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狼と香辛料 01 (Spice and Wolf), 狼と香辛料 01 (6)

狼 と 香辛料 01 (6)

そこ まで ホロ は 一息 に 言い切る と 、大きな ため 息 を ついて から 不 貞 寝 を する よう に 毛皮 の 上 に 突っ伏して 、体 を 丸めて 乱暴に 毛皮 を 引き寄せて 顔 を うずめて しまった。

顔 が 見えない ので 定かで は ない が 、泣いて いて も おかしく は ない そんな 雰囲気 に ロレンス は 言葉 も かけ あぐねて 頭 を 搔 いた。

どうした もの か と 胸中 で 呟いて 、ロレンス は ホロ の 細い 肩 と 狼 の 耳 を 見る。

本物 の 神 と いう の は こういう もの な の かも しれない 、と 思わ せる ほど に ふてぶてしかったり 、頭 が 回ったり する か と 思う と 、子供 の よう に かんしゃく を 起こしたり 儚 げ な 様子 を 見せたり する。

ロレンス は 扱い に 窮した。 しかし 、かといって このまま 沈黙 して いる こと も でき ず 、少し 違った 方向 の 話 を 切り出して みた。

「まあ 、その辺 の 真偽 は さておいて……」

「わっち を 噓 つき だ と?

と 、ロレンス の 前置き に いきなり 顔 を 上げて 嚙 み付 いた ホロ の 様子 に ロレンス は たじろいだ もの の 、さすが に ホロ 自身 感情 的に なり すぎて いる と 自覚 した ようだ。 少し ハッと する よう に して から 、バツ が 悪 そうに 「すま ぬ 」と 言って 再び 毛皮 の 中 に 顔 を うずめた のだった。

「お前 が 相当 腹 に 据え かねて いる と いう こと だけ は わかった。 が 、村 を 出て どこ か 行く 当て は ある の か?

ロレンス の その 質問 に ホロ は しばらく 返事 を し なかった けれども 、ロレンス は ホロ の 耳 が ピクリ と 反応 した こと に 気 が ついて いた ので 気長に 待って いた。 腹 の 中 で 渦巻いて いた こと を ぶちまけた 直後 な ので 、単に ロレンス の ほう を なかなか 見 れない だけ かも しれ ない。

そう 考えて みる と なかなか に 可愛 げ が あった。

そして 、ようやく 振り向いた ホロ は バツ が 悪 そうな 顔 で 荷台 の 隅 を 見つめて いて 、ロレンス の 予想 が 当たって いた こと を 示して いた。

「北 に 帰りたい」

それ から 、ぽつり と そう 言った。

「北?

ホロ は うなずいて 、ふい と 視線 を 荷台 から 上げて 遠く に 向ける。 ロレンス は その 視線 の 先 を 追いかけ なくて も どこ を 見て いる の か わかる。 ホロ の 視線 は 、正確に 真 北 を 向いて いた。

「生まれ故郷。 ヨイツ の 森。 もう 、何 年 経つ の か わから ん ほど 時 が 経った……。 帰りたい」

生まれ故郷 、と いう 言葉 に ロレンス は 少し どき り と して ホロ の 横顔 を 見つめた。 ロレンス 自身 、ほとんど 故郷 を 捨てる よう に して 行商 の 旅 に 出た まま 一 度 も 帰って いない。

貧しくて 狭くて あまり 良い 思い出 のない 生まれ故郷 の 村 だった が 、それ でも 御者 台 の 上 で 孤独に 駆られた 時 は 懐かしく 思う こと が ある。

ホロ が 本物 だ と して 、何 百 年 も 前 に 故郷 から 離れた 上 、長く 居着いた 先 で 周り から ないがしろに さ れ 始めた と したら。

その 望郷 の 思い は 推して 知る べし だ。

「ただ 、少し 旅 を したい。 せっかく 遠く 離れた 異国 の 地 に おる ん じゃ。 それ に 長い 年月 で 色々 と 変わっと る じゃ ろう から 、見聞 を 広める の も 良い じゃ ろう」

ホロ は そう 言って から 、もう 完全に 落ち着いた 顔 で ロレンス の ほう を 振り向いた。

「もしも ぬし が 麦 を 持って パスロエ の 村 に 帰る でも 、また わっち を 教会 に 突き出す でも なければ 、わっち は しばし ぬし の 世話に なりたい。 ぬし は 旅 から 旅 の 行商人 じゃ ろう?

ロレンス が そんな こと を しない と 信じて いる と も 、見抜いて いる と も いえる ような 、うっすら と 微笑み ながら の ホロ の その 言葉 は 、まるで 長年 来 の 友人 の 頼み ごと の ようだ。

ロレンス は 正直 ホロ が 本物 な の か どう な の か 依然と して 判断 し かねて いた が 、そんな 様子 を 見る 限り 少なくとも 悪 そうな やつ に は 思え ない。 それ に 、この 不思議な 娘 と 会話 を する こと が ロレンス に は 楽しく なって きて いた。

しかし 、そこ で すぐに ホロ の 言葉 に うなずける ほど ロレンス も 商人 根性 を 忘れた わけで は ない。 商人 に 必要な の は 神 を も 恐れない 大胆 さ と 、そして 身内 すら 疑う 慎重 さ だ。

ロレンス は しばし 考え 、それ から 静かに 口 を 開いて いた。

「即断 は できない な」

不平 を もらす か と も 思った が 、それ は ホロ を 見くびり すぎ と いう もの だった。 ホロ は もっともだ と うなずいた。

「用心深い の は 良い こと じゃ。 しかし 、わっち の人 を 見る 目 は 確かな はずじゃ。 ぬし は人 の 頼み を 無 碍 に 断る ような 心 の 冷たい やつで は ない と 信じ とる。 まあ 、わっち は 狼 じゃ けど の」

しかし 、そんな 言葉 は いたずらっぽい 笑み を 浮かべ ながら だ。 それ から 再び 横 に なる と も そ も そと 毛皮 の 中 に 潜って いった が 、もちろん さっき の よう に 不貞腐れる よう に で は ない。 これ で 今日 の 話 は 終わり だ 、と 言わんばかり だ。

相変わらず 会話 の 主導 権 を 握られて いる ようで 、ロレンス は 苦々し げ に 、しかし 笑わ ざる を 得ない そんな ホロ の 様子 を 見つめて いた。

が 、ふと ホロ の 耳 が 動いた か と 思う と 毛皮 の 中 から 顔 が 出て きて 、ロレンス の ほう を 向いた のだった。

「よもや 外 で 寝ろ と か 言わ ぬ よ な?

言える わけ が ない 、と いう こと を わかりきって 聞いて いる ホロ の 様子 に ロレンス は 肩 を すくめて 返事 を する と 、ホロ は くすくす と 笑い ながら 毛皮 の 中 に 戻って いった。

この 分 だ と さっき まで の やり取り の うち 、いくらか は ホロ の 演技 な の かも しれ ない。 例えば 囚 われ の 姫 は かく や と いった 感じと か。

それ でも 村 で の 不満 と か 、故郷 に 帰りたい と 言った 時 の あの 表情 まで も 噓 だ と は とても ロレンス に は 思え なかった。

そして 、そこ を 噓 だ と 思わない と いう こと は 結果 と して ホロ を 本物 だ と 信じる こと だ し 、あれ が 悪魔 憑 き の 娘 の 単なる 思い込み だ と は とても 思え なかった。

しかし 、ロレンス は ふと ため息 を ついて それ 以上 考える こと を 止める と 、立ち上がって 荷台 に 乗り込んだ。 これ 以上 考えて いて も 何 か 新しい こと が わかる と は 思え なかった から で 、考えて も わからない 時 は 眠って 時間 を 置く に 限る から だ。

ホロ が いる と は いって も この 毛皮 は もともと ロレンス の もの な のだ。 持ち主 が 御者 台 で 布 に 包まって 寝る と いう の も 間抜けな 話 だ。 ホロ に もう 少し 端に よる よう に と 言って から 、ロレンス も 毛皮 の 山 の 中 に もぐりこんだ。

背中 の 向こう から は ホロ の 小さな 息遣い が 聞こえて くる。 ロレンス は 即断 できない など と 言った もの の 、明日 目 が 覚めて ホロ と ともに 商品 が 消えて い なければ ホロ を 旅 の 道連れ に して やって も よい と 思って いる。

それ に 、ロレンス 自身 ホロ が そんな こと を する ほど 小 悪党 で は ない と 思って いた し 、きっと そういう こと を する ならば ロレンス の 何もかも を 奪う ほど の こと を しでかして くれる だろう と 思って いた。

そう 考える と 、少し それ が 楽しみで は あった。

なん に せよ 、自分 以外 の 何者 か と 眠る の は 久しぶりの こと だった のだ。 それ が 鼻 が 曲がり そうな 獣 臭 の 中 、少し 甘い 香り の する 美しい 娘 と であれば 嬉しくない わけ が なかった。

そんな ロレンス の 単純な 心中 を 察した の か 、馬 が ぶる る と ため息 の よう に いなないた。

馬 も 、口 を 聞か ない だけ で人 の 考えて いる こと が わかる の かも しれ ない。

ロレンス は 、苦笑 し ながら 目 を 閉じた のだった。

ロレンス の 朝 は 早い。 一 日 を フル 活用 して 金 を 稼が なければ ならない 商人 達 は 総じて 朝 が 早い から だ。 しかし 、ロレンス が 朝もや の 中 目 を 覚ませば すでに ホロ は 起きて いて 、ロレンス の となり に 座りこんで なに か を ご そご そと して いた。 一瞬 、ロレンス の 思惑 が 外れる ような こと を して いる の か と も 思った が 、それ に して は 大胆だ。 ロレンス が 顔 を 上げて 肩 越し に 振り返れば 、どうやら ロレンス の 荷物 を あさって 服 を 見つけた ようで 、ちょうど 靴 紐 を 結んで いる ところ だった。

「おい 、それ は 俺 のだろう」

盗み を して いる わけで は ない に して も 、他人 の 持ち物 を 勝手に あさる の は 神 も 咎める 行為 だ。

ロレンス は 少し 責める よう に そう 言った が 、振り向いた ホロ は 少しも 悪びれる 様子 は なかった。

「ん? あ 、起きた か や。 これ どう じゃ。 似合う かや」

ロレンス の 言葉 など 一向に かまわ ず 、ホロ は ロレンス の ほう に 向きなおる と 両腕 を 広げて そう 言った。 その 上 、悪びれる どころ か 少し 得意 げ に して いる のだ。 それ を 見る と 昨日 の ホロ の 取り乱しっぷり そのもの が 夢 の 中 の こと の ようだ し 、やはり ふてぶてしく 振る舞って いる ほう が 本来 の ホロ な のだろう。

ちなみに 、ホロ が 身 に まとって いる の は ロレンス が ちょっと した 町 の 富裕 商人 など と 商談 を する 時 の ため の 一 張 羅 だ。 藍色 の 長袖 シャツ に 、流行 の 七 分 丈 の ベスト。 それ に 麻 と 毛皮 を 折り合わ せた 珍しい ズボン に 、その 上 に 巻かれた 下半身 を すっぽり と 包む 腰 巻 と 、腰 巻 を 縛る 上等な 羊 の 皮 の 腰 帯。 靴 は なめし 皮 を 三重 に した 雪山 でも 耐えられる 重厚な こしらえ の 逸品 だ。 その 上 から 熊 の 毛皮 の 良い ところ を 使った 外套 を 羽織る。

行商人 は 、実用 的で 重厚な 作り の 衣服 を 誇り に する。 これ だけ の 物 を 揃える のに 弟子 の 頃 から 金 を 溜 め 続けて 十 年 かかった。 これ を 着て 髭 を 整え 商談 に 臨めば 大抵 の者 は 一目 置いて くれる。

それほど の 衣服 を ホロ は 身 に まとって いた。

ただ 、怒る 気 に は なれ ない。

明らかに サイズ の 大きい それ を 身 に つけた ホロ が 、それほど 可愛かった から だ。

「真っ黒で 上等な 熊 の 外套 じゃ。 わっち の 髪 の 毛 が 茶色 だから よく 映える。 ただ 、この ズボン を わっち が 窄 くに は 尻尾 が 邪魔じゃ の。 穴 あけて よい かや?

さらりと 言う が 、ベテラン の 毛織 物 工 に 無理 を いって 作って もらった ズボン な のだ。 穴 を 開けたら おそらく もう 二度と 直ら ない。 ロレンス は 首 を 横 に 振った。 力強く 、有無 を 言わ せ ぬ よう に。

「ふう む。 まあ 、幸い サイズ が 大きい。 なんとか いける じゃ ろ」

今 着て いる 服 を 全部 脱げ 、と 言わ れる こと など あり 得ない と いった 様子 の ホロ だった が 、このまま この 服 を 着て 逃げる わけじゃない だろう な と 、まさか と は 思い ながら ロレンス は 体 を 起こして ホロ を 注視 して いた。 町 に 行って 叩き 売れば 、結構な 金額 に なる のだ。

「ぬし は 根っから の 商人 の ようじゃ。 自分 の 顔 に 出る 表情 が どんな 効果 を 持つ かよう わかっと る」

笑い ながら ホロ は 言って 、ひょいと 荷台 から 飛び降りた。

その 動作 が あまりに も 自然で 不覚 ながら 反応 でき なかった。 あの まま 走り去られて いたら 追いつけ なかった かも しれ ない。

ただ 、ロレンス の 体 が 動か なかった の は 、ホロ が 逃げる わけ が ない 、と いう 確信 が どこ か に あった から かも しれ なかった。

「逃げ やせ ん よ。 逃げる なら とっくに 逃げ とる」

ロレンス は 荷台 の 上 の 麦 に いったん 目 を やって から 、笑い ながら そんな こと を 言う ホロ に 視線 を 向ける。 すると 、どうやら ロレンス の 背丈 に 合わせて 作られて いる 熊 の 毛皮 の 外套 を 着る に は 背丈 が 足りなかった ようで 、ホロ は 外套 を はずして 荷台 に 放り投げて きた。 昨日 は 月 明かり の 下 で 見た だけ だった から いまいち わから なかった が 、思って いた より も 小柄だ。 ロレンス は どちら か と いえば 長身 だ が 、ホロ は 頭 二 つ 分 くらい 優に 小さかった。


狼 と 香辛料 01 (6) おおかみ||こうしんりょう Gewürz und Wolf 01 (6) Wolf and Spice 01 (6) Lobo y especias 01 (6) Épice et loup 01 (6) Spice e Lobo 01 (6) 香料与狼 01 (6) 香料与狼 01 (6) 狼与香料 01 (6)

そこ まで ホロ は 一息 に 言い切る と 、大きな ため 息 を ついて から 不 貞 寝 を する よう に 毛皮 の 上 に 突っ伏して 、体 を 丸めて 乱暴に 毛皮 を 引き寄せて 顔 を うずめて しまった。 ||||ひといき||いいきる||おおきな||いき||||ふ|さだ|ね|||||けがわ||うえ||つっふくして|からだ||まるめて|らんぼうに|けがわ||ひきよせて|かお||| After a quick sigh, he plopped down on his furs, curled up and violently pulled them over his face, as if in a state of slumber.

顔 が 見えない ので 定かで は ない が 、泣いて いて も おかしく は ない そんな 雰囲気 に ロレンス は 言葉 も かけ あぐねて 頭 を 搔 いた。 かお||みえ ない||さだかで||||ないて|||||||ふんいき||||ことば||||あたま||| Although he could not see her face, it was not surprising that she was crying.

どうした もの か と 胸中 で 呟いて 、ロレンス は ホロ の 細い 肩 と 狼 の 耳 を 見る。 ||||きょうちゅう||つぶやいて|||||ほそい|かた||おおかみ||みみ||みる Muttering to himself, Lawrence looks at Holo's slender shoulders and wolf ears.

本物 の 神 と いう の は こういう もの な の かも しれない 、と 思わ せる ほど に ふてぶてしかったり 、頭 が 回ったり する か と 思う と 、子供 の よう に かんしゃく を 起こしたり 儚 げ な 様子 を 見せたり する。 ほんもの||かみ||||||||||しれ ない||おもわ|||||あたま||まわったり||||おもう||こども||||||おこしたり|はかな|||ようす||みせたり| He can have the huffs and turns that make you wonder what the real God might be like, or he can throw a tantrum and appear fragile, like a child. È abbastanza arrogante da farti pensare che un vero dio potrebbe essere così, e quando pensi che la tua testa stia girando, fai i capricci o mostri uno sguardo fugace come un bambino. .

ロレンス は 扱い に 窮した。 ||あつかい||きゅうした Lawrence was at a loss. しかし 、かといって このまま 沈黙 して いる こと も でき ず 、少し 違った 方向 の 話 を 切り出して みた。 |||ちんもく|||||||すこし|ちがった|ほうこう||はなし||きりだして| However, I could not remain silent, so I tried to broach the subject in a slightly different direction.

「まあ 、その辺 の 真偽 は さておいて……」 |そのへん||しんぎ|| "Well, let's leave the veracity of that aside: ......"

「わっち を 噓 つき だ と? Did you just lie about me?

と 、ロレンス の 前置き に いきなり 顔 を 上げて 嚙 み付 いた ホロ の 様子 に ロレンス は たじろいだ もの の 、さすが に ホロ 自身 感情 的に なり すぎて いる と 自覚 した ようだ。 |||まえおき|||かお||あげて||みつけ||||ようす||||||||||じしん|かんじょう|てきに|||||じかく|| Lawrence's preamble was suddenly met with an upraised and biting look from Hollo, which made him flinch, but he seemed to realize that Hollo himself was indeed being overly emotional. 少し ハッと する よう に して から 、バツ が 悪 そうに 「すま ぬ 」と 言って 再び 毛皮 の 中 に 顔 を うずめた のだった。 すこし|はっと||||||ばつ||あく|そう に||||いって|ふたたび|けがわ||なか||かお||| After a slight huff, he said, "I'm sorry," and tucked his face into the fur again.

「お前 が 相当 腹 に 据え かねて いる と いう こと だけ は わかった。 おまえ||そうとう|はら||すえ|||||||| I understood that you were very upset about it. が 、村 を 出て どこ か 行く 当て は ある の か? |むら||でて|||いく|あて|||| But is there anywhere to go out of the village?

ロレンス の その 質問 に ホロ は しばらく 返事 を し なかった けれども 、ロレンス は ホロ の 耳 が ピクリ と 反応 した こと に 気 が ついて いた ので 気長に 待って いた。 |||しつもん|||||へんじ|||||||||みみ||ぴくり||はんのう||||き|||||きながに|まって| Hollow did not respond to Lawrence's question for a while, but Lawrence had noticed a twitch in Hollow's ear, so he waited patiently. 腹 の 中 で 渦巻いて いた こと を ぶちまけた 直後 な ので 、単に ロレンス の ほう を なかなか 見 れない だけ かも しれ ない。 はら||なか||うずまいて|||||ちょくご|||たんに||||||み|れ ない|||| Since it was right after he had just bubbled up what had been swirling in his stomach, he may have simply not been able to look at Lawrence easily.

そう 考えて みる と なかなか に 可愛 げ が あった。 |かんがえて|||||かわい||| When I thought about it, it was quite lovely.

そして 、ようやく 振り向いた ホロ は バツ が 悪 そうな 顔 で 荷台 の 隅 を 見つめて いて 、ロレンス の 予想 が 当たって いた こと を 示して いた。 ||ふりむいた|||ばつ||あく|そう な|かお||にだい||すみ||みつめて||||よそう||あたって||||しめして| When Hollo finally turned around, he was staring at the corner of the cart with an unhappy look on his face, indicating that Lawrence's prediction had been correct.

「北 に 帰りたい」 きた||かえりたい I want to go back north.

それ から 、ぽつり と そう 言った。 |||||いった After that, he said in a quiet voice.

「北? きた

ホロ は うなずいて 、ふい と 視線 を 荷台 から 上げて 遠く に 向ける。 |||||しせん||にだい||あげて|とおく||むける Hollo nods and suddenly lifts his gaze from the back of the truck and looks into the distance. ロレンス は その 視線 の 先 を 追いかけ なくて も どこ を 見て いる の か わかる。 |||しせん||さき||おいかけ|||||みて|||| Lawrence does not have to follow his gaze to know where he is looking. ホロ の 視線 は 、正確に 真 北 を 向いて いた。 ||しせん||せいかくに|まこと|きた||むいて| Holo's gaze was exactly to the north.

「生まれ故郷。 うまれこきょう ヨイツ の 森。 ||しげる Forest of Joiz. もう 、何 年 経つ の か わから ん ほど 時 が 経った……。 |なん|とし|たつ||||||じ||たった It's hard to tell how many years have passed since I last visited ....... 帰りたい」 かえりたい

生まれ故郷 、と いう 言葉 に ロレンス は 少し どき り と して ホロ の 横顔 を 見つめた。 うまれこきょう|||ことば||||すこし|||||||よこがお||みつめた At the mention of "birthplace," Lawrence looked at Hollo's profile with a slight pang. ロレンス 自身 、ほとんど 故郷 を 捨てる よう に して 行商 の 旅 に 出た まま 一 度 も 帰って いない。 |じしん||こきょう||すてる||||ぎょうしょう||たび||でた||ひと|たび||かえって| Lawrence himself almost abandoned his homeland and went on a peddling trip, never to return.

貧しくて 狭くて あまり 良い 思い出 のない 生まれ故郷 の 村 だった が 、それ でも 御者 台 の 上 で 孤独に 駆られた 時 は 懐かしく 思う こと が ある。 まずしくて|せまくて||よい|おもいで|の ない|うまれこきょう||むら|||||ぎょしゃ|だい||うえ||こどくに|かられた|じ||なつかしく|おもう||| Although my hometown village was poor and cramped, and I have few fond memories of it, I do sometimes think fondly of the times when I was driven to loneliness on the gosha-dai.

ホロ が 本物 だ と して 、何 百 年 も 前 に 故郷 から 離れた 上 、長く 居着いた 先 で 周り から ないがしろに さ れ 始めた と したら。 ||ほんもの||||なん|ひゃく|とし||ぜん||こきょう||はなれた|うえ|ながく|いついた|さき||まわり|||||はじめた|| What if the holos are real, and they left their homeland hundreds of years ago and began to be neglected by those around them in the places they have settled for so long?

その 望郷 の 思い は 推して 知る べし だ。 |ぼうきょう||おもい||おして|しる|| The longing for home is understandable.

「ただ 、少し 旅 を したい。 |すこし|たび|| I just want to travel a little. せっかく 遠く 離れた 異国 の 地 に おる ん じゃ。 |とおく|はなれた|いこく||ち|||| You are in a foreign land, far away from home. それ に 長い 年月 で 色々 と 変わっと る じゃ ろう から 、見聞 を 広める の も 良い じゃ ろう」 ||ながい|ねんげつ||いろいろ||かわっと|||||けんぶん||ひろめる|||よい|| Besides, a lot has changed over the years, so it's good to broaden your horizons.

ホロ は そう 言って から 、もう 完全に 落ち着いた 顔 で ロレンス の ほう を 振り向いた。 |||いって|||かんぜんに|おちついた|かお||||||ふりむいた After saying this, Hollo turned to Lawrence with a completely calm face.

「もしも ぬし が 麦 を 持って パスロエ の 村 に 帰る でも 、また わっち を 教会 に 突き出す でも なければ 、わっち は しばし ぬし の 世話に なりたい。 |||むぎ||もって|||むら||かえる|||||きょうかい||つきだす||||||||せわに| If Nushi does not return to the village of Pasloe with the wheat or turn Wachi in to the church, I would like to be under his care for a while. ぬし は 旅 から 旅 の 行商人 じゃ ろう? ||たび||たび||ぎょうしょう じん|| You must be a traveling peddler.

ロレンス が そんな こと を しない と 信じて いる と も 、見抜いて いる と も いえる ような 、うっすら と 微笑み ながら の ホロ の その 言葉 は 、まるで 長年 来 の 友人 の 頼み ごと の ようだ。 |||||し ない||しんじて||||みぬいて||||||||ほおえみ||||||ことば|||ながねん|らい||ゆうじん||たのみ||| His words with a slight smile, as if he believed that Lawrence would not do such a thing, or as if he knew that Lawrence would not do such a thing, sounded like a request from a friend who has been with him for many years.

ロレンス は 正直 ホロ が 本物 な の か どう な の か 依然と して 判断 し かねて いた が 、そんな 様子 を 見る 限り 少なくとも 悪 そうな やつ に は 思え ない。 ||しょうじき|||ほんもの||||||||いぜん と||はんだん||||||ようす||みる|かぎり|すくなくとも|あく|そう な||||おもえ| Lawrence was still unable to determine whether Hollo was the real deal or not, but from the looks of him, he didn't seem like a bad guy in the least. それ に 、この 不思議な 娘 と 会話 を する こと が ロレンス に は 楽しく なって きて いた。 |||ふしぎな|むすめ||かいわ||||||||たのしく||| Moreover, Lawrence was beginning to enjoy conversing with this mysterious girl.

しかし 、そこ で すぐに ホロ の 言葉 に うなずける ほど ロレンス も 商人 根性 を 忘れた わけで は ない。 ||||||ことば||||||しょうにん|こんじょう||わすれた||| However, Lawrence has not forgotten his merchant spirit enough to immediately agree with Hollo's words. 商人 に 必要な の は 神 を も 恐れない 大胆 さ と 、そして 身内 すら 疑う 慎重 さ だ。 しょうにん||ひつような|||かみ|||おそれ ない|だいたん||||みうち||うたがう|しんちょう|| A merchant needs to be bold and godless, and cautious enough to question even his own people.

ロレンス は しばし 考え 、それ から 静かに 口 を 開いて いた。 |||かんがえ|||しずかに|くち||あいて| Lawrence thought for a moment, then quietly opened his mouth.

「即断 は できない な」 そくだん||でき ない| I can't make any quick decisions.

不平 を もらす か と も 思った が 、それ は ホロ を 見くびり すぎ と いう もの だった。 ふへい||||||おもった||||||みくびり||||| I thought I might complain, but that was just too much of an underestimation of Holo. ホロ は もっともだ と うなずいた。 Hollo nodded in agreement.

「用心深い の は 良い こと じゃ。 ようじんぶかい|||よい|| It's good to be cautious. しかし 、わっち の人 を 見る 目 は 確かな はずじゃ。 ||の じん||みる|め||たしかな| However, I am sure that you have a good eye for people. ぬし は人 の 頼み を 無 碍 に 断る ような 心 の 冷たい やつで は ない と 信じ とる。 |は じん||たのみ||む|がい||ことわる||こころ||つめたい|||||しんじ| I believe that you are not a cold-hearted person who refuses requests from others. まあ 、わっち は 狼 じゃ けど の」 |||おおかみ||| Well, I'm not a wolf.

しかし 、そんな 言葉 は いたずらっぽい 笑み を 浮かべ ながら だ。 ||ことば|||えみ||うかべ|| But such words are said with a mischievous smile. それ から 再び 横 に なる と も そ も そと 毛皮 の 中 に 潜って いった が 、もちろん さっき の よう に 不貞腐れる よう に で は ない。 ||ふたたび|よこ||||||||けがわ||なか||くぐって||||||||ふてくされる||||| Then I lay down again and began to climb inside my fur, but not, of course, in the same unfaithful manner as before. これ で 今日 の 話 は 終わり だ 、と 言わんばかり だ。 ||きょう||はなし||おわり|||いわんばかり| It was as if to say, "This is the end of the story for today.

相変わらず 会話 の 主導 権 を 握られて いる ようで 、ロレンス は 苦々し げ に 、しかし 笑わ ざる を 得ない そんな ホロ の 様子 を 見つめて いた。 あいかわらず|かいわ||しゅどう|けん||にぎられて|||||にがにがし||||わらわ|||え ない||||ようす||みつめて| Lawrence was still in control of the conversation, and he looked at Holo with a bitter look on his face, but couldn't help but laugh.

が 、ふと ホロ の 耳 が 動いた か と 思う と 毛皮 の 中 から 顔 が 出て きて 、ロレンス の ほう を 向いた のだった。 ||||みみ||うごいた|||おもう||けがわ||なか||かお||でて||||||むいた| But then the holo's ears twitched, and his face came out of his fur and turned toward Lawrence.

「よもや 外 で 寝ろ と か 言わ ぬ よ な? |がい||ねろ|||いわ||| "You wouldn't tell me to sleep outside, would you?

言える わけ が ない 、と いう こと を わかりきって 聞いて いる ホロ の 様子 に ロレンス は 肩 を すくめて 返事 を する と 、ホロ は くすくす と 笑い ながら 毛皮 の 中 に 戻って いった。 いえる|||||||||きいて||||ようす||||かた|||へんじ||||||||わらい||けがわ||なか||もどって| Lawrence shrugged his shoulders as he listened, knowing full well that there was no way he could say anything, and when he responded, Holo chuckled and went back into his fur.

この 分 だ と さっき まで の やり取り の うち 、いくらか は ホロ の 演技 な の かも しれ ない。 |ぶん||||||やりとり|||||||えんぎ||||| At this rate, some of the previous exchanges may have been staged by Hollo. 例えば 囚 われ の 姫 は かく や と いった 感じと か。 たとえば|しゅう|||ひめ||||||かんじと| For example, the Princess of Captivity is a Kakaya.

それ でも 村 で の 不満 と か 、故郷 に 帰りたい と 言った 時 の あの 表情 まで も 噓 だ と は とても ロレンス に は 思え なかった。 ||むら|||ふまん|||こきょう||かえりたい||いった|じ|||ひょうじょう|||||||||||おもえ| But Lawrence could not believe that he had lied about his dissatisfaction in the village, or even the look on his face when he said he wanted to return home.

そして 、そこ を 噓 だ と 思わない と いう こと は 結果 と して ホロ を 本物 だ と 信じる こと だ し 、あれ が 悪魔 憑 き の 娘 の 単なる 思い込み だ と は とても 思え なかった。 ||||||おもわ ない|||||けっか|||||ほんもの|||しんじる||||||あくま|ひょう|||むすめ||たんなる|おもいこみ|||||おもえ| And to not lie about it would be to believe that the holo was real, and it was very hard to believe that it was just the imagination of a demon-possessed girl.

しかし 、ロレンス は ふと ため息 を ついて それ 以上 考える こと を 止める と 、立ち上がって 荷台 に 乗り込んだ。 ||||ためいき||||いじょう|かんがえる|||とどめる||たちあがって|にだい||のりこんだ However, Lawrence sighed, stopped thinking about it, and got up and climbed into the back of the truck. これ 以上 考えて いて も 何 か 新しい こと が わかる と は 思え なかった から で 、考えて も わからない 時 は 眠って 時間 を 置く に 限る から だ。 |いじょう|かんがえて|||なん||あたらしい||||||おもえ||||かんがえて||わから ない|じ||ねむって|じかん||おく||かぎる|| I didn't think I would be able to figure out anything new if I thought about it any longer, and when I couldn't figure it out, I would sleep and let time pass.

ホロ が いる と は いって も この 毛皮 は もともと ロレンス の もの な のだ。 ||||||||けがわ||||||| Despite the presence of Holo, the fur originally belonged to Lawrence. 持ち主 が 御者 台 で 布 に 包まって 寝る と いう の も 間抜けな 話 だ。 もちぬし||ぎょしゃ|だい||ぬの||くるまって|ねる|||||まぬけな|はなし| It is also foolish for the owner to sleep wrapped in cloths on the gosha-dai. ホロ に もう 少し 端に よる よう に と 言って から 、ロレンス も 毛皮 の 山 の 中 に もぐりこんだ。 |||すこし|はしたに|||||いって||||けがわ||やま||なか|| After telling Holo to stay a little closer to the edge, Lawrence climbed into the pile of furs.

背中 の 向こう から は ホロ の 小さな 息遣い が 聞こえて くる。 せなか||むこう|||||ちいさな|いきづかい||きこえて| From the other side of my back, I can hear the sound of Hollow's tiny breathing. ロレンス は 即断 できない など と 言った もの の 、明日 目 が 覚めて ホロ と ともに 商品 が 消えて い なければ ホロ を 旅 の 道連れ に して やって も よい と 思って いる。 ||そくだん|でき ない|||いった|||あした|め||さめて||||しょうひん||きえて|||||たび||みちづれ|||||||おもって| Although Lawrence said he could not make a quick decision, he was willing to let Hollow take him on the trip if he and Hollow woke up tomorrow and the merchandise had not disappeared.

それ に 、ロレンス 自身 ホロ が そんな こと を する ほど 小 悪党 で は ない と 思って いた し 、きっと そういう こと を する ならば ロレンス の 何もかも を 奪う ほど の こと を しでかして くれる だろう と 思って いた。 |||じしん||||||||しょう|あくとう|||||おもって|||||||||||なにもかも||うばう|||||||||おもって| Moreover, Lawrence himself did not think that Hollow was a small-time scoundrel who would do such a thing, and he was sure that if he did, he would do something to take everything away from Lawrence.

そう 考える と 、少し それ が 楽しみで は あった。 |かんがえる||すこし|||たのしみで|| I was looking forward to it a little.

なん に せよ 、自分 以外 の 何者 か と 眠る の は 久しぶりの こと だった のだ。 |||じぶん|いがい||なにもの|||ねむる|||ひさしぶりの||| At any rate, it had been a long time since he had slept with someone other than himself. それ が 鼻 が 曲がり そうな 獣 臭 の 中 、少し 甘い 香り の する 美しい 娘 と であれば 嬉しくない わけ が なかった。 ||はな||まがり|そう な|けだもの|くさ||なか|すこし|あまい|かおり|||うつくしい|むすめ|||うれしく ない||| If it was with a beautiful girl who smelled a little sweet amidst the nose-curling animal smell, I could not help but be happy.

そんな ロレンス の 単純な 心中 を 察した の か 、馬 が ぶる る と ため息 の よう に いなないた。 |||たんじゅんな|しんじゅう||さっした|||うま|||||ためいき|||| Perhaps sensing Lawrence's simple-mindedness, the horse whinnied as if sighing.

馬 も 、口 を 聞か ない だけ で人 の 考えて いる こと が わかる の かも しれ ない。 うま||くち||きか|||で じん||かんがえて|||||||| Even horses may be able to understand what people are thinking even if they don't talk to each other.

ロレンス は 、苦笑 し ながら 目 を 閉じた のだった。 ||くしょう|||め||とじた| Lawrence closed his eyes with a wry smile.

ロレンス の 朝 は 早い。 ||あさ||はやい Morning comes early for Lawrence. 一 日 を フル 活用 して 金 を 稼が なければ ならない 商人 達 は 総じて 朝 が 早い から だ。 ひと|ひ||ふる|かつよう||きむ||かせが||なら ない|しょうにん|さとる||そうじて|あさ||はやい|| Merchants, who have to make full use of their day to earn money, are generally early in the morning. しかし 、ロレンス が 朝もや の 中 目 を 覚ませば すでに ホロ は 起きて いて 、ロレンス の となり に 座りこんで なに か を ご そご そと して いた。 |||あさもや||なか|め||さませば||||おきて||||||すわりこんで|||||||| However, when Lawrence woke up in the morning light, Hollow was already awake, sitting next to Lawrence, fiddling with something about his task. 一瞬 、ロレンス の 思惑 が 外れる ような こと を して いる の か と も 思った が 、それ に して は 大胆だ。 いっしゅん|||おもわく||はずれる||||||||||おもった||||||だいたんだ For a moment, I thought Lawrence was doing something that would throw me off the track, but that was bold. ロレンス が 顔 を 上げて 肩 越し に 振り返れば 、どうやら ロレンス の 荷物 を あさって 服 を 見つけた ようで 、ちょうど 靴 紐 を 結んで いる ところ だった。 ||かお||あげて|かた|こし||ふりかえれば||||にもつ|||ふく||みつけた|||くつ|ひも||むすんで||| When Lawrence looked up and over his shoulder, it appeared that he had gone through Lawrence's luggage and found some clothes, and was just tying his shoelaces.

「おい 、それ は 俺 のだろう」 |||おれ| Hey, that's mine.

盗み を して いる わけで は ない に して も 、他人 の 持ち物 を 勝手に あさる の は 神 も 咎める 行為 だ。 ぬすみ||||||||||たにん||もちもの||かってに||||かみ||とがめる|こうい| Even if you are not stealing, God condemns the act of ransacking someone else's belongings.

ロレンス は 少し 責める よう に そう 言った が 、振り向いた ホロ は 少しも 悪びれる 様子 は なかった。 ||すこし|せめる||||いった||ふりむいた|||すこしも|わるびれる|ようす|| Lawrence said this in a slightly reproachful tone, but when Hollo turned around, he did not seem in the least bit offended.

「ん? あ 、起きた か や。 |おきた|| Oh, you're awake. これ どう じゃ。 How about this? 似合う かや」 にあう| A good fit."

ロレンス の 言葉 など 一向に かまわ ず 、ホロ は ロレンス の ほう に 向きなおる と 両腕 を 広げて そう 言った。 ||ことば||いっこうに|||||||||むきなおる||りょううで||ひろげて||いった He turned to Lawrence and held out his arms, saying, "I don't care what Lawrence says. その 上 、悪びれる どころ か 少し 得意 げ に して いる のだ。 |うえ|わるびれる|||すこし|とくい||||| Moreover, they are not only apologetic, they are a little proud of themselves. それ を 見る と 昨日 の ホロ の 取り乱しっぷり そのもの が 夢 の 中 の こと の ようだ し 、やはり ふてぶてしく 振る舞って いる ほう が 本来 の ホロ な のだろう。 ||みる||きのう||||とりみだしっぷり|その もの||ゆめ||なか||||||||ふるまって||||ほんらい|||| It seems to me that Holo's distraught behavior yesterday was only a dream, and he is the real Holo when he has the nerve to act like that.

ちなみに 、ホロ が 身 に まとって いる の は ロレンス が ちょっと した 町 の 富裕 商人 など と 商談 を する 時 の ため の 一 張 羅 だ。 |||み||||||||||まち||ふゆう|しょうにん|||しょうだん|||じ||||ひと|ちょう|ら| Incidentally, the holo is wearing a one-piece jacket that Lawrence wears when he does a little business with wealthy merchants in the town. 藍色 の 長袖 シャツ に 、流行 の 七 分 丈 の ベスト。 あいいろ||ながそで|しゃつ||りゅうこう||なな|ぶん|たけ||べすと Indigo-colored long-sleeved shirt and a fashionable three-quarter-length vest. それ に 麻 と 毛皮 を 折り合わ せた 珍しい ズボン に 、その 上 に 巻かれた 下半身 を すっぽり と 包む 腰 巻 と 、腰 巻 を 縛る 上等な 羊 の 皮 の 腰 帯。 ||あさ||けがわ||おりあわ||めずらしい|ずぼん|||うえ||まかれた|かはんしん||||つつむ|こし|かん||こし|かん||しばる|じょうとうな|ひつじ||かわ||こし|おび The rare trousers were made of a combination of linen and fur, with a waistcloth wrapped around the lower half of the body and a fine sheepskin waistband to bind the waistcloth. 靴 は なめし 皮 を 三重 に した 雪山 でも 耐えられる 重厚な こしらえ の 逸品 だ。 くつ|||かわ||みえ|||ゆきやま||たえられる|じゅうこうな|||いっぴん| The shoes are made of three layers of tanned leather and are made to withstand the rigors of the snowy mountains. その 上 から 熊 の 毛皮 の 良い ところ を 使った 外套 を 羽織る。 |うえ||くま||けがわ||よい|||つかった|がいとう||はおる Over this, he wears a cloak made from the best parts of bear fur.

行商人 は 、実用 的で 重厚な 作り の 衣服 を 誇り に する。 ぎょうしょう じん||じつよう|てきで|じゅうこうな|つくり||いふく||ほこり|| Vendors take pride in their practical and heavily made clothing. これ だけ の 物 を 揃える のに 弟子 の 頃 から 金 を 溜 め 続けて 十 年 かかった。 |||ぶつ||そろえる||でし||ころ||きむ||たま||つづけて|じゅう|とし| It took me ten years of accumulating money since I was an apprentice to acquire all of these items. これ を 着て 髭 を 整え 商談 に 臨めば 大抵 の者 は 一目 置いて くれる。 ||きて|ひげ||ととのえ|しょうだん||のぞめば|たいてい|の しゃ||いちもく|おいて| If you wear this to a business meeting with a clean-shaven face, most people will take one look at you.

それほど の 衣服 を ホロ は 身 に まとって いた。 ||いふく||||み||| Hollo was wearing that much clothing.

ただ 、怒る 気 に は なれ ない。 |いかる|き|||| I just can't bring myself to get angry.

明らかに サイズ の 大きい それ を 身 に つけた ホロ が 、それほど 可愛かった から だ。 あきらかに|さいず||おおきい|||み||||||かわいかった|| The reason was that the holo was so cute with its obviously large size.

「真っ黒で 上等な 熊 の 外套 じゃ。 まっくろで|じょうとうな|くま||がいとう| "A black, fine bear cloak. わっち の 髪 の 毛 が 茶色 だから よく 映える。 ||かみ||け||ちゃいろ|||はえる The brown hair on Wachi's head makes it look better. ただ 、この ズボン を わっち が 窄 くに は 尻尾 が 邪魔じゃ の。 ||ずぼん||||すぼ|||しっぽ||じゃまじゃ| The only problem is that the tail is in the way of me putting on these pants. 穴 あけて よい かや? あな||| Can I drill a hole?

さらりと 言う が 、ベテラン の 毛織 物 工 に 無理 を いって 作って もらった ズボン な のだ。 |いう||べてらん||けおり|ぶつ|こう||むり|||つくって||ずぼん|| Although it is easy to say, these pants were made by a veteran wool weaver who was forced to make them for me. 穴 を 開けたら おそらく もう 二度と 直ら ない。 あな||あけたら|||にどと|なおら| If you drill a hole in it, you probably won't be able to fix it again. ロレンス は 首 を 横 に 振った。 ||くび||よこ||ふった Lawrence shook his head. 力強く 、有無 を 言わ せ ぬ よう に。 ちからづよく|うむ||いわ|||| Be forceful, be assertive.

「ふう む。 まあ 、幸い サイズ が 大きい。 |さいわい|さいず||おおきい Well, fortunately, the size is large. なんとか いける じゃ ろ」 I'm sure you'll manage.

今 着て いる 服 を 全部 脱げ 、と 言わ れる こと など あり 得ない と いった 様子 の ホロ だった が 、このまま この 服 を 着て 逃げる わけじゃない だろう な と 、まさか と は 思い ながら ロレンス は 体 を 起こして ホロ を 注視 して いた。 いま|きて||ふく||ぜんぶ|ぬげ||いわ|||||え ない|||ようす|||||||ふく||きて|にげる|わけじゃ ない|||||||おもい||||からだ||おこして|||ちゅうし|| He was not sure that he would be asked to take off all of his clothes, but Lawrence sat up and watched him, hoping that he would not run away with his clothes on. 町 に 行って 叩き 売れば 、結構な 金額 に なる のだ。 まち||おこなって|たたき|うれば|けっこうな|きんがく||| If they went to the town and sold them, they could make quite a bit of money.

「ぬし は 根っから の 商人 の ようじゃ。 ||ねっから||しょうにん|| You seem to be a merchant from the bottom of your heart. 自分 の 顔 に 出る 表情 が どんな 効果 を 持つ かよう わかっと る」 じぶん||かお||でる|ひょうじょう|||こうか||もつ||| I know what effect the expressions on my face have."

笑い ながら ホロ は 言って 、ひょいと 荷台 から 飛び降りた。 わらい||||いって||にだい||とびおりた With a laugh, Hollo said, and jumped off the back of the truck.

その 動作 が あまりに も 自然で 不覚 ながら 反応 でき なかった。 |どうさ||||しぜんで|ふかく||はんのう|| The action was so natural that I couldn't react. あの まま 走り去られて いたら 追いつけ なかった かも しれ ない。 ||はしりさられて||おいつけ|||| If he had run off like that, we might not have been able to catch up with him.

ただ 、ロレンス の 体 が 動か なかった の は 、ホロ が 逃げる わけ が ない 、と いう 確信 が どこ か に あった から かも しれ なかった。 |||からだ||うごか||||||にげる||||||かくしん||||||||| However, Lawrence's body did not move, perhaps because he was convinced that Holo would not run away.

「逃げ やせ ん よ。 にげ||| There is no escape. 逃げる なら とっくに 逃げ とる」 にげる|||にげ| If I had to flee, I would have done so long ago.

ロレンス は 荷台 の 上 の 麦 に いったん 目 を やって から 、笑い ながら そんな こと を 言う ホロ に 視線 を 向ける。 ||にだい||うえ||むぎ|||め||||わらい|||||いう|||しせん||むける Lawrence glances at the barley on the back of the truck, then looks at Hollo, who laughs and says something like that. すると 、どうやら ロレンス の 背丈 に 合わせて 作られて いる 熊 の 毛皮 の 外套 を 着る に は 背丈 が 足りなかった ようで 、ホロ は 外套 を はずして 荷台 に 放り投げて きた。 ||||せたけ||あわせて|つくられて||くま||けがわ||がいとう||きる|||せたけ||たりなかった||||がいとう|||にだい||ほうりなげて| It seems that he was not tall enough to wear the bear fur cloak that was made to fit Lawrence's height, so he pulled off the cloak and threw it on the back of the truck. 昨日 は 月 明かり の 下 で 見た だけ だった から いまいち わから なかった が 、思って いた より も 小柄だ。 きのう||つき|あかり||した||みた||||||||おもって||||こがらだ I didn't get a good look at them yesterday because I only saw them under the moonlight, but they are smaller than I thought they would be. ロレンス は どちら か と いえば 長身 だ が 、ホロ は 頭 二 つ 分 くらい 優に 小さかった。 ||||||ちょうしん|||||あたま|ふた||ぶん||ゆうに|ちいさかった Lawrence was rather tall, but Horo was much smaller, about two heads.