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ソードアート・オンライン2 アインクラッド (Sword Art Online 2: Aincrad), ソードアート・オンライン2 アインクラッド (18)

ソードアート ・オンライン 2 アインクラッド (18)

「俺 は 見えない よ!!」

「じゃあ 、あと で わたし も やって あげる から」

「…………」

脱力 した よう に うなだれる キリト の 頭 に 手 を かけ 、アスナ は 言った。

「さ 、出発 進行! 進路 北 北東!

てくてく と 歩き 出した キリト の 肩 の 上 で 屈託 なく 笑い ながら 、アスナ は 痛い ほど の 、二人 で 暮らす 日々 へ の 愛 おし さ を 感じて いた。 自分 は 今 、十七 年 の人生 の 中 で いちばん 《生きて 》いる と 、疑い も なくそう 思えた。

小道 を 歩き 出して ──実際 に 足 を 動かして いる の は キリト だけ だ が ──十 数 分 後 、二十二 層 に 点在 する 湖 の ひと つ に 差し掛かった。 穏やかな 陽気に 誘われて か 、朝 から 数人 の 釣り 師 プレイヤー が 湖水 に 糸 を 垂らして いる。 小道 は 湖 を 囲む 丘 の 上 を 通り 、左手 に 見える 湖畔 まで は やや 距離 が ある が 、近づく うち に 二人 に 気づいた プレイヤー たち が こちら に 手 を 振って きた。 どうやら 皆 笑顔 で 、中 に は 声 に 出して 笑って いる者 も いる。

「……誰 も 見て なくない じゃ ん!!」

「あ は は 、人 いた ね ー。 ほら 、キリト 君 も 手 を 振り な よ」

「ぜったい 嫌だ」

文句 を 言い ながら も 、キリト は アスナ を 下ろそう と は し なかった。 内心 で は 彼 も おもしろがって いる の が アスナ に は 解る。

やがて 道 は 丘 を 右 に 下り 、深い 森 の 中 へ と 続く。 杉 に 似た 巨大な 針葉樹 が そびえる 間 を 縫って 、ゆっくり と 歩く。 葉 擦れ の 囁き 、小川 の せせらぎ 、小鳥 の さえずり が 晩秋 の 森 景色 に 美しい 伴奏 を 添えて いる。

アスナ は 、いつも より 近く に 見える 木々 の 梢 に 視線 を 向けた。

「大きい 木 だ ね えー。 ねえ 、この 木 、登れる の か なあ?

「う ~ん……」

アスナ の 問い に 、キリト は しばし 考え込む。

「システム 的に は 不可能じゃない 気 が する けど なぁ……。 試して みる?

「う うん 、それ は また 今度 の 遊び テーマ に しよう。 ──登る と 言えば さあ」

アスナ は キリト の 肩 に 乗った まま 体 を 伸ばし 、木々 の 隙間 から 遠く に 見える アインクラッド 外周 部 に 目 を やる。

「外周 に あちこち 、支柱 みたいに なって 上層 まで 続いてる とこ が ある じゃ ない。 あれ ……登ったら どう なる ん だろう ね」

「あ 、俺 やった こと ある よ」

「ええ ー!?」

体 を 傾け 、キリト の 顔 を 覗き込む。

「なんで 誘って くれ なかった の よ」

「まだ そんなに 仲良く なかった 頃 だって ば」

「なに よ 、キリト 君 が 避けて た ん じゃ ない」

「……さ 、避けて たかな?

「そう よ ー。 わたし が いっくら 誘って も 、お茶 に も 付き合って くれ なかった よ」

「そ 、それ は……。 い 、いや そんな こと より だ な」

会話 が 妙な 方向 に 行き 始めた の を 修正 する よう に キリト が 言葉 を 続ける。

「結論 から 言えば ダメだった よ。 岩 が でこぼこ して た から 登る の は 案外 簡単だった ん だけど 、八十 メートル くらい 登った とこ で 急に システム の エラー メッセージ が 出て 、ここ は 侵入 不可能 領域 です! って 怒られて さ ぁ」

「あっはっは 、ズル は だめだ ね ー やっぱ」

「笑いごと じゃない ぞ。 それ に びっくり して 手 を 滑らせて 、見事に 落っこ ち て な……」

「え 、ええ !? さすが に 死ぬ でしょう ソレ」

「うん。 死ぬ と 思った。 結晶 転移 が あと 三 秒 遅れて たら 戦死者 リスト に 仲間 入り さ」

「もう 、危ない なぁ。 二度と し ないで よ ね」

「そっち が 言い出した 話 だ ろ!

他 愛ない 会話 を 交わし ながら 歩く うち 、森 は どんどん 深く なって いった。 心なしか 鳥 の 声 も まばらに なり 、梢 を 抜けて 届く 陽光 も 控えめに なって きて いる。

アスナ は 改めて 周囲 を 見回し ながら 、キリト に 訊 ねた。

「ね 、その ……ウワサ の 場所って 、どの へんな の?

「ええ と……」

キリト が 手 を 振り 、マップ で 現在 位置 を 確認 する。

「あ 、そろそろ だ よ。 もう あと 何分 か で 着く」

「ふうん……。 ね 、具体 的に は 、どんな 話 だった の?

聞き たくない が 、聞か ない の も 不安で 、アスナ は 問い掛けた。

「ええ と 、一 週間 くらい 前 、木工 職人 プレイヤー が この へんに 丸太 を 拾い に 来た ん だ そうだ。 この 森 で 採取 できる 木材 は けっこう 質 が いい らしくて 、夢中で 集めて いる うち に 暗く なっちゃって……。 慌てて 帰ろう と 歩き 始めた ところ で 、ちょっと 離れた 木 の 陰に ──ちらり と 、白い もの が」

「…………」

アスナ 的に は そこ で もう 限界 だった が 、キリト の 話 は 容赦 なく 続く。

「モンスター か と 思って 慌てた けど 、どうやら そう じゃ ない。 人間 、小さい 女の子 に 見えたって 言う ん だ な。 長い 、黒い 髪 に 、白い 服。 ゆっくり 、木立 の 向こう を 歩いて いく。 モンスター で なきゃ プレイヤー だ 、そう 思って 視線 を 合わせたら」

「…………」

「──カーソル が 、出 ない」

「ひっ……」

おもわず 喉 の 奥 で 小さな 声 を 洩らして しまう。

「そんな 訳 は ない。 そう 思い ながら 、よし ゃあ いい の に 近づいた。 その うえ 声 を かけた。 そし たら 女の子 が ぴたり と 立ち止まって ……こっち を ゆっくり 振り向こう と……」

「も 、も 、もう 、や 、やめ……」

「そこ で その 男 は 気 が ついた。 女の子 の 、白い 服 が 月 明り に 照らされて 、その 向こう側 の 木 が ──透けて 見える」

「────!!」

必死に 悲鳴 を こらえ ながら 、アスナ は ぎゅっと キリト の 髪 を 摑 ん だ。

「女の子 が 完全に 振り向いたら 終わり だ 、そう 思って 男 は そりゃ あ 走った そうだ。 ようやく 遠く に 村 の 明かり が 見えて きて 、ここ まで くれば 大丈夫 、と 立ち止まって ……ひ ょいっと 後ろ を 振り返ったら……」

「──────っ!?」

「誰 も い なかった と さ。 めでたし めでたし」

「……き 、き 、キリト 君 の 、ばか ────っ!!」

肩 から 飛び降り 、背中 を 本気で どつく べく 拳 を 振り上げた ──その 時 だった。

昼 なお 暗い 森 の 奥 、二人 から かなり 離れた 針葉樹 の 幹 の 傍ら に 、白い もの が ちらり と 見えた。

とてつもなく 嫌な 予感 を ひしひし と 感じ ながら 、アスナ は その 何 か に おそるおそる 視線 を 凝らした。 キリト ほど で は ない が 、アスナ の 索敵 スキル も かなり の 錬度 に 達して いる。 自動 的に スキル に よる 補正 が 適用 さ れ 、視線 を 集中 して いる 部分 の 解像度 が ぐんと 上昇 する。

白い 何 か は 、ゆっくり と 風 に はためいて いる よう に 見えた。 植物 で は ない。 岩 でも ない。 布 だ。 更に 言えば 、シンプルな ライン の ワンピース だ。 その 裾 から 覗いて いる の は 、二 本 の 細い ──脚。

少女 が 立って いる。 キリト の 話 に あった の と 寸分 違わ ぬ 白い ワンピース を まとった 幼い 少女 が 無言 で 佇み 、二人 を じっと 見て いる。

すうっと 意識 が 薄れ かかる の を 感じ ながら 、アスナ は どうにか 口 を 開いた。 ほとんど 空気 だけ の 掠 れ 声 を 絞り出す。

「き ……キリト 君 、あそこ」

キリト が さっと アスナ の 視線 を 追った。 直後 、その 体 も び くり と 硬直 する。

「う 、噓 だ ろ おい……」

少女 は 動か ない。 二人 から 数 十 メートル 離れた 場所 に 立ち 、じっと こちら を 見つめて いる。 もし 、すこし でも こっち に 近づいて きたら 、わたし 気絶 しちゃ うだろう なあ 、そう 思って アスナ が 覚悟 を 決めた その 時。

ふら り ──と 少女 の 体 が 揺れた。 動力 の 切れた 機械人形 の ような 、妙に 非 生物 的 な 動き で その 体 が 地面 に 崩れ落ちた。 ど さり 、と いうかすかな 音 が 耳 に 届いて くる。

「あれ は……」

その 途端 、キリト が 鋭く 両眼 を 細めた。

「幽霊 なんか じゃない ぞ!!」

叫ぶ や 否 や 走り出す。

「ちょ 、ちょっと キリト 君!

置き去り に された アスナ は 慌てて 呼び止めた が 、キリト は 振り向き も せず に 倒れた 少女 へ と 駆け寄って いく。

「もう!!」

やむなく アスナ も 立ち上がり 、後 を 追った。 まだ 心臓 が どきどき 言って いる が 、気絶 して 倒れる 幽霊 なんて 聞いた こと も ない。 やはり あれ は プレイヤー と しか 思え ない。

遅れる こと 数 秒 、針葉樹 の 下 に 到達 する と 、すでに 少女 は キリト に 抱え 起こされて いた。 まだ 意識 は 戻って いない。 長い 睫毛 に 縁どられた 瞼 は 閉じられ 、両腕 は 力なく 体 の 脇 に 投げ出されて いる。 念のため ワンピース に 包まれた 体 を まじまじ と 眺める が 、透けて いる 様子 は どこ に も ない。

「だ 、大丈夫 そう な の?

「うーん……」

キリト は 少女 の 顔 を 覗き込み ながら 言った。

「と 、言って も なぁ……。 この 世界 じゃ 息 と かしない し 、心臓 も 動か ない し……」

SAO 内 で は 、人間 の 生理 的 活動 の ほとんど は 再現 が 省略 されて いる。 自発 的に 息 を 吸い込む こと は できる し 、気道 を 空気 が 動く 感覚 も ある が 、仮想 体 自体 は 無意識 呼吸 を 行わ ない。 心臓 の 鼓動 も 、緊張 したり 興奮 して ドキドキ する と いう 体感 は ある もの の 他人 の それ を 感じ取る こと は でき ない。

「でも まあ 、消滅 してない ……って こと は 生きてる 、って こと だ よ な。 しかし これ は ……相当 妙だ ぞ……」

言葉 を 切り 、キリト は 首 を かしげた。

「妙って?

「幽霊 じゃない よ な 、こうして 触れる し。 でも 、カーソル は ……出 ない……」

「あ……」

アスナ は 改めて 少女 の 体 に 視線 を 集中 さ せた。 だが 、通常 アインクラッド に 存在 する 動的 オブジェクト なら プレイヤー に せよ モンスター に せよ 、あるいは NPC に せよ ターゲット した 瞬間 必ず 表示 される はずの カラー ・カーソル が 出現 し ない。 いまだかつて こんな 現象 に 遭遇 した こと は なかった。

「何 か の 、バグ 、かな?

「そう だろう な。 普通の ネット ゲーム なら GM を 呼ぶって ケース だろう けど 、SAO に GM は いない しな……。 それ に 、カーソル だけ じゃ ない。 プレイヤー に しちゃ ちょっと 若 すぎる よ」

確かに そうだった。 キリト の 両腕 に 抱きかかえられた その 体 は あまりに も 小さい。 年齢 で 言えば 十 歳 に も 満たない だろう。 ナーヴギア に は 建前 的 ながら 装着 に 年齢 制限 が あり 、確か 十三 歳 以下 の 子供 の 使用 は 禁じられて いた はずだ。

アスナ は そっと 手 を 伸ばし 、少女 の 額 に 触れた。 ひんやり と した 、滑らかな 感触 が 伝わって くる。

「どうして ……こんな 小さな 子 が 、SAO の 中 に……」

き ゅっと 唇 を 嚙 み 、立ち上がり ながら キリト に 言う。

「とりあえず 、放って は おけない わ。 目 を 覚ませば いろいろ 判る と 思う。 うち まで 連れて 帰ろう」

「うん 、そう だ な」

キリト も 少女 を 横 抱き に した まま 立ち上がった。 アスナ は ふと 周囲 を 見回した が 、近く に は 朽ち かけた 大きな 切り株 が 一 つ ある くらい で 、少女 が ここ に いた 理由 の ような 物 は 何も 見つから なかった。

ほとんど 駆け足 で 来た 道 を 戻り 、森 を 抜けて 二人 の 家 に 辿り着いて も 少女 の 意識 は 戻ら なかった。 アスナ の ベッド に 少女 を 横たえ 、毛布 を 掛けて おいて 、二人 は その 向かい の キリト の ベッド に 並んで 腰 を 下ろした。

しばし 沈黙 を 続けて から 、キリト が ぽつり と 口 を 開いた。

「まず 一 つ だけ 確かな の は 、こうして ウチ まで 移動 さ せられた からに は NPC じゃない よ な」

「そう ……だ ね」

システム が 動かす NPC は 、存在 座標 を 一定 範囲 内 に 固定 されて おり プレイヤー の 意志 で 移動 させる こと は でき ない。 手 で 触ったり 抱きついたり する と 、ほんの 数 秒 で ハラスメント 警告 の 窓 が 開き 、不快な 衝撃 と ともに 吹っ飛ば されて しまう。

アスナ の 同意 に 小さく 頷き 、キリト は 更に 推測 を 連ねた。

「それ に 、何らか の クエスト の 開始 イベント でも ない。 そう なら 、接触 した 時点 で クエストログ 窓 が 更新 される はずだ し な。 ……てこ と は 、この 子 は やっぱり プレイヤー で 、あそこ で 道 に 迷って いた ──と いう の が 一 番 有り 得る と 思う」

ちらり と ベッド に 視線 を 向け 、続ける。

「クリスタル を 持って いない 、あるいは 転移 の 方法 を 知らない と したら 、ログイン して から 今 まで ずっと フィールド に 出 ないで 、《はじまり の 街 》に いた と 思う ん だ。 なんで こんな 所 まで 来た の か は 判らない けど 、はじまり の 街 に なら この 子 の こと を 知ってる プレイヤー が ……ひょっとしたら 親 と か 、保護者 が いる ん じゃない か な」

「うん。 わたし も そう 思う。 こんな 小さい 子 が 一人 で ログイン する なんて 考えられない もん。 家族 が 誰 か 一緒に 来てる はず ……無事だ と 、いい けど」


ソードアート ・オンライン 2 アインクラッド (18) |おんらいん| Sword Art Online 2 Aincrad (18) Sword Art Online 2 Aincrad (18)

「俺 は 見えない よ!!」 おれ||みえ ない|

「じゃあ 、あと で わたし も やって あげる から」

「…………」

脱力 した よう に うなだれる キリト の 頭 に 手 を かけ 、アスナ は 言った。 だつりょく|||||||あたま||て|||||いった

「さ 、出発 進行! |しゅっぱつ|しんこう 進路 北 北東! しんろ|きた|ほくとう

てくてく と 歩き 出した キリト の 肩 の 上 で 屈託 なく 笑い ながら 、アスナ は 痛い ほど の 、二人 で 暮らす 日々 へ の 愛 おし さ を 感じて いた。 ||あるき|だした|||かた||うえ||くったく||わらい||||いたい|||ふた り||くらす|ひび|||あい||||かんじて| 自分 は 今 、十七 年 の人生 の 中 で いちばん 《生きて 》いる と 、疑い も なくそう 思えた。 じぶん||いま|じゅうしち|とし|の じんせい||なか|||いきて|||うたがい|||おもえた

小道 を 歩き 出して ──実際 に 足 を 動かして いる の は キリト だけ だ が ──十 数 分 後 、二十二 層 に 点在 する 湖 の ひと つ に 差し掛かった。 こみち||あるき|だして|じっさい||あし||うごかして||||||||じゅう|すう|ぶん|あと|にじゅうに|そう||てんざい||こ|||||さしかかった 穏やかな 陽気に 誘われて か 、朝 から 数人 の 釣り 師 プレイヤー が 湖水 に 糸 を 垂らして いる。 おだやかな|ようきに|さそわれて||あさ||すう り||つり|し|ぷれいやー||こすい||いと||たらして| 小道 は 湖 を 囲む 丘 の 上 を 通り 、左手 に 見える 湖畔 まで は やや 距離 が ある が 、近づく うち に 二人 に 気づいた プレイヤー たち が こちら に 手 を 振って きた。 こみち||こ||かこむ|おか||うえ||とおり|ひだりて||みえる|こはん||||きょり||||ちかづく|||ふた り||きづいた|ぷれいやー|||||て||ふって| どうやら 皆 笑顔 で 、中 に は 声 に 出して 笑って いる者 も いる。 |みな|えがお||なか|||こえ||だして|わらって|いる もの||

「……誰 も 見て なくない じゃ ん!!」 だれ||みて|なく ない||

「あ は は 、人 いた ね ー。 |||じん|||- ほら 、キリト 君 も 手 を 振り な よ」 ||きみ||て||ふり||

「ぜったい 嫌だ」 |いやだ

文句 を 言い ながら も 、キリト は アスナ を 下ろそう と は し なかった。 もんく||いい|||||||おろそう|||| 内心 で は 彼 も おもしろがって いる の が アスナ に は 解る。 ないしん|||かれ|||||||||わかる

やがて 道 は 丘 を 右 に 下り 、深い 森 の 中 へ と 続く。 |どう||おか||みぎ||くだり|ふかい|しげる||なか|||つづく 杉 に 似た 巨大な 針葉樹 が そびえる 間 を 縫って 、ゆっくり と 歩く。 すぎ||にた|きょだいな|しんようじゅ|||あいだ||ぬって|||あるく 葉 擦れ の 囁き 、小川 の せせらぎ 、小鳥 の さえずり が 晩秋 の 森 景色 に 美しい 伴奏 を 添えて いる。 は|すれ||ささやき|おがわ|||ことり||||ばんしゅう||しげる|けしき||うつくしい|ばんそう||そえて|

アスナ は 、いつも より 近く に 見える 木々 の 梢 に 視線 を 向けた。 ||||ちかく||みえる|きぎ||こずえ||しせん||むけた

「大きい 木 だ ね えー。 おおきい|き||| ねえ 、この 木 、登れる の か なあ? ||き|のぼれる|||

「う ~ん……」

アスナ の 問い に 、キリト は しばし 考え込む。 ||とい|||||かんがえこむ

「システム 的に は 不可能じゃない 気 が する けど なぁ……。 しすてむ|てきに||ふかのうじゃ ない|き|||| 試して みる? ためして|

「う うん 、それ は また 今度 の 遊び テーマ に しよう。 |||||こんど||あそび|てーま|| ──登る と 言えば さあ」 のぼる||いえば|

アスナ は キリト の 肩 に 乗った まま 体 を 伸ばし 、木々 の 隙間 から 遠く に 見える アインクラッド 外周 部 に 目 を やる。 ||||かた||のった||からだ||のばし|きぎ||すきま||とおく||みえる||がいしゅう|ぶ||め||

「外周 に あちこち 、支柱 みたいに なって 上層 まで 続いてる とこ が ある じゃ ない。 がいしゅう|||しちゅう|||じょうそう||つづいてる||||| あれ ……登ったら どう なる ん だろう ね」 |のぼったら|||||

「あ 、俺 やった こと ある よ」 |おれ||||

「ええ ー!?」 |-

体 を 傾け 、キリト の 顔 を 覗き込む。 からだ||かたむけ|||かお||のぞきこむ

「なんで 誘って くれ なかった の よ」 |さそって||||

「まだ そんなに 仲良く なかった 頃 だって ば」 ||なかよく||ころ||

「なに よ 、キリト 君 が 避けて た ん じゃ ない」 |||きみ||さけて||||

「……さ 、避けて たかな? |さけて|

「そう よ ー。 ||- わたし が いっくら 誘って も 、お茶 に も 付き合って くれ なかった よ」 |||さそって||おちゃ|||つきあって|||

「そ 、それ は……。 い 、いや そんな こと より だ な」

会話 が 妙な 方向 に 行き 始めた の を 修正 する よう に キリト が 言葉 を 続ける。 かいわ||みょうな|ほうこう||いき|はじめた|||しゅうせい||||||ことば||つづける

「結論 から 言えば ダメだった よ。 けつろん||いえば|だめだった| 岩 が でこぼこ して た から 登る の は 案外 簡単だった ん だけど 、八十 メートル くらい 登った とこ で 急に システム の エラー メッセージ が 出て 、ここ は 侵入 不可能 領域 です! いわ||||||のぼる|||あんがい|かんたんだった|||はちじゅう|めーとる||のぼった|||きゅうに|しすてむ||えらー|めっせーじ||でて|||しんにゅう|ふかのう|りょういき| って 怒られて さ ぁ」 |いかられて||

「あっはっは 、ズル は だめだ ね ー やっぱ」 |||||-|

「笑いごと じゃない ぞ。 わらいごと|じゃ ない| それ に びっくり して 手 を 滑らせて 、見事に 落っこ ち て な……」 ||||て||すべらせて|みごとに|おとっこ|||

「え 、ええ !? さすが に 死ぬ でしょう ソレ」 ||||しぬ||

「うん。 死ぬ と 思った。 しぬ||おもった 結晶 転移 が あと 三 秒 遅れて たら 戦死者 リスト に 仲間 入り さ」 けっしょう|てんい|||みっ|びょう|おくれて||せんし しゃ|りすと||なかま|はいり|

「もう 、危ない なぁ。 |あぶない| 二度と し ないで よ ね」 にどと||||

「そっち が 言い出した 話 だ ろ! ||いいだした|はなし||

他 愛ない 会話 を 交わし ながら 歩く うち 、森 は どんどん 深く なって いった。 た|あい ない|かいわ||かわし||あるく||しげる|||ふかく|| 心なしか 鳥 の 声 も まばらに なり 、梢 を 抜けて 届く 陽光 も 控えめに なって きて いる。 こころなしか|ちょう||こえ||||こずえ||ぬけて|とどく|ようこう||ひかえめに|||

アスナ は 改めて 周囲 を 見回し ながら 、キリト に 訊 ねた。 ||あらためて|しゅうい||みまわし||||じん|

「ね 、その ……ウワサ の 場所って 、どの へんな の? ||||ばしょって|||

「ええ と……」

キリト が 手 を 振り 、マップ で 現在 位置 を 確認 する。 ||て||ふり|まっぷ||げんざい|いち||かくにん|

「あ 、そろそろ だ よ。 もう あと 何分 か で 着く」 ||なにぶん|||つく

「ふうん……。 ね 、具体 的に は 、どんな 話 だった の? |ぐたい|てきに|||はなし||

聞き たくない が 、聞か ない の も 不安で 、アスナ は 問い掛けた。 きき|たく ない||きか||||ふあんで|||といかけた

「ええ と 、一 週間 くらい 前 、木工 職人 プレイヤー が この へんに 丸太 を 拾い に 来た ん だ そうだ。 ||ひと|しゅうかん||ぜん|もっこう|しょくにん|ぷれいやー||||まるた||ひろい||きた|||そう だ この 森 で 採取 できる 木材 は けっこう 質 が いい らしくて 、夢中で 集めて いる うち に 暗く なっちゃって……。 |しげる||さいしゅ||もくざい|||しち||||むちゅうで|あつめて||||くらく| 慌てて 帰ろう と 歩き 始めた ところ で 、ちょっと 離れた 木 の 陰に ──ちらり と 、白い もの が」 あわてて|かえろう||あるき|はじめた||||はなれた|き||いんに|||しろい||

「…………」

アスナ 的に は そこ で もう 限界 だった が 、キリト の 話 は 容赦 なく 続く。 |てきに|||||げんかい|||||はなし||ようしゃ||つづく

「モンスター か と 思って 慌てた けど 、どうやら そう じゃ ない。 |||おもって|あわてた||||| 人間 、小さい 女の子 に 見えたって 言う ん だ な。 にんげん|ちいさい|おんなのこ||みえたって|いう||| 長い 、黒い 髪 に 、白い 服。 ながい|くろい|かみ||しろい|ふく ゆっくり 、木立 の 向こう を 歩いて いく。 |こだち||むこう||あるいて| モンスター で なきゃ プレイヤー だ 、そう 思って 視線 を 合わせたら」 |||ぷれいやー|||おもって|しせん||あわせたら

「…………」

「──カーソル が 、出 ない」 ||だ|

「ひっ……」

おもわず 喉 の 奥 で 小さな 声 を 洩らして しまう。 |のど||おく||ちいさな|こえ||もらして|

「そんな 訳 は ない。 |やく|| そう 思い ながら 、よし ゃあ いい の に 近づいた。 |おもい|||||||ちかづいた その うえ 声 を かけた。 ||こえ|| そし たら 女の子 が ぴたり と 立ち止まって ……こっち を ゆっくり 振り向こう と……」 ||おんなのこ||||たちどまって||||ふりむこう|

「も 、も 、もう 、や 、やめ……」

「そこ で その 男 は 気 が ついた。 |||おとこ||き|| 女の子 の 、白い 服 が 月 明り に 照らされて 、その 向こう側 の 木 が ──透けて 見える」 おんなのこ||しろい|ふく||つき|あかり||てらされて||むこうがわ||き||すけて|みえる

「────!!」

必死に 悲鳴 を こらえ ながら 、アスナ は ぎゅっと キリト の 髪 を 摑 ん だ。 ひっしに|ひめい|||||||||かみ||||

「女の子 が 完全に 振り向いたら 終わり だ 、そう 思って 男 は そりゃ あ 走った そうだ。 おんなのこ||かんぜんに|ふりむいたら|おわり|||おもって|おとこ||||はしった|そう だ ようやく 遠く に 村 の 明かり が 見えて きて 、ここ まで くれば 大丈夫 、と 立ち止まって ……ひ ょいっと 後ろ を 振り返ったら……」 |とおく||むら||あかり||みえて|||||だいじょうぶ||たちどまって|||うしろ||ふりかえったら

「──────っ!?」

「誰 も い なかった と さ。 だれ||||| めでたし めでたし」

「……き 、き 、キリト 君 の 、ばか ────っ!!」 |||きみ|||

肩 から 飛び降り 、背中 を 本気で どつく べく 拳 を 振り上げた ──その 時 だった。 かた||とびおり|せなか||ほんきで|||けん||ふりあげた||じ|

昼 なお 暗い 森 の 奥 、二人 から かなり 離れた 針葉樹 の 幹 の 傍ら に 、白い もの が ちらり と 見えた。 ひる||くらい|しげる||おく|ふた り|||はなれた|しんようじゅ||みき||かたわら||しろい|||||みえた

とてつもなく 嫌な 予感 を ひしひし と 感じ ながら 、アスナ は その 何 か に おそるおそる 視線 を 凝らした。 |いやな|よかん||||かんじ|||||なん||||しせん||こらした キリト ほど で は ない が 、アスナ の 索敵 スキル も かなり の 錬度 に 達して いる。 ||||||||さくてき|||||錬ど||たっして| 自動 的に スキル に よる 補正 が 適用 さ れ 、視線 を 集中 して いる 部分 の 解像度 が ぐんと 上昇 する。 じどう|てきに||||ほせい||てきよう|||しせん||しゅうちゅう|||ぶぶん||かいぞうど|||じょうしょう|

白い 何 か は 、ゆっくり と 風 に はためいて いる よう に 見えた。 しろい|なん|||||かぜ||||||みえた 植物 で は ない。 しょくぶつ||| 岩 でも ない。 いわ|| 布 だ。 ぬの| 更に 言えば 、シンプルな ライン の ワンピース だ。 さらに|いえば|しんぷるな|らいん||わんぴーす| その 裾 から 覗いて いる の は 、二 本 の 細い ──脚。 |すそ||のぞいて||||ふた|ほん||ほそい|あし

少女 が 立って いる。 しょうじょ||たって| キリト の 話 に あった の と 寸分 違わ ぬ 白い ワンピース を まとった 幼い 少女 が 無言 で 佇み 、二人 を じっと 見て いる。 ||はなし|||||すんぶん|ちがわ||しろい|わんぴーす|||おさない|しょうじょ||むごん||たたずみ|ふた り|||みて|

すうっと 意識 が 薄れ かかる の を 感じ ながら 、アスナ は どうにか 口 を 開いた。 |いしき||うすれ||||かんじ|||||くち||あいた ほとんど 空気 だけ の 掠 れ 声 を 絞り出す。 |くうき|||りゃく||こえ||しぼりだす

「き ……キリト 君 、あそこ」 ||きみ|

キリト が さっと アスナ の 視線 を 追った。 |||||しせん||おった 直後 、その 体 も び くり と 硬直 する。 ちょくご||からだ|||||こうちょく|

「う 、噓 だ ろ おい……」

少女 は 動か ない。 しょうじょ||うごか| 二人 から 数 十 メートル 離れた 場所 に 立ち 、じっと こちら を 見つめて いる。 ふた り||すう|じゅう|めーとる|はなれた|ばしょ||たち||||みつめて| もし 、すこし でも こっち に 近づいて きたら 、わたし 気絶 しちゃ うだろう なあ 、そう 思って アスナ が 覚悟 を 決めた その 時。 |||||ちかづいて|||きぜつ|||||おもって|||かくご||きめた||じ

ふら り ──と 少女 の 体 が 揺れた。 |||しょうじょ||からだ||ゆれた 動力 の 切れた 機械人形 の ような 、妙に 非 生物 的 な 動き で その 体 が 地面 に 崩れ落ちた。 どうりょく||きれた|きかい にんぎょう|||みょうに|ひ|せいぶつ|てき||うごき|||からだ||じめん||くずれおちた ど さり 、と いうかすかな 音 が 耳 に 届いて くる。 ||||おと||みみ||とどいて|

「あれ は……」

その 途端 、キリト が 鋭く 両眼 を 細めた。 |とたん|||するどく|りょうがん||ほそめた

「幽霊 なんか じゃない ぞ!!」 ゆうれい||じゃ ない|

叫ぶ や 否 や 走り出す。 さけぶ||いな||はしりだす

「ちょ 、ちょっと キリト 君! |||きみ

置き去り に された アスナ は 慌てて 呼び止めた が 、キリト は 振り向き も せず に 倒れた 少女 へ と 駆け寄って いく。 おきざり|||||あわてて|よびとめた||||ふりむき||せ ず||たおれた|しょうじょ|||かけよって|

「もう!!」

やむなく アスナ も 立ち上がり 、後 を 追った。 |||たちあがり|あと||おった まだ 心臓 が どきどき 言って いる が 、気絶 して 倒れる 幽霊 なんて 聞いた こと も ない。 |しんぞう|||いって|||きぜつ||たおれる|ゆうれい||きいた||| やはり あれ は プレイヤー と しか 思え ない。 |||ぷれいやー|||おもえ|

遅れる こと 数 秒 、針葉樹 の 下 に 到達 する と 、すでに 少女 は キリト に 抱え 起こされて いた。 おくれる||すう|びょう|しんようじゅ||した||とうたつ||||しょうじょ||||かかえ|おこされて| まだ 意識 は 戻って いない。 |いしき||もどって| 長い 睫毛 に 縁どられた 瞼 は 閉じられ 、両腕 は 力なく 体 の 脇 に 投げ出されて いる。 ながい|まつげ||ふちどられた|まぶた||とじられ|りょううで||ちからなく|からだ||わき||なげだされて| 念のため ワンピース に 包まれた 体 を まじまじ と 眺める が 、透けて いる 様子 は どこ に も ない。 ねんのため|わんぴーす||つつまれた|からだ||||ながめる||すけて||ようす|||||

「だ 、大丈夫 そう な の? |だいじょうぶ|||

「うーん……」

キリト は 少女 の 顔 を 覗き込み ながら 言った。 ||しょうじょ||かお||のぞきこみ||いった

「と 、言って も なぁ……。 |いって|| この 世界 じゃ 息 と かしない し 、心臓 も 動か ない し……」 |せかい||いき||かし ない||しんぞう||うごか||

SAO 内 で は 、人間 の 生理 的 活動 の ほとんど は 再現 が 省略 されて いる。 |うち|||にんげん||せいり|てき|かつどう||||さいげん||しょうりゃく|| 自発 的に 息 を 吸い込む こと は できる し 、気道 を 空気 が 動く 感覚 も ある が 、仮想 体 自体 は 無意識 呼吸 を 行わ ない。 じはつ|てきに|いき||すいこむ|||||きどう||くうき||うごく|かんかく||||かそう|からだ|じたい||むいしき|こきゅう||おこなわ| 心臓 の 鼓動 も 、緊張 したり 興奮 して ドキドキ する と いう 体感 は ある もの の 他人 の それ を 感じ取る こと は でき ない。 しんぞう||こどう||きんちょう||こうふん||どきどき||||たいかん|||||たにん||||かんじとる||||

「でも まあ 、消滅 してない ……って こと は 生きてる 、って こと だ よ な。 ||しょうめつ|して ない||||いきてる||||| しかし これ は ……相当 妙だ ぞ……」 |||そうとう|みょうだ|

言葉 を 切り 、キリト は 首 を かしげた。 ことば||きり|||くび||

「妙って? たえって

「幽霊 じゃない よ な 、こうして 触れる し。 ゆうれい|じゃ ない||||ふれる| でも 、カーソル は ……出 ない……」 |||だ|

「あ……」

アスナ は 改めて 少女 の 体 に 視線 を 集中 さ せた。 ||あらためて|しょうじょ||からだ||しせん||しゅうちゅう|| だが 、通常 アインクラッド に 存在 する 動的 オブジェクト なら プレイヤー に せよ モンスター に せよ 、あるいは NPC に せよ ターゲット した 瞬間 必ず 表示 される はずの カラー ・カーソル が 出現 し ない。 |つうじょう|||そんざい||どうてき|||ぷれいやー||||||||||たーげっと||しゅんかん|かならず|ひょうじ|さ れる||からー|||しゅつげん|| いまだかつて こんな 現象 に 遭遇 した こと は なかった。 ||げんしょう||そうぐう||||

「何 か の 、バグ 、かな? なん||||

「そう だろう な。 普通の ネット ゲーム なら GM を 呼ぶって ケース だろう けど 、SAO に GM は いない しな……。 ふつうの|ねっと|げーむ||||よぶって|けーす|||||||| それ に 、カーソル だけ じゃ ない。 プレイヤー に しちゃ ちょっと 若 すぎる よ」 ぷれいやー||||わか||

確かに そうだった。 たしかに|そう だった キリト の 両腕 に 抱きかかえられた その 体 は あまりに も 小さい。 ||りょううで||だきかかえられた||からだ||||ちいさい 年齢 で 言えば 十 歳 に も 満たない だろう。 ねんれい||いえば|じゅう|さい|||みたない| ナーヴギア に は 建前 的 ながら 装着 に 年齢 制限 が あり 、確か 十三 歳 以下 の 子供 の 使用 は 禁じられて いた はずだ。 |||たてまえ|てき||そうちゃく||ねんれい|せいげん|||たしか|じゅうさん|さい|いか||こども||しよう||きんじられて||

アスナ は そっと 手 を 伸ばし 、少女 の 額 に 触れた。 |||て||のばし|しょうじょ||がく||ふれた ひんやり と した 、滑らかな 感触 が 伝わって くる。 |||なめらかな|かんしょく||つたわって|

「どうして ……こんな 小さな 子 が 、SAO の 中 に……」 ||ちいさな|こ||||なか|

き ゅっと 唇 を 嚙 み 、立ち上がり ながら キリト に 言う。 ||くちびる||||たちあがり||||いう

「とりあえず 、放って は おけない わ。 |はなって||おけ ない| 目 を 覚ませば いろいろ 判る と 思う。 め||さませば||わかる||おもう うち まで 連れて 帰ろう」 ||つれて|かえろう

「うん 、そう だ な」

キリト も 少女 を 横 抱き に した まま 立ち上がった。 ||しょうじょ||よこ|いだき||||たちあがった アスナ は ふと 周囲 を 見回した が 、近く に は 朽ち かけた 大きな 切り株 が 一 つ ある くらい で 、少女 が ここ に いた 理由 の ような 物 は 何も 見つから なかった。 |||しゅうい||みまわした||ちかく|||くち||おおきな|きりかぶ||ひと|||||しょうじょ|||||りゆう|||ぶつ||なにも|みつから|

ほとんど 駆け足 で 来た 道 を 戻り 、森 を 抜けて 二人 の 家 に 辿り着いて も 少女 の 意識 は 戻ら なかった。 |かけあし||きた|どう||もどり|しげる||ぬけて|ふた り||いえ||たどりついて||しょうじょ||いしき||もどら| アスナ の ベッド に 少女 を 横たえ 、毛布 を 掛けて おいて 、二人 は その 向かい の キリト の ベッド に 並んで 腰 を 下ろした。 ||べっど||しょうじょ||よこたえ|もうふ||かけて||ふた り|||むかい||||べっど||ならんで|こし||おろした

しばし 沈黙 を 続けて から 、キリト が ぽつり と 口 を 開いた。 |ちんもく||つづけて||||||くち||あいた

「まず 一 つ だけ 確かな の は 、こうして ウチ まで 移動 さ せられた からに は NPC じゃない よ な」 |ひと|||たしかな||||うち||いどう||||||じゃ ない||

「そう ……だ ね」

システム が 動かす NPC は 、存在 座標 を 一定 範囲 内 に 固定 されて おり プレイヤー の 意志 で 移動 させる こと は でき ない。 しすてむ||うごかす|||そんざい|ざひょう||いってい|はんい|うち||こてい|||ぷれいやー||いし||いどう||||| 手 で 触ったり 抱きついたり する と 、ほんの 数 秒 で ハラスメント 警告 の 窓 が 開き 、不快な 衝撃 と ともに 吹っ飛ば されて しまう。 て||さわったり|だきついたり||||すう|びょう|||けいこく||まど||あき|ふかいな|しょうげき|||ふっとば||

アスナ の 同意 に 小さく 頷き 、キリト は 更に 推測 を 連ねた。 ||どうい||ちいさく|うなずき|||さらに|すいそく||つらねた

「それ に 、何らか の クエスト の 開始 イベント でも ない。 ||なんらか||||かいし|いべんと|| そう なら 、接触 した 時点 で クエストログ 窓 が 更新 される はずだ し な。 ||せっしょく||じてん|||まど||こうしん|さ れる||| ……てこ と は 、この 子 は やっぱり プレイヤー で 、あそこ で 道 に 迷って いた ──と いう の が 一 番 有り 得る と 思う」 ||||こ|||ぷれいやー||||どう||まよって||||||ひと|ばん|あり|える||おもう

ちらり と ベッド に 視線 を 向け 、続ける。 ||べっど||しせん||むけ|つづける

「クリスタル を 持って いない 、あるいは 転移 の 方法 を 知らない と したら 、ログイン して から 今 まで ずっと フィールド に 出 ないで 、《はじまり の 街 》に いた と 思う ん だ。 ||もって|||てんい||ほうほう||しら ない||||||いま|||ふぃーるど||だ||||がい||||おもう|| なんで こんな 所 まで 来た の か は 判らない けど 、はじまり の 街 に なら この 子 の こと を 知ってる プレイヤー が ……ひょっとしたら 親 と か 、保護者 が いる ん じゃない か な」 ||しょ||きた||||わから ない||||がい||||こ||||しってる|ぷれいやー|||おや|||ほご しゃ||||じゃ ない||

「うん。 わたし も そう 思う。 |||おもう こんな 小さい 子 が 一人 で ログイン する なんて 考えられない もん。 |ちいさい|こ||ひとり|||||かんがえられ ない| 家族 が 誰 か 一緒に 来てる はず ……無事だ と 、いい けど」 かぞく||だれ||いっしょに|らい てる||ぶじだ|||