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ソードアート・オンライン1 アインクラッド (Sword Art Online 1: Aincrad), ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (13)

ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (13)

「貴様 ァ……!

軋む ような 声 で 唸った。 その 表情 に は 、システム に よる 誇張 を 差し引いて も 、どこ か 常軌 を 逸した 何 か を 感じ させる もの が ある。

「アスナ の 安全 は 俺 が 責任 を 持つ よ。 別に 今日 ボス 戦 を やろうって 訳 じゃ ない。 本部 に は あんた 一 人 で 行って くれ」

「ふ ……ふざける な !! 貴様 の ような 雑魚 プレイヤー に アスナ 様 の 護衛 が 務まる か ぁ !! わ ……私 は 栄光 ある 血盟 騎士団 の……」

「あんた より は マトモ に 務 まる よ」

正直な 所 、この 一言 は 余計だった。

「ガキィ ……そ 、そこ まで で かい 口 を 叩く からに は 、それ を 証明 する 覚悟 が ある んだろう な……」

顔面 蒼白に なった クラディール は 、震える 右手 で ウインドウ を 呼び出す と 素早く 操作 した。 即座に 、俺 の 視界 に 半透明 の システム メッセージ が 出現 する。 内容 は 見る 前 から 想像 が ついた。

【クラディール から 1vs 1デュエル を 申し込ま れました。 受諾 します か?

無表情に 発光 する 文字 の 下 に 、Yes /No の ボタン と いくつか の オプション。 俺 は ちらり と 隣 の アスナ に 視線 を 向けた。 彼女 に は この メッセージ は 見えて いない が 、状況 は 察して いる だろう。 当然 止める と 俺 は 思った のだ が 、驚いた こと に アスナ は 硬い 表情 で 小さく 頷いた。

「……いい の か? ギルド で 問題 に なら ない か……?

小声 で 聞いた 俺 に 、同じく 小さい が きっぱり した 口調 で 答える。

「大丈夫。 団長 に は わたし から 報告 する」

俺 は 頷き 返す と Yes ボタン に 触れ 、オプション の 中 から 《初 撃 決着 モード 》を 選択 した。

これ は 、最初に 強 攻撃 を ヒット さ せる か 、あるいは 相手 の HP を 半減 さ せた ほう が 勝利 する と いう 条件 だ。 メッセージ は 【クラディール と の 1vs 1デュエル を 受諾 しました 】と 変化 し 、その 下 で 六十 秒 の カウント ダウン が 開始 さ れる。 この 数字 が ゼロ に なった 瞬間 、俺 と 奴 の 間 で は 街 区 で の HP 保護 が 消滅 し 、勝敗 が 決する まで 剣 を 打ち合う こと に なる。

クラディール は アスナ の 首肯 を どう 解釈 した もの か、

「ご 覧 ください アスナ 様! 私 以外 に 護衛 が 務まる者 など 居ない こと を 証明 します ぞ!

狂喜 を 押し殺した ような 表情 で 叫び 、芝居 が がった 仕草 で 腰 から 大ぶり の 両手 剣 を 引き抜く と 、がしゃっ と 音 を 立てて 構えた。

アスナ が 数 歩 下がる の を 確認 して 、俺 も 背 から 片手 剣 を 抜く。 さすが に 名門 ギルド の 所属 だけ あって 、得 物 は 奴 の ほう が 格段に 見栄え が いい。 両手 用 と 片手 用 の サイズ の 違い だけ で なく 、俺 の 愛 剣 が 実用 一 本 の 簡素な もの な のに 比べ 、向こう は 一流 の 細工 職人 の 技 と おぼしき 華麗な 装飾 が 施して ある。

俺 たち が 五 メートル ほど の 距離 を 取って 向き合い 、カウント を 待つ 間 に も 周囲 に は 次々 と ギャラリー が 集まって きて いた。 無理 は ない 、ここ は 街 の ド 真ん中 の ゲート 広場 である 上 に 、俺 も 奴 も そこそこ 名の通った プレイヤー な のだ。

「ソロ の キリト と KoB メンバー が デュエル だ と よ!!」

ギャラリー の 一 人 が 大声 で 叫び 、ドッと 歓声 が 湧いた。 普通 デュエル は 友人 同士 の 腕試し で 行わ れる もの で 、この 事態 に 至る まで の 険悪な 成り行き を 知ら ない 見物人 たち は 、口笛 を 鳴らす わ 野次 を 飛ばす わ 大変な 騒ぎ だ。

だが 、カウント が 進む につれ 、俺 に は それ ら の 声 は 聞こえ なく なって いった。 モンスター と 対峙 する 時 と 同じ よう に 、研ぎ澄まされた 冷たい 糸 が 全身 を 貫いて いく の を 感じる。 野次 を 気 に して ちらちら と 周囲 に 苛立った 視線 を 向ける クラディール の 全身 の 様子 、剣 の 構え 方 や 足 の 開き 方 と いった 《気配 》を 読む べく 、俺 は 意識 を 集中 した。

人間 の プレイヤー は モンスター 以上 に 、繰り出そう と 意図 する 剣 技 の 癖 が 事前 に 現れる もの だ。 突進 系 、受身 系 、上段 から 始まる か 下段 から か 、それ ら の 情報 を 相手 に 与えて しまう こと は 、対人 戦闘 で は 致命 的な ミス と なる。

クラディール は 剣 を 中段 やや 担ぎ 気味に 構え 、前傾 姿勢 で 腰 を 落として いた。 明らかに 突進 系 の 上段 攻撃 の 気配 だ。 無論 それ が フェイント と いう こと も あり 得る。 実際 俺 は 今 、剣 を 下段 に 構えて 緩め に 立ち 、初動 を 下 方向 の 小 攻撃 から 始める よう に 見せかけて いる。 この へん の 虚実 の 読み 合い は もう 勘 と 経験 に 頼る しか ない。

カウント が 一桁 に なり 、俺 は ウインドウ を 消去 した。 最 早 周囲 の 雑音 は 聞こえ ない。

最後 まで 俺 と ウインドウ と の 間 で 視線 を 往復 さ せて いた クラディール の 動き が 止まり 、全身 が ぐっと 緊張 した。 二 人 の 間 の 空間 に 、紫色 の 閃光 を 伴って 【DUEL !!】の 文字 が 弾け 、同時に 俺 は 猛然と 地面 を 蹴って いた。 ブーツ の 底 から 火花 が 飛び散り 、切り裂かれた 空気 が 重く 唸る。

ごくごく わずか 、ほんの 一瞬 遅れて クラディール の 体 も 動き 始めた。 だが 、その 顔 に は 驚愕 の 表情 が 張り付いて いる。 下段 の 受身 気配 を 見せて いた 俺 が 、予想 を 裏切って 突進 して きた から だ。

クラディール の 初動 は 推測 通り 両手 用 大 剣 の 上段 ダッシュ 技 、《アバランシュ 》だった。 生半可な ガード で は 、受ける こと に 成功 して も 衝撃 が 大き すぎて 優先 的 反撃 に 入れ ず 、避けて も 突進 力 に よって 距離 が できる ため 使用者 に 立ち直る 余裕 を 与える 優秀な 高 レベル 剣技 だ。 あくまで モンスター 相手 なら 、だが。

その 技 を 読んだ 俺 は 、同じく 上段 の 片手 剣 突進 技 《ソニック リープ 》を 選択 して いた。 技 同士 が 交錯 する 軌道 である。

技 の 威力 そのもの は 向こう の ほうが 上 だ。 そして 、武器 に よる 攻撃 同士 が 衝突 した 場合 、より 重い 技 の ほう に 有利な 判定 が なされる。 この 場合 は 、通常 なら 俺 の 剣 は 弾か れ 、威力 を 減じられる と は いえ 勝敗 を 決する に 充分な ダメージ が 俺 の 体 に 届く だろう。 だが 、俺 の 狙い は クラディール 本人 で は なかった。

二 人 の 距離 が 相対 的に 凄ま じい スピード で 縮んで いく。 だが 同時に 俺 の 知覚 も 加速 さ れ 、徐徐に 時間 の 流れ が ゆるく なる ような 感覚 を 味わう。 これ が SAO の システム アシスト の 結果 な の か 、人間 本来 の 能力 な の か は 判ら ない。 ただ 、俺 の 目 に は 剣 技 を 繰り出す 奴 の 全身 の 動き が はっきり と 見て取れる。

大きく 後ろ に 振りかぶられた 大 剣 が 、オレンジ色 の エフェクト 光 を 発し ながら 俺 に 向かって 撃ち 出されて くる。 さすが に 最強 ギルド の 構成員 だけ あって ステータス は そこそこ の もの らしく 、技 の 発生 速度 が 俺 の 予想 より 速い。 強く 輝く 刀身 が 迫る。 必殺 の 威力 を はらむ それ を 正面 から 食らったら 、一撃 終了 の デュエル と は 言え 看過 でき ない ダメージ を 被る に 違いない。 勝利 を 確信 した クラディール の 顔 に 隠せ ない 狂喜 の 色 が 浮かぶ。 だが──。

先 を 取り 、一瞬 早く 動き出した 俺 の 剣 は 斜めの 軌道 を 描き 、こちら は 黄緑 色 の 光 の 帯 を 引き ながら 、まだ 振り 途中 で 攻撃 判定 の 発生 する 直前 の 奴 の 大剣 の 横腹 に 命中 した。 凄ま じい 量 の 火花。

武器 と 武器 の 攻撃 が 衝突 した 場合 の もう ひと つ の 結果 、それ が 《武器 破壊 》である。

無論 めったに 起きる こと で は ない。 技 の 出 始め か 出 終わり の 、攻撃 判定 が 存在 し ない 状態 に 、その 武器 の 構造 上 弱い 位置 ・方向 から 強烈な 打撃 が 加えられた 場合 のみ それ が 発生 する 可能 性 が ある。

だが 俺 に は 、折れる と いう 確信 が あった。 装飾 華美な 武器 は 、概して 耐久 力 に 劣る。

果たして ──耳 を つんざく ような 金属 音 を 撒き散らし 、クラディール の 両手 剣 が その 横 腹 から ヘシ折れた。 爆発 じみ た 派手な ライトエフェクト が 炸裂 する。

そのまま 俺 と 奴 は 空中 で すれちがい 、もと 居た 位置 を 入れ替えて 着地。 回転 し ながら 宙 高く 吹っ飛んで いった 奴 の 剣 の 半身 が 、上空 で きらり と 陽光 を 反射 した か と 思う と 、二 人 の 中間 の 石畳 に 突き 立った。 直後 、その 剣先 と クラディール の 手 に 残った 下 半分 が 、無数の ポリゴン の 欠片 と なって 砕け 散った。

しばらく の 間 、沈黙 が 広場 を 覆った。 見物人 は 皆 口 を ぽかん と 開けて 立ち尽くして いる。 だが 俺 が 着地 姿勢 から 体 を 起こし 、いつも の 癖 で 剣 を 左右 に 切り払う と 、わっと 歓声 が 巻き起こった。

すげえ 、いま の 狙った の か 、と 口々に 一瞬 の 攻防 を 講評 し はじめる の を 聞き 、俺 は ため息 を 吞み込んだ。 技 一 つ と は いえ 衆人 環視 の 中 で 手の内 を 見せる の は 、あまり 気持ち の いい もの で は ない。

剣 を 右手 に 下げた まま 、背 を 向けて うずくまって いる クラディール に ゆっくり と 歩み寄る。 白い マント に 包まれた 背中 が ぶるぶる と わなないて いる。 わざと 音 を 立てて 剣 を 背中 の 鞘 に 落とし ながら 、俺 は 小声 で 言った。

「武器 を 替えて 仕切り なおす なら 付き合う けど ……もう いい んじゃ ない か な」

クラディール は 俺 を 見る こと なく 、両手 で 石畳 に 爪 を 立てて おこり の よう に 体 を 細かく 震わせて いた が 、やがて 軋る ような 声 で 「アイ ・リザイン 」と 発声 した。 別に 日本 語 で 《降参 》や 《参った 》でも デュエル は 終了 する のだ が。

直後 、開始 の 時 と 同じ 位置 に 、デュエル の 終了 と 勝者 の 名 を 告げる 紫色 の 文字 列 が フラッシュ した。 再び ワッと いう 歓声。 クラディール は よろけ ながら 立ち上がる と 、ギャラリー の 列 に 向かって 喚 いた。

「見世物 じゃ ねえ ぞ! 散れ! 散れ!

次いで 、ゆっくり と 俺 の ほう に 向き直る。

「貴 様 ……殺す ……絶対 に 殺す ぞ……」

その 目つき に は 、俺 も 少々 ゾッと さ せられた こと を 認め ない わけに は いか ない。

SAO の 感情 表現 は やや オーバー 気味な のだ が 、それ を 差っ引いて も クラディール の 三 白 眼 に 浮かんだ 憎悪 の 色 は モンスター の それ 以上 だった。 辟易 して 黙り こんだ 俺 の 傍ら に 、スッと 歩み 出た 人影 が あった。

「クラディール 、血 盟騎 士 団 副 団長 と して 命じます。 本日 を以て 護衛 役 を 解任。 別命 ある まで ギルド 本部 にて 待機。 以上」

アスナ の 声 は 、表情 以上 に 凍りついた 響き を 持って いた。 だが 俺 は その 中 に 抑えつけられた 苦悩 の 色 を 感じて 、無意識 の うち に アスナ の 肩 に 手 を 掛けて いた。 硬く 緊張 した アスナ の 体 が 小さく よろめく と 、俺 に もたれかかる よう に 体重 を 預けて くる。

「…………なん ……なんだ と ……この……」

かろうじて それ だけ が 聞こえた。 残り の 、おそらく 百 通り の 呪詛 であろう 言葉 を 口 の 中 で ぶつぶつ と 呟き ながら 、クラディール は 俺 たち を 見据えた。 予備 の 武器 を 装備 し なおし 、犯罪 防止 コード に 阻ま れる の を 承知 の 上 で 斬り かかる こと を 考えて いる に 違いない。

だが 、奴 は かろうじて 自制 する と 、マント の 内側 から 転移 結晶 を 摑 み 出した。 握力 で 砕か ん ばかりに 握り締めた それ を 掲げ 、「転移 ……グランザム 」と 呟く。 青光 に 包ま れ 消え去る 最後 の 瞬間 まで 、クラディール は 俺 たち に 憎悪 の 視線 を 向けて いた。


ソードアート ・オンライン 1 アインクラッド (13) |おんらいん| Sword Art Online 1 Aincrad (13)

「貴様 ァ……! たかし さま|

軋む ような 声 で 唸った。 きしむ||こえ||うなった He roared in a squeaky voice. その 表情 に は 、システム に よる 誇張 を 差し引いて も 、どこ か 常軌 を 逸した 何 か を 感じ させる もの が ある。 |ひょうじょう|||しすてむ|||こちょう||さしひいて||||じょうき||そらした|なん|||かんじ|さ せる||| Even if we subtract the exaggeration caused by the system, there is something out of the ordinary about their expressions.

「アスナ の 安全 は 俺 が 責任 を 持つ よ。 ||あんぜん||おれ||せきにん||もつ| 別に 今日 ボス 戦 を やろうって 訳 じゃ ない。 べつに|きょう|ぼす|いくさ|||やく|| 本部 に は あんた 一 人 で 行って くれ」 ほんぶ||||ひと|じん||おこなって| You're on your own at headquarters."

「ふ ……ふざける な !! 貴様 の ような 雑魚 プレイヤー に アスナ 様 の 護衛 が 務まる か ぁ !! わ ……私 は 栄光 ある 血盟 騎士団 の……」 |||たかし さま|||ざこ|ぷれいやー|||さま||ごえい||つとむ まる||||わたくし||えいこう||ち めい|きし だん|

「あんた より は マトモ に 務 まる よ」 |||||つとむ|| I'm a better shot than you are.

正直な 所 、この 一言 は 余計だった。 しょうじきな|しょ||いちげん||よけいだった To be honest, this one word was superfluous.

「ガキィ ……そ 、そこ まで で かい 口 を 叩く からに は 、それ を 証明 する 覚悟 が ある んだろう な……」 ||||||くち||たたく|||||しょうめい||かくご|||| The kid ...... must be prepared to prove it if he's going to talk that big. ......

顔面 蒼白に なった クラディール は 、震える 右手 で ウインドウ を 呼び出す と 素早く 操作 した。 がんめん|そうはくに||||ふるえる|みぎて||||よびだす||すばやく|そうさ| Cladir's face turned pale, and he quickly used his trembling right hand to call up a window. 即座に 、俺 の 視界 に 半透明 の システム メッセージ が 出現 する。 そくざに|おれ||しかい||はんとうめい||しすてむ|めっせーじ||しゅつげん| 内容 は 見る 前 から 想像 が ついた。 ないよう||みる|ぜん||そうぞう|| I could imagine the contents before I saw it.

【クラディール から 1vs 1デュエル を 申し込ま れました。 |||||もうしこま| 受諾 します か? じゅだく||

無表情に 発光 する 文字 の 下 に 、Yes /No の ボタン と いくつか の オプション。 むひょうじょうに|はっこう||もじ||した||yes|no||ぼたん||||おぷしょん A Yes/No button and several options below a blank text. 俺 は ちらり と 隣 の アスナ に 視線 を 向けた。 おれ||||となり||||しせん||むけた 彼女 に は この メッセージ は 見えて いない が 、状況 は 察して いる だろう。 かのじょ||||めっせーじ||みえて|||じょうきょう||さっして|| She may not see the message, but she is aware of the situation. 当然 止める と 俺 は 思った のだ が 、驚いた こと に アスナ は 硬い 表情 で 小さく 頷いた。 とうぜん|とどめる||おれ||おもった|||おどろいた|||||かたい|ひょうじょう||ちいさく|うなずいた Naturally, I thought she would stop, but to my surprise, Asuna nodded her head slightly with a hard expression on her face.

「……いい の か? ギルド で 問題 に なら ない か……? ぎるど||もんだい||||

小声 で 聞いた 俺 に 、同じく 小さい が きっぱり した 口調 で 答える。 こごえ||きいた|おれ||おなじく|ちいさい||||くちょう||こたえる I asked in a whisper, to which he replied in the same small but firm tone.

「大丈夫。 だいじょうぶ 団長 に は わたし から 報告 する」 だんちょう|||||ほうこく| I will report to the Commander."

俺 は 頷き 返す と Yes ボタン に 触れ 、オプション の 中 から 《初 撃 決着 モード 》を 選択 した。 おれ||うなずき|かえす||yes|ぼたん||ふれ|おぷしょん||なか||はつ|う|けっちゃく|もーど||せんたく|

これ は 、最初に 強 攻撃 を ヒット さ せる か 、あるいは 相手 の HP を 半減 さ せた ほう が 勝利 する と いう 条件 だ。 ||さいしょに|つよ|こうげき||ひっと|||||あいて||hp||はんげん|||||しょうり||||じょうけん| メッセージ は 【クラディール と の 1vs 1デュエル を 受諾 しました 】と 変化 し 、その 下 で 六十 秒 の カウント ダウン が 開始 さ れる。 めっせーじ||||||||じゅだく|||へんか|||した||ろくじゅう|びょう||かうんと|だうん||かいし|| この 数字 が ゼロ に なった 瞬間 、俺 と 奴 の 間 で は 街 区 で の HP 保護 が 消滅 し 、勝敗 が 決する まで 剣 を 打ち合う こと に なる。 |すうじ|||||しゅんかん|おれ||やつ||あいだ|||がい|く|||hp|ほご||しょうめつ||しょうはい||けっする||けん||うちあう|||

クラディール は アスナ の 首肯 を どう 解釈 した もの か、 ||||しゅこう|||かいしゃく||| How did Cladir interpret Asuna's affirmation?

「ご 覧 ください アスナ 様! |み|||さま 私 以外 に 護衛 が 務まる者 など 居ない こと を 証明 します ぞ! わたくし|いがい||ごえい||つとむ まる しゃ||い ない|||しょうめい||

狂喜 を 押し殺した ような 表情 で 叫び 、芝居 が がった 仕草 で 腰 から 大ぶり の 両手 剣 を 引き抜く と 、がしゃっ と 音 を 立てて 構えた。 きょうき||おしころした||ひょうじょう||さけび|しばい|||しぐさ||こし||おおぶり||りょうて|けん||ひきぬく||がし ゃっ||おと||たてて|かまえた With a look of stifled glee, he shouted, and with a theatrical gesture, he drew a large two-handed sword from his waist and readied it with a clatter.

アスナ が 数 歩 下がる の を 確認 して 、俺 も 背 から 片手 剣 を 抜く。 ||すう|ふ|さがる|||かくにん||おれ||せ||かたて|けん||ぬく さすが に 名門 ギルド の 所属 だけ あって 、得 物 は 奴 の ほう が 格段に 見栄え が いい。 ||めいもん|ぎるど||しょぞく|||とく|ぶつ||やつ||||かくだんに|みばえ|| As expected of a member of a prestigious guild, his weapons are much better looking. 両手 用 と 片手 用 の サイズ の 違い だけ で なく 、俺 の 愛 剣 が 実用 一 本 の 簡素な もの な のに 比べ 、向こう は 一流 の 細工 職人 の 技 と おぼしき 華麗な 装飾 が 施して ある。 りょうて|よう||かたて|よう||さいず||ちがい||||おれ||あい|けん||じつよう|ひと|ほん||かんそな||||くらべ|むこう||いちりゅう||さいく|しょくにん||わざ||お ぼ しき|かれいな|そうしょく||ほどこして| Not only is there a size difference between the two-handed and one-handed versions, but also, while my beloved sword is a simple, practical one, the other one is decorated with gorgeous ornaments that seem to be the workmanship of a first-rate craftsman.

俺 たち が 五 メートル ほど の 距離 を 取って 向き合い 、カウント を 待つ 間 に も 周囲 に は 次々 と ギャラリー が 集まって きて いた。 おれ|||いつ|めーとる|||きょり||とって|むきあい|かうんと||まつ|あいだ|||しゅうい|||つぎつぎ||ぎゃらりー||あつまって|| 無理 は ない 、ここ は 街 の ド 真ん中 の ゲート 広場 である 上 に 、俺 も 奴 も そこそこ 名の通った プレイヤー な のだ。 むり|||||がい|||まんなか||げーと|ひろば||うえ||おれ||やつ|||な の かよった|ぷれいやー||

「ソロ の キリト と KoB メンバー が デュエル だ と よ!!」 そろ||||kob|めんばー|||||

ギャラリー の 一 人 が 大声 で 叫び 、ドッと 歓声 が 湧いた。 ぎゃらりー||ひと|じん||おおごえ||さけび|どっと|かんせい||わいた 普通 デュエル は 友人 同士 の 腕試し で 行わ れる もの で 、この 事態 に 至る まで の 険悪な 成り行き を 知ら ない 見物人 たち は 、口笛 を 鳴らす わ 野次 を 飛ばす わ 大変な 騒ぎ だ。 ふつう|||ゆうじん|どうし||うでだめし||おこなわ|||||じたい||いたる|||けんあくな|なりゆき||しら||けんぶつにん|||くちぶえ||ならす||やじ||とばす||たいへんな|さわぎ|

だが 、カウント が 進む につれ 、俺 に は それ ら の 声 は 聞こえ なく なって いった。 |かうんと||すすむ|に つれ|おれ||||||こえ||きこえ||| モンスター と 対峙 する 時 と 同じ よう に 、研ぎ澄まされた 冷たい 糸 が 全身 を 貫いて いく の を 感じる。 ||たいじ||じ||おなじ|||とぎすまされた|つめたい|いと||ぜんしん||つらぬいて||||かんじる Just as when confronting a monster, you feel a sharpened, cold thread running through your entire body. 野次 を 気 に して ちらちら と 周囲 に 苛立った 視線 を 向ける クラディール の 全身 の 様子 、剣 の 構え 方 や 足 の 開き 方 と いった 《気配 》を 読む べく 、俺 は 意識 を 集中 した。 やじ||き|||||しゅうい||いらだった|しせん||むける|||ぜんしん||ようす|けん||かまえ|かた||あし||あき|かた|||けはい||よむ||おれ||いしき||しゅうちゅう| I focused my attention on Cladir, who was looking at his surroundings with annoyed eyes, trying to read the signs of his body, such as the way he held his sword and the way he opened his legs.

人間 の プレイヤー は モンスター 以上 に 、繰り出そう と 意図 する 剣 技 の 癖 が 事前 に 現れる もの だ。 にんげん||ぷれいやー|||いじょう||くりだそう||いと||けん|わざ||くせ||じぜん||あらわれる|| Human players, more so than monsters, have a habit of pre-determining the sword techniques they intend to perform. 突進 系 、受身 系 、上段 から 始まる か 下段 から か 、それ ら の 情報 を 相手 に 与えて しまう こと は 、対人 戦闘 で は 致命 的な ミス と なる。 とっしん|けい|じゅ み|けい|じょうだん||はじまる||げだん||||||じょうほう||あいて||あたえて||||たいじん|せんとう|||ちめい|てきな|みす|| Giving your opponent information about whether you are rushing or passive, starting from the top or the bottom, is a fatal mistake in combat against an opponent.

クラディール は 剣 を 中段 やや 担ぎ 気味に 構え 、前傾 姿勢 で 腰 を 落として いた。 ||けん||ちゅうだん||かつぎ|ぎみに|かまえ|ぜんけい|しせい||こし||おとして| Cladir was holding his sword in the middle position, slightly as if he was carrying it, and was leaning forward and stooping. 明らかに 突進 系 の 上段 攻撃 の 気配 だ。 あきらかに|とっしん|けい||じょうだん|こうげき||けはい| It is clearly a rush-type upper attack. 無論 それ が フェイント と いう こと も あり 得る。 むろん|||ふぇいんと||||||える 実際 俺 は 今 、剣 を 下段 に 構えて 緩め に 立ち 、初動 を 下 方向 の 小 攻撃 から 始める よう に 見せかけて いる。 じっさい|おれ||いま|けん||げだん||かまえて|ゆるめ||たち|しょどう||した|ほうこう||しょう|こうげき||はじめる|||みせかけて| この へん の 虚実 の 読み 合い は もう 勘 と 経験 に 頼る しか ない。 |||きょ み||よみ|あい|||かん||けいけん||たよる|| The only way to read the truth or falsity of this change is to rely on intuition and experience.

カウント が 一桁 に なり 、俺 は ウインドウ を 消去 した。 かうんと||ひと けた|||おれ||||しょうきょ| 最 早 周囲 の 雑音 は 聞こえ ない。 さい|はや|しゅうい||ざつおん||きこえ|

最後 まで 俺 と ウインドウ と の 間 で 視線 を 往復 さ せて いた クラディール の 動き が 止まり 、全身 が ぐっと 緊張 した。 さいご||おれ|||||あいだ||しせん||おうふく||||||うごき||とまり|ぜんしん|||きんちょう| 二 人 の 間 の 空間 に 、紫色 の 閃光 を 伴って 【DUEL !!】の 文字 が 弾け 、同時に 俺 は 猛然と 地面 を 蹴って いた。 ふた|じん||あいだ||くうかん||むらさきいろ||せんこう||ともなって|duel||もじ||はじけ|どうじに|おれ||もうぜんと|じめん||けって| ブーツ の 底 から 火花 が 飛び散り 、切り裂かれた 空気 が 重く 唸る。 ぶーつ||そこ||ひばな||とびちり|きりさかれた|くうき||おもく|うなる Sparks fly from the bottom of the boot, and the cut air roars heavily.

ごくごく わずか 、ほんの 一瞬 遅れて クラディール の 体 も 動き 始めた。 |||いっしゅん|おくれて|||からだ||うごき|はじめた After a very slight, very slight momentary delay, Cladir's body also began to move. だが 、その 顔 に は 驚愕 の 表情 が 張り付いて いる。 ||かお|||きょうがく||ひょうじょう||はりついて| However, an expression of astonishment is plastered on his face. 下段 の 受身 気配 を 見せて いた 俺 が 、予想 を 裏切って 突進 して きた から だ。 げだん||じゅ み|けはい||みせて||おれ||よそう||うらぎって|とっしん|||| I was showing signs of lower-level passivity, but he unexpectedly rushed forward.

クラディール の 初動 は 推測 通り 両手 用 大 剣 の 上段 ダッシュ 技 、《アバランシュ 》だった。 ||しょどう||すいそく|とおり|りょうて|よう|だい|けん||じょうだん|だっしゅ|わざ|| Cladir's first move was, as we had guessed, an upper dash with his two-handed sword, the "Avalanche. 生半可な ガード で は 、受ける こと に 成功 して も 衝撃 が 大き すぎて 優先 的 反撃 に 入れ ず 、避けて も 突進 力 に よって 距離 が できる ため 使用者 に 立ち直る 余裕 を 与える 優秀な 高 レベル 剣技 だ。 なまはんかな|がーど|||うける|||せいこう|||しょうげき||おおき||ゆうせん|てき|はんげき||いれ||さけて||とっしん|ちから|||きょり||||しよう しゃ||たちなおる|よゆう||あたえる|ゆうしゅうな|たか|れべる|けん わざ| Even if it succeeds in catching a target, the impact is too great for a priority counterattack, and even if the target avoids it, the distance created by the force of the thrust gives the user time to recover. あくまで モンスター 相手 なら 、だが。 ||あいて|| If you are dealing with a monster, that is.

その 技 を 読んだ 俺 は 、同じく 上段 の 片手 剣 突進 技 《ソニック リープ 》を 選択 して いた。 |わざ||よんだ|おれ||おなじく|じょうだん||かたて|けん|とっしん|わざ||||せんたく|| 技 同士 が 交錯 する 軌道 である。 わざ|どうし||こうさく||きどう| The orbit is where the two techniques intersect.

技 の 威力 そのもの は 向こう の ほうが 上 だ。 わざ||いりょく|その もの||むこう|||うえ| The power of the technique itself is superior to theirs. そして 、武器 に よる 攻撃 同士 が 衝突 した 場合 、より 重い 技 の ほう に 有利な 判定 が なされる。 |ぶき|||こうげき|どうし||しょうとつ||ばあい||おもい|わざ||||ゆうりな|はんてい|| And if the two weapon attacks collide, the heavier technique will receive the better decision. この 場合 は 、通常 なら 俺 の 剣 は 弾か れ 、威力 を 減じられる と は いえ 勝敗 を 決する に 充分な ダメージ が 俺 の 体 に 届く だろう。 |ばあい||つうじょう||おれ||けん||はじか||いりょく||げんじられる||||しょうはい||けっする||じゅうぶんな|だめーじ||おれ||からだ||とどく| In this case, my sword would normally be repelled, and although its power would be reduced, it would still do enough damage to my body to determine the winner. だが 、俺 の 狙い は クラディール 本人 で は なかった。 |おれ||ねらい|||ほんにん|||

二 人 の 距離 が 相対 的に 凄ま じい スピード で 縮んで いく。 ふた|じん||きょり||そうたい|てきに|すごま||すぴーど||ちぢんで| だが 同時に 俺 の 知覚 も 加速 さ れ 、徐徐に 時間 の 流れ が ゆるく なる ような 感覚 を 味わう。 |どうじに|おれ||ちかく||かそく|||じょじょに|じかん||ながれ|||||かんかく||あじわう At the same time, however, my perception is also accelerated, and I experience the sensation that the flow of time is slowly slowing down. これ が SAO の システム アシスト の 結果 な の か 、人間 本来 の 能力 な の か は 判ら ない。 ||sao||しすてむ|あしすと||けっか||||にんげん|ほんらい||のうりょく|||||わから| ただ 、俺 の 目 に は 剣 技 を 繰り出す 奴 の 全身 の 動き が はっきり と 見て取れる。 |おれ||め|||けん|わざ||くりだす|やつ||ぜんしん||うごき||||みてとれる

大きく 後ろ に 振りかぶられた 大 剣 が 、オレンジ色 の エフェクト 光 を 発し ながら 俺 に 向かって 撃ち 出されて くる。 おおきく|うしろ||ふりかぶられた|だい|けん||おれんじいろ|||ひかり||はっし||おれ||むかって|うち|だされて| さすが に 最強 ギルド の 構成員 だけ あって ステータス は そこそこ の もの らしく 、技 の 発生 速度 が 俺 の 予想 より 速い。 ||さいきょう|ぎるど||こうせい いん|||||||||わざ||はっせい|そくど||おれ||よそう||はやい As one would expect from a member of the most powerful guild, his status seems to be quite good, and his technique generation speed is faster than I had expected. 強く 輝く 刀身 が 迫る。 つよく|かがやく|かたな み||せまる 必殺 の 威力 を はらむ それ を 正面 から 食らったら 、一撃 終了 の デュエル と は 言え 看過 でき ない ダメージ を 被る に 違いない。 ひっさつ||いりょく|||||しょうめん||くらったら|いちげき|しゅうりょう|||||いえ|かんか|||だめーじ||かぶる||ちがいない If a player were to be hit squarely with a powerful, deadly attack, even in a one-hit duel, he or she would surely suffer unendurable damage. 勝利 を 確信 した クラディール の 顔 に 隠せ ない 狂喜 の 色 が 浮かぶ。 しょうり||かくしん||||かお||かくせ||きょうき||いろ||うかぶ だが──。

先 を 取り 、一瞬 早く 動き出した 俺 の 剣 は 斜めの 軌道 を 描き 、こちら は 黄緑 色 の 光 の 帯 を 引き ながら 、まだ 振り 途中 で 攻撃 判定 の 発生 する 直前 の 奴 の 大剣 の 横腹 に 命中 した。 さき||とり|いっしゅん|はやく|うごきだした|おれ||けん||ななめの|きどう||えがき|||きみどり|いろ||ひかり||おび||ひき|||ふり|とちゅう||こうげき|はんてい||はっせい||ちょくぜん||やつ||だい けん||よこ はら||めいちゅう| I took the lead and moved quickly, and my sword took a diagonal path, drawing a yellowish-green band of light and hitting him in the side of his great sword, which was still in the process of swinging and just before the attack judgment was made. 凄ま じい 量 の 火花。 すごま||りょう||ひばな

武器 と 武器 の 攻撃 が 衝突 した 場合 の もう ひと つ の 結果 、それ が 《武器 破壊 》である。 ぶき||ぶき||こうげき||しょうとつ||ばあい||||||けっか|||ぶき|はかい| Another result of a collision between a weapon and a weapon attack is "weapon destruction.

無論 めったに 起きる こと で は ない。 むろん||おきる|||| Of course, this does not happen often. 技 の 出 始め か 出 終わり の 、攻撃 判定 が 存在 し ない 状態 に 、その 武器 の 構造 上 弱い 位置 ・方向 から 強烈な 打撃 が 加えられた 場合 のみ それ が 発生 する 可能 性 が ある。 わざ||だ|はじめ||だ|おわり||こうげき|はんてい||そんざい|||じょうたい|||ぶき||こうぞう|うえ|よわい|いち|ほうこう||きょうれつな|だげき||くわえられた|ばあい||||はっせい||かのう|せい|| It may only occur at the beginning or end of a move, when there is no attack judgment, if the weapon is struck from a structurally weak position or direction with a powerful blow.

だが 俺 に は 、折れる と いう 確信 が あった。 |おれ|||おれる|||かくしん|| But I was convinced that I could break through. 装飾 華美な 武器 は 、概して 耐久 力 に 劣る。 そうしょく|かびな|ぶき||がいして|たいきゅう|ちから||おとる Ornate and ornate weapons are generally less durable.

果たして ──耳 を つんざく ような 金属 音 を 撒き散らし 、クラディール の 両手 剣 が その 横 腹 から ヘシ折れた。 はたして|みみ||||きんぞく|おと||まきちらし|||りょうて|けん|||よこ|はら||ヘシ おれた 爆発 じみ た 派手な ライトエフェクト が 炸裂 する。 ばくはつ|||はでな|||さくれつ| A flashy light effect bursts out, almost like an explosion.

そのまま 俺 と 奴 は 空中 で すれちがい 、もと 居た 位置 を 入れ替えて 着地。 |おれ||やつ||くうちゅう||||いた|いち||いれかえて|ちゃくち We passed each other in mid-air, swapped positions and landed on the ground. 回転 し ながら 宙 高く 吹っ飛んで いった 奴 の 剣 の 半身 が 、上空 で きらり と 陽光 を 反射 した か と 思う と 、二 人 の 中間 の 石畳 に 突き 立った。 かいてん|||ちゅう|たかく|ふっとんで||やつ||けん||はんしん||じょうくう||きら り||ようこう||はんしゃ||||おもう||ふた|じん||ちゅうかん||いしだたみ||つき|たった The half of his sword, which spun and flew high into the air, reflected the sunlight above them, and then stood on the cobblestone pavement between them. 直後 、その 剣先 と クラディール の 手 に 残った 下 半分 が 、無数の ポリゴン の 欠片 と なって 砕け 散った。 ちょくご||けんさき||||て||のこった|した|はんぶん||むすうの|||けつ かた|||くだけ|ちった Immediately afterwards, the tip of the sword and the lower half left in Cladir's hand shattered into countless polygonal shards.

しばらく の 間 、沈黙 が 広場 を 覆った。 ||あいだ|ちんもく||ひろば||おおった 見物人 は 皆 口 を ぽかん と 開けて 立ち尽くして いる。 けんぶつにん||みな|くち||ぽか ん||あけて|たちつくして| だが 俺 が 着地 姿勢 から 体 を 起こし 、いつも の 癖 で 剣 を 左右 に 切り払う と 、わっと 歓声 が 巻き起こった。 |おれ||ちゃくち|しせい||からだ||おこし|||くせ||けん||さゆう||きりはらう|||かんせい||まきおこった However, when I raised my body from the landing posture and, in my usual habit, slashed my sword to the left and right, a cheer erupted.

すげえ 、いま の 狙った の か 、と 口々に 一瞬 の 攻防 を 講評 し はじめる の を 聞き 、俺 は ため息 を 吞み込んだ。 すげ え|||ねらった||||くちぐちに|いっしゅん||こうぼう||こうひょう|||||きき|おれ||ためいき||吞 みこんだ I sighed as I heard the players begin to comment on the momentary attack and defense. 技 一 つ と は いえ 衆人 環視 の 中 で 手の内 を 見せる の は 、あまり 気持ち の いい もの で は ない。 わざ|ひと|||||しゅうじん|かんし||なか||てのうち||みせる||||きもち|||||| It is not very pleasant to show one's moves in public, even if it is only one technique.

剣 を 右手 に 下げた まま 、背 を 向けて うずくまって いる クラディール に ゆっくり と 歩み寄る。 けん||みぎて||さげた||せ||むけて|||||||あゆみよる He slowly walks over to Cladir, who is cowering with his back to him, sword still down in his right hand. 白い マント に 包まれた 背中 が ぶるぶる と わなないて いる。 しろい|まんと||つつまれた|せなか||||| The back wrapped in a white cloak rumbles and rumbles. わざと 音 を 立てて 剣 を 背中 の 鞘 に 落とし ながら 、俺 は 小声 で 言った。 |おと||たてて|けん||せなか||さや||おとし||おれ||こごえ||いった I whispered, deliberately dropping the sword into the scabbard on my back.

「武器 を 替えて 仕切り なおす なら 付き合う けど ……もう いい んじゃ ない か な」 ぶき||かえて|しきり|||つきあう||||||| I'll go along with you if you want to switch weapons and rework it, but I think ...... has had enough of this."

クラディール は 俺 を 見る こと なく 、両手 で 石畳 に 爪 を 立てて おこり の よう に 体 を 細かく 震わせて いた が 、やがて 軋る ような 声 で 「アイ ・リザイン 」と 発声 した。 ||おれ||みる|||りょうて||いしだたみ||つめ||たてて|||||からだ||こまかく|ふるわせて||||きし る||こえ|||||はっせい| Without looking at me, Cladir dug his nails into the cobblestones with both hands, shaking his body like a lump, until he uttered a squeaky voice, "I design. 別に 日本 語 で 《降参 》や 《参った 》でも デュエル は 終了 する のだ が。 べつに|にっぽん|ご||こうさん||まいった||||しゅうりょう||| In Japanese, "surrender" or "give up" would also end a duel.

直後 、開始 の 時 と 同じ 位置 に 、デュエル の 終了 と 勝者 の 名 を 告げる 紫色 の 文字 列 が フラッシュ した。 ちょくご|かいし||じ||おなじ|いち||||しゅうりょう||しょうしゃ||な||つげる|むらさきいろ||もじ|れつ||ふらっしゅ| 再び ワッと いう 歓声。 ふたたび|ワッ と||かんせい クラディール は よろけ ながら 立ち上がる と 、ギャラリー の 列 に 向かって 喚 いた。 ||||たちあがる||ぎゃらりー||れつ||むかって|かん| Cladir staggered to his feet and called out to the gallery line.

「見世物 じゃ ねえ ぞ! みせもの||| It's not a freak show! 散れ! ちれ 散れ! ちれ

次いで 、ゆっくり と 俺 の ほう に 向き直る。 ついで|||おれ||||むきなおる

「貴 様 ……殺す ……絶対 に 殺す ぞ……」 とうと|さま|ころす|ぜったい||ころす| You ...... kill ......, I'll kill you ......, I'll kill you ......."

その 目つき に は 、俺 も 少々 ゾッと さ せられた こと を 認め ない わけに は いか ない。 |めつき|||おれ||しょうしょう|ぞっと|||||みとめ||||| I must admit that I was a little creeped out by the look in his eyes.

SAO の 感情 表現 は やや オーバー 気味な のだ が 、それ を 差っ引いて も クラディール の 三 白 眼 に 浮かんだ 憎悪 の 色 は モンスター の それ 以上 だった。 sao||かんじょう|ひょうげん|||おーばー|ぎみな|||||さっひいて||||みっ|しろ|がん||うかんだ|ぞうお||いろ|||||いじょう| SAO's emotional expression is a bit over-the-top, but even without that, the hatred in Kuradir's three whites of the eyes was more than that of a monster. 辟易 して 黙り こんだ 俺 の 傍ら に 、スッと 歩み 出た 人影 が あった。 へきえき||だまり||おれ||かたわら||スッ と|あゆみ|でた|ひとかげ|| I was so fed up that I fell silent, but then I saw a figure step out from beside me.

「クラディール 、血 盟騎 士 団 副 団長 と して 命じます。 |ち|めいき|し|だん|ふく|だんちょう|||めいじます 本日 を以て 護衛 役 を 解任。 ほんじつ|を い て|ごえい|やく||かいにん The position of Protector is terminated as of today. 別命 ある まで ギルド 本部 にて 待機。 べつ いのち|||ぎるど|ほんぶ||たいき Wait at the guild headquarters until further notice. 以上」 いじょう

アスナ の 声 は 、表情 以上 に 凍りついた 響き を 持って いた。 ||こえ||ひょうじょう|いじょう||こおりついた|ひびき||もって| Asuna's voice had a frozen tone, even more so than her expression. だが 俺 は その 中 に 抑えつけられた 苦悩 の 色 を 感じて 、無意識 の うち に アスナ の 肩 に 手 を 掛けて いた。 |おれ|||なか||おさえつけられた|くのう||いろ||かんじて|むいしき||||||かた||て||かけて| However, I felt the color of suppressed anguish within, and unconsciously put my hand on Asuna's shoulder. 硬く 緊張 した アスナ の 体 が 小さく よろめく と 、俺 に もたれかかる よう に 体重 を 預けて くる。 かたく|きんちょう||||からだ||ちいさく|||おれ|||||たいじゅう||あずけて| Asuna's stiff and tense body staggered slightly and she leaned her weight on me.

「…………なん ……なんだ と ……この……」 "............ what is ...... and ...... this... ..."

かろうじて それ だけ が 聞こえた。 ||||きこえた 残り の 、おそらく 百 通り の 呪詛 であろう 言葉 を 口 の 中 で ぶつぶつ と 呟き ながら 、クラディール は 俺 たち を 見据えた。 のこり|||ひゃく|とおり||まじない のろ||ことば||くち||なか||||つぶやき||||おれ|||みすえた Cladir looked at us, muttering what must have been a hundred different curses in his mouth. 予備 の 武器 を 装備 し なおし 、犯罪 防止 コード に 阻ま れる の を 承知 の 上 で 斬り かかる こと を 考えて いる に 違いない。 よび||ぶき||そうび||なお し|はんざい|ぼうし|こーど||はばま||||しょうち||うえ||きり||||かんがえて|||ちがいない They must be reequipping their weapons and thinking about slashing at you, knowing they will be blocked by the Crime Stoppers Code.

だが 、奴 は かろうじて 自制 する と 、マント の 内側 から 転移 結晶 を 摑 み 出した。 |やつ|||じせい|||まんと||うちがわ||てんい|けっしょう||||だした 握力 で 砕か ん ばかりに 握り締めた それ を 掲げ 、「転移 ……グランザム 」と 呟く。 あくりょく||くだか|||にぎりしめた|||かかげ|てんい|||つぶやく He held it up, clutching it as if it would shatter in his grip, and muttered, "Transition ...... grandzam. 青光 に 包ま れ 消え去る 最後 の 瞬間 まで 、クラディール は 俺 たち に 憎悪 の 視線 を 向けて いた。 あお ひかり||つつま||きえさる|さいご||しゅんかん||||おれ|||ぞうお||しせん||むけて|