going to pester you and ...... ask you about it and stuff, you know, that ......."

クライン が 深く 頷いた。 ||ふかく|うなずいた

「ネットゲーマー は 嫉妬 深い から な。 ||しっと|ふかい|| オレ は 人間 が できて る から ともかく 、妬み 嫉み は そり ゃあ ある だろう なあ。 おれ||にんげん||||||ねたみ|そねみ|||||| I'm a good human being, but I'm sure there is jealousy. それ に……」

そこ で 口 を つぐむ と 、俺 に しっか と 抱きついた まま の アスナ を 意味 あり げ に 見 やり 、にやにや 笑う。 ||くち||||おれ||||だきついた|||||いみ||||み||に やに や|わらう I shut my mouth and looked meaningfully at Asuna, who was still hugging me, and smiled wryly at her.

「……まあ 、苦労 も 修行 の うち と 思って 頑張り たまえ 、若者 よ」 |くろう||しゅぎょう||||おもって|がんばり||わかもの| ...... Well, just think of hard work as part of your training and do your best, young man.

「勝手な こと を……」 かってな|| "I'm not going to do anything I don't want to ......."

クライン は 腰 を かがめて 俺 の 肩 を ポン と 叩く と 、振り向いて 《軍 》の 生存者 たち の ほう へ と 歩いて いった。 ||こし|||おれ||かた||||たたく||ふりむいて|ぐん||せいぞん しゃ||||||あるいて|

「お前たち 、本部 まで 戻れる か? おまえたち|ほんぶ||もどれる|

クライン の 言葉 に 一 人 が 頷く。 ||ことば||ひと|じん||うなずく まだ 十代 とおぼしき 男 だ。 |じゅうだい|と お ぼ しき|おとこ| He was a man who appeared to be still in his teens.

「よし。 今日 あった こと を 上 に しっかり 伝える んだ。 きょう||||うえ|||つたえる| We need to make sure that we tell the top management about what happened today. 二度と こういう 無謀な 真似 を し ない よう に な」 にどと||むぼうな|まね||||||

「はい。 ……あ 、あの ……有り難う ございました」 ||ありがたう|

「礼 なら 奴 に 言え」 れい||やつ||いえ

こちら に 向かって 親指 を 振る。 ||むかって|おやゆび||ふる 軍 の プレイヤー たち は よろよろ と 立ち上がる と 、座り込んだ まま の 俺 と アスナ に 深々と 頭 を 下げ 、部屋 から 出て いった。 ぐん||ぷれいやー|||よ ろ よ ろ||たちあがる||すわりこんだ|||おれ||||しんしんと|あたま||さげ|へや||でて| 回廊 に 出た ところ で 次々 と 結晶 を 使い テレポート して いく。 かいろう||でた|||つぎつぎ||けっしょう||つかい|||

その 青い 光 が 収まる と 、クライン は 、さて 、と いう 感じ で 両手 を 腰 に 当てた。 |あおい|ひかり||おさまる|||||||かんじ||りょうて||こし||あてた

「オレ たち は このまま 七十五 層 の 転移 門 を アクティベート して 行く けど 、お前 は どう する? おれ||||しちじゅうご|そう||てんい|もん||||いく||おまえ||| The first thing to do is to make sure that you have a good understanding of what you are doing and how to do it. 今日 の 立役者 だ し 、お前 が やる か? きょう||たてやくしゃ|||おまえ|||

「いや 、任せる よ。 |まかせる| No, I'll leave it to you. 俺 は もう ヘトヘト だ」 おれ||||

「そう か。 ……気 を つけて 帰れよ」 き|||かえれよ

クライン は 頷く と 仲間 に 合図 した。 ||うなずく||なかま||あいず| 六 人 で 、部屋 の 奥 に ある 大 扉 の ほう に 歩いて 行く。 むっ|じん||へや||おく|||だい|とびら||||あるいて|いく その 向こう に は 上層 へ と 繫 がる 階段 が ある はずだ。 |むこう|||じょうそう|||||かいだん||| 扉 の 前 で 立ち止まる と 、カタナ 使い は ヒョイ と 振り向いた。 とびら||ぜん||たちどまる|||つかい||||ふりむいた

「その ……、キリト よ。 お め ぇが よ 、軍 の 連中 を 助け に 飛び込んで いった 時 な……」 ||||ぐん||れんちゅう||たすけ||とびこんで||じ| You know, when you jumped in to save those guys in the army. ......"

「……なんだ よ?

「オレ ぁ ……なん つうか 、嬉しかった よ。 おれ||||うれしかった| I was happy to see ....... そん だけ だ 、また な」

まったく 意味不明 だ。 |いみ ふめい| 首 を 傾げる 俺 に 、クライン は ぐいっと 右手 の 親指 を 突き出す と 、扉 を 開けて 仲間 と 一緒に その 向こう へ 消えて いった。 くび||かしげる|おれ||||ぐ いっと|みぎて||おやゆび||つきだす||とびら||あけて|なかま||いっしょに||むこう||きえて|

だだっ広い ボス 部屋 に 、俺 と アスナ だけ が 残された。 だだっぴろい|ぼす|へや||おれ|||||のこされた 床 から 噴き上げて いた 青い 炎 は いつの間にか 静まり 、部屋 全体 に 渦巻いて いた 妖気 も 噓 の よう に 消え去って いる。 とこ||ふきあげて||あおい|えん||いつのまにか|しずまり|へや|ぜんたい||うずまいて||ようき||||||きえさって| 周囲 に は 回廊 と 同じ ような 柔らかな 光 が 満ち 、先ほど の 死闘 の 痕跡 すら 残って いない。 しゅうい|||かいろう||おなじ||やわらかな|ひかり||みち|さきほど||しとう||こんせき||のこって|

まだ 俺 の 肩 に 頭 を 乗せた まま の アスナ に 声 を かける。 |おれ||かた||あたま||のせた|||||こえ|| I talk to Asuna, who still has her head on my shoulder.

「おい ……アスナ……」

「…………怖かった ……君 が 死んじゃったら どう しよう か と ……思って……」 こわかった|きみ||しんじゃったら|||||おもって

その 声 は 、今 まで 聞いた こと が ない ほど かぼそく 震えて いた。 |こえ||いま||きいた||||||ふるえて|

「……何 言って んだ 、先 に 突っ込んで 行った の は そっち だろう」 なん|いって||さき||つっこんで|おこなった||||

言い ながら 、俺 は そっと アスナ の 肩 に 手 を かけた。 いい||おれ|||||かた||て|| While saying this, I gently put my hand on Asuna's shoulder. あまり あからさまに 触れる と ハラスメント フラグ が 立って しまう が 、今 は そんな こと を 気 に して いる 状況 で は ない だろう。 ||ふれる|||||たって|||いま|||||き||||じょうきょう|||| Too much overt mention of this could raise the flag of harassment, but this is probably not the time to be worrying about it.

ごく 軽く 引き寄せる と 、右 耳 の すぐ 近く から 、ほとんど 音 に なら ない 声 が 響いた。 |かるく|ひきよせる||みぎ|みみ|||ちかく|||おと||||こえ||ひびいた When I pulled him very lightly toward me, a barely audible voice echoed from very close to my right ear.

「わたし 、しばらく ギルド 休む」 ||ぎるど|やすむ I'm taking a break from the guild.

「や 、休んで ……どう する んだ? |やすんで|||

「……君 と しばらく パーティー 組むって 言った の ……もう 忘れた? きみ|||ぱーてぃー|くむって|いった|||わすれた "Did you forget ...... that I said I was going to party with you for a while?

その 言葉 を 聞いた 途端。 |ことば||きいた|とたん

胸 の 奥底 に 、強烈な 渇望 と しか 思え ない 感情 が 生まれた こと に 、俺 自身 が 驚愕 した。 むね||おくそこ||きょうれつな|かつぼう|||おもえ||かんじょう||うまれた|||おれ|じしん||きょうがく| I was astonished to find that deep in my heart, I had developed what I could only think of as an intense craving.

俺 は ──ソロ プレイヤー の キリト は 、この 世界 で 生き残る ため に 、他の プレイヤー 全員 を 切り捨てた 人間 だ。 おれ||そろ|ぷれいやー|||||せかい||いきのこる|||たの|ぷれいやー|ぜんいん||きりすてた|にんげん| 二 年 前 、全て が 始まった あの 日 に 、たった 一 人 の 友人 に 背 を 向け 、見捨てて 立ち去った 卑怯者 だ。 ふた|とし|ぜん|すべて||はじまった||ひ|||ひと|じん||ゆうじん||せ||むけ|みすてて|たちさった|ひきょう しゃ|

そんな 俺 に 、仲間 を ──まして や それ 以上 の 存在 を 求める 資格 など ない。 |おれ||なかま|||||いじょう||そんざい||もとめる|しかく||

俺 は すでに 、その こと を 取り返しのつかない 形 で 思い知ら されて いる。 おれ||||||とりかえし の つか ない|かた||おもいしら|| 同じ 過ち は 二度と 犯さ ない 、もう 誰 の 心 も 求め ない と 、俺 は 固く 誓った はずだ。 おなじ|あやまち||にどと|おかさ|||だれ||こころ||もとめ|||おれ||かたく|ちかった| I should have sworn that I would never make the same mistake again, that I would never seek anyone's heart again.

なのに。

強張った 左手 は 、どうしても アスナ の 肩 から 離れよう と し ない。 きょう はった|ひだりて|||||かた||はなれよう||| Her tense left hand would not move away from Asuna's shoulder. 触れあう 部分 から 伝わる 仮想 の 体温 を 、どうしても 引き剝がす こと が でき ない。 ふれあう|ぶぶん||つたわる|かそう||たいおん|||ひき 剝 が す||||

巨大な 矛盾 と 迷い 、そして 名づけられ ない 一 つ の 感情 を 抱え ながら 、俺 は ごく 短く 答えた。 きょだいな|むじゅん||まよい||なづけられ||ひと|||かんじょう||かかえ||おれ|||みじかく|こたえた

「……解った」 わかった

こくり 、と 肩 の 上 で アスナ が 頷いた。 こく り||かた||うえ||||うなずいた

翌日。 よくじつ

俺 は 朝 から エギル の 雑貨 屋 の 二 階 に シケ込んで いた。 おれ||あさ||||ざっか|や||ふた|かい||しけ こんで| I had spent the morning on the second floor of Egil's grocery store. 揺り椅子 に ふんぞり返って 足 を 組み 、店 の 不良在庫 な のだろう 奇妙な 風味 の お茶 を 不機嫌に 啜る。 よう り いす||ふんぞりかえって|あし||くみ|てん||ふりょう ざいこ|||きみょうな|ふうみ||おちゃ||ふきげんに|せつ る I flop down on a rocking chair, cross my legs, and sip grimly at a cup of tea that has a strange flavor, probably from the store's bad inventory.

すでに アルゲード 中 ──いや 、多分 アインクラッド 中 が 昨日 の 《事件 》で 持ちきり だった。 ||なか||たぶん||なか||きのう||じけん||もち きり| All of Algade - or perhaps all of Aincrad - had already been affected by yesterday's "incident.

フロア 攻略 、新しい 街 へ の ゲート 開通 だけ でも 充分な 話題 な のに 、今回 は いろいろ オマケ が あった から だ。 ふろあ|こうりゃく|あたらしい|がい|||げーと|かいつう|||じゅうぶんな|わだい|||こんかい||||||| The floor strategy and the opening of the gate to the new town were enough to get people talking, but this time there were many extras. 曰 く 《軍 の 大 部隊 を 全滅 さ せた 悪魔 》、曰 く 《それ を 単独 撃破 した 二 刀 流 使い の 五十 連 撃》……。 いわく||ぐん||だい|ぶたい||ぜんめつ|||あくま|いわく||||たんどく|げきは||ふた|かたな|りゅう|つかい||ごじゅう|れん|う The demon that annihilated a large military unit is said to be "a two-sword wielder who single-handedly destroyed it." ...... 尾ひれ が 付く に も ほど が ある。 おひれ||つく|||||

どう やって 調べた の か 、俺 の ねぐら に は 早朝 から 剣士 やら 情報 屋 が 押しかけて きて 、脱出 する の に わざわざ 転移 結晶 を 使う ハメ に なった のだ。 ||しらべた|||おれ|||||そうちょう||けんし||じょうほう|や||おしかけて||だっしゅつ|||||てんい|けっしょう||つかう|||| I don't know how I found this out, but swordsmen and informants had been coming to my roost since early in the morning, and I had to go to the trouble of using the transfer crystal to escape.

「引っ越して やる ……どっか すげ え 田舎 フロア の 、絶対 見つから ない ような 村 に……」 ひっこして|||||いなか|ふろあ||ぜったい|みつから|||むら| "I'm going to move to ...... some shithole village in the middle of nowhere where I'll never be found."

ブツブツ 呟く 俺 に 、エギル が にやにや と 笑顔 を 向けて くる。 ぶつぶつ|つぶやく|おれ||||に やに や||えがお||むけて| Egil smiles at me as I mumble to myself.

「まあ 、そう 言う な。 ||いう| 一 度 くらい は 有名 人 に なって みる の も いい さ。 ひと|たび|||ゆうめい|じん||||||| どう だ 、いっそ 講演会 でも やって みちゃ。 |||こうえん かい||| 会場 と チケット の 手はず は オレ が」 かいじょう||ちけっと||てはず||おれ|

「する か!

叫び 、俺 は 右手 の カップ を エギル の 頭 の 右横 五十 センチ を 狙って 投げた。 さけび|おれ||みぎて||かっぷ||||あたま||みぎよこ|ごじゅう|せんち||ねらって|なげた が 、染み付いた 動作 に よって 投 剣 スキル が 発動 して しまい 、輝き ながら 猛烈な 勢い で すっ飛んだ カップ は 、部屋 の 壁 に 激突 して 大音響 を 撒き散らした。 |しみついた|どうさ|||とう|けん|||はつどう|||かがやき||もうれつな|いきおい||すっとんだ|かっぷ||へや||かべ||げきとつ||だい おんきょう||まきちらした The cup flew off at a furious pace, crashing into the wall of the room and making a loud noise.

幸い 、建物 本体 は 破壊 不能な ので 、視界 に 【Immortal Object 】の システム タグ が 浮かんだ だけ だった が 、家具 に 命中 したら 粉砕 して いた に 違いない。 さいわい|たてもの|ほんたい||はかい|ふのうな||しかい||immortal|object||しすてむ|||うかんだ||||かぐ||めいちゅう||ふんさい||||ちがいない Fortunately, the building itself is indestructible, so the [Immortal Object] system tag was only visible, but if the furniture had been hit, it would have been smashed.

「おわっ、殺す 気 か! |ころす|き| "Oh, he's going to kill me!

大げさに 喚 く 店主 に 、ワリ 、と 右手 を 上げて 俺 は 再び 椅子 に 沈み 込んだ。 おおげさに|かん||てんしゅ||||みぎて||あげて|おれ||ふたたび|いす||しずみ|こんだ

エギル は 今 、俺 が 昨日 の 戦闘 で 手 に 入れた お 宝 を 鑑定 して いる。 ||いま|おれ||きのう||せんとう||て||いれた||たから||かんてい|| Egil is now appraising the treasure I obtained in yesterday's battle. 時々 奇声 を 上げて いる ところ を 見る と 、それなり に 貴重品 も 含まれて いる らしい。 ときどき|きせい||あげて||||みる||||きちょう しな||ふくまれて|| The occasional strange noises indicate that some of them contain valuable items.

下取り して もらった 売上げ は アスナ と 山分け する こと に して いた が 、その アスナ は 約束 の 時間 を 過ぎて も さっぱり 現れ ない。 した とり|||うりあげ||||やまわけ||||||||||やくそく||じかん||すぎて|||あらわれ| The trade-in proceeds were to be split with Asuna, but she did not show up at all even after the agreed-upon time. フレンド メッセージ を 飛ばして おいた ので ここ に 居る こと は 判って いる はずだ が。 |めっせーじ||とばして|||||いる|||わかって||| I know you know I'm here because I sent you a friend message.

昨日 は 、七十四 層 主 街 区 の 転移 門 で 別れた。 きのう||しちじゅうよん|そう|おも|がい|く||てんい|もん||わかれた アスナ は ギルド に 休暇 届け を 出して くる と 言って 、KoB 本部 の ある 五十五 層 グランザム に 向かった。 ||ぎるど||きゅうか|とどけ||だして|||いって|kob|ほんぶ|||ごじゅうご|そう|||むかった クラディール と の こと も ある し 、俺 も 同行 しよう か と 申し出た のだ が 、笑顔 で 大丈夫 と 言われて は 引き下がる しか なかった。 |||||||おれ||どうこう||||もうしでた|||えがお||だいじょうぶ||いわれて||ひきさがる||

すでに 待ち合わせ の 時刻 から 二 時間 が 経過 して いる。 |まちあわせ||じこく||ふた|じかん||けいか|| ここ まで 遅れる からに は 何 か あった のだろう か。 ||おくれる|||なん|||| I wonder if there was some reason for the delay. やはり 無理矢理 に でも ついて行く べきだった か。 |むりやり|||ついていく|| 込み上げて くる 不安 を 抑え こむ よう に 茶 を 飲み干す。 こみあげて||ふあん||おさえ||||ちゃ||のみほす

俺 の 前 の 大きな ポット が 空 に なり 、エギル の 鑑定 が あらかた 終了 した 頃 、ようやく 階段 を トントン と 駆け上って くる 足音 が した。 おれ||ぜん||おおきな|ぽっと||から|||||かんてい||あら かた|しゅうりょう||ころ||かいだん||とんとん||かけあがって||あしおと|| 勢い よく 扉 が 開か れる。 いきおい||とびら||あか|

「よ 、アスナ……」

遅かった じゃ ない か 、と いう 言葉 を 俺 は 吞み込んだ。 おそかった||||||ことば||おれ||吞 みこんだ I took her words, "It's too late for that," to heart. いつも の ユニフォーム 姿 の アスナ は 顔 を 蒼白に し 、大きな 目 を 不安 そうに 見開いて いる。 ||ゆにふぉーむ|すがた||||かお||そうはくに||おおきな|め||ふあん|そう に|みひらいて| Asuna, in her usual uniform, has a pallor on her face, and her large eyes are wide with anxiety. 両手 を 胸 の 前 で 固く 握り 、二 、三 度 唇 を 嚙み締めた あと、 りょうて||むね||ぜん||かたく|にぎり|ふた|みっ|たび|くちびる||嚙 み しめた| I clasped my hands tightly in front of my chest and bit my lips a couple of times,

「どう しよう ……キリト 君……」 |||きみ

と 泣き出し そうな 声 で 言った。 |なきだし|そう な|こえ||いった

「大変な こと に ……なっちゃった……」 たいへんな|||

新しく 淹れた 茶 を 一口 飲み 、ようやく 顔 に 血の気 が 戻った アスナ は ぽつりぽつり と 話し はじめた。 あたらしく|えんれた|ちゃ||ひとくち|のみ||かお||ちのけ||もどった|||||はなし| After taking a sip of the newly brewed tea, Asuna's blood finally returned to her face and she began to talk in a whispered voice. 気を利かせた エギル は 一 階 の 店先 に 出て いる。 き を きかせた|||ひと|かい||みせさき||でて| A witty Egil is out in front of a storefront on the first floor.

「昨日 ……あれ から グランザム の ギルド 本部 に 行って 、あった こと を 全部 団長 に 報告 した の。 きのう|||||ぎるど|ほんぶ||おこなって||||ぜんぶ|だんちょう||ほうこく|| それ で 、ギルド の 活動 お 休み したいって 言って 、その 日 は 家 に 戻って……。 ||ぎるど||かつどう||やすみ|した いって|いって||ひ||いえ||もどって So, I told them I wanted to take a break from guild activities and went home for the day. ...... 今朝 の ギルド 例会 で 承認 さ れる と 思った んだけど……」 けさ||ぎるど|れいかい||しょうにん||||おもった| I thought it would be approved at the guild meeting this morning. ......"

俺 と 向かい合わせ の 椅子 に 座った アスナ は 、視線 を 伏せて お茶 の カップ を 両手 で 握り締め ながら 言った。 おれ||むかいあわせ||いす||すわった|||しせん||ふせて|おちゃ||かっぷ||りょうて||にぎりしめ||いった

「団長 が ……わたし の 一 時 脱退 を 認める に は 、条件 が あるって……。 だんちょう||||ひと|じ|だったい||みとめる|||じょうけん|| キリト 君 と ……立ち会いたい ……って……」 |きみ||たちあいたい| Kirito, I want to be ...... with you. ...... is ......"

「な……」

一瞬 理解 でき なかった。 いっしゅん|りかい|| 立ち会う ……と は つまり デュエル を する と いう こと だろう か。 たちあう||||||||||| I guess ...... means to be present, which means to play a duel. アスナ の 活動 休止 が どうして そんな 話 に なる の か? ||かつどう|きゅうし||||はなし|||| Why is Asuna's suspension such a big deal?

その 疑問 を 口 に する と、 |ぎもん||くち|||

「わたし に も 解んない……」 |||かい ん ない

アスナ は 俯いて 首 を 振った。 ||うつむいて|くび||ふった

「そんな こと して も 意味 ないって 一生懸命 説得 した んだけど ……どうしても 聞いて くれ なくって……」 ||||いみ||いっしょうけんめい|せっとく||||きいて||

「でも ……珍しい な。 |めずらしい| あの 男 が 、そんな 条件 出して くる なんて……」 |おとこ|||じょうけん|だして||

脳裏 に 、彼 の 姿 を 思い浮かべ ながら 呟く。 のうり||かれ||すがた||おもいうかべ||つぶやく

「そう な の よ。 団長 は 、普段 ギルド の 活動 どころ か 、フロア 攻略 の 作戦 と かも わたし たち に 一任 して ぜんぜん 命令 と かし ない の。 だんちょう||ふだん|ぎるど||かつどう|||ふろあ|こうりゃく||さくせん||||||いちにん|||めいれい|||| The leader of the guild usually leaves all guild activities and floor strategies to us, and never gives us orders. でも 、何で か 今回 に 限って……」 |なんで||こんかい||かぎって

KoB の 団長 は 、その 圧倒 的な カリスマ で 己 の ギルド どころ か 攻略 組 ほぼ 全員 の 心 を 掌握 して いる が 、意外に も 指示 命令 の たぐい は ほとんど 発さ ない。 kob||だんちょう|||あっとう|てきな|||おのれ||ぎるど|||こうりゃく|くみ||ぜんいん||こころ||しょうあく||||いがいに||しじ|めいれい|||||はっさ| The leader of KoB, with his overwhelming charisma, has the hearts and minds of his guild and almost all of the members of the guild, but surprisingly, he rarely issues orders or directives. 俺 も 、対 ボス 戦闘 で 何度 も 肩 を 並べた が 、無言 で 戦線 を 支え 続ける その 姿 に は 敬服 せ ず に は いられ ない もの が ある。 おれ||たい|ぼす|せんとう||なんど||かた||ならべた||むごん||せんせん||ささえ|つづける||すがた|||けいふく|||||いら れ|||| I, too, have stood shoulder to shoulder many times in battle against bosses, and I can't help but admire the way they silently continue to support the front line.

そんな 男 が 今回 に 限って 異論 を 差し挟み 、しかも その 内容 が 俺 と の デュエル と は 、いったい どういう こと な の か。 |おとこ||こんかい||かぎって|いろん||さしはさみ|||ないよう||おれ||||||||||| What in the world is the meaning of a man like that, who for the first time, is interjecting an objection, and the content of that objection is a duel with me?

首 を 捻り つつ も 、俺 は アスナ を 安心 さ せる べく 言った。 くび||ねじり|||おれ||||あんしん||||いった