( 紗 霧 ( さ ぎり ) ) お かえり なさい
お … おか …
( 紗 霧 ) お かえり なさい 兄さん !
お かえり なさい 兄さん
違う !
( 深呼吸 )
お かえり なさい 兄さん
あっ
よ しっ
あ あっ
( 正宗 ( まさ むね ) ) あっ
( 心臓 の 音 ) ( 紗 霧 ) あっ ああ …
あっ …
( 鍵 が 開く 音 ) ( 紗 霧 ) ん っ
ただいま あっ
まあ そう だ よ な
紗 霧 海 の お土産 ここに 置 い て … お っ
( 紗 霧 ) お かえり ( 正宗 ) ああ
ごめん ね
ん ? 何 が ?
( 紗 霧 ) 何でもない
それ より どう だった ? 海 … 合宿 !
( 正宗 ) ああ 楽しかった ぞ
仕事 も かなり 進 ん だ し
( 紗 霧 ) ふ ー ん
( 正宗 ) あっ それ と … これ
わ っ !
あ … 麦わら 帽子 ?
夏 っぽい だ ろ ?
えっ と こんな 言い 方 逆 効果 かも だ けど さ
いつか お前 が 外 に 出 られる よう に なったら …
一緒 に 海 に 行 こ う ぜ
( 紗 霧 ) う … N ( 正宗 ) ん ?
ん っ ! ? さ さ さ … 紗 霧 !
お …
ん ? エ … エッチ な 勘違い し ない で
水着 だ から !
( 正宗 ) へ っ ! ?
ど … どう ? 似合う ?
( 正宗 ) あっ ええ と …
はい おしまい !
あー !
感想 は その うち 本番 の 時 に
ああ
いつか 一緒 に 行 こ う な
♪~
~♪
( 紗 霧 の 鼻歌 )
( 鼻歌 )
ヘヘッ
( 紗 霧 の 笑い声 )
あー 明日 発売 ! うれしい ~ ! フフッ
( ノック ) ( 紗 霧 ) あっ
( 正宗 ) エロ マンガ 先生 ! エロ マンガ 先生 !
そんな 名 前 の 人 知ら ない !
おっと
何 ?
ついに 明日 俺 たち の 新作 の 発売 日 だ
( 紗 霧 ) うん
アキバ の 本屋 で
和泉 ( いずみ ) マサムネ フェア を やって くれる ん だ って
一緒 に 見 に 行か ない か ?
一緒 ?
( 正宗 ) いって き ま ー す
( 紗 霧 ) 一緒 って こういう こと だった ん だ
兄妹 デート だ な
バ … バカ
( 正宗 ) これ で 俺 も 3 シリーズ 目 か
デビュー し て から 3 年 長かった よう な 短かった よう な
( 紗 霧 ) 兄さん が 小説 を 書き 始め た の って …
( 正宗 ) 5 年 くらい 前 か なあ
当時 は お袋 が 亡くなった ばかり で 家 ん 中 暗く て さ
( 正宗 の 父 ) 正宗
さみしい か ?
僕 …
さみしく ない 俺 は 大丈夫 !
そう か
( 正宗 ) でも 分から ない ん だ
家族 の ため に 何 を し たら いい か
( 正宗 ) あっ ( 正宗 の 父 ) お前 が 笑って ―
楽しく 暮らし てりゃ あ それ だけ で いい
お前 が 幸せ なら 俺 たち も 幸せ だ
家族 な ん だ から な
お 母さん も ?
( 正宗 の 父 ) ああ
分かった
( 正宗 ) それ から ―
好き な こと 見つけ なきゃ って いろいろ やった
どれ も 面白かった けど 夢中 に は ―
なれ なかった な
そんな 時 ―
ネット で 小説 を 書 い て いる 人 たち を 見つけ た ん だ
楽し そう に さ
で これ だったら も しか して って
ハマ った ?
うん ! めちゃくちゃ 楽しく て さ
ふ ー ん 何で ?
( 正宗 ) きっかけ が あって
へえ そう な ん だ
( 正宗 ) ちなみに 紗 霧 は その ころ 何 やって た ん だ ?
( 紗 霧 ) 登校 拒否
( 正宗 ) う っ
だって !
お 父さん と お 母さん が 離婚 し た あと ―
しばらく 学校 に 行って なかった
( 正宗 ) しばらく って こと は ―
その あと 立ち直って 学校 行く よう に なった ん だ ?
( 紗 霧 ) うん きっかけ が あって 小学校 は ちゃんと 行って た
( 正宗 ) フッ 中学校 も ちゃんと 行 こ う な
その うち
( 正宗 ) で その きっかけ って ?
フフッ 秘密
( ノック )
( 紗 霧 の 母 ) 紗 霧 学校 遅れ ちゃ う ぞ
フゥ …
( 紗 霧 ) ふ ー ん … あんまり
お っ
( 紗 霧 の 母 ) ん …
( 紗 霧 ) ん ー …
すご っ
何 だ こいつ
( 男の子 ) 昨日 の 大相撲 で さ 浜 ( はま ) の 海 ( うみ ) が 新 十 両 に …
( 紗 霧 の 鼻歌 )
あ … 何 だ こいつ
なにせ 初めて 書 い た 小説 だった から ―
今 より も ずっと 下手くそ で 痛々しく て
でも 楽しかった な
「 勇者 マサムネ の 冒険 」 でしょ ?
ん ! ? お前 も 読 ん で た の か よ
あ … あの 作品 の こと は すぐに 忘れる ん だ いい な !
えっ ! ?
俺 は 勇者 マサムネ だ !
う お ー !
必殺 ! 雷神 !
斬 滅 剣 !
うわ ー ! やめろ ー !
( 笑い声 )
( 紗 霧 ) ハハハッ
ついに …
よし ! イッテ …
ヘヘッ
フッ … ヒヒッ
( 紗 霧 ) おお … おお っ !
よ ー し !
ん ?
あっ !
ああ …
フフッ …
ひ ゃっ ほ ー ! お 父さん !
俺 プロ の 小説 家 に なる !
ハァ ハァ ハァ ハァ …
そりゃ また 突然 だ な 何 か あった の か ?
気づ い ちゃ った ん だ 実は 俺 天才 だった ん だ よ !
あ あっ …
クッ … ハハハハハ …
何で 笑う ん だ よ !
ああ いや すま ん
そう だ ちょっと 待って ろ
さっき 届 い た ばっ か な ん だ けど お前 に やる よ
( 正宗 ) えっ でも …
プロ の 小説 家 に なる ん だ 必要 だ ろ
うん !
おお っ 超 かっこいい !
ヒッヒヒ
( 正宗 ) それ が 小説 に ハマ った きっかけ
そ … そう だった ん だ
俺 が 初めて 書 い た 小説 を 面白い って 言って くれ た 人 が い た
俺 が 作った キャラクター に 絵 を つけ て くれ た 人 が い た
すごく うれしく て めちゃくちゃ 楽しく て
だから 俺 は プロ を 目指し た ん だ
小説 サイト の 掲示板 と メール だけ の つながり だった けど
( 紗 霧 ) フフ フッ
( 正宗 ) 友達 だった と 思う
( 鳥 の さえずり )
( 紗 霧 ) ん ん … あっ
( 女の子 ) 昨日 の ドラマ 見 た ?
( 女の子 ) 見 た 見 た ! あの 主役 って さ この 間 …
( 紗 霧 ) ん …
フゥ …
あ …
( 正宗 ) 俺 の 新作 もう 読 ん だ ?
( 紗 霧 ) まだ 今 起き た とこ
違えよ えっ と …
( 紗 霧 ) だ … 大学生
( 正宗 ) へ ー 大人 だった ん だ
( 紗 霧 ) お … おう ! そっち は ?
( 紗 霧 ) へえ ー 年下 だ ね
( 男の子 ) ねえ ねえ お 母さん
( 母親 ) は いはい なあ に ? ( 男の子 の 笑い声 )
僕 今日 ハンバーグ が 食べ たい !
( 母親 ) そう ね スーパー に 行って み て ―
ひき肉 が 安かったら ね
( 紗 霧 ) また イラスト 描 い て やった ぞ
( 正宗 ) あ …
( 正宗 ) マジ で ? サンキュー
なあ なあ また 小説 に くっつけ て アップ し て いい ?
( 正宗 ) そんな の 関係 ねえ よ 俺 め っちゃ 好き だ し
( 紗 霧 ) そ っか じゃ もっと 描 い て やる
ありがたく 思えよ
( 紗 霧 ) って か どう せ お前 の 小説 俺 以外 誰 も 読 ん で ない もん な
( 正宗 ) それ を 言う な よ
それ に 最近 ちょっと ずつ 読 ん で くれる 人 が 増え て き た から
( 正宗 ) 俺 の 小説 が 面白い ん だ って !
( 紗 霧 ) ん ん …
( 紗 霧 の 母 ) あっ つい …
あ あー もう !
ねえ 紗 霧
学校 行った ほう が 涼しい ん じゃ ない ?
( 紗 霧 ) 絶対 行か ない 暑い ほう が マシ
かたくな だ なあ
フフッ じゃ ー ん どう ? これ
こんな 絵 じゃ お パンツ なめ たく なら ない
そういう の どこ で 覚え た の ?
う ?
( 紗 霧 ) ん …
あ … そう いえ ば 紗 霧
最近 お 絵描き 頑張って る みたい じゃ ん
ママ が 教え て あげ よっ か ?
( 紗 霧 ) ん ー 別 に いい
えっ ?
あっ そう …
( 紗 霧 ) ん …
フゥ …
( 携帯 電話 の バイブ 音 ) ( 正宗 ) ん ?
( 紗 霧 ) お前 何で 小説 書こ う と 思った の ?
( 正宗 ) 突然 何 ?
あっ ん …
( 正宗 ) 俺 が 楽し そう に し て ない と ―
心配 する 人 が いる
だから 好き な こと 見つけ なく ちゃ って
( 紗 霧 ) 暗い 理由 そんな ん で お もし れ ー の ?
( 正宗 ) めちゃめちゃ 面白い あんた が 読 ん で くれ た から
( 紗 霧 ) あっ
あっ そ
う う …
( 紗 霧 ) い … いって き ま ー す
ん … え えっ ?
ええ ー ! ?
( 紗 霧 ) う …
( 正宗 ) ハハッ
( 紗 霧 ) フフフ …
( 正宗 ) ヒッヒヒヒヒ
ハハハ …
( 紗 霧 ) アハハ ハッ
( 女性 ) 卒業 おめでとう !
( 女の子 ) 私 中学生 に なって も バドミントン やろう か な
よっ
和泉 先生 応募 原稿 多 すぎ じゃ ない です か ね ?
ん ? あれ ?
フフン 天才 の 作品 だ よ ?
プロ の 小説 家 に なる ん だ から
( 正宗 の 父 ) ククッ す っ げ ー 自信
案外 お前 の 言う とおり に なる かも な
( 正宗 ) お 願い し ます !
( 紗 霧 ) 突然 何 ?
( 正宗 ) そ っか なら よかった
( 正宗 ) フッ
何 言って ん だ こいつ
( 紗 霧 ) 調子 乗 ん な 下手くそ
( 正宗 ) 俺 の 小説 面白い って 言った じゃ ん
( 正宗 ) なる よ なぜなら 俺 は 天才 だ から
ほんと に 何 言って ん だ こいつ
えっ
( 紗 霧 ) ふ ー ん そ っか 本気 な ん だ
( 正宗 ) うん だ から …
そっち も プロ に なって よ
そん で また 俺 の キャラ を 描 い て よ
ニヒヒッ
( 正宗 ) この 1 年 す っ げ ー 楽しかった
初めて 感想 もらったり 初めて イラスト もらったり …
あんた の おかげ で たくさん 笑った
俺 も …
( 正宗 ) 明日 から もっと 楽しい こと を しよ う
プロ の 小説 家 に なって ―
超 面白い 本 を たくさん の 人 に 読ま せ て ―
毎日 笑って 暮らす ん だ !
なあ あんた も 一緒 に やろ う ぜ
で かい 口 たたき や がって
そんな ん できる か どう か 分か ん ね ー ぞ
( 正宗 ) できる よ 天才 の 俺 が 保証 する
わ あっ
( 紗 霧 ) もう お前 の 小説 の 絵 は 描か ない
え ?
何で ?
( 紗 霧 ) 今日 から 本気 で 絵 の 練習 を する
お前 が くれ た 夢 を かなえる ため に だ
ハッ !
う っ …
( 紗 霧 ) 一緒 に 本 を 作って 毎日 笑って 暮らす ん だ ろ ?
俺 は 天才 じゃ ない から な
お 子 様 と 遊 ん で やる ヒマ な ん か もう ねえ よ
( 泣き声 )
( 正宗 ) なら 俺 も もう 遊び で 小説 は 書か ない
( 紗 霧 ) 次に 連絡 する の は いつか …
( 正宗 ) お互い が 一人前 に なった 時 だ
じゃあ また な !
ああ また !
よ しっ やる か !
( 紗 霧 ) よ しっ
( 紗 霧 の 母 ) エヘヘ ヘヘ … アハハ …
私 に 絵 を 教え て
あっ ひ ゃ あ !
え ?
( 紗 霧 ) やって 来 た ぜ !
( 紗 霧 ) アー キー ハーバー ラー
アー キー ハーバー ラー
すごい アニメ で 見 た とおり !
先 に アキバ 観光 し たい
お 安い 御用 だ
( オタク ) あれ 見ろ よ
( オタク ) エロ マンガ だって フフッ
俺 もう 慣れ た よ エロ マンガ 先生
( 紗 霧 ) そんな 名 前 の 人 知ら ない !
アハハ …
( 紗 霧 ) おお っ !
( 正宗 ) おお っ !
俺 たち の 本 だ
うん
( 正宗 ) なあ 紗 霧
お前 と 再会 し て から 今 まで す っ げ ー 楽しかった
( 紗 霧 ) 私 も
( 正宗 ) たくさん 笑った
( 紗 霧 ) 私 も
和泉 先生
( 正宗 ) ん ?
( 紗 霧 ) あなた が くれ た 最初 の 夢 は かなった よ
今度 の 夢 も かなえよ う ね
あっ
ああ 必ず !
( 紗 霧 ) 次に 連絡 する の は いつか …
( 正宗 ) お互い が 一人前 に なった 時 だ
( 正宗 ) ああ 緊張 する
( 紗 霧 ) 今さら ジタバタ し て も しょうがない
( 正宗 ) 新刊 を 読 ん で くれ た 人 たち ―
ちゃんと 楽し ん で くれ てる かな
ハァ … 昔 の 自信 は ―
どこ 行っちゃ っ た の ?
なあ … 俺 ずっと お前 に 聞こ う と 思って た こと が …
( 桐 乃 ( きり の ) ) 見 て この ラノベ ! ( 正宗 ) え ?
( 桐 乃 ) 絶対 面白い って ( 正宗 ) ハッ …
( 桐 乃 ) イラスト も 超 かわいい し
め っちゃ 期待 でき そう
( 黒 猫 ( くろ ねこ ) ) 確かに その イラスト に は ―
きわめて 強力 な 魂 が こもって いる よう ね
でも 中身 は どう かしら ね
( 桐 乃 ) は あ ? ( 黒 猫 ) その 本 の 作者 は ―
この 私 で すら ギリギリ 知って いる 程度 の ―
マイナー な 作家 よ
しかも 今度 の 新作 で は ジャンル を 変え て いる 様子
果たして 面白い か どう か
兄さん 今 …
( 桐 乃 ) あんた が 買った クソ アニメ の ―
原作 小説 より は マシ だ っつ ー の
( 正宗 ) あなた に とって ―
俺 たち の 作った 小説 が ―
面白い もの で あり ます よう に
( 京 介 ( きょう すけ ) ) ん ?
♪~
( 正宗 ) ただ い ま ー
えっ えっ ?
紗 霧 お前 !
外 に … N 出 られる よう に なった の か ?
少し だけ
結構 無理 し てる
あ あっ くっ …
こっそり 練習 し て た の
そう か 頑張った な
ん … 子供 扱い し ない で
ほら 余計 な こ と 言う から 肝心 な こ と 言い 忘れ ちゃ った
お かえり なさい 兄さん
新刊 発売 おめでとう
ただいま 紗 霧
エロ マンガ 先生 の イラスト め っちゃ 話題 に なって た な
そ … そんな 名 前 の 人 は … N ( 正宗 ) 俺 が 知って る
いつも ありがとう
( 紗 霧 ) じゃあ また な !
( 正宗 ) ああ また !
これ から も よろしく
こちら こそ
~♪
( 正宗 ) 次回 …