一 寸 法師 ( いっす ん ぼうし )/ The Inch - High Samurai
昔 、摂津 の 国 に 、ある 夫婦 が 住んで いました 。 子供 が いま せん でした から 、いつも 住吉 明神 へ 行って お 祈り して いました 。 「どうぞ 子供 を 授けて ください 。小さい 子供 でも いい です 」 そして 、ようやく 二人 は 子供 を 授かりました 。 本当に 小さくて 、一寸 しか ありません でした から 、「一寸法師 」と 名付けました 。 二人 は 、一寸法師 を 大切に 育てました 。 しかし 、五 歳 に なって も 、十 歳 に なって も 、一寸法師 は 少しも 大きく なりません でした 。 「や ー い 、チビ !」 他の 子供 たち は 一寸法師 を 見て 、からかいました 。 しかし 、一寸法師 は 怒りません でした 。 みんな と 友達 に なって 、いっしょに 遊びました 。 十六 歳 に なった とき 、一寸法師 は 両親 に 言いました 。 「私 は 京都 へ 行きたい です 。京都 へ 行って 、運 試し を したい です 」 近く の 淀川 を 上る と 、京都 へ 行く こと が できます 。 お 父さん は 一寸法師 に 、お椀 と 箸 を あげました 。 お母さん は 、縫い 針 を あげました 。 一 寸 法師 は 針 を 腰 に 差して 、お 椀 の 船 に 乗りました 。 「では 、お 父さん 、お母さん 。行ってきます 」 そう 言って 、一寸 法師 は 箸 の 櫂 を 使って 京都 へ 向かいました 。 小さい お 椀 でした から 、京都 まで 一 か月 かかりました 。 京都 は 、人 が たくさん 歩いて いました 。 馬 も たくさん います 。 大きい 屋敷 も たくさん あります 。 「まず 、偉い 人 の 家来 に なりましょう 」一寸法師 は 、一番 大きい 屋敷 に 入りました 。 「ごめん ください !ごめん ください !」 大きい 声 で 言いました が 、誰 も 出て 来ません 。 「ごめん ください !」 何度 も 叫んで いる と 、男 の 人 が 出て 来ました 。 この 屋敷 の 主人 、 宰相 殿 です 。 「だれ だ 、声 が した が …。 おかしい な 、だれ も いない 」 「います !ここ に います !」 見る と 、靴 の 後ろ に 、とても 小さい 男 が います 。 宰相 殿 は びっくり しました 。 「 何者 だ 。 何の 用 だ 」 「一寸 法師 です 。 摂津 から 来ました 。ここ で 働きたい です 」 宰相 殿 は 、おもしろい と 思いました 。 「じゃあ 、娘 の 遊び 相手 に なりなさい 」「ありがとう ございます !」 宰相 殿 の 姫 様 は 、十三 歳 です 。 とても 可愛 いくて 親切な 姫 様 でした から 、一寸 法師 は すぐ 好きに なりました 。 姫 様 も 一寸 法師 を 気に入って 、いっしょに 遊んだり 、勉強 したり しました 。 ある 日 、姫 様 は 遠く の お寺 へ お参り に 行きました 。 もちろん 、一寸法師 も いっしょ です 。 その頃 、京都 に は 怖ろしい 鬼 が いて 、ときどき 若い 娘 を 攫って いました 。 宰相 殿 は 心配 して 、数 人 の 男 を 姫 様 の 護衛 に つけました 。 その 、お 寺 参り の 帰り道 でした 。 薄暗い ところ を 歩いて いる と 、突然 鬼 が 現れました 。 「きれいな 娘 だ 。もらう ぞ 」 護衛 の 男 たち は 刀 を 抜きました 。 しかし 、鬼 は とても 大きくて 強かった です から 、すぐ 負けました 。 一 寸 法師 は 針 を 持って 、姫 様 の 前 に 立ちました 。 「姫 様 、私 が 守ります !」 鬼 は 一寸法師 を 見る と 、笑いました 。 「小さい 男 だ な 。腹 の 足し に も ならない 」 そう 言って 、一寸 法師 を つまんで 、飲み込みました 。 「ああ 、一寸法師 …」姫様 は 倒れました 。 一 寸 法師 は 鬼 の お腹 の 中 に 入る と 、お腹 の 壁 に 針 を 刺しました 。 「 痛い ! 痛い !」 鬼 は 苦しみました 。 一寸 法師 は 何度 も 何度 も 刺しました 。 「痛い !やめて くれ !」 鬼 は 倒れて 、一寸 法師 を 吐き出しました 。 「まだ やる か 」「いいえ 、許して ください 。これ を あげます 」 鬼 は 一寸法師 に 、打ち出の小槌 を あげました 。 「これ を 振る と 、何でも 欲しい もの が 出ます 」そう 言って 、鬼 は 逃げて 行きました 。 一 寸 法師 は 姫 様 を 介抱 しました 。 「 姫 様 、 姫 様 、 鬼 は 逃げて 行きました よ 。 あの 小槌 を もらいました 」 「ありがとう 、一寸 法師 」姫 様 は 、打ち出の小槌 を 拾いました 。 「あなた は 、何 が 欲しい です か 」「私 は …、私 は 背 が 欲しい です 」 姫 様 は 一寸 法師 に 向かって 、打ち出の小槌 を 振りました 。 「一寸 法師 の 背 が 欲しい 。普通の 背の高さ に なって ください 」一度 振る と 、背が 一尺 伸びました 。 二 度 振る と 三 尺 、三 度 目 は 六 尺 ぐらい に なりました 。 一 寸 法師 は 嬉しく なりました 。立ったり 屈んだり 、後ろ を 見たり 、飛んだり しました 。 それ から 、二人 で 宰相殿 の 屋敷 へ 帰りました 。 この 話 は とても 有名 に なりました から 、帝 も 一寸法師 に 会い たく なりました 。 一 寸 法師 は 内裏 へ 呼ば れました 。 帝 は 一寸 法師 が 気に入って 、少将 の 位 を 授けました 。 それ から 、人々 は 一寸法師 は 「堀河 の 少将 」と 呼びました 。 堀 河 の 少将 は 、姫 様 と 結婚 しました 。 そして 、摂津 の 国 から 両親 を 連れて 来て 、みんな で 仲良く 暮らしました 。