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ごん狐 - 新美南吉 (Gon, the Little Fox by Nankichi Niimi), ご ん 狐 (Full , 2nd reading)

ご ん 狐 (Full , 2nd reading)

ご ん 狐 - 新美 南 吉

一 .

これ は 、 私 が 小さい とき に 、 村 の 茂平 と いう お じいさん から きいた お 話 です 。

むかし は 、 私 たち の 村 の ちかく の 、 中山 と いう ところ に 小さな お 城 が あって 、 中山 さま と いう お とのさま が 、 おら れた そうです 。

その 中山 から 、 少し は なれた 山 の 中 に 、「 ご ん 狐 」 と いう 狐 が いました 。 ご ん は 、 一 人 ぼっち の 小 狐 で 、 しだ の 一 ぱい しげった 森 の 中 に 穴 を ほって 住んで いました 。 そして 、 夜 でも 昼 でも 、 あたり の 村 へ 出て きて 、 いたずら ばかり しました 。 はたけ へ 入って 芋 を ほり ちらしたり 、 菜種 がら の 、 ほして ある の へ 火 を つけたり 、 百姓 家 の 裏手 に つるして ある とんがら し を むしり とって 、 いったり 、 いろんな こと を しました 。 或秋 の こと でした 。 二 、 三 日 雨 が ふりつづいた その 間 、 ご ん は 、 外 へ も 出られ なくて 穴 の 中 に しゃがんで いました 。 雨 が あがる と 、 ご ん は 、 ほっと して 穴 から はい出ました 。 空 は からっと 晴れて いて 、 百舌 鳥 の 声 が き ん きん 、 ひびいて いました 。 ご ん は 、 村 の 小川 の 堤 まで 出て 来ました 。 あたり の 、 すすきの 穂 に は 、 まだ 雨 の しずく が 光って いました 。 川 は 、 いつも は 水 が 少い のです が 、 三 日 も の 雨 で 、 水 が 、 どっと まして いました 。 ただ の とき は 水 に つかる こと の ない 、 川べり の すすき や 、 萩 の 株 が 、 黄いろく にごった 水 に 横だおし に なって 、 もまれて います 。 ご ん は 川下 の 方 へ と 、 ぬかるみ みち を 歩いて いきました 。 ふと 見る と 、 川 の 中 に 人 が いて 、 何 か やって います 。 ご ん は 、 見つから ない ように 、 そうっと 草 の 深い ところ へ 歩き よって 、 そこ から じっと のぞいて みました 。 「 兵 十 だ な 」 と 、 ご ん は 思いました 。 兵 十 は ぼろぼろ の 黒い きもの を まく し 上げて 、 腰 の ところ まで 水 に ひたり ながら 、 魚 を とる 、 はりきり と いう 、 網 を ゆすぶって いました 。 はちまき を した 顔 の 横っちょう に 、 まるい 萩 の 葉 が 一 まい 、 大きな 黒 子 みたいに へばりついて いました 。 しばらく する と 、 兵 十 は 、 はりきり 網 の 一ばん うしろ の 、 袋 の ように なった ところ を 、 水 の 中 から もちあげました 。 その 中 に は 、 芝 の 根 や 、 草 の 葉 や 、 くさった 木ぎれ など が 、 ご ちゃ ご ちゃ は いって いました が 、 でも ところどころ 、 白い もの が きらきら 光って います 。 それ は 、 ふとい うなぎ の 腹 や 、 大きな きす の 腹 でした 。 兵 十 は 、 び く の 中 へ 、 その うなぎ や きす を 、 ごみ と 一しょに ぶち こみました 。 そして 、 また 、 袋 の 口 を しばって 、 水 の 中 へ 入れました 。 兵 十 は それ から 、 び く を もって 川 から 上り び く を 土手 に おい といて 、 何 を さがし に か 、 川上 の 方 へ かけて いきました 。 兵 十 が い なく なる と 、 ご ん は 、 ぴょ いと 草 の 中 から とび出して 、 び く の そば へ かけつけました 。 ちょいと 、 いたずら が し たく なった のです 。 ご ん は び く の 中 の 魚 を つかみ 出して は 、 はりきり 網 の かかって いる ところ より 下手 の 川 の 中 を 目がけて 、 ぽんぽん なげこみました 。 どの 魚 も 、「 と ぼん 」 と 音 を 立て ながら 、 にごった 水 の 中 へ もぐりこみました 。 一ばん しまい に 、 太い うなぎ を つかみ に かかりました が 、 何しろ ぬるぬる と すべり ぬける ので 、 手 で は つかめません 。 ご ん は じれったく なって 、 頭 を び く の 中 に つ ッ こんで 、 うなぎ の 頭 を 口 に くわえました 。 うなぎ は 、 キュッ と 言って ご ん の 首 へ まきつきました 。 その とたん に 兵 十 が 、 向 う から 、

「 うわ ア ぬす と 狐 め 」 と 、 どなりたてました 。 ご ん は 、 びっくり して とびあがりました 。 うなぎ を ふりすてて にげよう と しました が 、 うなぎ は 、 ご ん の 首 に まきついた まま は なれません 。 ご ん は そのまま 横っと び に とび出して 一しょう けんめい に 、 にげて いきました 。 ほら 穴 の 近く の 、 はん の 木 の 下 で ふりかえって 見ました が 、 兵 十 は 追っかけて は 来ません でした 。 ご ん は 、 ほっと して 、 うなぎ の 頭 を かみくだき 、 やっと はずして 穴 の そと の 、 草 の 葉 の 上 に のせて おきました 。 --

二 .

十 日 ほど たって 、 ご ん が 、 弥 助 と いう お 百姓 の 家 の 裏 を 通りかかります と 、 そこ の 、 いちじく の 木 の かげ で 、 弥 助 の 家内 が 、 お はぐ ろ を つけて いました 。 鍛冶屋 の 新 兵衛 の 家 の うら を 通る と 、 新 兵衛 の 家内 が 髪 を すいて いました 。 ご ん は 、

「 ふ ふん 、 村 に 何 か ある んだ な 」 と 、 思いました 。 「 何 だろう 、 秋 祭 か な 。 祭 なら 、 太鼓 や 笛 の 音 が し そうな もの だ 。 それ に 第 一 、 お 宮 に のぼり が 立つ はずだ が 」

こんな こと を 考え ながら やって 来ます と 、 いつの間にか 、 表 に 赤い 井戸 の ある 、 兵 十 の 家 の 前 へ 来ました 。 その 小さ な 、 こわれ かけた 家 の 中 に は 、 大勢 の 人 が あつまって いました 。 よそいき の 着物 を 着て 、 腰 に 手拭 を さげたり した 女 たち が 、 表 の かまど で 火 をたいて います 。 大きな 鍋 の 中 で は 、 何 か ぐずぐず 煮えて いました 。 「 ああ 、 葬式 だ 」 と 、 ご ん は 思いました 。 「 兵 十 の 家 の だれ が 死んだ んだろう 」

お 午 が すぎる と 、 ご ん は 、 村 の 墓地 へ 行って 、 六 地蔵 さん の かげ に かくれて いました 。 いい お 天気 で 、 遠く 向 うに は 、 お 城 の 屋根 瓦 が 光って います 。 墓地 に は 、 ひがん 花 が 、 赤い 布 の ように さき つづいて いました 。 と 、 村 の 方 から 、 カーン 、 カーン 、 と 、 鐘 が 鳴って 来ました 。 葬式 の 出る 合図 です 。

やがて 、 白い 着物 を 着た 葬 列 の もの たち が やって 来る の が ちらちら 見え はじめました 。 話 声 も 近く なりました 。 葬 列 は 墓地 へ は いって 来ました 。 人々 が 通った あと に は 、 ひがん 花 が 、 ふみ おられて いました 。 ご ん は のびあがって 見ました 。 兵 十 が 、 白い かみしも を つけて 、 位牌 を ささげて います 。 いつも は 、 赤い さつま芋 みたいな 元気 の いい 顔 が 、 きょう は 何だか しおれて いました 。 「 は はん 、 死んだ の は 兵 十 の おっ母 だ 」 ご ん は そう 思い ながら 、 頭 を ひっこめました 。 その 晩 、 ご ん は 、 穴 の 中 で 考えました 。 「 兵 十 の おっ母 は 、 床 に ついて いて 、 うなぎ が 食べたい と 言った に ちがいない 。 それ で 兵 十 が はりきり 網 を もち出した んだ 。 ところが 、 わし が いたずら を して 、 うなぎ を とって 来て しまった 。 だ から 兵 十 は 、 おっ母 に うなぎ を 食べ させる こと が でき なかった 。 そのまま おっ母 は 、 死んじゃった に ちがいない 。 ああ 、 うなぎ が 食べたい 、 うなぎ が 食べたい と おもい ながら 、 死んだ んだろう 。 ちょ ッ 、 あんな いたずら を し なけりゃ よかった 。」

--

三 .

兵 十 が 、 赤い 井戸 の ところ で 、 麦 を といで いました 。 兵 十 は 今 まで 、 おっ母 と 二 人きり で 、 貧しい くらし を して いた もの で 、 おっ母 が 死んで しまって は 、 もう 一 人 ぼっち でした 。 「 おれ と 同じ 一 人 ぼっち の 兵 十 か 」 こちら の 物置 の 後 から 見て い たごん は 、 そう 思いました 。 ご ん は 物置 の そば を はなれて 、 向 う へ いき かけます と 、 どこ か で 、 いわし を 売る 声 が します 。 「 いわし の やすうり だ ア い 。 いき の いい いわし だ ア い 」

ご ん は 、 その 、 いせい の いい 声 の する 方 へ 走って いきました 。 と 、 弥 助 の おかみ さん が 、 裏 戸口 から 、

「 いわし を おくれ 。」 と 言いました 。 いわし 売 は 、 いわし の かご を つんだ 車 を 、 道ばた に おいて 、 ぴかぴか 光る いわし を 両手 で つかんで 、 弥 助 の 家 の 中 へ もって はいりました 。 ご ん は その すきま に 、 かご の 中 から 、 五 、 六 ぴき の いわし を つかみ 出して 、 もと 来 た方 へ かけだしました 。 そして 、 兵 十 の 家 の 裏口 から 、 家 の 中 へ いわし を 投げこんで 、 穴 へ 向って かけ もどりました 。 途中 の 坂 の 上 で ふりかえって 見ます と 、 兵 十 が まだ 、 井戸 の ところ で 麦 を といで いる の が 小さく 見えました 。 ご ん は 、 うなぎ の つぐない に 、 まず 一 つ 、 いい こと を した と 思いました 。 つぎの 日 に は 、 ご ん は 山 で 栗 を どっさり ひろって 、 それ を かかえて 、 兵 十 の 家 へ いきました 。 裏口 から のぞいて 見ます と 、 兵 十 は 、 午 飯 を たべ かけて 、 茶椀 を もった まま 、 ぼんやり と 考えこんで いました 。 へんな こと に は 兵 十 の 頬 ぺた に 、 かすり傷 が ついて います 。 どうした ん だろう と 、 ご ん が 思って います と 、 兵 十 が ひとりごと を いいました 。 「 一たい だれ が 、 いわし なんか を おれ の 家 へ ほうりこんで いった んだろう 。 おかげ で おれ は 、 盗人 と 思われて 、 いわし 屋 の やつ に 、 ひどい 目 に あわさ れた 」 と 、 ぶつぶつ 言って います 。 ご ん は 、 これ は しまった と 思いました 。 かわいそうに 兵 十 は 、 いわし 屋 に ぶん なぐられて 、 あんな 傷 まで つけられた の か 。 ご ん は こう おもい ながら 、 そっと 物置 の 方 へ まわって その 入口 に 、 栗 を おいて かえりました 。 つぎの 日 も 、 その つぎ の 日 も ご ん は 、 栗 を ひろって は 、 兵 十 の 家 へ もって 来て やりました 。 その つぎ の 日 に は 、 栗 ばかり で なく 、 まつたけ も 二 、 三 ぼん もっていきました 。 --

四 .

月 の いい 晩 でした 。 ご ん は 、 ぶらぶら あそび に 出かけました 。 中山 さま の お 城 の 下 を 通って すこし いく と 、 細い 道 の 向 う から 、 だれ か 来る ようです 。 話 声 が 聞えます 。 チンチロリン 、 チンチロリン と 松虫 が 鳴いて います 。 ご ん は 、 道 の 片がわ に かくれて 、 じっと して いました 。 話 声 は だんだん 近く なりました 。 それ は 、 兵 十 と 加助 と いう お 百姓 でした 。

「 そうそう 、 なあ 加助 」 と 、 兵 十 が いいました 。 「 ああ ん ? 」 「 おれ あ 、 このごろ 、 とても ふしぎな こと が ある んだ 」 「 何 が ? 」 「 おっ母 が 死んで から は 、 だれ だ か 知ら ん が 、 おれ に 栗 や まつたけ なんか を 、 まいにち まいにち くれる んだ よ 」 「 ふうん 、 だれ が ? 」 「 それ が わから ん のだ よ 。 おれ の 知ら ん うち に 、 おいて いく んだ 」

ご ん は 、 ふた り の あと を つけて いきました 。 「 ほんと かい ? 」 「 ほんとだ と も 。 うそ と 思う なら 、 あした 見 に 来い よ 。 その 栗 を 見せて やる よ 」

「 へえ 、 へんな こと も ある もん だ な ア 」

それなり 、 二 人 は だまって 歩いて いきました 。 加助 が ひょいと 、 後 を 見ました 。 ご ん は び くっと して 、 小さく なって たちどまりました 。 加助 は 、 ご ん に は 気 が つか ないで 、 そのまま さっさと あるきました 。 吉兵衛 と いう お 百姓 の 家 まで 来る と 、 二 人 は そこ へ は いって いきました 。 ポンポン ポンポン と 木魚 の 音 が して います 。 窓 の 障子 に あかり が さして いて 、 大きな 坊主 頭 が うつって 動いて いました 。 ご ん は 、

「 お ねんぶつ が ある んだ な 」 と 思い ながら 井戸 の そば に しゃがんで いました 。 しばらく する と 、 また 三 人 ほど 、 人 が つれだって 吉兵衛 の 家 へ は いって いきました 。 お 経 を 読む 声 が きこえて 来ました 。 --

五 .

ご ん は 、 お ねんぶつ が すむ まで 、 井戸 の そば に しゃがんで いました 。 兵 十 と 加助 は 、 また 一しょに かえって いきます 。 ご ん は 、 二 人 の 話 を きこう と 思って 、 ついていきました 。 兵 十 の 影法師 を ふみ ふみ いきました 。 お 城 の 前 まで 来た とき 、 加助 が 言い出しました 。 「 さっき の 話 は 、 きっと 、 そりゃ あ 、 神さま の しわざ だ ぞ 」

「 えっ? 」 と 、 兵 十 は びっくり して 、 加助 の 顔 を 見ました 。 「 おれ は 、 あれ から ずっと 考えて いた が 、 どうも 、 そりゃ 、 人間 じゃ ない 、 神さま だ 、 神さま が 、 お前 が たった 一 人 に なった の を あわれに 思わっしゃって 、 いろんな もの を めぐんで 下さる んだ よ 」 「 そう か なあ 」 「 そう だ と も 。 だ から 、 まいにち 神さま に お 礼 を 言う が いい よ 」

「 うん 」

ご ん は 、 へえ 、 こいつ は つまらない な と 思いました 。 おれ が 、 栗 や 松たけ を 持っていって やる のに 、 その おれ に は お 礼 を いわ ないで 、 神さま に お 礼 を いう んじゃ ア 、 おれ は 、 引き合わ ない なあ 。

--

六 .

その あくる 日 も ご ん は 、 栗 を もって 、 兵 十 の 家 へ 出かけました 。 兵 十 は 物置 で 縄 を なって いました 。 それ で ご ん は 家 の 裏口 から 、 こっそり 中 へ はいりました 。 その とき 兵 十 は 、 ふと 顔 を あげました 。 と 狐 が 家 の 中 へ はいった では ありません か 。 こない だ うなぎ を ぬすみ や がった あの ご ん 狐 め が 、 また いたずら を し に 来た な 。

「 ようし 。」

兵 十 は 立ちあがって 、 納屋 に かけて ある 火縄銃 を とって 、 火薬 を つめました 。 そして 足音 を しのばせて ちかよって 、 今 戸口 を 出よう と する ご ん を 、 ドンと 、 うちました 。 ご ん は 、 ば たり と たおれました 。 兵 十 は かけよって 来ました 。 家 の 中 を 見る と 、 土間 に 栗 が 、 かためて おいて ある の が 目 に つきました 。 「 おや 」 と 兵 十 は 、 びっくり して ご ん に 目 を 落しました 。 「 ご ん 、 お前 だった の か 。 いつも 栗 を くれた の は 」

ご ん は 、 ぐったり と 目 を つぶった まま 、 うなずきました 。 兵 十 は 火縄銃 を ば たり と 、 とり 落しました 。 青い 煙 が 、 まだ 筒 口 から 細く 出て いました 。


ご ん 狐 (Full , 2nd reading) ||きつね|full|| Gon Kitsune (Full , 2nd reading) Gon fox (intégrale, 2ème lecture) 곤 狐 (Full , 2nd reading) Gon vos (Volledige , 2e lezing) Gon fox (Integral, 2ª leitura) Gon fox (Tam, 2. okuma) 贡狐(全文二读)

ご ん 狐 - 新美 南 吉 ||きつね|にいみ|みなみ|きち Gon, the Little Fox-Nankichi Niimi

一 . ひと One.

これ は 、 私 が 小さい とき に 、 村 の 茂平 と いう お じいさん から きいた お 話 です 。 ||わたくし||ちいさい|||むら||もへい||||||||はなし| This is a story I heard from an old man named Shigehira in the village when I was little.

むかし は 、 私 たち の 村 の ちかく の 、 中山 と いう ところ に 小さな お 城 が あって 、 中山 さま と いう お とのさま が 、 おら れた そうです 。 ||わたくし|||むら||||なかやま|||||ちいさな||しろ|||なかやま|||||||||そう です Once upon a time, there was a small castle near Nakayama in our village, and there was an adult named Nakayama.

その 中山 から 、 少し は なれた 山 の 中 に 、「 ご ん 狐 」 と いう 狐 が いました 。 |なかやま||すこし|||やま||なか||||きつね|||きつね||い ました There was a fox called "Gon fox" in the mountain a little away from that Nakayama. ご ん は 、 一 人 ぼっち の 小 狐 で 、 しだ の 一 ぱい しげった 森 の 中 に 穴 を ほって 住んで いました 。 |||ひと|じん|ぼ っち||しょう|きつね||||ひと|||しげる||なか||あな|||すんで|い ました He was a lone little fox, and lived in a small forest with a hole in it. そして 、 夜 でも 昼 でも 、 あたり の 村 へ 出て きて 、 いたずら ばかり しました 。 |よ||ひる||||むら||でて||||し ました Then, night or day, he would come out to the nearby villages and play mischief. はたけ へ 入って 芋 を ほり ちらしたり 、 菜種 がら の 、 ほして ある の へ 火 を つけたり 、 百姓 家 の 裏手 に つるして ある とんがら し を むしり とって 、 いったり 、 いろんな こと を しました 。 ||はいって|いも||||なたね|||||||ひ|||ひゃくしょう|いえ||うらて|||||||||||||し ました I went into the hatake and smashed the potatoes, lit the rapeseed and the rapeseed, and plucked the tongue that was hung on the back of the peasant family. 或秋 の こと でした 。 あるあき||| It was an autumn. 二 、 三 日 雨 が ふりつづいた その 間 、 ご ん は 、 外 へ も 出られ なくて 穴 の 中 に しゃがんで いました 。 ふた|みっ|ひ|あめ||||あいだ||||がい|||で られ||あな||なか|||い ました During the rain for a few days, I was crouching in the hole without being able to go outside. 雨 が あがる と 、 ご ん は 、 ほっと して 穴 から はい出ました 。 あめ|||||||||あな||はい で ました When the rain moved out, the goons emerged from their holes, relieved. 空 は からっと 晴れて いて 、 百舌 鳥 の 声 が き ん きん 、 ひびいて いました 。 から||から っと|はれて||もず|ちょう||こえ||||||い ました The sky was clear and clear, and the voice of the shrike was audible. ご ん は 、 村 の 小川 の 堤 まで 出て 来ました 。 |||むら||おがわ||つつみ||でて|き ました He came out to the bank of a stream in the village. あたり の 、 すすきの 穂 に は 、 まだ 雨 の しずく が 光って いました 。 |||ほ||||あめ||||ひかって|い ました 川 は 、 いつも は 水 が 少い のです が 、 三 日 も の 雨 で 、 水 が 、 どっと まして いました 。 かわ||||すい||すくない|||みっ|ひ|||あめ||すい||||い ました The river was usually low in water, but it had been raining for three days, and the water was rushing. ただ の とき は 水 に つかる こと の ない 、 川べり の すすき や 、 萩 の 株 が 、 黄いろく にごった 水 に 横だおし に なって 、 もまれて います 。 ||||すい||||||かわべり||||はぎ||かぶ||きいろく||すい||よこだおし|||もま れて|い ます At that time, they are not submerged in water, and the sukiyaki of the river and the stock of Hagi are laid down in the yellow and muddy water. ご ん は 川下 の 方 へ と 、 ぬかるみ みち を 歩いて いきました 。 |||かわしも||かた||||||あるいて|いき ました They walked downstream along the muddy road. ふと 見る と 、 川 の 中 に 人 が いて 、 何 か やって います 。 |みる||かわ||なか||じん|||なん|||い ます ご ん は 、 見つから ない ように 、 そうっと 草 の 深い ところ へ 歩き よって 、 そこ から じっと のぞいて みました 。 |||みつから|||そう っと|くさ||ふかい|||あるき||||||み ました 「 兵 十 だ な 」 と 、 ご ん は 思いました 。 つわもの|じゅう|||||||おもい ました It's Hyouju," Gon thought to himself. 兵 十 は ぼろぼろ の 黒い きもの を まく し 上げて 、 腰 の ところ まで 水 に ひたり ながら 、 魚 を とる 、 はりきり と いう 、 網 を ゆすぶって いました 。 つわもの|じゅう||||くろい|||||あげて|こし||||すい||||ぎょ||||||あみ|||い ました He titled his tattered black kimono and dipped his head into the water up to his waist, while he was taking in fish and shaking his net, called a fish hook. はちまき を した 顔 の 横っちょう に 、 まるい 萩 の 葉 が 一 まい 、 大きな 黒 子 みたいに へばりついて いました 。 |||かお||よこ っ ちょう|||はぎ||は||ひと||おおきな|くろ|こ|||い ました A small patch of round bush clinging to the side of his beaked face looked like a large black child. しばらく する と 、 兵 十 は 、 はりきり 網 の 一ばん うしろ の 、 袋 の ように なった ところ を 、 水 の 中 から もちあげました 。 |||つわもの|じゅう|||あみ||ひとばん|||ふくろ||||||すい||なか||もちあげ ました After a while, Hyouju lifted a bag-like piece of netting behind him out of the water. その 中 に は 、 芝 の 根 や 、 草 の 葉 や 、 くさった 木ぎれ など が 、 ご ちゃ ご ちゃ は いって いました が 、 でも ところどころ 、 白い もの が きらきら 光って います 。 |なか|||しば||ね||くさ||は|||きぎれ|||||||||い ました||||しろい||||ひかって|い ます それ は 、 ふとい うなぎ の 腹 や 、 大きな きす の 腹 でした 。 |||||はら||おおきな|||はら| 兵 十 は 、 び く の 中 へ 、 その うなぎ や きす を 、 ごみ と 一しょに ぶち こみました 。 つわもの|じゅう|||||なか|||||||||いっしょに||こみ ました そして 、 また 、 袋 の 口 を しばって 、 水 の 中 へ 入れました 。 ||ふくろ||くち|||すい||なか||いれ ました 兵 十 は それ から 、 び く を もって 川 から 上り び く を 土手 に おい といて 、 何 を さがし に か 、 川上 の 方 へ かけて いきました 。 つわもの|じゅう||||||||かわ||のぼり||||どて||||なん|||||かわかみ||かた|||いき ました 兵 十 が い なく なる と 、 ご ん は 、 ぴょ いと 草 の 中 から とび出して 、 び く の そば へ かけつけました 。 つわもの|じゅう|||||||||||くさ||なか||とびだして||||||かけつけ ました ちょいと 、 いたずら が し たく なった のです 。 ご ん は び く の 中 の 魚 を つかみ 出して は 、 はりきり 網 の かかって いる ところ より 下手 の 川 の 中 を 目がけて 、 ぽんぽん なげこみました 。 ||||||なか||ぎょ|||だして|||あみ||||||へた||かわ||なか||めがけて||なげこみ ました どの 魚 も 、「 と ぼん 」 と 音 を 立て ながら 、 にごった 水 の 中 へ もぐりこみました 。 |ぎょ|||||おと||たて|||すい||なか||もぐりこみ ました 一ばん しまい に 、 太い うなぎ を つかみ に かかりました が 、 何しろ ぬるぬる と すべり ぬける ので 、 手 で は つかめません 。 ひとばん|||ふとい|||||かかり ました||なにしろ||||||て|||つかめ ませ ん ご ん は じれったく なって 、 頭 を び く の 中 に つ ッ こんで 、 うなぎ の 頭 を 口 に くわえました 。 |||||あたま|||||なか|||||||あたま||くち||くわえ ました うなぎ は 、 キュッ と 言って ご ん の 首 へ まきつきました 。 ||||いって||||くび||まきつき ました その とたん に 兵 十 が 、 向 う から 、 |||つわもの|じゅう||むかい||

「 うわ ア ぬす と 狐 め 」 と 、 どなりたてました 。 ||||きつね|||どなりたて ました ご ん は 、 びっくり して とびあがりました 。 |||||とびあがり ました I tried to sprinkle the eel and try to get rid of it, but the eel cannot stay around the neck of the eel. うなぎ を ふりすてて にげよう と しました が 、 うなぎ は 、 ご ん の 首 に まきついた まま は なれません 。 |||||し ました|||||||くび|||||なれ ませ ん ご ん は そのまま 横っと び に とび出して 一しょう けんめい に 、 にげて いきました 。 ||||よこ っと|||とびだして|いっしょう||||いき ました The dog then emerged from the water and ran away. ほら 穴 の 近く の 、 はん の 木 の 下 で ふりかえって 見ました が 、 兵 十 は 追っかけて は 来ません でした 。 |あな||ちかく||||き||した|||み ました||つわもの|じゅう||おっかけて||き ませ ん| I looked back under the Han tree near the pit, but Hyouju was not chasing me. ご ん は 、 ほっと して 、 うなぎ の 頭 を かみくだき 、 やっと はずして 穴 の そと の 、 草 の 葉 の 上 に のせて おきました 。 |||||||あたま|||||あな||||くさ||は||うえ|||おき ました --

二 . ふた

十 日 ほど たって 、 ご ん が 、 弥 助 と いう お 百姓 の 家 の 裏 を 通りかかります と 、 そこ の 、 いちじく の 木 の かげ で 、 弥 助 の 家内 が 、 お はぐ ろ を つけて いました 。 じゅう|ひ||||||わたる|じょ||||ひゃくしょう||いえ||うら||とおりかかり ます||||||き||||わたる|じょ||かない|||||||い ました 鍛冶屋 の 新 兵衛 の 家 の うら を 通る と 、 新 兵衛 の 家内 が 髪 を すいて いました 。 かじや||しん|ひょうえ||いえ||||とおる||しん|ひょうえ||かない||かみ|||い ました ご ん は 、

「 ふ ふん 、 村 に 何 か ある んだ な 」 と 、 思いました 。 ||むら||なん||||||おもい ました I thought, "Hmmm, there must be something in the village. 「 何 だろう 、 秋 祭 か な 。 なん||あき|さい|| 祭 なら 、 太鼓 や 笛 の 音 が し そうな もの だ 。 さい||たいこ||ふえ||おと|||そう な|| それ に 第 一 、 お 宮 に のぼり が 立つ はずだ が 」 ||だい|ひと||みや||||たつ|| Besides, there should be a rise in the palace.

こんな こと を 考え ながら やって 来ます と 、 いつの間にか 、 表 に 赤い 井戸 の ある 、 兵 十 の 家 の 前 へ 来ました 。 |||かんがえ|||き ます||いつのまにか|ひょう||あかい|いど|||つわもの|じゅう||いえ||ぜん||き ました その 小さ な 、 こわれ かけた 家 の 中 に は 、 大勢 の 人 が あつまって いました 。 |ちいさ||||いえ||なか|||おおぜい||じん|||い ました よそいき の 着物 を 着て 、 腰 に 手拭 を さげたり した 女 たち が 、 表 の かまど で 火 をたいて います 。 ||きもの||きて|こし||てぬぐい||||おんな|||ひょう||||ひ|を たいて|い ます 大きな 鍋 の 中 で は 、 何 か ぐずぐず 煮えて いました 。 おおきな|なべ||なか|||なん|||にえて|い ました 「 ああ 、 葬式 だ 」 と 、 ご ん は 思いました 。 |そうしき||||||おもい ました 「 兵 十 の 家 の だれ が 死んだ んだろう 」 つわもの|じゅう||いえ||||しんだ| "I wonder who in Hyouju's family is dead."

お 午 が すぎる と 、 ご ん は 、 村 の 墓地 へ 行って 、 六 地蔵 さん の かげ に かくれて いました 。 |うま|||||||むら||ぼち||おこなって|むっ|じぞう||||||い ました いい お 天気 で 、 遠く 向 うに は 、 お 城 の 屋根 瓦 が 光って います 。 ||てんき||とおく|むかい||||しろ||やね|かわら||ひかって|い ます It was a beautiful day, and the roof tiles of the castle shone in the distance. 墓地 に は 、 ひがん 花 が 、 赤い 布 の ように さき つづいて いました 。 ぼち||||か||あかい|ぬの|||||い ました と 、 村 の 方 から 、 カーン 、 カーン 、 と 、 鐘 が 鳴って 来ました 。 |むら||かた|||||かね||なって|き ました 葬式 の 出る 合図 です 。 そうしき||でる|あいず|

やがて 、 白い 着物 を 着た 葬 列 の もの たち が やって 来る の が ちらちら 見え はじめました 。 |しろい|きもの||きた|ほうむ|れつ||||||くる||||みえ|はじめ ました 話 声 も 近く なりました 。 はなし|こえ||ちかく|なり ました We are now closer to each other. 葬 列 は 墓地 へ は いって 来ました 。 ほうむ|れつ||ぼち||||き ました 人々 が 通った あと に は 、 ひがん 花 が 、 ふみ おられて いました 。 ひとびと||かよった|||||か|||おら れて|い ました ご ん は のびあがって 見ました 。 ||||み ました 兵 十 が 、 白い かみしも を つけて 、 位牌 を ささげて います 。 つわもの|じゅう||しろい||||いはい|||い ます いつも は 、 赤い さつま芋 みたいな 元気 の いい 顔 が 、 きょう は 何だか しおれて いました 。 ||あかい|さつまいも||げんき|||かお||||なんだか||い ました 「 は はん 、 死んだ の は 兵 十 の おっ母 だ 」  ご ん は そう 思い ながら 、 頭 を ひっこめました 。 ||しんだ|||つわもの|じゅう||お っ はは||||||おもい||あたま||ひっこめ ました Gon thought to himself, "Haha, it was Hyouju's mother who died. その 晩 、 ご ん は 、 穴 の 中 で 考えました 。 |ばん||||あな||なか||かんがえ ました 「 兵 十 の おっ母 は 、 床 に ついて いて 、 うなぎ が 食べたい と 言った に ちがいない 。 つわもの|じゅう||お っ はは||とこ||||||たべ たい||いった|| それ で 兵 十 が はりきり 網 を もち出した んだ 。 ||つわもの|じゅう|||あみ||もちだした| ところが 、 わし が いたずら を して 、 うなぎ を とって 来て しまった 。 |||||||||きて| だ から 兵 十 は 、 おっ母 に うなぎ を 食べ させる こと が でき なかった 。 ||つわもの|じゅう||お っ はは||||たべ|さ せる|||| そのまま おっ母 は 、 死んじゃった に ちがいない 。 |お っ はは||しんじゃ った|| ああ 、 うなぎ が 食べたい 、 うなぎ が 食べたい と おもい ながら 、 死んだ んだろう 。 |||たべ たい|||たべ たい||||しんだ| ちょ ッ 、 あんな いたずら を し なけりゃ よかった 。」

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三 . みっ

兵 十 が 、 赤い 井戸 の ところ で 、 麦 を といで いました 。 つわもの|じゅう||あかい|いど||||むぎ|||い ました 兵 十 は 今 まで 、 おっ母 と 二 人きり で 、 貧しい くらし を して いた もの で 、 おっ母 が 死んで しまって は 、 もう 一 人 ぼっち でした 。 つわもの|じゅう||いま||お っ はは||ふた|ひときり||まずしい|||||||お っ はは||しんで||||ひと|じん|ぼ っち| 「 おれ と 同じ 一 人 ぼっち の 兵 十 か 」  こちら の 物置 の 後 から 見て い たごん は 、 そう 思いました 。 ||おなじ|ひと|じん|ぼ っち||つわもの|じゅう||||ものおき||あと||みて|||||おもい ました ご ん は 物置 の そば を はなれて 、 向 う へ いき かけます と 、 どこ か で 、 いわし を 売る 声 が します 。 |||ものおき|||||むかい||||かけ ます|||||||うる|こえ||し ます 「 いわし の やすうり だ ア い 。 いき の いい いわし だ ア い 」

ご ん は 、 その 、 いせい の いい 声 の する 方 へ 走って いきました 。 |||||||こえ|||かた||はしって|いき ました と 、 弥 助 の おかみ さん が 、 裏 戸口 から 、 |わたる|じょ|||||うら|とぐち|

「 いわし を おくれ 。」 と 言いました 。 |いい ました いわし 売 は 、 いわし の かご を つんだ 車 を 、 道ばた に おいて 、 ぴかぴか 光る いわし を 両手 で つかんで 、 弥 助 の 家 の 中 へ もって はいりました 。 |う|||||||くるま||みちばた||||ひかる|||りょうて|||わたる|じょ||いえ||なか|||はいり ました ご ん は その すきま に 、 かご の 中 から 、 五 、 六 ぴき の いわし を つかみ 出して 、 もと 来 た方 へ かけだしました 。 ||||||||なか||いつ|むっ||||||だして||らい|たほう||かけだし ました そして 、 兵 十 の 家 の 裏口 から 、 家 の 中 へ いわし を 投げこんで 、 穴 へ 向って かけ もどりました 。 |つわもの|じゅう||いえ||うらぐち||いえ||なか||||なげこんで|あな||むかい って||もどり ました 途中 の 坂 の 上 で ふりかえって 見ます と 、 兵 十 が まだ 、 井戸 の ところ で 麦 を といで いる の が 小さく 見えました 。 とちゅう||さか||うえ|||み ます||つわもの|じゅう|||いど||||むぎ||||||ちいさく|みえ ました ご ん は 、 うなぎ の つぐない に 、 まず 一 つ 、 いい こと を した と 思いました 。 ||||||||ひと|||||||おもい ました つぎの 日 に は 、 ご ん は 山 で 栗 を どっさり ひろって 、 それ を かかえて 、 兵 十 の 家 へ いきました 。 |ひ||||||やま||くり|||||||つわもの|じゅう||いえ||いき ました 裏口 から のぞいて 見ます と 、 兵 十 は 、 午 飯 を たべ かけて 、 茶椀 を もった まま 、 ぼんやり と 考えこんで いました 。 うらぐち|||み ます||つわもの|じゅう||うま|めし||||ちゃわん||||||かんがえこんで|い ました へんな こと に は 兵 十 の 頬 ぺた に 、 かすり傷 が ついて います 。 ||||つわもの|じゅう||ほお|||かすりきず|||い ます どうした ん だろう と 、 ご ん が 思って います と 、 兵 十 が ひとりごと を いいました 。 |||||||おもって|い ます||つわもの|じゅう||||いい ました 「 一たい だれ が 、 いわし なんか を おれ の 家 へ ほうりこんで いった んだろう 。 いったい||||||||いえ|||| おかげ で おれ は 、 盗人 と 思われて 、 いわし 屋 の やつ に 、 ひどい 目 に あわさ れた 」 と 、 ぶつぶつ 言って います 。 ||||ぬすびと||おもわ れて||や|||||め||あわ さ||||いって|い ます ご ん は 、 これ は しまった と 思いました 。 |||||||おもい ました かわいそうに 兵 十 は 、 いわし 屋 に ぶん なぐられて 、 あんな 傷 まで つけられた の か 。 |つわもの|じゅう|||や|||なぐら れて||きず||つけ られた|| ご ん は こう おもい ながら 、 そっと 物置 の 方 へ まわって その 入口 に 、 栗 を おいて かえりました 。 |||||||ものおき||かた||||いりぐち||くり|||かえり ました つぎの 日 も 、 その つぎ の 日 も ご ん は 、 栗 を ひろって は 、 兵 十 の 家 へ もって 来て やりました 。 |ひ|||||ひ|||||くり||||つわもの|じゅう||いえ|||きて|やり ました その つぎ の 日 に は 、 栗 ばかり で なく 、 まつたけ も 二 、 三 ぼん もっていきました 。 |||ひ|||くり||||||ふた|みっ||もっていき ました --

四 . よっ

月 の いい 晩 でした 。 つき|||ばん| ご ん は 、 ぶらぶら あそび に 出かけました 。 ||||||でかけ ました 中山 さま の お 城 の 下 を 通って すこし いく と 、 細い 道 の 向 う から 、 だれ か 来る ようです 。 なかやま||||しろ||した||かよって||||ほそい|どう||むかい|||||くる| 話 声 が 聞えます 。 はなし|こえ||きこえ ます チンチロリン 、 チンチロリン と 松虫 が 鳴いて います 。 |||まつむし||ないて|い ます ご ん は 、 道 の 片がわ に かくれて 、 じっと して いました 。 |||どう||かたがわ|||||い ました 話 声 は だんだん 近く なりました 。 はなし|こえ|||ちかく|なり ました それ は 、 兵 十 と 加助 と いう お 百姓 でした 。 ||つわもの|じゅう||かじょ||||ひゃくしょう|

「 そうそう 、 なあ 加助 」 と 、 兵 十 が いいました 。 そう そう||かじょ||つわもの|じゅう||いい ました 「 ああ ん ? 」 「 おれ あ 、 このごろ 、 とても ふしぎな こと が ある んだ 」 「 何 が ? なん| 」 「 おっ母 が 死んで から は 、 だれ だ か 知ら ん が 、 おれ に 栗 や まつたけ なんか を 、 まいにち まいにち くれる んだ よ 」 「 ふうん 、 だれ が ? お っ はは||しんで||||||しら|||||くり|||||||||||| 」 「 それ が わから ん のだ よ 。 おれ の 知ら ん うち に 、 おいて いく んだ 」 ||しら||||||

ご ん は 、 ふた り の あと を つけて いきました 。 |||||||||いき ました 「 ほんと かい ? 」 「 ほんとだ と も 。 うそ と 思う なら 、 あした 見 に 来い よ 。 ||おもう|||み||こい| その 栗 を 見せて やる よ 」 |くり||みせて||

「 へえ 、 へんな こと も ある もん だ な ア 」

それなり 、 二 人 は だまって 歩いて いきました 。 |ふた|じん|||あるいて|いき ました 加助 が ひょいと 、 後 を 見ました 。 かじょ|||あと||み ました ご ん は び くっと して 、 小さく なって たちどまりました 。 ||||く っと||ちいさく||たちどまり ました 加助 は 、 ご ん に は 気 が つか ないで 、 そのまま さっさと あるきました 。 かじょ||||||き||||||あるき ました 吉兵衛 と いう お 百姓 の 家 まで 来る と 、 二 人 は そこ へ は いって いきました 。 きちべえ||||ひゃくしょう||いえ||くる||ふた|じん||||||いき ました ポンポン ポンポン と 木魚 の 音 が して います 。 ぽんぽん|ぽんぽん||もくぎょ||おと|||い ます 窓 の 障子 に あかり が さして いて 、 大きな 坊主 頭 が うつって 動いて いました 。 まど||しょうじ||||||おおきな|ぼうず|あたま|||うごいて|い ました ご ん は 、

「 お ねんぶつ が ある んだ な 」 と 思い ながら 井戸 の そば に しゃがんで いました 。 |||||||おもい||いど|||||い ました しばらく する と 、 また 三 人 ほど 、 人 が つれだって 吉兵衛 の 家 へ は いって いきました 。 ||||みっ|じん||じん|||きちべえ||いえ||||いき ました お 経 を 読む 声 が きこえて 来ました 。 |へ||よむ|こえ|||き ました --

五 . いつ

ご ん は 、 お ねんぶつ が すむ まで 、 井戸 の そば に しゃがんで いました 。 ||||||||いど|||||い ました 兵 十 と 加助 は 、 また 一しょに かえって いきます 。 つわもの|じゅう||かじょ|||いっしょに||いき ます ご ん は 、 二 人 の 話 を きこう と 思って 、 ついていきました 。 |||ふた|じん||はなし||||おもって|ついていき ました 兵 十 の 影法師 を ふみ ふみ いきました 。 つわもの|じゅう||かげぼうし||||いき ました お 城 の 前 まで 来た とき 、 加助 が 言い出しました 。 |しろ||ぜん||きた||かじょ||いいだし ました 「 さっき の 話 は 、 きっと 、 そりゃ あ 、 神さま の しわざ だ ぞ 」 ||はなし|||||かみさま||||

「 えっ? 」 と 、 兵 十 は びっくり して 、 加助 の 顔 を 見ました 。 |つわもの|じゅう||||かじょ||かお||み ました 「 おれ は 、 あれ から ずっと 考えて いた が 、 どうも 、 そりゃ 、 人間 じゃ ない 、 神さま だ 、 神さま が 、 お前 が たった 一 人 に なった の を あわれに 思わっしゃって 、 いろんな もの を めぐんで 下さる んだ よ 」 「 そう か なあ 」 「 そう だ と も 。 |||||かんがえて|||||にんげん|||かみさま||かみさま||おまえ|||ひと|じん||||||おもわ っ しゃ って|||||くださる||||||||| だ から 、 まいにち 神さま に お 礼 を 言う が いい よ 」 |||かみさま|||れい||いう|||

「 うん 」

ご ん は 、 へえ 、 こいつ は つまらない な と 思いました 。 |||||||||おもい ました おれ が 、 栗 や 松たけ を 持っていって やる のに 、 その おれ に は お 礼 を いわ ないで 、 神さま に お 礼 を いう んじゃ ア 、 おれ は 、 引き合わ ない なあ 。 ||くり||まつたけ||もっていって||||||||れい||||かみさま|||れい|||||||ひきあわ||

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六 . むっ

その あくる 日 も ご ん は 、 栗 を もって 、 兵 十 の 家 へ 出かけました 。 ||ひ|||||くり|||つわもの|じゅう||いえ||でかけ ました 兵 十 は 物置 で 縄 を なって いました 。 つわもの|じゅう||ものおき||なわ|||い ました それ で ご ん は 家 の 裏口 から 、 こっそり 中 へ はいりました 。 |||||いえ||うらぐち|||なか||はいり ました その とき 兵 十 は 、 ふと 顔 を あげました 。 ||つわもの|じゅう|||かお||あげ ました と 狐 が 家 の 中 へ はいった では ありません か 。 |きつね||いえ||なか||||あり ませ ん| こない だ うなぎ を ぬすみ や がった あの ご ん 狐 め が 、 また いたずら を し に 来た な 。 ||||||||||きつね||||||||きた|

「 ようし 。」

兵 十 は 立ちあがって 、 納屋 に かけて ある 火縄銃 を とって 、 火薬 を つめました 。 つわもの|じゅう||たちあがって|なや||||ひなわじゅう|||かやく||つめ ました そして 足音 を しのばせて ちかよって 、 今 戸口 を 出よう と する ご ん を 、 ドンと 、 うちました 。 |あしおと||||いま|とぐち||でよう||||||どんと|うち ました ご ん は 、 ば たり と たおれました 。 ||||||たおれ ました 兵 十 は かけよって 来ました 。 つわもの|じゅう|||き ました 家 の 中 を 見る と 、 土間 に 栗 が 、 かためて おいて ある の が 目 に つきました 。 いえ||なか||みる||どま||くり|||||||め||つき ました 「 おや 」 と 兵 十 は 、 びっくり して ご ん に 目 を 落しました 。 ||つわもの|じゅう|||||||め||おとし ました 「 ご ん 、 お前 だった の か 。 ||おまえ||| いつも 栗 を くれた の は 」 |くり||||

ご ん は 、 ぐったり と 目 を つぶった まま 、 うなずきました 。 |||||め||||うなずき ました 兵 十 は 火縄銃 を ば たり と 、 とり 落しました 。 つわもの|じゅう||ひなわじゅう||||||おとし ました 青い 煙 が 、 まだ 筒 口 から 細く 出て いました 。 あおい|けむり|||つつ|くち||ほそく|でて|い ました