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Natsume Soseki - I am a cat 夏目漱石 - 我輩は猫である。, 1.

1.

吾輩 は 猫 である ・ 目次 へ 第 一 話 下段 中段

吾輩 ( わがはい ) は 猫 である 。 名前 は まだ 無い 。 どこ で 生れた か とんと 見当 ( けんとう ) が つか ぬ 。 何でも 薄暗い じめじめ した 所 で ニャーニャー 泣いて いた 事 だけ は 記憶 して いる 。 吾輩 は ここ で 始めて 人間 と いう もの を 見た 。 しかも あと で 聞く と それ は 書生 と いう 人間 中 で 一 番 獰悪 ( どう あく ) な 種族 であった そうだ 。 この 書生 と いう の は 時々 我々 を 捕 ( つかま ) えて 煮 ( に ) て 食う と いう 話 である 。 しかし その 当時 は 何という 考 も なかった から 別段 恐し いとも 思わ なかった 。 ただ 彼 の 掌 ( てのひら ) に 載せ られて スー と 持ち 上げ られた 時 何だか フワフワ した 感じ が あった ばかりである 。 掌 の 上 で 少し 落ちついて 書生 の 顔 を 見た の が いわゆる 人間 と いう もの の 見 始 ( み はじめ ) であろう 。 この 時 妙な もの だ と 思った 感じ が 今 でも 残って いる 。 第 一 毛 を もって 装飾 さ れ べき はずの 顔 が つる つるして まるで 薬缶 ( やかん ) だ 。 その後 ( ご ) 猫 に も だいぶ 逢 ( あ ) った が こんな 片輪 ( かた わ ) に は 一 度 も 出 会 ( で く ) わした 事 が ない 。 のみ なら ず 顔 の 真中 が あまりに 突起 して いる 。 そうして その 穴 の 中 から 時々 ぷう ぷう と 煙 ( けむり ) を 吹く 。 どうも 咽 ( む ) せ ぽく て 実に 弱った 。 これ が 人間 の 飲む 煙草 ( たばこ ) と いう もの である 事 は ようやく この 頃 知った 。 この 書生 の 掌 の 裏 ( うち ) で しばらく は よい 心 持 に 坐って おった が 、 しばらく する と 非常な 速力 で 運転 し 始めた 。 書生 が 動く の か 自分 だけ が 動く の か 分ら ない が 無 暗 ( むやみ ) に 眼 が 廻る 。 胸 が 悪く なる 。 到底 ( とうてい ) 助から ない と 思って いる と 、 どさりと 音 が して 眼 から 火 が 出た 。 それ まで は 記憶 して いる が あと は 何の 事 やら いくら 考え 出そう と して も 分ら ない 。 ふと 気 が 付いて 見る と 書生 は い ない 。 たくさん おった 兄弟 が 一 疋 ( ぴき ) も 見え ぬ 。 肝心 ( かんじん ) の 母親 さえ 姿 を 隠して しまった 。 その 上 今 ( いま ) まで の 所 と は 違って 無 暗 ( むやみ ) に 明るい 。 眼 を 明いて い られ ぬ くらい だ 。 はて な 何でも 容子 ( ようす ) が おかしい と 、 のそのそ 這 ( は ) い 出して 見る と 非常に 痛い 。 吾輩 は 藁 ( わら ) の 上 から 急に 笹 原 の 中 へ 棄て られた のである 。 ようやく の 思い で 笹原 を 這い 出す と 向う に 大きな 池 が ある 。 吾輩 は 池 の 前 に 坐って どう したら よかろう と 考えて 見た 。 別に これという 分別 ( ふん べつ ) も 出 ない 。 しばらく して 泣いたら 書生 が また 迎 に 来て くれる か と 考え 付いた 。 ニャー 、 ニャー と 試みに やって 見た が 誰 も 来 ない 。 そのうち 池 の 上 を さらさら と 風 が 渡って 日 が 暮れ かかる 。 腹 が 非常に 減って 来た 。 泣き たくて も 声 が 出 ない 。 仕方 が ない 、 何でも よい から 食物 ( くいもの ) の ある 所 まで あるこう と 決心 を して そろりそろり と 池 を 左 ( ひだ ) り に 廻り 始めた 。 どうも 非常に 苦しい 。 そこ を 我慢 して 無理やり に 這 ( は ) って 行く と ようやく の 事 で 何となく 人間 臭い 所 へ 出た 。 ここ へ 這 入 ( はい ) ったら 、 どうにか なる と 思って 竹 垣 の 崩 ( くず ) れた 穴 から 、 とある 邸 内 に もぐり 込んだ 。 縁 は 不思議な もの で 、 もし この 竹 垣 が 破れて い なかった なら 、 吾輩 は ついに 路傍 ( ろぼう ) に 餓死 ( がし ) した かも 知れ ん のである 。 一樹 の 蔭 と は よく 云 ( い ) った もの だ 。 この 垣根 の 穴 は 今日 ( こんにち ) に 至る まで 吾輩 が 隣家 ( と なり ) の 三 毛 を 訪問 する 時 の 通路 に なって いる 。 さて 邸 ( や しき ) へ は 忍び込んだ もの の これ から 先どう して 善 ( い ) いか 分ら ない 。 その うち に 暗く なる 、 腹 は 減る 、 寒 さ は 寒し 、 雨 が 降って 来る と いう 始末 で もう 一刻 の 猶予 ( ゆう よ ) が 出来 なく なった 。 仕方 が ない から とにかく 明るくて 暖か そうな 方 へ 方 へ と あるいて 行く 。 今 から 考える と その 時 は すでに 家 の 内 に 這 入って おった のだ 。 ここ で 吾輩 は 彼 ( か ) の 書生 以外 の 人間 を 再び 見る べき 機会 に 遭遇 ( そうぐう ) した のである 。 第 一 に 逢った の が おさん ( 台所 で 働く 下 女 の 通称 。 おさん どん ) である 。 これ は 前 の 書生 より 一層 乱暴な 方 で 吾輩 を 見る や 否 や いきなり 頸筋 ( くびすじ ) を つかんで 表 へ 抛 ( ほう ) り 出した 。 いや これ は 駄目だ と 思った から 眼 を ね ぶって 運 を 天 に 任せて いた 。 しかし ひもじい の と 寒い の に は どうしても 我慢 が 出来 ん 。 吾輩 は 再び おさん の 隙 ( すき ) を 見て 台所 へ 這 ( は ) い 上 ( あ が ) った 。 すると 間もなく また 投げ出さ れた 。 吾輩 は 投げ出さ れて は 這い上り 、 這い上って は 投げ出さ れ 、 何でも 同じ 事 を 四五 遍 繰り返した の を 記憶 して いる 。 その 時 に おさん と 云う 者 は つくづく いやに なった 。 この 間 おさん の 三 馬 ( さんま = 魚 の サンマ の こと ) を 偸 ( ぬす ) んで この 返 報 を して やって から 、 やっと 胸 の 痞 ( つかえ ) が 下りた 。 吾輩 が 最後に つまみ出さ れよう と した とき に 、 この 家 ( うち ) の 主人 が 騒々しい 何 だ と いい ながら 出て 来た 。 下 女 は 吾輩 を ぶら下げて 主人 の 方 へ 向けて この 宿 ( やど ) なし の 小 猫 が いくら 出して も 出して も 御 台所 ( お だいどころ ) へ 上 ( あ が ) って 来て 困り ます と いう 。 主人 は 鼻 の 下 の 黒い 毛 を 撚 ( ひね ) り ながら 吾輩 の 顔 を しばらく 眺 ( な が ) め て おった が 、 やがて そんな ら 内 へ 置いて やれ と いった まま 奥 へ 這 入 ( はい ) って しまった 。 主人 は あまり 口 を 聞か ぬ 人 と 見えた 。 下 女 は 口 惜 ( く や ) し そうに 吾輩 を 台所 へ 抛 ( ほう ) り 出した 。 かくして 吾輩 は ついに この 家 ( うち ) を 自分 の 住 家 ( すみか ) と 極 ( き ) め る 事 に した のである 。 吾輩 の 主人 は 滅多 ( めった ) に 吾輩 と 顔 を 合せる 事 が ない 。 職業 は 教師 だ そうだ 。 学校 から 帰る と 終日 書斎 に 這 入った ぎり ほとんど 出て 来る 事 が ない 。 家 の もの は 大変な 勉強 家 だ と 思って いる 。 当人 も 勉強 家 である か の ごとく 見せて いる 。 しかし 実際 は うち の もの が いう ような 勤勉 家 で は ない 。 吾輩 は 時々 忍び足 に 彼 の 書斎 を 覗 ( の ぞ ) いて 見る が 、 彼 は よく 昼寝 ( ひるね ) を して いる 事 が ある 。 時々 読み かけて ある 本 の 上 に 涎 ( よだれ ) を たらして いる 。 彼 は 胃 弱 で 皮膚 の 色 が 淡黄色 ( たんこう しょく ) を 帯びて 弾力 の ない 不 活 溌 ( ふ かっぱつ ) な 徴候 を あらわして いる 。 その 癖 に 大飯 を 食う 。 大飯 を 食った 後 ( あと ) で タカジヤスターゼ ( 高 峰 譲 吉 が 麹 ( こうじ ) かび から 創 製 した 消化 酵素 剤 の 商標 名 ) を 飲む 。 飲んだ 後 で 書物 を ひろげる 。 二三 ページ 読む と 眠く なる 。 涎 を 本 の 上 へ 垂らす 。 これ が 彼 の 毎夜 繰り返す 日課 である 。 吾輩 は 猫 ながら 時々 考える 事 が ある 。 教師 と いう もの は 実に 楽 ( らく ) な もの だ 。 人間 と 生れたら 教師 と なる に 限る 。 こんなに 寝て いて 勤まる もの なら 猫 に でも 出来 ぬ 事 は ない と 。 それ でも 主人 に 云わ せる と 教師 ほど つらい もの は ない そうで 彼 は 友達 が 来る 度 ( たび ) に 何とか かんと か 不平 を 鳴らして いる 。 吾輩 が この 家 へ 住み 込んだ 当時 は 、 主人 以外 の もの に は はなはだ 不 人望 であった 。 どこ へ 行って も 跳 ( は ) ね 付け られて 相手 に して くれ 手 が なかった 。 いかに 珍重 さ れ なかった か は 、 今日 ( こんにち ) に 至る まで 名前 さえ つけて くれ ない ので も 分る 。 吾輩 は 仕方 が ない から 、 出来 得る 限り 吾輩 を 入れて くれた 主人 の 傍 ( そば ) に いる 事 を つとめた 。 朝 主人 が 新聞 を 読む とき は 必ず 彼 の 膝 ( ひざ ) の 上 に 乗る 。 彼 が 昼寝 を する とき は 必ず その 背中 ( せなか ) に 乗る 。 これ は あながち 主人 が 好き と いう 訳 で は ない が 別に 構い 手 が なかった から やむ を 得 ん のである 。 その後 いろいろ 経験 の 上 、 朝 は 飯櫃 ( めしびつ ) の 上 、 夜 は 炬燵 ( こたつ ) の 上 、 天気 の よい 昼 は 椽側 ( えんがわ ) へ 寝る 事 と した 。 しかし 一 番 心 持 の 好い の は 夜 ( よ ) に 入 ( い ) って ここ の うち の 小 供 の 寝床 へ もぐり 込んで いっしょに ねる 事 である 。 この 小 供 と いう の は 五 つ と 三 つ で 夜 に なる と 二 人 が 一 つ 床 へ 入 ( はい ) って 一 間 ( ひと ま ) へ 寝る 。 吾輩 は いつでも 彼 等 の 中間 に 己 ( おの ) れ を 容 ( い ) る べき 余地 を 見 出 ( みいだ ) して どうにか 、 こう に か 割り 込む のである が 、 運 悪く 小 供 の 一 人 が 眼 を 醒 ( さ ) ます が 最後 大変な 事 に なる 。 小 供 は ―― ことに 小さい 方 が 質 ( たち ) が わるい ―― 猫 が 来た 猫 が 来た と いって 夜中 でも 何でも 大きな 声 で 泣き 出す のである 。 すると 例の 神経 胃 弱 性 の 主人 は 必 ( かな ら ) ず 眼 を さまして 次の 部屋 から 飛び出して くる 。 現に せんだって など は 物指 ( ものさし ) で 尻 ぺた を ひどく 叩 ( たた ) かれた 。 吾輩 は 人間 と 同居 して 彼 等 を 観察 すれば する ほど 、 彼 等 は 我 儘 ( わがまま ) な もの だ と 断言 せ ざる を 得 ない ように なった 。 ことに 吾輩 が 時々 同 衾 ( どう きん ) する 小 供 の ごとき に 至って は 言語 同 断 ( ごんごどうだん ) である 。 自分 の 勝手な 時 は 人 を 逆 さ に したり 、 頭 へ 袋 を かぶせたり 、 抛 ( ほう ) り 出したり 、 へっ つい の 中 へ 押し 込んだり する 。 しかも 吾輩 の 方 で 少し でも 手出し を しよう もの なら 家内 ( かない ) 総がかり で 追い 廻して 迫害 を 加える 。 この 間 も ちょっと 畳 で 爪 を 磨 ( と ) いだ ら 細君 が 非常に 怒 ( おこ ) って それ から 容易に 座敷 へ 入 ( い ) れ ない 。 台所 の 板の間 で 他 ( ひと ) が 顫 ( ふる ) えて いて も 一 向 ( いっこう ) 平気な もの である 。 吾輩 の 尊敬 する 筋 向 ( すじ むこう ) の 白 君 など は 逢 ( あ ) う 度 毎 ( たび ごと ) に 人間 ほど 不人情な もの は ない と 言って おら る る 。 白 君 は 先日 玉 の ような 子猫 を 四 疋産 ( う ) ま れた のである 。 ところが そこ の 家 ( うち ) の 書生 が 三 日 目 に そいつ を 裏 の 池 へ 持って 行って 四 疋 ながら 棄てて 来た そうだ 。 白 君 は 涙 を 流して その 一部始終 を 話した 上 、 どうしても 我 等 猫 族 ( ねこ ぞく ) が 親子 の 愛 を 完 ( まった ) く して 美しい 家族 的 生活 を する に は 人間 と 戦って これ を 剿滅 ( そう めつ ) せ ねば なら ぬ と いわ れた 。 一 々 もっとも の 議論 と 思う 。 また 隣り の 三 毛 ( み け ) 君 など は 人間 が 所有 権 と いう 事 を 解して い ない と いって 大 ( おおい ) に 憤慨 して いる 。 元来 我々 同族 間 で は 目刺 ( めざし ) の 頭 でも 鰡 ( ぼ ら ) の 臍 ( へそ ) でも 一 番 先 に 見付けた もの が これ を 食う 権利 が ある もの と なって いる 。 もし 相手 が この 規約 を 守ら なければ 腕力 に 訴えて 善 ( よ ) い くらい の もの だ 。 しかる に 彼 等 人間 は 毫 ( ごう ) も この 観念 が ない と 見えて 我 等 が 見付けた 御馳走 は 必ず 彼 等 の ため に 掠奪 ( りゃくだつ ) せら る る のである 。 彼 等 は その 強力 を 頼んで 正当に 吾人 が 食い 得 べき もの を 奪 ( うば ) って すまして いる 。 白 君 は 軍人 の 家 に おり 三 毛 君 は 代 言 の 主人 を 持って いる 。 吾輩 は 教師 の 家 に 住んで いる だけ 、 こんな 事 に 関する と 両 君 より も むしろ 楽天 である 。 ただ その 日 その 日 が どうにか こう に か 送ら れれば よい 。 いくら 人間 だって 、 そう いつまでも 栄える 事 も ある まい 。 まあ 気 を 永く 猫 の 時節 を 待つ が よかろう 。 我 儘 ( わがまま ) で 思い出した から ちょっと 吾輩 の 家 の 主人 が この 我 儘 で 失敗 した 話 を しよう 。 元来 この 主人 は 何と いって 人 に 勝 ( すぐ ) れて 出来る 事 も ない が 、 何 に でも よく 手 を 出し た がる 。 俳句 を やって ほととぎす へ 投書 を したり 、 新 体 詩 を 明星 へ 出したり 、 間違い だらけ の 英文 を かいたり 、 時に よる と 弓 に 凝 ( こ ) ったり 、 謡 ( うたい ) を 習ったり 、 また ある とき は ヴァイオリン など を ブーブー 鳴らしたり する が 、 気の毒な 事 に は 、 どれ も これ も 物 に なって おら ん 。 その 癖 やり 出す と 胃 弱 の 癖 に いやに 熱心だ 。 後架 ( こう か ) の 中 で 謡 を うたって 、 近所 で 後架 先生 ( こうか せ ん せい ) と 渾名 ( あだな ) を つけ られて いる に も 関せ ず 一 向 ( いっこう ) 平気な もの で 、 やはり これ は 平 ( たいら ) の 宗盛 ( むね もり ) にて 候 ( そうろう ) を 繰返して いる 。 みんな が そら 宗盛 だ と 吹き出す くらい である 。 この 主人 が どういう 考 に なった もの か 吾輩 の 住み 込んで から 一 月 ばかり 後 ( のち ) の ある 月 の 月給 日 に 、 大きな 包み を 提 ( さ ) げ て あわただしく 帰って 来た 。 何 を 買って 来た の か と 思う と 水彩 絵 具 と 毛筆 と ワットマン と いう 紙 で 今日 から 謡 や 俳句 を やめて 絵 を かく 決心 と 見えた 。 果して 翌日 から 当分 の 間 と いう もの は 毎日 毎日 書斎 で 昼寝 も し ないで 絵 ばかり かいて いる 。 しかし その かき 上げた もの を 見る と 何 を かいた もの やら 誰 に も 鑑定 が つか ない 。 当人 も あまり 甘 ( うま ) くない と 思った もの か 、 ある 日 その 友人 で 美学 と か を やって いる 人 が 来た 時 に 下 ( しも ) の ような 話 を して いる の を 聞いた 。 「 どうも 甘 ( うま ) く かけ ない もの だ ね 。 人 の を 見る と 何でもない ようだ が 自 ( み ず か ) ら 筆 を とって 見る と 今更 ( いまさら ) の ように むずかしく 感ずる 」 これ は 主人 の 述懐 ( じゅっかい ) である 。 なるほど 詐 ( いつわ ) り の ない 処 だ 。 彼 の 友 は 金 縁 の 眼鏡 越 ( めがね ご し ) に 主人 の 顔 を 見 ながら 、 「 そう 初め から 上手に は かけ ない さ 、 第 一室 内 の 想像 ばかり で 画 ( え ) が かける 訳 の もの で は ない 。 昔 ( む か ) し 以太 利 ( イタリー ) の 大家 アンドレア ・ デル ・ サルト ( ルネサンス 期 の イタリア の 画家 ) が 言った 事 が ある 。 画 を かく なら 何でも 自然 その 物 を 写せ 。 天 に 星 辰 ( せいしん ) あり 。 地 に 露 華 ( ろか ) あり 。 飛ぶ に 禽 ( とり ) あり 。 走る に 獣 ( けもの ) あり 。 池 に 金魚 あり 。 枯木 ( こ ぼく ) に 寒 鴉 ( かん あ ) あり 。 自然 は これ 一 幅 の 大 活 画 ( だいか つ が ) なり と 。 どう だ 君 も 画 らしい 画 を かこう と 思う なら ち と 写生 を したら 」 「 へえ アンドレア ・ デル ・ サルト が そんな 事 を いった 事 が ある かい 。 ちっとも 知ら なかった 。 なるほど こりゃ もっともだ 。 実に その 通り だ 」 と 主人 は 無 暗 ( むやみ ) に 感心 して いる 。 金 縁 の 裏 に は 嘲 ( あざ ) ける ような 笑 ( わらい ) が 見えた 。 その 翌日 吾輩 は 例の ごとく 椽側 ( えんがわ ) に 出て 心 持 善く 昼寝 ( ひるね ) を して いたら 、 主人 が 例 に なく 書斎 から 出て 来て 吾輩 の 後 ( うし ) ろ で 何 か しきりに やって いる 。 ふと 眼 が 覚 ( さ ) め て 何 を して いる か と 一 分 ( いちぶ ) ばかり 細目 に 眼 を あけて 見る と 、 彼 は 余念 も なく アンドレア ・ デル ・ サルト を 極 ( き ) め 込んで いる 。 吾輩 は この 有様 を 見て 覚え ず 失笑 する の を 禁じ 得 なかった 。 彼 は 彼 の 友 に 揶揄 ( やゆ ) せら れ たる 結果 と して まず 手 初め に 吾輩 を 写生 し つつ ある のである 。 吾輩 は すでに 十分 ( じゅうぶん ) 寝た 。 欠 伸 ( あくび ) が し たくて たまら ない 。 しかし せっかく 主人 が 熱心に 筆 を 執 ( と ) って いる の を 動いて は 気の毒だ と 思って 、 じっと 辛 棒 ( しんぼう ) して おった 。 彼 は 今 吾輩 の 輪 廓 を かき 上げて 顔 の あたり を 色彩 ( いろど ) って いる 。 吾輩 は 自白 する 。 吾輩 は 猫 と して 決して 上 乗 の 出来 で は ない 。 背 と いい 毛並 と いい 顔 の 造作 と いい あえて 他の 猫 に 勝 ( まさ ) る と は 決して 思って おら ん 。 しかし いくら 不 器量 の 吾輩 でも 、 今 吾輩 の 主人 に 描 ( え が ) き 出さ れ つつ ある ような 妙な 姿 と は 、 どうしても 思わ れ ない 。 第 一色 が 違う 。 吾輩 は 波 斯産 ( ペルシャ さん ) の 猫 の ごとく 黄 を 含める 淡 灰色 に 漆 ( うるし ) の ごとき 斑 入 ( ふい ) り の 皮膚 を 有して いる 。 これ だけ は 誰 が 見て も 疑う べ から ざる 事実 と 思う 。 しかる に 今 主人 の 彩 色 を 見る と 、 黄 でも なければ 黒 で も ない 、 灰色 でも なければ 褐色 ( とびいろ ) で も ない 、 されば とて これ ら を 交ぜた 色 で も ない 。 ただ 一種 の 色 である と いう より ほか に 評し 方 の ない 色 である 。 その 上 不思議な 事 は 眼 が ない 。 もっとも これ は 寝て いる ところ を 写生 した のだ から 無理 も ない が 眼 らしい 所 さえ 見え ない から 盲 猫 ( めくら ) だ か 寝て いる 猫 だ か 判然 し ない のである 。 吾輩 は 心中 ひそかに いくら アンドレア ・ デル ・ サルト でも これ で は しようがない と 思った 。 しかし その 熱心に は 感服 せ ざる を 得 ない 。 なるべく なら 動か ず に おって やり たい と 思った が 、 さっき から 小便 が 催 う して いる 。 身内 ( みうち ) の 筋肉 は むずむず する 。 最 早 ( もはや ) 一 分 も 猶予 ( ゆう よ ) が 出来 ぬ 仕儀 ( しぎ ) と なった から 、 やむ を え ず 失敬 して 両足 を 前 へ 存分の して 、 首 を 低く 押し出して あーあ と 大 ( だい ) なる 欠 伸 を した 。 さて こう なって 見る と 、 もう おとなしく して いて も 仕方 が ない 。 どうせ 主人 の 予定 は 打 ( ぶ ) ち 壊 ( こ ) わした のだ から 、 ついでに 裏 へ 行って 用 を 足 ( た ) そう と 思って のそのそ 這い 出した 。 すると 主人 は 失望 と 怒り を 掻 ( か ) き 交ぜた ような 声 を して 、 座敷 の 中 から 「 この 馬鹿 野郎 」 と 怒鳴 ( ど な ) った 。 この 主人 は 人 を 罵 ( の の し ) る とき は 必ず 馬鹿 野郎 と いう の が 癖 である 。 ほか に 悪 口 の 言い よう を 知ら ない のだ から 仕方 が ない が 、 今 まで 辛 棒 した 人 の 気 も 知ら ないで 、 無 暗 ( むやみ ) に 馬 鹿野 郎呼 ( よば ) わり は 失敬だ と 思う 。 それ も 平生 吾輩 が 彼 の 背中 ( せなか ) へ 乗る 時 に 少し は 好い 顔 でも する なら この 漫罵 ( まん ば ) も 甘んじて 受ける が 、 こっち の 便利に なる 事 は 何一つ 快く して くれた 事 も ない のに 、 小便 に 立った の を 馬鹿 野郎 と は 酷 ( ひど ) い 。 元来 人間 と いう もの は 自己 の 力量 に 慢 じ て みんな 増長 して いる 。 少し 人間 より 強い もの が 出て 来て 窘 ( いじ ) め て やら なくて は この先 どこ まで 増長 する か 分ら ない 。 我 儘 ( わがまま ) も この くらい なら 我慢 する が 吾輩 は 人間 の 不徳に ついて これ より も 数 倍 悲しむ べき 報道 を 耳 に した 事 が ある 。 吾輩 の 家 の 裏 に 十 坪 ばかりの 茶 園 ( ちゃ えん ) が ある 。 広く は ない が 瀟洒 ( さっぱり ) と した 心持ち 好く 日 の 当 ( あた ) る 所 だ 。 うち の 小 供 が あまり 騒いで 楽々 昼寝 の 出来 ない 時 や 、 あまり 退屈で 腹 加減 の よく ない 折 など は 、 吾輩 は いつでも ここ へ 出て 浩 然 ( こうぜん ) の 気 を 養う の が 例 である 。 ある 小 春 の 穏 かな 日 の 二 時 頃 であった が 、 吾輩 は 昼 飯 後 ( ちゅうは ん ご ) 快 よく 一睡 した 後 ( のち )、 運動 かたがた この 茶 園 へ と 歩 ( ほ ) を 運ば した 。 茶 の 木 の 根 を 一 本 一 本 嗅ぎ ながら 、 西 側 の 杉 垣 の そば まで くる と 、 枯菊 を 押し倒して その 上 に 大きな 猫 が 前後不覚 に 寝て いる 。 彼 は 吾輩 の 近づく の も 一 向 ( いっこう ) 心 付か ざる ごとく 、 また 心 付く も 無頓着なる ごとく 、 大きな 鼾 ( いびき ) を して 長々 と 体 を 横 ( よこ た ) えて 眠って いる 。 他 ( ひと ) の 庭 内 に 忍び 入り たる もの が かく まで 平気に 睡 ( ねむ ) られる もの か と 、 吾輩 は 窃 ( ひそ ) か に その 大胆なる 度胸 に 驚か ざる を 得 なかった 。 彼 は 純粋の 黒 猫 である 。 わずかに 午 ( ご ) を 過ぎ たる 太陽 は 、 透明なる 光線 を 彼 の 皮膚 の 上 に 抛 ( な ) げ かけて 、 きらきら する 柔 毛 ( に こげ ) の 間 より 眼 に 見え ぬ 炎 でも 燃 ( も ) え 出 ( い ) ずる ように 思わ れた 。 彼 は 猫 中 の 大王 と も 云う べき ほど の 偉大なる 体格 を 有して いる 。 吾輩 の 倍 は たしかに ある 。 吾輩 は 嘆 賞 の 念 と 、 好 奇 の 心 に 前後 を 忘れて 彼 の 前 に 佇 立 ( ちょ りつ ) して 余念 も なく 眺 ( な が ) め て いる と 、 静かなる 小 春 の 風 が 、 杉 垣 の 上 から 出 たる 梧桐 ( ご とう ) の 枝 を 軽 ( か ろ ) く 誘って ばらばら と 二三 枚 の 葉 が 枯菊 の 茂み に 落ちた 。 大王 は か っと その 真 丸 ( まんまる ) の 眼 を 開いた 。 今 でも 記憶 して いる 。 その 眼 は 人間 の 珍重 する 琥珀 ( こはく ) と いう もの より も 遥 ( はる ) か に 美しく 輝いて いた 。 彼 は 身動き も し ない 。 双 眸 ( そう ぼう ) の 奥 から 射る ごとき 光 を 吾輩 の 矮小 ( わいしょう ) なる 額 ( ひ たい ) の 上 に あつめて 、 御 め え は 一体 何 だ と 云った 。 大王 に して は 少々 言葉 が 卑 ( いや ) しい と 思った が 何しろ その 声 の 底 に 犬 を も 挫 ( ひ ) し ぐ べき 力 が 籠 ( こも ) って いる ので 吾輩 は 少なからず 恐れ を 抱 ( い だ ) いた 。 しかし 挨拶 ( あいさつ ) を し ない と 険呑 ( けん の ん ) だ と 思った から 「 吾輩 は 猫 である 。 名前 は まだ ない 」 と なるべく 平気 を 装 ( よそお ) って 冷 然 と 答えた 。 しかし この 時 吾輩 の 心臓 は たしかに 平時 より も 烈 しく 鼓動 して おった 。 彼 は 大 ( おおい ) に 軽蔑 ( けいべつ ) せる 調子 で 「 何 、 猫 だ ? 猫 が 聞いて あきれ ら あ 。 全 ( ぜん ) て え どこ に 住んで る んだ 」 随分 傍若無人 ( ぼうじゃくぶじん ) である 。 「 吾輩 は ここ の 教師 の 家 ( うち ) に いる のだ 」 「 どうせ そんな 事 だろう と 思った 。 いやに 瘠 ( や ) せて る じゃ ねえ か 」 と 大王 だけ に 気 焔 ( きえん ) を 吹きかける 。 言葉 付 から 察する と どうも 良 家 の 猫 と も 思わ れ ない 。 しかし その 膏切 ( あぶらぎ ) って 肥満 して いる ところ を 見る と 御馳走 を 食って る らしい 、 豊かに 暮して いる らしい 。 吾輩 は 「 そう 云う 君 は 一体 誰 だい 」 と 聞か ざる を 得 なかった 。 「 己 ( お ) れ あ 車 屋 の 黒 ( くろ ) よ 」 昂然 ( こうぜん ) たるも のだ 。 車 屋 の 黒 は この 近辺 で 知ら ぬ 者 なき 乱暴 猫 である 。 しかし 車 屋 だけ に 強い ばかりで ちっとも 教育 が ない から あまり 誰 も 交際 し ない 。 同盟 敬遠 主義 の 的 ( まと ) に なって いる 奴 だ 。 吾輩 は 彼 の 名 を 聞いて 少々 尻 こそばゆき 感じ を 起す と 同時に 、 一方 で は 少々 軽侮 ( けいぶ ) の 念 も 生じた のである 。 吾輩 は まず 彼 が どの くらい 無 学 である か を 試 ( ため ) して みよう と 思って 左 ( さ ) の 問答 を して 見た 。 「 一体 車 屋 と 教師 と は どっち が えらい だろう 」 「 車 屋 の 方 が 強い に 極 ( きま ) って いら あ な 。 御 め え の うち の 主人 を 見 ねえ 、 まるで 骨 と 皮 ばかり だ ぜ 」 「 君 も 車 屋 の 猫 だけ に 大分 ( だいぶ ) 強そうだ 。 車 屋 に いる と 御馳走 ( ごちそう ) が 食える と 見える ね 」 「 何 ( なあ ) に おれ な ん ざ 、 どこ の 国 へ 行った って 食い物 に 不自由 は し ねえ つもりだ 。 御 め え なんか も 茶 畠 ( ちゃばたけ ) ばかり ぐるぐる 廻って い ねえ で 、 ち っと 己 ( おれ ) の 後 ( あと ) へ くっ付いて 来て 見 ねえ 。 一 と 月 と たた ねえ うち に 見違える ように 太 れる ぜ 」 「 追って そう 願う 事 に しよう 。 しかし 家 ( うち ) は 教師 の 方 が 車 屋 より 大きい の に 住んで いる ように 思わ れる 」 「 箆棒 ( べらぼう ) め 、 うち なんか いくら 大きく たって 腹 の 足 ( た ) しに なる もん か 」

彼 は 大 ( おおい ) に 肝 癪 ( かんしゃく ) に 障 ( さ わ ) った 様子 で 、 寒 竹 ( かんち く ) を そいだ ような 耳 を しきりと ぴく 付か せ てあら ら か に 立ち去った 。 吾輩 が 車 屋 の 黒 と 知己 ( ちき ) に なった の は これ から である 。 その後 ( ご ) 吾輩 は 度々 ( たびたび ) 黒 と 邂逅 ( かいこう ) する 。 邂逅 する 毎 ( ごと ) に 彼 は 車 屋 相当 の 気 焔 ( きえん ) を 吐く 。 先 に 吾輩 が 耳 に した と いう 不徳 事件 も 実は 黒 から 聞いた のである 。 或る 日 例 の ごとく 吾輩 と 黒 は 暖かい 茶 畠 ( ちゃばたけ ) の 中 で 寝 転 ( ねころ ) び ながら いろいろ 雑談 を して いる と 、 彼 は いつも の 自慢 話 ( じまん ば な ) し を さも 新し そうに 繰り返した あと で 、 吾輩 に 向って 下 ( しも ) の ごとく 質問 した 。 「 御 め え は 今 まで に 鼠 を 何 匹 とった 事 が ある 」 智識 は 黒 より も 余程 発達 して いる つもりだ が 腕力 と 勇気 と に 至って は 到底 ( とうてい ) 黒 の 比較 に は なら ない と 覚悟 は して いた もの の 、 この 問 に 接した る 時 は 、 さすが に 極 ( きま ) り が 善 ( よ ) く は なかった 。 けれども 事実 は 事実 で 詐 ( いつわ ) る 訳 に は 行か ない から 、 吾輩 は 「 実は とろう とろう と 思って まだ 捕 ( と ) ら ない 」 と 答えた 。 黒 は 彼 の 鼻 の 先 から ぴんと 突 張 ( つっぱ ) って いる 長い 髭 ( ひげ ) を びりびり と 震 ( ふる ) わ せて 非常に 笑った 。 元来 黒 は 自慢 を する 丈 ( だけ ) に どこ か 足り ない ところ が あって 、 彼 の 気 焔 ( きえん ) を 感心 した ように 咽喉 ( のど ) を ころころ 鳴らして 謹 聴 して いれば はなはだ 御 ( ぎょ ) し やすい 猫 である 。 吾輩 は 彼 と 近 付 に なって から 直 ( すぐ ) に この 呼吸 を 飲み 込んだ から この 場合 に も なまじ い 己 ( おの ) れ を 弁護 して ますます 形勢 を わるく する の も 愚 ( ぐ ) である 、 いっその事 彼 に 自分 の 手柄 話 を しゃべら して 御 茶 を 濁す に 若 ( し ) く は ない と 思案 を 定 ( さ だ ) め た 。 そこ で おとなしく 「 君 など は 年 が 年 である から 大分 ( だいぶ ん ) とったろう 」 と そそのかして 見た 。 果 然 彼 は 墻壁 ( しょうへき ) の 欠 所 ( けっし ょ ) に 吶喊 ( とっかん = とき の 声 を あげる こと ) して 来た 。 「 たん と でも ねえ が 三四十 は とったろう 」 と は 得意気なる 彼 の 答 であった 。 彼 は なお 語 を つづけて 「 鼠 の 百 や 二百 は 一 人 で いつでも 引き受ける がい たち って え 奴 は 手 に 合わ ねえ 。 一 度 いたち に 向って 酷 ( ひど ) い 目に 逢 ( あ ) った 」 「 へえ なるほど 」 と 相槌 ( あいづち ) を 打つ 。 黒 は 大きな 眼 を ぱち つか せて 云う 。 「 去年 の 大掃除 の 時 だ 。 うち の 亭主 が 石灰 ( いし ばい ) の 袋 を 持って 椽 ( えん ) の 下 へ 這 ( は ) い 込んだら 御 め え 大きな いたち の 野郎 が 面 喰 ( めんくら ) って 飛び出した と 思い ねえ 」 「 ふん 」 と 感心 して 見せる 。 「 いた ちって けども 何 鼠 の 少し 大きい ぐれ え の もの だ 。 こ ん 畜生 ( ちき しょう ) って 気 で 追っかけて とうとう 泥 溝 ( どぶ ) の 中 へ 追い 込んだ と 思い ねえ 」 「 うまく やった ね 」 と 喝采 ( かっさい ) して やる 。 「 ところが 御 め え いざ って え段 に なる と 奴 め 最後 ( さいご ) っ 屁 ( ぺ ) を こきゃ がった 。 臭 ( くせ ) え の 臭く ねえ の って それ から って えもの は いたち を 見る と 胸 が 悪く なら あ 」 彼 は ここ に 至って あたかも 去年 の 臭気 を 今 ( いま ) なお 感ずる ごとく 前足 を 揚げて 鼻 の 頭 を 二三 遍 な で 廻 わした 。 吾輩 も 少々 気の毒な 感じ が する 。 ち っと 景気 を 付けて やろう と 思って 「 しかし 鼠 なら 君 に 睨 ( にら ) ま れて は 百 年 目 だろう 。 君 は あまり 鼠 を 捕 ( と ) る の が 名人 で 鼠 ばかり 食う もの だ から そんなに 肥 って 色つや が 善い のだろう 」 黒 の 御機嫌 を とる ため の この 質問 は 不思議に も 反対の 結果 を 呈 出 ( ていしゅつ ) した 。 彼 は 喟然 ( きぜん ) と して 大 息 ( たい そく ) して い う 。 「 考 ( かん ) げ える と つまら ねえ 。 いくら 稼いで 鼠 を とった って ―― 一 て え 人間 ほど ふ て え 奴 は 世の中 に い ねえ ぜ 。 人 の とった 鼠 を みんな 取り 上げ やがって 交番 へ 持って 行きゃ あがる 。 交番 じゃ 誰 が 捕 ( と ) った か 分ら ねえ から その たんび に 五 銭 ずつ くれる じゃ ねえ か 。 うち の 亭主 なんか 己 ( おれ ) の 御蔭 で もう 壱 円 五十 銭 くらい 儲 ( もう ) け てい やがる 癖 に 、 碌 ( ろく ) な もの を 食わ せた 事 も あり ゃし ねえ 。 おい 人間 て もの あ 体 ( てい ) の 善 ( い ) い 泥棒 だ ぜ 」 さすが 無 学 の 黒 も この くらい の 理 窟 ( りくつ ) は わかる と 見えて すこぶる 怒 ( おこ ) った 容子 ( ようす ) で 背中 の 毛 を 逆 立 ( さか だ ) て て いる 。 吾輩 は 少々 気味 が 悪く なった から 善い 加減 に その 場 を 胡魔 化 ( ごま か ) して 家 ( うち ) へ 帰った 。 この 時 から 吾輩 は 決して 鼠 を とる まい と 決心 した 。 しかし 黒 の 子分 に なって 鼠 以外 の 御馳走 を 猟 ( あさ ) って あるく 事 も し なかった 。 御馳走 を 食う より も 寝て いた 方 が 気楽で いい 。 教師 の 家 ( うち ) に いる と 猫 も 教師 の ような 性質 に なる と 見える 。 要 心し ない と 今に 胃 弱 に なる かも 知れ ない 。 教師 と いえば 吾輩 の 主人 も 近頃 に 至って は 到底 ( とうてい ) 水彩 画 に おいて 望 ( のぞみ ) の ない 事 を 悟った もの と 見えて 十二 月 一 日 の 日記 に こんな 事 を か きつけた 。 ○○ と 云う 人 に 今日 の 会 で 始めて 出逢 ( であ ) った 。 あの 人 は 大分 ( だいぶ ) 放 蕩 ( ほうとう ) を した 人 だ と 云う が なるほど 通 人 ( つうじ ん ) らしい 風采 ( ふうさい ) を して いる 。 こう 云う 質 ( たち ) の 人 は 女 に 好か れる もの だ から ○○ が 放 蕩 を した と 云う より も 放 蕩 を する べく 余儀なく せら れた と 云う の が 適当であろう 。 あの 人 の 妻君 は 芸者 だ そうだ 、 羨 ( うら や ) ま しい 事 である 。 元来 放 蕩家 を 悪く いう 人 の 大部分 は 放 蕩 を する 資格 の ない もの が 多い 。 また 放 蕩家 を もって 自任 する 連中 の うち に も 、 放 蕩 する 資格 の ない もの が 多い 。 これ ら は 余儀なく さ れ ない の に 無理に 進んで やる のである 。 あたかも 吾輩 の 水彩 画 に 於 ける が ごとき もの で 到底 卒業 する 気づかい は ない 。 しかる に も 関せ ず 、 自分 だけ は 通 人 だ と 思って 済 ( す ま ) して いる 。 料理 屋 の 酒 を 飲んだり 待合 へ 這 入 ( はい ) る から 通 人となり 得る と いう 論 が 立つ なら 、 吾輩 も 一 廉 ( ひとかど ) の 水彩 画家 に なり 得る 理 窟 ( りくつ ) だ 。 吾輩 の 水彩 画 の ごとき は かか ない 方 が ましである と 同じ ように 、 愚 昧 ( ぐ まい ) なる 通 人 より も 山 出し の 大 野暮 ( おお や ぼ ) の 方 が 遥 ( はる ) か に 上等だ 。

通 人 論 ( つうじ ん ろん ) は ちょっと 首肯 ( しゅこう ) しか ねる 。 また 芸者 の 妻君 を 羨 しい など と いう ところ は 教師 と して は 口 に すべ から ざる 愚 劣 の 考 である が 、 自己 の 水彩 画 に おける 批評 眼 だけ は たしかな もの だ 。 主人 は かく の ごとく 自 知 ( じち ) の 明 ( めい ) ある に も 関せ ず その 自 惚 心 ( うぬぼれ しん ) は なかなか 抜け ない 。 中 二 日 ( なか ふ つ か ) 置いて 十二 月 四 日 の 日記 に こんな 事 を 書いて いる 。 昨夜 ( ゆうべ ) は 僕 が 水彩 画 を かいて 到底 物 に なら ん と 思って 、 そこら に 抛 ( ほう ) って 置いた の を 誰 か が 立派な 額 に して 欄間 ( らんま ) に 懸 ( か ) け て くれた 夢 を 見た 。 さて 額 に なった ところ を 見る と 我ながら 急に 上手に なった 。 非常に 嬉しい 。 これ なら 立派な もの だ と 独 ( ひと ) り で 眺め 暮らして いる と 、 夜 が 明けて 眼 が 覚 ( さ ) め て やはり 元 の 通り 下手である 事 が 朝日 と 共に 明瞭に なって しまった 。

主人 は 夢 の 裡 ( うち ) まで 水彩 画 の 未練 を 背負 ( しょ ) って あるいて いる と 見える 。 これ で は 水彩 画家 は 無論 夫 子 ( ふうし ) の 所 謂 ( いわゆる ) 通 人 に も なれ ない 質 ( たち ) だ 。 主人 が 水彩 画 を 夢 に 見た 翌日 例の 金 縁 眼鏡 ( めがね ) の 美学 者 が 久し振りで 主人 を 訪問 した 。 彼 は 座 に つく と 劈頭 ( へ きとう ) 第 一 に 「 画 ( え ) は どう か ね 」 と 口 を 切った 。 主人 は 平気な 顔 を して 「 君 の 忠告 に 従って 写生 を 力 ( つ と ) め て いる が 、 なるほど 写生 を する と 今 まで 気 の つか なかった 物 の 形 や 、 色 の 精細な 変化 など が よく 分る ようだ 。 西洋 で は 昔 ( む か ) し から 写生 を 主張 した 結果 今日 ( こんにち ) の ように 発達 した もの と 思わ れる 。 さすが アンドレア ・ デル ・ サルト だ 」 と 日記 の 事 は おくび に も 出さ ないで 、 また アンドレア ・ デル ・ サルト に 感心 する 。 美学 者 は 笑い ながら 「 実は 君 、 あれ は 出 鱈 目 ( でたらめ ) だ よ 」 と 頭 を 掻 ( か ) く 。 「 何 が 」 と 主人 は まだ いつわら れた 事 に 気 が つか ない 。 「 何 が って 君 の しきりに 感服 して いる アンドレア ・ デル ・ サルト さ 。 あれ は 僕 の ちょっと 捏造 ( ねつぞう ) した 話 だ 。 君 が そんなに 真面目 ( まじめ ) に 信じよう と は 思わ なかった ハハハハ 」 と 大喜 悦 の 体 ( てい ) である 。 吾輩 は 椽 側 で この 対話 を 聞いて 彼 の 今日 の 日記 に は いかなる 事 が 記 ( しる ) さる る であろう か と 予 ( あら かじ ) め 想像 せ ざる を 得 なかった 。 この 美学 者 は こんな 好 ( いい ) 加減 な 事 を 吹き 散らして 人 を 担 ( かつ ) ぐ の を 唯一 の 楽 ( たのしみ ) に して いる 男 である 。 彼 は アンドレア ・ デル ・ サルト 事件 が 主人 の 情 線 ( じょうせん ) に いかなる 響 を 伝えた か を 毫 ( ごう ) も 顧慮 せ ざる もの の ごとく 得意に なって 下 ( しも ) の ような 事 を 饒舌 ( し ゃべ ) った 。 「 いや 時々 冗談 ( じょうだん ) を 言う と 人 が 真 ( ま ) に 受ける ので 大 ( おおい ) に 滑稽 的 ( こっけい てき ) 美 感 を 挑 撥 ( ちょうはつ ) する の は 面白い 。 せんだって ある 学生 に ニコラス ・ ニックルベー が ギボン に 忠告 して 彼 の 一 世 の 大 著述 なる 仏 国 革命 史 を 仏 語 で 書く の を やめ に して 英文 で 出版 さ せた と 言ったら 、 その 学生 が また 馬鹿に 記憶 の 善い 男 で 、 日本 文学 会 の 演説 会 で 真面目に 僕 の 話した 通り を 繰り返した の は 滑稽であった 。 ところが その 時 の 傍聴 者 は 約 百 名 ばかりであった が 、 皆 熱心に それ を 傾聴 して おった 。 それ から まだ 面白い 話 が ある 。 せんだって 或る 文学 者 の いる 席 で ハリソン の 歴史 小説 セオファーノ の 話 ( は な ) し が 出た から 僕 は あれ は 歴史 小説 の 中 ( うち ) で 白眉 ( はくび ) である 。 ことに 女 主人公 が 死ぬ ところ は 鬼気 ( きき ) 人 を 襲う ようだ と 評したら 、 僕 の 向う に 坐って いる 知ら ん と 云った 事 の ない 先生 が 、 そう そう あす こ は 実に 名文 だ と いった 。 それ で 僕 は この 男 も やはり 僕 同様 この 小説 を 読んで おら ない と いう 事 を 知った 」 神経 胃 弱 性 の 主人 は 眼 を 丸く して 問い かけた 。 「 そんな 出 鱈 目 ( でたらめ ) を いって もし 相手 が 読んで いたら どう する つもりだ 」 あたかも 人 を 欺 ( あざむ ) く の は 差 支 ( さしつかえ ) ない 、 ただ 化 ( ばけ ) の 皮 ( かわ ) が あらわれた 時 は 困る じゃ ない か と 感じた もの の ごとく である 。 美学 者 は 少しも 動じ ない 。 「 な に その 時 ( とき ) ゃ 別 の 本 と 間違えた と か 何とか 云う ばかり さ 」 と 云って けら けら 笑って いる 。 この 美学 者 は 金 縁 の 眼鏡 は 掛けて いる が その 性質 が 車 屋 の 黒 に 似た ところ が ある 。 主人 は 黙って 日の出 を 輪 に 吹いて 吾輩 に は そんな 勇気 は ない と 云わ ん ばかりの 顔 を して いる 。 美学 者 は それ だ から 画 ( え ) を かいて も 駄目だ と いう 目付 で 「 しかし 冗談 ( じょうだん ) は 冗談 だ が 画 と いう もの は 実際 むずかしい もの だ よ 、 レオナルド ・ ダ ・ ヴィンチ は 門下 生 に 寺院 の 壁 の しみ を 写せ と 教えた 事 が ある そうだ 。 なるほど 雪隠 ( せつ いん ) など に 這 入 ( はい ) って 雨 の 漏る 壁 を 余念 なく 眺めて いる と 、 なかなか うまい 模様 画 が 自然に 出来て いる ぜ 。 君 注意 して 写生 して 見 給え きっと 面白い もの が 出来る から 」 「 また 欺 ( だま ) す のだろう 」 「 いえ これ だけ は たしかだ よ 。 実際 奇 警 な 語 じゃ ない か 、 ダ ・ ヴィンチ でも いい そうな 事 だ あね 」 「 なるほど 奇 警 に は 相違 ない な 」 と 主人 は 半分 降参 を した 。 しかし 彼 は まだ 雪隠 で 写生 は せ ぬ ようだ 。 車 屋 の 黒 は その後 ( ご ) 跛 ( び っこ ) に なった 。 彼 の 光沢 ある 毛 は 漸 々 ( だんだん ) 色 が 褪 ( さ ) め て 抜けて 来る 。 吾輩 が 琥珀 ( こはく ) より も 美しい と 評した 彼 の 眼 に は 眼 脂 ( めやに ) が 一杯 たまって いる 。 ことに 著 る しく 吾輩 の 注意 を 惹 ( ひ ) いた の は 彼 の 元気 の 消沈 と その 体格 の 悪く なった 事 である 。 吾輩 が 例の 茶 園 ( ちゃ えん ) で 彼 に 逢った 最後の 日 、 どう だ と 云って 尋ねたら 「 いたち の 最後 屁 ( さいご っ ぺ ) と 肴 屋 ( さかな や ) の 天秤 棒 ( てん びんぼう ) に は 懲 々 ( こりごり ) だ 」 と いった 。 赤松 の 間 に 二三 段 の 紅 ( こう ) を 綴った 紅葉 ( こうよう ) は 昔 ( む か ) し の 夢 の ごとく 散って つく ばい に 近く 代る代る 花弁 ( はなびら ) を こぼした 紅白 ( こうはく ) の 山茶花 ( さざんか ) も 残り なく 落ち 尽した 。 三 間 半 の 南 向 の 椽側 に 冬 の 日 脚 が 早く 傾いて 木 枯 ( こがらし ) の 吹か ない 日 は ほとんど 稀 ( まれ ) に なって から 吾輩 の 昼寝 の 時間 も 狭 ( せば ) め られた ような 気 が する 。 主人 は 毎日 学校 へ 行く 。 帰る と 書斎 へ 立て 籠 ( こも ) る 。 人 が 来る と 、 教師 が 厭 ( いや ) だ 厭だ と いう 。 水彩 画 も 滅多に かか ない 。 タカジヤスターゼ も 功 能 が ない と いって やめて しまった 。 小 供 は 感心に 休ま ないで 幼稚園 へ か よう 。 帰る と 唱歌 を 歌って 、 毬 ( まり ) を ついて 、 時々 吾輩 を 尻尾 ( しっぽ ) で ぶら下げる 。 吾輩 は 御馳走 ( ごちそう ) も 食わ ない から 別段 肥 ( ふと ) り も し ない が 、 まずまず 健康で 跛 ( び っこ ) に も なら ず に その 日 その 日 を 暮して いる 。 鼠 は 決して 取ら ない 。 おさん は 未 ( いま ) だに 嫌 ( きら ) い である 。 名前 は まだ つけて くれ ない が 、 欲 を いって も 際限 が ない から 生涯 ( しょうがい ) この 教師 の 家 ( うち ) で 無名 の 猫 で 終る つもりだ 。 第 二 話 へ


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吾輩 は 猫 である ・ 目次 へ   第 一 話 下段 中段 わがはい||ねこ||もくじ||だい|ひと|はなし|げだん|ちゅうだん Ich bin eine Katze ・ Zum Inhaltsverzeichnis Folge 1 Lower Middle I'm a cat ・ To the table of contents Episode 1 Lower middle 스펜스는 고양이이다 · 차례 첫번째 이야기 하단 중단 Eu sou um gato ・ Vá para o índice Episódio 1 Inferior Médio Tôi là một con mèo ・ Mục lục Tập 1 Hạ trung 我是一只猫 - 内容 第 1 集,下部,中部 我是一隻貓 ・ 到目錄第 1 集下中

吾輩 ( わがはい ) は 猫 である 。 わがはい|||ねこ| Ich bin eine Katze. My friend is a cat. 스펜스 (스펜스)은 고양이이다. Eu sou um gato. 我是一只猫。 我是一隻貓。 名前 は まだ 無い 。 なまえ|||ない Noch kein Name. No name yet. 이름은 아직 없다. Ainda não há nome. どこ で 生れた か とんと 見当 ( けんとう ) が つか ぬ 。 ||うまれた|||けんとう|||| Ich habe keine Ahnung, wo er geboren wurde. I have no idea where he was born. 어디에서 출생했는지 とんと 조준 (검토)가 붙지 않다. Não faço ideia de onde nasci. Tôi không biết anh ta sinh ra ở đâu. 我不知道我出生在哪里。 我不知道他出生在哪裡。 何でも 薄暗い じめじめ した 所 で ニャーニャー 泣いて いた 事 だけ は 記憶 して いる 。 なんでも|うすぐらい|||しょ|||ないて||こと|||きおく|| Alles, woran ich mich erinnere, ist, dass ich an einem feuchten, dunklen Ort miaute. All I remember is that I was miaowing in a damp, dark place. 무엇이든 희미한 축축한 곳에서 야옹 야옹 울고 있던 것만은 기억하고있다. Lembro-me apenas do fato de estar chorando em um lugar escuro e úmido. Tất cả những gì tôi nhớ là tôi đã đi bộ ở một nơi tối tăm ẩm thấp. 我只记得我在一个昏暗潮湿的地方哭泣。 我只記得我在一個潮濕、黑暗的地方喵喵叫。 吾輩 は ここ で 始めて 人間 と いう もの を 見た 。 わがはい||||はじめて|にんげん|||||みた Hier sah ich zum ersten Mal Menschen. It was here that I saw human beings for the first time. 스펜스는 여기에서 시작 인간이라는 것을 보았다. Eu vi um ser humano pela primeira vez aqui. Chính tại đây, lần đầu tiên tôi nhìn thấy con người. 正是在这里,我第一次看到一个人。 正是在這裡,我第一次看到了人類。 しかも あと で 聞く と それ は 書生 と いう 人間 中 で 一 番 獰悪 ( どう あく ) な 種族 であった そうだ 。 |||きく||||しょせい|||にんげん|なか||ひと|ばん|どうあく||||しゅぞく||そう だ Als ich später hörte, scheint es außerdem, dass es die bösartigste Rasse unter den Menschen namens Shosei war. Moreover, when I heard later, it seems that it was the most vicious race among human beings called Shosei. 게다가 나중에 들으면 그것은 서생이라고 인간 중에서 제일 獰悪 (어떻게 교련) 종족이었다고이다. Além disso, ouvi mais tarde que era a raça mais maligna entre os seres humanos chamada Shosei. Hơn nữa, sau này tôi nghe nói, có vẻ như đó là chủng tộc hung ác nhất trong loài người có tên là Shosei. 而且,后来听说是人类中最邪恶的种族,叫做正生。 而且,後來聽說,好像是人類中最兇惡的種族,叫做翔生。 この 書生 と いう の は 時々 我々 を 捕 ( つかま ) えて 煮 ( に ) て 食う と いう 話 である 。 |しょせい|||||ときどき|われわれ||ほ|||に|||くう|||はなし| Die Geschichte ist, dass dieser Student uns manchmal erwischt, sie kocht und sie isst. The story is that this student sometimes catches us, boils them, and eats them. Este shosei é uma história de às vezes nos pegar, fervê-los e comê-los. Chuyện là cậu học sinh này thỉnh thoảng bắt chúng tôi luộc, rồi ăn thịt chúng. 故事是这些学生有时会抓住我们,把它们煮熟,然后吃掉我们。 故事是這個學生有時會抓住我們,煮它們,然後吃掉它們。 しかし その 当時 は 何という 考 も なかった から 別段 恐し いとも 思わ なかった 。 ||とうじ||なんという|こう||||べつだん|こわし||おもわ| Allerdings hatte ich damals keine Ahnung davon, also fand ich es nicht besonders beängstigend. But at that time, I had no idea about it, so I didn't think it was particularly scary. Mais à l'époque, je ne savais pas du tout à quoi m'attendre, et je n'ai donc pas pensé qu'il y avait de quoi avoir peur. 그러나 그 당시는 뭐라고 생각도 없었기 때문 달리 무서운 너무도 몰랐다. No entanto, eu não pensei em nada naquele momento, então não achei particularmente assustador. Tuy nhiên, vào thời điểm đó tôi không biết gì về nó nên tôi không nghĩ nó đặc biệt đáng sợ. 但当时我并不知道那是什么,所以我并不觉得它有什么特别可怕。 不過,當時我對此並沒有什麼概念,所以也沒覺得有什麼特別可怕的。 ただ 彼 の 掌 ( てのひら ) に 載せ られて スー と 持ち 上げ られた 時 何だか フワフワ した 感じ が あった ばかりである 。 |かれ||てのひら|||のせ||||もち|あげ||じ|なんだか|ふわふわ||かんじ||| Es fühlte sich einfach weich und flauschig an, als er es auf seine Handfläche legte und hochhob. It just felt soft and fluffy when he put it on his palm and lifted it up. 단지 그의 손바닥 (손바닥)에 실려 스와 들어 올려 졌을 때 왠지 솜털 느낌이 있었던 바로 직후이다. No entanto, quando foi colocado na palma da mão e levantado com Sue, parecia fofo. Nó chỉ cảm thấy mềm và bông khi anh đặt nó vào lòng bàn tay của mình và nâng nó lên. 当他把它放在手掌上抬起来时,它只是感觉柔软蓬松。 放在手掌上,提起來,只覺得軟軟的,蓬鬆的。 掌 の 上 で 少し 落ちついて 書生 の 顔 を 見た の が いわゆる 人間 と いう もの の 見 始 ( み はじめ ) であろう 。 てのひら||うえ||すこし|おちついて|しょせい||かお||みた||||にんげん|||||み|はじめ||| Als ich mich auf meiner Handfläche ein wenig beruhigte und das Gesicht des Schülers sah, war es wahrscheinlich der Beginn des sogenannten Menschen. It is probably the beginning of what we call a human being (the beginning) when I calmed down on my palm and looked at the face of the student. Lorsqu'il a regardé le visage du calligraphe, il s'est senti un peu plus à l'aise sur sa paume, et c'est ainsi qu'il a commencé à voir ce que l'on appelle un être humain. Provavelmente é o começo do que é chamado de ser humano que ele se acalma um pouco e vê o rosto do shosei na palma da mão. Khi tôi bình tĩnh lại một chút trên lòng bàn tay và nhìn thấy khuôn mặt của học sinh, đó có lẽ là sự khởi đầu của cái gọi là con người. 当我的手掌稍稍平静下来,看着学生的脸的那一刻,大概就是我开始明白什么是人类的开始了。 この 時 妙な もの だ と 思った 感じ が 今 でも 残って いる 。 |じ|みょうな||||おもった|かんじ||いま||のこって| I still have the feeling that I thought it was strange. 이때 이상한 것이라고 생각 느낌이 지금도 남아있다. 我至今仍能感受到当时的那种奇怪的感觉。 第 一 毛 を もって 装飾 さ れ べき はずの 顔 が つる つるして まるで 薬缶 ( やかん ) だ 。 だい|ひと|け|||そうしょく|||||かお|||||くすり かん|| Erstens war das Gesicht, das mit Haaren hätte geschmückt werden sollen, so glatt, dass es wie ein Wasserkocher aussah. The face that should have been decorated with the first hair is slippery, and it is a kettle. 첫째 머리를 가지고 장식 할 것 얼굴이 덩굴 매달아 마치 주전자 (주전자)이다. O rosto, que deveria ter sido decorado com o primeiro cabelo, é escorregadio e parece uma chaleira. 本来应该用原生毛发装饰的脸,光滑得就像一个药水壶。 首先,那張本該用頭髮裝飾的臉,光滑得像個水壺。 その後 ( ご ) 猫 に も だいぶ 逢 ( あ ) った が こんな 片輪 ( かた わ ) に は 一 度 も 出 会 ( で く ) わした 事 が ない 。 そのご||ねこ||||あ|||||かた りん|||||ひと|たび||だ|かい||||こと|| Seitdem habe ich viele Katzen getroffen, aber ich habe noch nie eine gesehen, die so aussieht. After that, (cat) I met a lot of cats, but I have never met such a wheel. Después de eso, conocí a un gato durante mucho tiempo, pero nunca había conocido una sola rueda. Depois disso, conheci um gato por muito tempo, mas nunca conheci uma roda tão simples. 從那以後,我遇到了很多貓,但我從來沒有遇到過長得像這樣的貓。 のみ なら ず 顔 の 真中 が あまりに 突起 して いる 。 |||かお||まんなか|||とっき|| Nicht nur das, die Mitte des Gesichts ist zu hervorstehend. Not only that, the center of the face is too prominent. No solo eso, el centro de la cara sobresale demasiado. Não só isso, o centro do rosto é muito saliente. 不僅如此,臉中央也太突出了。 そうして その 穴 の 中 から 時々 ぷう ぷう と 煙 ( けむり ) を 吹く 。 ||あな||なか||ときどき||||けむり|||ふく Then, from the inside of the hole, I sometimes blow smoke (Kemuri). Luego, desde el interior del agujero, a veces echo humo. Então, de dentro do buraco, às vezes eu sopro fumaça. 有時還會從洞口冒出一股濃煙。 どうも 咽 ( む ) せ ぽく て 実に 弱った 。 |むせ|||||じつに|よわった Ich fühlte mich so durstig und wirklich schwach. I was so depressed that I was really weak. Aparentemente mi faringe estaba muy débil. Aparentemente minha faringe estava tão fraca. 我感到非常口渴,而且非常虛弱。 これ が 人間 の 飲む 煙草 ( たばこ ) と いう もの である 事 は ようやく この 頃 知った 。 ||にんげん||のむ|たばこ||||||こと||||ころ|しった Ungefähr zu dieser Zeit erfuhr ich schließlich, dass dies das ist, was die Leute Tabak nennen. I finally knew at this time that this was a cigarette that humans drink. Fue solo por esta época que finalmente aprendí que esto es lo que los humanos beben cigarrillos. Foi só nessa época que eu finalmente aprendi que é isso que os humanos bebem cigarros. 大約在這個時候,我終於知道這就是人們所說的煙草。 この 書生 の 掌 の 裏 ( うち ) で しばらく は よい 心 持 に 坐って おった が 、 しばらく する と 非常な 速力 で 運転 し 始めた 。 |しょせい||てのひら||うら||||||こころ|じ||すわって||||||ひじょうな|そくりょく||うんてん||はじめた Ich saß eine Weile gut gelaunt auf der Rückseite der Handfläche des Schülers, aber nach einer Weile fing ich an, mit sehr hoher Geschwindigkeit zu fahren. After sitting for a while on the back (of which) of the palm of this student, I started to drive at an extremely high speed after a while. Me senté de buen humor por un tiempo detrás de la palma del shosei, pero después de un tiempo comencé a conducir a una velocidad muy alta. Sentei-me de bom humor por um tempo atrás da palma da mão desse aluno, mas depois de um tempo comecei a dirigir em alta velocidade. 我興致勃勃地坐在學生的手背上坐了一會兒,但過了一會兒,我開始以很高的速度行駛。 書生 が 動く の か 自分 だけ が 動く の か 分ら ない が 無 暗 ( むやみ ) に 眼 が 廻る 。 しょせい||うごく|||じぶん|||うごく|||ぶん ら|||む|あん|||がん||まわる Ich weiß nicht, ob der Schüler umzieht oder nur ich, aber ich kann nicht anders, als mich zu wundern. I don't know whether the calligraphy moves or only me, but my eyes turn blindly. No sé si el shosei se mueve o si solo me muevo yo, pero mis ojos giran en la oscuridad. 我不知道是學生在移動還是只有我在移動,但我忍不住想知道。 胸 が 悪く なる 。 むね||わるく| Mir wird schlecht in der Brust. I feel sick. Mi pecho se enferma. 我的胸部感到噁心。 到底 ( とうてい ) 助から ない と 思って いる と 、 どさりと 音 が して 眼 から 火 が 出た 。 とうてい||たすから|||おもって|||ど さ り と|おと|||がん||ひ||でた When I thought that it wouldn't help at all, there was a slight noise and a fire broke out of my eyes. Cuando pensé que no ayudaría, escuché un fuerte ruido y se me encendió un fuego en los ojos. Alors que je pensais ne pas pouvoir me sauver, j'ai entendu un bruit sourd et du feu est sorti de mes yeux. Quando pensei que não ajudaria, ouvi um barulho alto e um fogo irrompeu em meus olhos. 就在我以為自己沒救了的時候,突然聽到砰的一聲,我的眼睛冒火了。 それ まで は 記憶 して いる が あと は 何の 事 やら いくら 考え 出そう と して も 分ら ない 。 |||きおく||||||なんの|こと|||かんがえ|だそう||||ぶん ら| Bis dahin erinnere ich mich daran, aber danach, egal wie sehr ich versuche, darauf zu kommen, kann ich es nicht herausfinden. I remember it until then, but after that, I don't know how much I think about it. Hasta entonces, lo recuerdo, pero después de eso no sé en qué pensar. Je me souviens de ce qui s'est passé jusqu'à ce moment-là, mais je ne sais pas ce qu'il en est du reste, ni combien j'ai essayé de le comprendre. Até então, eu me lembro disso, mas depois disso não sei o que pensar. 在那之前,我記得它,但在那之後,無論我如何想出一些東西,我都想不通。 ふと 気 が 付いて 見る と 書生 は い ない 。 |き||ついて|みる||しょせい||| Als ich plötzlich wieder zu Sinnen kam, war der Student nirgendwo zu sehen. Suddenly, there are no calligraphers. Cuando de repente me di cuenta, no había shosei. Quand j'ai levé les yeux, j'ai vu qu'il n'y avait personne. Quando de repente percebi, não havia shosei. 當我猛然回過神來時,學生已經不見踪影。 たくさん おった 兄弟 が 一 疋 ( ぴき ) も 見え ぬ 。 ||きょうだい||ひと|ひき|||みえ| I can't even see Piki, the brothers who had many. Il y avait beaucoup de frères, mais je n'en vois aucun. Eu não posso nem ver um monte de irmãos. 我什至见不到很多兄弟。 他有很多兄弟,但沒有一個是可見的。 肝心 ( かんじん ) の 母親 さえ 姿 を 隠して しまった 。 かんじん|||ははおや||すがた||かくして| Sogar seine Mutter, die der wichtigste Faktor war, war verschwunden. Even the most important mother has hidden her sight. Même sa mère s'est cachée. 就连作为关键的母亲,也隐藏了自己的容貌。 就連最重要的母親,也不見了踪影。 その 上 今 ( いま ) まで の 所 と は 違って 無 暗 ( むやみ ) に 明るい 。 |うえ|いま||||しょ|||ちがって|む|あん|||あかるい Außerdem ist es, anders als bisher, sorglos hell. On top of that, unlike the places I have been up to now, it is innocently bright. De plus, contrairement aux lieux précédents, il est plus sombre et plus lumineux. 更何況,這里和之前的地方不一樣,亮堂堂的。 眼 を 明いて い られ ぬ くらい だ 。 がん||あいて||||| Ich konnte meine Augen nicht offen halten. I couldn't keep my eyes open. Je n'arrive même pas à garder les yeux ouverts. Eu não conseguia manter meus olhos abertos. 我睜不開眼睛。 はて な 何でも 容子 ( ようす ) が おかしい と 、 のそのそ 這 ( は ) い 出して 見る と 非常に 痛い 。 ||なんでも|ようこ||||||は|||だして|みる||ひじょうに|いたい If anything is wrong with Yoko, it is very painful if you look at it. Il est très douloureux de ramper et de regarder tout ce qui n'est pas à sa place. Se algo está errado com Yoko, dói muito quando eu o tiro. 最後,如果有什麼東西看起來很奇怪,爬出來看是很痛苦的。 吾輩 は 藁 ( わら ) の 上 から 急に 笹 原 の 中 へ 棄て られた のである 。 わがはい||わら|||うえ||きゅうに|ささ|はら||なか||き て|| I was suddenly abandoned from above the straw into Sasahara. J'ai été soudainement projeté de la paille dans le champ de bambous. 我一下子從稻草堆裡被扔進了竹林裡。 ようやく の 思い で 笹原 を 這い 出す と 向う に 大きな 池 が ある 。 ||おもい||ささはら||はい|だす||むかい う||おおきな|いけ|| When I finally crawl out Sasahara, there is a big pond on the other side. Lorsque nous sommes enfin sortis de la bambouseraie, nous avons trouvé un grand étang de l'autre côté. 終於從竹草地裡爬出來的時候,另一邊是一個大池塘。 吾輩 は 池 の 前 に 坐って どう したら よかろう と 考えて 見た 。 わがはい||いけ||ぜん||すわって|||||かんがえて|みた I sat in front of the pond and thought what to do. Je me suis assis devant l'étang et j'ai réfléchi à ce que je devais faire. 別に これという 分別 ( ふん べつ ) も 出 ない 。 べつに||ぶんべつ||||だ| In addition, there is no such classification. Il n'y a pas de séparation du travail. 没有什么特别的辨别能力。 我想不出有什麼可辨別的。 しばらく して 泣いたら 書生 が また 迎 に 来て くれる か と 考え 付いた 。 ||ないたら|しょせい|||むかい||きて||||かんがえ|ついた After a while after crying, I thought that the calligrapher would come to meet me again. Au bout d'un moment, j'ai pensé que si je pleurais, le calligraphe viendrait me chercher à nouveau. 過了一會兒,我想,如果我哭了,那位同學又會來接我的。 ニャー 、 ニャー と 試みに やって 見た が 誰 も 来 ない 。 |||こころみに||みた||だれ||らい| Meow, I tried it with meow, but nobody came. 喵喵喵,試過了,沒人來。 そのうち 池 の 上 を さらさら と 風 が 渡って 日 が 暮れ かかる 。 その うち|いけ||うえ||||かぜ||わたって|ひ||くれ| Bald weht eine sanfte Brise über den Teich und die Sonne geht unter. The wind blows over the pond and the sun sets. Le vent siffle sur l'étang et le soleil commence à se coucher. O vento passou sobre a lagoa e o sol se pôs. 不久,微風吹過池塘,太陽落山了。 腹 が 非常に 減って 来た 。 はら||ひじょうに|へって|きた Ich bin sehr hungrig. I'm very hungry. Je commence à avoir très faim. Eu estou faminto. 泣き たくて も 声 が 出 ない 。 なき|||こえ||だ| Ich möchte weinen, aber meine Stimme kommt nicht heraus. Even if I want to cry, I can't speak. Je voulais pleurer, mais je ne pouvais pas parler. 仕方 が ない 、 何でも よい から 食物 ( くいもの ) の ある 所 まで あるこう と 決心 を して そろりそろり と 池 を 左 ( ひだ ) り に 廻り 始めた 。 しかた|||なんでも|||しょくもつ||||しょ||||けっしん|||||いけ||ひだり||||まわり|はじめた There was no choice, and I decided to go from anything to food wherever I could, and began to wander around the pond to the left. N'ayant pas le choix, il décida de marcher vers la nourriture qu'il pourrait trouver et commença à tourner autour de l'étang sur la gauche. Não tem jeito, eu decidi ir de qualquer coisa para um lugar com comida, e comecei a virar o lago todo para a esquerda (dobras). どうも 非常に 苦しい 。 |ひじょうに|くるしい Es ist sehr schmerzhaft. It's very painful. C'est très douloureux. É muito doloroso. そこ を 我慢 して 無理やり に 這 ( は ) って 行く と ようやく の 事 で 何となく 人間 臭い 所 へ 出た 。 ||がまん||むりやり||は|||いく||||こと||なんとなく|にんげん|くさい|しょ||でた Ich ertrug es und kroch gewaltsam, und schließlich kam ich an einen Ort heraus, der irgendwie nach einem Menschen roch. When I put up there and forced to crawl, I finally managed to find myself in a human-like place. J'ai persévéré et rampé de force pour arriver enfin à un endroit qui sentait vaguement l'humain. Aguentei e rastejei à força até lá, e finalmente saí de alguma forma para um lugar que cheirava a um ser humano. 我忍著,用力地爬著,終於出來了一個不知怎麼有點人味的地方。 ここ へ 這 入 ( はい ) ったら 、 どうにか なる と 思って 竹 垣 の 崩 ( くず ) れた 穴 から 、 とある 邸 内 に もぐり 込んだ 。 ||は|はい||||||おもって|たけ|かき||くず|||あな|||てい|うち|||こんだ Ich kroch durch ein Loch in einem kaputten Bambuszaun in eine Villa und dachte, dass etwas daraus werden würde, wenn ich eintreten würde. When I entered here (Yes), I thought that something would happen, and I rushed into a certain house through the collapsed hole in the bamboo fence. Se eu rastejar até aqui (sim), me perguntei se algo aconteceria, e entrei furtivamente em uma certa mansão por um buraco na cerca de bambu que havia desmoronado. 我從破竹籬笆上的一個洞裡爬進了一座豪宅,心想進去會有什麼好結果。 縁 は 不思議な もの で 、 もし この 竹 垣 が 破れて い なかった なら 、 吾輩 は ついに 路傍 ( ろぼう ) に 餓死 ( がし ) した かも 知れ ん のである 。 えん||ふしぎな|||||たけ|かき||やぶれて||||わがはい|||ろぼう|||がし||||しれ|| Das Schicksal ist ein seltsames, und wenn dieser Bambuszaun nicht zerrissen worden wäre, wäre ich am Straßenrand vielleicht endgültig verhungert. The rim is strange, and if this bamboo fence had not been torn, I might have finally starved to the roadside (robo). Il est étrange que si cette clôture de bambou n'avait pas été arrachée, j'aurais pu mourir de faim sur le bord de la route. A borda é estranha, e se esta cerca de bambu não tivesse sido rasgada, eu poderia finalmente ter morrido de fome na beira da estrada. 一樹 の 蔭 と は よく 云 ( い ) った もの だ 。 かずき||おん||||うん|||| Kazuki's shadow is often said. On dit souvent que l'arbre est l'ombre de l'arbre. A sombra de Kazuki é frequentemente dita. Kazuki no Kage是一個眾所周知的短語。 この 垣根 の 穴 は 今日 ( こんにち ) に 至る まで 吾輩 が 隣家 ( と なり ) の 三 毛 を 訪問 する 時 の 通路 に なって いる 。 |かきね||あな||きょう|||いたる||わがはい||りんか||||みっ|け||ほうもん||じ||つうろ||| This hole in the fence has been a passage for me to visit Sanke in my neighbor's house until today. Ce trou dans la haie m'a permis de rendre visite à mon voisin, Samoa, jusqu'à aujourd'hui. Este buraco na cerca tem sido uma passagem para eu visitar o gato malhado da casa do meu vizinho (tornar-se) até hoje. さて 邸 ( や しき ) へ は 忍び込んだ もの の これ から 先どう して 善 ( い ) いか 分ら ない 。 |てい|||||しのびこんだ|||||せんどう||ぜん|||ぶん ら| Well, I sneaked into the mansion, but I don't know why it's good from now on. J'ai pénétré dans le manoir, mais je ne sais pas quoi faire à partir de maintenant. その うち に 暗く なる 、 腹 は 減る 、 寒 さ は 寒し 、 雨 が 降って 来る と いう 始末 で もう 一刻 の 猶予 ( ゆう よ ) が 出来 なく なった 。 |||くらく||はら||へる|さむ|||さむし|あめ||ふって|くる|||しまつ|||いっこく||ゆうよ||||でき|| In the meantime, it got darker, I was hungry, the cold was cold, and it was raining, so I couldn't afford another moment. Bientôt, il faisait nuit, nous avions faim, il faisait froid et il pleuvait, et nous ne pouvions plus nous permettre un seul instant de répit. 仕方 が ない から とにかく 明るくて 暖か そうな 方 へ 方 へ と あるいて 行く 。 しかた|||||あかるくて|あたたか|そう な|かた||かた||||いく Il n'y avait pas d'autre choix que de marcher dans la direction de la lumière et de la chaleur. 今 から 考える と その 時 は すでに 家 の 内 に 這 入って おった のだ 。 いま||かんがえる|||じ|||いえ||うち||は|はいって|| Avec le recul, je vois maintenant que j'avais déjà rampé à l'intérieur de la maison à ce moment-là. 从现在开始考虑时,那时我已经在屋子里爬行了。 ここ で 吾輩 は 彼 ( か ) の 書生 以外 の 人間 を 再び 見る べき 機会 に 遭遇 ( そうぐう ) した のである 。 ||わがはい||かれ|||しょせい|いがい||にんげん||ふたたび|みる||きかい||そうぐう||| J'ai eu l'occasion de revoir une personne autre que son propre étudiant en lettres. Aqui, encontrei a oportunidade de ver outros humanos além de seu (ou) aluno novamente. 第 一 に 逢った の が おさん ( 台所 で 働く 下 女 の 通称 。 だい|ひと||あった||||だいどころ||はたらく|した|おんな||つうしょう Die erste Person, die ich traf, war Osan (ein gebräuchlicher Name für ein Dienstmädchen, das in der Küche arbeitet. The first thing I met was Osan (commonly known as a young girl who works in the kitchen. La première personne que j'ai rencontrée était Osan (un nom commun pour un serviteur qui travaille dans la cuisine). A primeira coisa que conheci foi um velho (comumente conhecido como uma jovem que trabalha na cozinha. おさん どん ) である 。 これ は 前 の 書生 より 一層 乱暴な 方 で 吾輩 を 見る や 否 や いきなり 頸筋 ( くびすじ ) を つかんで 表 へ 抛 ( ほう ) り 出した 。 ||ぜん||しょせい||いっそう|らんぼうな|かた||わがはい||みる||いな|||けいすじ||||ひょう||なげう|||だした As soon as I saw him as a more violent person than the previous student, I suddenly grasped my neck muscles and jumped out to the table. Celui-ci était encore plus violent que le précédent, et dès qu'il m'a vu, il m'a soudainement attrapé par le cou et m'a jeté dehors. Isso foi ainda mais violento do que o shosei anterior, e assim que o vi, de repente agarrei o músculo cervical e puxei-o para a mesa. いや これ は 駄目だ と 思った から 眼 を ね ぶって 運 を 天 に 任せて いた 。 |||だめだ||おもった||がん||||うん||てん||まかせて| J'ai pensé que c'était une mauvaise idée, j'ai donc gardé les yeux ouverts et j'ai laissé faire le hasard. Não, eu pensei que isso não era bom, então eu olhei nos meus olhos e deixei minha sorte para o céu. しかし ひもじい の と 寒い の に は どうしても 我慢 が 出来 ん 。 ||||さむい|||||がまん||でき| Aber ich kann Hunger und Kälte nicht ertragen. Mais je ne supporte pas les frissons et le froid. 吾輩 は 再び おさん の 隙 ( すき ) を 見て 台所 へ 這 ( は ) い 上 ( あ が ) った 。 わがはい||ふたたび|||すき|||みて|だいどころ||は|||うえ||| Wieder erhaschte ich einen Blick auf Mr. Suki und kroch in die Küche. Voyant un vide, j'ai recommencé à ramper dans la cuisine. Vi novamente a lacuna do velho e me arrastei até a cozinha. すると 間もなく また 投げ出さ れた 。 |まもなく||なげださ| Peu de temps après, il a été à nouveau expulsé. 吾輩 は 投げ出さ れて は 這い上り 、 這い上って は 投げ出さ れ 、 何でも 同じ 事 を 四五 遍 繰り返した の を 記憶 して いる 。 わがはい||なげださ|||はいあがり|はいあがって||なげださ||なんでも|おなじ|こと||しご|へん|くりかえした|||きおく|| Je me souviens d'avoir été jeté dehors, d'avoir rampé, d'avoir rampé et d'avoir été jeté dehors, et d'avoir tout répété quarante-cinq fois. Я рвал и ползал, ползал и выбрасывал и вспомнил, что все прошло 45 раз одно и то же. その 時 に おさん と 云う 者 は つくづく いやに なった 。 |じ||||うん う|もの|||| Damals mochte ich die Person namens Osan wirklich nicht. At that time, the person who was called an old man became uncomfortable. À l'époque, j'en avais assez qu'on m'appelle Osan. この 間 おさん の 三 馬 ( さんま = 魚 の サンマ の こと ) を 偸 ( ぬす ) んで この 返 報 を して やって から 、 やっと 胸 の 痞 ( つかえ ) が 下りた 。 |あいだ|||みっ|うま||ぎょ||さんま||||とう||||かえ|ほう||||||むね||ひ|||おりた During this time, I was able to give this report by using the Sanma (pacific saury = fish saury), and finally my chest pimples came down. Après que je lui ai donné cette réponse l'autre jour, il s'est enfin débarrassé de l'oppression qu'il ressentait dans sa poitrine. Тем временем я выбросил трех лошадей (сайра = рыба сайра) из трех лошадей (санма = рыба сайра), и после этого ответа слезы на груди упали. 吾輩 が 最後に つまみ出さ れよう と した とき に 、 この 家 ( うち ) の 主人 が 騒々しい 何 だ と いい ながら 出て 来た 。 わがはい||さいごに|つまみださ|||||||いえ|||あるじ||そうぞうしい|なん|||||でて|きた Au moment où l'on s'apprêtait à m'enlever, le propriétaire est sorti en disant que c'était très bruyant. Когда меня собирались забрать в конце, я вышел и сказал, что владелец этого дома (дома) был шумным. 下 女 は 吾輩 を ぶら下げて 主人 の 方 へ 向けて この 宿 ( やど ) なし の 小 猫 が いくら 出して も 出して も 御 台所 ( お だいどころ ) へ 上 ( あ が ) って 来て 困り ます と いう 。 した|おんな||わがはい||ぶらさげて|あるじ||かた||むけて||やど||||しょう|ねこ|||だして||だして||ご|だいどころ||||うえ||||きて|こまり||| The maiden hangs me and heads towards her husband. No matter how much the little cat without this inn (Yado) comes out, she will come up to the kitchen (Odaikoro) and be in trouble. say . La servante m'a fait pendre devant son maître et lui a dit : "Cette petite chatte sans auberge n'arrête pas de venir dans la cuisine, même si je la laisse sortir. Нижняя женщина вешает мужа и поворачивается к хозяину. Даже если маленькая кошка без этого жилья (йодо) выйдет, это будет беспокоить, если вы придете на кухню (отто) Это говорит. 主人 は 鼻 の 下 の 黒い 毛 を 撚 ( ひね ) り ながら 吾輩 の 顔 を しばらく 眺 ( な が ) め て おった が 、 やがて そんな ら 内 へ 置いて やれ と いった まま 奥 へ 這 入 ( はい ) って しまった 。 あるじ||はな||した||くろい|け||ひね||||わがはい||かお|||ちょう||||||||||うち||おいて|||||おく||は|はい||| The master twisted the black hair under his nose and looked at my face for a while, but eventually he left it inside and crawls into the back (yes). I got it. Il m'a regardé un moment en tortillant les poils noirs sous son nez, puis il a rampé vers l'arrière de la maison comme s'il m'avait dit de le laisser à l'intérieur. Мой муж некоторое время смотрел мне в лицо, скручивая чёрные волосы под носом, но в конце концов заполз в спину, говоря, что это будет внутри (да) Я понял 主人 は あまり 口 を 聞か ぬ 人 と 見えた 。 あるじ|||くち||きか||じん||みえた Mein Mann schien ein Mann zu sein, der mir nicht oft zuhörte. Mon mari ne semblait pas être un homme de parole. 下 女 は 口 惜 ( く や ) し そうに 吾輩 を 台所 へ 抛 ( ほう ) り 出した 。 した|おんな||くち|せき||||そう に|わがはい||だいどころ||なげう|||だした Le serviteur m'a jeté à regret dans la cuisine. Женщина из нижней части дома вышла из кухни, чтобы выйти. かくして 吾輩 は ついに この 家 ( うち ) を 自分 の 住 家 ( すみか ) と 極 ( き ) め る 事 に した のである 。 |わがはい||||いえ|||じぶん||じゅう|いえ|||ごく||||こと||| J'ai finalement décidé de faire de cette maison mon foyer. В конце концов я решил сделать этот дом (дом) очень вежливым с моей резиденцией (Сумика) 吾輩 の 主人 は 滅多 ( めった ) に 吾輩 と 顔 を 合せる 事 が ない 。 わがはい||あるじ||めった|||わがはい||かお||あわせる|こと|| Мой муж редко (редко) выглядит лицом к лицу. 職業 は 教師 だ そうだ 。 しょくぎょう||きょうし||そう だ The profession seems to be a teacher. 学校 から 帰る と 終日 書斎 に 這 入った ぎり ほとんど 出て 来る 事 が ない 。 がっこう||かえる||しゅうじつ|しょさい||は|はいった|||でて|くる|こと|| 家 の もの は 大変な 勉強 家 だ と 思って いる 。 いえ||||たいへんな|べんきょう|いえ|||おもって| Я думаю, что домашние вещи трудолюбивы. 当人 も 勉強 家 である か の ごとく 見せて いる 。 とうにん||べんきょう|いえ|||||みせて| Он показывает себя, как будто он студент. しかし 実際 は うち の もの が いう ような 勤勉 家 で は ない 。 |じっさい||||||||きんべん|いえ||| 吾輩 は 時々 忍び足 に 彼 の 書斎 を 覗 ( の ぞ ) いて 見る が 、 彼 は よく 昼寝 ( ひるね ) を して いる 事 が ある 。 わがはい||ときどき|しのびあし||かれ||しょさい||のぞ||||みる||かれ|||ひるね|||||こと|| 時々 読み かけて ある 本 の 上 に 涎 ( よだれ ) を たらして いる 。 ときどき|よみ|||ほん||うえ||よだれ|||| 彼 は 胃 弱 で 皮膚 の 色 が 淡黄色 ( たんこう しょく ) を 帯びて 弾力 の ない 不 活 溌 ( ふ かっぱつ ) な 徴候 を あらわして いる 。 かれ||い|じゃく||ひふ||いろ||あわ きいろ||||おびて|だんりょく|||ふ|かつ|はつ||||ちょうこう||| У него слабый живот, а цвет кожи приобретает бледно-желтый цвет (стерилизация) и проявляет неэластичные, неактивные (нечеткие) признаки. その 癖 に 大飯 を 食う 。 |くせ||おおい||くう Я ем большой рис по этой привычке. 大飯 を 食った 後 ( あと ) で タカジヤスターゼ ( 高 峰 譲 吉 が 麹 ( こうじ ) かび から 創 製 した 消化 酵素 剤 の 商標 名 ) を 飲む 。 おおい||くった|あと||||たか|みね|ゆずる|きち||こうじ||||はじめ|せい||しょうか|こうそ|ざい||しょうひょう|な||のむ After eating a large meal (after), drink Takajiyastase (a brand name of a digestive enzyme agent created by Koji mold from Koji mold). Takajya Stase (торговая марка пищеварительного ферментного агента, созданного Кодзи Кодзи) из Takajya Stase (после еды) (после). 飲んだ 後 で 書物 を ひろげる 。 のんだ|あと||しょもつ|| 二三 ページ 読む と 眠く なる 。 ふみ|ぺーじ|よむ||ねむく| 涎 を 本 の 上 へ 垂らす 。 よだれ||ほん||うえ||たらす これ が 彼 の 毎夜 繰り返す 日課 である 。 ||かれ||まいよ|くりかえす|にっか| 吾輩 は 猫 ながら 時々 考える 事 が ある 。 わがはい||ねこ||ときどき|かんがえる|こと|| 教師 と いう もの は 実に 楽 ( らく ) な もの だ 。 きょうし|||||じつに|がく|||| 人間 と 生れたら 教師 と なる に 限る 。 にんげん||うまれたら|きょうし||||かぎる こんなに 寝て いて 勤まる もの なら 猫 に でも 出来 ぬ 事 は ない と 。 |ねて||つとまる|||ねこ|||でき||こと||| Если вы спите так много, что можете работать, без кошек не обойтись. それ でも 主人 に 云わ せる と 教師 ほど つらい もの は ない そうで 彼 は 友達 が 来る 度 ( たび ) に 何とか かんと か 不平 を 鳴らして いる 。 ||あるじ||うん わ|||きょうし||||||そう で|かれ||ともだち||くる|たび|||なんとか|||ふへい||ならして| Тем не менее, если вы скажете моему мужу, нет ничего сложнее, чем учитель, поэтому он жалуется на каждый раз, когда приходит друг (каждый раз). 吾輩 が この 家 へ 住み 込んだ 当時 は 、 主人 以外 の もの に は はなはだ 不 人望 であった 。 わがはい|||いえ||すみ|こんだ|とうじ||あるじ|いがい||||||ふ|じんぼう| В то время, когда я жил в этом доме, это было очень непопулярно для других вещей, кроме моего мужа. どこ へ 行って も 跳 ( は ) ね 付け られて 相手 に して くれ 手 が なかった 。 ||おこなって||と|||つけ||あいて||||て|| Независимо от того, куда я пошел, у меня не было никакой руки, чтобы прыгнуть. いかに 珍重 さ れ なかった か は 、 今日 ( こんにち ) に 至る まで 名前 さえ つけて くれ ない ので も 分る 。 |ちんちょう||||||きょう|||いたる||なまえ|||||||ぶん る 吾輩 は 仕方 が ない から 、 出来 得る 限り 吾輩 を 入れて くれた 主人 の 傍 ( そば ) に いる 事 を つとめた 。 わがはい||しかた||||でき|える|かぎり|わがはい||いれて||あるじ||そば||||こと|| I couldn't help it, so I tried to be near my husband who had put me in as much as I could. 朝 主人 が 新聞 を 読む とき は 必ず 彼 の 膝 ( ひざ ) の 上 に 乗る 。 あさ|あるじ||しんぶん||よむ|||かならず|かれ||ひざ|||うえ||のる 彼 が 昼寝 を する とき は 必ず その 背中 ( せなか ) に 乗る 。 かれ||ひるね|||||かならず||せなか|||のる これ は あながち 主人 が 好き と いう 訳 で は ない が 別に 構い 手 が なかった から やむ を 得 ん のである 。 |||あるじ||すき|||やく|||||べつに|かまい|て||||||とく|| This is not because I like my husband, but I have to quit because I had no choice. Нельзя сказать, что мой муж любит себя, но он перестал иметь никакой другой части その後 いろいろ 経験 の 上 、 朝 は 飯櫃 ( めしびつ ) の 上 、 夜 は 炬燵 ( こたつ ) の 上 、 天気 の よい 昼 は 椽側 ( えんがわ ) へ 寝る 事 と した 。 そのご||けいけん||うえ|あさ||めしびつ|||うえ|よ||こたつ|||うえ|てんき|||ひる||たるきがわ|||ねる|こと|| Перепробовав разные вещи, я решил ложиться спать на стороне ложи (суп мисо) утром, на лед (котацу) ночью и днем (солнце) в хорошую погоду в хорошую погоду. しかし 一 番 心 持 の 好い の は 夜 ( よ ) に 入 ( い ) って ここ の うち の 小 供 の 寝床 へ もぐり 込んで いっしょに ねる 事 である 。 |ひと|ばん|こころ|じ||この い|||よ|||はい|||||||しょう|とも||ねどこ|||こんで|||こと| However, the best thing to do is to go in at night and sneak into the bed of our small companion here. この 小 供 と いう の は 五 つ と 三 つ で 夜 に なる と 二 人 が 一 つ 床 へ 入 ( はい ) って 一 間 ( ひと ま ) へ 寝る 。 |しょう|とも|||||いつ|||みっ|||よ||||ふた|じん||ひと||とこ||はい|||ひと|あいだ||||ねる 吾輩 は いつでも 彼 等 の 中間 に 己 ( おの ) れ を 容 ( い ) る べき 余地 を 見 出 ( みいだ ) して どうにか 、 こう に か 割り 込む のである が 、 運 悪く 小 供 の 一 人 が 眼 を 醒 ( さ ) ます が 最後 大変な 事 に なる 。 わがはい|||かれ|とう||ちゅうかん||おのれ||||よう||||よち||み|だ|||||||わり|こむ|||うん|わるく|しょう|とも||ひと|じん||がん||せい||||さいご|たいへんな|こと|| Я всегда нахожу комнату, где можно поселиться среди них, я как-то перебиваю, но, к счастью, одна из них - неудача Я проснусь, но это будет последняя тяжелая работа. 小 供 は ―― ことに 小さい 方 が 質 ( たち ) が わるい ―― 猫 が 来た 猫 が 来た と いって 夜中 でも 何でも 大きな 声 で 泣き 出す のである 。 しょう|とも|||ちいさい|かた||しち||||ねこ||きた|ねこ||きた|||よなか||なんでも|おおきな|こえ||なき|だす| Маленький - Самый маленький имеет плохое качество - Говорят, что пришел кот, и все начинает плакать поздно в полночь. すると 例の 神経 胃 弱 性 の 主人 は 必 ( かな ら ) ず 眼 を さまして 次の 部屋 から 飛び出して くる 。 |れいの|しんけい|い|じゃく|せい||あるじ||ひつ||||がん|||つぎの|へや||とびだして| 現に せんだって など は 物指 ( ものさし ) で 尻 ぺた を ひどく 叩 ( たた ) かれた 。 げんに||||ぶつ ゆび|||しり||||たた|| Actually, I was hit with a ruler on my buttock. 吾輩 は 人間 と 同居 して 彼 等 を 観察 すれば する ほど 、 彼 等 は 我 儘 ( わがまま ) な もの だ と 断言 せ ざる を 得 ない ように なった 。 わがはい||にんげん||どうきょ||かれ|とう||かんさつ||||かれ|とう||われ|まま||||||だんげん||||とく||| Когда я пошел жить с людьми и наблюдать за ними, тем больше им приходилось утверждать, что они эгоисты (эгоисты). ことに 吾輩 が 時々 同 衾 ( どう きん ) する 小 供 の ごとき に 至って は 言語 同 断 ( ごんごどうだん ) である 。 |わがはい||ときどき|どう|ふすま||||しょう|とも||||いたって||げんご|どう|だん|| Insbesondere bei kleinen Kindern, die manchmal dieselbe Sprache sprechen, ist die Sprache dieselbe. 自分 の 勝手な 時 は 人 を 逆 さ に したり 、 頭 へ 袋 を かぶせたり 、 抛 ( ほう ) り 出したり 、 へっ つい の 中 へ 押し 込んだり する 。 じぶん||かってな|じ||じん||ぎゃく||||あたま||ふくろ|||なげう|||だしたり|へ っ|||なか||おし|こんだり| Когда вы эгоистичны, вы переворачиваете человека с ног на голову, надеваете на голову сумку, вытаскиваете ее, толкаете в незнакомца. しかも 吾輩 の 方 で 少し でも 手出し を しよう もの なら 家内 ( かない ) 総がかり で 追い 廻して 迫害 を 加える 。 |わがはい||かた||すこし||てだし|||||かない||そうがかり||おい|まわして|はくがい||くわえる Более того, если я собираюсь раздать хоть немного, я буду преследовать общее количество в моем доме (или нет) и добавлю преследование. この 間 も ちょっと 畳 で 爪 を 磨 ( と ) いだ ら 細君 が 非常に 怒 ( おこ ) って それ から 容易に 座敷 へ 入 ( い ) れ ない 。 |あいだ|||たたみ||つめ||みがく||||ほそ くん||ひじょうに|いか|||||よういに|ざしき||はい||| 台所 の 板の間 で 他 ( ひと ) が 顫 ( ふる ) えて いて も 一 向 ( いっこう ) 平気な もの である 。 だいどころ||いたのま||た|||せん|||||ひと|むかい||へいきな|| Даже если другие люди собираются трясти в кухонных досках, они не впечатляют 吾輩 の 尊敬 する 筋 向 ( すじ むこう ) の 白 君 など は 逢 ( あ ) う 度 毎 ( たび ごと ) に 人間 ほど 不人情な もの は ない と 言って おら る る 。 わがはい||そんけい||すじ|むかい||||しろ|きみ|||あ|||たび|まい||||にんげん||ふにんじょうな|||||いって||| It is said that there is nothing more inhumane than human beings, such as Mr. Shiro, who is respected by me, every time he meets. Белые мамы Икуцу Масузуки говорят, что нет ничего более неверного, чем каждый день (каждый раз). 白 君 は 先日 玉 の ような 子猫 を 四 疋産 ( う ) ま れた のである 。 しろ|きみ||せんじつ|たま|||こ ねこ||よっ|ひきさん|||| The other day, Mr. Shiro was born with a kitten like a ball. ところが そこ の 家 ( うち ) の 書生 が 三 日 目 に そいつ を 裏 の 池 へ 持って 行って 四 疋 ながら 棄てて 来た そうだ 。 |||いえ|||しょせい||みっ|ひ|め||そい つ||うら||いけ||もって|おこなって|よっ|ひき||き て て|きた|そう だ 然而,第三天,住在那裡的學生把它帶到後面的池塘里,哭著扔掉。 白 君 は 涙 を 流して その 一部始終 を 話した 上 、 どうしても 我 等 猫 族 ( ねこ ぞく ) が 親子 の 愛 を 完 ( まった ) く して 美しい 家族 的 生活 を する に は 人間 と 戦って これ を 剿滅 ( そう めつ ) せ ねば なら ぬ と いわ れた 。 しろ|きみ||なみだ||ながして||いちぶしじゅう||はなした|うえ||われ|とう|ねこ|ぞく||||おやこ||あい||かん||||うつくしい|かぞく|てき|せいかつ|||||にんげん||たたかって|||しょうめつ||||||||| 白君流著淚講述了事情的始末,無論怎樣,我們貓都要和人類抗爭,才能完成親子之愛,過上美好的家庭生活,據說這是必須消滅的。 一 々 もっとも の 議論 と 思う 。 ひと||||ぎろん||おもう また 隣り の 三 毛 ( み け ) 君 など は 人間 が 所有 権 と いう 事 を 解して い ない と いって 大 ( おおい ) に 憤慨 して いる 。 |となり||みっ|け|||きみ|||にんげん||しょゆう|けん|||こと||かいして|||||だい|||ふんがい|| Также соседние три волоска (мики) обижены в большом (большом) высказывании, что люди не понимают собственность. 另外,我的隔壁鄰居邁克·邁克對人類不理解所有權的概念感到非常憤怒。 元来 我々 同族 間 で は 目刺 ( めざし ) の 頭 でも 鰡 ( ぼ ら ) の 臍 ( へそ ) でも 一 番 先 に 見付けた もの が これ を 食う 権利 が ある もの と なって いる 。 がんらい|われわれ|どうぞく|あいだ|||めざし|||あたま||ぼら||||へそ|||ひと|ばん|さき||みつけた|||||くう|けんり|||||| Первоначально мы имеем право есть это, даже если мы видим семью (цель) между нашими семьями, даже пупок (пуповина) 鰡 (ら), который был найден первым. 本來,在我們同類中,第一個找到魚的人,無論是魚頭或鰓臍,都有權利吃它。 もし 相手 が この 規約 を 守ら なければ 腕力 に 訴えて 善 ( よ ) い くらい の もの だ 。 |あいて|||きやく||まもら||わんりょく||うったえて|ぜん|||||| Если другая сторона не соблюдает это правило, этого достаточно, чтобы апеллировать к вашим силам. しかる に 彼 等 人間 は 毫 ( ごう ) も この 観念 が ない と 見えて 我 等 が 見付けた 御馳走 は 必ず 彼 等 の ため に 掠奪 ( りゃくだつ ) せら る る のである 。 ||かれ|とう|にんげん||ごう||||かんねん||||みえて|われ|とう||みつけた|ごちそう||かならず|かれ|とう||||りゃくだつ||||| 但是,人类似乎对此一无所知,而我们发现的美食总是被他们剥夺了。 然而,這些人類似乎根本沒有這個觀念,我們找到的美食也難免會被掠奪。 彼 等 は その 強力 を 頼んで 正当に 吾人 が 食い 得 べき もの を 奪 ( うば ) って すまして いる 。 かれ|とう|||きょうりょく||たのんで|せいとうに|ごじん||くい|とく||||だつ|||| 他们恳求他们有能力合法剥夺我应有的食物。 他們靠著自己的力量,偷走了我們該吃的東西。 白 君 は 軍人 の 家 に おり 三 毛 君 は 代 言 の 主人 を 持って いる 。 しろ|きみ||ぐんじん||いえ|||みっ|け|きみ||だい|げん||あるじ||もって| Shiro先生在一个军人的房子里,而Mitsuge先生则是另一种选择。 白先生住在軍人家裡,三寶先生有一個替他說話的師傅。 吾輩 は 教師 の 家 に 住んで いる だけ 、 こんな 事 に 関する と 両 君 より も むしろ 楽天 である 。 わがはい||きょうし||いえ||すんで||||こと||かんする||りょう|きみ||||らくてん| 我住在老師家裡,所以在這種事情上我比你們倆更樂觀。 ただ その 日 その 日 が どうにか こう に か 送ら れれば よい 。 ||ひ||ひ||||||おくら|| 只是這一天必須以這樣或那樣的方式度過。 いくら 人間 だって 、 そう いつまでも 栄える 事 も ある まい 。 |にんげん||||さかえる|こと||| 无论人类如何,他们都能永远繁荣。 人無論有多大,都不可能永遠繁榮。 まあ 気 を 永く 猫 の 時節 を 待つ が よかろう 。 |き||ながく|ねこ||じせつ||まつ|| 好吧,你應該耐心等待貓的季節。 我 儘 ( わがまま ) で 思い出した から ちょっと 吾輩 の 家 の 主人 が この 我 儘 で 失敗 した 話 を しよう 。 われ|まま|||おもいだした|||わがはい||いえ||あるじ|||われ|まま||しっぱい||はなし|| Since I remembered it in my own way, let's talk about the story that the owner of my house failed in this selfishness. 這讓我想起了我的自私,所以讓我告訴你我家的主人是如何因為這種自私而失敗的故事。 元来 この 主人 は 何と いって 人 に 勝 ( すぐ ) れて 出来る 事 も ない が 、 何 に でも よく 手 を 出し た がる 。 がんらい||あるじ||なんと||じん||か|||できる|こと||||なん||||て||だし|| 本來,這個高手從來就無法得人心,但他卻總想嘗試一下什麼事情。 俳句 を やって ほととぎす へ 投書 を したり 、 新 体 詩 を 明星 へ 出したり 、 間違い だらけ の 英文 を かいたり 、 時に よる と 弓 に 凝 ( こ ) ったり 、 謡 ( うたい ) を 習ったり 、 また ある とき は ヴァイオリン など を ブーブー 鳴らしたり する が 、 気の毒な 事 に は 、 どれ も これ も 物 に なって おら ん 。 はいく|||||とうしょ|||しん|からだ|し||みょうじょう||だしたり|まちがい|||えいぶん|||ときに|||ゆみ||こ|||うたい|||ならったり|||||ヴぁいおりん||||ならしたり|||きのどくな|こと|||||||ぶつ|||| I write haiku to the lesser cuckoo, send new poems to the violin, write English sentences full of mistakes, and sometimes learn to sing on the bow. Sometimes I scream violins and so on, but I'm sorry to say that none of them have become a thing. 我寫俳句並提交給Hototogisu,將新體詩提交給Myojo,寫出充滿錯誤的英語句子,有時學拉弓,學唱歌等等,有時我拉小提琴什麼的,但唉,這些都沒有成為一個東西。 その 癖 やり 出す と 胃 弱 の 癖 に いやに 熱心だ 。 |くせ||だす||い|じゃく||くせ|||ねっしんだ When he starts this habit, he is very enthusiastic, even though he has a weak stomach. その 癖 やり 出す と 胃 弱 の 癖 に いやに 熱心だ 。 当我开始养成这种习惯时,我就对胃虚弱的习惯充满热情。 當我開始養成這個習慣時,我對腸胃不好的習慣非常熱衷。 後架 ( こう か ) の 中 で 謡 を うたって 、 近所 で 後架 先生 ( こうか せ ん せい ) と 渾名 ( あだな ) を つけ られて いる に も 関せ ず 一 向 ( いっこう ) 平気な もの で 、 やはり これ は 平 ( たいら ) の 宗盛 ( むね もり ) にて 候 ( そうろう ) を 繰返して いる 。 あと か||||なか||うたい|||きんじょ||あと か|せんせい|こう か|||||こんめい||||||||かんせ||ひと|むかい||へいきな||||||ひら|||はじめ さかり||||こう|||くりかえして| He is known in the neighborhood as "Gokaku Sensei" (teacher of the latter) for his chanting in the kouka, yet he is not afraid to repeat the same chanting. 儘管他在後排唱歌,在附近被稱為“光華老師”,但他卻完全不在意,果然,這種事在平宗森屢屢發生。 みんな が そら 宗盛 だ と 吹き出す くらい である 。 |||はじめ さかり|||ふきだす|| Everyone would blurt out that it was SORA SOUMORI. 這足以讓所有人都說這是宗森空。 この 主人 が どういう 考 に なった もの か 吾輩 の 住み 込んで から 一 月 ばかり 後 ( のち ) の ある 月 の 月給 日 に 、 大きな 包み を 提 ( さ ) げ て あわただしく 帰って 来た 。 |あるじ|||こう|||||わがはい||すみ|こんで||ひと|つき||あと||||つき||げっきゅう|ひ||おおきな|つつみ||てい|||||かえって|きた I don't know how this husband came to live with me, but one month later, on his payday, he came home in a hurry with a large package in his hand. 搬進來大約一個月後,到了一個月的發薪日,我不知道這位主人的心思,就帶著一個大包裹匆匆回來了。 何 を 買って 来た の か と 思う と 水彩 絵 具 と 毛筆 と ワットマン と いう 紙 で 今日 から 謡 や 俳句 を やめて 絵 を かく 決心 と 見えた 。 なん||かって|きた||||おもう||すいさい|え|つぶさ||もうひつ|||||かみ||きょう||うたい||はいく|||え|||けっしん||みえた 当我想知道我买了什么时,似乎决定从今天起停止使用叫Watman的水彩颜料,画笔和纸来唱歌和hai句。 我想知道他帶來了什麼,看來他已經決定放棄吟誦和俳句,開始用水彩顏料、畫筆和瓦特曼紙作畫。 果して 翌日 から 当分 の 間 と いう もの は 毎日 毎日 書斎 で 昼寝 も し ないで 絵 ばかり かいて いる 。 はたして|よくじつ||とうぶん||あいだ|||||まいにち|まいにち|しょさい||ひるね||||え||| 從第二天開始,我就暫時在書房裡日復一日地畫畫,連午覺都不睡。 しかし その かき 上げた もの を 見る と 何 を かいた もの やら 誰 に も 鑑定 が つか ない 。 |||あげた|||みる||なん|||||だれ|||かんてい||| 然而,從他挖出來的東西來看,沒有人能夠辨認出他寫的是什麼。 当人 も あまり 甘 ( うま ) くない と 思った もの か 、 ある 日 その 友人 で 美学 と か を やって いる 人 が 来た 時 に 下 ( しも ) の ような 話 を して いる の を 聞いた 。 とうにん|||あま||||おもった||||ひ||ゆうじん||びがく||||||じん||きた|じ||した||||はなし||||||きいた 我听说所讨论的人不太友善,或者有一天,当我的一位从事美学工作的朋友来找我时,他在谈论类似下面的话题。助教。 也許他覺得自己不太甜,但是有一天,他做美學的朋友過來時,聽到他這樣說:稻田。 「 どうも 甘 ( うま ) く かけ ない もの だ ね 。 |あま||||||| “恐怕這並不容易。 人 の を 見る と 何でもない ようだ が 自 ( み ず か ) ら 筆 を とって 見る と 今更 ( いまさら ) の ように むずかしく 感ずる 」 これ は 主人 の 述懐 ( じゅっかい ) である 。 じん|||みる||なんでもない|||じ|||||ふで|||みる||いまさら|||||かんずる|||あるじ||じゅっかい|| When I look at other people's work, it seems like nothing to me, but when I pick up the brush and look at it myself, I feel as if it is too late. 我看人,好像他們什麼也沒做,但我看自己,就覺得更難了。”這是大師的回憶。 なるほど 詐 ( いつわ ) り の ない 処 だ 。 |さ|||||しょ| 彼 の 友 は 金 縁 の 眼鏡 越 ( めがね ご し ) に 主人 の 顔 を 見 ながら 、 「 そう 初め から 上手に は かけ ない さ 、 第 一室 内 の 想像 ばかり で 画 ( え ) が かける 訳 の もの で は ない 。 かれ||とも||きむ|えん||めがね|こ|||||あるじ||かお||み|||はじめ||じょうずに|||||だい|いっしつ|うち||そうぞう|||が||||やく||||| 他的朋友用金框眼镜看着主人的脸时,说:“我从一开始就做不好,这只是第一个房间的想象力。不是 。 他的朋友透過金絲眼鏡看著師父的臉,說道:“好吧,我一開始就畫不好,只能在第一個房間裡靠想像來畫,不是嗎?” 昔 ( む か ) し 以太 利 ( イタリー ) の 大家 アンドレア ・ デル ・ サルト ( ルネサンス 期 の イタリア の 画家 ) が 言った 事 が ある 。 むかし||||いた|り|||たいか||||るねさんす|き||いたりあ||がか||いった|こと|| 从前,意大利的房东安德里亚·德尔·萨尔特(Andrea del Salt)(文艺复兴时期的意大利画家)说了些什么。 很久以前,安德里亞·德爾·薩托(意大利文藝復興時期畫家)說過一句話。 画 を かく なら 何でも 自然 その 物 を 写せ 。 が||||なんでも|しぜん||ぶつ||うつせ If you want to draw a picture, you must capture nature as it is. 如果你要畫一幅畫,就捕捉自然本身。 天 に 星 辰 ( せいしん ) あり 。 てん||ほし|たつ|| There is a celestial dragon in the heavens. 地 に 露 華 ( ろか ) あり 。 ち||ろ|はな|| 飛ぶ に 禽 ( とり ) あり 。 とぶ||きん|| 走る に 獣 ( けもの ) あり 。 はしる||けだもの|| There is a beast to run. 池 に 金魚 あり 。 いけ||きんぎょ| 枯木 ( こ ぼく ) に 寒 鴉 ( かん あ ) あり 。 かれき||||さむ|からす||| 枯树上有一只乌鸦。 自然 は これ 一 幅 の 大 活 画 ( だいか つ が ) なり と 。 しぜん|||ひと|はば||だい|かつ|が||||| 大自然是这种宽度的大图片。 大自然就像這幅大圖。 どう だ 君 も 画 らしい 画 を かこう と 思う なら ち と 写生 を したら 」 「 へえ アンドレア ・ デル ・ サルト が そんな 事 を いった 事 が ある かい 。 ||きみ||が||が||か こう||おもう||||しゃせい|||||||||こと|||こと||| 如果你想創作一幅看起來像繪畫的畫作,為什麼不把它畫成素描呢?” “嗯,安德烈亞·德爾·薩託說過這句話嗎? ちっとも 知ら なかった 。 |しら| 我不知道。 なるほど こりゃ もっともだ 。 我懂了。 実に その 通り だ 」 と 主人 は 無 暗 ( むやみ ) に 感心 して いる 。 じつに||とおり|||あるじ||む|あん|||かんしん|| 完全正確。”大師說道,不由自主地欽佩他。 金 縁 の 裏 に は 嘲 ( あざ ) ける ような 笑 ( わらい ) が 見えた 。 きむ|えん||うら|||あざけ||||わら|||みえた 在金边的背面,我看到了一个荒谬的笑声(wara)。 その 翌日 吾輩 は 例の ごとく 椽側 ( えんがわ ) に 出て 心 持 善く 昼寝 ( ひるね ) を して いたら 、 主人 が 例 に なく 書斎 から 出て 来て 吾輩 の 後 ( うし ) ろ で 何 か しきりに やって いる 。 |よくじつ|わがはい||れいの||たるきがわ|||でて|こころ|じ|よく|ひるね|||||あるじ||れい|||しょさい||でて|きて|わがはい||あと||||なん|||| 第二天,我像往常一樣,到草坪邊美美地睡了一覺,這時我丈夫從書房裡出來,發現我身後有東西。我繼續這樣做。 ふと 眼 が 覚 ( さ ) め て 何 を して いる か と 一 分 ( いちぶ ) ばかり 細目 に 眼 を あけて 見る と 、 彼 は 余念 も なく アンドレア ・ デル ・ サルト を 極 ( き ) め 込んで いる 。 |がん||あきら||||なん||||||ひと|ぶん|||さいもく||がん|||みる||かれ||よねん|||||||ごく|||こんで| 當他突然醒來,瞇起眼睛看了一會兒自己在做什麼時,他完全沉浸在安德烈亞·德爾·薩託的身上。有。 吾輩 は この 有様 を 見て 覚え ず 失笑 する の を 禁じ 得 なかった 。 わがはい|||ありさま||みて|おぼえ||しっしょう||||きんじ|とく| I couldn't help laughing because I couldn't remember seeing this situation. 我忍不住笑,因为我不记得看到这种情况了。 看到這一幕,我忍不住笑了起來。 彼 は 彼 の 友 に 揶揄 ( やゆ ) せら れ たる 結果 と して まず 手 初め に 吾輩 を 写生 し つつ ある のである 。 かれ||かれ||とも||やゆ|||||けっか||||て|はじめ||わがはい||しゃせい|||| He is first copying me as a result of being ridiculed by his friends. 由於受到朋友的嘲笑,他先給我畫了素描。 吾輩 は すでに 十分 ( じゅうぶん ) 寝た 。 わがはい|||じゅうぶん||ねた 欠 伸 ( あくび ) が し たくて たまら ない 。 けつ|しん|||||| 我迫不及待地想打哈欠。 しかし せっかく 主人 が 熱心に 筆 を 執 ( と ) って いる の を 動いて は 気の毒だ と 思って 、 じっと 辛 棒 ( しんぼう ) して おった 。 ||あるじ||ねっしんに|ふで||と||||||うごいて||きのどくだ||おもって||しん|ぼう||| 但是,我为我丈夫热衷于写作而感到遗憾,因此我坚持不懈。 彼 は 今 吾輩 の 輪 廓 を かき 上げて 顔 の あたり を 色彩 ( いろど ) って いる 。 かれ||いま|わがはい||りん|かく|||あげて|かお||||しきさい||| He is now scooping up my circle and coloring the area around his face. 他现在正在挖起我的圈子并为他的脸部周围的区域着色。 他現在正在畫出我的輪廓,並給我臉周圍的區域上色。 吾輩 は 自白 する 。 わがはい||じはく| I confess. 吾輩 は 猫 と して 決して 上 乗 の 出来 で は ない 。 わがはい||ねこ|||けっして|うえ|じょう||でき||| 作为一只猫,我从来没有骑过它。 作為一隻貓,我絕不是一隻熟練的貓。 背 と いい 毛並 と いい 顔 の 造作 と いい あえて 他の 猫 に 勝 ( まさ ) る と は 決して 思って おら ん 。 せ|||けなみ|||かお||ぞうさく||||たの|ねこ||か|||||けっして|おもって|| Never think that you will beat other cats because you have a good back, a good coat, and a good facial feature. 它的個子高,皮毛漂亮,五官漂亮,我沒想到它竟然敢打敗其他貓。 しかし いくら 不 器量 の 吾輩 でも 、 今 吾輩 の 主人 に 描 ( え が ) き 出さ れ つつ ある ような 妙な 姿 と は 、 どうしても 思わ れ ない 。 ||ふ|きりょう||わがはい||いま|わがはい||あるじ||えが||||ださ|||||みょうな|すがた||||おもわ|| 然而,無論我多麼笨手笨腳,我還是忍不住想起了我的主人現在所描繪的那個奇怪的身影。 第 一色 が 違う 。 だい|いっしょく||ちがう 第一個顏色不同。 吾輩 は 波 斯産 ( ペルシャ さん ) の 猫 の ごとく 黄 を 含める 淡 灰色 に 漆 ( うるし ) の ごとき 斑 入 ( ふい ) り の 皮膚 を 有して いる 。 わがはい||なみ|しさん||||ねこ|||き||ふくめる|あわ|はいいろ||うるし||||ぶち|はい||||ひふ||ゆうして| I have skin that is light gray and has spots like lacquer (Urushi), like a cat from Hashi (Persian). 像波斯貓一樣,我的皮膚是淺灰色,帶有一些黃色,並且有漆樣的斑點。 これ だけ は 誰 が 見て も 疑う べ から ざる 事実 と 思う 。 |||だれ||みて||うたがう||||じじつ||おもう 我想這是唯一一個沒有人應該懷疑的事實。 しかる に 今 主人 の 彩 色 を 見る と 、 黄 でも なければ 黒 で も ない 、 灰色 でも なければ 褐色 ( とびいろ ) で も ない 、 されば とて これ ら を 交ぜた 色 で も ない 。 ||いま|あるじ||あや|いろ||みる||き|||くろ||||はいいろ|||かっしょく||||||||||まぜた|いろ||| 然而,當我現在看著我丈夫的顏色時,我發現它既不是黃色,也不是黑色,也不是灰色,也不是棕色,甚至不是這些顏色的混合。 ただ 一種 の 色 である と いう より ほか に 評し 方 の ない 色 である 。 |いっしゅ||いろ|||||||ひょうし|かた|||いろ| 它不僅僅是一種顏色;它是一種無法用任何其他方式描述的顏色。 その 上 不思議な 事 は 眼 が ない 。 |うえ|ふしぎな|こと||がん|| もっとも これ は 寝て いる ところ を 写生 した のだ から 無理 も ない が 眼 らしい 所 さえ 見え ない から 盲 猫 ( めくら ) だ か 寝て いる 猫 だ か 判然 し ない のである 。 |||ねて||||しゃせい||||むり||||がん||しょ||みえ|||もう|ねこ||||ねて||ねこ|||はんぜん||| 吾輩 は 心中 ひそかに いくら アンドレア ・ デル ・ サルト でも これ で は しようがない と 思った 。 わがはい||しんじゅう||||||||||||おもった しかし その 熱心に は 感服 せ ざる を 得 ない 。 ||ねっしんに||かんぷく||||とく| なるべく なら 動か ず に おって やり たい と 思った が 、 さっき から 小便 が 催 う して いる 。 ||うごか|||||||おもった||||しょうべん||もよお||| 身内 ( みうち ) の 筋肉 は むずむず する 。 みうち|||きんにく||| 最 早 ( もはや ) 一 分 も 猶予 ( ゆう よ ) が 出来 ぬ 仕儀 ( しぎ ) と なった から 、 やむ を え ず 失敬 して 両足 を 前 へ 存分の して 、 首 を 低く 押し出して あーあ と 大 ( だい ) なる 欠 伸 を した 。 さい|はや||ひと|ぶん||ゆうよ||||でき||しぎ|||||||||しっけい||りょうあし||ぜん||ぞんぶんの||くび||ひくく|おしだして|あー あ||だい|||けつ|しん|| さて こう なって 見る と 、 もう おとなしく して いて も 仕方 が ない 。 |||みる|||||||しかた|| どうせ 主人 の 予定 は 打 ( ぶ ) ち 壊 ( こ ) わした のだ から 、 ついでに 裏 へ 行って 用 を 足 ( た ) そう と 思って のそのそ 這い 出した 。 |あるじ||よてい||だ|||こわ||||||うら||おこなって|よう||あし||||おもって||はい|だした 无论如何,我丈夫的日程安排被砸坏了,所以我走到后面,开始爬行,打算往后走。 すると 主人 は 失望 と 怒り を 掻 ( か ) き 交ぜた ような 声 を して 、 座敷 の 中 から 「 この 馬鹿 野郎 」 と 怒鳴 ( ど な ) った 。 |あるじ||しつぼう||いかり||か|||まぜた||こえ|||ざしき||なか|||ばか|やろう||どな||| この 主人 は 人 を 罵 ( の の し ) る とき は 必ず 馬鹿 野郎 と いう の が 癖 である 。 |あるじ||じん||ののし|||||||かならず|ばか|やろう|||||くせ| ほか に 悪 口 の 言い よう を 知ら ない のだ から 仕方 が ない が 、 今 まで 辛 棒 した 人 の 気 も 知ら ないで 、 無 暗 ( むやみ ) に 馬 鹿野 郎呼 ( よば ) わり は 失敬だ と 思う 。 ||あく|くち||いい|||しら||||しかた||||いま||しん|ぼう||じん||き||しら||む|あん|||うま|かの|ろうこ||||しっけいだ||おもう I can't help it because I don't know what to say badly, but I don't even know the mind of the person who has been a spicy person until now. I think. それ も 平生 吾輩 が 彼 の 背中 ( せなか ) へ 乗る 時 に 少し は 好い 顔 でも する なら この 漫罵 ( まん ば ) も 甘んじて 受ける が 、 こっち の 便利に なる 事 は 何一つ 快く して くれた 事 も ない のに 、 小便 に 立った の を 馬鹿 野郎 と は 酷 ( ひど ) い 。 ||へいぜい|わがはい||かれ||せなか|||のる|じ||すこし||この い|かお|||||まんば||||あまんじて|うける||||べんりに||こと||なにひとつ|こころよく|||こと||||しょうべん||たった|||ばか|やろう|||こく|| 元来 人間 と いう もの は 自己 の 力量 に 慢 じ て みんな 増長 して いる 。 がんらい|にんげん|||||じこ||りきりょう||まん||||ぞうちょう|| 少し 人間 より 強い もの が 出て 来て 窘 ( いじ ) め て やら なくて は この先 どこ まで 増長 する か 分ら ない 。 すこし|にんげん||つよい|||でて|きて|きん|||||||このさき|||ぞうちょう|||ぶん ら| 我 儘 ( わがまま ) も この くらい なら 我慢 する が 吾輩 は 人間 の 不徳に ついて これ より も 数 倍 悲しむ べき 報道 を 耳 に した 事 が ある 。 われ|まま||||||がまん|||わがはい||にんげん||ふとくに|||||すう|ばい|かなしむ||ほうどう||みみ|||こと|| I can put up with this selfishness, but I have heard reports that are many times more sad about human vices. 吾輩 の 家 の 裏 に 十 坪 ばかりの 茶 園 ( ちゃ えん ) が ある 。 わがはい||いえ||うら||じゅう|つぼ||ちゃ|えん|||| 広く は ない が 瀟洒 ( さっぱり ) と した 心持ち 好く 日 の 当 ( あた ) る 所 だ 。 ひろく||||しょうしゃ||||こころもち|すく|ひ||とう|||しょ| うち の 小 供 が あまり 騒いで 楽々 昼寝 の 出来 ない 時 や 、 あまり 退屈で 腹 加減 の よく ない 折 など は 、 吾輩 は いつでも ここ へ 出て 浩 然 ( こうぜん ) の 気 を 養う の が 例 である 。 ||しょう|とも|||さわいで|らくらく|ひるね||でき||じ|||たいくつで|はら|かげん||||お|||わがはい|||||でて|ひろし|ぜん|||き||やしなう|||れい| ある 小 春 の 穏 かな 日 の 二 時 頃 であった が 、 吾輩 は 昼 飯 後 ( ちゅうは ん ご ) 快 よく 一睡 した 後 ( のち )、 運動 かたがた この 茶 園 へ と 歩 ( ほ ) を 運ば した 。 |しょう|はる||おん||ひ||ふた|じ|ころ|||わがはい||ひる|めし|あと||||こころよ||いっすい||あと||うんどう|||ちゃ|えん|||ふ|||はこば| 茶 の 木 の 根 を 一 本 一 本 嗅ぎ ながら 、 西 側 の 杉 垣 の そば まで くる と 、 枯菊 を 押し倒して その 上 に 大きな 猫 が 前後不覚 に 寝て いる 。 ちゃ||き||ね||ひと|ほん|ひと|ほん|かぎ||にし|がわ||すぎ|かき||||||こきく||おしたおして||うえ||おおきな|ねこ||ぜんごふかく||ねて| 彼 は 吾輩 の 近づく の も 一 向 ( いっこう ) 心 付か ざる ごとく 、 また 心 付く も 無頓着なる ごとく 、 大きな 鼾 ( いびき ) を して 長々 と 体 を 横 ( よこ た ) えて 眠って いる 。 かれ||わがはい||ちかづく|||ひと|むかい||こころ|つか||||こころ|つく||むとんちゃくなる||おおきな|いびき||||ながなが||からだ||よこ||||ねむって| 他 ( ひと ) の 庭 内 に 忍び 入り たる もの が かく まで 平気に 睡 ( ねむ ) られる もの か と 、 吾輩 は 窃 ( ひそ ) か に その 大胆なる 度胸 に 驚か ざる を 得 なかった 。 た|||にわ|うち||しのび|はいり||||||へいきに|すい||||||わがはい||せつ|||||だいたんなる|どきょう||おどろか|||とく| 彼 は 純粋の 黒 猫 である 。 かれ||じゅんすいの|くろ|ねこ| わずかに 午 ( ご ) を 過ぎ たる 太陽 は 、 透明なる 光線 を 彼 の 皮膚 の 上 に 抛 ( な ) げ かけて 、 きらきら する 柔 毛 ( に こげ ) の 間 より 眼 に 見え ぬ 炎 でも 燃 ( も ) え 出 ( い ) ずる ように 思わ れた 。 |うま|||すぎ||たいよう||とうめいなる|こうせん||かれ||ひふ||うえ||なげう||||||じゅう|け||||あいだ||がん||みえ||えん||も|||だ||||おもわ| 彼 は 猫 中 の 大王 と も 云う べき ほど の 偉大なる 体格 を 有して いる 。 かれ||ねこ|なか||だいおう|||うん う||||いだいなる|たいかく||ゆうして| He has a great physique that can be called the Great King of Cats. 吾輩 の 倍 は たしかに ある 。 わがはい||ばい||| 吾輩 は 嘆 賞 の 念 と 、 好 奇 の 心 に 前後 を 忘れて 彼 の 前 に 佇 立 ( ちょ りつ ) して 余念 も なく 眺 ( な が ) め て いる と 、 静かなる 小 春 の 風 が 、 杉 垣 の 上 から 出 たる 梧桐 ( ご とう ) の 枝 を 軽 ( か ろ ) く 誘って ばらばら と 二三 枚 の 葉 が 枯菊 の 茂み に 落ちた 。 わがはい||なげ|しょう||ねん||よしみ|き||こころ||ぜんご||わすれて|かれ||ぜん||たたず|た||||よねん|||ちょう|||||||しずかなる|しょう|はる||かぜ||すぎ|かき||うえ||だ||ごきり||||えだ||けい||||さそって|||ふみ|まい||は||こきく||しげみ||おちた 大王 は か っと その 真 丸 ( まんまる ) の 眼 を 開いた 。 だいおう|||||まこと|まる|||がん||あいた 今 でも 記憶 して いる 。 いま||きおく|| その 眼 は 人間 の 珍重 する 琥珀 ( こはく ) と いう もの より も 遥 ( はる ) か に 美しく 輝いて いた 。 |がん||にんげん||ちんちょう||こはく|こ はく||||||はるか||||うつくしく|かがやいて| Its eyes were shining much more beautifully than the amber, which is prized by humans. 彼 は 身動き も し ない 。 かれ||みうごき||| He doesn't move. 双 眸 ( そう ぼう ) の 奥 から 射る ごとき 光 を 吾輩 の 矮小 ( わいしょう ) なる 額 ( ひ たい ) の 上 に あつめて 、 御 め え は 一体 何 だ と 云った 。 そう|ひとみ||||おく||いる||ひかり||わがはい||わいしょう|||がく||||うえ|||ご||||いったい|なん|||うん った 大王 に して は 少々 言葉 が 卑 ( いや ) しい と 思った が 何しろ その 声 の 底 に 犬 を も 挫 ( ひ ) し ぐ べき 力 が 籠 ( こも ) って いる ので 吾輩 は 少なからず 恐れ を 抱 ( い だ ) いた 。 だいおう||||しょうしょう|ことば||ひ||||おもった||なにしろ||こえ||そこ||いぬ|||くじ|||||ちから||かご|||||わがはい||すくなからず|おそれ||いだ||| 我覺得他的話對一個偉大的國王來說有點刻薄,但我覺得他的聲音裡有一點恐懼,因為它蘊含著一種連狗都能壓碎的力量,它就在那裡。 しかし 挨拶 ( あいさつ ) を し ない と 険呑 ( けん の ん ) だ と 思った から 「 吾輩 は 猫 である 。 |あいさつ||||||けんのん||||||おもった||わがはい||ねこ| 名前 は まだ ない 」 と なるべく 平気 を 装 ( よそお ) って 冷 然 と 答えた 。 なまえ||||||へいき||そう|||ひや|ぜん||こたえた しかし この 時 吾輩 の 心臓 は たしかに 平時 より も 烈 しく 鼓動 して おった 。 ||じ|わがはい||しんぞう|||へいじ|||れつ||こどう|| 彼 は 大 ( おおい ) に 軽蔑 ( けいべつ ) せる 調子 で 「 何 、 猫 だ ? かれ||だい|||けいべつ|||ちょうし||なん|ねこ| 猫 が 聞いて あきれ ら あ 。 ねこ||きいて||| If the cat hears it, I'm afraid. 全 ( ぜん ) て え どこ に 住んで る んだ 」 随分 傍若無人 ( ぼうじゃくぶじん ) である 。 ぜん||||||すんで|||ずいぶん|ぼうじゃくぶじん|| 「 吾輩 は ここ の 教師 の 家 ( うち ) に いる のだ 」 「 どうせ そんな 事 だろう と 思った 。 わがはい||||きょうし||いえ|||||||こと|||おもった いやに 瘠 ( や ) せて る じゃ ねえ か 」 と 大王 だけ に 気 焔 ( きえん ) を 吹きかける 。 |せき||||||||だいおう|||き|ほのお|||ふきかける 「你讓事情變得更糟了,不是嗎?」他說著,只向大王噴射火焰。 言葉 付 から 察する と どうも 良 家 の 猫 と も 思わ れ ない 。 ことば|つき||さっする|||よ|いえ||ねこ|||おもわ|| しかし その 膏切 ( あぶらぎ ) って 肥満 して いる ところ を 見る と 御馳走 を 食って る らしい 、 豊かに 暮して いる らしい 。 ||こうせつ|||ひまん|||||みる||ごちそう||くって|||ゆたかに|くらして|| However, when I see that he is obese, he seems to be eating a treat, and he seems to be living affluently. 吾輩 は 「 そう 云う 君 は 一体 誰 だい 」 と 聞か ざる を 得 なかった 。 わがはい|||うん う|きみ||いったい|だれ|||きか|||とく| 「 己 ( お ) れ あ 車 屋 の 黒 ( くろ ) よ 」 昂然 ( こうぜん ) たるも のだ 。 おのれ||||くるま|や||くろ|||たかし ぜん||たる も| 車 屋 の 黒 は この 近辺 で 知ら ぬ 者 なき 乱暴 猫 である 。 くるま|や||くろ|||きんぺん||しら||もの||らんぼう|ねこ| The black of the car shop is a violent cat without a stranger in this area. しかし 車 屋 だけ に 強い ばかりで ちっとも 教育 が ない から あまり 誰 も 交際 し ない 。 |くるま|や|||つよい|||きょういく|||||だれ||こうさい|| 同盟 敬遠 主義 の 的 ( まと ) に なって いる 奴 だ 。 どうめい|けいえん|しゅぎ||てき|||||やつ| 吾輩 は 彼 の 名 を 聞いて 少々 尻 こそばゆき 感じ を 起す と 同時に 、 一方 で は 少々 軽侮 ( けいぶ ) の 念 も 生じた のである 。 わがはい||かれ||な||きいて|しょうしょう|しり||かんじ||おこす||どうじに|いっぽう|||しょうしょう|けいぶ|||ねん||しょうじた| When I heard his name, I felt a little bummed, and at the same time, I was a little disdainful on the one hand. 吾輩 は まず 彼 が どの くらい 無 学 である か を 試 ( ため ) して みよう と 思って 左 ( さ ) の 問答 を して 見た 。 わがはい|||かれ||||む|まな||||ため|||||おもって|ひだり|||もんどう|||みた I first tried the question and answer on the left to see how illiterate he was. 「 一体 車 屋 と 教師 と は どっち が えらい だろう 」 「 車 屋 の 方 が 強い に 極 ( きま ) って いら あ な 。 いったい|くるま|や||きょうし|||||||くるま|や||かた||つよい||ごく||||| 御 め え の うち の 主人 を 見 ねえ 、 まるで 骨 と 皮 ばかり だ ぜ 」 「 君 も 車 屋 の 猫 だけ に 大分 ( だいぶ ) 強そうだ 。 ご||||||あるじ||み|||こつ||かわ||||きみ||くるま|や||ねこ|||だいぶ||きょうそうだ 車 屋 に いる と 御馳走 ( ごちそう ) が 食える と 見える ね 」 「 何 ( なあ ) に おれ な ん ざ 、 どこ の 国 へ 行った って 食い物 に 不自由 は し ねえ つもりだ 。 くるま|や||||ごちそう|||くえる||みえる||なん|||||||||くに||おこなった||くいもの||ふじゆう|||| When you're in the car shop, you can see that you can eat a treat. "" No matter what country you go to, you're not inconvenienced by food. 御 め え なんか も 茶 畠 ( ちゃばたけ ) ばかり ぐるぐる 廻って い ねえ で 、 ち っと 己 ( おれ ) の 後 ( あと ) へ くっ付いて 来て 見 ねえ 。 ご|||||ちゃ|はた||||まわって||||||おのれ|||あと|||くっついて|きて|み| 我不想讓你在茶田裡轉來轉去,所以別看我,跟著我走。 一 と 月 と たた ねえ うち に 見違える ように 太 れる ぜ 」 「 追って そう 願う 事 に しよう 。 ひと||つき||||||みちがえる||ふと|||おって||ねがう|こと|| しかし 家 ( うち ) は 教師 の 方 が 車 屋 より 大きい の に 住んで いる ように 思わ れる 」 「 箆棒 ( べらぼう ) め 、 うち なんか いくら 大きく たって 腹 の 足 ( た ) しに なる もん か 」 |いえ|||きょうし||かた||くるま|や||おおきい|||すんで|||おもわ||へらぼう||||||おおきく||はら||あし||||| However, it seems that the teacher lives in the house, which is larger than the car shop. " 不過,老師住的房子好像比汽車店還大。」“不管你的房子有多大,也能撐得住你的胃。”

彼 は 大 ( おおい ) に 肝 癪 ( かんしゃく ) に 障 ( さ わ ) った 様子 で 、 寒 竹 ( かんち く ) を そいだ ような 耳 を しきりと ぴく 付か せ てあら ら か に 立ち去った 。 かれ||だい|||かん|しゃく|||さわ||||ようす||さむ|たけ||||||みみ||||つか||||||たちさった 他看起來很不高興,耳朵抽動著,就像拔了一根冷竹一樣,轉身就走。 吾輩 が 車 屋 の 黒 と 知己 ( ちき ) に なった の は これ から である 。 わがはい||くるま|や||くろ||ちき|||||||| It is from now on that I became the black and acquaintance of the car shop. その後 ( ご ) 吾輩 は 度々 ( たびたび ) 黒 と 邂逅 ( かいこう ) する 。 そのご||わがはい||たびたび||くろ||かいこう|| 邂逅 する 毎 ( ごと ) に 彼 は 車 屋 相当 の 気 焔 ( きえん ) を 吐く 。 かいこう||まい|||かれ||くるま|や|そうとう||き|ほのお|||はく Every time he meets, he vomits a car-equivalent flame. 先 に 吾輩 が 耳 に した と いう 不徳 事件 も 実は 黒 から 聞いた のである 。 さき||わがはい||みみ|||||ふとく|じけん||じつは|くろ||きいた| In fact, I heard from Kuro about the unscrupulous case that I heard earlier. 或る 日 例 の ごとく 吾輩 と 黒 は 暖かい 茶 畠 ( ちゃばたけ ) の 中 で 寝 転 ( ねころ ) び ながら いろいろ 雑談 を して いる と 、 彼 は いつも の 自慢 話 ( じまん ば な ) し を さも 新し そうに 繰り返した あと で 、 吾輩 に 向って 下 ( しも ) の ごとく 質問 した 。 ある|ひ|れい|||わがはい||くろ||あたたかい|ちゃ|はた|||なか||ね|てん|||||ざつだん|||||かれ||||じまん|はなし|||||||あたらし|そう に|くりかえした|||わがはい||むかい って|した||||しつもん| 「 御 め え は 今 まで に 鼠 を 何 匹 とった 事 が ある 」 智識 は 黒 より も 余程 発達 して いる つもりだ が 腕力 と 勇気 と に 至って は 到底 ( とうてい ) 黒 の 比較 に は なら ない と 覚悟 は して いた もの の 、 この 問 に 接した る 時 は 、 さすが に 極 ( きま ) り が 善 ( よ ) く は なかった 。 ご||||いま|||ねずみ||なん|ひき||こと|||さとし しき||くろ|||よほど|はったつ|||||わんりょく||ゆうき|||いたって||とうてい||くろ||ひかく||||||かくご|||||||とい||せっした||じ||||ごく||||ぜん|||| けれども 事実 は 事実 で 詐 ( いつわ ) る 訳 に は 行か ない から 、 吾輩 は 「 実は とろう とろう と 思って まだ 捕 ( と ) ら ない 」 と 答えた 。 |じじつ||じじつ||さ|||やく|||いか|||わがはい||じつは||||おもって||ほ|||||こたえた However, since the facts are facts and cannot be deceived, I replied, "I haven't caught them yet because I thought I'd try to get them." 黒 は 彼 の 鼻 の 先 から ぴんと 突 張 ( つっぱ ) って いる 長い 髭 ( ひげ ) を びりびり と 震 ( ふる ) わ せて 非常に 笑った 。 くろ||かれ||はな||さき|||つ|ちょう||||ながい|ひげ|||||ふる||||ひじょうに|わらった Black laughed very much with a long beard that was taut from the tip of his nose and quivered. 元来 黒 は 自慢 を する 丈 ( だけ ) に どこ か 足り ない ところ が あって 、 彼 の 気 焔 ( きえん ) を 感心 した ように 咽喉 ( のど ) を ころころ 鳴らして 謹 聴 して いれば はなはだ 御 ( ぎょ ) し やすい 猫 である 。 がんらい|くろ||じまん|||たけ|||||たり|||||かれ||き|ほのお|||かんしん|||むせ のど||||ならして|つつし|き||||ご||||ねこ| 吾輩 は 彼 と 近 付 に なって から 直 ( すぐ ) に この 呼吸 を 飲み 込んだ から この 場合 に も なまじ い 己 ( おの ) れ を 弁護 して ますます 形勢 を わるく する の も 愚 ( ぐ ) である 、 いっその事 彼 に 自分 の 手柄 話 を しゃべら して 御 茶 を 濁す に 若 ( し ) く は ない と 思案 を 定 ( さ だ ) め た 。 わがはい||かれ||ちか|つき||||なお||||こきゅう||のみ|こんだ|||ばあい|||||おのれ||||べんご|||けいせい||||||ぐ|||いっそのこと|かれ||じぶん||てがら|はなし||||ご|ちゃ||にごす||わか||||||しあん||てい|||| そこ で おとなしく 「 君 など は 年 が 年 である から 大分 ( だいぶ ん ) とったろう 」 と そそのかして 見た 。 |||きみ|||とし||とし|||だいぶ||||||みた 果 然 彼 は 墻壁 ( しょうへき ) の 欠 所 ( けっし ょ ) に 吶喊 ( とっかん = とき の 声 を あげる こと ) して 来た 。 か|ぜん|かれ||しょうかべ|||けつ|しょ||||とっかん||||こえ|||||きた 「 たん と でも ねえ が 三四十 は とったろう 」 と は 得意気なる 彼 の 答 であった 。 |||||さんしじゅう|||||とくいげなる|かれ||こたえ| 彼 は なお 語 を つづけて 「 鼠 の 百 や 二百 は 一 人 で いつでも 引き受ける がい たち って え 奴 は 手 に 合わ ねえ 。 かれ|||ご|||ねずみ||ひゃく||にひゃく||ひと|じん|||ひきうける|||||やつ||て||あわ| 一 度 いたち に 向って 酷 ( ひど ) い 目に 逢 ( あ ) った 」 「 へえ なるほど 」 と 相槌 ( あいづち ) を 打つ 。 ひと|たび|||むかい って|こく|||め に|あ||||||あいづち|||うつ 黒 は 大きな 眼 を ぱち つか せて 云う 。 くろ||おおきな|がん|||||うん う 「 去年 の 大掃除 の 時 だ 。 きょねん||おおそうじ||じ| うち の 亭主 が 石灰 ( いし ばい ) の 袋 を 持って 椽 ( えん ) の 下 へ 這 ( は ) い 込んだら 御 め え 大きな いたち の 野郎 が 面 喰 ( めんくら ) って 飛び出した と 思い ねえ 」 「 ふん 」 と 感心 して 見せる 。 ||ていしゅ||せっかい||||ふくろ||もって|たるき|||した||は|||こんだら|ご|||おおきな|||やろう||おもて|しょく|||とびだした||おもい||||かんしん||みせる 當我丈夫拿著一袋石灰爬到壁龕下面時,我以為一個大混蛋臉上帶著大大的笑容跳了出來。」「哼,」他印象深刻地說。 「 いた ちって けども 何 鼠 の 少し 大きい ぐれ え の もの だ 。 |||なん|ねずみ||すこし|おおきい||||| こ ん 畜生 ( ちき しょう ) って 気 で 追っかけて とうとう 泥 溝 ( どぶ ) の 中 へ 追い 込んだ と 思い ねえ 」 「 うまく やった ね 」 と 喝采 ( かっさい ) して やる 。 ||ちくしょう||||き||おっかけて||どろ|みぞ|||なか||おい|こんだ||おもい||||||かっさい||| 「 ところが 御 め え いざ って え段 に なる と 奴 め 最後 ( さいご ) っ 屁 ( ぺ ) を こきゃ がった 。 |ご|||||え だん||||やつ||さいご|||へ|||| 臭 ( くせ ) え の 臭く ねえ の って それ から って えもの は いたち を 見る と 胸 が 悪く なら あ 」 彼 は ここ に 至って あたかも 去年 の 臭気 を 今 ( いま ) なお 感ずる ごとく 前足 を 揚げて 鼻 の 頭 を 二三 遍 な で 廻 わした 。 くさ||||くさく|||||||||||みる||むね||わるく|||かれ||||いたって||きょねん||しゅうき||いま|||かんずる||まえあし||あげて|はな||あたま||ふみ|へん|||まわ| It smells like it doesn't smell, and then when I see the weasels, I feel sick. ”He came here as if he had the odor of last year (now). I turned my head around a couple of times. 吾輩 も 少々 気の毒な 感じ が する 。 わがはい||しょうしょう|きのどくな|かんじ|| I also feel a little sorry. 我也感到有点抱歉。 ち っと 景気 を 付けて やろう と 思って 「 しかし 鼠 なら 君 に 睨 ( にら ) ま れて は 百 年 目 だろう 。 ||けいき||つけて|||おもって||ねずみ||きみ||にら|||||ひゃく|とし|め| 君 は あまり 鼠 を 捕 ( と ) る の が 名人 で 鼠 ばかり 食う もの だ から そんなに 肥 って 色つや が 善い のだろう 」 黒 の 御機嫌 を とる ため の この 質問 は 不思議に も 反対の 結果 を 呈 出 ( ていしゅつ ) した 。 きみ|||ねずみ||ほ|||||めいじん||ねずみ||くう|||||こえ||いろつや||よい||くろ||ごきげん||||||しつもん||ふしぎに||はんたいの|けっか||てい|だ|| 你是抓老鼠的能手,又只吃老鼠,所以才這麼胖,這麼有光澤。」這個本來是想討好布萊克的問題,奇怪的是卻產生了相反的結果。我做到了。 彼 は 喟然 ( きぜん ) と して 大 息 ( たい そく ) して い う 。 かれ||きぜん||||だい|いき||||| 他深吸了一口氣說。 「 考 ( かん ) げ える と つまら ねえ 。 こう|||||| “思考事情很無聊。” いくら 稼いで 鼠 を とった って ―― 一 て え 人間 ほど ふ て え 奴 は 世の中 に い ねえ ぜ 。 |かせいで|ねずみ||||ひと|||にんげん|||||やつ||よのなか|||| 不管你賺多少錢,抓老鼠,這個世界上永遠不會有像人一樣好的人。 人 の とった 鼠 を みんな 取り 上げ やがって 交番 へ 持って 行きゃ あがる 。 じん|||ねずみ|||とり|あげ|や がって|こうばん||もって|いきゃ| 如果你把人們抓到的老鼠全部撿起來帶到派出所,它們就會被釋放。 交番 じゃ 誰 が 捕 ( と ) った か 分ら ねえ から その たんび に 五 銭 ずつ くれる じゃ ねえ か 。 こうばん||だれ||ほ||||ぶん ら||||||いつ|せん||||| I don't know who was caught in the police box, so I wonder if he will give me five coins each time. 在警察局,你不知道誰抓住了你,所以每次你抓住一個人,他們就會給你五仙。 うち の 亭主 なんか 己 ( おれ ) の 御蔭 で もう 壱 円 五十 銭 くらい 儲 ( もう ) け てい やがる 癖 に 、 碌 ( ろく ) な もの を 食わ せた 事 も あり ゃし ねえ 。 ||ていしゅ||おのれ|||おかげ|||いち|えん|ごじゅう|せん||もうか||||や がる|くせ||ろく|||||くわ||こと|||| 我不認為我的丈夫已經幫我賺了大約 1.50 日元,他不可能給我吃點好吃的。 おい 人間 て もの あ 体 ( てい ) の 善 ( い ) い 泥棒 だ ぜ 」 さすが 無 学 の 黒 も この くらい の 理 窟 ( りくつ ) は わかる と 見えて すこぶる 怒 ( おこ ) った 容子 ( ようす ) で 背中 の 毛 を 逆 立 ( さか だ ) て て いる 。 |にんげん||||からだ|||ぜん|||どろぼう||||む|まな||くろ|||||り|いわや|||||みえて||いか|||ようこ|||せなか||け||ぎゃく|た|さ か|||| Hey human beings are good thieves. ”As expected, even illiterate black can see this kind of cave, and he is very angry. The hair on the back is upright. 哎呀,你們人類真是賊啊。」就連沒受過教育的九郎似乎也明白這個邏輯,所以他很生氣,背上的汗毛都豎起來了。 吾輩 は 少々 気味 が 悪く なった から 善い 加減 に その 場 を 胡魔 化 ( ごま か ) して 家 ( うち ) へ 帰った 。 わがはい||しょうしょう|きみ||わるく|||よい|かげん|||じょう||こま|か||||いえ|||かえった I felt a little sick, so I made a sesame seed and went home. 我心裡有些不安,就裝作好事回家了。 この 時 から 吾輩 は 決して 鼠 を とる まい と 決心 した 。 |じ||わがはい||けっして|ねずみ|||||けっしん| しかし 黒 の 子分 に なって 鼠 以外 の 御馳走 を 猟 ( あさ ) って あるく 事 も し なかった 。 |くろ||こぶん|||ねずみ|いがい||ごちそう||りょう||||こと||| However, he did not become a black minion and hunt for treats other than mice. 御馳走 を 食う より も 寝て いた 方 が 気楽で いい 。 ごちそう||くう|||ねて||かた||きらくで| 教師 の 家 ( うち ) に いる と 猫 も 教師 の ような 性質 に なる と 見える 。 きょうし||いえ|||||ねこ||きょうし|||せいしつ||||みえる 要 心し ない と 今に 胃 弱 に なる かも 知れ ない 。 かなめ|こころし|||いまに|い|じゃく||||しれ| 教師 と いえば 吾輩 の 主人 も 近頃 に 至って は 到底 ( とうてい ) 水彩 画 に おいて 望 ( のぞみ ) の ない 事 を 悟った もの と 見えて 十二 月 一 日 の 日記 に こんな 事 を か きつけた 。 きょうし|||わがはい||あるじ||ちかごろ||いたって||とうてい||すいさい|が|||のぞみ||||こと||さとった|||みえて|じゅうに|つき|ひと|ひ||にっき|||こと||| ○○ と 云う 人 に 今日 の 会 で 始めて 出逢 ( であ ) った 。 |うん う|じん||きょう||かい||はじめて|であ|| あの 人 は 大分 ( だいぶ ) 放 蕩 ( ほうとう ) を した 人 だ と 云う が なるほど 通 人 ( つうじ ん ) らしい 風采 ( ふうさい ) を して いる 。 |じん||だいぶ||はな|とう||||じん|||うん う|||つう|じん||||ふうさい|||| こう 云う 質 ( たち ) の 人 は 女 に 好か れる もの だ から ○○ が 放 蕩 を した と 云う より も 放 蕩 を する べく 余儀なく せら れた と 云う の が 適当であろう 。 |うん う|しち|||じん||おんな||すか||||||はな|とう||||うん う|||はな|とう||||よぎなく||||うん う|||てきとうであろう あの 人 の 妻君 は 芸者 だ そうだ 、 羨 ( うら や ) ま しい 事 である 。 |じん||さいくん||げいしゃ||そう だ|うらや|||||こと| 元来 放 蕩家 を 悪く いう 人 の 大部分 は 放 蕩 を する 資格 の ない もの が 多い 。 がんらい|はな|とういえ||わるく||じん||だいぶぶん||はな|とう|||しかく|||||おおい Most of the people who originally hate the prodigal house are often not qualified to be prodigal. また 放 蕩家 を もって 自任 する 連中 の うち に も 、 放 蕩 する 資格 の ない もの が 多い 。 |はな|とういえ|||じにん||れんちゅう|||||はな|とう||しかく|||||おおい これ ら は 余儀なく さ れ ない の に 無理に 進んで やる のである 。 |||よぎなく||||||むりに|すすんで|| あたかも 吾輩 の 水彩 画 に 於 ける が ごとき もの で 到底 卒業 する 気づかい は ない 。 |わがはい||すいさい|が||お||||||とうてい|そつぎょう||きづかい|| しかる に も 関せ ず 、 自分 だけ は 通 人 だ と 思って 済 ( す ま ) して いる 。 |||かんせ||じぶん|||つう|じん|||おもって|す|||| 料理 屋 の 酒 を 飲んだり 待合 へ 這 入 ( はい ) る から 通 人となり 得る と いう 論 が 立つ なら 、 吾輩 も 一 廉 ( ひとかど ) の 水彩 画家 に なり 得る 理 窟 ( りくつ ) だ 。 りょうり|や||さけ||のんだり|ま ごう||は|はい||||つう|ひととなり|える|||ろん||たつ||わがはい||ひと|れん|||すいさい|がか|||える|り|いわや|| If there is an argument that you can be a commuter because you drink alcohol from a restaurant or crawl into a waiting room, I can be a watercolor painter at a reasonable price. 吾輩 の 水彩 画 の ごとき は かか ない 方 が ましである と 同じ ように 、 愚 昧 ( ぐ まい ) なる 通 人 より も 山 出し の 大 野暮 ( おお や ぼ ) の 方 が 遥 ( はる ) か に 上等だ 。 わがはい||すいさい|が||||||かた||||おなじ||ぐ|まい||||つう|じん|||やま|だし||だい|やぼ|||||かた||はるか||||じょうとうだ

通 人 論 ( つうじ ん ろん ) は ちょっと 首肯 ( しゅこう ) しか ねる 。 つう|じん|ろん||||||しゅこう||| また 芸者 の 妻君 を 羨 しい など と いう ところ は 教師 と して は 口 に すべ から ざる 愚 劣 の 考 である が 、 自己 の 水彩 画 に おける 批評 眼 だけ は たしかな もの だ 。 |げいしゃ||さいくん||うらや|||||||きょうし||||くち|||||ぐ|おと||こう|||じこ||すいさい|が|||ひひょう|がん||||| 主人 は かく の ごとく 自 知 ( じち ) の 明 ( めい ) ある に も 関せ ず その 自 惚 心 ( うぬぼれ しん ) は なかなか 抜け ない 。 あるじ|||||じ|ち|||あき|||||かんせ|||じ|ぼけ|こころ|||||ぬけ| 中 二 日 ( なか ふ つ か ) 置いて 十二 月 四 日 の 日記 に こんな 事 を 書いて いる 。 なか|ふた|ひ|||||おいて|じゅうに|つき|よっ|ひ||にっき|||こと||かいて| 昨夜 ( ゆうべ ) は 僕 が 水彩 画 を かいて 到底 物 に なら ん と 思って 、 そこら に 抛 ( ほう ) って 置いた の を 誰 か が 立派な 額 に して 欄間 ( らんま ) に 懸 ( か ) け て くれた 夢 を 見た 。 さくや|||ぼく||すいさい|が|||とうてい|ぶつ|||||おもって|||なげう|||おいた|||だれ|||りっぱな|がく|||らんま|||かか|||||ゆめ||みた さて 額 に なった ところ を 見る と 我ながら 急に 上手に なった 。 |がく|||||みる||われながら|きゅうに|じょうずに| 非常に 嬉しい 。 ひじょうに|うれしい これ なら 立派な もの だ と 独 ( ひと ) り で 眺め 暮らして いる と 、 夜 が 明けて 眼 が 覚 ( さ ) め て やはり 元 の 通り 下手である 事 が 朝日 と 共に 明瞭に なって しまった 。 ||りっぱな||||どく||||ながめ|くらして|||よ||あけて|がん||あきら|||||もと||とおり|へたである|こと||あさひ||ともに|めいりょうに||

主人 は 夢 の 裡 ( うち ) まで 水彩 画 の 未練 を 背負 ( しょ ) って あるいて いる と 見える 。 あるじ||ゆめ||り|||すいさい|が||みれん||せお||||||みえる これ で は 水彩 画家 は 無論 夫 子 ( ふうし ) の 所 謂 ( いわゆる ) 通 人 に も なれ ない 質 ( たち ) だ 。 |||すいさい|がか||むろん|おっと|こ|||しょ|い||つう|じん|||||しち|| 主人 が 水彩 画 を 夢 に 見た 翌日 例の 金 縁 眼鏡 ( めがね ) の 美学 者 が 久し振りで 主人 を 訪問 した 。 あるじ||すいさい|が||ゆめ||みた|よくじつ|れいの|きむ|えん|めがね|||びがく|もの||ひさしぶりで|あるじ||ほうもん| 彼 は 座 に つく と 劈頭 ( へ きとう ) 第 一 に 「 画 ( え ) は どう か ね 」 と 口 を 切った 。 かれ||ざ||||へきとう|||だい|ひと||が|||||||くち||きった 主人 は 平気な 顔 を して 「 君 の 忠告 に 従って 写生 を 力 ( つ と ) め て いる が 、 なるほど 写生 を する と 今 まで 気 の つか なかった 物 の 形 や 、 色 の 精細な 変化 など が よく 分る ようだ 。 あるじ||へいきな|かお|||きみ||ちゅうこく||したがって|しゃせい||ちから||||||||しゃせい||||いま||き||||ぶつ||かた||いろ||せい ほそ な|へんか||||ぶん る| The master said with a calm face, "I am trying to make a picture according to your advice, but when I make a picture, I can see the shapes of things that I hadn't noticed before, and the fine changes in color. It seems that you can understand it well. 西洋 で は 昔 ( む か ) し から 写生 を 主張 した 結果 今日 ( こんにち ) の ように 発達 した もの と 思わ れる 。 せいよう|||むかし|||||しゃせい||しゅちょう||けっか|きょう||||はったつ||||おもわ| さすが アンドレア ・ デル ・ サルト だ 」 と 日記 の 事 は おくび に も 出さ ないで 、 また アンドレア ・ デル ・ サルト に 感心 する 。 ||||||にっき||こと|||||ださ|||||||かんしん| 美学 者 は 笑い ながら 「 実は 君 、 あれ は 出 鱈 目 ( でたらめ ) だ よ 」 と 頭 を 掻 ( か ) く 。 びがく|もの||わらい||じつは|きみ|||だ|たら|め|||||あたま||か|| 美容師笑著撓了撓頭,道:“其實你這就是胡說八道。” 「 何 が 」 と 主人 は まだ いつわら れた 事 に 気 が つか ない 。 なん|||あるじ|||||こと||き||| 「 何 が って 君 の しきりに 感服 して いる アンドレア ・ デル ・ サルト さ 。 なん|||きみ|||かんぷく|||||| あれ は 僕 の ちょっと 捏造 ( ねつぞう ) した 話 だ 。 ||ぼく|||ねつぞう|||はなし| 君 が そんなに 真面目 ( まじめ ) に 信じよう と は 思わ なかった ハハハハ 」 と 大喜 悦 の 体 ( てい ) である 。 きみ|||まじめ|||しんじよう|||おもわ||||おおよろこび|えつ||からだ|| 吾輩 は 椽 側 で この 対話 を 聞いて 彼 の 今日 の 日記 に は いかなる 事 が 記 ( しる ) さる る であろう か と 予 ( あら かじ ) め 想像 せ ざる を 得 なかった 。 わがはい||たるき|がわ|||たいわ||きいて|かれ||きょう||にっき||||こと||き|||||||あらかじめ||||そうぞう||||とく| 我在身邊聽著這段對話,不禁提前想像他今天的日記會寫些什麼。 この 美学 者 は こんな 好 ( いい ) 加減 な 事 を 吹き 散らして 人 を 担 ( かつ ) ぐ の を 唯一 の 楽 ( たのしみ ) に して いる 男 である 。 |びがく|もの|||よしみ||かげん||こと||ふき|ちらして|じん||にな|||||ゆいいつ||がく|||||おとこ| 彼 は アンドレア ・ デル ・ サルト 事件 が 主人 の 情 線 ( じょうせん ) に いかなる 響 を 伝えた か を 毫 ( ごう ) も 顧慮 せ ざる もの の ごとく 得意に なって 下 ( しも ) の ような 事 を 饒舌 ( し ゃべ ) った 。 かれ|||||じけん||あるじ||じょう|せん||||ひび||つたえた|||ごう|||こりょ||||||とくいに||した||||こと||じょうぜつ||| 「 いや 時々 冗談 ( じょうだん ) を 言う と 人 が 真 ( ま ) に 受ける ので 大 ( おおい ) に 滑稽 的 ( こっけい てき ) 美 感 を 挑 撥 ( ちょうはつ ) する の は 面白い 。 |ときどき|じょうだん|||いう||じん||まこと|||うける||だい|||こっけい|てき|||び|かん||いど|ばち|||||おもしろい せんだって ある 学生 に ニコラス ・ ニックルベー が ギボン に 忠告 して 彼 の 一 世 の 大 著述 なる 仏 国 革命 史 を 仏 語 で 書く の を やめ に して 英文 で 出版 さ せた と 言ったら 、 その 学生 が また 馬鹿に 記憶 の 善い 男 で 、 日本 文学 会 の 演説 会 で 真面目に 僕 の 話した 通り を 繰り返した の は 滑稽であった 。 ||がくせい|||||||ちゅうこく||かれ||ひと|よ||だい|ちょじゅつ||ふつ|くに|かくめい|し||ふつ|ご||かく||||||えいぶん||しゅっぱん||||いったら||がくせい|||ばかに|きおく||よい|おとこ||にっぽん|ぶんがく|かい||えんぜつ|かい||まじめに|ぼく||はなした|とおり||くりかえした|||こっけいであった 當我告訴一名學生尼古拉斯·尼克利維建議吉本停止用法語寫他最偉大的著作《法國大革命史》並用英語出版時,這名學生說:「看到他很有趣,一個擁有如此才華的人。」記性真好,認真重複我在日本文學會演講時說過的話。 ところが その 時 の 傍聴 者 は 約 百 名 ばかりであった が 、 皆 熱心に それ を 傾聴 して おった 。 ||じ||ぼうちょう|もの||やく|ひゃく|な|||みな|ねっしんに|||けいちょう|| それ から まだ 面白い 話 が ある 。 |||おもしろい|はなし|| せんだって 或る 文学 者 の いる 席 で ハリソン の 歴史 小説 セオファーノ の 話 ( は な ) し が 出た から 僕 は あれ は 歴史 小説 の 中 ( うち ) で 白眉 ( はくび ) である 。 |ある|ぶんがく|もの|||せき||||れきし|しょうせつ|||はなし|||||でた||ぼく||||れきし|しょうせつ||なか|||はくび|| 當我與一位文學人物會面時,我聽到了哈里森的歷史小說《狄奧法諾》的故事,我心想:“這就是一部歷史小說。” ことに 女 主人公 が 死ぬ ところ は 鬼気 ( きき ) 人 を 襲う ようだ と 評したら 、 僕 の 向う に 坐って いる 知ら ん と 云った 事 の ない 先生 が 、 そう そう あす こ は 実に 名文 だ と いった 。 |おんな|しゅじんこう||しぬ|||きき||じん||おそう|||ひょうしたら|ぼく||むかい う||すわって||しら|||うん った|こと|||せんせい|||||||じつに|めいぶん||| 當我評價女主角死去的那一幕就像惡魔襲擊人時,坐在我對面的老師從來沒有說過她不知道,她說:“是的,那真是一篇很棒的文章。” 塔。 それ で 僕 は この 男 も やはり 僕 同様 この 小説 を 読んで おら ない と いう 事 を 知った 」 神経 胃 弱 性 の 主人 は 眼 を 丸く して 問い かけた 。 ||ぼく|||おとこ|||ぼく|どうよう||しょうせつ||よんで|||||こと||しった|しんけい|い|じゃく|せい||あるじ||がん||まるく||とい| 我這才意識到,這個人和我一樣,也沒有讀過這本小說。」胃不好的丈夫睜大眼睛問。 「 そんな 出 鱈 目 ( でたらめ ) を いって もし 相手 が 読んで いたら どう する つもりだ 」 あたかも 人 を 欺 ( あざむ ) く の は 差 支 ( さしつかえ ) ない 、 ただ 化 ( ばけ ) の 皮 ( かわ ) が あらわれた 時 は 困る じゃ ない か と 感じた もの の ごとく である 。 |だ|たら|め|||||あいて||よんで||||||じん||あざむ|||||さ|し||||か|||かわ||||じ||こまる|||||かんじた|||| 美学 者 は 少しも 動じ ない 。 びがく|もの||すこしも|どうじ| 「 な に その 時 ( とき ) ゃ 別 の 本 と 間違えた と か 何とか 云う ばかり さ 」 と 云って けら けら 笑って いる 。 |||じ|||べつ||ほん||まちがえた|||なんとか|うん う||||うん って|||わらって| この 美学 者 は 金 縁 の 眼鏡 は 掛けて いる が その 性質 が 車 屋 の 黒 に 似た ところ が ある 。 |びがく|もの||きむ|えん||めがね||かけて||||せいしつ||くるま|や||くろ||にた||| 主人 は 黙って 日の出 を 輪 に 吹いて 吾輩 に は そんな 勇気 は ない と 云わ ん ばかりの 顔 を して いる 。 あるじ||だまって|ひので||りん||ふいて|わがはい||||ゆうき||||うん わ|||かお||| 美学 者 は それ だ から 画 ( え ) を かいて も 駄目だ と いう 目付 で 「 しかし 冗談 ( じょうだん ) は 冗談 だ が 画 と いう もの は 実際 むずかしい もの だ よ 、 レオナルド ・ ダ ・ ヴィンチ は 門下 生 に 寺院 の 壁 の しみ を 写せ と 教えた 事 が ある そうだ 。 びがく|もの|||||が|||||だめだ|||めつき|||じょうだん|||じょうだん|||が|||||じっさい|||||||||もんか|せい||じいん||かべ||||うつせ||おしえた|こと|||そう だ なるほど 雪隠 ( せつ いん ) など に 這 入 ( はい ) って 雨 の 漏る 壁 を 余念 なく 眺めて いる と 、 なかなか うまい 模様 画 が 自然に 出来て いる ぜ 。 |ゆき こも|||||は|はい|||あめ||もる|かべ||よねん||ながめて|||||もよう|が||しぜんに|できて|| 君 注意 して 写生 して 見 給え きっと 面白い もの が 出来る から 」 「 また 欺 ( だま ) す のだろう 」 「 いえ これ だけ は たしかだ よ 。 きみ|ちゅうい||しゃせい||み|たまえ||おもしろい|||できる|||あざむ||||||||| 実際 奇 警 な 語 じゃ ない か 、 ダ ・ ヴィンチ でも いい そうな 事 だ あね 」 「 なるほど 奇 警 に は 相違 ない な 」 と 主人 は 半分 降参 を した 。 じっさい|き|けい||ご||||||||そう な|こと||||き|けい|||そうい||||あるじ||はんぶん|こうさん|| 事實上,這是一個奇怪的詞,不是嗎?聽起來達文西也不會介意。」「我明白了,這和一個奇怪的詞沒有什麼不同。」主持人半投降地說。 しかし 彼 は まだ 雪隠 で 写生 は せ ぬ ようだ 。 |かれ|||ゆき こも||しゃせい|||| 不過,他現在還在雪隱,似乎還不能畫畫。 車 屋 の 黒 は その後 ( ご ) 跛 ( び っこ ) に なった 。 くるま|や||くろ||そのご||は|||| 汽車經銷商庫羅從此瘸了。 彼 の 光沢 ある 毛 は 漸 々 ( だんだん ) 色 が 褪 ( さ ) め て 抜けて 来る 。 かれ||こうたく||け||すすむ|||いろ||たい||||ぬけて|くる 他閃亮的頭髮逐漸褪色並脫落。 吾輩 が 琥珀 ( こはく ) より も 美しい と 評した 彼 の 眼 に は 眼 脂 ( めやに ) が 一杯 たまって いる 。 わがはい||こはく|こ はく|||うつくしい||ひょうした|かれ||がん|||がん|あぶら|||いっぱい|| 他的眼睛,我形容為比琥珀還美麗,充滿了眼液。 ことに 著 る しく 吾輩 の 注意 を 惹 ( ひ ) いた の は 彼 の 元気 の 消沈 と その 体格 の 悪く なった 事 である 。 |ちょ|||わがはい||ちゅうい||じゃく|||||かれ||げんき||しょうちん|||たいかく||わるく||こと| 尤其引起我注意的是他的精力下降,體質惡化。 吾輩 が 例の 茶 園 ( ちゃ えん ) で 彼 に 逢った 最後の 日 、 どう だ と 云って 尋ねたら 「 いたち の 最後 屁 ( さいご っ ぺ ) と 肴 屋 ( さかな や ) の 天秤 棒 ( てん びんぼう ) に は 懲 々 ( こりごり ) だ 」 と いった 。 わがはい||れいの|ちゃ|えん||||かれ||あった|さいご の|ひ||||うん って|たずねたら|||さいご|へ|||||さかな|や||||てんびん|ぼう|||||ちょう||||| 我最後一天在茶園見到他,我問他過得怎麼樣,他說:「我們最後放的一個屁,還有魚店裡的平衡。」「這對我來說非常艱難,」他說。 赤松 の 間 に 二三 段 の 紅 ( こう ) を 綴った 紅葉 ( こうよう ) は 昔 ( む か ) し の 夢 の ごとく 散って つく ばい に 近く 代る代る 花弁 ( はなびら ) を こぼした 紅白 ( こうはく ) の 山茶花 ( さざんか ) も 残り なく 落ち 尽した 。 あかまつ||あいだ||ふみ|だん||くれない|||つづった|こうよう|こう よう||むかし|||||ゆめ|||ちって||||ちかく|かわるがわる|かべん||||こうはく|||さざんか|||のこり||おち|つくした 紅松之間,紅白的葉子如久遠的夢般散落,灑下新的花瓣,茶梅花全都不見了。 三 間 半 の 南 向 の 椽側 に 冬 の 日 脚 が 早く 傾いて 木 枯 ( こがらし ) の 吹か ない 日 は ほとんど 稀 ( まれ ) に なって から 吾輩 の 昼寝 の 時間 も 狭 ( せば ) め られた ような 気 が する 。 みっ|あいだ|はん||みなみ|むかい||たるきがわ||ふゆ||ひ|あし||はやく|かたむいて|き|こ|||ふか||ひ|||まれ|||||わがはい||ひるね||じかん||せま|||||き|| 在三天半的湖面朝南的一側,冬天的日子過得很快,樹木不吹的日子幾乎很少見,我的午睡時間也越來越短。被搶劫了。 主人 は 毎日 学校 へ 行く 。 あるじ||まいにち|がっこう||いく 帰る と 書斎 へ 立て 籠 ( こも ) る 。 かえる||しょさい||たて|かご|| 回到家,我把自己反鎖在書房裡。 人 が 来る と 、 教師 が 厭 ( いや ) だ 厭だ と いう 。 じん||くる||きょうし||いと|||いと だ|| 人們來了,老師就說不喜歡。 水彩 画 も 滅多に かか ない 。 すいさい|が||めったに|| 我也很少畫水彩。 タカジヤスターゼ も 功 能 が ない と いって やめて しまった 。 ||いさお|のう|||||| 小 供 は 感心に 休ま ないで 幼稚園 へ か よう 。 しょう|とも||かんしんに|やすま||ようちえん||| 當孩子們前往幼兒園時,他們並沒有在欽佩中休息。 帰る と 唱歌 を 歌って 、 毬 ( まり ) を ついて 、 時々 吾輩 を 尻尾 ( しっぽ ) で ぶら下げる 。 かえる||しょうか||うたって|いが||||ときどき|わがはい||しっぽ|||ぶらさげる 吾輩 は 御馳走 ( ごちそう ) も 食わ ない から 別段 肥 ( ふと ) り も し ない が 、 まずまず 健康で 跛 ( び っこ ) に も なら ず に その 日 その 日 を 暮して いる 。 わがはい||ごちそう|||くわ|||べつだん|こえ||||||||けんこうで|は|||||||||ひ||ひ||くらして| 我吃的東西不多,所以不會變胖,但我相當健康,而且生活也沒有跛行。 鼠 は 決して 取ら ない 。 ねずみ||けっして|とら| おさん は 未 ( いま ) だに 嫌 ( きら ) い である 。 ||み|||いや||| 名前 は まだ つけて くれ ない が 、 欲 を いって も 際限 が ない から 生涯 ( しょうがい ) この 教師 の 家 ( うち ) で 無名 の 猫 で 終る つもりだ 。 なまえ|||||||よく||||さいげん||||しょうがい|||きょうし||いえ|||むめい||ねこ||おわる| 第 二 話 へ だい|ふた|はなし|