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ソードアート・オンライン2 アインクラッド (Sword Art Online 2: Aincrad), ソードアート・オンライン2 アインクラッド (17)

ソードアート ・オンライン 2 アインクラッド (17)

不意に 、鳴り つづけて いた アラーム 音 が 停 まった。 一瞬 の 静寂 の 後 、今度 は ソフトな 女性 の 声 が 、同じく 大 音量 で 降って きた。

『ただいま より プレイヤー の 皆様 に 緊急の お 知らせ を 行います』

二 年 前 に 聞いた ゲーム マスター ・茅 場 晶彦 の 声 と は まったく 違う 、人工 的 、電気 的 な 響き の ある 合成 音声 だった。 明らかに ゲーム システム に よる アナウンス だ けれど 、管理者 の 気配 を ぎりぎり まで 削り 落として いる SAO で この 手 の 告知 を 聞いた の は 初めて だ。 固唾 を 吞 ん で 耳 を 澄ま せる。

『現在 ゲーム は 強制 管理 モード で 稼 動 して おります。 全て の モンスター 及び アイテムスパン は 停止 します。 全て の NPC は 撤去 されます。 全 プレイヤー の ヒット ポイント は 最大 値 で 固定 されます』

システムエラー? 何 か 致命 的 な バグ が 出た……?

あたし は 咄嗟に そう 思った。 心臓 を 、不安 の 手 が ぎゅっと 摑 む。 でも 、次の 瞬間──。

『アインクラッド 標準 時 十一 月 七 日 十四 時 五十五 分 ゲーム は クリア さ れました』

──システム 音声 は 、そう 告げた。

ゲーム は 、クリア さ れました。

その 言葉 の 意味 が 、数 秒間 分から なかった。 周囲 の プレイヤー も 、皆 凍りついた 表情 で 立ち尽くして いた。 でも 、更に 続く 言葉 を 聞いて 、全員 が 飛び上がった。

『プレイヤー の 皆様 は 順次 ゲーム から ログアウト されます。 その場で お 待ち ください。 繰り返します……』

突然 、うわ あっ! と いう 大 歓声 が 巻き起こった。 地面 が ──、いや 、浮遊 城 アインクラッド 全体 が 震えた。 皆 が 抱き合い 、地面 を 転げ まわり 、両手 を 突き上げて 絶叫 して いた。

あたし は 動け ず 、何も 言え ず 、店 の 前 で ただ 立って いた。 どうにか 両手 を 持ち上げ 、口 を 覆った。

やった ん だ。 彼 が ──キリト が 、やった ん だ。 いつも の ムチャクチャ を……。

それ は 確信 だった。 だって 最 前線 は まだ 七十五 層 で 、なのに ゲーム を クリア して しまう ような 無 茶 、無謀 、無軌道 は 、絶対 に キリト の 仕業 だ。

耳元 で 、かすかな 囁き 声 が 聞こえた 気 が した。

──約束 、守った ぜ……。

「うん ……うん……。 とうとう 、やった ね……」

ついに 、あたし の 両眼 から 熱い 涙 が こぼれた。 それ を 拭い も せず 、あたし は 思い切り 右手 を 突き上げて 、何度 も 何度 も 飛び 跳ねた。

「お ──い!!」

両手 を 口 に あて 、遥か 上層 に いる はずの 彼 に 届け と ばかり に 、力いっぱい 叫んだ。

「絶対 、また 会おう ね 、キリト ──!! ……愛してる!!」

(終わり)

アスナ は 毎朝 の 起床 アラーム を 七 時 五十 分 に セット して いる。

なぜ そんな 中途半端な 時間 な の か と いう と 、キリト の 起床 時刻 が 八 時 ちょうど だから だ。 十分 早く 目 を 覚まし 、ベッド に 入った まま 、隣 で 眠る 彼 を 見て いる の が 好きな のだ。

今朝 も アスナ は 、木管 楽器 の 柔らかな 音色 に よって 目覚めた 後 、そっと 体 を うつ伏せ に して 、両手 で 頰杖 を 突き ながら キリト の 寝顔 を 眺めて いた。

恋した の が 半年 前。 攻略 パートナー と なった の が 二 週間 前。 結婚 して 、ここ 二十二 層 の 森 の 中 に 引っ越して きて から は わずか 六 日 しか 経って いない。 誰 より も 愛する人 だ が 、実の所 、キリト に 関して は まだまだ 知らない こと も 多い。 それ は 寝顔 ひと つ とって も 言える こと で 、こうして 眺めて いる と 、だんだん 彼 の 年齢 が 解ら なく なって くる。

少し ばかり 斜 に 構えた 、飄々と した 物腰 の せい で 、自分 より 少し 年上 か な と 普段 は 思って いる。 しかし 深い 眠り に 落ちて いる 時 の キリト に は 、無邪気 と 言って いい ほど の あどけな さ が ある ため 、なんだか 遥かに 年下 の 少年 の よう に も 見えて しまう。

歳 くらい 、訊 いて も かまわない だろう ──と は 思う。 いかに 現実 世界 の 話 を 持ち出す の が 禁 忌 と は 言え 、二人 は もう 夫婦 な のだから。 歳 どころ か 、現実 に 戻って から また 出会う ため に は 、本名 、住所 から 連絡 先 まで 伝え 合って おく べきな の は 確実だ。

しかし 、アスナ は なかなか それ が 言い 出せ ないで いる。

現実 世界 の こと を 話した 途端 、ここ で の 《結婚 生活 》が 仮想 の 、薄っぺらな もの に なって しまい そうで 怖い から だ。 アスナ に とって 今 何より も 大切な 、唯一 の 現実 は この 森 の 家 で の 穏やかな 日々 であって 、たとえ この 世界 から の 脱出 が 叶わ ぬ まま 現実 の 肉体 が 死 を 迎える こと が ある と して も 、最後 の 瞬間 まで この 暮らし が 続いて くれる なら 悔い は ない。

だから 、夢 から 醒 め る の は 、もう 少し 後 に──。 そう 思い ながら 、アスナ は そっと 手 を 伸ばし 、眠る キリト の 頰 に 触れた。

それにしても 、幼い 寝顔 だ。

キリト の 強 さ に ついて は 今更 疑う こと は 何も ない。 ベータテスト 時 から 蓄積 した 途方 もない 経験 と 、絶え間ない 攻略 で 獲得 した 数値 的 ステータス 、そして それ ら を 支える 判断 力 と 意思 力。 血 盟騎 士 団 リーダー の 《神聖 剣 》ヒースクリフ に は 敗れ は した もの の 、キリト は アスナ の 知る 限り 最強 の プレイヤー だ。 どんなに 厳しい 戦場 でも 、傍ら に 彼 が いる 限り 不安 を 味わった こと は ない。

しかし 、寄り添って 横たわる キリト を 眺めて いる と 、なぜ か 彼 が 傷つき やすい ナイーブ な 弟 で でも あるか の ような 気持ち が きゅうっと 胸 の 奥 に 湧き上がって きて 、抑えられ なく なる。 守って あげ なくちゃ 、と 思う。

そっと 息 を つき ながら 、アスナ は 身 を 乗り出し 、キリト の 体 に 腕 を まわした。 かすかな 声 で 囁き かける。

「キリト 君 ……大好きだ よ。 ずっと 、一緒に いよう ね」

その 途端 、キリト が わずかに 身動き し 、ゆっくり と 瞼 を 開けた。 二人 の 視線 が 至近 距離 で 交錯 する。

「わっ!!」

アスナ は 慌てて 跳び 退った。 ベッド の 上 に ぺた ん と 正座 して 、顔 を 真っ赤に 染め ながら 言う。

「お 、お は よ 、キリト 君。 ……いま の ……聞いて た……?

「おはよう。 いま の ……って 、何?

上体 を 起こし 、欠 伸 を 嚙 み 殺し ながら 聞き返す キリト に 向かって 、アスナ は 両手 を ぶん ぶん と 振った。

「う 、う うん 、なんでもない!

目玉焼き と 黒 パン 、サラダ に コーヒー の 朝食 を 終え 、二 秒 で テーブル を 片付ける と 、アスナ は 両手 を ぱち ん と 打ち合わせた。

「さて! 今日 は どこ に 遊び に い こっか」

「おまえ なあ」

キリト が 苦笑 する。

「身 も 蓋 もない 言い 方 する な よ」

「だって 毎日 楽しい ん だ もん」

アスナ に とって は 偽ら ざる 本音 だ。

振り返る の すら も 苦痛 な 記憶 だ が 、SAO の 囚人 と なって から キリト に 恋する まで の 一 年 半 、アスナ の 心 は 硬く 凍りついて いた。

寝る 間 も 惜しんで スキル ・レベル を 鍛え 上げ 、攻略 ギルド 血 盟騎 士 団 の サブリーダー に 抜擢 されて から は 時として メンバー が 音 を あげる ほど の ハイペース で 迷宮 に 潜り つづけた。 心 に ある の は ただ ゲーム クリア 、そして 脱出 だけ で 、それ に 資する 活動 以外 の 全て を 無意味 と 断じて いた。

そう 考える と アスナ は 、なぜ もっと 早く キリト と 巡り合う こと が でき なかった の か と 悔やま ず に は いられ ない。 彼 と 出会って から の 日々 は 、現実 世界 で の 生活 以上 に 色彩 と 驚き に 溢れた もの だった。 彼 と 共に なら 、ここ で の 時間 も 得がたい 経験 と 思えた。

だから アスナ に は 、今 ようやく 手 に 入れた 二人 だけ の 時間 、その 一 秒 一 秒 が 貴重な 宝石 の よう に 思える のだ。 もっと もっと 、二人 で 色々な 場所 に 行き 、色々な こと を 話したい。

アスナ は 、両手 を 腰 に あてて 唇 を 尖ら せる と 言った。

「じゃあ キリト 君 は 遊び に 行き たくない の?

すると キリト は に やり と 笑い 、左手 を 振って マップ を 呼び出した。 可 視 モード に なって いる それ を アスナ に 示す。 この 層 の 森 と 湖 の 連 なり が 表示 されて いる。

「ここ な ん だけど な」

指差した の は 、二人 の 家 から 少し 離れた 森 の 一角 だった。

二十二 層 は 低層 フロア ゆえ に 面積 が かなり 広い。 直径 で 言えば 八 キロ メートル 強 ほど も ある。 その 中央 に は 巨大な 湖 が あり 、南 岸 に 主 街 区 である 《コラル 》の 村。 北 岸 に 迷宮 区。 それ 以外 の 場所 は 全て 針葉樹 の 美しい 森 と なって いる。 アスナ と キリト の 小さな 家 は フロア の ほぼ 南端 、外周 部 間近 の 場所 に あり 、今 キリト が 示して いる の は 家 から 北東 へ 二 キロ メートル ほど 進んだ 場所 である。

「昨日 、村 で 聞いた ウワサ な ん だけど な……。 この 辺 の 、森 が 深く なってる とこ……。 出る ん だって さ」

「は?

意味 深 な 笑み を 浮かべる キリト に 、アスナ は きょとんと 訊 き 返した。

「何 が?

「──幽霊」

しばし 絶句 して から 、おそるおそる 確認 する。

「……それって 、アストラル 系 の モンスターって こと? レイス と か バンシー みたいな?

「ちゃ うちゃ う 、ホン モノ さ。 プレイヤー ……人間 の 、幽霊。 女の子 だって」

「う……」

アスナ は 思わず 顔 を 引きつら せて しまう。 その 手 の 話 は 、人並み 以上 に 苦手な 自信 が ある。 ホラー 系 フロア と して 名高い 六十五 、六十六 層 あたり の 古城 迷宮 は 、あれこれ 理由 を つけて 攻略 を サボって しまった ほど だ。

「だ 、だって 、ここ は ゲーム の デジタル 世界 だ よ。 そんな ──幽霊 なんて 、出る わけない じゃ ない」

無理やり 笑顔 を 作り ながら 、やや ムキ に なって 抗弁 する。

「それ は どう かな ー?

だが お化け が アスナ の 弱点 と 知っている キリト は 、いかにも 楽し そうに 追い打ち を かけて きた。

「例えば さ ぁ……。 恨み を 残して 死んだ プレイヤー の 霊 が 、電源 入りっぱなし の ナーヴギア に 取り 憑 いて ……夜な夜な フィールド を 彷徨ってる と か……」

「やめ ────っ!!」

「わ は は 、悪かった 、今 の は 不謹慎な 冗談 だった な。 まあ 俺 も 本当に 幽霊 が 出る と は 思っちゃ いない けど 、どうせ 行く なら 何 か 起き そうな ところ が いい じゃない か」

「う う……」

唇 を 尖らせ ながら 、アスナ は 窓 の 外 に 目 を 向けた。

冬 も 間近な この 季節 に して は いい 天気 だ。 ぽかぽか と 暖か そうな 陽光 が 庭 の 芝生 に 降り注いで いる。 幽霊 が 出る に は 最も 適さない 時間 、に 思える。 アインクラッド で は その 構造 上 、早朝 と 夕方 を 除いて 太陽 を 直接 見る こと は できない が 、しかし 日中 は 充分な 面 光源 ライティング に よって フィールド は 明るく 照らされて いる。

アスナ は キリト に 向き直り 、つんと 顎 を 反らせ ながら 言った。

「いい わ よ 、行きましょう。 幽霊 なんて 居ないって こと を 証明 し に」

「よし 決まった。 ──今日 会え なかったら 、今度 は 夜中 に 行こう な」

「絶対 いや よ !! ……そんな 意地悪 言う人 に は お 弁当 作って あげ ない」

「げ げ 、ナシナシ 、今 の 無し」

キリト に 最後 の ひと 睨み を 浴びせて から 、アスナ は に こり と 笑った。

「さ 、準備 を 済ませちゃ おう。 わたし は お 魚 焼く から 、キリト 君 は パン を 切って ね」

手早く フィッシュ ・バーガー の 弁当 を ランチ ボックス に 詰め 、二人 が 家 を 出た 時 は 午前 九 時 と なって いた。

庭 の 芝生 に 降りた ところ で 、アスナ は キリト を 振り返る と 言った。

「ね 、肩車 して」

「か 、かたぐるま ぁ!?」

素っ頓狂な 声 で キリト が 聞き返す。

「だって 、いつも 同じ 高 さ から 見て た ん じゃ つま んない よ。 キリト 君 の 筋力 パラメータ なら 余裕 でしょ?

「そ 、そりゃ そう かも しれない けど なぁ……。 おまえ 、いい 歳 こ いて……」

「歳 は 関係ない もん! いい じゃない 、誰 が 見てる わけで もない し」

「ま 、まあ いい けど さ ぁ……」

キリト は 呆れた よう に 首 を 振り ながら しゃがみこみ 、背中 を アスナ に 向けた。 スカート を たくしあげ 、その 肩 を またぐ よう に 両 脚 を 乗せる。

「いい よ ー。 でも 後ろ 見たら 引っ叩く から ね ー」

「なんか 理不尽じゃない か……?

ぶつ くさ 言い ながら も キリト が 身軽な 動作 で 立ち上がる と 、それ に つれて 視点 が 一気に 上昇 した。

「わ あ! ほら 、ここ から もう 湖 が 見える よ!


ソードアート ・オンライン 2 アインクラッド (17) |おんらいん| Sword Art Online 2 Aincrad (17) Sword Art Online 2 Aincrad (17)

不意に 、鳴り つづけて いた アラーム 音 が 停 まった。 ふいに|なり||||おと||てい| 一瞬 の 静寂 の 後 、今度 は ソフトな 女性 の 声 が 、同じく 大 音量 で 降って きた。 いっしゅん||せいじゃく||あと|こんど||そふとな|じょせい||こえ||おなじく|だい|おんりょう||ふって|

『ただいま より プレイヤー の 皆様 に 緊急の お 知らせ を 行います』 ||ぷれいやー||みなさま||きんきゅうの||しらせ||おこないます

二 年 前 に 聞いた ゲーム マスター ・茅 場 晶彦 の 声 と は まったく 違う 、人工 的 、電気 的 な 響き の ある 合成 音声 だった。 ふた|とし|ぜん||きいた|げーむ|ますたー|かや|じょう|あきひこ||こえ||||ちがう|じんこう|てき|でんき|てき||ひびき|||ごうせい|おんせい| 明らかに ゲーム システム に よる アナウンス だ けれど 、管理者 の 気配 を ぎりぎり まで 削り 落として いる SAO で この 手 の 告知 を 聞いた の は 初めて だ。 あきらかに|げーむ|しすてむ|||あなうんす|||かんり しゃ||けはい||||けずり|おとして|||||て||こくち||きいた|||はじめて| 固唾 を 吞 ん で 耳 を 澄ま せる。 かたず|||||みみ||すま|

『現在 ゲーム は 強制 管理 モード で 稼 動 して おります。 げんざい|げーむ||きょうせい|かんり|もーど||かせ|どう|| 全て の モンスター 及び アイテムスパン は 停止 します。 すべて|||および|||ていし| 全て の NPC は 撤去 されます。 すべて||||てっきょ| 全 プレイヤー の ヒット ポイント は 最大 値 で 固定 されます』 ぜん|ぷれいやー||ひっと|ぽいんと||さいだい|あたい||こてい|

システムエラー? 何 か 致命 的 な バグ が 出た……? なん||ちめい|てき||||でた

あたし は 咄嗟に そう 思った。 ||とっさに||おもった 心臓 を 、不安 の 手 が ぎゅっと 摑 む。 しんぞう||ふあん||て|||| でも 、次の 瞬間──。 |つぎの|しゅんかん

『アインクラッド 標準 時 十一 月 七 日 十四 時 五十五 分 ゲーム は クリア さ れました』 |ひょうじゅん|じ|じゅういち|つき|なな|ひ|じゅうよん|じ|ごじゅうご|ぶん|げーむ||くりあ||

──システム 音声 は 、そう 告げた。 しすてむ|おんせい|||つげた

ゲーム は 、クリア さ れました。 げーむ||くりあ||

その 言葉 の 意味 が 、数 秒間 分から なかった。 |ことば||いみ||すう|びょうかん|わから| 周囲 の プレイヤー も 、皆 凍りついた 表情 で 立ち尽くして いた。 しゅうい||ぷれいやー||みな|こおりついた|ひょうじょう||たちつくして| でも 、更に 続く 言葉 を 聞いて 、全員 が 飛び上がった。 |さらに|つづく|ことば||きいて|ぜんいん||とびあがった

『プレイヤー の 皆様 は 順次 ゲーム から ログアウト されます。 ぷれいやー||みなさま||じゅんじ|げーむ||| その場で お 待ち ください。 そのばで||まち| 繰り返します……』 くりかえします

突然 、うわ あっ! とつぜん|| と いう 大 歓声 が 巻き起こった。 ||だい|かんせい||まきおこった 地面 が ──、いや 、浮遊 城 アインクラッド 全体 が 震えた。 じめん|||ふゆう|しろ||ぜんたい||ふるえた 皆 が 抱き合い 、地面 を 転げ まわり 、両手 を 突き上げて 絶叫 して いた。 みな||だきあい|じめん||ころげ||りょうて||つきあげて|ぜっきょう||

あたし は 動け ず 、何も 言え ず 、店 の 前 で ただ 立って いた。 ||うごけ||なにも|いえ||てん||ぜん|||たって| どうにか 両手 を 持ち上げ 、口 を 覆った。 |りょうて||もちあげ|くち||おおった

やった ん だ。 彼 が ──キリト が 、やった ん だ。 かれ|||||| いつも の ムチャクチャ を……。

それ は 確信 だった。 ||かくしん| だって 最 前線 は まだ 七十五 層 で 、なのに ゲーム を クリア して しまう ような 無 茶 、無謀 、無軌道 は 、絶対 に キリト の 仕業 だ。 |さい|ぜんせん|||しちじゅうご|そう|||げーむ||くりあ||||む|ちゃ|むぼう|むきどう||ぜったい||||しわざ|

耳元 で 、かすかな 囁き 声 が 聞こえた 気 が した。 みみもと|||ささやき|こえ||きこえた|き||

──約束 、守った ぜ……。 やくそく|まもった|

「うん ……うん……。 とうとう 、やった ね……」

ついに 、あたし の 両眼 から 熱い 涙 が こぼれた。 |||りょうがん||あつい|なみだ|| それ を 拭い も せず 、あたし は 思い切り 右手 を 突き上げて 、何度 も 何度 も 飛び 跳ねた。 ||ぬぐい||せ ず|||おもいきり|みぎて||つきあげて|なんど||なんど||とび|はねた

「お ──い!!」

両手 を 口 に あて 、遥か 上層 に いる はずの 彼 に 届け と ばかり に 、力いっぱい 叫んだ。 りょうて||くち|||はるか|じょうそう||||かれ||とどけ||||ちからいっぱい|さけんだ

「絶対 、また 会おう ね 、キリト ──!! ……愛してる!!」 ぜったい||あおう|||あいしてる

(終わり) おわり

アスナ は 毎朝 の 起床 アラーム を 七 時 五十 分 に セット して いる。 ||まいあさ||きしょう|||なな|じ|ごじゅう|ぶん||せっと||

なぜ そんな 中途半端な 時間 な の か と いう と 、キリト の 起床 時刻 が 八 時 ちょうど だから だ。 ||ちゅうとはんぱな|じかん|||||||||きしょう|じこく||やっ|じ||| 十分 早く 目 を 覚まし 、ベッド に 入った まま 、隣 で 眠る 彼 を 見て いる の が 好きな のだ。 じゅうぶん|はやく|め||さまし|べっど||はいった||となり||ねむる|かれ||みて||||すきな|

今朝 も アスナ は 、木管 楽器 の 柔らかな 音色 に よって 目覚めた 後 、そっと 体 を うつ伏せ に して 、両手 で 頰杖 を 突き ながら キリト の 寝顔 を 眺めて いた。 けさ||||もっかん|がっき||やわらかな|ねいろ|||めざめた|あと||からだ||うつぶせ|||りょうて||頰つえ||つき||||ねがお||ながめて|

恋した の が 半年 前。 こいした|||はんとし|ぜん 攻略 パートナー と なった の が 二 週間 前。 こうりゃく|ぱーとなー|||||ふた|しゅうかん|ぜん 結婚 して 、ここ 二十二 層 の 森 の 中 に 引っ越して きて から は わずか 六 日 しか 経って いない。 けっこん|||にじゅうに|そう||しげる||なか||ひっこして|||||むっ|ひ||たって| 誰 より も 愛する人 だ が 、実の所 、キリト に 関して は まだまだ 知らない こと も 多い。 だれ|||あいする じん|||じつのところ|||かんして|||しら ない|||おおい それ は 寝顔 ひと つ とって も 言える こと で 、こうして 眺めて いる と 、だんだん 彼 の 年齢 が 解ら なく なって くる。 ||ねがお|||||いえる||||ながめて||||かれ||ねんれい||わから|||

少し ばかり 斜 に 構えた 、飄々と した 物腰 の せい で 、自分 より 少し 年上 か な と 普段 は 思って いる。 すこし||しゃ||かまえた|ひょうひょうと||ものごし||||じぶん||すこし|としうえ||||ふだん||おもって| しかし 深い 眠り に 落ちて いる 時 の キリト に は 、無邪気 と 言って いい ほど の あどけな さ が ある ため 、なんだか 遥かに 年下 の 少年 の よう に も 見えて しまう。 |ふかい|ねむり||おちて||じ|||||むじゃき||いって||||||||||はるかに|としした||しょうねん|||||みえて|

歳 くらい 、訊 いて も かまわない だろう ──と は 思う。 さい||じん|||かまわ ない||||おもう いかに 現実 世界 の 話 を 持ち出す の が 禁 忌 と は 言え 、二人 は もう 夫婦 な のだから。 |げんじつ|せかい||はなし||もちだす|||きん|い|||いえ|ふた り|||ふうふ|| 歳 どころ か 、現実 に 戻って から また 出会う ため に は 、本名 、住所 から 連絡 先 まで 伝え 合って おく べきな の は 確実だ。 さい|||げんじつ||もどって|||であう||||ほんみょう|じゅうしょ||れんらく|さき||つたえ|あって|||||かくじつだ

しかし 、アスナ は なかなか それ が 言い 出せ ないで いる。 ||||||いい|だせ||

現実 世界 の こと を 話した 途端 、ここ で の 《結婚 生活 》が 仮想 の 、薄っぺらな もの に なって しまい そうで 怖い から だ。 げんじつ|せかい||||はなした|とたん||||けっこん|せいかつ||かそう||うすっぺらな|||||そう で|こわい|| アスナ に とって 今 何より も 大切な 、唯一 の 現実 は この 森 の 家 で の 穏やかな 日々 であって 、たとえ この 世界 から の 脱出 が 叶わ ぬ まま 現実 の 肉体 が 死 を 迎える こと が ある と して も 、最後 の 瞬間 まで この 暮らし が 続いて くれる なら 悔い は ない。 |||いま|なにより||たいせつな|ゆいいつ||げんじつ|||しげる||いえ|||おだやかな|ひび||||せかい|||だっしゅつ||かなわ|||げんじつ||にくたい||し||むかえる|||||||さいご||しゅんかん|||くらし||つづいて|||くい||

だから 、夢 から 醒 め る の は 、もう 少し 後 に──。 |ゆめ||せい||||||すこし|あと| そう 思い ながら 、アスナ は そっと 手 を 伸ばし 、眠る キリト の 頰 に 触れた。 |おもい|||||て||のばし|ねむる|||||ふれた

それにしても 、幼い 寝顔 だ。 |おさない|ねがお|

キリト の 強 さ に ついて は 今更 疑う こと は 何も ない。 ||つよ|||||いまさら|うたがう|||なにも| ベータテスト 時 から 蓄積 した 途方 もない 経験 と 、絶え間ない 攻略 で 獲得 した 数値 的 ステータス 、そして それ ら を 支える 判断 力 と 意思 力。 |じ||ちくせき||とほう|も ない|けいけん||たえま ない|こうりゃく||かくとく||すうち|てき||||||ささえる|はんだん|ちから||いし|ちから 血 盟騎 士 団 リーダー の 《神聖 剣 》ヒースクリフ に は 敗れ は した もの の 、キリト は アスナ の 知る 限り 最強 の プレイヤー だ。 ち|めいき|し|だん|りーだー||しんせい|けん||||やぶれ|||||||||しる|かぎり|さいきょう||ぷれいやー| どんなに 厳しい 戦場 でも 、傍ら に 彼 が いる 限り 不安 を 味わった こと は ない。 |きびしい|せんじょう||かたわら||かれ|||かぎり|ふあん||あじわった|||

しかし 、寄り添って 横たわる キリト を 眺めて いる と 、なぜ か 彼 が 傷つき やすい ナイーブ な 弟 で でも あるか の ような 気持ち が きゅうっと 胸 の 奥 に 湧き上がって きて 、抑えられ なく なる。 |よりそって|よこたわる|||ながめて|||||かれ||きずつき||||おとうと||||||きもち|||むね||おく||わきあがって||おさえられ|| 守って あげ なくちゃ 、と 思う。 まもって||||おもう

そっと 息 を つき ながら 、アスナ は 身 を 乗り出し 、キリト の 体 に 腕 を まわした。 |いき||||||み||のりだし|||からだ||うで|| かすかな 声 で 囁き かける。 |こえ||ささやき|

「キリト 君 ……大好きだ よ。 |きみ|だいすきだ| ずっと 、一緒に いよう ね」 |いっしょに||

その 途端 、キリト が わずかに 身動き し 、ゆっくり と 瞼 を 開けた。 |とたん||||みうごき||||まぶた||あけた 二人 の 視線 が 至近 距離 で 交錯 する。 ふた り||しせん||しきん|きょり||こうさく|

「わっ!!」

アスナ は 慌てて 跳び 退った。 ||あわてて|とび|しりぞった ベッド の 上 に ぺた ん と 正座 して 、顔 を 真っ赤に 染め ながら 言う。 べっど||うえ|||||せいざ||かお||まっかに|しめ||いう

「お 、お は よ 、キリト 君。 |||||きみ ……いま の ……聞いて た……? ||きいて|

「おはよう。 いま の ……って 、何? |||なん

上体 を 起こし 、欠 伸 を 嚙 み 殺し ながら 聞き返す キリト に 向かって 、アスナ は 両手 を ぶん ぶん と 振った。 じょうたい||おこし|けつ|しん||||ころし||ききかえす|||むかって|||りょうて|||||ふった

「う 、う うん 、なんでもない!

目玉焼き と 黒 パン 、サラダ に コーヒー の 朝食 を 終え 、二 秒 で テーブル を 片付ける と 、アスナ は 両手 を ぱち ん と 打ち合わせた。 めだまやき||くろ|ぱん|さらだ||こーひー||ちょうしょく||おえ|ふた|びょう||てーぶる||かたづける||||りょうて|||||うちあわせた

「さて! 今日 は どこ に 遊び に い こっか」 きょう||||あそび|||

「おまえ なあ」

キリト が 苦笑 する。 ||くしょう|

「身 も 蓋 もない 言い 方 する な よ」 み||ふた|も ない|いい|かた|||

「だって 毎日 楽しい ん だ もん」 |まいにち|たのしい|||

アスナ に とって は 偽ら ざる 本音 だ。 ||||いつわら||ほんね|

振り返る の すら も 苦痛 な 記憶 だ が 、SAO の 囚人 と なって から キリト に 恋する まで の 一 年 半 、アスナ の 心 は 硬く 凍りついて いた。 ふりかえる||||くつう||きおく|||||しゅうじん||||||こいする|||ひと|とし|はん|||こころ||かたく|こおりついて|

寝る 間 も 惜しんで スキル ・レベル を 鍛え 上げ 、攻略 ギルド 血 盟騎 士 団 の サブリーダー に 抜擢 されて から は 時として メンバー が 音 を あげる ほど の ハイペース で 迷宮 に 潜り つづけた。 ねる|あいだ||おしんで||れべる||きたえ|あげ|こうりゃく|ぎるど|ち|めいき|し|だん||||ばってき||||ときとして|めんばー||おと|||||||めいきゅう||くぐり| 心 に ある の は ただ ゲーム クリア 、そして 脱出 だけ で 、それ に 資する 活動 以外 の 全て を 無意味 と 断じて いた。 こころ||||||げーむ|くりあ||だっしゅつ|||||しする|かつどう|いがい||すべて||むいみ||だんじて|

そう 考える と アスナ は 、なぜ もっと 早く キリト と 巡り合う こと が でき なかった の か と 悔やま ず に は いられ ない。 |かんがえる||||||はやく|||めぐりあう||||||||くやま||||いら れ| 彼 と 出会って から の 日々 は 、現実 世界 で の 生活 以上 に 色彩 と 驚き に 溢れた もの だった。 かれ||であって|||ひび||げんじつ|せかい|||せいかつ|いじょう||しきさい||おどろき||あふれた|| 彼 と 共に なら 、ここ で の 時間 も 得がたい 経験 と 思えた。 かれ||ともに|||||じかん||えがたい|けいけん||おもえた

だから アスナ に は 、今 ようやく 手 に 入れた 二人 だけ の 時間 、その 一 秒 一 秒 が 貴重な 宝石 の よう に 思える のだ。 ||||いま||て||いれた|ふた り|||じかん||ひと|びょう|ひと|びょう||きちょうな|ほうせき||||おもえる| もっと もっと 、二人 で 色々な 場所 に 行き 、色々な こと を 話したい。 ||ふた り||いろいろな|ばしょ||いき|いろいろな|||はなしたい

アスナ は 、両手 を 腰 に あてて 唇 を 尖ら せる と 言った。 ||りょうて||こし|||くちびる||とがら|||いった

「じゃあ キリト 君 は 遊び に 行き たくない の? ||きみ||あそび||いき|たく ない|

すると キリト は に やり と 笑い 、左手 を 振って マップ を 呼び出した。 ||||||わらい|ひだりて||ふって|まっぷ||よびだした 可 視 モード に なって いる それ を アスナ に 示す。 か|し|もーど||||||||しめす この 層 の 森 と 湖 の 連 なり が 表示 されて いる。 |そう||しげる||こ||れん|||ひょうじ||

「ここ な ん だけど な」

指差した の は 、二人 の 家 から 少し 離れた 森 の 一角 だった。 ゆびさした|||ふた り||いえ||すこし|はなれた|しげる||いっかく|

二十二 層 は 低層 フロア ゆえ に 面積 が かなり 広い。 にじゅうに|そう||ていそう|ふろあ|||めんせき|||ひろい 直径 で 言えば 八 キロ メートル 強 ほど も ある。 ちょっけい||いえば|やっ|きろ|めーとる|つよ||| その 中央 に は 巨大な 湖 が あり 、南 岸 に 主 街 区 である 《コラル 》の 村。 |ちゅうおう|||きょだいな|こ|||みなみ|きし||おも|がい|く||||むら 北 岸 に 迷宮 区。 きた|きし||めいきゅう|く それ 以外 の 場所 は 全て 針葉樹 の 美しい 森 と なって いる。 |いがい||ばしょ||すべて|しんようじゅ||うつくしい|しげる||| アスナ と キリト の 小さな 家 は フロア の ほぼ 南端 、外周 部 間近 の 場所 に あり 、今 キリト が 示して いる の は 家 から 北東 へ 二 キロ メートル ほど 進んだ 場所 である。 ||||ちいさな|いえ||ふろあ|||なんたん|がいしゅう|ぶ|まぢか||ばしょ|||いま|||しめして||||いえ||ほくとう||ふた|きろ|めーとる||すすんだ|ばしょ|

「昨日 、村 で 聞いた ウワサ な ん だけど な……。 きのう|むら||きいた||||| この 辺 の 、森 が 深く なってる とこ……。 |ほとり||しげる||ふかく|| 出る ん だって さ」 でる|||

「は?

意味 深 な 笑み を 浮かべる キリト に 、アスナ は きょとんと 訊 き 返した。 いみ|ふか||えみ||うかべる||||||じん||かえした

「何 が? なん|

「──幽霊」 ゆうれい

しばし 絶句 して から 、おそるおそる 確認 する。 |ぜっく||||かくにん|

「……それって 、アストラル 系 の モンスターって こと? ||けい||| レイス と か バンシー みたいな?

「ちゃ うちゃ う 、ホン モノ さ。 |||ほん|もの| プレイヤー ……人間 の 、幽霊。 ぷれいやー|にんげん||ゆうれい 女の子 だって」 おんなのこ|

「う……」

アスナ は 思わず 顔 を 引きつら せて しまう。 ||おもわず|かお||ひきつら|| その 手 の 話 は 、人並み 以上 に 苦手な 自信 が ある。 |て||はなし||ひとなみ|いじょう||にがてな|じしん|| ホラー 系 フロア と して 名高い 六十五 、六十六 層 あたり の 古城 迷宮 は 、あれこれ 理由 を つけて 攻略 を サボって しまった ほど だ。 |けい|ふろあ|||なだかい|ろくじゅうご|ろくじゅうろく|そう|||こじよう|めいきゅう|||りゆう|||こうりゃく||さぼって|||

「だ 、だって 、ここ は ゲーム の デジタル 世界 だ よ。 ||||げーむ||でじたる|せかい|| そんな ──幽霊 なんて 、出る わけない じゃ ない」 |ゆうれい||でる|||

無理やり 笑顔 を 作り ながら 、やや ムキ に なって 抗弁 する。 むりやり|えがお||つくり||||||こうべん|

「それ は どう かな ー? ||||-

だが お化け が アスナ の 弱点 と 知っている キリト は 、いかにも 楽し そうに 追い打ち を かけて きた。 |おばけ||||じゃくてん||しっている||||たのし|そう に|おいうち|||

「例えば さ ぁ……。 たとえば|| 恨み を 残して 死んだ プレイヤー の 霊 が 、電源 入りっぱなし の ナーヴギア に 取り 憑 いて ……夜な夜な フィールド を 彷徨ってる と か……」 うらみ||のこして|しんだ|ぷれいやー||れい||でんげん|はいりっぱなし||||とり|ひょう||よなよな|ふぃーるど||さまよってる||

「やめ ────っ!!」

「わ は は 、悪かった 、今 の は 不謹慎な 冗談 だった な。 |||わるかった|いま|||ふきんしんな|じょうだん|| まあ 俺 も 本当に 幽霊 が 出る と は 思っちゃ いない けど 、どうせ 行く なら 何 か 起き そうな ところ が いい じゃない か」 |おれ||ほんとうに|ゆうれい||でる|||おもっちゃ||||いく||なん||おき|そう な||||じゃ ない|

「う う……」

唇 を 尖らせ ながら 、アスナ は 窓 の 外 に 目 を 向けた。 くちびる||とがらせ||||まど||がい||め||むけた

冬 も 間近な この 季節 に して は いい 天気 だ。 ふゆ||まぢかな||きせつ|||||てんき| ぽかぽか と 暖か そうな 陽光 が 庭 の 芝生 に 降り注いで いる。 ||あたたか|そう な|ようこう||にわ||しばふ||ふりそそいで| 幽霊 が 出る に は 最も 適さない 時間 、に 思える。 ゆうれい||でる|||もっとも|てきさ ない|じかん||おもえる アインクラッド で は その 構造 上 、早朝 と 夕方 を 除いて 太陽 を 直接 見る こと は できない が 、しかし 日中 は 充分な 面 光源 ライティング に よって フィールド は 明るく 照らされて いる。 ||||こうぞう|うえ|そうちょう||ゆうがた||のぞいて|たいよう||ちょくせつ|みる|||でき ない|||にち ちゅう||じゅうぶんな|おもて|こうげん||||ふぃーるど||あかるく|てらされて|

アスナ は キリト に 向き直り 、つんと 顎 を 反らせ ながら 言った。 ||||むきなおり||あご||そらせ||いった

「いい わ よ 、行きましょう。 |||いきましょう 幽霊 なんて 居ないって こと を 証明 し に」 ゆうれい||いないって|||しょうめい||

「よし 決まった。 |きまった ──今日 会え なかったら 、今度 は 夜中 に 行こう な」 きょう|あえ||こんど||よなか||いこう|

「絶対 いや よ !! ……そんな 意地悪 言う人 に は お 弁当 作って あげ ない」 ぜったい||||いじわる|いう じん||||べんとう|つくって||

「げ げ 、ナシナシ 、今 の 無し」 |||いま||なし

キリト に 最後 の ひと 睨み を 浴びせて から 、アスナ は に こり と 笑った。 ||さいご|||にらみ||あびせて|||||||わらった

「さ 、準備 を 済ませちゃ おう。 |じゅんび||すませちゃ| わたし は お 魚 焼く から 、キリト 君 は パン を 切って ね」 |||ぎょ|やく|||きみ||ぱん||きって|

手早く フィッシュ ・バーガー の 弁当 を ランチ ボックス に 詰め 、二人 が 家 を 出た 時 は 午前 九 時 と なって いた。 てばやく||||べんとう||らんち|ぼっくす||つめ|ふた り||いえ||でた|じ||ごぜん|ここの|じ|||

庭 の 芝生 に 降りた ところ で 、アスナ は キリト を 振り返る と 言った。 にわ||しばふ||おりた|||||||ふりかえる||いった

「ね 、肩車 して」 |かたぐるま|

「か 、かたぐるま ぁ!?」

素っ頓狂な 声 で キリト が 聞き返す。 すっとんきょうな|こえ||||ききかえす

「だって 、いつも 同じ 高 さ から 見て た ん じゃ つま んない よ。 ||おなじ|たか|||みて|||||ん ない| キリト 君 の 筋力 パラメータ なら 余裕 でしょ? |きみ||きんりょく|||よゆう|

「そ 、そりゃ そう かも しれない けど なぁ……。 ||||しれ ない|| おまえ 、いい 歳 こ いて……」 ||さい||

「歳 は 関係ない もん! さい||かんけいない| いい じゃない 、誰 が 見てる わけで もない し」 |じゃ ない|だれ||みてる||も ない|

「ま 、まあ いい けど さ ぁ……」

キリト は 呆れた よう に 首 を 振り ながら しゃがみこみ 、背中 を アスナ に 向けた。 ||あきれた|||くび||ふり|||せなか||||むけた スカート を たくしあげ 、その 肩 を またぐ よう に 両 脚 を 乗せる。 すかーと||||かた|||||りょう|あし||のせる

「いい よ ー。 ||- でも 後ろ 見たら 引っ叩く から ね ー」 |うしろ|みたら|ひったたく|||-

「なんか 理不尽じゃない か……? |りふじんじゃ ない|

ぶつ くさ 言い ながら も キリト が 身軽な 動作 で 立ち上がる と 、それ に つれて 視点 が 一気に 上昇 した。 ||いい|||||みがるな|どうさ||たちあがる|||||してん||いっきに|じょうしょう|

「わ あ! ほら 、ここ から もう 湖 が 見える よ! ||||こ||みえる|