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ソードアート・オンライン1 アインクラッド (Sword Art Online 1: Aincrad), ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (11)

ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (11)

「しかし ……いい の か? その……」

「なに よ 、君 が もちかけた 話 じゃ ない。 他 に 料理 できる 場所 が ない んだから 仕方ない でしょ!

ぷいっと 顔 を そむけ 、アスナ は そのまま 階段 を とんとん 登って 行って しまう。 俺 は 覚悟 を 決めて その あと に 続いた。

「お ……おじゃま します」

おそるおそる ドア を くぐった 俺 は 、言葉 を 失って 立ち尽くした。

未だかつて 、これほど 整えられた プレイヤー ホーム は 見た こと が ない。 広い リビング 兼 ダイニング と 、隣接 した キッチン に は 明るい 色 の 木製 家具 が しつらえられ 、統一感 の ある モス グリーン の クロス 類 で 飾られて いる。 全て 最高 級 の プレイヤーメイド 品 だろう。

そのくせ 過度に 装飾 的で は なく 、実に 居心地 の 良 さ そうな 雰囲気 を 漂わせて いる。 俺 の ねぐら と は 、ひとこと で 言って 雲泥 の 差 だ。 招待 し なくて よかった 、と しみじみ 思う。

「なあ ……これ 、いくら かかってる の……?

即物的な 俺 の 質問 に、

「ん ー 、部屋 と 内装 あわせる と 四千 k くらい。 着替えて くる から そのへん 適当 に 座って て」

サラリと 答える と アスナ は リビング の 奥 に ある ドア に 消えて 行った。 k が 千 を あらわす 短縮 語 な ので 、四千 k と は 四百万 コル の こと である。 俺 とても 日々 最 前線 に 籠もって いる からに は それ くらい の 金額 は 稼いで いる はずな のだ が 、ちょっと 気 に 入った 剣 や 怪しい 装備 品 に 次々 無駄遣い して しまい 、貯まる ヒマ が ない。 柄 に も なく 自省 し つつ 、ふかふか の ソファ に どさっと 沈み込む。

やがて 、簡素な 白い 短 衣 と 膝上 丈 の スカート に 着替えた アスナ が 奥 の 部屋 から 現れた。 着替え と 言って も 実際 に 脱いだり 着たり の 動作 が ある わけで は なく 、ステータスウインドウ の 装備 フィギュア を 操作 する だけ な のだ が 、着衣 変更 の 数 秒間 は 下着 姿 の 表示 に なって しまう ため 、豪胆 な 野郎 プレイヤー なら いざ知らず 女性 は 人前 で 着替え 操作 を したり する こと は ない。 俺 たち の 肉体 は 3D オブジェクト の データ に すぎ ない と は 言って も 、二 年 も 過ごして しまう と そんな 認識 は 薄れ かけて 、今 も アスナ の 惜しげも無く 剝 き 出し に された 手足 に 自然 と 目 が 行って しまう。

そんな 俺 の 内的 葛藤 を 知るよしもない アスナ は 、じろっと 視線 を 投げ 、言った。

「君 も いつまで そんな 格好 して る の よ」

俺 は 慌てて メニュー 画面 を 呼び出す と 、革 の 戦闘 用 コート と 剣 帯 など の 武装 を 解除 した。 ついでに アイテムウインドウ に 移動 し 、《ラグー ・ラビット の 肉 》を オブジェクト と して 実体化 さ せ 、陶製 の ポット に 入った それ を そっと 目の前 の テーブル に 置く。

アスナ は 神妙な 面持ち で それ を 手 に 取り 、中 を 覗き込んだ。

「これ が 伝説 の S 級 食 材 か ー。 ……で 、どんな 料理 に する?

「シェ 、シェフ お 任せ コース で 頼む」

「そう ね ……じゃあ シチュー に しましょう。 煮込みって 言う くらい だから ね」

そのまま 隣 の 部屋 に 向かう アスナ の 後 を 俺 も ついていく。

キッチン は 広々 と して いて 、巨大な 薪 オーブン が しつらえられた 傍ら に は 、一見 して これ も 高級 そうな 料理 道具 アイテム が 数々 並んで いた。 アスナ は オーブン の 表面 を ダブルクリック の 要領 で すばやく 二 度 叩いて ポップアップメニュー を 出し 、調理 時間 を 設定 した あと 、棚 から 金属 製 の 鍋 を 取り出した。 ポット の 中 の 生肉 を 移し 、いろいろな 香草 と 水 を 満たす と 蓋 を する。

「ほんと は もっと いろいろ 手順 が ある んだけど。 SAO の 料理 は 簡略 化 さ れ すぎて て つまらない わ」

文句 を 言い ながら 、鍋 を オーブン の 中 に 入れて 、メニュー から 調理 開始 ボタン を 押す。 三百 秒 と 表示 された 待ち 時間 に も 彼女 は てきぱき と 動き回り 、無数に ストック して ある らしい 食 材 アイテム を 次々 と オブジェクト 化 して は 、淀み ない 作業 で 付け合わせ を 作って いく。 実際 の 作業 と メニュー 操作 を 一 回 の ミス も 無く こなして いく その 動き に 、俺 は ついつい 見とれて しまう。

わずか 五 分 で 豪華な 食卓 が 整えられ 、俺 と アスナ は 向かい合わせ で 席 に ついた。 眼前 の 大皿 に は 湯気 を 上げる ブラウン シチュー が たっぷり と 盛り付けられ 、鼻腔 を 刺激 する 芳香 を 伴った 蒸気 が 立ち上って いる。 照り の ある 濃密な ソース に 覆われた 大ぶり な 肉 が ごろごろ と 転がり 、クリーム の 白い 筋 が 描く マーブル 模様 が 実に 魅惑 的だ。

俺 たち は いただきます を 言う の も もどかしく スプーン を 取る と 、SAO 内 で 存在 し 得る 最上級 の 食い物 である はずの それ を あんぐり と 頰 張った。 口中 に 充満 する 熱 と 香り を たっぷり 味わって から 、柔らかい 肉 に 歯 を 立てる と 、溢れる よう に 肉 汁 が 迸る。

SAO に おける 食事 は 、オブジェクト を 歯 が 嚙 み 砕く 感触 を いちいち 演算 で シミュレート して いる わけで は なく 、アーガス と 提携 して いた 環境 プログラム 設計 会社 の 開発 した 《味覚 再生 エンジン 》を 使用 して いる。

これ は あらかじめ プリセット された 、様々な 《物 を 食う 》感覚 を 脳 に 送り込む こと で 使用者 に 現実 の 食事 と 同じ 体験 を さ せる こと が できる と いう もの だ。 もと は ダイエット や 食事 制限 が 必要な 人 の ため に 開発 された もの らしい が 、要は 味 、匂い 、熱 等 を 感じる 脳 の 各 部位 に 偽 の 信号 を 送り込んで 錯覚 さ せる わけだ。 つまり 俺 たち の 現実 の 肉体 は この 瞬間 も 何 を 食べて いる わけで も なく 、ただ システム が 脳 の 感覚野 を 盛大に 刺激 して いる だけ に すぎ ない。

だが 、この際 そんな こと を 考える の は 野暮 と いう もの だ。 今 俺 が 感じて いる 、ログイン して 以来 最高 の 美味 は 間違い なく 本物 だ。 俺 と アスナ は 一言 も 発する こと なく 、ただ 大 皿 に スプーン を 突っ込んで は 口 に 運ぶ と いう 作業 を 黙々と 繰り返した。

やがて 、きれいに ──文字通り シチュー が 存在 した 痕跡 も なく ──食い 尽くされた 皿 と 鍋 を 前 に 、アスナ は 深く 長い ため息 を ついた。

「ああ ……いま まで がんばって 生き残って て よかった……」

まったく 同感 だった。 俺 は 久々に 原始 的 欲求 を 心ゆくまで 満たした 充足 感 に 浸り ながら 、不思議な 香り の する お茶 を 啜った。 さっき 食べた 肉 や この 茶 は 、実際 に 現実 世界 に 存在 する 食 材 の 味 を 記録 した もの な の か 、それとも パラメータ を 操作 して 作り出した 架空の 味 だろう か。 そんな こと を ぼんやり 考える。

饗宴 の 余韻 に 満ちた 数 分 の 沈黙 を 、俺 の 向かい で お茶 の カップ を 両手 で 抱えた アスナ が ぽつり と 破った。

「不思議 ね……。 なんだか 、この 世界 で 生まれて 今 まで ずっと 暮らして きた みたいな 、そんな 気 が する」

「……俺 も 最近 、あっち の 世界 の こと を まるで 思い出さ ない 日 が ある。 俺 だけ じゃ ない な ……この頃 は 、クリアだ 脱出 だって 血眼 に なる 奴 が 少なく なった」

「攻略 の ペース 自体 落ちて る わ。 今 最 前線 で 戦ってる プレイヤー なんて 、五百 人 いない でしょう。 危険 度 の せい だけ じゃ ない ……みんな 、馴染んで きて る。 この 世界 に……」

俺 は 橙色 の ランプ の 明かり に 照らされた 、物思い に ふける アスナ の 美しい 顔 を そっと 見つめた。

確かに その 顔 は 、生物 と して の 人間 の もの で は ない。 なめらかな 肌 、艶やかな 髪 、生き物 と して は 美し すぎる。 しかし 、今 の 俺 に は その 顔 が ポリゴン の 作り 物 に は 最早 見え ない。 そういう 生きた 存在 と して 素直に 納得 する こと が できる。 多分 、今 もと の 世界 に 帰還 して 本物 の 人間 を 見たら 、俺 は 激しい 違和感 を 抱く だろう。

俺 は 本当に 帰りたい と 思って いる んだろう か ……あの 世界 に……?

ふと 浮かんで きた そんな 思考 に 戸惑う。 毎日 朝 早く 起き 出して 危険な 迷宮 区 に 潜り 、未 踏破 区域 を マッピング し つつ 経験 値 を 稼いで いる の は 、本当に この ゲーム を 脱出 したい から な のだろう か。

昔 は たしかに そう だった はずだ。 いつ 死ぬ と も 知れ ない デスゲーム から 早く 抜け出し たかった。 しかし 、この 世界 で の 生き方 に 慣れて しまった 今 は──。

「でも 、わたし は 帰りたい」

俺 の 内心 の 迷い を 見透かす ような 、歯切れ の いい アスナ の 言葉 が 響いた。 ハッと して 顔 を 上げる。

アスナ は 、珍しく 俺 に 微笑み を 見せる と 、続けて 言った。

「だって 、あっち で やり 残した こと 、いっぱい ある から」

その 言葉 に 、俺 は 素直に 頷いて いた。

「そう だ な。 俺 たち が がんばら なきゃ 、サポート して くれる 職人 クラス の 連中 に 申し訳 が 立た ない もん な……」

消え ない 迷い を 一緒に 飲み下す よう に 、俺 は お茶 の カップ を 大きく 傾けた。 まだまだ 最上 階 は 遠い。 その 時 が 来て から 考えれば いい こと だ。

珍しく 素直な 気分 で 、俺 は どう 感謝 の 念 を 伝えよう か と 言葉 を 探し ながら アスナ を 見つめた。 すると 、アスナ は 顔 を しかめ ながら 目の前 で 手 を 振り、

「あ ……あ 、やめて」

など と 言う。

「な 、なんだ よ」

「今 まで そういう カオ した 男 プレイヤー から 、何 度 か 結婚 を 申し込まれた わ」

「なっ……」

悔しい かな 、戦闘 スキル に は 熟達 して も こういう 場面 に 経験 の 浅い 俺 は 、言葉 を 返す こと も でき ず 口 を ぱくぱく さ せた。 さぞや 間抜けな 顔 を して いる こと だろう。

そんな 俺 を 見て 、アスナ は にまっと 笑った。

「その 様子 じゃ 、他 に 仲 の いい 子 と かい ない でしょ 君」

「悪かった な ……いい んだ よ ソロ な んだから」

「せっかく MMORPG やってる んだから 、もっと 友達 作れば いい のに」

アスナ は 笑み を 消す と 、どことなく 姉 か 先生 の ような 口調 で 問いかけて きた。

「君 は 、ギルド に 入る 気 は ない の?

「え……」

「ベータ 出身者 が 集団 に 馴染ま ない の は 解ってる。 でも ね」

表情 が 更に 真剣 味 を 帯びる。

「七十 層 を 超えた あたり から 、モンスター の アルゴリズム に イレギュラー 性 が 増して きて る ような 気 が する んだ」

それ は 俺 も 感じて は いた。 CPU の 戦術 が 読み にくく なって きた の は 、当初 から の 設計 な の か 、それとも システム 自体 の 学習 の 結果 な の か。 後者 だったら 、今後 どんどん 厄介な こと に なり そうだ。

「ソロ だ と 、想定外 の 事態 に 対処 でき ない こと が ある わ。 いつでも 緊急 脱出 できる わけじゃ ない の よ。 パーティー を 組んで いれば 安全 性 が ずいぶん 違う」

「安全 マージン は 十分 取ってる よ。 忠告 は 有り難く 頂いて おく けど ……ギルド は ちょっと な。 それ に……」

ここ で よせば いい のに 強 がって 、俺 は 余計な こと を 言った。

「パーティー メンバーって の は 、助け より も 邪魔に なる こと の ほう が 多い し 、俺 の 場合」

「あら」

ちかっ、と 目の前 を 銀色 の 閃光 が よぎった。

と 思った 時 に は 、アスナ の 右手 に 握られた ナイフ が ピタリ と 俺 の 鼻先 に 据えられて いた。

細 剣 術 の 基本 技 《リニアー 》だ。 基本 と は 言え 、圧倒 的な 敏捷 度 パラメータ 補正 の せい で 凄ま じい スピード である。 正直な ところ 、技 の 軌道 は まったく 見え なかった。

ひきつった 笑い と ともに 、俺 は 両手 を 軽く 上げて 降参 の ポーズ を 取った。

「……解った よ。 あんた は 例外 だ」

「そ」

面白く も な さ そうな 顔 で ナイフ を 戻し 、それ を 指 の 上 で くるくる 回し ながら 、アスナ は とんでもない こと を 口 に した。

「なら 、しばらく わたし と コンビ 組み なさい。 ボス 攻略 パーティー の 編成 責任者 と して 、君 が ウワサ ほど 強い ヒト な の か 確かめたい と 思って た とこ だし。 わたし の 実力 も ちゃんと 教えて 差し上げたい し。 あと 今週 の ラッキーカラー 黒 だし」

「な 、なんだ そりゃ!


ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (11) |おんらいん| Sword Art Online 1 Aincrad (11) Sword Art Online 1 Aincrad (11)

「しかし ……いい の か? その……」

「なに よ 、君 が もちかけた 話 じゃ ない。 ||きみ|||はなし|| 他 に 料理 できる 場所 が ない んだから 仕方ない でしょ! た||りょうり||ばしょ||||しかたない|

ぷいっと 顔 を そむけ 、アスナ は そのまま 階段 を とんとん 登って 行って しまう。 |かお||||||かいだん|||のぼって|おこなって| 俺 は 覚悟 を 決めて その あと に 続いた。 おれ||かくご||きめて||||つづいた I followed him with determination.

「お ……おじゃま します」

おそるおそる ドア を くぐった 俺 は 、言葉 を 失って 立ち尽くした。 |どあ|||おれ||ことば||うしなって|たちつくした

未だかつて 、これほど 整えられた プレイヤー ホーム は 見た こと が ない。 み だ かつて||ととのえられた|ぷれいやー|ほーむ||みた||| 広い リビング 兼 ダイニング と 、隣接 した キッチン に は 明るい 色 の 木製 家具 が しつらえられ 、統一感 の ある モス グリーン の クロス 類 で 飾られて いる。 ひろい|りびんぐ|けん|だいにんぐ||りんせつ||きっちん|||あかるい|いろ||もくせい|かぐ|||とういつ かん||||ぐりーん||くろす|るい||かざられて| The spacious living and dining room and adjoining kitchen are furnished with light-colored wood furniture and decorated with a uniform moss green cloth. 全て 最高 級 の プレイヤーメイド 品 だろう。 すべて|さいこう|きゅう|||しな|

そのくせ 過度に 装飾 的で は なく 、実に 居心地 の 良 さ そうな 雰囲気 を 漂わせて いる。 |かどに|そうしょく|てきで|||じつに|いごこち||よ||そう な|ふんいき||ただよわせて| Yet it is not overly decorative, and has a very comfortable atmosphere. 俺 の ねぐら と は 、ひとこと で 言って 雲泥 の 差 だ。 おれ|||||||いって|うんでい||さ| In a word, it is a world apart from my roost. 招待 し なくて よかった 、と しみじみ 思う。 しょうたい||||||おもう I am so glad I didn't invite them.

「なあ ……これ 、いくら かかってる の……? "Hey, ......, how much does this ...... cost?

即物的な 俺 の 質問 に、 そく ぶってきな|おれ||しつもん|

「ん ー 、部屋 と 内装 あわせる と 四千 k くらい。 |-|へや||ないそう|||しせん|| 着替えて くる から そのへん 適当 に 座って て」 きがえて||||てきとう||すわって| I'm going to go get changed, so just sit around."

サラリと 答える と アスナ は リビング の 奥 に ある ドア に 消えて 行った。 さらりと|こたえる||||りびんぐ||おく|||どあ||きえて|おこなった k が 千 を あらわす 短縮 語 な ので 、四千 k と は 四百万 コル の こと である。 ||せん|||たんしゅく|ご|||しせん||||しひゃくまん|||| 俺 とても 日々 最 前線 に 籠もって いる からに は それ くらい の 金額 は 稼いで いる はずな のだ が 、ちょっと 気 に 入った 剣 や 怪しい 装備 品 に 次々 無駄遣い して しまい 、貯まる ヒマ が ない。 おれ||ひび|さい|ぜんせん||こもって|||||||きんがく||かせいで||||||き||はいった|けん||あやしい|そうび|しな||つぎつぎ|むだづかい|||たまる|ひま|| I should be earning that amount of money from my daily stay at the front lines, but I waste it on the sword that catches my fancy or the weird equipment one after another, and I don't have time to save up. 柄 に も なく 自省 し つつ 、ふかふか の ソファ に どさっと 沈み込む。 え||||じせい|||ふか ふか||||ど さっと|しずみ こむ

やがて 、簡素な 白い 短 衣 と 膝上 丈 の スカート に 着替えた アスナ が 奥 の 部屋 から 現れた。 |かんそな|しろい|みじか|ころも||ひざ じょう|たけ||すかーと||きがえた|||おく||へや||あらわれた Soon, Asuna emerged from the back room dressed in a simple white shorts and an over-the-knee skirt. 着替え と 言って も 実際 に 脱いだり 着たり の 動作 が ある わけで は なく 、ステータスウインドウ の 装備 フィギュア を 操作 する だけ な のだ が 、着衣 変更 の 数 秒間 は 下着 姿 の 表示 に なって しまう ため 、豪胆 な 野郎 プレイヤー なら いざ知らず 女性 は 人前 で 着替え 操作 を したり する こと は ない。 きがえ||いって||じっさい||ぬいだり|きたり||どうさ||||||||そうび|ふぃぎゅあ||そうさ||||||ちゃくい|へんこう||すう|びょうかん||したぎ|すがた||ひょうじ|||||たけし たん||やろう|ぷれいやー||いざ しら ず|じょせい||ひとまえ||きがえ|そうさ|||||| Changing clothes does not involve actually taking them off or putting them on; it is simply a matter of manipulating the equipment figure in the status window, but the figure is displayed in underwear for a few seconds after the clothes are changed, and women are not supposed to change clothes in public, even if they are bold enough to do so. 俺 たち の 肉体 は 3D オブジェクト の データ に すぎ ない と は 言って も 、二 年 も 過ごして しまう と そんな 認識 は 薄れ かけて 、今 も アスナ の 惜しげも無く 剝 き 出し に された 手足 に 自然 と 目 が 行って しまう。 おれ|||にくたい||d|||でーた||||||いって||ふた|とし||すごして||||にんしき||うすれ||いま||||おし げ も なく|||だし|||てあし||しぜん||め||おこなって| Even if we say that our bodies are nothing more than 3D object data, after spending two years there, that perception began to fade. My eyes are gone.

そんな 俺 の 内的 葛藤 を 知るよしもない アスナ は 、じろっと 視線 を 投げ 、言った。 |おれ||うち てき|かっとう||しる よし も ない|||じ ろっと|しせん||なげ|いった Asuna, who had no way of knowing about my internal conflict, looked at me and said, "I'm not sure I know what you mean.

「君 も いつまで そんな 格好 して る の よ」 きみ||||かっこう||||

俺 は 慌てて メニュー 画面 を 呼び出す と 、革 の 戦闘 用 コート と 剣 帯 など の 武装 を 解除 した。 おれ||あわてて|めにゅー|がめん||よびだす||かわ||せんとう|よう|こーと||けん|おび|||ぶそう||かいじょ| ついでに アイテムウインドウ に 移動 し 、《ラグー ・ラビット の 肉 》を オブジェクト と して 実体化 さ せ 、陶製 の ポット に 入った それ を そっと 目の前 の テーブル に 置く。 |||いどう|||||にく|||||じったい か|||とうせい||ぽっと||はいった||||めのまえ||てーぶる||おく

アスナ は 神妙な 面持ち で それ を 手 に 取り 、中 を 覗き込んだ。 ||しんみょうな|おももち||||て||とり|なか||のぞきこんだ

「これ が 伝説 の S 級 食 材 か ー。 ||でんせつ||s|きゅう|しょく|ざい||- ……で 、どんな 料理 に する? ||りょうり||

「シェ 、シェフ お 任せ コース で 頼む」 |しぇふ||まかせ|こーす||たのむ

「そう ね ……じゃあ シチュー に しましょう。 |||しちゅー|| 煮込みって 言う くらい だから ね」 にこみって|いう||| It's called stew.

そのまま 隣 の 部屋 に 向かう アスナ の 後 を 俺 も ついていく。 |となり||へや||むかう|||あと||おれ||

キッチン は 広々 と して いて 、巨大な 薪 オーブン が しつらえられた 傍ら に は 、一見 して これ も 高級 そうな 料理 道具 アイテム が 数々 並んで いた。 きっちん||ひろびろ||||きょだいな|まき|おーぶん|||かたわら|||いっけん||||こうきゅう|そう な|りょうり|どうぐ|あいてむ||かずかず|ならんで| アスナ は オーブン の 表面 を ダブルクリック の 要領 で すばやく 二 度 叩いて ポップアップメニュー を 出し 、調理 時間 を 設定 した あと 、棚 から 金属 製 の 鍋 を 取り出した。 ||おーぶん||ひょうめん||||ようりょう|||ふた|たび|たたいて|||だし|ちょうり|じかん||せってい|||たな||きんぞく|せい||なべ||とりだした ポット の 中 の 生肉 を 移し 、いろいろな 香草 と 水 を 満たす と 蓋 を する。 ぽっと||なか||せい にく||うつし||かおり くさ||すい||みたす||ふた||

「ほんと は もっと いろいろ 手順 が ある んだけど。 ||||てじゅん||| I have a lot more procedures to go through. SAO の 料理 は 簡略 化 さ れ すぎて て つまらない わ」 sao||りょうり||かんりゃく|か|||||| SAO's cuisine is too simplified and boring.

文句 を 言い ながら 、鍋 を オーブン の 中 に 入れて 、メニュー から 調理 開始 ボタン を 押す。 もんく||いい||なべ||おーぶん||なか||いれて|めにゅー||ちょうり|かいし|ぼたん||おす 三百 秒 と 表示 された 待ち 時間 に も 彼女 は てきぱき と 動き回り 、無数に ストック して ある らしい 食 材 アイテム を 次々 と オブジェクト 化 して は 、淀み ない 作業 で 付け合わせ を 作って いく。 さんびゃく|びょう||ひょうじ||まち|じかん|||かのじょ||||うごきまわり|むすうに|すとっく||||しょく|ざい|あいてむ||つぎつぎ|||か|||よどみ||さぎょう||つけ あわせ||つくって| 実際 の 作業 と メニュー 操作 を 一 回 の ミス も 無く こなして いく その 動き に 、俺 は ついつい 見とれて しまう。 じっさい||さぎょう||めにゅー|そうさ||ひと|かい||みす||なく||||うごき||おれ|||みとれて|

わずか 五 分 で 豪華な 食卓 が 整えられ 、俺 と アスナ は 向かい合わせ で 席 に ついた。 |いつ|ぶん||ごうかな|しょくたく||ととのえられ|おれ||||むかいあわせ||せき|| 眼前 の 大皿 に は 湯気 を 上げる ブラウン シチュー が たっぷり と 盛り付けられ 、鼻腔 を 刺激 する 芳香 を 伴った 蒸気 が 立ち上って いる。 がんぜん||だい さら|||ゆげ||あげる||しちゅー||||もりつけられ|はな こう||しげき||ほうこう||ともなった|じょうき||たちのぼって| 照り の ある 濃密な ソース に 覆われた 大ぶり な 肉 が ごろごろ と 転がり 、クリーム の 白い 筋 が 描く マーブル 模様 が 実に 魅惑 的だ。 てり|||のうみつな|そーす||おおわれた|おおぶり||にく||||ころがり|くりーむ||しろい|すじ||えがく||もよう||じつに|みわく|てきだ The large pieces of meat covered with a shiny, rich sauce roll around, and the white streaks of cream create a marble-like pattern that is truly enticing.

俺 たち は いただきます を 言う の も もどかしく スプーン を 取る と 、SAO 内 で 存在 し 得る 最上級 の 食い物 である はずの それ を あんぐり と 頰 張った。 おれ|||||いう||||すぷーん||とる||sao|うち||そんざい||える|さい じょうきゅう||くいもの|||||あん ぐ り|||はった We took our spoons and began to chow down on what was supposed to be the finest food that could exist in SAO. 口中 に 充満 する 熱 と 香り を たっぷり 味わって から 、柔らかい 肉 に 歯 を 立てる と 、溢れる よう に 肉 汁 が 迸る。 くち ちゅう||じゅうまん||ねつ||かおり|||あじわって||やわらかい|にく||は||たてる||あふれる|||にく|しる||ほとばしる After savoring the heat and aroma that fills the mouth, the juices overflow as you bite into the tender meat.

SAO に おける 食事 は 、オブジェクト を 歯 が 嚙 み 砕く 感触 を いちいち 演算 で シミュレート して いる わけで は なく 、アーガス と 提携 して いた 環境 プログラム 設計 会社 の 開発 した 《味覚 再生 エンジン 》を 使用 して いる。 sao|||しょくじ||||は||||くだく|かんしょく|||えんざん||||||||||ていけい|||かんきょう|ぷろぐらむ|せっけい|かいしゃ||かいはつ||みかく|さいせい|えんじん||しよう|| The meals in SAO do not simulate the feeling of an object being crunched by teeth, but use a "taste regeneration engine" developed by an environmental program design company that was in partnership with Argus.

これ は あらかじめ プリセット された 、様々な 《物 を 食う 》感覚 を 脳 に 送り込む こと で 使用者 に 現実 の 食事 と 同じ 体験 を さ せる こと が できる と いう もの だ。 |||||さまざまな|ぶつ||くう|かんかく||のう||おくりこむ|||しよう しゃ||げんじつ||しょくじ||おなじ|たいけん|||||||||| もと は ダイエット や 食事 制限 が 必要な 人 の ため に 開発 された もの らしい が 、要は 味 、匂い 、熱 等 を 感じる 脳 の 各 部位 に 偽 の 信号 を 送り込んで 錯覚 さ せる わけだ。 ||だいえっと||しょくじ|せいげん||ひつような|じん||||かいはつ|||||ようは|あじ|におい|ねつ|とう||かんじる|のう||かく|ぶい||ぎ||しんごう||おくりこんで|さっかく||| つまり 俺 たち の 現実 の 肉体 は この 瞬間 も 何 を 食べて いる わけで も なく 、ただ システム が 脳 の 感覚野 を 盛大に 刺激 して いる だけ に すぎ ない。 |おれ|||げんじつ||にくたい|||しゅんかん||なん||たべて||||||しすてむ||のう||かんかく の||せいだいに|しげき|||||| In other words, our actual bodies are not eating anything at this very moment, it's just the system stimulating the sensory cortex of the brain.

だが 、この際 そんな こと を 考える の は 野暮 と いう もの だ。 |このさい||||かんがえる|||やぼ|||| But it would be foolish to think about such things at this time. 今 俺 が 感じて いる 、ログイン して 以来 最高 の 美味 は 間違い なく 本物 だ。 いま|おれ||かんじて||||いらい|さいこう||びみ||まちがい||ほんもの| 俺 と アスナ は 一言 も 発する こと なく 、ただ 大 皿 に スプーン を 突っ込んで は 口 に 運ぶ と いう 作業 を 黙々と 繰り返した。 おれ||||いちげん||はっする||||だい|さら||すぷーん||つっこんで||くち||はこぶ|||さぎょう||もくもくと|くりかえした

やがて 、きれいに ──文字通り シチュー が 存在 した 痕跡 も なく ──食い 尽くされた 皿 と 鍋 を 前 に 、アスナ は 深く 長い ため息 を ついた。 ||もじどおり|しちゅー||そんざい||こんせき|||くい|つくされた|さら||なべ||ぜん||||ふかく|ながい|ためいき||

「ああ ……いま まで がんばって 生き残って て よかった……」 ||||いきのこって|| "Oh, ......, I'm glad I worked hard and survived until now. ......"

まったく 同感 だった。 |どうかん| 俺 は 久々に 原始 的 欲求 を 心ゆくまで 満たした 充足 感 に 浸り ながら 、不思議な 香り の する お茶 を 啜った。 おれ||ひさびさに|げんし|てき|よっきゅう||こころゆくまで|みたした|じゅうそく|かん||ひたり||ふしぎな|かおり|||おちゃ||せつった さっき 食べた 肉 や この 茶 は 、実際 に 現実 世界 に 存在 する 食 材 の 味 を 記録 した もの な の か 、それとも パラメータ を 操作 して 作り出した 架空の 味 だろう か。 |たべた|にく|||ちゃ||じっさい||げんじつ|せかい||そんざい||しょく|ざい||あじ||きろく|||||||||そうさ||つくりだした|かくうの|あじ|| そんな こと を ぼんやり 考える。 ||||かんがえる

饗宴 の 余韻 に 満ちた 数 分 の 沈黙 を 、俺 の 向かい で お茶 の カップ を 両手 で 抱えた アスナ が ぽつり と 破った。 きょうえん||よいん||みちた|すう|ぶん||ちんもく||おれ||むかい||おちゃ||かっぷ||りょうて||かかえた|||||やぶった Asuna, who was standing across from me and holding a cup of tea in both hands, broke the silence of several minutes filled with the afterglow of the feast.

「不思議 ね……。 ふしぎ| なんだか 、この 世界 で 生まれて 今 まで ずっと 暮らして きた みたいな 、そんな 気 が する」 ||せかい||うまれて|いま|||くらして||||き|| I feel as if I was born in this world and have lived in it all my life.

「……俺 も 最近 、あっち の 世界 の こと を まるで 思い出さ ない 日 が ある。 おれ||さいきん|||せかい|||||おもいださ||ひ|| ...... There are days these days when I don't even think about the other side of the world. 俺 だけ じゃ ない な ……この頃 は 、クリアだ 脱出 だって 血眼 に なる 奴 が 少なく なった」 おれ|||||このごろ||くりあだ|だっしゅつ||ちまなこ|||やつ||すくなく| I'm not the only one. ...... these days, there are fewer and fewer people who are so desperate to get clear and get out."

「攻略 の ペース 自体 落ちて る わ。 こうりゃく||ぺーす|じたい|おちて|| The pace of the strategy itself is slowing down. 今 最 前線 で 戦ってる プレイヤー なんて 、五百 人 いない でしょう。 いま|さい|ぜんせん||たたかってる|ぷれいやー||ごひゃく|じん|| There are probably no more than 500 players fighting on the front lines right now. 危険 度 の せい だけ じゃ ない ……みんな 、馴染んで きて る。 きけん|たび|||||||なじんで|| この 世界 に……」 |せかい|

俺 は 橙色 の ランプ の 明かり に 照らされた 、物思い に ふける アスナ の 美しい 顔 を そっと 見つめた。 おれ||だいだいいろ||らんぷ||あかり||てらされた|ものおもい|||||うつくしい|かお|||みつめた I gently stared at the beautiful face of Asuna, who was lost in thought, illuminated by the orange lamp light.

確かに その 顔 は 、生物 と して の 人間 の もの で は ない。 たしかに||かお||せいぶつ||||にんげん||||| Certainly, the face is not that of a living human being. なめらかな 肌 、艶やかな 髪 、生き物 と して は 美し すぎる。 |はだ|つや や かな|かみ|いきもの||||うつくし| しかし 、今 の 俺 に は その 顔 が ポリゴン の 作り 物 に は 最早 見え ない。 |いま||おれ||||かお||||つくり|ぶつ|||さい はやさ|みえ| However, I can no longer see his face as a polygonal fake. そういう 生きた 存在 と して 素直に 納得 する こと が できる。 |いきた|そんざい|||すなおに|なっとく|||| I can honestly accept it as such a living existence. 多分 、今 もと の 世界 に 帰還 して 本物 の 人間 を 見たら 、俺 は 激しい 違和感 を 抱く だろう。 たぶん|いま|||せかい||きかん||ほんもの||にんげん||みたら|おれ||はげしい|いわかん||いだく|

俺 は 本当に 帰りたい と 思って いる んだろう か ……あの 世界 に……? おれ||ほんとうに|かえりたい||おもって|||||せかい|

ふと 浮かんで きた そんな 思考 に 戸惑う。 |うかんで|||しこう||とまどう 毎日 朝 早く 起き 出して 危険な 迷宮 区 に 潜り 、未 踏破 区域 を マッピング し つつ 経験 値 を 稼いで いる の は 、本当に この ゲーム を 脱出 したい から な のだろう か。 まいにち|あさ|はやく|おき|だして|きけんな|めいきゅう|く||くぐり|み|とうは|くいき|||||けいけん|あたい||かせいで||||ほんとうに||げーむ||だっしゅつ|||||

昔 は たしかに そう だった はずだ。 むかし||||| いつ 死ぬ と も 知れ ない デスゲーム から 早く 抜け出し たかった。 |しぬ|||しれ||||はやく|ぬけだし| I wanted to get out of the death game as soon as possible. しかし 、この 世界 で の 生き方 に 慣れて しまった 今 は──。 ||せかい|||いき かた||なれて||いま|

「でも 、わたし は 帰りたい」 |||かえりたい

俺 の 内心 の 迷い を 見透かす ような 、歯切れ の いい アスナ の 言葉 が 響いた。 おれ||ないしん||まよい||みすかす||はぎれ|||||ことば||ひびいた As if seeing through my inner hesitation, I heard Asuna's clear and crisp words. ハッと して 顔 を 上げる。 はっと||かお||あげる

アスナ は 、珍しく 俺 に 微笑み を 見せる と 、続けて 言った。 ||めずらしく|おれ||ほおえみ||みせる||つづけて|いった

「だって 、あっち で やり 残した こと 、いっぱい ある から」 ||||のこした|||| Because I have a lot of unfinished business over there.

その 言葉 に 、俺 は 素直に 頷いて いた。 |ことば||おれ||すなおに|うなずいて|

「そう だ な。 俺 たち が がんばら なきゃ 、サポート して くれる 職人 クラス の 連中 に 申し訳 が 立た ない もん な……」 おれ|||||さぽーと|||しょくにん|くらす||れんちゅう||もうしわけ||たた||| If we don't do our best, we won't be able to apologize to the class of craftspeople who support us. ......

消え ない 迷い を 一緒に 飲み下す よう に 、俺 は お茶 の カップ を 大きく 傾けた。 きえ||まよい||いっしょに|のみくだす|||おれ||おちゃ||かっぷ||おおきく|かたむけた まだまだ 最上 階 は 遠い。 |さいじょう|かい||とおい その 時 が 来て から 考えれば いい こと だ。 |じ||きて||かんがえれば||| We'll just have to wait until the time comes to think about it.

珍しく 素直な 気分 で 、俺 は どう 感謝 の 念 を 伝えよう か と 言葉 を 探し ながら アスナ を 見つめた。 めずらしく|すなおな|きぶん||おれ|||かんしゃ||ねん||つたえよう|||ことば||さがし||||みつめた すると 、アスナ は 顔 を しかめ ながら 目の前 で 手 を 振り、 |||かお||||めのまえ||て||ふり Asuna waved her hand in front of me with a frown on her face,

「あ ……あ 、やめて」 Oh, ......, stop.

など と 言う。 ||いう

「な 、なんだ よ」

「今 まで そういう カオ した 男 プレイヤー から 、何 度 か 結婚 を 申し込まれた わ」 いま|||かお||おとこ|ぷれいやー||なん|たび||けっこん||もうしこまれた| I've been asked to marry several times by players I've had relationships with."

「なっ……」

悔しい かな 、戦闘 スキル に は 熟達 して も こういう 場面 に 経験 の 浅い 俺 は 、言葉 を 返す こと も でき ず 口 を ぱくぱく さ せた。 くやしい||せんとう||||じゅくたつ||||ばめん||けいけん||あさい|おれ||ことば||かえす|||||くち||ぱく ぱく|| It was frustrating, but even though I was proficient in combat skills, I was inexperienced in this kind of situation, so I couldn't even reply, my mouth agape. さぞや 間抜けな 顔 を して いる こと だろう。 |まぬけな|かお|||||

そんな 俺 を 見て 、アスナ は にまっと 笑った。 |おれ||みて|||に まっと|わらった

「その 様子 じゃ 、他 に 仲 の いい 子 と かい ない でしょ 君」 |ようす||た||なか|||こ|||||きみ By the looks of it, you don't have any other good friends, do you?

「悪かった な ……いい んだ よ ソロ な んだから」 わるかった|||||そろ|| "I'm sorry ......, it's okay, it's a solo thing."

「せっかく MMORPG やってる んだから 、もっと 友達 作れば いい のに」 |mmorpg||||ともだち|つくれば||

アスナ は 笑み を 消す と 、どことなく 姉 か 先生 の ような 口調 で 問いかけて きた。 ||えみ||けす|||あね||せんせい|||くちょう||といかけて|

「君 は 、ギルド に 入る 気 は ない の? きみ||ぎるど||はいる|き|||

「え……」

「ベータ 出身者 が 集団 に 馴染ま ない の は 解ってる。 |しゅっしん しゃ||しゅうだん||なじま||||わかってる I understand that people from Beta don't fit in with the group. でも ね」

表情 が 更に 真剣 味 を 帯びる。 ひょうじょう||さらに|しんけん|あじ||おびる The expression on their faces becomes even more serious.

「七十 層 を 超えた あたり から 、モンスター の アルゴリズム に イレギュラー 性 が 増して きて る ような 気 が する んだ」 しちじゅう|そう||こえた||||||||せい||まして||||き||| "I feel that after the 70th layer, the algorithms of the monsters start to become more irregular.

それ は 俺 も 感じて は いた。 ||おれ||かんじて|| CPU の 戦術 が 読み にくく なって きた の は 、当初 から の 設計 な の か 、それとも システム 自体 の 学習 の 結果 な の か。 cpu||せんじゅつ||よみ||||||とうしょ|||せっけい|||||しすてむ|じたい||がくしゅう||けっか||| Is the fact that CPU tactics have become harder to read a result of the original design, or is it a result of the system's own learning? 後者 だったら 、今後 どんどん 厄介な こと に なり そうだ。 こうしゃ||こんご||やっかいな||||そう だ

「ソロ だ と 、想定外 の 事態 に 対処 でき ない こと が ある わ。 そろ|||そうてい がい||じたい||たいしょ|||||| いつでも 緊急 脱出 できる わけじゃ ない の よ。 |きんきゅう|だっしゅつ||||| パーティー を 組んで いれば 安全 性 が ずいぶん 違う」 ぱーてぃー||くんで||あんぜん|せい|||ちがう

「安全 マージン は 十分 取ってる よ。 あんぜん|||じゅうぶん|とってる| I'm taking enough of a safety margin. 忠告 は 有り難く 頂いて おく けど ……ギルド は ちょっと な。 ちゅうこく||ありがたく|いただいて|||ぎるど||| それ に……」

ここ で よせば いい のに 強 がって 、俺 は 余計な こと を 言った。 |||||つよ||おれ||よけいな|||いった I could have stopped right there, but I was too strong and said unnecessary things.

「パーティー メンバーって の は 、助け より も 邪魔に なる こと の ほう が 多い し 、俺 の 場合」 ぱーてぃー|めんばーって|||たすけ|||じゃまに||||||おおい||おれ||ばあい

「あら」 "Oh, no."

ちかっ、と 目の前 を 銀色 の 閃光 が よぎった。 ||めのまえ||ぎんいろ||せんこう||

と 思った 時 に は 、アスナ の 右手 に 握られた ナイフ が ピタリ と 俺 の 鼻先 に 据えられて いた。 |おもった|じ|||||みぎて||にぎられた|ないふ||ぴたり||おれ||はなさき||すえられて|

細 剣 術 の 基本 技 《リニアー 》だ。 ほそ|けん|じゅつ||きほん|わざ|| It is the basic technique of fine swordsmanship, "Linear. 基本 と は 言え 、圧倒 的な 敏捷 度 パラメータ 補正 の せい で 凄ま じい スピード である。 きほん|||いえ|あっとう|てきな|びんしょう|たび||ほせい||||すごま||すぴーど| 正直な ところ 、技 の 軌道 は まったく 見え なかった。 しょうじきな||わざ||きどう|||みえ| To be honest, I could not see the trajectory of the technique at all.

ひきつった 笑い と ともに 、俺 は 両手 を 軽く 上げて 降参 の ポーズ を 取った。 |わらい|||おれ||りょうて||かるく|あげて|こうさん||ぽーず||とった

「……解った よ。 わかった| あんた は 例外 だ」 ||れいがい| You're the exception."

「そ」

面白く も な さ そうな 顔 で ナイフ を 戻し 、それ を 指 の 上 で くるくる 回し ながら 、アスナ は とんでもない こと を 口 に した。 おもしろく||||そう な|かお||ないふ||もどし|||ゆび||うえ|||まわし|||||||くち|| Asuna, with an uninterested look on her face, put the knife back, and while twirling it around on her finger, said something outrageous.

「なら 、しばらく わたし と コンビ 組み なさい。 ||||こんび|くみ| Then follow me for a while. ボス 攻略 パーティー の 編成 責任者 と して 、君 が ウワサ ほど 強い ヒト な の か 確かめたい と 思って た とこ だし。 ぼす|こうりゃく|ぱーてぃー||へんせい|せきにん しゃ|||きみ||||つよい|ひと||||たしかめたい||おもって||| As the person in charge of organizing the party to attack the boss, I wanted to see if you are as strong as you are rumored to be. わたし の 実力 も ちゃんと 教えて 差し上げたい し。 ||じつりょく|||おしえて|さしあげたい| I would also like to teach you how good I am. あと 今週 の ラッキーカラー 黒 だし」 |こんしゅう|||くろ| Also, this week's lucky color is black. Dashi."

「な 、なんだ そりゃ!