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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 8. 梅 の におい - 夢野 久作 (2 nd version )

8. 梅 の におい - 夢野 久作 (2 nd version )

一 匹 の 斑猫 が 人間 の 真似 を して 梅 の 木 に のぼって 花 を 嗅いで みました 。 あの 枝 から この 枝 、 花 から 蕾 と いく つ も いく つ も 嗅いで みました が 、

「 ナアーンダ 、 人間 が いい におい だ 、 いい におい だ と 言う から 本当に して 嗅いで みたら 、 つまらない におい じゃない か 。 馬鹿馬鹿しい 、 帰ろう 帰ろう 」

と 樹 から 降りかかりました 。

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 」

「 オヤ 、 鶯 が やって 来た な 。 おれ は 一 度 あいつ を たべて みたい と 思って いた が 、 ちょうど いい 。 ここ に 隠れて まって いて やろう 」

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 」

と 言う うち に 鶯 は 、 斑 の いる 梅 の 木 の すぐ そば に ある 梅 の 花 の たくさん 開いた ほそい 枝 の 処 へ 、 ヒョイ と とまりました 。

「 鶯 さん 鶯 さん 」

と 猫 な で ご え で 呼びかけました 。

「 オヤ 斑 さん 、 今日 は いい お 天気 です ね 」

「 ニャーニャー 、 ホントに いい お 天気 です ね 。 それ に この 梅 の 花 の に おい の いい こと 。 ほんとに たべ たく なる よう です ね 」

「 オホホホホ 、 イヤな 斑 さん だ こと 。 梅 の 花 に おいしい に おい が します か 」

「 ええ 、 梅 の に おい を かぐ と おなか が 急に すく よう です 。 あなた は どんなに おい が する の です か 」

「 あたし は ねえ 、 梅 の に おい を 嗅ぐ と 何とも 言えない いい 心持ち に なって 、 歌 が うた い たく なる の です 。 そうして あちらこちら と 躍り ながら 飛びまわり たく なる の です 」

「 ヘエ 、 さ よう です か ね 。 そう 言えば あたし も 何だか 踊り たく なった よう です 」

「 まあ 、 おもしろい こと 。 一 つ おどって みせて ちょうだいな 」

「 いいえ 、 あたし は あなた の 着物 の に おい を 嗅いだら 一緒に 踊り たく なった の です 、 本当に あなた の に おい を 嗅ぐ と いい こころもち に なります 。 どう です 、 一緒に 踊ろう じゃ ありません か 」

「 いや です よ 。 あなた と 踊る の は こわい 」

「 何故 です 。 ちっとも 怖い 事 は ない じゃ ありません か 。 もっと こっち へ きて ごらん なさい 」

「 イヤ です よ 。 妾 の に おい を 嗅いで 踊り たく なった と 言う の は 嘘 でしょう 」

「 どうして 」

「 たべ たく なった ん でしょう 」

と 言う うち に 鶯 は パッと 飛 げ 出しました 。

「 しまった 」

と 斑 が 飛びつきます と 、 ドタリ と 地べた へ 落ちて しまいました 。

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 」

と 鶯 は 隣 の うち の 梅 の 木 で 鳴いて いました 。

8. 梅 の におい - 夢野 久作 (2 nd version ) うめ|||ゆめの|きゅうさく|| 8. smell of plum blossoms - Hisasaku Yumeno (2 nd version)

一 匹 の 斑猫 が 人間 の 真似 を して 梅 の 木 に のぼって 花 を 嗅いで みました 。 ひと|ひき||ぶち ねこ||にんげん||まね|||うめ||き|||か||かいで| あの 枝 から この 枝 、 花 から 蕾 と いく つ も いく つ も 嗅いで みました が 、 |えだ|||えだ|か||つぼみ||||||||かいで||

「 ナアーンダ 、 人間 が いい におい だ 、 いい におい だ と 言う から 本当に して 嗅いで みたら 、 つまらない におい じゃない か 。 |にんげん|||||||||いう||ほんとうに||かいで||||じゃ ない| 馬鹿馬鹿しい 、 帰ろう 帰ろう 」 ばかばかしい|かえろう|かえろう

と 樹 から 降りかかりました 。 |き||ふりかかりました

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 」

「 オヤ 、 鶯 が やって 来た な 。 |うぐいす|||きた| おれ は 一 度 あいつ を たべて みたい と 思って いた が 、 ちょうど いい 。 ||ひと|たび||||||おもって|||| ここ に 隠れて まって いて やろう 」 ||かくれて|||

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 、 ケキョ 」

と 言う うち に 鶯 は 、 斑 の いる 梅 の 木 の すぐ そば に ある 梅 の 花 の たくさん 開いた ほそい 枝 の 処 へ 、 ヒョイ と とまりました 。 |いう|||うぐいす||ぶち|||うめ||き||||||うめ||か|||あいた||えだ||しょ||||

「 鶯 さん 鶯 さん 」 うぐいす||うぐいす|

と 猫 な で ご え で 呼びかけました 。 |ねこ||||||よびかけました

「 オヤ 斑 さん 、 今日 は いい お 天気 です ね 」 |ぶち||きょう||||てんき||

「 ニャーニャー 、 ホントに いい お 天気 です ね 。 |ほんとに|||てんき|| それ に この 梅 の 花 の に おい の いい こと 。 |||うめ||か|||||| ほんとに たべ たく なる よう です ね 」

「 オホホホホ 、 イヤな 斑 さん だ こと 。 |いやな|ぶち||| 梅 の 花 に おいしい に おい が します か 」 うめ||か|||||||

「 ええ 、 梅 の に おい を かぐ と おなか が 急に すく よう です 。 |うめ|||||||||きゅうに||| あなた は どんなに おい が する の です か 」

「 あたし は ねえ 、 梅 の に おい を 嗅ぐ と 何とも 言えない いい 心持ち に なって 、 歌 が うた い たく なる の です 。 |||うめ|||||かぐ||なんとも|いえ ない||こころもち|||うた||||||| そうして あちらこちら と 躍り ながら 飛びまわり たく なる の です 」 |||おどり||とびまわり||||

「 ヘエ 、 さ よう です か ね 。 そう 言えば あたし も 何だか 踊り たく なった よう です 」 |いえば|||なんだか|おどり||||

「 まあ 、 おもしろい こと 。 一 つ おどって みせて ちょうだいな 」 ひと||||

「 いいえ 、 あたし は あなた の 着物 の に おい を 嗅いだら 一緒に 踊り たく なった の です 、 本当に あなた の に おい を 嗅ぐ と いい こころもち に なります 。 |||||きもの|||||かいだら|いっしょに|おどり|||||ほんとうに||||||かぐ||||| どう です 、 一緒に 踊ろう じゃ ありません か 」 ||いっしょに|おどろう|||

「 いや です よ 。 あなた と 踊る の は こわい 」 ||おどる|||

「 何故 です 。 なぜ| ちっとも 怖い 事 は ない じゃ ありません か 。 |こわい|こと||||| もっと こっち へ きて ごらん なさい 」

「 イヤ です よ 。 いや|| 妾 の に おい を 嗅いで 踊り たく なった と 言う の は 嘘 でしょう 」 めかけ|||||かいで|おどり||||いう|||うそ|

「 どうして 」

「 たべ たく なった ん でしょう 」

と 言う うち に 鶯 は パッと 飛 げ 出しました 。 |いう|||うぐいす||ぱっと|と||だしました

「 しまった 」

と 斑 が 飛びつきます と 、 ドタリ と 地べた へ 落ちて しまいました 。 |ぶち||とびつきます||||じべた||おちて|

「 ホーホケキョ 、 ホーホケキョ 」

と 鶯 は 隣 の うち の 梅 の 木 で 鳴いて いました 。 |うぐいす||となり||||うめ||き||ないて|