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狼と香辛料 01 (Spice and Wolf), 狼 と 香辛料 01 (2)

狼 と 香辛料 01 (2)

そんな 情勢 な ので 教会 も 威厳 を 復活 さ せよう と 躍起な のだ。

「どこ の 商売 も 大変だ な」

ロレンス は 苦笑 して 、蜂蜜 菓子 を 口 に 放り込んだ のだった。

ロレンス が 広大な 麦畑 に 着く と 、もう 西 の 空 は 麦 より も 綺麗な 黄金色 だった。 遠く で 鳥 が 小さな 影 と なって 家路 を 急ぎ 、蛙 も 寝 に 入る こと を 告げて いる か の よう に そこかしこ で 鳴いて いた。

麦畑 は ほとんど 収穫 が 終わって いる ようで 、祭り は 近日 中 だろう。 早ければ 明後日 に は 行わ れる かも しれ ない。

ロレンス の 目の前 に 広がる の は この 地方 で は 結構な 収穫 高 を 誇る パスロエ の 村 の 麦畑 だ。 収穫 高 が 高ければ 村人 も そこそこ 裕福に なれる。 その 上 ここ 一体 を 管理 する エーレンドット 伯爵 が 近隣 に 名 が 轟く ほど の 変わり者 で 、貴族 の くせ に 土 いじり が 好きな せい で 自然 と 祭り に も 協力 的だから 、毎年 飲め や 歌え の 大騒ぎ の ようだ。

ただ 、ロレンス は それ に 参加 した こと が ない。 残念な こと に 部 外者 は 参加 できない のだ。

「いよう 、お つかれ さ ん」

そんな 村 の 麦畑 の 一角 で 荷車 に 麦 を 積んで いる 農夫 に 声 を かけた。 よく 実った 麦 だ。 先物 買い を した 連中 は ほっと 胸 を なでおろして いる こと だろう。

「お ー?

「ヤレイ さん は どの 辺 に いる か な」

「おお 、ヤレイ さん なら あっち の 、ほれ 、あっち で人 が たかってる だ ろ。 あの 畑 だ な。 今年 は ヤレイ さん の ところ は 若い者 ばっか で な。 手際 が 悪い せい で 今年 は あそこ の 畑 の 誰 か が 『ホロ 』だ な」

農夫 は 日焼け した 顔 に いっぱいの 笑み を 浮かべ ながら 楽し そうに 言う。 商人 に は 絶対 に いない 、裏表 の ない人間 だけ が 浮かべる こと の できる 笑顔 だ。

ロレンス は 農夫 に 商売 用 の 笑顔 で 礼 を 言って 、馬 を ヤレイ 達 の ほう に 向けた。

その 区画 は 農夫 の 言った 通り に人 が たかって いて 、畑 の 中 に 向かって 口々に 何 か を 叫んで いた。

それ は 最後 まで 作業 を して いる 連中 を 囃し立てて いる のだ が 、別に 作業 の 遅れ を 罵って いる わけで は ない。 罵る こと が すでに 祭り の 一部 な のだ。

ロレンス が のんびり と 近づいて いく と 、やがて 騒いで いる 内容 も 聞こえて きた。

「狼 が いる ぞ 狼 が いる ぞ!

「それ 、そこ に 狼 が 横たわって いる ぞ!

「最後に 狼 を 摑む の は 誰 だ 誰 だ 誰 だ!

皆 口々に 囃し立て 、酒 が 入って いる か の よう に 陽気に 笑って いる。 ロレンス が人垣 の 後ろ に 荷 馬車 を 止めて も 誰 も 気 が つか ない ほど だった。

しかし 、彼ら が 口 に して いる 狼 と は 実際 の 狼 で は ない。 実際 に 狼 が いたら さすが に 笑って いられない だろう。

狼 と は 豊作 の 神 の 化身 で 、村 の 連中 から 聞いた 話 で は 最後に 刈り取ら れる 麦 の 中 に いて 、それ を 刈り取った者 の 中 に 入り込む と いう 言い伝え らしい。

「最後 の 一 束 だ!

「刈り 過ぎない よう に 注意 しろ!

「欲張りの 手 から は ホロ が 逃げる ぞ!

「狼 を 摑 ん だ の は 誰 だ 誰 だ 誰 だ」

「ヤレイ だ ヤレイ だ ヤレイ だ!

ロレンス が 荷 馬車 から 降りて人垣 の 向こう を ひょいと 覗く と 、ちょうど ヤレイ が 最後 の 一 束 を 摑 ん だ ところ だった。 土 と 汗 に 汚れた 真っ黒な 顔 に 苦笑い を いっぱいに 浮かべ 、そして 一息 に 麦 を 刈り取る と 束 を 掲げて 空 に 向かって 叫んだ のだった。

「アオオオオオオオオオオオン」

「ホロ だ ホロ だ ホロ だ!

「アオオオオオオオオオオオン」

「狼 ホロ が 現れた ぞ! 狼 ホロ が 現れた ぞ!

「それ 捕まえろ 、やれ 捕まえろ!

「逃がす な 、追え!

それ まで 口々に 囃し立てて いた 男 達 が 、唐突に 走り出した ヤレイ を 追いかけて いった。

豊作 の 神 は 追い詰められ 、人間 に 乗り移って どこ か に 逃げよう と する。 それ を 捕らえて また 一 年 、この 畑 に いて もらう のだ。

実際 に 神 が いる の か どう か は わから ない。 ただ 、ここ の 土地 の者 達 は もう 長い 間 それ を 続けて いる。

ロレンス は 各地 を 飛び回る 行商人 だから 教会 の 教え を 頭 から 信じて は いない が 、迷信 深 さ や 信心深 さ は この 農夫 達 以上 だ。 苦労 して 山 を 越えて 町 に たどり着いたら 商品 が 暴落 して いた 、なんて こと は 日常茶飯事 だ。 迷信 深く も 信心深く も なる と いう もの だ。

だから 、熱心な 信徒 や 教会 関係者 が 見たら 目 を むく ような そんな 儀式 も ロレンス に は 気 に なら ない。

ただ 、ヤレイ が ホロ に なって しまった の に は 少し 困った。 こう なる と ヤレイ は 祭り が 終わる まで 穀物 庫 に ご馳走 と 共に 一 週間 近く 閉じ込められ 、話 が でき なく なる から だ。

「仕方ない……」

ロレンス は ため息 を ついて 荷 馬車 に 戻る と 、馬 を 村長 宅 の ほう に 向けた。

昼間 の 修道院 で の 話 を 報告 し が てら 、ヤレイ と 久しぶりに 酒 でも 酌み 交わし たかった のだ が 、荷台 に 積んで ある 毛皮 を さっさと 換金 しない と 別の 地方 で 買った 商品 の 代金 支払 日 が 迫って いる。 それ に 、山奥 の 村 から 持ってきた 麦 も 早く 売り込み に 行き たかった から 祭り が 終わる まで 待つ こと は でき なかった。

ロレンス は 祭り の 準備 を 指揮 して いた 村長 に 手短に 昼間 の こと を 伝える と 、泊まって いけ と いう 誘い を 固辞 して 村 を あと に した。

ロレンス は 昔 、まだ この 領地 に 今 の 伯爵 が 来る 前 、重税 が 課されて いる せい で 値段 が 高く なり あまり 市場 で人気 の なかった ここ の 麦 を 買い 、地道に 薄利 で 売って いた こと が あった。 それ は 別に この 土地 の者 達 に 恩 を 売る つもりで は なくて 、単純に 別の 安くて人気 の ある 麦 を 、他の 商人 達 と 競争 して まで 買い付け が できる ほど 資金 力 が なかった だけ な のだ が 、当時 の こと を 今 でも 感謝 されて いる。 ヤレイ は 、その 時 の 村 側 の 値段 交渉人 だった。

ヤレイ と 酒 が 飲めない こと は 残念だった が 、どの 道 ホロ が 出れば いくらも しない うち に 部 外者 を 追い出して 祭り は 佳境 に 入る。 泊めて もらって も すぐに 追い出されて しまう だけ だ。 その 疎外 感 は 、独り で 荷 馬車 の 上 に いる こと に 少し 寂し さ を 覚え 始めた 身 に は ちょっと 応える。

土産 に 持た された 野菜 を かじり ながら 進路 を 西 に 取り 、作業 を 終えて 村 の ほう に 帰って いく 陽気な 農夫 達 と すれ違う。

再び いつも の 独り 旅 に 戻る ロレンス は 、仲間 の いる 彼ら が 少し 羨ま しかった のだった。

ロレンス は 今年 で 二十五 に なる 行商人 だ。 十二 の 時 に 親戚 の 行商人 の 下 に ついて 十八 で 独り立ち を した。 行商人 と して は まだまだ 知らない 地域 の ほう が 多く 、これ から が 勝負 と いう 感じ だ。

夢 は 金 を 溜 め て どこ か の 町 に 店 を 持ちたい と いう 行商人 の 例 に 漏れない もの だった が 、その 夢 も まだまだ 遠 そうだ。 何 か チャンス が あれば そう でもない のだろう が 、生憎 と そんな もの は 大 商人 が 金 で 持っていって しまう。

それ に あっちこっち に 支払 期限 を こさ えて は 荷台 いっぱい の 商品 を 持って 移動 して いる のだ。 チャンス など 見え は して も とても 摑 む 余裕 など は ない。 行商人 に とって そんな もの は 空 に 浮かぶ 月 と 同じだった。

ロレンス は 空 を 見上げて 、綺麗な 満月 に ため息 を ついた。 最近 ため息 が 多い と 自覚 を して は いた が 、食って いく ため に がむしゃらに 頑張って きた 反動 な の か 、ある 程度 余裕 が 出て きた 最近 は つい 将来 の こと など を 考えて しまう。

それ に 加え 、頭 の 中 が 売 掛 債権 や 支払 期限 の こと で いっぱいで 、一刻 でも 早く 次の 町 に 行か なければ と 必死に なって いた 頃 に は 思い も し なかった こと が 、よく 頭 の 中 を 駆け巡って いる。

具体 的に 言えば 、今 まで 知り合って きた人 達 の こと だ。

度々 行商 で 訪れる 町 で 親しく なった 商人 達 や 、買い付け に 行った 先 で 仲良く なった 村人 達。 それ に 雪 に よる 足止め を 食らった 時 に 長 逗留 した 宿 で 好きに なった 女 中 の こと など など。

要するに人 恋しい と 思う こと が 多く なった のだ。

一 年 の ほとんど を 独り 荷 馬車 の 上 で 過ごす 行商人 に とって人 恋しく なる の は 職業 病 と も いえた が 、それ を ロレンス が 実感 し 始めた の は 最近 の こと だ。 それ まで は 俺 に 限って そんな こと ある もの か と うそぶいて いた。

しかし 、一人 で 何 日 も 馬 と 一緒に 過ごして いる と 、馬 が 話しかけて きて くれれば な 、など と 思って しまう こと も ある。

だから 、行商人 同士 の 会話 の 中 で 時折 耳 に する 荷 馬 が人間 に なった と いう 話 など も 、聞いた 当初 こそ 笑い飛ばして いた もの の 、最近 で は つい 本当な の か と 思って しまう。

馬 屋 の 主人 の 中 に は 若い 行商人 が 荷 馬 を 買う 時 、馬 が人間 に なって も いい よう に 雌 の 馬 を 買って おけ 、なんて 真顔 で 勧める者 も いる くらい だ。

ロレンス も そんな こと を 言われた 口 だった が 、もちろん 無視 して 力強い 雄 の 馬 を 購入 した。

その 馬 は 今 でも 元気に 働いて くれて いる ロレンス の 目の前 に いる 馬 な のだ が 、時折 やってくる人 恋し さ の 波 に 洗わ れる と ついつい 雌 の 馬 を 購入 する べきだった か と 思って しまう。

もっとも 、来る 日 も 来る 日 も 重い 荷物 を 運ば せて いる のだ。 例え人間 に なった と して も よく 聞く 話 の よう に 馬 の 持ち主 である 行商人 と 恋 に 落ちたり 、不思議な 力 で 行商人 に 幸運 を 授けて くれたり する と は とても 思え ない。

せいぜい が 休憩 と 給料 を 請求 される くらい だろう と 思う。

そう 考える と 途端 に 馬 は 馬 の まま で よい と 願い たく なる のだから 勝手な もの だ。 ロレンス は 独り 苦笑い を して 、自分 自身 を 呆れる よう に ため息 を ついた のだった。

そんな こと を して いる と やがて 川 に 突き当たり 、今日 は この 辺 で 野宿 を する こと に した。 いくら 満月 で 道 が 明るくて も 川 に 落ちない と は 限らない から だ。 そんな こと に なれば 一大事 どころ で は ない。 ロレンス は 首 を くくら なければ なら なく なる。 それ だけ は ごめん だった。

ロレンス が 手綱 を 引き 、止まる 合図 を 出す と 馬 も ようやく 訪れた 休憩 の 気配 に 気 が ついた ようだ。 二 、三 度 足踏み を して から 、ため息 の よう に いなないた。

ロレンス は 食べ 残した 野菜 を 馬 に 食わせ ながら 、荷台 から 桶 を 取って 川 で 水 を 汲 む と 馬 の 前 に 置いた。 ばっしゃ ばっしゃ と うま そうに 飲む ので ロレンス も 村 で もらった 水 を 飲む。

本当 は 酒 が よかった のだ が 、話し相手 が いない ところ で 酒 を 飲んで も 余計に 寂し さ が 募る だけ だ。 つい 深 酒 を しない と も 限らない ので 、ロレンス は さっさと 寝よう と 決断 した。

ここ に 来る まで の 間 、野菜 を かじって いたら 中途半端に 腹 が 膨れて しまった ので 干し 肉 を 一 切れ だけ 口 に くわえて 荷台 に 乗り込んだ。 いつも は 荷台 の 覆い を 兼ねて いる 麻布 に 包まって 寝る のだ が 、今日 は テン の 毛皮 が せっかく ある のだから それ の 中 で 寝ない 手 は ない。 さすが の ロレンス でも 多少 気 に なる 獣 臭 だ が 、寒い より か は ましだ。


狼 と 香辛料 01 (2) おおかみ||こうしんりょう Wolf and Spice 01 (2) Lobo y especias 01 (2) Loup et épices 01 (2) Wolf and Spice 01 (2) 香料与狼 01 (2) 狼与香料 01 (2)

そんな 情勢 な ので 教会 も 威厳 を 復活 さ せよう と 躍起な のだ。 |じょうせい|||きょうかい||いげん||ふっかつ||||やっきな| In such a situation, the church is desperate to restore its dignity. Dans une telle situation, l'église cherche désespérément à restaurer sa dignité.

「どこ の 商売 も 大変だ な」 ||しょうばい||たいへんだ| “Every business is tough.” "Chaque entreprise est difficile."

ロレンス は 苦笑 して 、蜂蜜 菓子 を 口 に 放り込んだ のだった。 ||くしょう||はちみつ|かし||くち||ほうりこんだ| Lawrence smiled wryly and threw the honey candy into his mouth. Lawrence sourit ironiquement et jeta le bonbon au miel dans sa bouche.

ロレンス が 広大な 麦畑 に 着く と 、もう 西 の 空 は 麦 より も 綺麗な 黄金色 だった。 ||こうだいな|むぎばたけ||つく|||にし||から||むぎ|||きれいな|こがねいろ| By the time Lawrence arrived at the vast wheat field, the western sky was already a more beautiful golden color than the wheat. Au moment où Lawrence arriva au vaste champ de blé, le ciel occidental était déjà d'une plus belle couleur dorée que le blé. 遠く で 鳥 が 小さな 影 と なって 家路 を 急ぎ 、蛙 も 寝 に 入る こと を 告げて いる か の よう に そこかしこ で 鳴いて いた。 とおく||ちょう||ちいさな|かげ|||いえじ||いそぎ|かえる||ね||はいる|||つげて||||||||ないて| In the distance, small shadows of birds hurried home, and frogs were chirping here and there as if to announce that it was time to go to sleep. Au loin, de petites ombres d'oiseaux se précipitaient vers la maison, et des grenouilles gazouillaient ici et là comme pour annoncer qu'il était temps d'aller dormir.

麦畑 は ほとんど 収穫 が 終わって いる ようで 、祭り は 近日 中 だろう。 むぎばたけ|||しゅうかく||おわって|||まつり||きんじつ|なか| It seems that the wheat fields are almost finished harvesting, and the festival will be soon. 早ければ 明後日 に は 行わ れる かも しれ ない。 はやければ|みょうごにち|||おこなわ|||| It may be done as early as the day after tomorrow.

ロレンス の 目の前 に 広がる の は この 地方 で は 結構な 収穫 高 を 誇る パスロエ の 村 の 麦畑 だ。 ||めのまえ||ひろがる||||ちほう|||けっこうな|しゅうかく|たか||ほこる|||むら||むぎばたけ| Spread out before Lawrence's eyes was the wheat field of the village of Pasroe, which boasts a good harvest in this region. 収穫 高 が 高ければ 村人 も そこそこ 裕福に なれる。 しゅうかく|たか||たかければ|むらびと|||ゆうふくに| If the harvest is high, the villagers can become reasonably wealthy. その 上 ここ 一体 を 管理 する エーレンドット 伯爵 が 近隣 に 名 が 轟く ほど の 変わり者 で 、貴族 の くせ に 土 いじり が 好きな せい で 自然 と 祭り に も 協力 的だから 、毎年 飲め や 歌え の 大騒ぎ の ようだ。 |うえ||いったい||かんり|||はくしゃく||きんりん||な||とどろく|||かわりもの||きぞく||||つち|||すきな|||しぜん||まつり|||きょうりょく|まと だから|まいとし|のめ||うたえ||おおさわぎ|| On top of that, Count Ehrendot, who manages this place, is so eccentric that his name is well-known in the neighborhood, and even though he's an aristocrat, he likes to mess around with the soil, so he's naturally cooperative at festivals, so every year it's like a fuss about drinking and singing. . En plus de cela, le comte Ehrendot, qui gère ce lieu, est tellement excentrique que son nom est bien connu dans le quartier, et même s'il est aristocrate, il aime jouer avec le sol, donc il est naturellement coopératif avec les festivals, donc chaque année c'est comme une histoire de boire et de chanter. .

ただ 、ロレンス は それ に 参加 した こと が ない。 |||||さんか|||| However, Lawrence has never participated in it. Cependant, Lawrence n'y a jamais participé. 残念な こと に 部 外者 は 参加 できない のだ。 ざんねんな|||ぶ|がい しゃ||さんか|でき ない| Unfortunately, outsiders are not allowed to participate. Malheureusement, les étrangers ne sont pas autorisés à participer.

「いよう 、お つかれ さ ん」 ||つか れ|| "Goodbye, good job" "Au revoir, bon travail"

そんな 村 の 麦畑 の 一角 で 荷車 に 麦 を 積んで いる 農夫 に 声 を かけた。 |むら||むぎばたけ||いっかく||にぐるま||むぎ||つんで||のうふ||こえ|| In the corner of a wheat field in the village, I approached a farmer who was loading wheat onto a cart. よく 実った 麦 だ。 |みのった|むぎ| It is well-ripened wheat. C'est du blé bien mûri. 先物 買い を した 連中 は ほっと 胸 を なでおろして いる こと だろう。 さきもの|かい|||れんちゅう|||むね||||| Futures buyers must be relieved. Les acheteurs de contrats à terme doivent être soulagés.

「お ー? |- Oh?

「ヤレイ さん は どの 辺 に いる か な」 ||||ほとり|||| Where is Mr. Yarei? « Où est M. Yarei ?

「おお 、ヤレイ さん なら あっち の 、ほれ 、あっち で人 が たかってる だ ろ。 ||||||||で じん|||| "Oh, if it's Yarei-san, there's a lot of people there, right? "Oh, si c'est Yarei-san, il y a beaucoup de monde là-bas, n'est-ce pas ? あの 畑 だ な。 |はたけ|| It's that Hatake, isn't it? 今年 は ヤレイ さん の ところ は 若い者 ばっか で な。 ことし|||||||わかい もの||| There are only young people at Yarei's place this year. 手際 が 悪い せい で 今年 は あそこ の 畑 の 誰 か が 『ホロ 』だ な」 てぎわ||わるい|||ことし||||はたけ||だれ||||| Because of my poor workmanship, this year someone in that field is 'Holo'." À cause de mon travail médiocre, cette année quelqu'un dans ce domaine est 'Holo'."

農夫 は 日焼け した 顔 に いっぱいの 笑み を 浮かべ ながら 楽し そうに 言う。 のうふ||ひやけ||かお|||えみ||うかべ||たのし|そう に|いう The farmer says happily with a big smile on his tanned face. Le fermier dit joyeusement avec un grand sourire sur son visage bronzé. 商人 に は 絶対 に いない 、裏表 の ない人間 だけ が 浮かべる こと の できる 笑顔 だ。 しょうにん|||ぜったい|||うらおもて||ない にんげん|||うかべる||||えがお| It's a smile that can never be seen by merchants, and can only be seen by people who have no front or back. C'est un sourire qui ne peut jamais être vu par les commerçants, et qui ne peut être vu que par des personnes qui n'ont ni devant ni dos.

ロレンス は 農夫 に 商売 用 の 笑顔 で 礼 を 言って 、馬 を ヤレイ 達 の ほう に 向けた。 ||のうふ||しょうばい|よう||えがお||れい||いって|うま|||さとる||||むけた Lawrence thanked the farmer with a business smile and turned his horse toward the Yarei.

その 区画 は 農夫 の 言った 通り に人 が たかって いて 、畑 の 中 に 向かって 口々に 何 か を 叫んで いた。 |くかく||のうふ||いった|とおり|に じん||||はたけ||なか||むかって|くちぐちに|なん|||さけんで| The plot was crowded with people, just as the farmer had said, shouting into the field. Le terrain était exactement comme le fermier l'avait dit, et les gens criaient quelque chose dans le champ.

それ は 最後 まで 作業 を して いる 連中 を 囃し立てて いる のだ が 、別に 作業 の 遅れ を 罵って いる わけで は ない。 ||さいご||さぎょう||||れんちゅう||はやしたてて||||べつに|さぎょう||おくれ||ののしって|||| It's touting those who are working to the end, but it's not really cursing the delay of the work. C'est vanter ceux qui travaillent jusqu'au bout, mais ce n'est pas vraiment maudire le retard des travaux. 罵る こと が すでに 祭り の 一部 な のだ。 ののしる||||まつり||いちぶ|| Swearing is already part of the festival. Jurer fait déjà partie du festival.

ロレンス が のんびり と 近づいて いく と 、やがて 騒いで いる 内容 も 聞こえて きた。 ||||ちかづいて||||さわいで||ないよう||きこえて| As Lawrence leisurely approached, he could hear the noise. Alors que Lawrence s'approchait lentement, je pouvais enfin entendre ce qu'ils faisaient de toute cette histoire.

「狼 が いる ぞ 狼 が いる ぞ! おおかみ||||おおかみ||| "There are wolves. There are wolves. There are wolves!

「それ 、そこ に 狼 が 横たわって いる ぞ! |||おおかみ||よこたわって|| There's a wolf lying there! "Oh, il y a un loup couché là-bas !

「最後に 狼 を 摑む の は 誰 だ 誰 だ 誰 だ! さいごに|おおかみ||摑 む|||だれ||だれ||だれ| "Who will grab the wolf in the end! « Qui attrapera le loup à la fin !

皆 口々に 囃し立て 、酒 が 入って いる か の よう に 陽気に 笑って いる。 みな|くちぐちに|はやしたて|さけ||はいって||||||ようきに|わらって| They were all cheering and laughing merrily, as if they had been drinking. Tout le monde s'encourageait et riait joyeusement comme s'il buvait de l'alcool. ロレンス が人垣 の 後ろ に 荷 馬車 を 止めて も 誰 も 気 が つか ない ほど だった。 |が ひとがき||うしろ||に|ばしゃ||とどめて||だれ||き||||| No one noticed when Lawrence parked the wagon behind the crowd. Personne n'a remarqué quand Lawrence a garé le chariot derrière la foule.

しかし 、彼ら が 口 に して いる 狼 と は 実際 の 狼 で は ない。 |かれら||くち||||おおかみ|||じっさい||おおかみ||| But the wolf they speak of is not the actual wolf. Mais le loup dont ils parlent n'est pas le vrai loup. 実際 に 狼 が いたら さすが に 笑って いられない だろう。 じっさい||おおかみ|||||わらって|いられ ない| If there were actually wolves, I wouldn't be able to stop laughing. S'il y avait vraiment des loups, je ne pourrais pas m'arrêter de rire.

狼 と は 豊作 の 神 の 化身 で 、村 の 連中 から 聞いた 話 で は 最後に 刈り取ら れる 麦 の 中 に いて 、それ を 刈り取った者 の 中 に 入り込む と いう 言い伝え らしい。 おおかみ|||ほうさく||かみ||けしん||むら||れんちゅう||きいた|はなし|||さいごに|かりとら||むぎ||なか|||||かりとった もの||なか||はいりこむ|||いいつたえ| A wolf is an incarnation of the god of a good harvest, and according to the stories I heard from the villagers, it seems that it is in the last grain of wheat that is harvested, and that it will enter into the reaper. Un loup est une incarnation du dieu de la bonne moisson, et d'après les récits que j'ai entendus des villageois, il semblerait qu'il soit dans le dernier grain de blé qui est récolté, et qu'il entrera dans la moissonneuse.

「最後 の 一 束 だ! さいご||ひと|たば| "It's the last bundle! « C'est le dernier lot !

「刈り 過ぎない よう に 注意 しろ! かり|すぎ ない|||ちゅうい| "Be careful not to cut too much! « Attention à ne pas trop couper !

「欲張りの 手 から は ホロ が 逃げる ぞ! よくばりの|て|||||にげる| The holo will flee from the hands of the greedy! "Holo s'enfuira de vos mains avides !

「狼 を 摑 ん だ の は 誰 だ 誰 だ 誰 だ」 おおかみ|||||||だれ||だれ||だれ| Who's got the wolf? Who's got the wolf? « Qui a attrapé le loup, qui, qui, qui ?

「ヤレイ だ ヤレイ だ ヤレイ だ! "It's yarei it's yarei it's yarei! "C'est yarei c'est yarei c'est yarei !

ロレンス が 荷 馬車 から 降りて人垣 の 向こう を ひょいと 覗く と 、ちょうど ヤレイ が 最後 の 一 束 を 摑 ん だ ところ だった。 ||に|ばしゃ||おりて ひとがき||むこう|||のぞく|||||さいご||ひと|たば|||||| When Lawrence dismounted from the wagon and peeked over the crowd, he saw that Yaray had just grabbed the last of the bundle. Lorsque Lawrence est sorti du chariot et a regardé par-dessus la foule, Yaray venait de saisir le dernier paquet. 土 と 汗 に 汚れた 真っ黒な 顔 に 苦笑い を いっぱいに 浮かべ 、そして 一息 に 麦 を 刈り取る と 束 を 掲げて 空 に 向かって 叫んだ のだった。 つち||あせ||けがれた|まっくろな|かお||にがわらい|||うかべ||ひといき||むぎ||かりとる||たば||かかげて|から||むかって|さけんだ| With a bitter smile on his black face, stained with dirt and sweat, he reaped the wheat in a single gulp, held up the bundle and shouted into the sky. Avec un sourire ironique sur son visage noir de jais taché de saleté et de sueur, il leva la gerbe et cria au ciel qu'il avait récolté le blé d'un seul souffle.

「アオオオオオオオオオオオン」 « Aoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo

「ホロ だ ホロ だ ホロ だ! It's a holo, a holo, a holo!

「アオオオオオオオオオオオン」

「狼 ホロ が 現れた ぞ! おおかみ|||あらわれた| The wolf, Holo, is here! 狼 ホロ が 現れた ぞ! おおかみ|||あらわれた|

「それ 捕まえろ 、やれ 捕まえろ! |つかまえろ||つかまえろ "Catch it, catch it, catch it! « Attrape-le, attrape-le !

「逃がす な 、追え! にがす||おえ Don't let him get away!

それ まで 口々に 囃し立てて いた 男 達 が 、唐突に 走り出した ヤレイ を 追いかけて いった。 ||くちぐちに|はやしたてて||おとこ|さとる||とうとつに|はしりだした|||おいかけて| The men, who had been cheering loudly until then, suddenly started running after Yarei. Les hommes qui se criaient dessus jusque-là ont poursuivi Yarei qui s'est soudain mis à courir.

豊作 の 神 は 追い詰められ 、人間 に 乗り移って どこ か に 逃げよう と する。 ほうさく||かみ||おいつめられ|にんげん||のりうつって||||にげよう|| The God of Harvest is cornered and tries to escape somewhere by possessing humans. Le Dieu de la récolte est acculé et tente de s'échapper quelque part en possédant des humains. それ を 捕らえて また 一 年 、この 畑 に いて もらう のだ。 ||とらえて||ひと|とし||はたけ|||| Catch it and let it stay in this field for another year. Attrapez-le et laissez-le rester dans ce champ pendant une autre année.

実際 に 神 が いる の か どう か は わから ない。 じっさい||かみ||||||||| Whether God actually exists or not is not known. Je ne sais pas s'il existe un vrai dieu. ただ 、ここ の 土地 の者 達 は もう 長い 間 それ を 続けて いる。 |||とち|の しゃ|さとる|||ながい|あいだ|||つづけて| But the locals here have been doing it for a long time. Mais les habitants ici le font depuis longtemps.

ロレンス は 各地 を 飛び回る 行商人 だから 教会 の 教え を 頭 から 信じて は いない が 、迷信 深 さ や 信心深 さ は この 農夫 達 以上 だ。 ||かくち||とびまわる|ぎょうしょう じん||きょうかい||おしえ||あたま||しんじて||||めいしん|ふか|||しんじんぶか||||のうふ|さとる|いじょう| Lawrence is a wandering merchant, so he doesn't believe in the church's teachings, but his superstition and piety are greater than those farmers. Lawrence est un marchand errant, donc il ne croit pas aux enseignements de l'église, mais sa superstition et sa piété sont plus grandes que ces fermiers. 苦労 して 山 を 越えて 町 に たどり着いたら 商品 が 暴落 して いた 、なんて こと は 日常茶飯事 だ。 くろう||やま||こえて|まち||たどりついたら|しょうひん||ぼうらく||||||にちじょうさはんじ| It is not uncommon to find that goods have plummeted in price after struggling over the mountains to reach a town. C'est un fait quotidien qu'après avoir lutté pour traverser les montagnes et atteindre la ville, les marchandises se sont effondrées. 迷信 深く も 信心深く も なる と いう もの だ。 めいしん|ふかく||しんじんぶかく|||||| You can become both superstitious and religious.

だから 、熱心な 信徒 や 教会 関係者 が 見たら 目 を むく ような そんな 儀式 も ロレンス に は 気 に なら ない。 |ねっしんな|しんと||きょうかい|かんけい しゃ||みたら|め|||||ぎしき|||||き||| That's why Lawrence doesn't care about such rituals that would make devout believers and church officials roll their eyes if they see them.

ただ 、ヤレイ が ホロ に なって しまった の に は 少し 困った。 ||||||||||すこし|こまった However, I was a little troubled that Yarei had become a holo. こう なる と ヤレイ は 祭り が 終わる まで 穀物 庫 に ご馳走 と 共に 一 週間 近く 閉じ込められ 、話 が でき なく なる から だ。 |||||まつり||おわる||こくもつ|こ||ごちそう||ともに|ひと|しゅうかん|ちかく|とじこめられ|はなし|||||| At this point, Yarei would be locked up in the granary with a feast for nearly a week until the festival was over, and he wouldn't be able to speak.

「仕方ない……」 しかたない I have no choice. ......"

ロレンス は ため息 を ついて 荷 馬車 に 戻る と 、馬 を 村長 宅 の ほう に 向けた。 ||ためいき|||に|ばしゃ||もどる||うま||そんちょう|たく||||むけた Lawrence sighed, returned to the cart, and turned his horse toward the chief's house.

昼間 の 修道院 で の 話 を 報告 し が てら 、ヤレイ と 久しぶりに 酒 でも 酌み 交わし たかった のだ が 、荷台 に 積んで ある 毛皮 を さっさと 換金 しない と 別の 地方 で 買った 商品 の 代金 支払 日 が 迫って いる。 ひるま||しゅうどういん|||はなし||ほうこく||||||ひさしぶりに|さけ||くみ|かわし||||にだい||つんで||けがわ|||かんきん|し ない||べつの|ちほう||かった|しょうひん||だいきん|しはらい|ひ||せまって| After reporting on the story at the monastery in the daytime, I wanted to drink with Yarei for the first time in a long time. ing. それ に 、山奥 の 村 から 持ってきた 麦 も 早く 売り込み に 行き たかった から 祭り が 終わる まで 待つ こと は でき なかった。 ||やまおく||むら||もってきた|むぎ||はやく|うりこみ||いき|||まつり||おわる||まつ|||| Moreover, the wheat from the village deep in the mountains could not wait until the festival was over because they wanted to sell it as soon as possible.

ロレンス は 祭り の 準備 を 指揮 して いた 村長 に 手短に 昼間 の こと を 伝える と 、泊まって いけ と いう 誘い を 固辞 して 村 を あと に した。 ||まつり||じゅんび||しき|||そんちょう||てみじかに|ひるま||||つたえる||とまって||||さそい||こじ||むら|||| Lawrence briefly told the chief of the village, who was in charge of the preparations for the festival, about the day, then firmly declined his invitation to stay the night and left the village.

ロレンス は 昔 、まだ この 領地 に 今 の 伯爵 が 来る 前 、重税 が 課されて いる せい で 値段 が 高く なり あまり 市場 で人気 の なかった ここ の 麦 を 買い 、地道に 薄利 で 売って いた こと が あった。 ||むかし|||りょうち||いま||はくしゃく||くる|ぜん|じゅうぜい||かされて||||ねだん||たかく|||いちば|で にんき|||||むぎ||かい|じみちに|はくり||うって|||| In the past, before the current Earl came to this territory, Lawrence used to buy the wheat from here, which was not very popular in the market due to the heavy tax imposed on it, and sold it at a low profit. rice field. それ は 別に この 土地 の者 達 に 恩 を 売る つもりで は なくて 、単純に 別の 安くて人気 の ある 麦 を 、他の 商人 達 と 競争 して まで 買い付け が できる ほど 資金 力 が なかった だけ な のだ が 、当時 の こと を 今 でも 感謝 されて いる。 ||べつに||とち|の しゃ|さとる||おん||うる||||たんじゅんに|べつの|やすくて にんき|||むぎ||たの|しょうにん|さとる||きょうそう|||かいつけ||||しきん|ちから|||||||とうじ||||いま||かんしゃ|| It's just that I didn't have the financial strength to compete with other merchants to buy another cheap and popular barley, without any particular intention to sell favors to the people of this land. However, I am still grateful for those days. ヤレイ は 、その 時 の 村 側 の 値段 交渉人 だった。 |||じ||むら|がわ||ねだん|こうしょう じん| Yarei was the village's price negotiator at the time.

ヤレイ と 酒 が 飲めない こと は 残念だった が 、どの 道 ホロ が 出れば いくらも しない うち に 部 外者 を 追い出して 祭り は 佳境 に 入る。 ||さけ||のめ ない|||ざんねんだった|||どう|||でれば||し ない|||ぶ|がい しゃ||おいだして|まつり||かきょう||はいる It was a pity that I couldn't drink alcohol with Yarei, but no matter what road Holo appeared, the outsiders were driven out in no time and the festival reached its climax. 泊めて もらって も すぐに 追い出されて しまう だけ だ。 とめて||||おいだされて||| Even if they let you stay, you will be kicked out immediately. その 疎外 感 は 、独り で 荷 馬車 の 上 に いる こと に 少し 寂し さ を 覚え 始めた 身 に は ちょっと 応える。 |そがい|かん||ひとり||に|ばしゃ||うえ|||||すこし|さびし|||おぼえ|はじめた|み||||こたえる That sense of alienation is a little bit of a response to the body that is starting to feel a little lonely being alone on the wagon.

土産 に 持た された 野菜 を かじり ながら 進路 を 西 に 取り 、作業 を 終えて 村 の ほう に 帰って いく 陽気な 農夫 達 と すれ違う。 みやげ||もた||やさい||||しんろ||にし||とり|さぎょう||おえて|むら||||かえって||ようきな|のうふ|さとる||すれちがう Nibbling on a vegetable souvenir, I turn west and pass cheerful farmers who have finished their work and are heading back toward the village.

再び いつも の 独り 旅 に 戻る ロレンス は 、仲間 の いる 彼ら が 少し 羨ま しかった のだった。 ふたたび|||ひとり|たび||もどる|||なかま|||かれら||すこし|うらやま|| Lawrence, who had returned to his usual solo travels, was a little envious of them with companions.

ロレンス は 今年 で 二十五 に なる 行商人 だ。 ||ことし||にじゅうご|||ぎょうしょう じん| Lawrence is a peddler who will be twenty-five this year. 十二 の 時 に 親戚 の 行商人 の 下 に ついて 十八 で 独り立ち を した。 じゅうに||じ||しんせき||ぎょうしょう じん||した|||じゅうはち||ひとりだち|| At the age of 12, he joined a relative's peddler and became independent at the age of 18. 行商人 と して は まだまだ 知らない 地域 の ほう が 多く 、これ から が 勝負 と いう 感じ だ。 ぎょうしょう じん|||||しら ない|ちいき||||おおく||||しょうぶ|||かんじ| As a peddler, there are still many areas I don't know about, so I feel like it's time for me to compete.

夢 は 金 を 溜 め て どこ か の 町 に 店 を 持ちたい と いう 行商人 の 例 に 漏れない もの だった が 、その 夢 も まだまだ 遠 そうだ。 ゆめ||きむ||たま||||||まち||てん||もちたい|||ぎょうしょう じん||れい||もれ ない|||||ゆめ|||とお|そう だ His dream was the same as that of a peddler who wants to accumulate money and open a store in a town somewhere, but that dream seems to be still far away. 何 か チャンス が あれば そう でもない のだろう が 、生憎 と そんな もの は 大 商人 が 金 で 持っていって しまう。 なん||ちゃんす||||でも ない|||あいにく|||||だい|しょうにん||きむ||もっていって| If there was a chance, it wouldn't be so, but unfortunately, such things are taken away with money by big merchants.

それ に あっちこっち に 支払 期限 を こさ えて は 荷台 いっぱい の 商品 を 持って 移動 して いる のだ。 ||||しはらい|きげん||こ さ|||にだい|||しょうひん||もって|いどう||| In addition, he is moving around with a cargo bed full of goods, pushing the deadline for payment here and there. チャンス など 見え は して も とても 摑 む 余裕 など は ない。 ちゃんす||みえ|||||||よゆう||| Even if I see a chance, I can't afford to grab it. 行商人 に とって そんな もの は 空 に 浮かぶ 月 と 同じだった。 ぎょうしょう じん||||||から||うかぶ|つき||おなじだった To the wandering trader, such things were the same as the moon in the sky.

ロレンス は 空 を 見上げて 、綺麗な 満月 に ため息 を ついた。 ||から||みあげて|きれいな|まんげつ||ためいき|| Lawrence looked up at the sky and sighed at the beautiful full moon. 最近 ため息 が 多い と 自覚 を して は いた が 、食って いく ため に がむしゃらに 頑張って きた 反動 な の か 、ある 程度 余裕 が 出て きた 最近 は つい 将来 の こと など を 考えて しまう。 さいきん|ためいき||おおい||じかく||||||くって|||||がんばって||はんどう|||||ていど|よゆう||でて||さいきん|||しょうらい|||||かんがえて| I am aware that I have been sighing a lot lately, but perhaps it is a reaction to working so hard to make ends meet, and now that I have some leeway, I find myself thinking about the future.

それ に 加え 、頭 の 中 が 売 掛 債権 や 支払 期限 の こと で いっぱいで 、一刻 でも 早く 次の 町 に 行か なければ と 必死に なって いた 頃 に は 思い も し なかった こと が 、よく 頭 の 中 を 駆け巡って いる。 ||くわえ|あたま||なか||う|かかり|さいけん||しはらい|きげん|||||いっこく||はやく|つぎの|まち||いか|||ひっしに|||ころ|||おもい|||||||あたま||なか||かけめぐって| In addition, my mind is racing with accounts receivable and payment deadlines, things that would have never occurred to me when I was desperate to get to the next town as quickly as possible.

具体 的に 言えば 、今 まで 知り合って きた人 達 の こと だ。 ぐたい|てきに|いえば|いま||しりあって|きた じん|さとる||| More specifically, the people I have come to know.

度々 行商 で 訪れる 町 で 親しく なった 商人 達 や 、買い付け に 行った 先 で 仲良く なった 村人 達。 たびたび|ぎょうしょう||おとずれる|まち||したしく||しょうにん|さとる||かいつけ||おこなった|さき||なかよく||むらびと|さとる The merchants who became close friends in the towns they often visit, and the villagers who became friends at the places they went shopping. それ に 雪 に よる 足止め を 食らった 時 に 長 逗留 した 宿 で 好きに なった 女 中 の こと など など。 ||ゆき|||あしどめ||くらった|じ||ちょう|とうりゅう||やど||すきに||おんな|なか|||| Also, when I was stranded in the snow, I fell in love with the maid at the inn where I stayed for a long time.

要するに人 恋しい と 思う こと が 多く なった のだ。 ようするに じん|こいしい||おもう|||おおく|| In short, I miss people a lot.

一 年 の ほとんど を 独り 荷 馬車 の 上 で 過ごす 行商人 に とって人 恋しく なる の は 職業 病 と も いえた が 、それ を ロレンス が 実感 し 始めた の は 最近 の こと だ。 ひと|とし||||ひとり|に|ばしゃ||うえ||すごす|ぎょうしょう じん||とって じん|こいしく||||しょくぎょう|びょう|||||||||じっかん||はじめた|||さいきん||| For a peddler who spends most of the year alone in a wagon, it could be said that being lonely is an occupational disease, but Lawrence has only recently begun to realize it. それ まで は 俺 に 限って そんな こと ある もの か と うそぶいて いた。 |||おれ||かぎって|||||||| Until then, I had been pretending that such a thing was possible only for me.

しかし 、一人 で 何 日 も 馬 と 一緒に 過ごして いる と 、馬 が 話しかけて きて くれれば な 、など と 思って しまう こと も ある。 |ひとり||なん|ひ||うま||いっしょに|すごして|||うま||はなしかけて||||||おもって|||| However, after spending so many days alone with a horse, one sometimes wishes the horse would talk to you.

だから 、行商人 同士 の 会話 の 中 で 時折 耳 に する 荷 馬 が人間 に なった と いう 話 など も 、聞いた 当初 こそ 笑い飛ばして いた もの の 、最近 で は つい 本当な の か と 思って しまう。 |ぎょうしょう じん|どうし||かいわ||なか||ときおり|みみ|||に|うま|が にんげん|||||はなし|||きいた|とうしょ||わらいとばして||||さいきん||||ほんとうな||||おもって| That's why, when I first heard stories like that of a packhorse becoming a human being that I occasionally heard in conversations between peddlers, I laughed it off, but lately I've been wondering if it's true.

馬 屋 の 主人 の 中 に は 若い 行商人 が 荷 馬 を 買う 時 、馬 が人間 に なって も いい よう に 雌 の 馬 を 買って おけ 、なんて 真顔 で 勧める者 も いる くらい だ。 うま|や||あるじ||なか|||わかい|ぎょうしょう じん||に|うま||かう|じ|うま|が にんげん|||||||めす||うま||かって|||まがお||すすめる もの|||| There are even some stable owners who, with a straight face, recommend that when a young peddler buys a pack horse, he should buy a female horse in case the horse turns into a human.

ロレンス も そんな こと を 言われた 口 だった が 、もちろん 無視 して 力強い 雄 の 馬 を 購入 した。 |||||いわれた|くち||||むし||ちからづよい|おす||うま||こうにゅう| Lawrence, who had also been told such a thing, of course ignored it and bought a powerful male horse.

その 馬 は 今 でも 元気に 働いて くれて いる ロレンス の 目の前 に いる 馬 な のだ が 、時折 やってくる人 恋し さ の 波 に 洗わ れる と ついつい 雌 の 馬 を 購入 する べきだった か と 思って しまう。 |うま||いま||げんきに|はたらいて|||||めのまえ|||うま||||ときおり|やってくる じん|こいし|||なみ||あらわ||||めす||うま||こうにゅう|||||おもって| That horse is still in front of Lawrence, who is still working energetically, but when the occasional wave of loneliness wash over me, I can't help but wonder if I should have bought a female horse. put away.

もっとも 、来る 日 も 来る 日 も 重い 荷物 を 運ば せて いる のだ。 |くる|ひ||くる|ひ||おもい|にもつ||はこば||| But they have to carry heavy loads day in and day out. 例え人間 に なった と して も よく 聞く 話 の よう に 馬 の 持ち主 である 行商人 と 恋 に 落ちたり 、不思議な 力 で 行商人 に 幸運 を 授けて くれたり する と は とても 思え ない。 たとえ にんげん|||||||きく|はなし||||うま||もちぬし||ぎょうしょう じん||こい||おちたり|ふしぎな|ちから||ぎょうしょう じん||こううん||さずけて||||||おもえ| Even if it were to become a human, it's hard to imagine that it would fall in love with the peddler who owns the horse, as is often the case, or use a mysterious power to bestow good luck on the peddler.

せいぜい が 休憩 と 給料 を 請求 される くらい だろう と 思う。 ||きゅうけい||きゅうりょう||せいきゅう|さ れる||||おもう I think at most I'll be asked to take a break and pay.

そう 考える と 途端 に 馬 は 馬 の まま で よい と 願い たく なる のだから 勝手な もの だ。 |かんがえる||とたん||うま||うま||||||ねがい||||かってな|| When you think of it that way, you instantly want to wish the horse would stay a horse. ロレンス は 独り 苦笑い を して 、自分 自身 を 呆れる よう に ため息 を ついた のだった。 ||ひとり|にがわらい|||じぶん|じしん||あきれる|||ためいき||| Lawrence laughed to himself and sighed in disgust at himself.

そんな こと を して いる と やがて 川 に 突き当たり 、今日 は この 辺 で 野宿 を する こと に した。 |||||||かわ||つきあたり|きょう|||ほとり||のじゅく||||| As we were doing this, we eventually came to a river and decided to camp out here for the night. いくら 満月 で 道 が 明るくて も 川 に 落ちない と は 限らない から だ。 |まんげつ||どう||あかるくて||かわ||おち ない|||かぎら ない|| Even if the moon is full and the path is bright, there is no guarantee that they won't fall into the river. そんな こと に なれば 一大事 どころ で は ない。 ||||いちだいじ|||| Such a situation would be nothing short of a disaster. ロレンス は 首 を くくら なければ なら なく なる。 ||くび|||||| Lawrence will have to hang himself. それ だけ は ごめん だった。 I was sorry about that.

ロレンス が 手綱 を 引き 、止まる 合図 を 出す と 馬 も ようやく 訪れた 休憩 の 気配 に 気 が ついた ようだ。 ||たづな||ひき|とまる|あいず||だす||うま|||おとずれた|きゅうけい||けはい||き||| When Lawrence pulled on the reins and gave the signal to stop, the horses seemed to finally notice the rest that had come. 二 、三 度 足踏み を して から 、ため息 の よう に いなないた。 ふた|みっ|たび|あしぶみ||||ためいき|||| He stamped his foot a couple of times and then whined with a sigh.

ロレンス は 食べ 残した 野菜 を 馬 に 食わせ ながら 、荷台 から 桶 を 取って 川 で 水 を 汲 む と 馬 の 前 に 置いた。 ||たべ|のこした|やさい||うま||くわせ||にだい||おけ||とって|かわ||すい||きゅう|||うま||ぜん||おいた While feeding the leftover vegetables to the horses, Lawrence took a pail from the back of the truck, filled it with water from the river, and placed it in front of the horses. ばっしゃ ばっしゃ と うま そうに 飲む ので ロレンス も 村 で もらった 水 を 飲む。 ||||そう に|のむ||||むら|||すい||のむ He drinks so happily that even Lawrence drinks water from the village.

本当 は 酒 が よかった のだ が 、話し相手 が いない ところ で 酒 を 飲んで も 余計に 寂し さ が 募る だけ だ。 ほんとう||さけ|||||はなしあいて|||||さけ||のんで||よけいに|さびし|||つのる|| I really wanted to have a drink, but having a drink without someone to talk to would only make me feel even more lonely. つい 深 酒 を しない と も 限らない ので 、ロレンス は さっさと 寝よう と 決断 した。 |ふか|さけ||し ない|||かぎら ない|||||ねよう||けつだん| He decided to go to bed at once.

ここ に 来る まで の 間 、野菜 を かじって いたら 中途半端に 腹 が 膨れて しまった ので 干し 肉 を 一 切れ だけ 口 に くわえて 荷台 に 乗り込んだ。 ||くる|||あいだ|やさい||||ちゅうとはんぱに|はら||ふくれて|||ほし|にく||ひと|きれ||くち|||にだい||のりこんだ I was halfway through chewing on some vegetables when I got here, so I put a piece of dried meat in my mouth and climbed into the back of the truck. いつも は 荷台 の 覆い を 兼ねて いる 麻布 に 包まって 寝る のだ が 、今日 は テン の 毛皮 が せっかく ある のだから それ の 中 で 寝ない 手 は ない。 ||にだい||おおい||かねて||あざぶ||くるまって|ねる|||きょう||||けがわ|||||||なか||ね ない|て|| Usually I sleep wrapped in the linen cloth that serves as a cover for the back of the truck, but today I have a marten fur, so there's no way I won't sleep in it. さすが の ロレンス でも 多少 気 に なる 獣 臭 だ が 、寒い より か は ましだ。 ||||たしょう|き|||けだもの|くさ|||さむい|||| Even Lawrence could smell the animal odor, but it was better than the cold.